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2011年2月21日 (月)

おとり鳥を使ったサーベイランスで 緊急ワクチンは使用できる!

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りぼん様のご質問をこの数日仕事をしながらずっと考えていました。

そのご質問とは、「トリインフルにおいてワクチンを接種した場合、症状が抑えられて管理者が発見しにくくなり、感染拡大するのではないか」というものです。

このことは動衛研も指摘しており、理論的にはありえます。たぶんワクチン接種を拒否する最大の理由でしょう。

それがどのような状況なのかをもう少し細かく考えてみます。
①緊急、あるいは予防ワクチン(N2ないしはN7型)を接種したことにより高病原性トリインフルエンザH5N1型(以下N1型と言うことにします)が侵入した場合に、ウイルスが抑制された結果、本来劇症で出るはずの諸症状が軽くなる。

②本来は死亡鶏の急増、食下量の激減、産卵量の激減、呼吸器病の諸症状、トサカのチアノーゼなどが見られるはずが、ワクチンにより緩和されたことにより管理者が発見できない。

③感染鶏の糞の中にN1型ウイルスが排出されて、農場内に拡散し、それが管理者の移動や堆肥場から野鳥などによって伝染して感染拡大をする。

う~ん、悩むなぁ。ありえない理屈ではないでしょうね。(^-^;汗タラタラ

私は問題を分けて考えたほうがいいと思います。まず、このワクチンが今のようないわば非常事態に求められている緊急ワクチンなのか、それとも平時に行われる予防的ワクチンなのかです。

それともう一点。トリインフルが、同じ高い死亡率を持つといってもニューカッスル(ND)や、伝染性喉頭気管支炎(ILT)などの通常の家畜伝染病と違って、OIEに報告義務を持つ海外悪性伝染病であることです。

更にもう一点。トリインフルはヒトのA型インフル(季節性インフル)と交差感染すると、ヒトへ感染し、ヒト-ヒト感染する新型インフルに変異する可能性があることです。最悪な場合、1918~19年にかけて全世界的流行をみたスペイン風邪のような感染者6億人、死者4,000~5,000万人という大惨事に発展することも、あくまで理論上ではですが、ありえます。

とまぁ、こんな危ないトリインフルを、消石灰と防鳥ネットという原始的な武器だけを頼りに守れちゅうのか(怒)、というのが伝染病と闘う最前線の守備隊である私たち畜産農家将兵の大きな不満です。

さて緊急ワクチン接種においては、もはやらない理由は私には見あたりません。直ちに、一日も早く発生点半径10㌔ないしは5㌔の外周から発生点に向けてのリングワクチンをするべきです。

そしてそれと平行して、現在も実施していると思いますが発生動向調査(サーベイランス)を行い、抗体、PCR:、ウイルス分離の3点簡易検査をしらみつぶしに行います。

ただし、この検査のサンプリング数は千羽に対して10羽(必ずしも鶏舎規模で一定ではない)の検体抽出でしかありません。大分の陽性から陰性への判定変更のように、漏れ落ちはありえます。

検査でシロ判定が出ても絶対ではなく、あくまでもウイルスは残存していると考えるべきでしょう。だからワクチンが必要なのです。

このように書くと防疫の「くろうと」衆は必ずこう言うでしょう。ワクチンをいったん入れたら、ホンモノのN1型が来てもわからなくなるぞ、と。

あるいは防疫陣は多忙を極めているので、徹底したサーベイランスは無理だ、ワクチン接種にしても獣医師が足りないとか言うでしょう。

ここでようやく冒頭の質問に戻りました。私は緊急時には現行のサーベイランスにおとり鳥を組み合わせることでその問題は簡単にクリアできると思っています。

おとり鳥(なんつうネーミングだ。でも正式名称のようですが)とは、宮崎口蹄疫事件でもワクチン接種後の清浄性確認に使われた方法です。未感染の家畜を畜舎に入れて、定期的にモニタリングをし、感染しているかどうかで判定する方法です。この方法は茨城トリインフル事件でも使われた一般的方法です。

ワクチン接種作業については農水省は動衛研文書「鳥インフルエンザのワクチンによる防疫と清浄化 }(2005/09/28)の中でこのように規定しています。(「南の島」様、情報提供ありがとうございました)http://www.niah.affrc.go.jp/disease/poultry/infl_vaccine.html

  • 「ワクチンは、国及び都道府県の家畜衛生当局の指導・管理の下で使用」。つまり、「国、都道府県の指導、管理」があればいいんでしょう。実施者についての規定はありません。だから、農場管理者や、管理者から委託を受けた人なら誰でもいいわけです。
  • たぶん畜産農家、中でもブロイラー業者の側が引っかかるとすれば次の事項でしょう。
    「ワクチン接種を実施した家きん等は標識をし、その移動を制限するとともに、全ての接種家きんが処分されるまでの間、定期的な検査等の監視を行う」。
  • ワクチン接種したら鶏に移動制限をかけて動けなくするぞというわけです。思わず陰険だなぁって言いそうになりました。採卵業は困りませんが、ブロイラー業では出荷ができなくなります。
  • 移動禁止区域にいったん入れば、食肉処理場も事実上閉鎖に追い込まれます(と殺はできず、食肉加工のみ)。
  • そのあたりの事情の違いから、養鶏業界でもワクチン接種について肉屋と卵屋の間で利害の微妙な対立が表面化してきています。
  • しかし、その対立の大本はこの馬鹿げた農水省の規定にあります。もはやこれでは、ワクチン悪玉説ですよ。ワクチンは農水省と動衛研にとって許すべからざる不倶戴天の敵だと思っているのでしょうね(笑)。
  • たぶん弱毒でもウイルスを持って回ることを警戒しているのでしょうが、昨日ご紹介した業界紙「鶏鳴新聞」でも指摘されていたことですが、国際防疫の総本山OIEの規約でも過去12カ月(私は6カ月だと思っていたので調べます)発生がなく清浄性が確認されさえすれば、清浄国に復帰できるのです。

    ハッキリ言ってこんな農水省の規定は、OIEの規約を恣意的に無視した規定に過ぎません。

    さて、もうひとつの問題は平時の予防的ワクチン接種の問題です。これをどうするのかですが、今日は長くなりましたので、明日に繋げます。    

              ゜。°。°。°。°。°。°。°。゜。°。°。°。

    資料1 ■食鳥協会がAI対策を要請


    鶏鳴新聞 2011.02.15発行

     (社)日本食鳥協会(芳賀仁会長)は2月2日、宮崎県、鹿児島県で発生した高病原性鳥インフルエンザ(AI)によって、移動制限区域内に食鳥処理場、種鶏場、孵化場が含まれ、操業停止を余儀なくされるなど、食鳥産業の死活問題になっているため、農林水産省AI対策本部長の鹿野道彦農林水産大臣に対策を要請した。

     同会では、移動制限区域で、1回目の清浄化が確認された後は、迅速に例外措置を発動し、

    (1)移動制限区域の早期の縮小(半径10キロメートルから5キロメートルへ)

    (2)移動制限区域内に立地する食鳥処理場への移動制限区域内の肉用鶏の出荷

    (3)移動制限区域内に立地する食鳥処理場への移動制限区域外からの肉用鶏の出荷

    (4)移動制限区域内の孵化場からのひなの出荷と移動制限区域外からの種卵の搬入――を可能にすることと、移動制限区域内で出荷できない肉用鶏やひなの損失支援を求めた。

     また、AIワクチンについては、平成17年11月28日付の「鳥インフルエンザワクチンの使用について」の考え方を踏襲し、ワクチン接種を行なうと、わが国が鳥インフルエンザ汚染国とみられ、生肉の輸入が停止されている中国、タイなどから鶏肉輸入が求められるほか、ワクチンを接種するとブロイラーは20週間出荷できなくなる――を理由に、「ワクチン接種は行なわないこと」としている。

                ゜。°。°。°。°。°。°。°。゜。°。°。°。

    資料2 ■口蹄疫ワクチン接種を6カ月ごとに実施、韓国政府が方針

    【ソウル14日聯合ニュース】政府が、牛や豚などの偶蹄(ぐうてい)類に対する口蹄疫(こうていえき)ワクチンの接種を6カ月ごとに実施する方針を決めた。

     中央災難(災害)安全対策本部関係者は14日、口蹄疫清浄国への復帰に向けた政策転換が必要だとした上で、「口蹄疫ウイルスを撲滅するため、6カ月ごとにワクチン接種を行うことを検討している」と述べた。

     政府は、先月終えた牛と豚を対象とするワクチンの第一次接種に続き、今月末までに第2次接種を完了する計画だ。

    資料3 ■北朝鮮が口蹄疫報告書提出、48カ所・約1万頭感染

    【ソウル18日聯合ニュース】北朝鮮が口蹄疫(こうていえき)の発生状況をまとめた報告書を国際獣疫事務局(OIE)に提出したことが18日分かった。

     報告書によると昨年12月25日、平壌市内で牛6頭が口蹄疫に感染したことを初めて確認し、ことし2月7日まで北朝鮮全域48カ所で口蹄疫が発生したとしている。そのうち、15カ所が平壌市内で発生し、平壌の被害が最も深刻だった。

     報告書は獣医・防疫局の李慶根(イ・ギョングン)局長名義で7日にOIEに提出し、OIEはその内容をホームページに掲載した。

     報告書によると、豚9953頭、牛500頭、ヤギ165頭で口蹄疫の感染が確認された。口蹄疫により死んだ豚は8640頭、牛は15頭だったが、殺処分・売却したケースは把握されていないという。北朝鮮は独自に開発した予防ワクチンを接種したが、感染拡大の統制が効率的に行われていないとしている。

     OIEは北朝鮮では現在も口蹄疫が広がっており、発生状況を新たに反映した報告書を追加提出する予定だと伝えた。また、北朝鮮当局と口蹄疫の対応策について協議しているほか、国連食糧農業機関(FAO)などどワクチン提供など、具体的な支援方法についても検討しているという。

    ■写真 今日はちょっと色を遊んでみました。やや不気味かも。

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    コメント

    コメントがずれている事を先ずお詫びします。
    日本の農業が、本当に関税によって守られているのかと言う素朴な疑問がずっとひっかかっております。

    前の記事に対するコメントでも、養鶏や養豚に比べて、牛関係は、関税により保護されてきた等の書き込みがありましたが、本当にそうか、少し調べてみました。
    輸入牛肉の基本関税は50%です。その関税により何処を守るか?によりますが、一応、和牛を守っていると仮定しますと、おそらく、オーストラリア産やアメリカ産と競合するであろうランクはA3クラス以下でしょう。
    肉牛ジャーナル2月号の資料によりますと、今のA3クラスの枝肉相場は大体1700円前後です。
    そこで、計算しやすいように、1500円と仮定しますと、輸入牛肉の輸入価格が判りませんが、1500円の和牛枝肉を守るのであれば、おおよそ1000円くらいの輸入価格なのではないでしょうか?
    そこで、同じ肉牛ジャーナルの資料で、乳牛雄去勢牛の枝肉価格を見ますとB3クラスで600円そこそこです。ちなみに、AとかBとかは、サシの入り方は無関係です。番号がサシの入り方です(老婆心ですね)。実際の輸入肉の価格が判らないので、なんとも言えませんが、この仮定が合っていれば、関税は農家を守っているのでしょうか?
    それに、同じ資料で、去年一年の牛肉供給状況も出ていましたが、国産肉より、輸入肉の方が多く供給されています。すでに、日本国内では、輸入肉の方が国産より多く流通しているのです。
    これらを見ると、本当に関税は、農業を守っているの?と思ってしまいます。

    おとり鶏による継続監視は、基本的にN2不活化ワクチンを接種したばあい、抗体の持続時間から考えて、6ヶ月毎に、再接種ですから、緊急であれ、平時であれ、必ず必要と思います。
    定期的におとり鳥を検査すれば、ワクチン抗体か、自然感染N1抗体かは、判別がつくはず。

    緊急時のお題ですので、リング・カリング(ring- culling)+殺処分は、いままで、点での散発発生から、面での地域発生に変わってきたこと。発生農場と鶏卵処理場、食鳥処理場の位置関係を考慮して、必要な場合は、早期に行う方が、その地域(10km圏内)のN1ウイルスの総量規制には、役立つかもしれません。

    予防ワクチン(N2ないしはN7型)を接種したことにより高病原性トリインフルエンザH5N1型(以下N1型と言うことにします)が侵入した場合に、ウイルスが抑制された結果、本来劇症で出るはずの諸症状が軽くなる。
    >>>>これについては、理論でなく、実験して、データーを出すべきで、Nxのどのタイプが、H5N1に効果があるのか?理論上は、Nタイプが違えば効果があるらしいが、詳しい説明は、あまり一般人は、聞かないですね。

    なお、N2タイプワクチンについて、単に不活化しただけのものから、遺伝子組み換えをしたり、蛍光マーカー染色をしたものまで、あるはずですし、それらワクチン接種鶏が、N1に感染したときの目視検出方法は、研究できるのではないでしょうか?

    鳥インフルの場合、乾燥していない鶏糞が、感染源と言う話もあり、北海道の死亡白鳥でも、新鮮な糞からは、発見されたが、乾燥した糞からは、発見されていないとなると、ウイルス総量は、感染鶏に接触するより、新鮮な鶏糞が、1番多いように、思えるのですが。。(糞中のウイルスは、3日間ほど、生きているらしい)

    いずれにせよ。県内で、複数箇所の感染鶏舎が見られ、非常に多くの県で、同時期に発生した今年の状況から見て、防鳥ネットだけで、防げるというのは、信じられません。

    また、養鶏従事者が、人間用の予防ワクチンをあらかじめ飲んでおくことは、もう、常識かもしれませんね。

    今日十勝のJA組合長と農水省幹部との意見交換会が帯広市で開催されます。
    当JAの組合長も出席するので、他の組合長は多分TPP等について意見を言うと思うので、チョット視点を変えて、口蹄疫の防疫対策や家伝法の改正内容及びトリインフルのワクチネーション等について質問や意見を言うようアドバイスしておきました。
    濱田様の記事内容を参考にさせて頂き、A4のペーパー1枚を持たせましたので、時間が許せば話してくれると思っています。(可能な限りレクチャーしました)
    全国の彼方此方で同じ様な意見が農業団体から出れば、少しは考えてくれるかな?と期待している所です。

    北海道様。ひとつよろしくお願いします。わが村でもそうですが、TPPはTPP、口蹄疫は口蹄疫というふうに別に考えてしまっています。

    実はそうではなく、TPPというのはウイルス・ボーダレスを大変な勢いで進めることなのです。発生国から各農村、食肉処理場に散っていく外国人労働者が大量に流入することが、TPPです。

    本当に、そうだと思います。
    今回、韓国の口蹄疫のニュースで驚いたことの1つが、ベトナムや中国の労働者が韓国の農場で多数働いていることでした。経済の自由化とは、こういうことだと痛感しました。

    アメリカやオーストラリア等と比べて、経営規模で太刀打ちできないという意見がありますが、もう1つ見過ごせない太刀打ちできない問題として、安価な労働力の存在があります。
    どんなに規模を拡大しても、農業には人手をかけなければならない部分がたくさんあります。
    安価な外国農産物は、低賃金労働者の存在なくして実現しません。
    TPP参加しても負けない農業とは、低賃金労働者を雇用して農業を行えということです。

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