国内に放射能が降ったのは初めてではない
神奈川、茨城に次いで栃木の茶でもセシウムが検出されました。実は、日本に放射性物質が降下したことはこれが初めてではありません。
米ソ中の大気圏内核実験やチェリノブイリでも放射性物質は大量に放出されています。ですから、わが国への放射性物質の降下は今に始まったことではないとも言えます。
では、核実験と原発事故とを比較した場合、どちらが多くの放射性物質を放出したのかといえば、広島型原爆でまき散らされたセシウム137は3000キュリーに対してチェリノブイリでは770万キュリーだと言われています。
チェリノブイリ原発は広島型原爆の2600倍以上のセシウム137を蓄えており、それが爆発によってかなりの量が環境中に放出されました。
当時のソ連当局は炉内の蓄積量の13%だと発表していましたが、それがソ連国内だけの量であって、放射性物質は国境などおかまいなしにどんどんと気流に乗って各国に拡散していくことになります。
比較的データが揃っているーロッパだけで100万キュリーにもおよび、それは炉内蓄積量の30%にあたります。58%という評価もあります。
広島型原爆の700~1500発に相当の放射能がまき散らされたわけです。米ソの核実験は1945年から1985年まで計423回行われてきており、その結果セシウム137だけで2600万キュリーが放出されたことになります。(小出裕章「放射能汚染の現実を超えて」による)
そして今もなお、燐国では大圏内核実験を世界で唯一続行しています。
1986年4月に起きたチェリノブイリ原発事故によって北欧を中心として広大なヨーロッパ地域が汚染されました。
そしてわが国でも、その影響は出ていました。当時わが国ではヨーロッパからの輸入食品についてのセシウム規制値が話題になっていましたが、数値は370ベクレル/㎏です。
現行の暫定規制値が500ベクレル/㎏ですら、いつのまにか緩やかになったとみえます。
それはさておき、1988年当時国内でも高濃度のセシウム137が検出されていました。下の表をご覧下さい。(出典同上)
表の右Cs137がセシウム137のことです。セシウムはカリウムの同族元素であり、土中や植物内部での挙動も似ているところから、植物はセシウムをカリウムと同じようににして吸収しています。
このカリ肥料は、天然由来の場合草木灰やカリウム岩塩などが原料です。ですから植物は、カリ肥料分と錯覚して放射性セシウムまで取り込んでしまったことになります。
下に日本全国のチェエノブイリ事故によるセシウム汚染の分布図を載せます。(出典同上)
日本海側でやや濃いいなどの濃淡はあるものの全国ほぼ均一に汚染されています。これはチェリノブイリから日本が8千㌔離れており、到達するまでに拡散していたことが原因だとみられます。
私は農業に原子力はいらないと考えています。それが仮に核実験によるものであろうと、原子力発電所の事故によるものであろうと、私たち農業者の敵です。
ひとたび空気や土、水を汚染すれば、それは植物に残留し、土中に残留し、水系を汚染し続けます。それも30年以上の長きにわたって。
低レベルで長期間放射線を浴びたり、あるいは体内に摂取し続けた場合、いかなる健康への被害が出るのかを世界各国は真剣に考えてみようとはしてきませんでした。それは各国の原子力推進政策にとって邪魔者だったからです。
実態としていかなる人体への健康被害が出るのかはわからないのです。それは実証検証例が不足しているからであり、今わが国で求められているのはこれなのです。
ようやく7月にも原発周辺12市町村で約15万人を対象に健康調査が開始されます。これには独立行政法人 放射線医学総合研究所などが中心となって、白血球数やガンの発生率を30年以上にわたり追跡調査するそうです。
ヒロシマ、チェリノブイリ、フクシマと人間は愚行を繰り返してきました。この愚行はここで、今この時点で止めねばなりません。
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「原子力は農業者の敵」
その通りで、重い言葉です。
あんなもの無いにこしたことはない。しかし、実際国内には54基もの原子炉を抱えており、即日全廃とはいかないジレンマ。
また、地震そのものには発電所は耐えていたことが東電からのデータで発表されました。
また、浜岡以外は点検の上で稼働OKとか、ベント問題で官邸周辺が騒がしくなってます。
「言った!」「言わない!」との水掛け論です。
情けない。「オマエラ!絶対まだ何か隠してるだろう!」と、思いました。
もちろんというか2・3号基のメルトダウンも…という当然なことが出てきました。
これらは被災地住民置いてきぼりの政治議論です。
昨日の厚労省前でのデモと座り込みも、年間1ミリSvか20ミリSvかという曖昧な発表と、子持ちの親には切実な問題ですが、なにやら「プロ市民団体」に誘導されていたニオイがプンプンでした。
そんなことしてるなら、山形なりなんなりにとりあえず避難してからやれと。
初動受け入れは遅れましたが、今では2次避難のアパートやホテルが提供されて、体育館は閑散としてますが、県知事は「最後の1人まで閉鎖しない」と断言してます。
私も含めてバブル期には調子に乗ってお洒落なヨーロッパの食材を「イタ飯ブーム」とかで若かりし日のデートなどで大量に摂取してます。
だからというのは乱暴でしょうが、あんまり食品を怖がる風潮には強い違和感を感じています。
今後の追跡調査の結果には興味津々ですが、30年後には自分たちが生きてるかもわかりません。
ただ、不毛の大地になると言われた広島や長崎では今では誰も危険だなどと言いませんね。
言葉は変かと思いますが、私は今だに比較的に「楽観的」です。
反論は沢山あるかとおもいますが、現在も隣県に住み続けている身での感想です。
こちらで福島第一の爆発にパニック起こしたやつって、基本的にネット住民のブロガーさんばかりです。
ところで、ヒマワリ作戦・菜の花作戦やるなら急ぎましょう!栽培時期を逸しては元も子もありませんから。
投稿: 山形 | 2011年5月24日 (火) 11時31分
大分の羊からスクレイピー。福岡に続き今年2件目です。農水省は仕事をして欲しいです。
投稿: 濫山珈琲 | 2011年5月24日 (火) 14時34分
言った・言わないなんてのは、もっと後でも検証すればよいのであって、今は「収束=安定的な冷却」と、関東から東北にかけて、飛散したと思われる地域の計測及び計測値によって、表土交換でも何でも考えうる手立てを実行する事が優先です。同時に濱田様、山形様が仰る「ひまわり・菜種」作戦の、一早い実施です。
後は、子供たちへの影響を低減する事及び復興の方向性を出す事ではないでしょうか?
増税なき復旧・復興は不可能であるなら、国民に対する丁寧な説明が今求められていると考えます。
党首討論的な質問タイムで、長々とやっても必要な答えは返ってきません。
国会を見ていて、いつも思うのですが、どうしてこんなレベルで国を動かせれるのか不思議です。
なんだかんだ言っても、官僚が動いているのですね。
優秀な官僚がいれば、議員は不要なのかも知れません・・・と考えたら、妙に納得してしまいます。議員数も半分でも3分の1程度でも、国は動いて行くのでしょうね。(官僚の都合良い様に・・・・)
戦後生まれの私には分かりませんが、広島・長崎に原子爆弾投下されてから、どのくらいの期間で人が住みはじめ復旧・復興したのでしょうか?
30年と言う長い期間では無かったと思いますが、早期に爆心地に戻った人は、その後様々な病気に悩まされたものと推察します。
濱田様の記事にある様に、これから健康診断(検査)が始まるようですが、言葉が適当ではないですが「モルモット」や「試験台」にはして欲しくはないです。
投稿: 北海道 | 2011年5月24日 (火) 16時28分