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2011年2月22日 (火)

ワクチン未接種清浄国というドグマから解放されるためのリスク評価

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昨日からの続きです。 

お題は、「トリインフルにおいてワクチンを接種した場合、症状が抑えられて管理者が発見しにくくなり、感染拡大するのではないか」という難問でした。

さて、ものには軽重というものがあります。前例踏襲ではどうしようもなくなった時、何か新しいことをせねばならないわけですが、そのときに必ず出てくるのが、「ナニナニの危険がある」、「どーたらの事態になるリスクがある」という論法です。

くろうと衆の議論ではこの消極論法が幅を効かせます。失敗した場合の責任を誰もとりたくないので、大小のリスクを並べて、「だからやらない」という結論になるようです。農水省の審議会の議事録を読むと、そのてが多いようですね。

そこで出てきたのが、リスク・アセスメント (risk assessment) という考え方です。日本語でリスク評価という言い方もします。

なにをするかといいますとね、リスクの大きさを評価し、そのリスクが許容できるか否かを決定する方法のようです。

具体的には、以下のように考えます。まず、リスク分析によりリスク要因を洗い出します。これを基にして評価と行動を決定するわけです。

  1. リスク因子により組織の財務基盤にどのような悪影響を及ぼしうるかの評価
  2. それにより、どのリスク因子を優先的に対処していくかの優先順位決定
  3. リスク対処のコストパフォーマンスを、上述の財務基盤への影響度も絡めて分析評価し、再検討

と言った手順を取lります。(出典 Wikipedia)

このように学生のレポートのように書くとメンドーのようですが、要するに庶民が「こっちの道は多少のトラブルがあるだろうが進むべし」と決断することを、小難しく書いたと思えばいいでしょう。

リスク・アセスメントはこの頃よく使われており、たとえばある化学物質が出る焼却炉を作るとして、そこから出る有害物質と、それで得られる社会的利益のどちらが重いのかを判断する時に使われたりします。

有害物質の排出量が無視していいような数値なのか、それとも周辺住民に多大な悪影響を及ぼしてしまうから作らないほうがいいのかを客観的に判断する材料を与えます。

では、お題をリスク・アセスメントしてみましょう。

  • まずは「リスク因子により組織の財務基盤にどのような悪影響を及ぼしうるかの評価」を考えてみます。
  • 主語となるリスク要因はこの場合、「トリインフルのワクチンを接種することによって発症が緩和されて管理者が発見しにくくなる」です。

    そして「組織」はこの場合、国や地域の経済に与える経済的社会的影響としましょう。このトリインフルがこのまま感染拡大し続けて、ヒトの流行しているA型インフルと交差感染を引き起こした場合の社会的経済的な影響と置き換えます。

    想定されるリスクは、単なる家禽や渡り鳥の流行から公園の鳩、カラスなどのように人が大勢集まる場所の鳥類に感染拡大することです。

    感染した鳥類の糞の中には大量のトリインフル・ウイルスが含まれていますから、それを踏んだ靴やうっかりと砂場の中にあった糞を子供が手で触れたなどといった偶然が重なって社会の中に持ち込まれます。

    こうなるともっとも警戒すべきトリインフルエンザH5N1型が、同じウイルスでもヒト感染する株に変異してしまいます。すでにこの事例は世界各国ででており、97年の香港、03年のオランダで変異したウイルスがヒト-ヒト感染を引き起こしています。

    ベトナムやインドネシア、タイでは、感染した子供を看護していたお母さんが感染した例もあります。

    またインドネシアでは、母親からその兄弟と子供たち計6名が集団感染しました。2005年の茨城トリインフル事件では、感染した鶏を処理していた作業員が発症はしませんでしたが、抗体検査で陽性が発見されました。

    私が繰り返し都市部近辺でのトリインフルの感染拡大は絶対に許してはならないと言っているのは、鶏の感染から公園などの住宅地近辺の野鳥に伝染拡大し、そこからヒトにうつる可能性があるからです。

    そしてそのときに、社会でA型季節性インフルが流行していたとしたら、まさに火に油を注ぐ事態となります。トリインフルの都市直下型流行です。

    一昨年の新型トリインフルは幸い弱毒でしたが、ウイルスは感染するに従い強毒性に変異することが知られています。薬剤でウイルスが叩かれているうちに耐性をつけるからです。

    ここにトリインフルを単なる鶏病として捉えてはいけない大きな理由があります。長くなりましたが、これがリスク要因の経済的社会的影響です。

    では、次に「どのリスク因子を優先的に対処していくかの優先順位決定」を考えてみましょう。

    何度となく私が訴えていることは、私たちは巨大な米軍を迎え撃つこん棒と石だけを持った孤島の守備隊のようなものなのです。こん棒と石、つまりは消石灰とネットでどう闘えというのでしょうか!

    宮崎口蹄疫は、当初のこん棒と石から文明の利器であるワクチンを接種することで感染が停止しました。

    ちなみに教訓が残るとすれば、ワクチン接種のタイミングがあまりに遅かったことですが、この教訓はまったく活かされていません。

    今述べたことが社会的なリスク要因だとすれば、もうひとつの側面である経済的なリスク要因はなんでしょうか。それはズバリ清浄国を関税外障壁として使えるという貿易上のメリットと、感染拡大による経済的損失のどちらが大きいかの軽重の判断です

    口蹄疫においてこの判断は微妙でした。口蹄疫はヒト感染がありえません。ですから社会的損失は宮崎県のようにその地域の畜産や地場産業、観光などに与える打撃と、防疫手段であった殺処分を秤にかけねばなりませんでした。

    これに全国化した場合と、清浄国でなくなった場合に受ける輸入食肉の攻勢をどう評価するのかというリスク評価が重なります。

    一方トリインフルにおいては明解にリスク評価ができます。ワクチン接種清浄国になることによる関税外障壁の喪失は、ブロイラーの一部に影響を与えるのみの限定的なものに納まります。

    それに対して、現在全国化しつつあるトリインフル感染拡大による養鶏業への打撃、そしてヒト感染することの重大な危機とは比較しようがない軽重です。

    ワクチンにより症状が和らいで発見しにくくなるというリスク要因も、いったんワクチン未接種清浄国というドグマから解放されてしまえば、徹底したサーベイランス、徹底したワクチン接種など対処の方法はいくらでもあります。

    さて、皆さんはこのリスクの軽重をどうお考えになるでしょうか。

    ■写真 このところ花を撮影するのにはまっています。いいマクロレンズが欲しい。

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    コメント

    まず、疑問なのは、農水省は、口蹄疫のように、H5N1HPAIの急性症状判定写真など、充分な情報を農家さんや国民に公開しているか?です。

    (以下、素人の考えですが)次に、すでに、今年、点状散発から、地域の面状発生に移行した訳なので、野生鳥でのウイルス総量より、家禽発生地域においては、その養鶏団地や養鶏地域でのウイルス濃度が、急激に濃くなると、爆発的に拡散すると思われます。だから、鶏の糞中のウイルス量を減らすには、その腸内のウイルスを減らすこと。すなわち、N2型とかのワクチンを打つことで、家禽排泄ウイルス総量を減らすことは、大事なことと思います。現に、愛知では、殺処分防疫員は、タミフルなどを飲んでから、作業した訳で、何十万羽と密飼いしている鶏舎内のウイルス量が、状況においては、かなりの量であり、短時間でも、濃厚接触すれば、鶏>人感染が起こることを、知っているからでしょう。特に、マスクは大事で、呼吸器粘膜に付着することを、避けたいはずと思うのです。

    作業員の安全、将来の人>人感染を防ぐため、プレパンデミクスワクチンというか、鳥インフルワクチン接種を導入すべき時期には、来ていると思われます。弱毒性と症状の差がないので、見逃すかどうかのリスク対策は、別途、研究して、判別できるようにしていただきたいのですが。。

    家禽種別ごとの暴露量と抗体発生率など、もっと、科学的検証データーがほしいところです。

    口蹄疫でさえ、パドック1枡開けて、ベニヤ板で、囲う程度でも、感染が遅延できるらしいとのこと。。そういうことが、わかれば、それなりの対策をすることで、発生農場だけで、早期封じ込めが、期待できるのでは?

    私の知る限り、口蹄疫で見られたような写真入りの症状識別表は農家に配布されていません。

    ただ、一般的なトサカのチアノーゼがどうしたとか、死亡鶏が通常の2倍になったら通報しろていどのおざなりのものです。

    また情報も農水省のプレスリリースはご承知のように何も書いていないに等しく、なにが感染経路であるのか不明です。ただただマスコミが喧伝するネットの穴」のみがひとり歩きしている状況です。

    このように情報すら満足にあたえず、竹槍と石で迎え撃てと号令しているのがわが農水省です。ともかく仕事をしていない。

    危機管理庁を新設して、その中に海外悪性伝染病課でも作ってほしいものです。

    一消費者ですが、こちらのブログで勉強させていただいてます。

    鳥インフルエンザワクチンを使用しないと、養鶏壊滅の危機にあるのはわかるのですが、ワクチンを打って、そのワクチンが不活化する前に産んだ卵も出荷するのでしょうか?
    卵は、火を通さないで食べることも多いので感染して排出されるウィルスの影響はないのでしょうか?

    口蹄疫と違い、人にも感染の可能性があるため、やはり心配です。

    纏まらない質問ですみませんが、食べてもなんら影響がないならワクチン接種に賛成です。

    HIPPOです。
    ヤブな獣医師なので理屈抜きで失礼ですが、症状判定写真はムツカシイと思います。

    かつての京都で2件発生したときにお手伝いに入った経験しかありませんが、眠るようにきれいに死んでいること、が一番の特徴だったと記憶しています。
    ウイルスの増殖スピードが速くて、病変を作る前に宿主を殺してしまう、というのが2万羽/鶏舎×10棟をほぼ全滅させていたあの時の印象です。

    宿主抜きに自己増殖できない遺伝子としては出来損ないだと思います。(これはomizo先生の言でしたっけ?)

    農業軽視政策の舵取りを目論んだ国の行く末の悲劇が、
    現在の韓国の目を覆いたくなるような惨状だと察しています。
    身近な現実に目を向けると、昨秋RSウイルスが流行した我が家の農場でもワクチンを接種しました。
    成牛は体調異変も訴えることなく経過しましたが、生後幼い子牛にワクチンを接種したところ、副作用を発生させてしまい、3日間点滴治療を行うという事態にまで発展させてしまいました。明らかな管理ミスでした。
    ワクチン接種の落とし穴を、痛感した次第です。
    それにしても、どうして韓国の口蹄疫被害が、日本で報道されないのか、首を傾げたくなります。
    関税障壁撤廃に名乗りをあげた先輩格の韓国の姿をつぶさに見せたくないのか?と疑いたくなります。

    ワクチン接種した鳥の卵経由で、人にワクチン株が感染しても、人が免疫を得るだけではないかな?
    ワクチンでは発症しないと思うのだけど

    青空です。
    今回の記事で濱田様の考え方同意する処大です。
    リスクアセスメントの考え方は近年金融、大手、行政で取り入られつつある考え方ですが、何れも企業トップや経営企画担当等による【現場を無視した】ものが中心でした。
    極端にいえばリスクを完全に排除することを狙うのではなく、現実的な落とし所を探る手法です。

    防疫処置で完全防衛が出来ない鳥インフルや口蹄疫などについて将に検討すべき手法だと感じます。
    この記事についてはより掘り下げて取り上げて頂ける事を希望しています。

    一宮崎人さま

    ありがとうございました。
    離乳食後期の子供がいまして、今後のことを考えての質問でしたが、場違いだったかも・・と思っていました。

    これからもブログ主の濱田さま、一宮崎人さまを始めいろいろなコメントを読み、勉強させていただきます。

    関東高野様。その点はご安心下さい。ワクチンは薬剤と違って、弱毒のウイルスを不活化させて与えることで体内に抗体を作るだけです。

    ですから、薬剤と違って鶏体に残留しません。

    ワクチン接種鶏舎が、新たな新型鳥インフルエンザの巣になり、野生鳥に、ウイルスを感染させたり、ウイルス変異を促進させたりするのかの研究を、もっとしてほしいですけど。。

    結局、感染経路と劇症症状で、宿主が死亡しない場合のウイルスは、どうなるか。と言うことを、具体的に、知らせるべきでしょうか。

    管理人濱田さま

    教えていただき、ありがとうございました。
    ワクチンの最初の記事を読んでいる頃から気になっていましたが、安心しました。
    かわいいワンちゃんや、綺麗なお花、風景の写真も楽しみに見ています。

    ありがとうございました。

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