千葉県、東京都と相次ぐ高い放射線量の測定 政府は東日本全体の放射線汚染マップを早急に作れ!
思わない展開になってしまいました。
福島県を中心として、わが茨城県、そして千葉県の一部程度までが被曝圏だと思われてきました。
そのためにこの3県の農産物や海産物は壊滅的といっていい被害を受け、その被害は未だ続いています。
しかし、この5月に入って実は放射性物質は思いのほか遠くまで飛散しており、しかも距離との相関関係がないようにも見えるデータが出始めました。
ことの起こりは、ある元原子力安全委員の方のブログに千葉県での独自の計測結果が載ったことから始まりました。
驚いた千葉県住民は独自にガイガーカウンターを購入し、自分の土地を計測し始めました。
おおよそ以下のような結果です。
(図表・下も同じ TBS作成 参考のために引用しました。ありがとうございます。)
この結果には、私も含めて多くの人が唖然となりました。福島第1原発との距離との相関関係がないのです。
・野田市・・・・・0.25マイクロシーベルト(μSv)/h以下単位同じ
・我孫子市・・・0.33
・柏市・・・・・・・0.54
・鎌ヶ谷市・・・0.29
・松戸市・・・・0.36
・流山市・・・・0.34
もっとも離れている流山市は、福島第1原発から実に190㌔でした。
一方、茨城県は福島第1原発にはるかに近く、もっとも福島県境に近い北茨城市でわずか70㌔程度しかありません。飯館村で40㌔ですから、その距離の近さが分かります。
それにもかかわらず茨城県北部の計測結果は以下でした。
・北茨城市・・・・0.185μSv
・高萩市・・・・・・0.129
・大子町・・・・・・0.099
下の資料1の茨城県の計測データともほぼ符号します。
尚、多少の測定値のズレは放射線の特長であり、基本的に放射能の壊変(分裂)によるものだそうです。むしろ同じ値をずっと表示しているのであれば、その計器の分解能が雑だということになります。
ですから、公式に計測する場合はこのように行います。
①地上からの計測点を地上高2カ所(1m、5㎝)にわけて計測する。
②電源を入れた後に、最初は10秒ごと4回の予備計測を行う。
③本計測は40秒毎に4回にわけて計測し、その平均値を取る。
なお地上高は
・地上1m・・・・・成人の生活する呼吸器のある高さ
・地上5㎝・・・・・子供が公園や校庭でしゃがんで遊ぶ高さ
また、測定場所としては
・地表が露出している場所・・・コンクリートなどだと雨で放射性物質が流されたりして、実態より低くでる場合がある。
・樹や建物がない開けた場所・・・樹や建物で遮蔽されていると、降雨で放射性物質がその根元や樋の下に集まってしまい、実態より高い数値になる。
逆に言えば、高い数値で煽りたければ、建物の樋の下や、道路の側溝で、地表面ギリギリで、一回だけ安物の計測器で計れば、とんでもない数値が出て、ぎゃ~ここもホットスポットだ、ということになります。
よくテレビリポーターがどう見ても安物の簡易計測器で自動車に乗りながら計っていたりするのをみかけますが、あんな数字は信用しないほうがいいと思います。
というわけで、市民の独自計測結果が多くネットで流されていますが、分解能が粗い機器を使って、今述べた手順で測定しないととんでもない数値が出て、慌てて引っ越しを考えたりすることになるのでご注意下さい。
それはさておき、文科省は今まで各都道府県でたった一カ所だけの測定でお茶を濁してきました。しかも、先に述べた測定手順によらず、測定位置や高さに統一された基準がありませんでした。
例えば、東京にただ一箇所ある放射線量測定ポイントは、新宿区百人町の地上18mのビルの上にあります。他の県もてんでバラバラの高さにありますが、共通項はビルの屋上だということです。
旧科学技術庁がこれでどうすると思いますが、その理由は、文科省の放射線量MP(モニタリングポスト)は60年代から続く偏西風に乗って飛来する大気圏内核実験の放射線量測定のためにあったからで、原発事故を考えたものではなかったからです。
(*なお各自治体のMPはチェルノブイリ時のものです。福島県と茨城県など原発立地県のものは、国の補助金で作っています。)
東日本ではただふたつの県、福島県と茨城県のみが原発立地県として放射性物質の漏洩対策の一環のMP網を持っていたにすぎません。
千葉県で茨城県北部を超える線量が測定され、神奈川、静岡で相次いでお茶から検出されるなど、放射性物質の飛散はかならずしも距離と比例しないで、そのときの雨や風向きなどの気象条件によるものではないかと考えられ始めました。
例えば、3月15日の福島第1原発の水素爆発により飛散した揮発性放射性物質のヨウ素、セシウムは3月中旬から下旬の風に乗って飛散した後に、折からの雨で各地に広範に降下したものだと思われます。
それを裏付けたのが、5月6日から23日まで日本共産党東京都議団が行った東京各地での測定結果でした。
測定方法はた非常に的確で、精度が高い測定機器を使い、地表1メートルで10秒間隔で10回測定した平均値を出すという文句のつけようがない手順でした、また測定地点も公園などの開けた公共の場所で測定されていますので、データ的に信頼性が高いと思われます。
(日本共産党東京都都議団計測 なぜか右端が切れていますがクリックすると見えます)
共産党東京都議団の東京都内の測定結果は
・葛飾区・・・・・0.391μSv/h
・江戸川区・・・0.181
・江東区・・・・・0.186
以上のように東京都東部において比較的高い線量を計測しています。西部の奥多摩市などではさすがに線量は低下して、0.072μSv/hまで落ちています。
なお、福島第1原発から東京都までは優に200㌔を超えます。ここまでの遠距離でありながら、茨城県北部と同等ないしはそれ以上に高い数値が出てしまったわけです。
あまりこういう計算はしたくないのですが、千葉県柏市で出た0.54μSv/hを国際的標準の積算方式で考えるとこのようになります。
・0.54μSv/hの放射線量を24時間、365日浴びたとした場合・・・・・・・0.54×24=12.96
・112.96×365=4730.4μSv/h=4.73ミリシーベルト(mSv)
一方、ICRP((国際放射線防護委員会)の設定した放射線量の安全範囲
①自然放射線量(*宇宙から降ってくる自然放射線のこと)・・・日本平均1.5ミリシーベルト(mSv)
②一般人の1年間の被曝限度量(*原子力施設、医療用を除く)・・・1mSv
・合計された1年間の放射線限度量・・・・①+②=2.5mSv
・1時間あたりの放射線限度量・・・・・・・・1年間の被曝限度量=2.5mSv=2500μSv÷8760時間(1年間)=0.285マイクロシーベルト/h
なお、この被曝限度量は被曝の閾値とは異なりますので気をつけて下さい。
柏市の数値が正しいとすれば、比較するまでもないでしょう。柏市にはあきらかなホットスポットがあるということになります。政府もホットスポット対策をようやく着手し始めたようです。
ただひとつお断りしたいのは、柏市のどこで計ったのか、その時の気象条件や風向きにもよります。一回高い数値が出たからと言って不必要に恐れる必要はありません。
そして今回はTBSという報道機関が出した数字ですからいちおう信用しましたが、ネット界で流布している風説にひとしいホットスポット情報には耳を傾ける必要はないと思います。
また千葉県全体では、6月5日午前9時から6月16日午前9時までの文科省測定値は0.044マイクロシーベルトにすぎません。ネット界でホットスポットについてそうとうにいいかげんな自主測定値が氾濫していますので注意してください。
いずれにせよ、既に福島県や茨城県が独自に始めて、東京都も追随し始めた県内各地での放射線量測定による汚染マップを作りを早急に、しかも定期的に継続して行うべきです。
これはとうてい地方自治体にできることではありません。首相は自然エネルギーの全面買い取りを辞任の駆け引き材料に使っているようですが、その是非はともかくとして、まずは国民の日常的不安をしっかりと解消することから初めてほしいと思います。
国民、特に東日本の人間にとって見えない脅威と日々接する恐怖を政府は知るべきです。自然エネルギーの議論はその後ゆっくりやって下さい。
■写真 遅くなった田んぼもようやく青々としてきました。今年の稲はどうなるのでしょうか。1カ月遅れで台風と稲刈りがぶつからないか、出来ても平年並みで買ってもらえるか、村中が不安で一杯です。
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資料1 茨城県で測定された放射線量
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コメント
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ようやく国や自治体が動き出しましたが、相変わらずの縦割り行政で文部科学省・国土交通省・環境省がバラバラにやってたり、今度はやれ測定方法が…と。
報道も不安を煽るようなことばかり多くて困ります。
山形県でもMPは山形市と米沢市の2ヵ所のみで、先週になって大学屋上の汚泥から検出したとの通報を受けて、すぐに数ヶ所の側溝で計測するも、全部「県道沿い」という変な配慮がされてました。
現在、全市町村の担当職員を集めて測定方法の統一(地表1メートルなど)を図って随時公表する体制にようやく入りました。
あとはどれだけ迅速に、かつ細かい網をかけるかですね。
投稿: 山形 | 2011年6月17日 (金) 08時42分