つくば市の福島避難者に対する軽挙は恥ずかしい
上の扉写真は出荷できなかった茨城県産のホウレンソウです。ようやく先日出荷解除になったのですが、出荷時期を1カ月も逃してしまったために徒長してしまい廃棄せざるをえませんでした。
県全体を出荷自粛(実は強制)にするという無茶苦茶な政府方針により、ひとつの県丸ごとが出荷不可能になりました。そしてホウレンソウ、牛乳、かきなに止まらず、ありとあらゆる農畜産物が風評被害の嵐に投げ込まれました。
そして放射性汚染水を大量に海水に通告なしに放出するという前代未聞の政府・東電の行為によって茨城の漁業は 未だ出漁すらできない状況に追い込まれました。
わが県は「放射能汚染の県」として刻印されたのです。このことは茨城県民は、農民でなくとも屈辱として記憶に新しいはずです。
そのわが県のつくば市が、同じ原発事故に苦しむ福島県からの避難者にスクリーニング証明を出せと要求しました。(資料1参照)
このつくば市の動きには、茨城県からの指示がありました。茨城県の指示はこのような内容です。(資料2・3参照)
①福島県からの避難民を受け入れる各自治体に対して放射性物質が付着していることを想定して、脱衣や除染を優先的に行うように指示した。
②スクリーニング検査(*)を受けるかどうかは避難民の自主的判断とした。
*スクリーニングscreening・ふるいわけ・適格審査・この場合は被曝検査を指す。
③ただし、福島第1原発から半径20㎞以上に住んでいた人はその対象としない。
一読すればわかるように、至ってまっとうな内容です。むしろ県の意図したことは、20㎞圏内からの避難者への健康不安に対する健康サービスの提供と思われます。
またスクリーニング検査(被曝検査)も「どうしても心配な方は受けることができますよ」といった配慮であって、義務ではありませんし、ましてや転入処理の前提ではありません。
ところがこの受け入れ県としてはしごく妥当な県指示が、つくば市に行くとこうなります。(資料3参照)
①つくば市は、福島県からの避難者に対して20㎞圏内であるか否かを問わず無条件にスクリーニング検査を受けることを要求した。福島県からの人に限らず、仙台からの転入者にも要求した。
②このつくば市の要求は、スクリーニング検査を受けなければ通常の転入手続きに入れないために事実上の強制的検査である。
つくば市の措置は過剰な逸脱です。県は市に対してこのような20㎞圏外の人たちにスクリーニング検査をすることなど義務づけていません。あくまで「それでも心配な方は受けられますよ」という配慮にすぎません。
スクリーニング検査を避難者や県外者の転入にまで義務づけていた(*現在は批判を受けて廃止)となると、つくば市の常識を疑いたくなります。
とうぜんのことながら、万が一被曝していたとしてもそれによって他の人に被曝を感染することなど絶対にありえません。被曝は感染症でないことなど放射性医学のイの字ではないですか。
研究学園都市の名が泣きます。放射性医学の専門家など山ほどつくば市にはいるでしょうに、なぜ彼らの意見を聞かなかったのでしょうか。
たしかに避難区域では衣服への付着の可能性がわずかではありえます。しかし仮にあったとしても、それは既に福島県で既に脱衣、除染されているはずです。
それまるで感染症の流行と同一視して、スクリーニング検査を福島からの避難者すべてに義務づけるなど差別を助長すると言われても、つくば市は返す言葉がないでしょう。
私は差別事件と仰々しく叫ぶつもりはありませんが、12年前の東海村臨界事故の時に、「水戸」ナンバーをつけているだけで他県から「放射能がうつる」と言われたことをもう忘れたのですか。
よしんば感染症であったとしても、それが感染を移すかどうか、いかなる対策をとればいいのかの判断には、長い時間と多くの知見が必要なことはハンセン氏病やHIV対策での苦い経験でした。
市民からの不安の声があったと言い訳しているようですが、そのような風評を許さず正しい放射性医学に対する知識を広めるのが市当局の仕事ではないですか。それを市当局が率先して軽挙してどうします。
このようなつくば市の心ない行為は、共に原発災害と闘っている福島県民の心を傷つけました。私は茨城県民のひとりとして大変に申し訳なく思います。
私たち茨城県と福島県は、程度の差はあっても同じようI大震災を受け、その後の原発事故と余震で苦しめられ続けています。その意味で兄弟県のようなものだと思っています。
私たちはたいしたことは出来ませんが、避難されてきた方には最大限のことをするつもりでおります。
一緒に歩きましょう。
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■資料1 つくば市は「過剰反応」=転入者への放射能検査要求-枝野官房長官
茨城県つくば市が、福島第1原発事故で福島県から避難してきた転入者に放射能汚染検査の証明書を提示するよう求めていたことが19日分かった。
枝野幸男官房長官は同日午前の記者会見で「原子炉からは放射性物質は出ているが、人や服装に付着して外に出ることはないように管理している。客観的に見て明らかに過剰な反応だ」と同市の対応を批判した。
また、「福島の皆さんは避難を余儀なくされたり、風評被害を受けて苦労している。避難している方、あるいは安全が確認されている福島県産品などを温かく受け止めてほしい」と語った。
同市は転入者からの抗議を受け、検査を求めないことにしたという。2011/04/19
■資料2 茨城県庁 福島県から避難された方への放射線影響に関する留意事項
1.避難指示の対象外の方(福島第一原発から半径20km以上離れている)や、福島県ですでに検査を済ませた方には、被ばく検査(表面汚染検査)は必要ありません。
理由 放射線医学総合研究所で一昨日、昨日と東京電力や付近で作業をしていた方の被ばくの検査を行いましたが、これまで除染が必要となるような被ばくをしている方は一人もいらっしゃいませんでした。(放医研HPより)
2.福島第一原発から20km以内の方でも、すでに茨城県内に避難された住民の方々が、健康に影響を与えるような量の放射性物質に汚染された可能性はほとんどありませんが、微量の放射線物質が付着していることも想定して、まずは脱衣・除染を行ってください。
3.脱衣や除染が終わってもどうしても心配な方は、被ばく検査(表面汚染検査)を受けることもできます。
検査は、急ぐものではなく、夜遅い場合は翌日でも大丈夫です。
2011年3月18日 茨城県HPhttp://www.pref.ibaraki.jp/important2/20110311eq/20110318_17/
■資料3 つくば市が福島からの避難者差別「放射線検査証明書出せ」
福島第1原発の事故後に福島県から避難し、茨城県つくば市が同市に転入する人に対し、放射線の影響を調べるスクリーニング検査を受けるよう求めたり、受けたことを証明する書類の提出を求めていたことが19日、分かった。県や市には地域住民から「避難者にスクリーニング検査を強制しろ」などの声も出ているが、閣僚からはつくば市の対応に批判が相次いだ。
この日会見したつくば市の市原健一市長は「配慮が足りず、誤解を与え、申し訳ない。これからも避難者を受け入れる」と謝罪した。一方で「避難者と受け入れ側の安全と安心のため、汚染がないと確認する必要がある」と述べ、強制と受け取られないよう配慮し、避難者に検査を勧めていく考えを明らかにした。
つくば市によると、3月17日に市民課長名で転入手続きに訪れた人に放射線の影響を調べるスクリーニング検査の証明書の提示を求めるよう指示。文書では「土浦保健所にて、放射線に関する検査を受けていただく。検査終了後、問題がなければ、通常の手続き」と明記している。証明書は市内6か所に配布された。
今月11日になってつくば市内の研究機関に就職するため、仙台市から転居してきた男性(33)が証明書の提示を求められ、県と市に苦情を訴え、発覚した。
茨城県では、福島県からの避難者を受け入れる同県の各市町村に対し、放射性物質が付着していることを想定して、脱衣や除染を優先的に行うよう指示。スクリーニング検査を受けるかどうかは自主的な判断に任せているが、検査証明書を希望する避難者も多いという。県は「住民からは『避難者へのスクリーニング検査を必ずやってほしい』という声も出ているが、検査は強制ではない」と話した。
これに対し、政府の被災者生活支援特別対策本部は証明書提出について「風評被害の一つのようなもの。避難している人の気持ちを考えるべきだ」と市の対応を批判。玄葉光一郎国家戦略担当相(衆院福島3区)は福島県から他県に転出した子供が「放射能がついている」といじめに遭ったケースを紹介し、「人への風評被害が起きている」と指摘。「福島県民は冷静さを保って行動しているが、一部の心ない方の対応は本当に残念だ」と述べた。
枝野幸男官房長官は「明らかな過剰反応だ」とし、「福島県民は避難や風評被害で苦しんでいる。温かく受け止めてほしい」と呼び掛けた。
(報知 2011年4月20日)
■つくば市が福島県からの避難者に放射線検査要請
東京電力福島第1原発の事故後に福島県から避難し、茨城県つくば市に転入しようとした人に対し、市が放射線の影響を調べるスクリーニングを受けることを求めたり、受けたことを証明する書類の提出を求めていたことが19日、分かった。
市原健一市長は「配慮が足りず誤解を与え申し訳ない。これからも避難者を受け入れる」と謝罪する一方、「避難者と受け入れ側の安心と安全のため、汚染がないと確認する必要がある」と述べ、強制はしないが、今後も避難者に検査を勧める考えを明らかにした。
政府の被災者生活支援特別対策本部は、証明書類の提出について「風評被害の一つのようなもの。避難した人の気持ちを考えるべきだ」と市の対応を批判している。
つくば市によると、検査を要請した文書は市民課が作成し、転入者を受け付ける「窓口センター」に課長名で3月17日に通達された。福島県から避難して市に転入する人について「(県内の)土浦保健所にて、放射線に関する検査をしていただく。検査終了後問題がなければ、通常の手続き」と明記している。
今月11日、つくば市内の研究機関に就職するため、仙台市から転居してきた男性(33)が証明書の提示を求められ、県と市に苦情を訴えたために発覚した。
スクリーニングをめぐっては3月、屋内退避の30キロ圏内の女性が、避難先の神奈川県で母親を介護施設に入所させようとして、証明書類がないとして一時断られたことが明らかになっている。
(2011年4月19日)
国立がん研究センターは、福島県の東京電力福島第1原発付近に住む人たちの不安を解消するため、日常的に放射線を取り扱う医療従事者が使用している「個人被曝(ひばく)線量計」(ガラス線量計)約2万個を住民に配布するとした、国などへの提案書をまとめた。
国立がん研究センターの説明では、ガラス線量計は放射線を扱う医療従事者が毎日、白衣の胸ポケットなどにバッジのように着けて使用する。一定期間使用してから検査機関に送ると、約2週間後に使用期間に浴びた放射線量が計測されて戻ってくる。電子線量計のように、リアルタイムで放射線量を測定することはできないという。
現在、自治体などが発表しているのは地域ごとの放射線量。ガラス線量計を使えば、個人の被曝量を知ることができる。数値が低ければ安心につながり、逆に高ければ避難を行うなど、データに基づいた行動も可能になるという。
同センターによると、メーカー在庫などを考慮すると2万個程度を供給することが可能だ。1回の検査費用は約3千円で、仮に2万人が年4回の検査を行うと2億4千万円が必要となる。検査結果は、将来の被曝医療研究に役立てることも可能という。
製造メーカーの千代田テクノルによると一般向けの販売は行っておらず、主に自治体や医療機関向けに販売しているという。
国立がん研究センターの嘉山孝正理事長は「医療関係者も、この検査結果を見ることで安心して医療を行っている。安心のために使う2億4千万円は決して高額ではないはずだ」と訴えている。
(産経新聞4月19日)
■積算被ばく線量予測図公表 北西40~50キロで20ミリシーベルトの恐れ 米エネルギー省
米エネルギー省は19日までに、福島第1原発の周辺地域に1年間とどまった場合の被ばく線量の予測図を発表した。
原発から北西方向に40~50キロにわたり、1年間の積算線量が20ミリシーベルトを超える恐れがある地域が広がっている。航空機を使った観測データに基づくもので、人が屋内にいても被ばく量は減少しないと仮定して計算したとしている。
日本政府は、積算線量が20ミリシーベルトに達する恐れがある地域を「計画的避難区域」に指定することを決めている。(共同)
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[追記]
つくば市の放射線検査要求はマスコミによる曲解報道のようです
かなりの方が叩いていらっしゃいましたが、事実は少々違うようです。
放射線差別があるはず!という無意識に動かされてはいませんか?
つくば市は、震災直後から福島からの避難者を受け入れ、避難者の十倍以上のボランティア希望者が様々な支援を申し出ていました。そうした事実はご存じですか?
放射線検査に対して意義を申し立てたのは福島からの避難者ではなく、他県民であることはご存じですか?
叩く前にソースを確かめて下さい。
そして、当事者の気持ちをよくお考え下さい。
でも、つくば市民は、誰もが、差別感情など抱いていないと言っています。
避難してきた福島県民も、差別されたと主張している方は、私の周囲では見当たりません。
差別が本当にあったなら憤るべきでしょうが、単なる誤解なら、他県民が差別だと騒ぎ立てることで、避難者もつらい思いをするのではありませんか?
誰も差別感情など抱いていないのに、周囲の声に押されて、差別されたのだと誤解し、傷ついてしまう可能性だってあるのです。
報道による誤解と偏見が蔓延している状況を見ていると、
避難者を受け入れ支援しようと頑張ってきたつくば市民の皆様のお心を思ってつらくなると同時に、
避難してきた福島の方々のご心痛が増すばかりなのではないかと、それも心配です。
手続き上のミスについては、つくば市は謝罪しています。
でも、差別感情は、存在していないのです。
皆様、よくお考え下さい。
本当に大切なのは、なんですか?
皆様の糾弾の声がもたらすものはなんだか、想像してみて下さい。
それと。
福島県民の皆様。
野菜王国茨城の県民にとっては、福島県は、風評戦争の戦友です。
差別感情なんて抱いていません。安心して下さい。
がんばれ、福島!
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無知が作り出した悲劇、人の尊厳を軽視した対応となったのでしょう。農畜産物への風評被害と共に、人に対する風評はもっとも残念な事象であります。
正しい知識、正しい情報の重要性を再認識させられました。
情報を出す側の責任でしょう。
いくらACのCMで「心は見えないけれど・・・、想いは見えないけれど・・・」と呆れるほど流されていても、行政は中々血が通った事は出来ないのですね。
大人はまだしも、子供たちがそのような対応をされた時の心理はただ事ではなく、いつまでもトラウマとして残ってしまう事が心配です。
明るい笑顔で無邪気に遊んでいる・・・そんな普通の生活をする最低の権利も認めてあげられない大人の対応を今一度考えて欲しいと思わせられた、本日の記事であり、報道でした。
投稿: 北海道 | 2011年4月21日 (木) 13時50分
青空です。
本来であれば放射能汚染が高いほど一刻も早く迎え入れ丁寧に除染をし、今後の健康被害がでないように手を尽くすという趣旨だったでしょうに。
しかし気になるのは、問題のある汚染レベルだったら福島に追い返したのでしょうか。それでは本末転倒になってしまいます。
つくば市の対応は残念に思います。
しかし似たような案件は川崎市の瓦礫処理場や各地の宿泊施設などでも散見されています。
鳥インフルも口蹄疫でも情報不足がより深刻な混乱と事態の悪化を招くという教訓が生かされていません。
情報提供は最も情報を持っており、専門家を擁している政府の責任ですがまるで履行されていないということでしょう。
しかし、茨城県民、また県行政、各市町村とも差別的な意向は持ち合わていないと感じています。むしろ積極的に福島を支援しています。現場の自治体職員もその思いは変わらないでしょう。急場作りの行政通達作成者が状況をよく飲み込めなかったという齟齬による現場の混乱だと思っています。
関連の通達も取り下げ既に謝罪しています。実際放射能問題で追い返した茨城県自治体は存在しません。
本来、政府が全面的にバックアップし各自治体をサポートしていれば、関連通達はネガチェックされているはずです。各県市町村には各省庁の政府人員は配備されていないということなのでしょう。
ここに至っても自治体丸投げとは、枝野氏が記者会見で初めて知った風な発言をし、つくば市を非難するとは白々しいにも程があります。情報提供を行った主犯格だと感じるのですが。
悲しくもあの記者会見が政府はまるでフォローできていないと自ら認めたという構図です。
つくば市には民主党の市議も県議も国会議員もいるはずですが、だれも問題視せず、全く動かなかったということの証明でもあります。あきれた国民第一、政治主導だと感じました。
投稿: 青空 | 2011年4月21日 (木) 21時55分
つくば市として検査や証明を要求した事実はないので、これらの報道は誤報に近いもののようです。
但し、一部の職員がスクリーニング検査を要求した事実はあったようです。
「つくば市 放射線 誤報」などで検索するといろいろ出てきます。
投稿: コンタン | 2011年4月22日 (金) 10時59分
福島県の営農が再開できない農家を中国に営農再開する農業推進事業
■ 主旨:
福島第一原子力発電所事故以来、福島県の農業・畜産業・漁業が大きなダメージを受けました。福島県の営農が再開できない農家に新しい道を打開するため、中国江蘇省如東県に営農再開推進事業を展開します。
■ 概要:
1・福島県の営農が再開できない農家が主体として、福島県に農業法人を設置します。
2.福島県の営農が再開できない農家を雇い、中国江蘇省如東県に農産物を生産します。
3.生産した農産物を福島県内に販売します。
投稿: 高木 道文 | 2014年11月22日 (土) 20時41分