再生エネルギー法案は、もっと大きなエネルギー政策の見直しの中に位置づけられるべきです
私は雛で暮らしているせいか、なにかよくわからな~いという気分です。素朴なわからな~いを並べてみましょう。
そもそも、「脱原発」に反対、少なくとも今の時期に「原発ダンコ推進!原発、文句あっか!」なんていうイキのいい推進派はほとんどいないはずです。
かつての郵政解散と違って同じシングルイッシュでも、「脱原発」や「再生エネルギーの推進」は国民のおそらくは8割近くまでが賛成にまわるでしょう。
つまり、ホントはどう見ても解散-総選挙の争点にならないのです。
すくなくとも、今この時期に国民投票まがいのことに税金を選挙費用だけで500億だかかけて、復興を中断してまでするべきものとは思えません。
われわれ被災地の人間からすれば、他にやること山ほどあるっぺよ、と言いたくなります。これは私のみならず被災地の共通心理でしょう。
これで国民が怒らないのは、日本人が辛抱強いからで政府が優秀だからではありません。よく言われるように、他国ならとっくに暴動ものです。
もう一度初めに戻ってお聞したい。こんな状況でなにが争点なのでしょうか?
この時期に再生エネルギー法案こそが大事で、「脱原発」で内閣の信を問う総選挙をするというなら、菅さん、あなたそうとうにおかしいよ。
内閣の信を問うなら、いっかな進まない復興や、原発事故対処の誤りに対しての審判を仰ぐのが筋であって、そんな誰でもが総論賛成するような「脱原発」をめぐってではありません。
さて、この再生エネルギー法案にしても、通産省はなんの予算の裏付けをしていません。そもそも経済産業省は、「脱原発」などにはまっこうから反対であり、この再生エネルギー法案を骨抜きにしまくっています。
今の電気事業法の根幹である総括原価方式という、かかったコストの増大をそのまま電力ユーザーに転化できる仕組みは温存されたままです。
ですから、電力会社は自然エネルギーに転換しようとしまいと、痛くもかゆくもありません。
現時点で圧倒的に高い(*将来的には大幅にコストダウンが可能ですが)自然エネルギーを固定価格で買うことができとすれば、それは電力ユーザーに請求書を回せるからです。
現時点で自然エネルギーは、将来有望な補欠打者でしかありません。いっかな出番が回ってこなかったために鍛えられることがありませんでした。
わが家はたぶん茨城県で最初の太陽光発電住宅だったはずですが、設置して15年、未だモトを取っていません。今の段階ではそんなものなのです。
今しなければならないのは。再生エネルギーを固定価格で買うという甘いアメではなく、いかに安価で現実的価格で発電できるように代替エネルギーを「鍛える」ことなのです。
今の段階で固定価格とやらを設定すれば、おそらく「現時点での価格」が固定価格となると思われます。
つまり、太陽光49円、風力12円です。火力7.5円、原子力5.5円(「2010年エネルギー白書」)がそのまま電気料金にスライドします。
もっとも、この原子力は廃炉コストや原発立地法などによる税金などは一切入っていませんので立命館大学大島堅一教授によれば原子力のコストは約12.23円だそうです。
いずれにせよ、現時点において自然エネルギーに大転換するとなれば、電力ユーザーは今を倍するような電力料金と不安定な電力供給に悩まねばならなくなります。
菅さんの話はいつもそうですが、後先がメチャクチャなのです。
今すべきことの優先順位がないから、思いついたついたことをそのまま口にします。
もし、真剣に代替エネルギーへの転換を問うならば、電気事業法の抜本改正しかないはずです。
●いくら高かろうとすべてをユーザーに転化できる総括減価方式の廃止
●発電と送電網の切り離し
●地域独占事業形態の廃止と新規参入による競争力の導入
そして、エネルギー政策全体も大きく書き換えられねばなりません。
●再生エネルギーの比率の見直しと将来計画の策定
●原子力発電所の抜本的総点検
●運用停止原発の解体-廃炉の道筋の明確化
●代替エネルギーが定着するまでの過渡期における政府の負担割合の増大
●自然エネルギー定着のための付帯的技術ソリューションへの政府投資の増大
・スマートグリッド
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%83%9E%E3%83%BC%E3%83%88%E3%82%B0%E3%83%AA%E3%83%83%E3%83%89
このような大きな構図の中で、再生エネルギー全量買い取り制が出てくるのであって、増額を安易にユーザーに転化可能な現行電気事業法を変えないで実施しようというこの法案は首相の延命以外になにかあるとは思えません。
この法案が通ればおそらくは50円ちかい固定価格でバカ高い電気を大規模に発電した事業者が濡れ手に粟のボロ儲けすることでしょう。
滅びゆく原発利権に替わる新たな再生エネルギー利権の誕生です。そうならないためにもしっかりと国民がエネルギー問題をトータルに考えていかねばなりません。
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2重ローン問題は、今さらながら債権買取り機構を作って対処するみたいですね。
それにしても暑いですね。皆様、お身体を大事になさって下さい。
我が家など風の抜けが悪くて現在すでに室温30℃、湿度75%です。そして東電以上に東北電力は電力供給が逼迫すると予想されてます。
もうエアコン点けようか我慢比べ。
Cowboy様。
噴火映像見ました。お見舞い申し上げます。
もう「ちょっとだけ地球よ大地よ収まれ~!」と。
投稿: 山形 | 2011年6月30日 (木) 08時11分
連投失礼します。
菅総理が浜岡の停止を要請した時に、「むしろ原発は順次停止→全廃にすれば歴史に名を残した宰相になれたかもしれない」と言っていた大学教授の発言が心に残ります。(あれ見て思いついたのかと)
現実的かと言われると、ちょっと疑問ですが…。
自然エネルギーの最大活用は大いに結構な話ですが、まずは復旧と復興が最優先。東北では工場がなんとか再開したのに15%節電義務(罰則付き&未達の時のイメージダウン)に、多くの中小企業が悩んでます。社員に我慢して貰って夜間シフトしても、手当てなど人件費が嵩んだり…。さらに輸出する機械部品や老舗ニット産業などは「放射線計測を義務付けられる」など、経営を圧迫されています。
農業でも、広域用水ポンプ場など猛暑に備え節電に苦悩してます。米の品質にまともに響きますからねぇ。
残念ながら広大になってしまった耕作放棄地や減反地へのソーラーパネル設置は「アリ」だと思います(鹿野農水相も賛成に)。
ただ、その電力を高額で買取りするとなると、またそこに利権が絡んできて…あ、ソフトバンクが金儲けしようとしてんだな。と納得。
ここは日本メーカーのパネル&制御システムをどれだけ使うのか?
これは私の勝手な判断では「孫正義への踏み絵」だと思ってます。
私はデジタルTU-KA以来の流れで今はたまたまソフトバンク携帯ですが、太陽電池パネルを韓国・中国メーカーにやらせるなら、会社変えますよ。
また、小水力発電なども支持します。雪捨て場の機能が維持できるならね。用水路のゴミ(枝など)に強いものも、庄内農業高校などで実験してます。
そしてスマートグリッド。聞こえはいいけど、どこの技術を入れるんでしょう。
昨日、南三陸町にようやく脱塩淡水化装置が届きました。今までずっと山の湧水まで皆軽トラにタンクを積んで汲みに行ってたのです。
届いた浸透膜ユニットはフランス製でした。
悪いとは言わない。だが、この分野こそ東レや旭化成等の得意分野で、官民一体で海外の水道事業に乗り出していたはずなのに、なぜなんだ。
原発・新幹線・さらに水までヨーロッパや中国のやり放題に白旗なのか?
巨大なビジネスチャンスだったはずが…。
色々と疑問はつきません。
長々と失礼しましたm(__)m
投稿: 山形 | 2011年6月30日 (木) 12時02分
国政は何をやっているのでしょう。
もはや原発の話以外はほとんど聞かなくなりました。
総理の宰相としての才能は皆無です。早々に去ってほしいのですが中々退かない。
いったい彼は何を見て仕事をしているのか皆目検討がつきません。
政策もまったくナンセンスです。濱田様がおっしゃるように優先順位がまるで違います。
最近それよりも気になり腹立たしくなるのはあれだけ大量に存在する議員たちはこの4ヶ月一体何をしていいたのでしょう。
与野党ともまったく国民の代表者としての動き働きが見えません。
国会議員を国家運営のプロフェッショナルではなく著名人と2世3世ばかり選んできた国民の代償ですが、ここまで来ると害悪です。
議員であればこの国難にあって主導部が何を言おうが超党派でどう乗り切るのかと寝る間も惜しんで議論、調査、調整を行い、官僚たちをこき使い、民間団体と主要企業を招聘して指針を刷り上げていくものでしょう。なぜそういう動きが原発騒動以外一切見えないのか。
マネジメントや経営経験のない無能者ではその必要性もやり方も創造すら使いないということなのでしょうが、それにしても腹が立ちます。
政治らしい動きをしているのは各自治体の知事市町村長と公務員達ばかり。もはや彼らの助けにすがるばかりです。
宮崎県の知事は明日宮城県の山元町へ応援職員の激励と、気仙沼港の激励にこられるようです。
国会議員よりよほど心強い。
投稿: 青空 | 2011年6月30日 (木) 20時30分
6月5日に畑の放射能(核種)検査をした結果が昨日
届きました。(私の野菜・干し芋を購入してくださる
東京・三鷹市 グループ野原さんの援助にて)
畑1(茨城県〇〇市)干し芋作付ー作付前、セシウムの撹拌
する為、深耕ロータリーで45センチ耕運。
セイウム134 35ベクレル
セシウム137 31ベクレル 合計66ベクレル
畑2(同上)ナス・P-マン作付
セシウム134 129ベクレル
セシウム137 132ベクレル 合計261ベクレル
畑3(同上)大根作付
セシウム134 65ベクレル
セシウム137 71ベクレル 合計136ベクレル*この畑の大根は、葉・根共セシウムは不検出
畑4(同上)震災以来、土壌を余り動かさなかった
(ロータリー耕)を行わなかった。
セシウム134 463ベクレル
セシウム137 511ベクレル合計974ベクレル
また、自宅・雨どいの下の土壌は、とんでもない
数値でした。
今、心配なのは、サツマイモの移行係数が高い事と
この気温の高さです。
なお、この検査は横浜市鶴見区の同位体研究所で行われました。
http://www.isotope.ac/index.html
県内で土壌検査された方、数値等お教えください。
投稿: 姫いずみ | 2011年6月30日 (木) 21時41分
姫いずみ様。貴重な計測結果ありがとうございます。やはり雨樋は高いですか・・・。
数値的には土壌を耕耘したほうがいいということになるわけでしょううか。指導ではしないほうがいいということになっていたのですが。
それとあとは水ですね。近隣地域で舎内のものから出たケースは、数値的にはたいしたことはありませんでしたが、水道水くらいしか思いあたらないのです。
なんとも悩ましい話です。
それと大変に申し訳ありませんでしたが、数字と地名がひとり歩きしないために固有名詞は伏せました。
投稿: 管理人 | 2011年7月 1日 (金) 05時51分
ブログの内容は正論なのかもしれません。しかし、今の政治状況を鑑みる限り、少々現実から遊離しているかの印象も受けてしまいます。私自身も被災地でこの前まで避難所暮らしだったのですが、「復興!復興!」とだけ言いながら、内閣の失政を責め続ける気には到底なりません。社会をよりよくするという観点も含めながらの復興が必要かと思っています。原発をなくしていくという現実的視点も必要で、そういう視点もを含めた意味での総合的復興が重要なのではないでしょうか。
復興が遅れている理由は「復興」を人質にして「原発の良識的な処理」を阻害しようとする勢力が非常に強いからだということは明白かと思います。
あと、自然エネルギーに関して。「自然エネルギーへの移行」も大切な復興の一環ではないでしょうか。「復興の遅れ」と「自然エネルギー」を同じ土俵にあげるのもどうかと思います。それから、自然エネルギーのコスト問題。単純に大幅に上がるということでなく、総括原価方式の再考を含めたリストラ策への言及があってしかるべきではないでしょうか。
いずれにせよ、「復興」を人質にする政治のあり方こそ、第一に批判されるべき点かと思います。
投稿: 松中 | 2011年7月 9日 (土) 12時24分
松中様。復興の状況はいかがでしょうか。暑くなりましたので、お体にお気をつけ下さい。
しっかりとお答えしますので,明日の記事でお答えいたします。
投稿: 管理人 | 2011年7月 9日 (土) 17時13分