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« 足柄の新茶からセシウム検出される        | トップページ | 菅首相は福島原発の視察前にSPEEDI情報を知っていた »

2011年5月19日 (木)

菅首相は発電-送電の分離を言いだす前にやるべきことがいっぱいあるんじゃないかと思う

_edited  

昨夜、菅首相は記者会見で原子力行政についてそうとうに突っ込んだことを言い出しました。正直たまげています。

要点は3ツです。
①原子力安全保安院の経済産業省からの分離など原子力行政の見直しをする。
②点検中の原発で、安全性が確認されたものは稼働を認める。
③電源供給のあり方、地域独占の形などについて議論する必要がある。

この発言が菅直人という、私がこの世の中広しといえど一番信用していない人物の口から語られたのでなければ、まずまずの進歩だと思ったことでしょう。

まず第1の安全保安院、そして首相は言及しませんでしたが、内閣府原子力安全委員会も監督官庁でありながら、福島第1の危険性を見逃し、事故対応に失敗したのみならず、事実を長期にわたって隠匿し続けた責任は問われて当然です。

ただし、首相はこれを保安院の経産省からの分離という最小限の改革で押しとどめている気配がします。

原子力行政は、自民党時代からの積年の膿のようなもので、経産省資源エネルギー庁長官が東電に天下っているようなことにうかがえる政-財-官-労の癒着構造そのものでした。

もし首相が本気で原子力行政を刷新する気なら、保安院の分離程度ではおさまらず、経産省や、そして首相のお膝元の民主党内部にも多数いる東電労組・電力総連出身議員をも相手に返り血を浴びる覚悟がいるでしょう。

保安院分離が、原子力行政の抜本的見直しにつながる一里塚ではなく、単なる小手先のトカゲの尻尾切りになるなら何の意味もありません。

第2に、点検中の原発が安全とわかり次第稼働を認めるということですが、その安全の基準とはそれこそ今回福島第1で破綻した安全基準なわけです。破綻した基準をクリアしたからといって「稼働を認める」とはこれいかに。

極限すれば、原発安全基準など2ツ改正すればいいのです。ひとつは原発が15mの津波に耐えうること、ふたつめはマグネチュード9に耐え得ることです。

クロウトの「原子村」の先生方はどう思っているかは知りませんが、国民はそう思っています。原子力行政の組織いじりなどするよりそのほうが遥かに国民にとって見えやすい。

そしてもう一点、さっさと正式な第三者機関による事故調査委員会を立ち上げてください。よもや、信頼性のかけらもない安全委員会や保安院にやらせようなどと思っていないでしょうね。

第3に、原子力行政の改革とは、そのまま電力事業の再編を意味します。首相は私のブログでも読んだのか(わけねぇか)発電-送電の分離を言い始めました。

冒頭でも書きましたが、一番味方にしたくない御仁が言い出すとなると複雑な心境です(苦笑)。ならば、首相は東電という巨大企業が独占的に有している発電-送電の地域独占まで手をつけるということですね。

だったら立派だ。しかし、これをするとなるとつい最近作った原子力災害救済に名を借りた東電救済のスキーム(枠組み)が根底から崩れてしまいますが、そのことに気がついているのでしょうか。

今回の救済の肝は、被災者救済も東電救済もガラガラポンにした「原子力賠償機構」を作ることです。ここに沖電を除く全国の電力会社、金融機関が出資しようというものです。

発電-送電の分離をやるということはこれらの電力会社を事実上解体し、新しい競争市場の真っ只中に放り込むことです。こんなことを電力各社が呑むはずがないじゃないですか。

電力各社は、「電力の安定供給」を旗印にして、競争なき地域独占と、原発がどんなに金食い虫だろうとなんだろうとそのコストをすべて電気料金に上乗せできるという「総括原価方式」で巨利を上げてこられたのです。

どうしてこんなワンダホーな利権を簡単に手放しますか?わけはないじゃありませんか。順番が逆なのですよ。

まずは直近の原子力行政-電力行政の見直しの枠組みを立ててから、原子力災害賠償の仕組みを作り、その後に新たなエネルギー政策の一環として発電-送電の分離などの改革に取りかかるべきなのです。

それを何をトチ狂ったのか、いきなり発電-送電の分離などという事実上の全国電力会社を解体するというに等しいことから提起し始めてしまうとは・・・ハレホレ。

思ったとおり全国の電力会社は強張ってしまいました。そりゃそうだ。「お前ら、東電救済にさえ金出したら、用済みだから解体すっからね」ですもん。こりゃもめるわ。たぶん「原子力賠償機構」の次の会議は大波瀾でしょうな。

今首相がやらねばならないのは、浜岡原発停止で支持率が上がった柳の下の2匹目を狙らうことではなくて、長期の展望を作る努力をすることです。

たとえば、原発事故対応において、なにから手をつけるべきか、だれが危機管理の指揮をとるべきか、その法的権限は何かなどの優先順位の明確化をすることです。

福島原発事故に対して、政府の対応はまるでスラップスティックでした。責任を負うのは、東電対策本部なのか、政府対策本部なのか、安全委員会なのか、保安院なのか、内閣府危機管理監なのか、経済産業大臣なのか、特命補佐官なのか、はたまた首相その人なのか・・・。

国民から見ればなにがなにやら。当人たちさえわかってないだから仕方がないか。指揮系統と責任の所在があいまい。

そしてシャックリのように飛び出す首相の「リーダーシップ」によりいっそう混乱しました。今回もどうもその類のようです。

発電ー送電の分離を言い出したら、今の東電救済スキームそのものが壊れると誰か教えてやらなかったのでしょうか。たぶんこの会見の数時間前に突如思いついたってところでしょうかね、また。

浜岡原発が危険だ、停止しろと「要請」するのならば、本来は次に来るであろう原子力事故にたいしての優先順位を明確にし、官僚機構や電力会社、地方自治体の各部に危機対応指示を優先しなければならなかったでしょう。そのような地道なことをせずにカッコだけつけたがるから困る。

原子力行政ならばやるべきことは山積みです。ざっとシロウトの私が数え上げただけでこんなにあります。

・原子力発電所の現行安全基準の改定と暫定的安全基準の設定。
・浜岡以外にもある柏崎刈羽、伊方、美浜、東海第2などの運転停止。
・核燃料リサイクル政策の見直し。
・原発新規着工の凍結。
・原子力災害被害者の救済の即時仮払いの実施。
・原子力災害の風評被害の救済のための即時仮払いの実施。
・原子力災害の恒久的救済法の設置。
・福島第1原発事故調査委員会の早急な設置。

とまぁ当座の原子力政策を簡単に考えてもこれだけあり、その上で原子力政策=電力行政ですから、電気事業の改革の見取り図も考えるべきでしょう。

その文脈で初めて発電-送電の分離、地域独占の見直しという大きなテーマが出てくるはずです。

思いつきでは無理というものです。

             ゜。°。°。°。°。°。°。°。゜。°。°。°。

 

福島第1原発 菅首相、発・送電の分離検討

毎日新聞 5月18日

菅直人首相は18日、首相官邸で記者会見し、電力大手10社が各地域で独占している発電部門と送配電部門の分離論について「通信事業でも地域独占でない形が生まれている。そういったあり方も含め議論していきたい」と前向きに検討する姿勢を示した。東京電力福島第1原発事故を受け電力会社の経営形態の見直しを求める意見が与野党から出ているが、電力業界の反発は必至。首相は事故の収束と調査の徹底が前提になることも強調した。

 首相は、風力など再生可能な自然エネルギーを基幹エネルギーに加える方針を改めて表明。「自然エネルギーは地域分散型の発電になる。大きな割合で受け入れる時にどういう態勢が新たに必要になるか、今後議論すべきだ」と述べた。大規模な設備投資の必要な原発への依存度を減らし、小規模でも稼働できる自然エネルギーを導入する方向へかじを切ることにより、発送電分離の検討につなげたい考えとみられる。

 首相は原発事故を受け「長年の原子力行政のあり方を根本的に見直さねばならない。近くスタートする事故の調査委員会で、根本的な対策の方向性を見いだしたい」と強調。「原子力を進める立場と、チェックする立場が(原子力)安全・保安院という形で経済産業省に共存していた」と指摘し、保安院の経産省からの独立を検討する考えを示した。

 定期点検で停止したり、再稼働が遅れている原発への対応については「(政府が指示した)緊急的な安全措置がしっかり講じられ、安全性が確認されれば、稼働を認めていくことになる」と述べた。

 原発事故の収束と避難住民の帰宅の見通しについては「遅くとも来年1月中旬までに原子炉を冷温停止させ、安定させたい。そうなれば、どの時期に帰れるか申し上げられる」と述べた。

 11年度第2次補正予算案については「1次補正で不十分ならしっかり検討したい」と述べたが、国会への提出時期は明言を避けた。会期延長については「現時点で結論を出しているわけではない」と述べるにとどめた。【田中成之】

 ◇電力各社の反発必至

 菅首相が18日の会見で、電力事業の地域独占見直しや発電部門と送配電部門の分離(発送電分離)について検討する考えを示唆したことで、日本の電力事業のあり方が抜本的に変わる可能性が出てきた。地域独占で利益が事実上保証されてきた電力業界に、本格的な競争が導入されることになれば、電力会社の収益が低下することは必至。電力各社は「安定的な電力供給に支障が出る」と反発を強めており、実現するかどうかはまだ見えない状況だ。

 東電の発送電分離を巡っては、枝野幸男官房長官が16日の記者会見で「選択肢としては十分ありうる」と言及。政府内では、東電を発電部門と送電部門に分離し、いずれかを売却して賠償の財源に充てる案が浮上している模様だ。

 発送電分離は、01年ごろの電力自由化論議の中で議論されたが、「発送電の一貫体制が崩れれば、電力の安定供給にも支障が生じかねない」とする電力会社の猛反発で立ち消えとなった経緯がある。欧州では、複数の発電会社が送電会社に電気を売却する形態が普及。発電会社は競争状態にさらされるため、電気料金引き下げにつながると期待する声がある。

 日本では、電力10社が地域ごとの独占状態を維持し、電気料金も必要なコストに一定の利益を上乗せする「総括原価方式」で決められている。東電での発送電分離を手始めに電力各社で分離が進めば、電気料金の下落圧力が強まるため、電力会社の反発は必至だ。

 東電や金融機関などは「地域独占は原発事故と関係ないのに、唐突な議論だ」と反対する姿勢を強めている。また、東電を分離した場合、独占状態に比べて収益力が低下し、賠償責任を引き継いだ会社が負担に耐えられなくなる懸念もある。

 東電が発行する社債や株式の価値低下も予想されるため、東電は最大8000億円規模の資産売却や年間2000億円程度のコスト削減などの合理化を実施し、現在の経営形態を維持したい考えだ。

 また、東電の賠償負担を支援する「原発賠償機構(仮称)」への負担金拠出に応じる方針を固めている他の電力会社も、「現行の経営形態が維持できないなら話は別。首相は何を考えているのか」(西日本の電力会社幹部)と困惑している。

 菅政権は長年高コスト体質の元凶とされてきた地域独占に切り込むことで政権浮揚につなげたい考えと見られるが、電力業界も「死活問題」ととらえて一歩も引かない構えだ。地域独占が崩れた場合、建設や使用済み核燃料の最終処分に巨額の費用がかかる原発を、新規参入する発電会社が引き受けられるのかという課題もある。

 国のエネルギー政策と直結する議論のため、曲折が予想される。【 菅直人首相は18日、官邸で記者会見し、近く発足する東京電力福島第1原子力発電所事故を検証する調査特別委員会で「原子力行政の在り方も検討し、根本的な改革の方向性を見いだしたい」と述べ、原子力行政の見直しを検討する考えを表明した。具体的には、現在の電力供給体制について「地域独占ではない形の在り方も含めて議論する段階が来るだろう」と述べ、地域独占を見直す可能性に言及。電力各社や経済界が慎重な姿勢を示している発電と送電部門の分離についても「今後のエネルギー基本計画を考える中で議論すべきだ」と、議論の対象とするとの考えを示した。

 発送電分離は、枝野幸男官房長官、玄葉光一郎国家戦略担当相(民主党政調会長)、蓮舫節電啓発担当相が検討の可能性に言及しており、「分離論」が政府内で拡大した形だ。

 原子力行政では「チェック機関と推進の立場が、同じ役所に共存していた」と指摘。原子力安全・保安院の経済産業省からの分離、独立を視野に入れた検討が必要との認識を示した。

 原発推進を明記した「エネルギー基本計画」は、白紙で見直す考えを強調する一方、「個別の核燃料サイクル事業を見直すと言っているわけではない」とも語った。今後のエネルギー政策では「環境エネルギー先進国としてリーダーの役割を果たせるようにしたい」と意欲を見せた。

 定期点検中の原発については「安全措置が講じられ安全が確認されたものは稼働を認める」と述べた。

 今国会に平成23年度第2次補正予算案を提出するかどうかには「1次補正予算で不十分となれば考えないといけない」と含みを持たせた。その上で「別の目的で考えているのではない」と政権の延命意識はないと強調。国会の会期延長についても「現時点で結論を出していない」と述べるにとどめた。

 首相は5月21、22日に東京で行われる日中韓首脳会談のため来日する中国の温家宝首相と韓国の李明博大統領が、21日に東日本大震災の被災地を訪問すると発表した。福島市内の避難所を訪れる。

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コメント

その通りですが、
あくまで東電の巨大資産としての送電網の売却→損害補償に充てる一環としてはアリだと思います。
法律改正も必要になりますし、困難もともなうことでしょうが…。

他の電力会社にもなし崩しに波及するのかどうかは分かりませんです。

全体を見渡す能力が乏しい。各々の問題がどの様に絡み合っているのか捉える能力が乏しい。思いついた事を直ぐに口に出してしまう。すぐ切れる。

おそらく、彼は発達障害の一種でしょう。それはそれでひとつの個性で長所もたくさん有るのでしょうが、厳しい現在の状況の中で、周りをひっかき回しているばかりで、本当に困ったリーダーです。

彼の執心している自然エネルギーの導入には発電-送電の分離が必要なんだと、周りの人から言われて、今回の発言があるのでしょう。

東京在住ですが、この件に関して農業に従事していらっしゃる方のことを思うと、いたたまれない気持ちになります。大変でしょうがなるべく早く解決策が見つかる様にと思います。
私は今回の件はほとんどが東電の責任であると思っているので、菅首相の案の1は絶対に必要だと思います。
私は、今回の福島の件で初めてチェルノブイリの本や当時の「世界」を読んでいるのですが、1988年5月の資料を読むと当時から安全保安院、原子力安全委員原子力安全委員会、通産省の大部分が、原子力推進派の少数の学者(私に言わせればエセ学者)がすべてを兼任していたことがわかります。また、88年の時点で福島第一原発は従業員の放射線漏れ事故の40%をしめる問題のある原発であり、警笛を鳴らしている人がいたこともわかります。当時は電力も余っていたのに、どんどん原子力発電所を増やしてきたのは、その間の政府との癒着があったからです。現在日本の電力会社は独占企業なので、お金はいくらでもあります。広告費をたくさん使うことでマスコミもコントロールできるし、また政党との癒着で、本来防ぐことができた事故に対する対策を20年間も放置していたことが今回の一番の原因ではないかと思います。
すべてを今の民主党政府のせいにするのは、まさに東電の思う壺ではないでしょうか。彼らの癒着は自民党との方が強いのですから。沖縄の基地の問題にしても、同様の印象を受けます。
すごくたくさん書いてしまい、ごめんなさい。ブログを読んで非常にIntelectualな方だな、と思ったので。1988年5月号の「世界」をお勧めします。図書館にはあると思います。

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