鶏卵に餌から放射性物質は移行するのだろうか?
屋根転落事件というボケをかましまして、ご心配をおかけしました。
屋根のてっぺんから落ちたのではなく、あ~れ~と屋根に爪立てながら落下したので、せいぜいが4、5m落ちただけですのでご安心下さい。屋根に私の爪痕がくっきりと。(うそ)
病院で調べてもらいましたが、「単なる打ち身でしょう」とのことでした。お見舞いの言葉、感謝いたします。
ところで、先日鶏舎周辺の草刈りをしたのですが、いつもならせっせとトリに食べさせているのですが、今回はおあずけとしました。草が大好物のトリさんからは猛烈なブーイングの嵐。
というのは、やっぱり草からの鶏卵への放射性物質の移行をいやでも考えてしまうのですよ。ああ、いやな渡世だ。
実は先だって私の消費者の方から、「卵の餌からの放射性物質の移行は大丈夫なんですか?」というご質問を頂戴していたからです。
特に私たちの有機農産物を購入する人たちは消費者意識が高い分だけ放射能汚染に敏感だといえます。
そこで論より証拠で、ちょっと鶏卵の放射性物質移行を調べてみました。
確かに放射性物質は私たちの地域に降ってきています。それは3月12日と15日のあの忌まわしい福島第1原発の水素爆発により飛散した大量の放射性物質によるものです。
この放出量は昨日になって保安院により上方修正されて、推定77万テラ(京)ベクレルと従来の37万テラベクレルの2倍に達しました。どうせまたそのうち上がることでしょうが。
その時の茨城県の被曝状況は、下のモニタリングポストの放射線量グラフ(茨城県HP)をご覧頂ければ分かると思います。事故以来の過去最大値は0.110マイクロシーベルトです。
現在はおおむね低い線量で推移しており、昨日6月5日の茨城県平均値は0.056マイクロシーベルトと約半分にまで下がってきています。
また私の住む鹿行(ろっこう)地域は県内で降下線量が少ない地域のひとつで0.1マイクロシーベルト未満です。(資料2参照)
そして畜産物に限っても、わが県は3月に水戸で原乳から暫定規制値を上回るものが検出されて、出荷制限がかけられ、つい先だって解除されたばかりです。
これは放牧牛の乳から検出されたもので、それ以降わが県では放牧や自給飼料は事実上使用不可能となっています。
牧草の放射線量の規制値は以下です。
・放射性セシウム・・・1キログラム当たり300ベクレル
・放射性ヨウ素・・・・・・ 70ベクレル
・肉牛はセシウムのみ・・・300ベクレル
この規制値は再処理工場の安全審査の時に作られたもので、放射性物質が植物に降下して吸収され、それを家畜が飼料とすることで人間にキャリーオーバー(移行)する経路を想定しています。
いったん放射性物質が人体へ移行した場合は内部被曝の原因となります。この低線量のリスク評価は放射線学界でも意見が分かれているのはご承知のとおりです。
ただし、植物に直接に放射性物質が降った場合はさることながら(私はその危険は時期的に去ったと思っていますが)、土壌中に吸収された場合には物理的、化学的に変化を起こすことが知られています。
特に関東ローム層では、セシウムは粘土質と強固に結合して植物の吸収を妨げます。
私は、また新たな原発の爆発がない限り、既に3月、4月の時期で放射性物質の有為な降下は終了したと思っています。
牧草や野菜類からの放射性物質の検出が止まったのはそのためであり、今後あるとすれば3月、4月時期に既に茎葉に吸着したものが新芽や果実に移行したケースであり、5、6月移行は土壌経由の汚染が主になると考えています。
ここで出てくるのが、土壌からの移行係数です。野菜類の移行係数については先だって詳報いたしましたが、鶏卵でも移行係数は存在します。(資料1参照)
鶏卵においては、自然養鶏以外には緑餌の給与をしないので、土壌由来と言っても飼料からの経口の数値です。
・全卵(卵殻も含む)への移行係数・・・2.03
すると現在のセシウムの規制値が300Bq/㎏を超えるためには、飼料が2万5千Bq/㎏という超高濃度の汚染をされなければならないことになります。
このような高濃度の放射能汚染は、福島第1の1号炉内で養鶏でもしているならともかく、現実には考えられません。
ということで、あくまで理論上はですが、ほぼ絶対に緑餌(粗飼料)も含めて餌からの放射性物質移行はありえません。(きっばり)
そういえば、浜岡原発で温排水を使って鯛の養殖なんかやってたよなぁ。誰が食うんだ、そんなもの(笑)。
■写真 わが村の簡易郵便局。いやーこう撮るとまるで映画のセットみたいですね。
。°。°。゜。°。°。°。
■資料1 . 日本の文献資料による移行係数
第 28 回環境放射能調査研究成果
6-2 -2. lC卵
鶏卵については、扱う動物が小型で安易なことから、Fallout に関しての実験は多い。
特に鶏に第五福竜丸の甲板に降下した灰やF. Pを直接投与した実験川.20) に注目される。
Sr-90 の移行を文献値2 0 >により検討してみると、投与したF.P は調整後l年3 ヵ月のも
ので短半減期核種はかなり減表しているものと思われる。これを産卵鶏に5 日間毎日一定量づつ経口投与して毎日の産出卵に移行してくるSr-90 の量を調べた。
その結果、1 日の給与量に対し卵殻に13% 、卵黄に0.8% 、卵白に1. 2% 、全卵では15% であった。即ち可食部(卵黄と卵白)には2% の移行が報告されている。卵の平均重量55g 、卵殻を10 gとして移行係数を計算すると、全卵1kg 中Sr-90/Sr-90 1 日給与量、また可食書官1kg 中Sr-90/Sr-90 1 日給与量の比は、それぞれ、2.7および0. 34 であった。
1 -131 の可食部への移行は3 核種のうち一番多い。特に卵黄に多く移行することが報告
Z けされている。卵の中のI-131 が最も多くなるのは投与後4 -5 日であるので、この移
行係数は連続投与によって確かめなければならない。実験は4 羽の鶏にト131 を体重1 kg当たり10μCi をl週間毎日i 回づっ筋肉注射したものである。
卵l個のi 日投与量に対する移行置のデータは、投与4 日自のものから8日目までのものを平均した。その結果は15.09 %であった。これを当時の卵の平均重量55 gとして移行係数を計算すると2.74 になるが、筋肉注射であるので、これを経口投与に換算するために0.74 を乗じて2.03 という値を得た 。但しこの値は卵殻を含む全卵への移行係数であり、可食部への移行係数は、この値より小さくなることが予想される。
Cs-137 の卵への移行量については、かなり少ないとされているので、実験数もデータも
少ない。Cs-134 のi 回投与による実験 では可食部への最大移行値は0.56 %で、これを1 kgの移行係数として推定するとO.I( l.OE-l)である(表6 -11 ) これは筋肉注射のl回投与であるので、経口投与の場合は、さらに小さくなる可能性がある。
■資料2 茨城県放射線量分布図(茨城県HP)
■日本農業新聞(4月30日)によれば、29日、千葉県の研究機関の牧草地2カ所から基準値を超える放射性物質が検出された。(下記切り抜き参照)
千葉県や圏内の生産団体では牧草の給与を自粛するように徹底した。自給資料の利用制限などについて政府は「適切な補償が行われるように万全をつくす」。
検出された数値は八街市の県原乳牛研究センターで
・放射性ヨウ素・・・・・・90ベクレル/㎏
・放射性セシウム・・・350ベクレル/㎏
同センター市原で
・放射性ヨウ素・・・・・・・・230ベクレル/㎏
・放射性セシウム・・・・1110ベクレル/㎏
この粗飼料の暫定許容量は、給与して生乳や食肉の中に放射性物質キャリーオーバー(移行)しないための判断の目安として国が設定しました。
暫定許容量は
・放射性ヨウ素/乳用牛(経産牛)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・70ベクレル/㎏
・放射性セシウム/乳用牛・肥育牛(出荷前15カ月以降)・・・・3000ベクレル/㎏
・乳用牛・肥育牛以外の育成牛・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5000ベクレル/㎏
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まずはご無事でなによりです!
ホントに気をつけてくださいね。
昨日山形で発生したサクランボ農家のハウスのビニール張り中の転落死亡事故は3.7mでした。
私も3月の水素爆発での放出以後、高い放射線値が無い所以外は大丈夫だと思ってます。
ただ、当時東京の金町浄水場で値が上がった時点で放出量が予想より多かったと考えるべきだったと、反省してます。
ちなみに女川原発でも温排水利用のホヤ促成養殖を昔からやっていて、PRセンターでもしきりに安全性がアピールされてました。
ホント、それこそそんなもん誰が進んで食うかっての…確かに「汚染値」では安全な農産物のケースとは自分でも矛盾してると思いますが、事故時の値上昇に対するのと普段から積極的に利用するのとでは感覚的にも違います。
浪江町のDash村の値が17μSvで、とてもロケ再開は無理だとかでガッカリしてます。
青空さんが仰ってたように将来復興の象徴になればと思ってたんですが…難しそうですねえ。
投稿: 山形 | 2011年6月 7日 (火) 11時29分
ご無事で何よりでした。3月に私も転倒し(播いた石灰で滑って)後頭部を強打したばかりだったので、人事とは思えませんでした。
少しでも頭痛がしたときは、脳外科に行かれた方が良いと思いますよ。無論、私は、行きました。軽いムチウチで済みましたが。
先日、スーパーで茨城産の白菜が店頭に並んでいたそうです(相方談)。夕方、2~3個だけが売れ残っていたそうですが、まぁ、この状況は、普段と同じですね。
そういう意味では、この辺りでは、それほど気にしているとは思えませんね。
この時期、不衛生な取り扱いによる食中毒の方が余程、危険だと感じます。
http://www.tv-asahi.co.jp/ann/news/web/html/210601008.html?r=rss2&n=20110601110035
お隣、小林市の私立小林西高校の寮では、感染性の髄膜炎で死者が出ているし、
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/item/242491
WHOは、携帯電話などの電磁波による脳腫瘍の発生について言及しているようで、
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20110601-OYT1T00409.htm
もう、我々の周辺は、危険が一杯です。
投稿: Cowboy@ebino | 2011年6月 7日 (火) 13時27分
大事に至らず一安心です。
何かがあった時は、相方様だけではなくコケコッコーも寂しがりますし、当然濱田様の「卵」を愛用している沢山の方々も同様に大変になりますから・・・
くれぐれも御自愛ください。
卵への移行について、大変参考になりました。
よほどの事(濱田様が仰る「炉内養鶏」でもない限り)心配する事はなさそうですね。
昨夜の「TVタックル」(生放送)でも、原発問題がとり正されていましたが、わざわざ福島の「常磐ハワイアンセンター(昔の呼び方)」に町長はじめ被災者の方々を呼び寄せ、待機させるだけさせ、被災者が意見や質問しても回答せず・・・TV局の段取りの悪さ・被災者を軽視するやり方に、番組の内容云々より腹が立ちました。
通常の一時間番組を特番で2時間組む必要はなかったと感じました。
今の議員に何かを期待しても無駄でしょうが、立法権限を持っている以上しっかりしてもらいたいと思っています。
《追伸》
「常磐ハワイアンセンター(今の名称を知らないもので)」には、30年ほど前に行った事があります。
「黄金の風呂がま」と「フラダンス」が印象に残っています。今はどうなっているのやら・・・・
投稿: 北海道 | 2011年6月 7日 (火) 16時05分
福島原発から放射能が放出されていなければ、草も畑の土を機会でかき混ぜて、新たに出せば、餌になりますね、鳥も内部被爆はしているかも知りませんが、もう大丈夫ですね。良かったですね。
投稿: 宮川 清眞 | 2011年11月 1日 (火) 17時46分