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風評被害は人災です。その人災をおこしたのは政府です

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風評被害を考えてみたいと思います。

昨日、JA茨城は東電に18億4600万円の風評被害による価格下落による損害を請求しました。これの内訳は、野菜関係が約14億4700万円、生乳が約3億9900万円となっています。

これには3月25日までの集計で、現在もまだ風評被害による被害は続いているために5月末に再度の請求が立てられます。

またこれには出荷停止分は含まれておらず、またJAを通さない農産物も多いために、おそらく最終的に茨城県だけで50億円ちかい巨額な請求となると思われます。(資料1参照)

これにわが県以上に品酷な被害を受けた福島県、そして品目数においては茨城をしのぐ千葉県の補償請求がされるとなると、もはや天文学的な請求が東電になされることは間違いありません。

この風評被害は政府によって作られたいわば官製の風評被害です。「菅」製と言い換えてもいいでしょう。

3月中旬、農水省と厚労省は農産物に対して今回の原発事故による放射性物質飛散による影響があるのかを調べていました。

そしてそれへの対応を協議していたところに、官僚の頭ごなしに官邸に棲む暗愚の帝王からの直接の指示で、暫定規制値を急遽作れという命令が下りました。これがいまだ福島、茨城、千葉の農民を苦しめ続けている暫定規制値の誕生です。

この暫定規制値は大慌てで作られた「政治主導」の産物でしたからもうめちゃくちゃな内容でした。(資料2参照)

これは東京近県の暫定規制値のための検体数をあらわした表です。福島が235件、茨城が121件、この両県だけで356件で、総計667件の半分強を占めています。他の県の平均検体数は40から50で、なかには5検体という県もあります。

たしかに福島、茨城は福島第1原発の被害を直接に受けていることは確かですが、検体数が他の県の2倍から6倍では検出されて当然です。

これは原発立地県として、福島、茨城両県は他県にない放射線量測定システムを完備していたからです。しっかりした測定システムを持っていたから損をしたのです。

もし政府がまともな規制をしようとしていたのなら、国の責任において均等な検査システムを作り、土壌検査なども合わせてから数値を公開すべきでした。

土壌検査は一見大変そうにみえますが、現在文科省が行っているダストによる検査ならリアルタイムの測定車による観測が可能です

山梨や群馬、新潟などまで手をのばさず、福島、茨城、千葉、栃木の4県ていどに絞り込めばそれは充分に可能だったはずです。

また、検査対象も市町村単位までの絞り込みも可能だったはずです。県単位で×〇とは、杜撰にもほどがあります。

巨大な風評被害を招くことが分かりきっている暫定規制値を数字だけポンと出せば、検体を多く取った、しかもそれを馬鹿正直に素早く出した福島と茨城が巨大な風評被害に叩かれまくって当然でした。

他県は検査システムがない上に、この2県の惨状を見ていますから、たったの5検体でお茶を濁す県も現れたのです。

今回の原発事故は、原子力災害においてこうしてはいけない教科書のような対応でした。初動は遅く、指揮系統は分裂し、しかも抗争をくりかえしていました。

それを統制し指揮をとるべき首相は・・・まぁご覧の通り、明治以来の憲政始まって以来の不出来な人でした。

あれ以下の人間を考えることさえできないレベルと言っていいでしょう。もはやその地位にいること自体が災厄です。彼に比べれば、飯館村村長や福島県知事などのほうがはるかに行政責任者として見事な働きをしています。

なにより悪いのは、自分の失敗を隠したいために、ひたすら小規模にみせよとする姑息な情報隠匿を何度も行ったことです。(資料4参照)

SPEEDIによって3月12日の事故時点で飯館村に高濃度の放射性物質が飛来していたことを知っていながら、いつまでたってもそれを公表せず、半径20㎞、いや30㎞、いやリング状じゃなくて計画的避難区域だ、今度は警戒区域だ、もうハチャメチャです。

このような後手後手で振り回され続けた地元住民や、放棄されて殺処分になる家畜を考えると胸が痛みます。(資料5参照)

飯館村、川俣町、南相馬の一部は、一カ月以上前から飛散が判明していたのですから、素早く避難区域に指定すべきだったのです。警戒区域指定の判断も必要だったでしょう。

一カ月の余裕があれば国を上げての避難支援態勢が組めたはずです。

それを情報隠匿の発覚を恐れてのっぴきならないところまで状況を放置しているから、このように一カ月以内でめいめい勝手に逃げろというような「計画的避難」となったわけです。愚かさも極まれりです。

暫定規制値も、しっかりとした調査システムを作って、検体を農産物や土壌から採取して、放射性医学の専門家の知見を集めて規制値をつくればいいものを、例によって焦ってやっつけ仕事をするからこのような天文学的2次被害を与えてしまいました。

福島県、茨城県、千葉県は大震災の被災県ですよ。政府が復興を遅らせるようなことをしてどうします。

そしていまや日本製の工業製品までもが国際的風評被害で、放射能フリーの証明書などをつけねば出荷できなくなってしまいました。

風評被害は人災です。その人災をおこしたのは政府です。このことをはっきりと福島県、茨城県、千葉県の農民は心に刻んでおくべきでしょう。

          ゜。°。°。°。°。°。°。°。゜。°。°。°。

資料1 日本農業新聞4月26日

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資料2 産地、品目および検体数の県ごとのまとめ

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資料3 SPEEDI緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステムの観測データ

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■資料4 国開発のシステム 放射能拡散予測 使えず 福島原発 試算2000枚 公表は2枚 「データ不足」と釈明 原子力安全委

 放射性物質の拡散を予測する国の「緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)」で、福島第1原発事故後に2千枚以上の拡散試算図が作成されていたことが18日、分かった。原発事故時の避難対策などに活用することになっているが、所管する原子力安全委員会が公表したのはわずか2枚だけ。国の情報発信の姿勢や防災計画の実効性が問われる上、海外から情報公開が不十分だと受け止められる一因になったとの批判も受けそうだ。
 
 SPEEDIは、原子力安全委員会が原子力施設の防災活動を定めた「防災指針」の関連指針で「大気中に放出された放射性物質の拡散の状況と予測放射線量を迅速に計算して、国および地方公共団体の防災対策に寄与する」と位置付けられている。
 
 しかし、福島第1原発事故で、拡散の試算結果を公表したのは3月23日と4月11日の2回だけ。放射性物質が拡散した後の実測値を基に、既に放出された量と分布を試算したもので、将来の予測はできなかった。原発が電源を失い、予測に必要とされた原子炉や放射性物質に関する情報が入手できなかったからだ。
 
 班目春樹安全委員長は、放射性物質の放出量などの情報を前提にシステムを構築したとし「今回のような(情報不足の)場合には使えない」と不備を認めた。福島県の災害対策本部は「非常に残念。拡散予測がしっかりしていれば、住民の避難にあたって無用な混乱を避けることができた」と指摘する。
 
 ▽「混乱を招く」
 
 正確な拡散予測はできなかったものの、SPEEDIは仮定の条件に基づいた試算を行い、ある程度正確な拡散の傾向を提示していた。
 
 安全委は3月15日に原発2号機で起きた爆発に伴い、大量の放射性物質が放出されたとみているが、その翌日には当日の気象データに基づいて試算。実測値とほぼ同じく、福島県飯舘村や浪江町など原発の北西方向を中心に放射性物質が広がるとの結果を得ていたが、この情報が直ちに公表されることはなかった。
 
 3月23日に初めてSPEEDIの試算結果を公表した際、班目委員長は「こんなことを発表するとかえって社会的混乱を引き起こすのでは。ためらうところがあった」と発言。情報を受ける国民への不信が透けて見えた。
 
 原発事故の深刻度を国際評価尺度(INES)の暫定評価で「レベル7」に引き上げる根拠となった放射性物質の放出量の推計にも、SPEEDIは使われたが、安全委は情報開示を渋った。
 
 欧州の気象、原子力当局が、福島第1原発からの放射性物質の拡散を独自に予測し「放出量が不明のため、実際の拡散濃度とは異なる」などのただし書きを付けて、ウェブサイトで公開していたのとは対照的だ。
 
 ▽開発費128億円
 
 ただ、2006年の北朝鮮の核実験や、00年の三宅島噴火では、SPEEDIによる放射性物質や火山ガスの拡散予測が積極的に公表された。国内事故での消極さは「原子力村」の身内への配慮ではとの勘繰りを招きかねない。
 
 SPEEDIの開発が始まって30年以上。開発・運用費の総額は約128億円に上り、本年度も約7億7千万円の予算を計上。データは自治体と共有することになっており、自治体もシステム整備費などを支出している。関係自治体は最も必要な時に、情報を入手できなかったことになる。
 
 吉岡斉九州大教授は「拡散試算図があるなら多少信頼性に欠けても、説明を尽くし積極的に公表すべきだ。国民は理解できないと決めつけ公表しないのは、原子力行政への批判を恐れているからだ」と指摘。「本来の機能である放射性物質の拡散予測ができなかったことで、根本的な見直しを迫られる」と話した。
(西日本新聞)

資料5 家畜殺処分へ立ち入り始まる 福島の警戒区域
(産経新聞2011.4・.25 )

福島第1原発から半径20キロの警戒区域内で、餌や水を与えられずに死にそうになっている牛や豚、ニワトリなどの殺処分を始めるため、福島県は25日、区域内への立ち入りを始めた。

 原発事故で立ち入りが規制された地域内での殺処分は法律で規定されていないが、県は衛生上の観点から独自に処分を始めた。

 県によると、殺処分のために入るのは南相馬市の小高地区。昨年10月時点で牛887頭、馬80頭、豚約6200頭、ニワトリ約26万羽が飼育されている。県は所有者の同意を得て、死にそうな家畜に限り殺処分する。

 小高地区は津波の被害も受け、91戸ある畜舎のうち損壊、流失したところもある。住民も避難していることから、家畜の所有者と連絡を取るのは困難も予想される。

 県家畜保健衛生所の職員6人が2班に分かれ、放射線量を測りながら作業。警戒区域内は防護服とマスクを着用し、1日の被ばく放射線量の上限を50マイクロシーベルトに定めている。

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コメント

SPEEDI…全くもって宝の持ち腐れです。
パラメーターの入力値で大きく変わるし、あくまで「予測値」だからと官房長官は釈明してましたが、遅くとも米軍の測定値が出た時点で極めて類似していたのだから、そこで手を打つべきでした。

わが県でも少ないながら作物の放射線測定を実施しましたが、あくまで「大丈夫な証拠」を出すためのやっつけ仕事な感じでしたね。
県内満遍なくだからと、庄内地方北部のネギなんぞ測定しても全く意味がないだろうと。

投稿: 山形 | 2011年4月26日 (火) 08時33分

風評被害は人災、それも「政災・菅災・首災」そして振り回される被災者や避難者、消費者までも巻き込んでしまいました。
併せて、お金に換えられない家畜達の「命」までも・・・
何も言いようがありません・・・・・
「国は東電と共にお金は出すから、地方自治体で現場に即して、復旧・復興をしてくれ」と言った方が、スムーズに且つスピーディに物事は動くのではないでしょうか?
下手に権限を持っているから、中途半端な動きになっているように見えます。
ま、現状では「菅」の首を挿げ替えても、まともな議員はいませんから、期待できないでしょう。
平常時は政治ショウを演じていても良いのかも知れませんが、非常時にはさっぱり役に立たない事が露呈してしまいました。
(ほとんどの国民は分かってはいたとは思うが)
こんな事言っても返ってくる言葉は、「選んだ国民の責任」ですから・・・・・

昨夜の宮崎における「疑いが否定できない症状」に関して、陰性だった事は本当にホッとしました。
農水省の立ち上がりが早かったので、「これは本物か!!」と驚きましたが・・・安心しました。

投稿: 北海道 | 2011年4月26日 (火) 10時03分

 
暫定基準は、原子力発電所の防災対策の一環として用意されていた
「飲食物摂取制限に関する指標」をほとんどそのまま食品の基準として適用したもので、
急ごしらえで作られたわけではありません。

むろん、その内容や運用についてはいろんなご意見があるでしょう。

但し、「暫定基準がいいかげんだ」という主張が広まれば、
その基準によって守られたはずの食品の安全性への疑問も広がることになり、
結果として風評被害が広がるかも知れないということを、私は心配します。

投稿: コンタン | 2011年4月26日 (火) 12時23分

今回のコンタンさんの意見に同意します。

投稿: 山形 | 2011年4月26日 (火) 13時46分

私はおふたりのご意見にまったく同意できかねます。

コンタン氏の言うことはただの形式論議でしかなく、現状をまったく把握していない机上の議論です。これは大学の演習ではないのです。私たちの生活がかかっている生存権、生活権がかかったテーマなのです。

急拵えであったことはまがうことなくその「暫定」という言葉自体が示しています。またそのようにあわてて作られたことは、厚労省副大臣自ら発言しています。

そしてこの指示が総理自身が出したことも複数のソースが報道しています。

私は「いらない」と言っているわけではないのは、このブログをよく読まれていると思われるコンタン氏はご存じですね。

また基準値を下げろという農業団体の意見にも反対だと言うこともご存じですね。いったん作られれば悪法も法です。下げたならば農業者の横車だと疑われます。

私はこのように巨大な傷跡を残す法律は、丁寧に作れと言っているのです。

急拵えのためにあまりにも大きな矛盾を作ってしまいました。私の所属する農業団体など三月は売り上げがほとんどない有り様です。村全体の農産物出荷は最悪な時期は10分の1にまでなりました。

政府は私たちに死ねというつもりなのでしょうか?菅首相のおもいつきで私たちの運命を左右しないでほしい。

私たち農業者はこの暫定規制値を心底憎んでいます。

当初はなんと県が規制単位でした。もし北海道ならば、函館で引っかかれば、稚内まで出荷停止となるのです。こんな馬鹿げた枠組みなどありえません。

魚類など植物である野菜の規制値をそのままもってくる始末です。このどこに科学的根拠がありますか。

あるいは、出荷自粛の段階では、自粛というとおり単なる「お願い」でした。
ただ内閣総理大臣名で出されたので、かぎりなく「強制」でした。

ところが末端によく知らされないうちに「出荷規制」に変わりました。今月あった多古市の「違法出荷事件」はそのために起きた事件です。

あの事件の農家は私もよく知る人です。作っているのは有機農産物です。

報道ではほとんど悪徳農家呼ばわりです。いったい彼が悪いのか、それともこのような農家を痛めつける悪法を作った政府が悪いのか、どちらなのですか?

コンタン氏と山形氏は、それへの批判もまた「疑問が拡がるから」だめと言うわけでしょうか。やや驚きました。

じゃあ、私たち農家は口に腐った野菜を詰め込んで黙って死ねということですかね。

投稿: 管理人 | 2011年4月26日 (火) 15時14分

「原発事故は起こらない」事を前提にして、これまで推進してきたツケが、いわゆる想定外(もう聞き飽きましたが)の地震や津波で発生してしまった為、何もかにもが付け焼刃での対応になっていると思います。
昨日から始まった家畜の安楽死についても、家伝法の様な補償も何もありません。(補償すると言ってはいますが、国費を投入するのにその基準もありません)
暫定基準値も濱田様が仰る通りで、あくまでも暫定基準値です。その基準を決めるのに、どこかにあった基準をそのまま適用したとは思いますが、取敢えずどこかで基準以上が検出されたら、県内丸ごと網をかけてしまえ!!と言うのはあまりにも乱暴なやり方であると思っています。
一説には、生産者側から、「どうせ○○県産となったら風評被害で購入されないのだから、県全体に網をかけてくれ」と言ったとか言わないとかの噂はありましたが、確証はありませんので真偽は不明です。

限られた時間であったとしても、可能な限り地域毎に丁寧な調査をした上で、規制をかけるべきであり、「基準以下だけれど可能なら食しない方が良い」となったら、消費者心理としては手に取る事は無いと思います。
生産者側では「風評被害を吹っ飛ばせ!!」的な事で、市場を開設し必死にPRしています。
テレビを見ていると、消費者は「割安だし購入しました」なんて答えていましたが、応援するなら安く買えた・・ではなく、普通の価格でも購入する事が応援につながると思います。
消費拡大PR時の「無料配付」に群がる人々をイメージしたのは私だけではないと思います。
消費拡大運動時の無料配布や安売りは反対で、何の効果もありません。(試食程度はありですが)
話が横道に逸れてしまいました・・・

投稿: 北海道 | 2011年4月26日 (火) 16時29分

自粛対象のホウレンソウ出荷。ルールは守らなければ千葉県産の農水産物は信用を失うのではないでしょうか?

投稿: 滴 | 2011年4月27日 (水) 03時08分

そのとおりです。ルールは悪法でもルールです。ですから彼は社会的制裁を受けています。しかし、それには理由があるのだということを知っていただきたくてあえて書きました。

投稿: 管理人 | 2011年4月27日 (水) 08時15分

風評と一概に方付けてはいけない。
出荷停止を知っていて販売する"やから"がいるから
消費者が警戒するのは良識であり「良い選択」なのです。
こと食品に関しては産地・生産日・期限など後を絶たない問題が多発して信頼が置けないので自主規制しているのでする。そういう私も同じほうれん草を買うならできるだけ原発から離れた地域の物を選択するでしょう。現に千葉産も安心ではなかった訳ですから。これでも風評ですか?。食品を販売する者は自ら「販売する物の安全性を確認」するのが当たり前の話では無いでしょうか。我が国の農業や水産業にはその自覚を求めます。

投稿: sato | 2011年4月27日 (水) 17時20分

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