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小出裕章さんの言葉

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小出裕章さんという私が尊敬する学者がいます。今でこそ非常に有名になってしまいましたが、3月12日以前にはまったくといっていいほど無名な人でした。

社会的な地位は60を過ぎられて退官が近いというのに未だ京都大学助教、つまり助手でしかありません。

そう言えば若き日の私も参加する機会を得た「公害原論」の宇井純さんも、いい歳をして助手でした。

おふたりは東大や京大では異端の人だったわけです。

しかし、宇井さんは日本で初めて系統的に公害研究に着手した創始者であり、小出さんもまた、今後に必ずできるであろう「脱原子力学」の創始者でした。

小出さんの本を手にすると、ある種の感動を覚えます。これは凡百の脱原発の時流に乗った人たちの本にはないものです。どういったらいいのでしょうか、温かい「魂」があるのです。

さて、先日福島から避難されている方から初めてコメントを頂戴しました。うれしかった。

その方も、今の放射能パニックを苛立たれておられました。ある人たちは言います。福島は水俣やチェルノブイリになる。30年は還れない。為政者まで言う始末です。

福島や茨城産の野菜を食べると甲状腺障害になる。ガンに罹る。

私たち福島や茨城の人間がそこに住んでいることをわきまえない言い様です。

私たちのふるさとがそこにあり、住む家があり、職場があり、置いてきた家畜があり、ペットも残されている。

全財産と、生きてきた思いでのすべてがいまでもそこにある。まだ住民たちの日常のぬくもりが残っている土地を、よくチェルノブイリや水俣になるなどと言えますね。

言葉を慎みなさい!表面の同情づらから、面白半分の顔がのぞいています。

小出さんは放射線の危険を危険だとはっきり言います。彼の説は傾聴に値するもので、近々取り上げてみようと思っています。

しかし、今日私が言いたいことはその説そのものではなく、彼の心根の部分です。

小出さんは、大人は福島や茨城の野菜や畜産物を食べるべきだと言います。なぜか?

それは私たち大人の世代が原発を作り、その恩恵を享受してきたからです。

原子力はたかだか電気を作るためのものでしかないと小出さんは言います。そのためにこんな大きなリスクを冒す必要があるのかと問います。

「たかが電気」のために、子供たちの安全や未来までもを売り渡していいのかと言います。

子供の生命は無条件に守られねばなりません。都会の消費者の人たち、特に幼い子供たちを持つ母親の人に、ひとりの茨城の農業者として言いたいのです。

子供は守って下さい。最小限のリスクでも回避すべきです。全身の神経を研ぎ澄ませて、知恵を集めて子供と家族を守って下さい。

そのために私たち産地が犠牲なることは厭いません。

しかし、大人の皆さんは違う。東日本の運命を共にする覚悟を持って下さい。あなた方の細胞は既に成長段階を終了しており、子供と比べてリスクは遥かに少ない。

そしてあなた方は私たち福島や茨城、新潟の原発立地県のリスクの上に生活をしてきました。このことを忘れないで下さい。

あなた方都会の消費者は、リスクは拒否するが、恩恵は享受するという。そんなことが今の東日本で許される贅沢でしょうか。

子供は手厚く守って下さい。そして大人の方々は、共にこの日本列島を覆った悲劇と戦いましょう。大人たちの責任で復興させましょう。

そして、私たちの世代が作ったこの原子力という怪物を、私たちの世代で石棺に葬ってしまわねばなりません。

 

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原子力事故」カテゴリの記事

コメント

東京在住のmimiです。都会の人が恩恵だけを享受しリスクを拒否しているわけではありません。もちろんそういう人もいます。でも、そうでない人もいます。むしろ、私の身の回りのエキセントリックに騒いでいる人たちは、つい昨日まで、コンビに弁当を夕食、居酒屋で夕食をとっていた人たちです。
まともに食事を作っていた親たちは、苦しい思いをしている人が多いです。確かに私たちは東京電力から電気を供給されています。仕事の関係でこちらに住まざるを得ず、子供は両親と一緒に住むべきだと考えるからです。停電もありませんでした。でも、東京が恵まれすぎていることに、何度涙したかわかりません。選べるなら東京電力意外から電気を買いたいですよ。でも、マンション住まいでどうやったらそれが出来るのでしょう?
都会の人は皆、自分勝手だとは思わないで下さい。そういう意味での対立は本当に悲しいです。
子供を育てていれば、自然、土、空気が人間の成長にどんなに必要か良くわかります。子供を見ていて、走り回るところも土もあまりない環境をいつもかわいそうだと思っています。私が自分の子供をかわいいように、福島の人たちも子供がかわいいだろう、どんなに心配だろうと、いつも考えています。
ところで、もう亡くなった方ですが高木仁三郎さんの「食卓に上がった死の灰」と、「市民化学者として生きる」という本を読んでいます。小出先生と同じようなものの見方を感じます。
お怪我お大事に。いつも遠くから応援しています。

投稿: mimi | 2011年6月 8日 (水) 09時18分

濱田様、
生産者の立場からの「子供は放射線被害から守れ」
との訴えは、なかなかできません。敬服いたします。

ちなみに私の親父(空襲経験ありの70代)は、3月12日の水素爆発の映像にはビビってましたが、『あれは核爆発ではないから』と説明したら落ち着きました。
その後はむしろ「オレくらいの歳なら、どうせ大して心配ないだろう」と言ってます。

その通りだと思います。もちろん全ての人が絶対に安全だなんて言いませんが。
そこが放射線被害の難しいところです。


話は逸れますが、
今朝ソユーズ打ち上げで話題になりましたが、宇宙飛行士の被曝量とかシャレにならないでしょうけど、今回の研究には注目してます。


北海道様。
常磐ハワイアンセンター、懐かしいですね。
私も35年も前に地区の子供会旅行で行きました。
人見知りの6才のガキにはあまり楽しめませんでしたが、フラダンスショーはよく覚えてます。
90年代に「スパリゾートハワイアンズ」に名前が変わりました。
少し落ち着いたら、大人の娯楽としてノンビリと泊まりがけで行ってみたいですね。

投稿: 山形 | 2011年6月 8日 (水) 09時27分

ほんとに、たかが電気を作る機械のために、私たち大人は何をやってきたんだろう。
電気があってもそこに人が住めなかったら何の意味があるのだろう。
私は母親として、子供を守る。放射能からも、いまだ地下型原発を推進なんていいだした政治家からも。

投稿: 茨城北部住み | 2011年6月 8日 (水) 10時56分

濱田様お体の具合は如何でしょうか?
私は福島県に住んでいます。事故以来情報源はほとんどネットです。もちろん全て信じている訳ではないし安全向きに話されている方に気持ちが傾いて行きそうになります。
それではいけないと思い原発に関しては小出さんの言葉だけを信じようと思っています。
メディアでは何かを伝えようと青筋立てて話されている方がいますがほとんどの人はそんなことテレビで言わんでも知ってるよということばかりです。子供たちも避難しなきゃならないことは分かっています。20mシーベルトが危ないこと分かっています。こんな世に誰がしたかも知っています。それでも行動を起こせない事情の方が大多数です。過去のことはどうでもいい、これからどうすればいいのか道に迷ってるそんな気分です。

投稿: shey | 2011年6月 8日 (水) 12時29分

たかが電気されど電気・・ですね。
電気によって経済が発展してきた事は間違いない事実です。
今回の事故をきっかけに、エネルギーについて国民的議論がなされる事は大切な事です。省エネ・自然(再生可能)エネルギー(水力・風力・地熱・太陽光・太陽熱)・火力(化石?LPG?石炭?)でどのくらいの発電が可能か、発電量に見合った省エネで経済活動が可能かどうか?そしてそれを何処に設置するか?
議論する事は尽きないと思いますが、やらなければならない事であります。
蛇口をひねれば、きれいな水が出る。スイッチを入れたら電気が灯り、部屋を暑くも涼しくも出来る。テレビもパソコンも使える。そんな当たり前の事を、制限される事に慣れていない現代人が、どこまで受け入れ可能かどうかですね。

浜岡も止まり、御前崎市長は「このままでは市の財政がもたない」と答えていました。設置市町村の立場も考えなければなりません。

都会の人がリスクを拒否している訳で無くても、現実的に東京のど真ん中や、お台場の埋め立て地に原発建設は出来ないでしょうし、火力発電所も無理でしょう。(極小規模なら有り得るかも?)
当然産業廃棄物処理場だって、都内には無いか、有っても数少なく、近隣県に頼っているのが現状だと思います。好むと好まざるを得なく実態としてはそのような構図になっている事だけは確かです。
「都会人」対「設置県(被災県)」と言う事での対立は無意味です。その無意味な対立=風評被害を防ぐ為にも、正しい知識と正しい情報が双方に必要なのではないでしょうか?それを、政府や専門家に求めているが叶わない事へのイライラだと思います。

投稿: 北海道 | 2011年6月 8日 (水) 13時50分

まあ、世界的に見て、日本の国土面積に、今の日本の原発の数は、多すぎると思いますし、自然エネルギーや小規模発電利用についても、世界の対原発との発電比率についても、多めですよね。
急には、難しくても、発電源バランスは、だんだん変えていく必要があると思います。また、今のところ、セシウムをうまくコントロール出きれば、農作物についても、何とかなりそうに思えます。
それには、やはり、現状の汚染データーが、正確というか、正直な値として、細かくたくさんほしいものです。

風力発電も、低周波振動とか、騒音問題とか、あるようですね。
太陽電池も、発電効率としては、いまいちですし。

レベル7では、ありますが、チェルノブイリよりは、かなり核種が少なく、総量も少ない分、今後、研究すれば、被害を低減させることは、できそうに思うのですが。。

投稿: りぼん。 | 2011年6月 8日 (水) 15時38分

山形様
常磐ハワイアンセンター改め「スパリゾートハワイアンズ」ですか、ありがとうございます。
もう少ししたら、定年となりますので、夫婦でのんびり行きたいと思っています。

濱田様
記事と関係ない話でごめんなさい。

投稿: 北海道 | 2011年6月 8日 (水) 17時06分

青空です。濱田様の意見に深く同意します。

私も関東圏に長いこと居りました。
日本の原動力であった重工業の工場からの公害も、火力発電所からの排ガスによる喘息も無縁で豊かな生活を謳歌し、世界最高峰の農作物畜産物を低価格で食べ、あり余る電機で快適さを享受してきました。
生まれてからずっとです。

私は、家内の実家で兼業農家を営む義父がいなければ農業の苦労や厳しさ、そして何よりも農業収入の低さを知ることはなかったでしょう。

都市に生きる人間はリスクをとらずに生きることができるという歪んだ構造になってしまいました。しかし都市である以上そういった方策を選ぶこと自体は自然です。
しかしいつの間にか、その構造を理解し負担を受ける地域に感謝することすら忘れてしまった人が多いのではと感じます。
口蹄疫やインフルの時もそうですが、なぜ生産者を追い詰めようとするのか私には理解できない。慮りや深い配慮、感謝こそすれ、なぜ貶めようとするのか。

心配であれば子供の居るご家庭が対処すればよいのです。十分に判断する情報は入手ができます。
ちなみに私は仙台におり(第一原発から80キロです)、乳飲み子、女の子も含め3名います。しかし福島県産や茨城県産も食べます。調理の仕方を工夫したり、水洗いをしっかりしたり、生野菜だけは遠隔地を食べるなどの工夫をすればよいのです。
毎日野菜ばかり食べるわけでもない。福島県産などだけ毎日食べるわけでもなく、消費者はその頻度を十分選べます。
私とて放射能は怖い。しかしならば自分の目と脳で考えどこまでのリスクは許容できるのかをしっかり調べ考えればよいと思います。
この世にノーリスクなどはあり得ません。ヒステリックにすべてを排除しようとしても不可能だと考えます。

すでに東日本全域が汚染された以上次に考えることは恐怖に戦慄くのではなく、どうやったら解決できるかを考え対処することではないでしょうか。

投稿: 青空 | 2011年6月 8日 (水) 20時39分

大人はリスクを承知で放射能被災地の食物を食せとの暴言を図れていましたが、頭に血が上ってしまわれたようですね。

国に対して保障を求めるのはあなた方の当然権利として理解しそのために起こる増税等は国民が感受すべきものだと思っておりますし、国に対して意見や不満を言うのもあなた方の自由でしょうが、電気を都会だけが使って恩恵を受けてきたというのはあまりにも矮小な考え方だとしかいえません。

資源の少ないわが国では物を作ることによって収入を得、それによって国内産を含む食物やいろいろな物資を消費できる状態にあったのであり、原発の恩恵は原発のない沖縄を含め日本のすべての人の上に降り注いでいたはずであります。

なにか都会の人間だけが地方の犠牲の上に胡坐をかいているので毒でもなんでも食え、というような乱暴な意見は納得できませんし、あなたのことを見損なったようであります。

私は思います、子供を守るためにも親は死ねないのであります。

投稿: 大坂在住 | 2011年6月 9日 (木) 02時36分

濱田様、連日のアップありがとうございます。
実は最初に謝らなければなりません。
私のコメントの書き方が誤解を生みました。
私は高校を卒業後福島を離れ、関東近県に進学して就職してからはずっと東京住まいで、生活の基盤はほぼ東京にあります。

故郷がなくなってしまうかもしれない。
大切な人たちがどうなってしまうのだろう。
あのときの動揺と恐怖は言葉に出来ないです。
福島を離れてからの人生のほうが長くなってしまいましたが、これほど自分の根幹に故郷があるとは思ってもいませんでした。
現在、父母はじめ一族郎党ほとんどの人間は県外や県内に避難しているか、役場も閉まり食料を売る店も無い村の自宅で細々と暮らしているかです。
姉妹は福一から35kmほどでしょうか、海沿いの市内に住んでいます。
事故の収束もみえず、放射能への不安も遠くの野次馬とは比較にならないところです。
愛する人たちが暮らす愛する故郷と離れて暮らす自分。
リスク背負い、生きていくためのお金と仕事を得ていた故郷。
その故郷で育った自分。
リスクが現実の事故になり、利権や思想や被災や差別や不安や放射性物質やその他もろもろを否応無しに背負った故郷。
都会の恩恵にあずかってのうのうと暮らす、2人の娘の母親として子供を守らなければならない自分。

方々に心が引き裂かれ、いまだに自分が何を考え何を思い何をしていったら良いのか皆目検討がつきません。
ただ正直に告白すると、苦しみ傷ついている故郷に戻りたいです。
そして大きな声で言いたいのです。
愛する故郷を踏みにじるな、と。

どこにでもあるぱっとしない、年寄りしかいない、きれいな山と川と田んぼと、抜けるような青空しかない、でも大切な大切な故郷なんです。
濱田様にはそんな気持ちに寄り添った記事を書いていただきました。
言葉ではいえないほど感謝しています。
本当にありがとうございます。

またまとまりの無い書き込みになってしまいました。
皆様のコメントを読ませていただき、青空様の冷静かつ血の通ったお言葉にうなずき涙しつつも自分のまとまりのなさと比べると・・・。
本当にすみません。
ご迷惑でなければまた書き込みさせてください。
山形様、北海道様、フラガール御覧になりましたか?
良かったら我が浜通りの誇る東北のハワイは10月の再開を目指しております。
本物のフラガールたちは再開と復活を目指し、40年前のように地元のために巡業に出ているそうです。
ぜひおいでいただければと思います。

投稿: bess | 2011年6月10日 (金) 00時08分

bess様

10月再開ですか、情報ありがとうございます。
もう少しで、職場的には「消費期限」切れますので、「東北のハワイ」に行きますよ。
濱田様
またまた本論から逸れて申し訳ありません。

投稿: 北海道 | 2011年6月10日 (金) 08時17分

bess 様。故郷を離れていたほうが故郷が愛しいものです。
あなたのコメントから故郷への愛情が伝わってきました。またコメントを下さいね。

投稿: 管理人 | 2011年6月10日 (金) 14時59分

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