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2011年5月29日 (日)

複雑で巨大な原発風評被害を切り分けてみました

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活発なご意見をありがとうございます。

今回の福島第1原発事故をめぐる風評被害は、まちがいなく過去に類例を見ない巨大さでした。

それはたんなる規模だけの問題ではなく、農畜産物の大半が買い控えの対象となり、被害を被った地域も当初の福島、茨城、千葉から、いまや神奈川、栃木までを含むまでとなってきました。

また事件が起きた時期が、未曾有の大震災の被災県を中心としていたために、被災県は二度死ぬ思いを味あわされたことになります。

現在は東関東ではようやく落ち着きを取り戻しつつあります。しかし、放射能の影響を直接受けなかった中部、関西地方ではいまだ根強く東日本の農産物を恐怖する「空気」は止んでいないようです。

私はこの問題をいくつかに切り分けて考えたいと思っています。

①客観的なデータで3月15日の水素爆発以降4月にかけて放射性物質、なかでもセシウムの降下がどれだけ、どこまでの地域に降ったのか。

②そしてそれは地表の作物や土壌にどのうような影響を与えたのか。どのていど残留しているのか、いないのか。(資料1参照)

③低レベル放射性物質が植物に残留していた場合、摂取することによる体内被爆はどのていどの健康に対するリスクを考えるべきなのか。

④政府の情報の出し方は適切であったのか。正しく危険を告知するリスク・コミュニケーションが取られていたのか。

⑤風評被害が拡大するにあたって、政府はその対策を的確にとったのか。

⑥補償にあたって、風評被害をどこで線引きし、格付けするのか、あるいはしないのか。

⑦原賠審は風評被害を「食用に限る」としたが(資料2参照)、農業は観光まですそ野を広げた地域基幹産業であり、そのような切り捨てはおかしくはないか。

⑧風評被害補償はおそらくは数百億円に登り、観光などまで入れた場合さらに巨額となるが、東電はどのようにこの支払い義務を果たすのか。

と、まぁ今考えられることを上げてみました。実はこれらを明確に答えられる人は少ないはずです。

たとえば、①の降下した放射線量や、地域は各地のモニタリング・ポストから類推するしかないわけです。しかしそれはあくまでも瞬間的な空中放射線量でしかなく、気象の動きでいかようにも変化します。

たとえば当時の気象条件て300㌔の彼方まで飛散したことか分かってきています。

脱線しますが、昨日「報道特集」を見ていましたら、北朝鮮のピョンヤンでも放射性物質が検出されたそうで、政府高官が「日本が流した放射能のおかげで咳が止まらない、ゲホゲホ」と苦しんでおられました。心から同情いたします。東電、補償しなくていいぞ(笑)。

②の土壌から植物への移行係数は徐々にわかってきました。これについてはできるだけ詳述してご報告したいと思います。

ただやっかいなのは、今はセシウムだけを注目すればいいのですが、福島県の一部で計測された半減期が非常に長いストロンチウム90などの場合、また対処方法に差がでてくると思われます。

③の低レベル被爆ですが、これははっきりと放射線医学界でも意見か相違しているようです。いかなる低レベル被爆でもリスクはあるとする説と、早い時期に身体の外に排出されてしまうのでないとする説があります。

また、一度に高い放射線量を浴びた場合は見解が一致しますが、低レベルの摂取が晩発性障害の直接の原因となるかどうかを巡っては、線型に脅威は増すという確定論的説と、いや、そうではなく一定以下の量では確率論だとする説があります。

私には正直言ってどちらが正しいのか判断がつきねます。今後もこの問題については両論併記になると思います。

④、⑤はこの問題をリスクマネージメントの一環として考えた場合です。口蹄疫もそうでしたが、日本ではこのリスク管理がなっていません。

目先のリスクコントロールにのみ忙殺されて、それをどのように「伝える」のかという情報の出し方の問題として真剣に考えられていません。

原発事故に対して、国民が「正しく怖がる」ために、どのような情報をどのように政府が責任をもって出していくのかが、これほどまでにダメだったとはかえって意外だったくらいです。

⑥~⑧は風評被害の補償がらみの件です。風評被害はすそ野が広く、どこまでをそうと呼べるのか非常にあいまいな部分があります。

たとえば村の農産品が風評打撃を受けた場合、単純に農産品だけではなく、その地域もまた「汚染地域」と思われて観光に来る人は激減しました。

今の福島、茨城がまさにそうです。観光業も壊滅的打撃を受けました。それも放射性物質が降下していない内陸部まで含めてです。

観光業と一口で言っても、旅館業だけではなく地元の農産物を使ったお酒、菓子などの食品や工芸品まであるわけです。それらは地場の第1次産業としっかりと結びついています。

これらが根こそぎやられたのが今回の風評被害事件でした。私はこれら総体を被害として見なすべきだと思っています。

このように、今回の風評被害事件は複雑で巨大です。私もどこから手をつけたらいいのか迷うほどですが、ひとつひとつみなさまと考えていきたいと思っております。

             。゜。°。°。°。°。°。°。°。゜。°。°。°。

資料1 農水省HP農産物に対するセシウム移行係数http://www.maff.go.jp/j/press/syouan/nouan/pdf/110527-01.pdf

資料2 日本農業新聞5月29日1面

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コメント

個人的に、よく解らないのが、1)核種ごとの摂取危険量(年齢、体重別?)。2)暫定規制値が突如できた経緯は、わかったが、暫定規制値と摂取安全性の因果関係は?
です。
年間20ミリシーベルトか1ミリシーベルトかで、揉めてるようでは、基本的に原発に近いところで、採れた農産物は、遠慮しておいた方がよいと考えるのは、関東以西の国民の自己防衛反応としては、普通の行動でしょう。ただ、実際には、もっと危険な防腐剤が入っていようが、農薬が入っていようが、国内流通している食品は、この放射能問題以外では、どこの産地とか関係なく(余程有名なブランドでない限り)、値段と見た目で購入しているのではないでしょうか?(知らぬが仏?)

今回、放射線問題で、福島県産と言う産地が嫌われているのが、プラスされたのではないでしょうか?

風評被害をすぐになくすのは、難しいと思いますが、生産者団体を中心に、土壌、水質、空中の放射線量を測りつづけ、未来のためのデーターをたくさん残すことが、まずは、必要な行為なのではと思います。原乳を廃棄しているのを、見てると、つらいですが、本来は、その原乳や、そこの牧草、濃厚飼料、水など、あらゆるデーターを、日々集めて、未来の安全、安心のために、提供していただけるとありがたいのですが。。

政府をはじめ、科学者は、データーが集まれば、解析しなければならないのですが、誰の名前で、どう発表するか?は、誰もやりたくないでしょう。(やれるのは、生産者だけかもしれません)

チェルノブイリでも、初期のデーターが不足していたようです。最初はヨウ素だったのが、今、セシウムに変わってきているように、時間経過とともに、主に注目すべき核種が変化していきます。もちろん、重い核種だって、微量ですが、最初から放出されているでしょう。

放射線が人体に及ぼす影響は、まだ、研究されていないので、世界中が、日本の動向に関心があるのでしょう。

データーを詳しく採取すれば、将来の安全、安心は、みつけられると思えるのですが。。実際、風向き、地形、土壌の質などで、状況に差があるようで、お茶の葉の放射性物質量は、単純に、距離と風向きだけではないことを示しているようですし。

移行係数などについても、実際、今回、国内で、検証データーを取っているのでしょうかねえ?

過去、四日市公害問題等でも、結局、データーを取って、硫黄酸化物や窒素酸化物の大気中の限度量を決めることができたのも、被害にあっている住民自らデーターを取ったのですし。(誰も、やってくれませんから)

法治国家としては、科学的データーの蓄積なくして、補償も風評被害も、何も、よい方向には、進まないかも知れません。

いまどき、メルトダウンとか、言い出しているくらいですので、積極的に調査したくないのでしょう。

ご無沙汰しております。
いつもブログの更新ありがとうございます。
奥様はその後いかがですか?

茨城県・鹿島市 給食に県産食材使用しない 
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20110529-OYT1T00016.htm?from=top

と記事が出ていました。
母親達は「英断!」と思っている方が多いようです。
「県単位」で一括りにしてしまうのは濱田さんが言われるように「風評被害」に繋がると危惧しております。 

ただ、「暫定基準」が国際基準や他国と較べて大幅にオーバーしているのが母親達の大きな不安になっていると思います。 素人考えですが、生産者団体で国の暫定基準より低い数値を設定して出荷していただければ、みなさん安心して買うようになると思うのですが・・。 

http://takedanet.com/2011/05/post_741d.html

芸能人はじめ、マスコミさんが、都会の消費者寄りで、報道しますから、こういう記事に、どうやって反論するのが良いのか、私には、わかりません。

少なくとも、基準が、何ミリシーベルトであろうが、農家さんには、一切責任のない話なのですが、結果的に、農産物が売れないと言う形で、政府や東電の代わりに、農家さんが、現状、責任を取ってる形であるようです。また、同時に、数年後に現れるかどうかは、不明ですが、こどもたちに、健康不安を与えていることですよね。

この不安っていうやつの責任は、農家のせいではないのですが。。。

給食提供者としては、この不安を取り除くことができれば、もちろん、地産地消が良いに決まっています。新鮮ですし、流通経費がかかりませんし。。

所謂団塊の世代で広島や長崎出身の方々の癌の罹患率は他県に比べてどれくらい高いのでしょうね。
この世代の方は直接の被爆はされて居ないですが当時は現在ほどは放射能の危険性は知られて居なかったはずですし、何より食べるものすら無い状況なので今の福島以上に高濃度の放射性物質の含まれる農作物も普通に食べて内部被曝していたと考えても矛盾はないと思います。
この方々の晩発性障害の比率がわかれば、重要な参考データになると思うのです
探しかたが悪いのか見つけられないのでなんとも言えませんが

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