セシウムQ&A第2回 もし放射性物質が畑に降ってしまったら
注水中断事件ではファルスが続けられていますが、とりあえずこちらは無視して、 昨日からのQ&Aの続きです。
農水省は5月17日の記者会見では、近日中に放射性物質の移行係数を出すそうですが、未だ見ていません。毎度のことで驚きもしませんが、霞が関界隈はゆったりとした悠久の時が流れているのですなぁ。
下々の農民が震災以来2カ月にわたって苦しめられ続けている風評被害に対して、的確なデータを6月になろうとしているのに出さないとは、仕事をしないのにもほどがあろうというものです。
「百年兵を養うはこの時のため」という言葉がありますが、農水官僚は百年養っているうちにただのノータリンになってしまったようです。
さて、私は風評被害は私たち農業者からすればとんでもないとばっちりで非科学的だと決めつけてしまいがちですが、国からの必要な情報がないところで乳幼児をもったお母さんや、妊婦の方々の立場になればあたりまえすぎるほどあたりまえの反応です。
お国がまったく頼りにならない以上、こちらはきちんとした検査データや移行係数などの科学的根拠を示して粘り強く消費者や流通を説得していかなければなりません。
Q1 セシウム降下の特徴はなんですか?
●放射性セシウムは揮発性なので、空気の流れや気象の変化、地形などに大きな影響を受けます。大気の流れに乗って運ばれるので、高い山があればそれが壁になります。
また、雨によって地表に降ります。
Q2 ではどうやって防いだらいいのでしょうか?
●残念ながら完全に農作物を防ぐことは不可能ですから、極力低減させることしかできません。水素爆発などが報じられた場合は、福島第1原発からの風向きをチェックしましょう。地方自治体のモニタリングポスト速報値や、文科省の速報数値は状況をつかむ上で役に立ちます。
●セシウム降下が予想される場合は、ほこりを払って、外葉を取る、水で洗うことなどでかなりの除染を期待できます。
●降雨があった場合、セシウムは核種となって降下しますので、特に警戒を強めましょう。
Q3 賠償を請求したいのですが。何を準備したらいいのでしょうか?
●賠償責任はあげてこの派ような悲惨な事故を引き起こした東京電力にあります。法的には原子力賠償に関する法律が適用されますが、風評被害の範囲の決定や、小国家の国家予算ほどの巨額にのぼると予想される賠償金ために現在は枠組みが完全に決まっていません。
●現在は原子力賠償紛争審査会に持ち込まれて審議されています。私たちはなんの非もなく大きな被害を被ったのですから、主張すべきはしっかりと主張すべきです。
●今後予想される補償金の提訴に必要な書類は以下です。
(ソース農水省HPhttp://www.maff.go.jp/j/kanbo/joho/saigai/syukka_kisei.html)
[1]当該期間に生じた売上減少額や実損額①当該期間に生じた売り上げ減少額や実損害。
[2]当該期間に商品が返品され、再販売できない場合の実損額
[3]当該期間に販売できなかった生産物や在庫商品を廃棄した場合の処分補償額及び処分費用
[4]運転資金等を借り入れざるを得ない場合の金利相当額
などが明らかになるような証拠書類を保管しておきましょう。
●具体的に必要な記帳類は以下です。
[1]各種資材等の購入に係る領収書や購入伝票
[2]収穫や給与に至らなかった農作物・飼料の数量等を明らかにできる作業日誌
[3]出荷停止となった農畜産物に係る過去の生産量の記録、納品台帳、出荷伝票及び回収・処分した場合の領収書
[4]家畜の能力を示す証明書や飼養管理に係る記録
[5]納税関係書類(損益計算書等)
[6]現況を示す写真
などを保管しておきましょう。
Q4 出荷制限になりました。作物の処分はどうしたらいいのでしょうか?
●すきこむことは現実に多くの農家がしてしまったことでが、本来は望ましくありません。万が一セシウムやヨウ素が付着していた場合、それをロータリーの幅で地下深くすきこんでしまうからです。
●焼却することは農水省は勧めていません。不要な拡散があるからだとされています。
●私の個人的見解では、地方自治体のフイルター付き焼却炉で焼くか、東電の火力発電所で焼くのがいいと思いますが、現実には難しいようです。六ヶ所村や福島第1原発内で処分するとかの案も同じく、現時点では困難です。
●収穫が終わってしまったものは、そのままにして「一定箇所に一定期間保管」しろと農水省は言っています。これは必ずしも一カ所に集積するのではなくて、保管場所が明らかになっていることという意味だそうです。
●「一定期間」というのは、「原則として、原子力発電所からの放射性物質の放出が終息し、放射性物質の飛散状況が明らかになるまでの間」だそうです。
となると、工程表で7月に設定してある放射性物質の排出の停止までを指すと考えられます。となると、それまで保管してある農産物は腐敗してしまうと思いますので、なんらかの対策が必要となるでしょう。
●収穫していないものはそのまま放置します。農水省によれば、後にされる「放射性物質の放出が終息した後に行うモニタリングにより得られた濃度により、改めて対応について情報提供が行われることとなる」そうです。要するに「待て」ということのようです。
●既にすきこんでしまったものや、なんらかの処分をしてしまったものについては対処する必要がないそうです。
今回は農水省の公的見解を基にご説明しました。現実の風評被害と闘うには各個人がバラバラでは闘えません。地域がひとつになって「地域の農産物」を守る必要があります。
そのためには地域でトレサビリティの仕組みを考えたり、情報発信をしたりする必要があります。
« セシウム除去Q&A | トップページ | 原発風評被害はなぜ起きたのか? »
「原子力事故」カテゴリの記事
- 福島にはもう住めない、行くなと言った人々は自然の浄化力を知らなかった(2019.03.11)
- トリチウムは国際条約に沿って海洋放出するべきです(2018.09.04)
- 広島高裁判決に従えばすべての科学文明は全否定されてしまう(2017.12.15)
- 日本学術会議 「9.1報告」の画期的意義(2017.09.23)
- 福島事故後1年目 大震災に耐えた東日本の社会は崩壊しかかっていた(2017.03.16)
たまたま見つけて色々と読ませていただきました。
同意する事も多いのですが、どうしても気になったので教えてください。
今回の件、何故「風評被害」と思われているのでしょうか?
原発が事故を起こしました、でも放射線物質は漏れていません、検出もされていません。
ならば「風評被害」だと思うのですが、今回は違います。
実害だと思うのですが?
投稿: えす | 2011年5月27日 (金) 10時31分
うーん、政府がバタバタして信用できないのは解りますが、
実際に基準値(暫定)オーバーしてる農水産品が出回ってるのならば『実害』ですが出荷されません(大変残念ならが今回は旭市のほうれん草出荷の件でありましたが)。
そうでない物も「被災県」の産品だからと敬遠されたり、旅行客が来なくなるのが『風評被害』です。
各地のモニター値などを参考になさることをお勧めします。
福島の椎茸ですら、すでに解除されてる物もありますよ。それを忌避するのは風評被害です。
赤ちゃんや小さなお子様をお持ちの方なら、相当に敏感になるのも理解します。でも、首都圏へ野菜を供給し続けてきた東北~北関東を纏めてダメだと言うなら、それは『風評被害』です。
各地と新宿のモニター値とを比較してみて下さい。
まあ、昨夜からモニタリングポストの設置高さが問題にはなってますが…。
投稿: 山形 | 2011年5月27日 (金) 12時13分
基準値(暫定)からオーバーしてるかどうかなんですね。
良くわかりました。
ところで、前から思っていたのですが、
基準値に満たしているかどうか?
どのように計測がなされているのか?
計測された結果がどうなっているのか?
という事が全然判りません。
もしかしたら何処かに公表されているのかもしれませんが、判りやすく周知されているのを見たことがありません。
(技術的な話では無く、流通的な面でです。)
もし、時間と興味があれば書いていただければうれしいです。
投稿: えす | 2011年5月27日 (金) 15時52分
基準値以下の野菜は安全だと日本政府が宣言し、出荷しているんです。制限などもありません。乳児の離乳食、妊娠中の女性も、どんどん食べて何が問題なのでしょうか?政府が学者などと協議して、合理的に安全だと出荷しているものを避けるのであるならば、それは「風評被害」なのです。
投稿: 神奈川 | 2011年5月27日 (金) 16時17分