鳥インフルは症状が出る前に、宿主が死ぬモンスター・ウイルスだった!
HIPPO様から貴重な情報を頂戴しました。ありがとうございます。
>症状判定写真はムツカシイと思います。
かつての京都で2件発生したときにお手伝いに入った経験しかありませんが、眠るようにきれいに死んでいること、が一番の特徴だったと記憶しています。
ウイルスの増殖スピードが速くて、病変を作る前に宿主を殺してしまう、というのが2万羽/鶏舎×10棟をほぼ全滅させていたあの時の印象です。
のだめ風に言えば、ギャボーですな。「病変を作る前に宿主を殺してしまう」とは・・・。これが研究室の住人からでしたら、ふ~ん、そうかいていどなのですが、京都の事例に立ち会われた獣医師さんからのものとなると、激しく落ち込まざるを得ません。
だから、家保は写真を配布していないのですか。納得しました。症状写真がないんですね。そんな家畜伝染病があったとは。
症状が出る前に宿主が死ぬ、そんな鶏病ってあったんですか・・・。すいません、率直に驚いています。今まで自慢ではないが(←まったくそのとおり)、ニューカッスルもやりましたが、劇症でしたよ。首はグルググ旋回するわ、鮮やかな緑便は出すわ、バンバン死ぬわで迷いようがありません。
それが一気に症状も出す余裕もなく、一瞬にして感染拡大して殺してしまうとは。まさに絶句です。聞かなきゃよかった。桑原、桑原。
たとえば今朝、この記事を書き終えて自分の鶏舎に行ったら、昨日まで平常だったのに10羽ばかり死んでいると、あれ、おかしいなと当然思います。
私の農場はモニタリング農場なので、朝一番に家保の担当者に電話を入れるでしょう。そして簡易検査。判定クロ。全殺処分。半径10㌔まで移動禁止区域。
しかしその時、畜産家特有の迷いが出たらどうします?モニタリング農場でなければどうでしょう。
ちょっと待てよ、昨日まで元気だったんだ、食下量にも大きな変化はない、鼻汁もない、奇声も発していなかった、産卵量にも大きな変化はない。
ひょっとして夜に野犬でも来て驚いて圧死したのかな、もう少し様子を見よう。もし、家保に電話して大騒ぎになって、新聞種になりたくないし、風評被害もこわいしな。違っていたら、同じ地域の同業者から力いっぱいとっちめられるしな。
ああ、ありそう。ああ、やっちゃいそう。
結果、翌日から脅威的な速度で感染拡大していきます。もう密閉撲滅作戦しかない・・・。マスコミはワンパターに「ネットに穴発見」とはやしたてる。地域の同業者からは袋叩きになって、村にいられないかもしれない・・・。
家畜伝染病対策の三原則というものがあります。
ひとつめは、「感染経路を潰す」。外部からのウイルス侵入を農場に入る前にブロックすることです。鳥インフルの場合は媒介する野鳥、ネズミ、飼料運搬車、処分業者、同業者などの立ち入りを制限し、時には禁じることです。いわゆるバイオ・セキュリティです。
消石灰などの散布、消毒槽は常識です。この頃は、高価ですがシャワーイン、シャワーアウトという農場入り口で、消毒液をぶっかけるという設備も徐々に広まってきています。
次に二つ目は、「感染源を潰す」ことです。感染した家畜の摘発淘汰、畜舎の消毒などにより侵入したウイルスを排除することです。
最後が、伝染病に対しての感受性を低くすることです。実はこれが私たち平飼養鶏の哲学の根幹なのですが、強い個体に育て、ちっとやそっとでは病気に負けない個体を作ります。
また、伝染病に対する体内の抗体値を高めていくためにワクネーションといって定期的にワクチンを投与し、最後はその効果を高めるためのブースター効果として不活化ワクチンを接種します。この抗体値は抗体検査で厳密に測定可能です。
もう何度も繰り返していますので耳にタコができたかもしれませんが、鳥インフルの場合この防疫三原則がまったく不十分です。
感染経路は潰したくとも相手は空を飛ぶ鳥。消毒薬と消石灰という私が厭味を込めて言うところの「竹槍と石コロ」しか許されず、いったん出ようものなら全殺処分、半径10㌔はるか彼方まで移動禁止です。
そして情報も皆無。感染経路は事実上不明。ネットの穴から野鳥が入ったからなどというマスコミ情報を信じているオメデタイ養鶏家はいないでしょう。
せめて欲しいのは詳細な症状の情報です。ところが驚くべきことには、これもない。「トサカがチアノーゼとなる」、「死亡鶏が急増する」程度が細々と家保から送られているていどです。
しかし、トサカがチアノーゼになるっていうのは超一般的な体調不良の特徴であり、死亡鶏の増加といっても各種原因が考えられます。
それを判別するのが、さまざまな伝染病の症例が載っている鶏病事典、図鑑などです。ところがこれには鳥インフルの症状写真がないのです!
理由は昨日の獣医さんのコメントで判りました。今現在、私たち全国の養鶏家が迎え撃っているのは、なんと「症状が出たときには宿主のほうが死んでいる」というモンスター・ウイルスだったのです。
もはや鳥インフフルワクチンを使うこと、それで抗体値を上げること、それしか方法はありません。
それをしないで、なんのアナウンスもせずにこのモンスター・ウイルスと立ち向かわせている国家は、行政の無作為を犯しているとしか言いようがありません。
税金払らわねぇぞ。確定申告しねぇぞ。( ゚д゚)、
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農水省プレスリリース
゜。°。°。°。°。°。°。°。゜。°。°。°。 |
■写真 いちおう花の写真です。ちょっとアートしちゃいました。お恥ずかしい。
■蛇足 本日から「トリインフル」の表記を一般的な「鳥インフル」に変えました。
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コメント
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HPAIVは、管理人さんのおっしゃるような急性症状が、典型的に現れるケースと、HIPPO様のおっしゃるように、まったく現れず死亡するケースとあるのですね。
ワクチン接種鶏やLPAIVは、症状もなく、不顕性であると。。。
いつもより多い死亡鶏の数とは、具体的に、どのくらいの%なんでしょうか?
管理の行き届いてない鶏舎なら、HPAIV以外での死亡鶏が、結構、あるかもしれないし、管理がよければ、ほとんど、死亡鶏=HPAIVかもしれないし。。。
抗体の有無でしか、わからないなら、簡易検査キットが、必要ですよね。
1鶏舎10羽しか、検査しないと言うのも、どうなんでしょうか?それなら、1鶏舎の最大収容可能数と空間容量を決めるべき気もしますけど。。
糞による感染を防止する方法とかは、ないのでしょうか?
また、将来、あらかじめ、鶏の腸内に、何かの安全試薬が存在していて、HPAIVに感染したら、糞の色が変わるとか、そういうことは、出来ないのでしょうか?
投稿: りぼん。 | 2011年2月23日 (水) 12時48分
まったく、関係無いことで、失礼します。
昨日、2/22のお花の写真、とてもきれいでした。
もし、お花の名前をご存じでしたら、教えて戴けると
幸いです。
投稿: LuckyCat | 2011年2月23日 (水) 16時31分
ご存知かもしれませんが、
http://www.nbi.ne.jp/AI-information/
この中の、PDFデータ、「養鶏場におけるAIの緊急対策」は興味深い内容でした。
まだ、全てのPDFは目を通していませんが、取り急ぎ報告します。
投稿: 南の島の黒毛和牛繁殖農家 | 2011年2月23日 (水) 21時29分
PDFデータ、「養鶏場におけるAIの緊急対策」
わかりやすい論文ですね。
愛知は、2年前うずらH6N7高病原性弱毒性と、今回、鶏のH5N1高病原性強毒性が、起きたので、監視しないと、新たな亜型が、発生するってことでしょうか?
過去のウイルス(高病原性弱毒性)は、たぶん、どこかに、残っていますよね。
投稿: りぼん。 | 2011年2月23日 (水) 22時14分
今日の東京新聞に鳥インフルエンザH5N1の人への感染13人、死亡が11人と出ていました。
投稿: katohisasi | 2011年2月24日 (木) 04時15分
え~、花の名前ですが、私の秘密の花園はDIY店なんです(汗)。
たまに行くと、カメラで「花盗人」をやっています。店員からは不審な顔をされ、知り合いに会うと、「たまにはオッカァを撮ってやれや」と笑われています。
というわけで、すいません。名前はわかりません。たはは。
投稿: 管理人 | 2011年2月24日 (木) 04時35分
今日の東京新聞に鳥インフルエンザH5N1の人への感染13人、死亡が11人と出ていました>>>>
詳しい情報が、知りたいです。
関東地区で、ないので。。
投稿: りぼん。 | 2011年2月24日 (木) 09時39分
横から失礼。
りぼん。さん。
夜中に配信された東京新聞WEBニュースで、カンボジアて鳥インフルエンザH5N1に13人感染して11人死亡とのことです。
投稿: 山形 | 2011年2月24日 (木) 10時09分
これですね。
2011.02.12 Saturday
カンボジアで新たに鳥インフルエンザ(H5N1)の患者
Posted by 切明義孝
★★国立感染症研究所★★
http://idsc.nih.go.jp/index-j.html
2月10日 インフルエンザ流行レベルマップ[疾患別情報]
第5週(1月31日~2月6日)
★★海外渡航者のための感染症情報★★
http://www.forth.go.jp/
2011年02月10日ハイチとドミニカ共和国でコレラが流行しています 続報
2011年02月10日カンボジアで新たな鳥インフルエンザの患者が報告されました
カンボジアでは、2005年以降、鳥インフルエンザに感染した人の報告が続いています。
2011年2月9日に公表されたWHOの情報によりますと、カンボジアから、新たに鳥インフルエンザ(H5N1)の患者が1人報告されました。首都プノンペンの5歳の女児が1月29日から症状が現れ始め、2月3日に入院をし、12時間後に死亡しました。
カンボジアでの鳥インフルエンザ患者数は、2005年からの累計11人で、9人が死亡しました。
現地では、鳥に近づいたり、触ったりしないようにしましょう。
★★外務省海外安全ホームページ★★
http://www.anzen.mofa.go.jp/index.html
■ 2011/02/10
ジャマイカに対する渡航情報(危険情報)の発出
■ 2011/02/10
ジブチに対する渡航情報(危険情報)の発出
◆ 2011/02/10
タイ:バンコク都における国内治安維持法適用に関する注意喚起
△▼厚生労働省▼△
2011年2月10日 掲載
○ 政策分野
・新型インフルエンザに関する報道発表資料
http://wwwhaisin.mhlw.go.jp/mhlw/C/?c=160593
・鳥インフルエンザ(H5N1)について
http://wwwhaisin.mhlw.go.jp/mhlw/C/?c=160595
・今冬のインフルエンザの発生動向~医療従事者向け疫学情報~
http://wwwhaisin.mhlw.go.jp/mhlw/C/?c=160597
・平成22年度今冬のインフルンザ総合対策
http://wwwhaisin.mhlw.go.jp/mhlw/C/?c=160601
○リンク
厚生労働省トップページは、こちらから
http://www.mhlw.go.jp/
投稿: りぼん。 | 2011年2月24日 (木) 10時39分
初めてコメントいたします。 鳥インフルについてですが、個人的に「弱酸性次亜塩素酸水」を使用した防疫対策を考えていますがいかが思われますか? ちなみに「弱酸性次亜塩素酸水」とは「ハイター」などの次亜塩素酸ナトリウムとか次亜塩素酸ソーダとは異なるものです。
投稿: ふくおか | 2015年7月 8日 (水) 12時18分