菅首相は福島原発の視察前にSPEEDI情報を知っていた
今日は別なことを書くつもりでしたが、いきなりあ~あという記事を読んでしまって、そちら取り上げることにします。
予想どおりでしたが、3月12日未明の段階で、官邸にはSPEEDI(緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム)のデータが伝えられていたようです。
「東京電力福島第1原発事故の発生直後の3月12日未明、放射性物質が原発の海側に向かうことを示す「緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム」(SPEEDI)の予測図が首相官邸に届けられていたことが19日、分かった。民主党の川内博史衆院科学技術特別委員長や政府関係者が明らかにした。
(時事通信5月19日)
これを暴露したのは民主党の川内博史衆院科学技術特別委員長などの政府関係者だそうです。いわば身内からの「告発」ですね。
このSPEEDIは、肝心な今回の福島原発事故に際してまったくスピーディではない使われ方をして、とんだ税金の無駄遣いとなってしまった可哀相な奴です。泣くな、SPEEDI!
聞く限りはなかなのもので、スパコンにより全国の原子力施設の周辺地形や性能などが膨大にインプットされており、いったん原発事故が発生し場合、放出された放射性物質の拡散を、気象庁のアメダスと連動して、風向や風速、気温などを考慮しながら計算し図形化していきます。
最大79時間後までの飛散を予測する能力を持っているそうでたいしたものですが、今回ただのアニメーションのオモチャでした。
これはSPEEDIのせいではなく、それを扱った政府のせいでした。SPEEDIは忠実に事故直後の3月11日17時から動き始めたものの、最初の拡散予測図が公表されたのはそれから遅れること12日後の3月23日でした。
その後4月11日に2枚目が公表されたにとどまっていますが、実は2千枚とも3千枚ともいわれる拡散図をSPEEDIは作っていました。これらの全貌はいまだ未公開です。おおよそ原子力事故が起きた先進国の出来事ではないですね。
東電は3月12日に1号機、3号機、翌13日には2号機でベントと水素爆発をしています。そして15日には三度めの放射能除去フィルターを通さないドライ・ベントと水素爆発をおこしています。
この15日のドライ・ベントと水素爆発が大量の放射性物質を環境中に放出しました。わが県の環境放射線量もこの日を境に急激に上昇しています。
また、先日の神奈川、栃木のお茶からも検出されたセシウムもこの時のものだと思われ、実に神奈川など300㌔の距離を飛散していたことです。
もしこのSPEEDIが適切に使わていたのなら、放射性物質が原発から同心円的にジワジワ広がっていくものではなく、当初からSPEEDIが予想していたように、その時の気象条件や地形によって大きく左右されるものだとわかっていたでしょう。
下のSPEEDIの図を見れば、同心円の避難地域を大きくはみ出して40㌔地域の飯館村などが放射性物質の飛散地域であることが分かっていたはずです。
逆に30㌔避難区域でも飛散が見られない地域も多数存在しています。
通常欧米ではこのような場合、最大80㎞範囲の避難を指定し、政府の全力を上げて住民を避難をさせた後に、詳細な放射線量のモニタリングをして、安全な場所には避難民を逐次帰還させていくそうです。
我が国では20キロ→30㌔→計画的避難区域→警戒区域と、まぁ猫目のようにくるくると政府指示が変化していきました。放射線量自体は15日移行大きな変化は見られていないのにです。
さて、問題はこの初動の段階で政府がSPEEDI情報を知り得ていたかです。今までは関係自治体の証言から知っていたと思われていましたが、なにぶん政府はあの調子で、隠しおおせられるなら墓場までという人たちらしいので、よくわかっていませんでした。
この関係自治体とは福島県で、福島県災害対策本部原子力班によれば、「当初からSPEEDIの拡散図は送られてきてはいたが、公表については政府の原子力安全委員会が決めるので、自治体が勝手に公表してはならない」と命じられたそうです。
ちなみに、従来まではSPEEDIは文科省の所管でしたが、なぜかドライベントが行われた直後の16日に内閣府原子力安全委員会に所管替えとなっています。
今回の川内議員の言うことをみると、3日月12日午前1時12分には官邸にこのSPEEDI情報は届けられており、初回のベントが行われた場合の拡散予想図も届けられていたそうです。
それによると、「第1原発1号機で格納容器の蒸気を外部に放出するベントを行った場合、同3時から同6時までの間、放射性物質が全て海に向かうことを示す内容だった」そうで、これで安心して菅首相は福島原発現地の「陣頭指揮」に心安らかに出発できたようです。
菅首相以下政府のお歴々は、自らの安全のためにはSPEEDIの放射能拡散データを使いながら、地元民に通知することはおろか福島県にまで公表を禁じていたことになります。
下の写真は岡田幹事長が現地を訪問した時のものですが、ものすごい重武装のいで立ちです。なんとまぁ迎えた地元の首長とゴム手袋をしたまま握手したとかで、もう二度と来るなと現地の人々に言われたそうです。
しかし川内氏の「告発」を聞くと、なにかもっと重大な事実を隠しているのでこんな原発建屋に突入するようなカッコウなのかとも思えてぞっとします。
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菅首相視察前、官邸に予測図=放射性物質の流れ確認?
時事通信 5月19日(木)22時16分配信
川内氏らによると、予測図は3月12日午前1時12分、経済産業省原子力安全・保安院からファクスで送信された。第1原発1号機で格納容器の蒸気を外部に放出する「ベント」を行った場合、同3時から同6時までの間、放射性物質が全て海に向かうことを示す内容だった。
3月12日朝に首相は第1原発を視察。SPEEDIの予測図は住民には長く公表されなかったものの、首相の視察前に放射性物質の流れを知るため利用されたのではないかとの疑念の声もある。川内氏は「首相はSPEEDIを自分のために使い、住民のためには使わなかったのではないか」と話している。
SPEEDI、公開できませんっ!?
河野太郎ブログ 2011年03月23日 14:03|
緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)というシステムがある。緊急事態が発生した際に、気象観測情報、アメダス情報と放出核種、放出量等の情報を入れることにより、六時間先までの希ガスによる外部被曝線量や甲状腺等価線量などをシミュレーションすることができる。
事故発生後から、この情報の開示を自民党の対策本部として政府に求めてきたが、全く開示されない。
その一方で、ある海外メディアからSPEEDIによる計算結果の二次元表示を見せられて(つまりリークか?)、なぜ、これが公表されないのかという質問を浴びる。
それが本物かどうかもわからないため、昨日22日は答えられず。
23日朝9時から、官邸、文科省、原子力安全委員会にそれぞれ電話するも、三者ともそれぞれ自分に公開する権限はないと力説するだけ。
このシステムを持っているはずの文部科学省に、「原発の緊急事態のSPEEDIに関する情報の担当部署をお願いします」と電話すると、「原発に関する情報はスピーディにお出しするようにしています」。思わず、頭に上っていた血が降りてきた!
十数分後に事務次官室に電話が回され、何度目かの「SPEEDIの担当部署をお願いします。」「少々お待ちください」と言われ、待たされていると、スピーディってどこの部署と電話の向こうで騒いでいる。ようやく回されると、「3日前から原子力安全委員会に移りました。」
その原子力安全委員会も官邸も誰が開示できるのかまるで把握していない。
あげくのはてに、「事故で情報が取れないので正しい数値を入力できず、どれだけ意味のある情報になっているか」。本来、事故のための「迅速」影響予測システムのはずなのに。
その一方で、アメリカの大手新聞の取材に「東京電力はよくやっている。日本の原子力は本当に安全だ」と能天気な受け答えをしている与党議員がいる。それで、また海外メディアの不信感が高まっている。どっちが与党だ!?
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コメント
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情報を持っている側が、情報公開によって国民がパニックを起こすのか、冷静に判断するのか・・・を考えて、秘匿するか公開するか?公開するとしてもどのタイミングか?等を考えているのでしょうか?
今回の原発事故に限らず、官邸だ!党だ!安全委員会だ!保安院だ!東電だ!国だ!県だ!市町村だ!と責任の所在を明確にしない構造ですから、こんなもんでしょう。
お金も的確な指示も出さず、口は出す!・・は今始まった事ではありません。
「いい加減にしろ!!」と言いたいですね。
投稿: 北海道 | 2011年5月20日 (金) 08時51分
昨夜このニュースを見た時は
「いくらなんでも本当なのか?ただの民主党の内ゲバネタなのか?」と、疑問に思い驚きました。
本当なら許されざる国民全員への背信行為です。
「ああ、尖閣事件での仙谷と仲が良いわけだ。同じメンタリティだな」
と、妙に納得しました。
これが日本国のトップがやる行為なのかと思うと、怒りと同時に悲しくなります。
真相が知りたい。
どんな弁明・反論をするのだろう?
もう下手なパフォーマンスなどいらない。
投稿: 山形 | 2011年5月20日 (金) 09時34分