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2011年6月 1日 (水)

原賠審の第2次指針が出ました

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うー、今朝は昨日張り切って梅雨の合間に草刈り大会をしたら腰にきたぁ。やった人ならおわかりでしょうか、刈り払い機ってブンブン回すので腰に来るんですよね。

しかも当日ではなく時間を置いてくるんだなぁ、これが。もう私も若くはないな、と実感。

3月12日前までは、刈った草はニワトリにあげていましたが、今は自粛。まして先日の大雨でじっとり濡れた草など論外的自粛。ああいやな渡世だなぁ。

いちおう私の住んでいる地域は県の調べでは、0.1マイクロシーベルト以下の安全地域、そして私の農場の農産物も「放射性物質検出されず」でしたが、安心はできません。なにせまだ事故は終わっていないのですから。

さて昨日、原子力損害賠償紛争審査会(原賠審)の第2次指針が決まりました。(資料1参照)

私の知り合いの農家にも来訪して調査をしていったようですが、担当官は非常に親身で丁寧な応接だったとか。

第2次指針はこんな内容です。
①4月までの出荷制限区域内のすべての食用農水産物、および食用畜産物。

②賠償項目としては
・出荷制限で出荷を断念した場合
・出荷制限後も、再開できるまでの損害
・米などの作付け制限
・牧草や放牧などの給与制限
・福島県の葉たばこのように行政関与による生産者団体の自粛

③損害項目としては
・価格低下に伴う損害や就労不能などに伴う損害
・検査費用
・解除後の農地や農機の再整備などの追加費用

④賠償対象地域
・政府が作付け制限を指示した区域
・地方自治体が放牧や牧草給与を制限した区域
・自治体が作付け、営農自粛を行った区域

・生産者団体が行政の指示で自粛した区域

意外だと言ってはなんですが、私はもっと木で鼻をくくったようなものを作ると思っていました。

審査会の第1次指針では直接の出荷自粛指示のみを対象としたために、いわゆる風評被害分が除外されていたのですが、当然のこととしてこちらのすそ野である政府、自治体指示分外のほうが多いわけです。

どうするつもりかと思って見ていましたが、この風評被害に関しても、「一定期間は、出荷制限区域内で生育した農林水産物について消費者や取引先が取引を敬遠する心理は合理性がある」として賠償対象に組み入れました。

パチパチ。ただし、花や木材、工芸品などの非食用のものまで風評被害にあっていたわけですから、そのあたりを次の7月の中間指針までどう扱うかが注目です。

もうひとついい意味で意外だったのが、ホテルやレジャー施設などの観光業では、福島県内に拠点を置く施設の予約キャンセル分などで生じた損害額を賠償の対象としたことです。これにもパチパチ。

ただし、この観光施設の損害は、大震災移行の自粛ムードの要因もあるために市場動向を見極めて、福島県外まで拡げるかどうかを決めるそうです。

わが茨城県の観光もほぼ壊滅状態でしたが、これは明らかに放射能禍の影響によるものだと思います。

また観光業は単に旅館やレジャー施設だけではなく、土産物という形で地域の物産を売る大きなセクターです。土産物としてのお菓子や料理店なども含まれます。陶器、木工、織物、染めなどの工芸品もあるでしょう。

つまり地域の第1次産業の農林水産業、モノ作りの第2次産業、そしてサービスの第3次まで丸ごとふくまれてはじめて「観光業」なのです。ですから、地方においてはこの観光業が非常に大きな位置を占めています。

これがいっぺんに破壊されたのが今回の原子力事故による風評被害事件でした。ある意味見えやすい農畜産物だけではなく、このような側面もしっかりと原賠審は理解してほしいと思います。

そして精神的苦痛についてですが、避難所、仮設住宅などを4段階に分けて分類して賠償をすることにしたそうです。この部分は微妙ですね。

賠償対象を明らかにするためにレベル分類せねばならないのは理解できます。しかし、自宅にいても避難区域の家屋内退避をよぎなくされたために、出勤はおろか食料の買い出しにも行けなかった人たちが多かったのですから、住む場所だけとって精神的苦痛は一概には言えないのではないでしょうか。

いちばんの問題は千葉県が出荷制限指示のあった香取と旭市以外が補償の対象とされなかったことです。

これはまったくおかしな話で、例えばねぎなどは農水省調べでも制限区域の出荷はわずか4%しかないのに、千葉県全体は前年比で30%も落ちてしまっています。明らかな風評被害です。果菜、根菜、花き、果実も同様です。(「日本農業新聞」6月1日)

これでは千葉県の風評被害にあった農家はまったく救われません。ぜひ次回の中間指針でしっかりとした救済策を打ち出し、一刻も早い仮払いを支払うべきです。

ところで、今後7月の中間指針まで、電力業界や東電に大量の資金注入をしてしまった銀行業界、そしてその守護神たる経済産業省を中心に、いかに賠償範囲を狭めるか、いかに賠償金額を値切るかの圧力がしっかりかかってくると思われます。(資料2、3参照)

そして東電は間違いなくこの巨額賠償金を、電気料金値上げに転化しようとすると思われます。

電力会社は、電気事業法で、発電所、事業所などの施設費、人件費、燃料費などのコストを一括して一定割合(今は3%)で利益に上乗せできる「総括原価方式」という一般民間会社では考えられないようなバカな特権を享受しています。

これがバカ高い原発を増設したり、廃炉など気にせずに原発を増設できた秘密です。「コストが大きいほど利益が上がる」という非合理の極みの総括原価方式がなくならない限り、電気会社にとって原発事業ほどボロイ儲けの商売はないのです。

それはさておき、今回の原子力事故でもいちはやく夏期の値上げを表明して世論から袋叩きに会いましたが、性懲りもなく東電は電気料金にオンすることを狙って来ることでしょう。

電気料金の値上げには、「原発停止しての電力の安定供給」などといったたわごとにだまされずに拒否していかねばなりません。

■写真 被災前の霞ヶ浦の舟溜まり。今回の被災で湖の漁港や堤にも被害が出ました。

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資料1 日本農業新聞6月1日(クリックすると大きくなります)

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 ■「まだ先見えない」「被害一緒なのに」原発賠償範囲指針 農漁業者ら憤りと恨み節

 福島や茨城、栃木、群馬4県、千葉県の一部の農水産物や福島県の観光は賠償範囲に含まれることになった。31日、決定した東京電力福島第1原発の賠償範囲を定める第2次指針。範囲は決まっても、出荷停止や風評被害で大きな打撃を受けた地元の農業・漁業者からは「いまだに先が見えない」との声が上がる。一方で、今回の賠償対象から外れた周辺自治体も風評被害で苦しんでおり、「うちも一緒なのに…」と恨み節も聞かれた。

 「漁師の中には原発事故以降、全く収入がない人もいる。当然の決定だと思う」。31日、賠償対象になったとの決定を受け、福島県漁業協同組合連合会(JF福島漁連、いわき市)の関係者はこう打ち明けた。

 安全が確保できないなどとして事故直後から漁業従事者に操業停止を呼び掛けているJF福島漁連。「事故の影響で出漁できなかった」として同日、4月末までの損害分計約14億5300万円の賠償を東電に請求した。

 今後も月ごとに被害額を取りまとめて請求する予定で、「原発事故が収束しなければ漁も再開できず、先が見えない」と憤る。

 出荷規制を受けたホウレンソウとカキナの実害分を東電に請求しているJA群馬中央会(前橋市)は、「生産者はホッとしていると思うが、(賠償の)時期が明らかになっていないのが気になる。できるだけ速やかにやってほしい」とコメントした。

ただ、今回の指針では、食用以外の飼料作物などは今後の検討課題として対象に含まれていない。同中央会農業対策部の大橋広典次長(45)は「県内では牧草や切り花なども影響を受けている。こうしたものについての指針も早めに示してほしい」と注文をつける

 一方、3市町(旭市、香取市、多古町)の農産物が賠償対象となった千葉県では、同様に風評被害を受けながらも賠償の対象外となった近隣地域の関係者に失望が広がった。

 3市町に近い山(さん)武(む)市にある山武郡市農業協同組合では、県内のホウレンソウやシュンギクなどから国の暫定規制値を超す放射性物質が検出された3月下旬から4月上旬にかけて、卸先のスーパーや消費者からの返品が相次いだ。

 同組合の林亮一・部長代理(56)は「現在は徐々に回復してきているが、被害を受けたのはこちらも同じ。何らかの補償があると期待していたが…」と肩を落とした。
(産経5月31日)

■資料2 東電、審査会に賠償限度配慮などの要望書 批判必至も

福島第1原発事故の賠償問題で、東京電力が賠償限度への配慮や算定基準の明確化などを求める要望書を、原子力損害賠償紛争審査会に提出していたことが6日、分かった。審査会の議論に東電の主張を反映させる狙いがあったとみられ、審査会の独立・中立性を損ないかねないとの批判も出そうだ。

 審査会は原子力損害賠償法に基づき、政府や産業界から独立した立場で賠償の目安となる指針を策定。4月28日に原発事故の賠償範囲の第1次指針をまとめたが、要望書は3日前の25日に提出された。この中で東電だけで賠償費用を負担するのは困難だと指摘。東電が負担可能な賠償限度に配慮しつつ、第1次指針を策定するよう要望した。

 さらに賠償手続きを公正、円滑に行うために、損害内容と原発事故との因果関係を判断するための基準の明確化や、損害を認定するための証拠基準を指針に盛り込むことなども求めた。
(産経5月6日)

資料3
電気事業連合会の八木誠会長(関西電力社長)は20日の会見で、政府が決定した東京電力福島第1原子力発電所事故の損害賠償支援枠組みについて「原子力は国策でやってきた。被害者に迅速で十分な補償を行うには、東電だけでなく国も負担すべきだ」と述べ、国の賠償負担についても明確化すべきだと訴えた。

 政府の支援枠組みは、交付国債を、新たに設置する機構に交付して、公的資金を投入し、東電は長期にわたり返済する。この点について八木会長は、「原子力損害賠償法では、国による援助が明記されている。国の負担は交付国債だけでいいのか」と疑問を呈した。

 だが、枠組みそのものについては、賠償実現や電力安定供給のため、電事連加盟各社の社長が重要性を確認。「各社の負担金は株主や顧客に説明できるよう(金額や方法を)明確にする必要がある」ことを強調した。
(産経 2011.5.20 21:16)

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コメント

IAEAの報告書が提出されたとの事で、短期間の調査にも関わらず、的確なコメントが為されているようです。原子力安全・保安院の経産省所属も問題点として指摘されています。

今朝の「朝ズバッ」では、2号機の冷却水循環装置が設置された事が報道されていました。報道によれば、最後の砦的装置も以前は設置されていたのにも関わらず、浜岡原発で事故があってから撤去したように伝えていました。
真実は分かりませんが、都合のよい「安全神話」を盾に不都合な事は省いていたのでしょう。

本日の記事の賠償の件ですが、賠償の財源を東電の財産を売却しても尚不足した場合は、当然電気料の値上げしか手はないでしょう。政府も賠償と福祉をどさくさまぎれに消費税の10%を打ち出していますから、そのような方向に決まると思います。
電気料や税は払いたくないが、十分な賠償や年金・医療など福祉も充実させる良い方法があればOKですが、値上げ(税率アップ)以外には手はないでしょう。
薄く広く集めて、必要な所へ集中投下する必要があると思います。ただ、10%が重いと感じるか軽いと感じるかは人それぞれによって違いはあると思います。
本当に福祉と賠償(復旧・復興)のみに支出するなら良いですが、今までが今までなので、信用してくれ・・・と言われても信用できないのが本音の所です。

本当に福祉と賠償(復旧・復興)のみに支出するなら良いですが、今までが今までなので、信用してくれ・・・と言われても信用できないのが本音の所です。

もともと、現在の消費税は、福祉目的税と同じと言って、国会を信用してください。という話で、一般会計に入れた経緯があります。また、5%のうち、地方配分について、国が、全権を握っている構造からして、10%にするなら、何に使うのか、はっきりしないと、いつも、言うこととやることは、違うので、まあ、10%にしても20%にしても、福祉や復興には、すずめの涙くらいしか、回らないでしょう。どこかの利権に使われるくらいなら、日本の累積赤字を消してほしいものですがね。

最近の政治家は、政治屋ばかりですから、日本をえさに、食い荒らすことしか、考えていないのでしょうね。(本来、だれにも、食い荒らされないような法案をつくるべきなのに、官僚、政治家とも、問題が起きたら、流用できるように、国民に内緒で穴を作ること、に、精を出す。)

この審査会は文科省のですから、今後予断は許しません。しかも、仰るとおり、補償外の近隣地域の農家等はこの時点で既に、泣き寝入り状態です。補償がどうなるかは死活問題であるのに、日本農業新聞以外大きく取り上げるマスコミが少ないのも残念です。

しかし、一次産業や観光業など自然風土に立脚した産業に携わる人々や、全国の原発近隣地域の人々は注目しているはずです。
そもそも、私たち農家と原発は相容れません。原発はやはり、私たちの生産基盤を根こそぎ奪いさる危険を伴います。今後の成り行き次第では、農家や漁業者は全国の原発即時廃炉を訴えるべきだと思います。


ところで・・・・この国ではなぜ、
子供の放射能リスクを少しでも避けようとする消費者の思いが、原発廃止へのうねりにならないのか、私には全く解せません。


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