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2011年7月

2011年7月31日 (日)

福島原発からの高濃度汚染水はどこに行ったのだろう?

018
夜来風雨の声、明け方地震ありと、まことに不吉な朝です。豪雨の中の地震はほんとうに不気味でした。

福島圏の皆様、被害はいかがでしょうか。震災で緩んだ地盤が、この豪雨と地震でいっそう被害が拡がらないか心配です。

放射性物質だけに関して言えば、一定の除染効果はあるかもしれません。例えば家屋や道路などですね。

家屋などの建造物の除染は、要するに放水して洗うことですから、これだけ激しい雨だと少しは除染されたかもしれません。

ただし、放射性物質は「別な場所に行く」ことはあっても消滅することはないという実にイヤラシイ奴ですから、なくなりません。

今度は水の排水溝や雨樋、下水などの周辺に溜まりますので、ゆくゆくはその周辺からも追い払ってやらねばなりません。お子さんは近づけないように。

市の下水処理場などは線量が高くなっているはずです。畑や牧草も、土壌の粘土質や牧草の中に取り込まれていますから雨では除染されることはありません。

ただし、一般的な土壌ですと1.5m~2m沈下するに1年かかりますので、沈下して地下水などに出る心配はありません。

今現在の話ではなく、5、6年先の話とすれば、浅い井戸は土壌の除染を現時点でしておかないと、やがて井戸水に出る可能性があります。

私たちの地方はだいたい40m以上ですから、気にする必要はないですが、海岸地帯はおおむね浅井戸ですから毎年計ってみることをお勧めします。

さて、地下水といえば、福島第1原発の水はどこに行ったのでしょう。そう、あのTVでも盛んに見た大量放水の行方です。

5月13日に東電は1号炉に作業員を入れて、初めて実際の調査をした結果1号炉が空で、メルトダウンしているのが分かったと発表しました。

これでチェルノブイリの石棺ならぬフクシマの水棺計画は冒頭から破綻してしまいました。

それにしても1号炉が空ですと?ゲッ!

すると、2カ月間続けた数千tともいわれる放水はどこに消えてなくなったのでしょうか?

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                   (YouTubeアニー・ガンダーセンより)

原発構内に残された瓦礫にすら高線量の放射性物質が付着して作業を手こずらせているくらいですから、この破損した原子炉そのものを洗った水は、あまり考えたくないほど汚染されていると思われます。

こんな汚染水が数千t消えてなくなっていたとは。

行き先は、1号炉の圧力容器、格納容器を貫いて、さらに最後の砦の建屋コンクリート床をも貫通し、一部は地下水に出続けている可能性が高いと思われます。

構内に溜まった水はトレンチから排水プールに入って浄化されるはずでしたが、すべてを受け入れる容量がないので、これも一部は海洋に出続けています。

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                  (YouTubeアニー・ガンダーセンより)

2号炉、3号炉も同じように格納容器から漏れだしてトレンチから一部が溢れています。

この高濃度汚染水は地下水に入り、やがて井戸などから汲み上げられることになります。川や湖、海などの水系も汚染していきます。

ただし水の浄化は大変に難しいのですが不可能ではありません。

セシウムはバーミキュライトやゼオライトで吸着することができます。むしろヨウ素のほうがこれらを通過してしまい活性炭に少量付着するだけですのでやっかいです。

ただ、ヨウ素は半減期が8日間ですので地下水にまで沈降する間に半減期を迎えてしまうのが慰めでしょう。

一般の浄水器では放射性物質の除去は期待できません。逆浸透膜タイプの浄水器でヨウ素を除去できるだけですが、このタイプは大変に高い(数十万円)ので出回っていません。

地下水系というのは地下で複雑に入り組んでいますから、ぜひ福島県の原発に近い地域の方は井戸水を調べられてから飲むようにお願いします。

私たちは放射能という魔物を檻から出してしまいました。この魔物を再び無害に閉じ込めるまで気が遠くなるような時間がかかります。

毎度同じことを言って恐縮ですが、国はまったく頼りになりません。再生エネルギーなどという先の話をフワフワしているだけで、目の前にある国民の放射能の脅威に無関心です

だからこそ私たち国民が自ら調べて、自ら除染するしか方法はないのです。よく調べて、納得がいったものだけをお子さんに与えて下さい。

2011年7月30日 (土)

福島第1原発4号炉が倒壊しないことを祈ります

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福島県の一部に退避勧告が出たと聞いてギョっとなりました。豪雨によるものと分かってヘナヘナ~としました。いや豪雨でよかった。(゚ー゚)

もとい、豪雨には充分お気をつけ下さい。

私は、てっきりこの間続いた地震や豪雨で地盤がゆるんで福島第1原発4号炉が倒壊でもしたのかと思いました。

4号炉の建屋は明らかに傾いています。たぶん補強材を入れていると思いますが、倒壊でもした場合・・・あああんまり考えたくはありませんが、大量の融解した使用済み燃料棒が地面に投げ出されて新たな原子力災害に発展する可能性も捨てきれません。

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                (YouTubeアニー・ガンダーセンより)

このことは、先日来日したECCR(ヨーロッパ放射線リスク委員会)の科学委員長・クリストフー・バズビー博士が来日した時に漏らした意見です。

バズビー博士は科学者ですが、脱原発運動の活動家ですので、まぁ2割ていど割り引いて聞いたほうがいいのですか、4号炉は建屋の屋根が既に吹き飛び、核燃料棒がむき出しの状態になっています。

実態は私には分かりません。最初に爆発を起こした1号炉、そして3号炉ですら未だ本格的な調査がなされていないからです。

さてこの4号炉といえば、使用済み燃料プールの水があるのかないのかといういちばん知りたいことがわかっていません。

米国の原子力専門家やイギリスの原子力専門家は、福島第1原発4号炉の使用済み核燃料2[ールの水はもう無いだろうと言っています。

一方、政府は「いや安心しろ、水はあるんだ」と言い続けてきました。

情報隠匿のプロが言うことですから、おおかたの国民は眉がピチャピチャですが、真実は実際に4号炉に入って近距離で調査されるまで分からないということになります。

3月から4月の重大局面で嘘ばかり言った報いで、なにを言っても「またなにか隠しているんだろう」という風に勘ぐられます。

政府のいい分は、4号炉の破壊した壁からプールの水が見えたということです。これは空中からの映像と目視によっていますが、さて信憑性はいかがなものでしょうか。

政府の発表には悪いクセがついていて、まず非常に楽観的な発表をします。

「爆発する可能性はない」と言っていたそばから爆発すると、今度は「メルトダウンはない」となり、隠しきれなくなると、「実はしていたが、わからなかったのだ。文句あっか」という具合に居直ってしまいます。まったく困った人たちです。

この4号炉問題でも、「水はある」と言う前に複数の方法を使って確証を取るか、あるいは、「現状ではあると思うが、複数の証拠が上がっていない現状では実地検分しないと分からない」と説明すべきでしょう。

そしてもう一点。4号炉のこのプールには使用済み燃料だけではなく、点検用の通常の核燃棒も保管してありました。これが爆発したと言われています。

というのは、4号炉は稼働していなかった、つまり「冷温停止」状態だったわけです。今、しゃかりきに1号炉、3号炉を、なんとか冷やして冷温停止にしようとしているいわば安全圏ですね。

この安全であるべき状態から3月15日にプール周辺から爆発してしまったわけですから、核燃料棒が融解していることは間違いありません。

この融解の規模はよくわからないのですが、英米の原子力専門家が着目しているのが、、プールの水温です。

核燃料棒はジルコニウムという硬い高温に耐える金属のチューブに収まっています。これが損傷すると中から超高温の核物質がドロドロと出てきます。

このため水素が発生して水素爆発が起きたわけですが、それ以降もプール内には核燃料の破片が散乱して、今もしつこく発熱を続けていると思われます。

爆発前の水温は80℃でしたので、今の水温が分かれば核燃料棒がいったいどれだけ溶け出たのかの目安になるわけです。

プールの水温は、爆発以降は沸点に達しています。となれば、沸点に達した水がどれだけの時間でなくなるのかは自ずと計算できるはず、と英米の専門家は指摘します。

また、緊急放水の時に簡単に4号炉の建屋壁が破れてしまいましたが、これも壁が核燃料棒による高温にさらされてパリパリの状態になっていたために、水に当たって割れたのではないかと考えられています。

私は1号炉、3号炉はなんとか冷却水の循環を取り戻していくだろうと思っています。どれだけかかるのかは皆目分かりませんが、日米仏の叡知を結集してなんとか抑えこめると思っています。

むしろ問題は、この4号炉グラグラ建屋のてっぺんに鎮座する使用済み燃料プールです。

これが続く福島沖の地震や豪雨で倒壊しないことを心から祈ります。まだ「フクシマ」は終わったわけではないのです。

2011年7月29日 (金)

ここまで来たら全都道府県での全頭検査は不可避です

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先日の土壌測定の記事についてあおやま様から情報を頂きました。ありがとうございます。

ご指摘のように茨城県も確かに土壌の放射線量測定をしております。
「県内農用地の土壌調査結果(4月8日)」

http://www.pref.ibaraki.jp/important/20110311eq/20110408_20/

問題は統計上の母集団(*)が少なすぎることです。
*母集団・・・調査対象のとなる数値,属性等の源泉となる 集合全体のこと

市でひとつではなんとも言えません。「やらないよりましね」としか言い様がないのは三つの理由です。

ひとつめは、検体数がわずか各市一件ではほとんど無意味。

ふたつめに、どのような場所を選んだのかの選定理由が不明。

みっつめに、どこで測定したのか住所まで記載しろとは言いませんが、少なくとも大字(おおあざ)名ていどは公表しないと、統計として無意味。

というわけで、意地悪く見ると、いちばん放射性物質が出そうもないところを恣意的に選んで採取したんだろうと勘繰られかねられません。

畑にしても、ロータリー耕耘した畑だと線量は減りますから、トラクターがけをしたのかどうなのかのコメントも欲しいところです。

また単に「農用地」としか書かれていませんので、これが今問題となっている牧草地なのか、畑なのかも分かりません。

もしやるなら、全農地をしろとまでは言いません。能力的に無理です。

まず市をグリッグに切って、それぞれに座標記号を与えます。

たとえば、南北をA座標とすれば、東西を数字の座標とします。ですから北からA、B、西から東に1、2と座標記号を振っていきます。

このグリッドの大きさと測定箇所の数のルールを作り、測定方式と器材を決定します。

そしてこの検査報告については所有者名や番地までは公表する必要はありませんが、大字名までは特定して公表すべきでしょう。

ここまでやれば、茨城県は「汚染マップ」をもっていると胸を張れます。なにもしないで、チョコチョコと恣意的に計って「やっています」と言っても、信頼は得られません。

さて、現在茨城県では、牧草地の調査はごく少数のサンプリング測定しかされていない実態です。

藁は当然として、早急にすべての牧草地を一枚残らず測定しないと、福島や宮城の轍をまちがいなく踏むことになります。

そして全頭検査もここまで来たら不可避でしょう。畜産業界と行政は、BSEと同じ対応をせねばならないと覚悟すべきです。

もはや全国規模でセシウム藁はバラ撒かれてしまいました。農水省は早急に予算を作って全都道府県で全頭検査体制を構築せねばなりません。

ここでセシウム藁問題を断ち切らないと、とんでもなく連鎖し続け、長期化してしまいます。

それでなくとも、これは農水省が引き起こした人災なのですから。

■写真 合歓木です。私はこの樹が好きです。なんでか安らぎますよね。

           ゜。°。°。°。°。°。°。°。゜。°。°。°。

広がる全頭検査、茨城・栃木も…機器確保が課題

放射性セシウムに汚染された肉牛や稲わらが各地で見つかった問題で、自治体による全頭検査の動きが広がっている。   

   28日には、茨城県と栃木県が全頭検査を行う方針を示し、千葉県も「全戸検査」すると発表した。すでに山形県や、静岡県のJAが全頭検査を始めているほか、岩手、宮城、秋田、新潟、群馬、岐阜県などでも全頭検査する方針を固めている。しかし、検査機器の不足などから出荷が滞る恐れもあり、依然、農家の苦悩は深い。

 栃木県の福田富一知事は28日午前、「栃木のブランド牛の名声や安全を保つため、全頭検査に移行したい。来週中くらいまでには方針を決めてスタート時期を明確にしたい」と述べた。同県ではこの日、農家1890戸を対象に出荷牛の肉を調べる「全戸検査」と、県内JAによる独自の全頭検査も始まった。

 茨城県は8月から、県内処理する肉牛の全頭検査とともに、県外に出荷する農家に全戸検査を行う。県は簡易検査機器なども導入して検査態勢を整える。千葉県の全戸検査は8月3日からで農家353戸が対象。

 ただ、多くの自治体で検査機器の確保が課題となっている。農林水産省によると、放射性物質の検査機器「ゲルマニウム半導体検出器」は1台約2000万円。民間検査機関なども含め、全国に120台程度しかないという。

(2011年7月28日14時41分  読売新聞)

2011年7月28日 (木)

セシウム腐葉土まで出た。落ち葉から堆肥への新しい汚染ラインの出現

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まぁよく次から次に問題が起きるものです。今度は腐葉土です。

これでもうひとつの、落ち葉⇒堆肥⇒畑という汚染ラインが確認されたことになります。 

1万1000bq/㎏のセシウム腐葉土が栃木の業者から出荷されてホームセンターに出回ってしまったようです。そしてかなりの量が既に消費されてしまいました。(資料1参照) 

製造業者によれば、これは日光と宇都宮近辺で採取された落ち葉が原因のようです。 

日光は0.5μSv/hの被曝地域ですから高濃度に被曝していたと思われます。
(見飽きたかもしれませんが、資料2を見てね)

この日光付近で栃木県内から集められた落ち葉を収拾し、ある程度腐植させた後に原料としてこの腐葉土製造業者に販売していたようです。 

この製造所のある地形は、周囲を小高い山に囲まれた窪地にあるそうで、この業者には気の毒ですが、フォールアウトした放射性物質が蓄積するにはうってつけの条件です。

この「落ち葉」と言われるものの正体は、よく思われるような山でかき集めてきたものではありません。公道や公園の整備作業によって出る枝をチョッパーにかけ粉砕したもの(バーク)や落ち葉で、30日ほど寝かせた後に堆肥業者や農家に販売します。

この集められた落ち葉は、樹木の根のホットスポットに堆積していたものですから、セシウムが検出されて当然です。

この落ち葉収拾は国や県の指名業者が行います。この指名業者は堆肥原料業者も兼ねており、、行政から金をもらって清掃した「ゴミ」を堆肥原料として販売できるという二重の役得を持っていました。 

多くの堆肥は、ホームセンター用の一般消費者向けばかりではなく、むしろ農家相手の業務用堆肥がメーンですので農家堆肥にもセシウムが検出される可能性が高まったことになります。

というか、既に農家堆肥にも入ってしまっていると考えるべきでしょう。私にはホームセンター向けよりこちらのほうが心配です。

さて、現在、セシウム藁を供与された牛の糞尿処理が行き詰まっています。

それは東北、関東全域で「堆肥の流通を自粛」する通達が出されているからです。このお達しにより、牛農家は糞尿処理の行き場が消滅してしまいました。

受け入れる各地の堆肥センターは出所がないので、満杯状況です。と言っても牛農家では毎日糞尿が出るわけですから、このまま行くと牧草地に過剰に散布するしか方法はなくなることになります。

一方、畑農家の側では現在でも畑に散布すべき堆肥が不足し始めており、東北、関東全域の農業の足元が揺らぎ始めています。

せっかく化成肥料から有機質堆肥を使うことで品質向上に努力してきた農家がいちばん困るという結果になってしまいました。

長年かけて地域で作り上げてきた畜産農家-畑農家の循環作り(耕畜連携)の環もズタズタになりつつあります。

早急に堆肥の流通再開の基準を農水省は明示し、これだけ広域に拡がった藁⇒堆肥汚染対策をすべきです。

ところで実は、この腐葉土問題は国交省にも責任があります。国交省は知らぬ顔の半兵衛を決め込んでいますが(←比喩が古いね)、先ほどお話したようにこの腐葉土や堆肥の原料となった落ち葉やバークは、国交省管轄の国道のものが大きな割合を占めています。

国交省は、放射能汚染は農水省と厚労省がやればいいと考えて、他人事のようにこの他人の不幸を眺めていたはずです。

そして福島、茨城、千葉、栃木、群馬、岩手にまで広域に拡がった放射能汚染地域に多くの道路、河川、湖があったことを忘れているようです。

国交省はこの道路脇の街路樹の根周辺、側溝の放射線量を測定したのでしょうか?たぶんしてはいないはずです。

していればあのような高線量の落ち葉の収拾を許可するはずがありません。道路整備の落ち葉といういわば「ゴミ」の最終処分から、またもや行政の怠慢が透けて見えてきました。

最後にひとつだけ追加しておきます。
今ネットではこのセシウム腐葉土を使った市民農園から採れた野菜に放射性物質が移行することを騒いでいますが、あまり心配しなくていいのではないですか。

セシウム腐葉土が1万bq/㎏あったとして、それは堆肥全体のおおよそ2~3割です。腐葉土だけで野菜を作ることはありえません。チッソが不足して成長栄養が不足するからです。

とすると、多めに見ても3千bqが堆肥に移行する正味なわけです。

それが土壌に入ったとしても、確かにセシウムはカリウムの挙動と似た動きをするので作物が吸い上げることはありえます。しかしその量はと言えば、下の表(資料3)にある移行係数どおりです。

もっとも多いサツマイモで0.03、つまり100分の3、よく作るほうれんそうで0.00054、1万分の54です。

ですから、ほうれんそうならば1.62bqしか移行しないことになります。まったく問題がないと思いますが、またこんなことを書くと「東電から金をもらっている」と書き込まれるのかな(笑)。

ええ、確かに東電から金もらってますよ。うちは13年前から太陽光発電を東電に売ってますからね。 (o^-^o)

■写真 怪しげに葉を揺らすヤツデ。 

            ゜。°。°。°。°。°。°。°。゜。°。°。°。

■資料1 NHK 7月26日 8時0分

 

市販の腐葉土から放射性セシウム  

 

秋田県内のホームセンターで販売されていた栃木県の業者が出荷した腐葉土から、放射性セシウムが検出され、秋田県が購入した人に使用を控えるよう呼びかけているほか、ホームセンターは、東北地方の店で販売されている同じ業者が出荷した腐葉土をすべて回収することにしています。 

放射性セシウムが検出されたのは、新潟市に本社があるホームセンター「コメリ」の秋田卸町店で販売されていた腐葉土です。 

秋田県によりますと、この腐葉土は栃木県の業者が出荷したもので、1キログラム当たり1万1000ベクレルの放射性セシウムが検出されたということです。 

腐葉土については、放射性物質についての基準はありませんが、国は下水道の汚泥を肥料の原料として使用する場合は放射性セシウムが1キログラム当たり200ベクレルを超えないよう基準を定めています。 

放射線量については、腐葉土の袋から1メートル離れた地点での空間放射線量は1時間当たり0.06マイクロシーベルトで、秋田県は健康には影響はないレベルだとしています。 

秋田県は、7月中旬以降に秋田県内のコメリの店で同じ業者が出荷した腐葉土を購入した人に、使用を控えるよう呼びかけているほか、店に販売自粛を要請しました。コメリによりますと、同じ業者が出荷した腐葉土は東北地方の店で販売しているということで、今後、すべて回収し、処理方法については行政と協議するとしています。

 

■資料2Photo

 

緑色と黄色のエリアに注目。緑色は0.25μSv/h(毎時マイクロシーベルト)以上、黄色は0.5μSv/hから1μSv/hのあいだです。 

爆発以前の関東地方の放射線量はだいたい.05μSv/h前後ですから、5倍から20倍は高い数値が観測されています。
日光は黄色地域なのがわかります。 

■資料3土壌から野菜へのセシウム移行係数(農水省HPより)

・ホウレンソウ・・・・・ 0.00054

・キャベツ・・・・・・・・・ 0.00092

・ハクサイ ・・・・・・・・・0.0027

・レタス ・・・・・・・・・・・0.0067

・カボチャ・・・・・・・・・ 0.0038

・キュウリ ・・・・・・・・・0.0068

トマト ナス ・・・・・・・0.00070

・イチゴ ・・・・・・・・・・ 0.001

・タマネギ・・・・・・・・・0.00043

・ネギ ・・・・・・・・・・・・0.0023

・ダイコン ・・・・・・・・0.00080

ニンジン・・・・・・・・ 0.0037

・サツマイモ・・・・・・・0.033

2011年7月27日 (水)

電話一本で防げたセシウム牛事件

001
セシウムが検出され暫定残的規制値を超えて流通している牛肉を全量買い上げる政府方針が出ました。 

「日本農業新聞」(7月27日)によれば、セシウム藁をを与えられた牛肉で暫定規制値500bq/㎏を超える肉はJA全農、全国畜産農協連合会などの農業団体がかいあげて焼却処分に回されます。 

またセシウムが規制値以下の牛肉も調整保管し、業界団体の判断で買い上げて焼却処分にすることになりました。 

同じく同紙(7月26日)によれば、全頭検査は既に県やJAで始まっています。ただし、こちらは検査機器の県による保有状況にバラつきがあって、そうそう簡単にはいかないようです。(資料1参照)。 

これは食品の放射性物質を検査する機器が1000万円を超える高額な上、メンテナンスだけで年間100万円もする高価な器材のためです。

こんな全国化する以前は、原発立地県の福島県、茨城県など数少ない地域にしか設置されていませんでした。

例によってですが、器材が県によって大きなバラつきがある上に、検査器材はその測定方法で大きく計測値が変わるものですが、その扱いの統一基準もルールもない状況です。 

まさにないないづくしですが、消費者が学校給食で牛肉を忌避していくような状況をなんとか食い止めようと各県や畜産団体は必死になっています。 

しかし、どのような規模でセシウム藁が全国に拡散したのか、未だ全貌は掴みきれていない状況です。

このようにセシウム藁が肉に移行し、あるいは堆肥の中に入って農産物の二次汚染の連鎖をしていくなどという事態は、もっとも避けるべき最悪の事態でした。

セシウム牧草⇒牛という単線の汚染経路ではなく、セシウム藁⇒藁の卸業者⇒全国へ⇒全国の牛肉に移行という複々線の汚染回路が開かれてしまったのです。

そして今の時点では明らかになっていませんが、セシウム牧草を食べた牛の乳や糞尿による堆肥という汚染ルートが存在すれば、もはや手のつけられない混乱状況になっていくことでしょう。

もはや農畜産物を網羅する全国規模の放射能汚染のカオスです。 

しかしそれは実に簡単に防げました。農水省が3月中旬に福島県の農水課に一本電話を入れさえすればよかったのです。

農 「♩ツルル~、もしもし、福島県さんですか。農水省生産局ですが、どもどもお疲れさまです。おたくの県で飼料用の藁は今の時点で野外にでている状況ですか?」

福 「どもどもお世話になっています。福島県農水部畜産課です。うちの県は去年は雪が多くて、例年なら野外に出ていない藁がごっそり野外にでている状況です。」

農 「そうですか。では牧草と一緒にその藁はエサにしないように農家に至急通達してください。正式文書は後ほどファクスしますんで。よろしくどうぞ。どもども」

福 「了解しました。どもども。」

チャンチャン。こんな電話一本で今回の膨大な費用をかけて、国産牛肉のブランドを地に落とした事件は防げたはずでした。こういうことを行政の不作為といいます。

こんな簡単な確認ミスをした担当官は名乗り出るべきですな。民間会社ならクビですが、お役人にはクビがないんでしたね。

ここまで汚染事故を大きく複雑化されて、しかも農家はこんなことまで言われる始末です。

例の放射能雲の移動図を作った群馬大学早川由紀夫教授です。せっかく専門でいい仕事しているんですから、バカなこと言わないでいただきたいもんです。

引用するだけで虫酸が走りますが、こんなことを早川教授は言っています。 

「セシウムまみれの干し草を牛に与えて毒牛をつくる行為も、セシウムまみれの水田で稲を育てて毒米つくる行為も、サリンつくったオウム信者がしたことと同じだ。福島県の農家はいま日本社会に向けて銃弾を打ってる。」

もう反論するのもアホくさい。藁農家はオウムだそうです。農家がオウムなら、さしずめ鹿野農水大臣は早川、菅首相は松本ですな。

 

■写真 ホウズキがなり始めました。わが家には自省のホウズキが毎年わらわらと繁殖して、今やホウズキ畑のようです。

 

              ゜。°。°。°。°。°。°。°。゜。°。°。°。

 

■資料1 日本農業新聞7月26日より参考のために引用

Photo

■資料2 地域環境センターによる放射性物質の拡散シミュレーション(日本テレビ報道番組より転載いたしました。ありがとうございます)
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なんか早川先生の図を使うのがイヤになったので、新しいシミュレーション図を使います。赤い部分に注目。今回の藁出荷の場所と一致しています。

 

 

 

2011年7月26日 (火)

現在の空間放射線量だけで、土壌放射線量を測定する必要はないという行政

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私のところには、既にいくつか土壌測定をしたというメールの報告をもらっています。 

これからしたいのだが、どうしたらいいのかという問い合わせもぼちぼち入ってきています。 

少しずつですが、自分の「土」が3月12日以降どのような状態になっているのかを知ろうという動きが少しずつ始まってきています。 

ただし、個々別々のひとりの農業者としての動きです。私はそれで充分だと思っています。 

というのは、行政や団体の動きは大変に鈍い。というかむしろ私のような土壌放射線量の測定をする動きを迷惑に思っていることを隠そうともしないからです。 

行政は、私が市内の土壌汚染を測定していこうという提案をした時なんと答えたのでしょうか。 

「現在、モニタリングポストで異常な数値は出ていないからする必要はない」。 

唖然とする答えです。そもそも放射能のイロハがわかっていない。これが農家を指導する部署にいる人間が言うことなのです。 

モニタリングポストの数値は、現在ただいまの空間放射線量でしかありません。時々刻々、変化する空気中の放射線量を測定する「だけ」のものです。 

このモニタリングポストの数値が有効だったのは、3月12日、3月15日の水素爆発時と、3月21日から数日間の放射能雲(プルーム)の移動した時です。(*欄外の図参照。放射能雲には4ルートあり、放射能雲は3月12日から22日まで出現しています) 

放射能雲は、3月21日午後4時に私たちの村の頭上を通過し、22日午前8時に柏,、松戸、葛飾、江戸川地域に降雨により高濃度の放射性物質をフォールアウトさせました。 

今、柏や松戸の住宅地で5万bq/㎏もの高濃度ホットスポットが計測されるのはこのためです。 

これに対して政府は、この放射能雲が茨城、千葉を抜け東京に向けて移動していることをSPEEDI(スピーディ・緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム)という悪い冗談のような名前のシステムで充分知りながら、なんの警告も出しませんでした。 

菅首相がその時、すべての情報が集中する首相官邸危機管理センターにいたことは首相動静で明らかです。知らなかったとは言わせない。 

政府は事故を小さく見せかけるために握りつぶしたのです。 

そして、高濃度の放射性物質の雨に市民や子供を無防備で浴びさせたのです。この時の放射能雲により被曝した国民は実に1万人以上に上ります。

これは政府の国民への背信行為、いや犯罪行為とすら言っていい。 

柏、松戸、葛飾、江戸川市民は、状況が一段落したなら国家賠償請求するべきです。そして法廷に原子力安全・保安院、原子力安全委員会、菅首相、枝野官房長官、海江田経済産業大臣などを召還して真実を証言させて下さい。 

話を戻します。モニタリングポストの数値とはあくまで「ただ今」のフォールアウトしている放射性物質の線量を示すもので、「既に降下してしまった」土壌の線量を教えるものではありません。 

ですから、とうぜんのこととして下図(*茨城県HPより)にあるように空間放射線量は減少して低位で推移しています。現在の茨城県の数値は0.087mSv/hていどです。

 

002_edited1_3

このグラフは、明瞭に3月15日、16日、21にフォールアウトのピークがあることを教えています。 

最大のピークである3月16日には実に16μSv/hもの高濃度のフォールアウトがありました。(初期の核種は大部分がヨウ素です) 

実に平常時の2千倍です!2千倍の放射線が注いだのです!冗談ではない。これが農作物を、3月から4月中旬まで放射能汚染した元凶です。

ちなみに3月15日以前の数値がないのは、大震災でモニタリングポストの電源が切れてしまったためです。もし電気があれば、12日、13日にも大きなピークが観測されたはずです。 

今、私が言っているのは、この3月12日から4月初旬まで約2週間強も続いた放射性物質のフォールアウトが累積しているはずの土壌と水系の放射線量のことです。 

あの原発の爆発でいったいどれだけの量の放射性物質がこの私たちが住む地域に降下して地中に累積しているのか、それを知りたいのです。 

私たち農家だけではない、消費者はもっと知りたいはずです。

それを知るには土壌放射線量を測定するしかない。それをなにが「今モニタリングポストでは安全です」だ。 

水素爆発から4カ月もたった「今」の空間放射線量などは、なんの安全の証明にもなっていないのです。分かりきったことではないですか。子供だましを言わないで下さい。 

昨日の「日本農業新聞」で慶応大学金子勝教授も書いていましたが、「国家は義務をはたせ」。 

マスコミは放射性物質で汚れたキユウリが出れば農家が犯罪者のように叩き、セシウム藁が出ればまた叩く。まるで責任が農家にあるようです。国や行政は懐手してニヤニヤ笑っているだけ。 

冗談ではない。土壌放射線量の測定、そして除染は本来国の仕事です。その国がなにもしないばかりか、その責任をすべて私たち農家に押しつけて平然としています。 

今ちょうど夏作のために畑の上をトラクターが走り回っていますが、その表土下5~10㎝まで浸透しているであろうセシウムが、ロータリーの巻き上げる粉塵で体内吸収されることを行政は警告しようともしません。 

呼吸器から肺に入ったホットパーティカル(放射性物質)は、全身の血流に回って随所でガンを発生させる危険があります。 

よく畑で見るトラクターの後ろにカミさんがついて歩いてマルチを張っている姿を見ると、思わず「やめてくれ。ロータリーの後はもろに放射性物質を吸い込むぞ!」と止めたくなります。 

今、農作業をする、特にロータリーをかける仕事をする農家はマスクを装着してください。おそらく行政はなんの警告もするつもりはないでしょうから、自分で自分の身を守るしかないのです。

私たち市民、農民は国から見捨てられていると自覚すべきです。政府はみずからの果たすべき最大の義務である国民の安全と健康を省みず、権力闘争にふけっています。

もう国や行政になにも期待してはいけません。なんという情けない国でしょうか、わが日本は!

国はすべての汚染された土地を測定し、除染することに全力を上げろ。そして被害にあって出荷できなくなったすべての農水産物を賠償しろ。

国は国の義務を果たせ!

■写真 今年もなんの変わりもなく、稲の穂がふきました。わずかに白く見えるのが稲の花です。 

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上図の説明 群馬大学早川由紀夫教授が、火山灰の飛散の原理を用いて作成した、福島第1原発からの放射性物質の飛散図。これを基にルートを黒線で書き込んであります。

時系列を追っこ放射能雲の飛散ルート
福島第1原発からの放射性物質の大量放出は大きく4回。

●第1ルート/3月12日夜から・・・・・南相馬⇒太平洋⇒太平洋を北上⇒西旋回して女川から内陸に侵入⇒一関、平泉に到達

●第2ルート/3月15日午前中から・・・・太平洋を南下⇒いわきをかすめて、水戸から内陸へ侵入⇒3方向に分裂

・2-1ルート・・・宇都宮方向ルート
・2-2ルート・・・群馬方向ルート
・2-3ルート・・・首都圏に南下ルート

●第3ルート/3月15日夕方から・・・・北西に進み飯館⇒西旋回して内陸部へ⇒福島、二本松、郡山、那須⇒日光

●第4ルート/3月21日午前から・・・太平洋を南下⇒鉾田から内陸部へ⇒柏、松戸⇒東葛地区⇒東京湾⇒太平洋を南下⇒足柄⇒一部が静岡

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2011年7月25日 (月)

私たち農業者は3月と同じ失敗をしてはならない

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ひとがひとの痛みを知ることが出来るのは、たぶん当人にとっていいことだ。

しかしひとは他人の痛みを分からない。分かろうとするにはいくつかの壁がある。

その最大のものは自分だ。自分の「立場」だ。
生きている基盤と言ってもいい。

私の場合は農業だ。私はまず農業を「守る」と立ててしまう。
長い間そういう「立場」だったから、ほとんど本能的に自動的にそうしてしまう。

だから、今回の風評被害でも、まずティフェンスしてしまった。3月の農作物についてもまずディフェンスしてしまった。

「風評被害は人災だ」だと。このブログでもそう書いた。

違う。
3月から4月中旬頃までは「実害」だったのだ。
おそらく、3月12日からのフォールアウト下で測りさえすれば、規制値を県内でくまなく超えたはずだ。

ただ私たちには今と違って放射能を測る術がなかった。情報すら皆無だった。
そもそも放射能の知識すらなかった。
なにが起きたのか、今どうなっているのかさえ分からなかった。

行政からの情報や、ましてや支援などは一切なかった。
私たちはただひたすら、震災の大混乱をどうやって乗り越えていくのかで精一杯だった。

震災の傷跡も生々しい中で、売れないというのは致命傷に近かった。
私たち農業者は叫んだ。

「お願いだ、買ってくれ。生きていけない!」と。
しかし売れなかった。みごとなまでに売れなかった。福島県産、茨城県産と名がついた農産物は市場でゴミのように突き返された。

それは悪意ではなく、青果市場の抑制と均衡のシステムが働いたのだ。

だから皮肉にも、売れなかったから「実害」はなかった。
今思うと、それがせめてもの慰めだ。

あの時、普通に流通していたらと思うとゾッとする。
被害者の私たちがいつの間にか加害者になってしまっていたかもしれない。

しかし、消費者には深い不信感が残った。3月の高線量の状況下で「オレのものは安全だ」と叫んだ者を誰が信用するものか。

本来は無策な国に向けられるべき不信感が、目の前の私たち農家に向けられた。
消費者はこう言った。

あなた方が言うことは信用できない。あの時、あなた方は私たちの子供の命を考えてもいなかった」と。

そのとおりだ。すまない。

5月になってフォールアウトが止んでも、「信じてくれ。今は安全なんだ。風評被害なんだ」と言っても遅かった。

残念だが、私たち農家はなにも学んでいない。
今も同じだ。風の噂も70日。
藪をつついて蛇を出したくない。

「線量を計っていれば、危ないということを宣伝しているようなもんだ」と言う者もいる。
行政さえ同じことを言う。

違う。
私たち農業者は3月と同じ失敗をしてはならない。

震災前にJAは農業を「生命産業」と呼んだ。
そのとおりだ。私たちが消費者の命を預かっているのだ。

万が一にも、私たちが作るもので人を傷つけてはならない。
私たちの頭上に降った放射能という災厄を、私たちを信じて買ってくれる人たちに絶対に手渡してはならない。

自省を込めて言う。今ほど農業と消費者の絆が試されている時はないと。だからそれに私たちも応えようと。

■写真 霞ヶ浦の湖岸から筑波山を望む。ちょっと湖面が荒れ気味です。珍しくモノクロにしてみました。クリックすると大きくなります。

2011年7月24日 (日)

政府はこの女性の声を聞け!

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昨日、消費者の皆さんとお話をもつ機会がありました。

ECRR(ヨーロッパ放射線防護委員会)の講演の通訳を務めたトミーさんにも同席していただいた席でした。

今の東京とその近郊の女性、特にこれから子供を作りたい、あるいは今幼い子供を育てている若いお母さんたちの恐怖心には改めて驚かされました。

私もできるだけ敏感でいようと勉めているつもりでしたが、やはり直に聞くと違います。

茨城の野菜は自分で買っても友人の若いママさん仲間にはあげられない、原発事故の時まで大喜びでもらってくれたのに。

茨城に一緒に田植えに行こうよと誘っても、ちょっとあそこはねと言われた。

この会合以外からもさまざまな若い女性の悲鳴に似た声が聞こえています。

ある人は亭主を置いて疎開した。夫は、オレたち週末家族だねと寂しそうに言った。

若いママさんたちが公園に行かなくなった。集まるところがないので、なんとなく疎遠になっている。

子供には学校が大丈夫だと言っても、校庭で遊ぶなと言ってある。

妊娠した女性が生むことが怖くてノイローゼになってしまった。生まないことを夫に言ったら大喧嘩になってしまい、それ以来口をきいていない。授かった時にあれだけ喜びあった夫婦だったのに。

子供は転校したくないと言うが、子供だけでも九州の親戚に預けるつもりだ。親はどうにでもなるが、子供だけは健康に生きてほしい。

沖縄に疎開した友人から電話が来た。夫の仕事はぜんぜんないので、貯金が底をつきかけている。レジ打ちでようやく食べている状態。子供も学校になじめない。

ある若い母親は除染のため庭の芝を剥いで、樹も切り倒してしまった。樹の根のところがホットスポットだったから。

でも家ができた時、夫や子供と一緒に植えた自慢の樹だったのに。切り倒した日の夕食は家族が皆泣いた。

政府はこの女性の声を聞け!

そして私たち農業者も、己が風評被害を言い立てる前に、しっかりと彼女たちの悲鳴に耳を傾けるべきです。

 

2011年7月23日 (土)

南相馬市のセシウム牛の「ほんとうの生産者」はあの宮崎口蹄疫のA牧場だった

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思わないところで、「懐かしい」名前に遭遇しました。宮崎県口蹄疫第7例のA牧場です。

忘れもしない、4月の早い時期に口蹄疫に罹りながら専従獣医師自らが上部の指示で隠匿を続け、その期間にえびの市へなどに感染を拡大した牧場です。

この反社会的行為により、宮崎県から厳重注意をもらっています。

「週刊文春」7月28日号によれば、このA牧場が預託契約を結んだのが、南相馬市で発覚したセシウム牧草を食べた初めの6頭の牛だったようです。

「預託料は一日百数十円で、飼料や牧草は会社から支給されている」そうです。

当のA牧場は、「従来より輸入牧草を与えています」(同社HP)とのことです。

私にはこの情報の信憑性は測りかねますが、正直に言えば、さもありなんと言ったところでしょうか。

いずれにせよ、南相馬市のセシウム牛が預託だった場合、飼育責任は預託した会社にあります。管理者は管理責任を預託した会社に負うのみです。

この情報が正しいとすれば、「ほんとうの生産者」はあのA牧場だったわけです。

あの時点でいかなる指示が預託会社から管理者の農家にあったのかは分かりませんが、その指示内容を知りたいものです。

また、今回のセシウム牛事件で牛に個別識別番号が付けられているにもかかわらず、識別番号を管理する家畜改良センターのHPからは屠畜したセンターの場所しかでてきません。

かんじんな飼育者は伏せられたままです。だから今回のような飼育責任者の預託会社がブラックボックスに入ってしまい、管理者の農家だけがマスコミの矢面に立たされることになってしまいました。

一方、都道府県のHPからもセシウム牛がどこに散らばったのかを追跡できません。販売店もブラックボックスだからです。

ですから、消費者が心配に思って保健所に問い合わせをしても、「販売店に聞いて下さい」ということになります。

個別の販売店の恣意性にゆだねられているわけです。

つまり、個別識別番号がついていながら、消費者の立場からすれば ほとんど役に立っておらず、ただの行政が追跡調査できるだけのシステムだったわけです。

これは本来のトレサビリティ制度の趣旨に反します。トレサビリティはあくまでも、消費者に対しての生産-流通情報の開示が目的で、行政の便宜のためにあるわけではありません。

私は長年、有機JASを取り扱ってきましたが、同じトレサビリティでもこちらは生産者はおろか生産した畑、肥料等の資材まで特定される仕組みです。常にそれはHPで開示されており、消費者でもアクセス可能です。

牛の個別識別番号制度は、生産-流通すべての分野に渡って、その情報を開示することができないために、預託制度の陰に隠れた「ほんとうの生産者」の反社会的行為の防止ができないでいるようです。

今後、出荷制限を受けて足止めになっている飼育期間一杯の牛が福島県内に溢れることになります。

これらを飼育者が薬殺できるはずもなく、どのような処置をしたらいいのか途方に暮れることになるでしょう。その時、買いたたかれても思い余って秘かに闇市場出荷をしてしまうこともなしとは言えません。

しかし、万が一にでもそのような事態が起きた場合、現行の牛個別識別番号制度がどこまで透明性を担保できるのか、残念ながら不透明なようです。

■写真 先日の台風による強風で合歓木(ねむのき)の花が散ってしまいました。

2011年7月22日 (金)

私たちが作るものに放射能が混ざっていたら、私たち農業者は命ではなく汚染を手渡してしまう

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原発事故による放射能の飛散は複合汚染の様相を呈してきました。

「複合汚染」という言葉は、私たち有機農業関係者には原点ともいえる有吉佐和子さんの同名の小説によります。

あの本が書かれた1970年代初期は、まさにありとあらゆる汚染源がほとんど無規制のままに社会にあふれ返っていました。

排気ガス、食品添加物、工場排水、投棄された重金属類、そして私たち農業分野でも化学農薬が支配する時代になっていきます。

それはまたたく間に日本全土を公害の中に沈めていきます。日本人はその汚濁を実に半世紀かけてきれいにしていかねばなりませんでした。

あの時に戻ったような気がします。あの1970年代、実は1960年代初期から既に始まっていた複合汚染の時代に、です。

複合汚染という言葉はふたつの意味を持ちます。

ひとつめの意味は、発生源が多重であることです。

そしてもうひとつの意味は、それが複雑に絡まりあって新しい次の汚染を引き起こすことです。

「発生源が多重である」というのは、一見今回の福島第1原発事故には合わない気がするかもしれません。しかしそうでしょうか。

1号炉と3号炉の水素爆発により、放射線物質はおどろくほど広範囲に拡散しました。そして放射性物質を高濃度に含んだ排水が海に放出されました。

放射性物質はただあることだけで、放射能を照射し続けます。その放射能の照射点が空中にも、土壌中にも、そして海中にも無数に生まれたことになります。

いったん放出された放射性物質は、死滅することはありません。移動したりすることはあっても、消え失せることはありえません。そして生態系に棲む生物の細胞を長年に渡って傷つけていきます。

まさに多重な汚染発生源の誕生です。

これらの多重な汚染発生源は、互いに複雑にからまりあって汚染を拡大していくようになります。

たとえば、今回のセシウム牛事件をみてみましょう。放射性物質がフォールアウトした牧草、藁に付着し、それを食べた牛もまたセシウム汚染されてしまいました。

そしてこのセシウム藁は全国の牛農家に配送されて既に使用されてしまい、そこからまた新たなセシウム牛が発生しました。

その牛肉は大量に市場に流れており、回収は絶望的です。

今後、このような新しい汚染の連鎖がいくつも登場することを、私たちは覚悟せねばなりません。

特に海中に投棄されたストロンチウムの検査がほとんどなされておらず、魚の骨を通じた新しい連鎖はまったく未知数です。

牧草の検査も茨城県では手つかずの状態です。福島県ではフォールアウトが比較的少ない地域においてすら藁の汚染があったのに、茨城県は未だ全県的な検査に着手していません。

いや土壌測定すら手つかずです。なにか時間が止まったような気がするほどです。

この汚染の連鎖を断ち切るためには、今できることはたった二つしかありません。

まず、現状を知ること。県は責任を持って県の汚染状況を空気、土、水、作物のすべてに渡って測定し、データを集積し、公表することです。

みずからが住み、生産する土地がどれだけ汚染されているのかを知らずして何も始まりません。

次に、その除染をすることです。茨城県ではまったく除染活動がなされていません。「除染すると、汚れていることを認めたことになる」、という本末転倒した考えが県行政のみならず、私たち農業者の中にも根強く張っているからです。

農業というのは、食べ物を作り消費者に食べてもらう行為により命の鎖を繋げている仕事です。

しかし、その鎖のひとかけらに放射能が混ざっていたら、私たち農業者は命ではなく汚染を手渡してしまう。そのことを心に刻むべきです。

この農業現場で汚染の鎖を断ち切る覚悟を決めねばなりません。農業という分野が放射能汚染のハブなのです。

私たちは意識せざる加害者になっては絶対にならないのです。つらい現実ですが、立ち向かうしかありません。

2011年7月21日 (木)

新たに宮城県、岩手県からもセシウムわらが検出される!

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宮城県でも登米市、涌谷町、美里町、大崎市、栗原市で相次いで県産藁にセシウムが検出されました。

放射性物質拡散図(中川由紀夫群馬大教授作成)を見ると、これらの検出サレ地域はいずれもフォールアウトが少なく、空間線量の測定も少ない地域だと分かります。

これらのいわば「安全地帯」からの藁に出たことは、ある意味福島県白河でセシウム藁が出たことより深刻かもしれません。

福島県白河は拡散図の黄色、つまり0.5μSv/h以上地域であり、フォールアウトした放射性セシウムも多かったはずです。

私自身この薄緑地域(0.25μSv/h)の農家なのでこのような表現をお許しいただきたいのですが、福島県で検出されたのはある意味当然としても、なぜ宮崎県の無印地域で出たのか理解に苦しみます。

しかも、宮城県はこの牧草検査も5月から行っており、今のところ検出例はありません。牧草で出なかったものがなぜ、藁で出たのでしょうか。

もし無印地域での藁から今後も検出が続くとなると、福島近隣の諸県で検出される可能性が高まりました。(* 文科省のヘリによる計測結果ではフォールアウトが検出されていま。欄外をご覧ください)

茨城県などはまだ保管された藁の検査は行っていないようですが早急に行わないと出荷された後では手遅れになります。

そして悪いことには、宮城県産藁は青森、山形、福島、新潟、茨城、群馬の各県に既に販売されてしまっています。福島県産藁と相まっておそろしいほどの事件の拡がりをみせることになるでしょう。

蛇足ですが、自分の地位にしか関心のない首相は19日の衆院予算委員会で「事前に防止できなかったという意味で、私を含めて責任をかんじており、大変もうしわけなく思っている」と答弁しました。

また枝野官房長官も「価格の問題を含めて、最終的に国の責任でしっかりと補てんしていく」と答えています。

まぁ、4カ月以上たってやることはとうに出来たのに、なにを今さらですが。金出せばいいのではなく、この仕事をしない政府自体が人災なのです。

いよいよこの福島第1原発の事故は、ありとあらゆる農業の分野を巻き込んだ複合汚染にとなってきました。

■追記 脱稿した時点で新しいニュースが飛び込んできました。

岩手県一関市と藤沢町からもセシウムが検出されました。これで福島、宮城、岩手の3県からの藁からセシウム検出がされたことになります。

またセシウム牛が出荷されたのは沖縄を除くほぼ全国となりました。

■記事の修正

おとといの記事の中で「ブルーシートはβ線を透過して、その際に放射性物質を藁の内部に残留させた」という風に解説しましたが、どうやら誤りなようです。

β線は透過してたとしても、細胞を傷つけることはあっても放射性物質そのものには転換しません。したがって、放射能雲(プルーム)の通過時に照射された放射線は、ブルーシートを透過したに止まったと思います。

しかし、フォールアウトした放射性物質は雨などで劣化したシートの穴などから侵入したり、藁を集める時に一緒に土が入ってしまうために、それと一緒に藁に入ったのではないでしょうか。

またシートのかけ方も上だけの雨除けだった場合も考えられます。いずれにせよ、シートがけてしてあっても野外では放射性物質の浸透は防げなかったということになります。

ただし・・・、どうやら大部分の藁はシートかけがされていなかった可能性が高いのではないでしょうか。シートがしてあるにしてはあまりにも放射線量が高すぎます。

おそらくは大部分は裸の状態で放射性物質を浴びたと考えたほうが素直です。

さて、もう一点。通常の年は、藁は越年することは稀です。

だいたいは年末まで乾燥させて収拾し、倉庫に納めてしまいます。しかし、去年に限って藁の倉庫入れが遅れたところに、大震災に会ったために4月中旬まで作業がズレこんでしまったようです。

そして3月12日、15日の水素爆発による放射能雲の発生、空間線量の増大の中で、この藁は野外に放置された格好になりました。

藁の乾燥は、地方によって違いがありますので一概には言えませんが、拡げてはざかけしてあった場合は表面積が大きくなって放射性物質の吸収が高まります。

初期に放射性物質がひんぱんに検出された野菜のホウレンソウは、野菜の中で被曝する可能性が高い野菜です。

というのは葉が拡がって生育するため暴露する表面積が増えるためと言われています。これと同じことが藁でも起きたと思われます。

そして、その藁を買った牛農家の藁の保管の仕方です。牛農家は古い藁から倉庫の奥に置いていったことでしょう。

すると奥には被曝していない事故前の藁が眠り、手前の入り口近くには春藁、つまりは被曝藁が置かれていたと思われます。そして、牛農家は手前の被曝藁から使っていき、放射性セシウムが牛に移行したということになります。

■お断り 修正部分をカットして編集し直しました。((午後4時)

 

         ゜。°。°。°。°。°。°。°。゜。°。°。°。

■文科省のヘリによる放射線量調査図
(NHK7時のニュースより引用しました。ありがとうございました)

栗原市は被曝範囲に入っているのがわかります。

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■早川由紀夫群馬大教授作成による放射能雲の移動図
(参考のために引用させていただきました。ありがとうございます。)
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緑色と黄色のエリアに注目。緑色は0.25μSv/h(毎時マイクロシーベルト)以上、黄色は0.5μSv/hから1μSv/hのあいだです。
爆発以前の関東地方の放射線量はだいたい.05μSv/h前後ですから、5倍から20倍は高い数値が観測されています。
岩手県の稲わらからも高濃度の放射性セシウム
 
岩手県は20日、同県南部の畜産農家5戸が、飼育していた肉用牛に与えていた県内産の稲わらから、高濃度の放射性セシウムが検出したと発表した。
 
この5戸からは肉用牛19頭がすでに東京都に出荷されていた。稲わらから高濃度の放射性セシウムが検出されたのは、福島、宮城に次いで3県目。

 岩手県によると、高濃度の稲わらを牛に与えていたのは、一関市の3戸と隣接する藤沢町の2戸。1キロ・グラムあたり最高値で5万7000ベクレルの放射性セシウムを検出した。水分を含んだ状態に換算すると国の規制値(300ベクレル)の43倍に相当する。 

 県畜産課の調査では、大部分は一関市、藤沢町の稲わらで、3月の東京電力福島第一原発事故当時は、田んぼなどで乾燥、保管されていたらしい。 

 このほか、同じ2市町の7戸が、原発事故後、同様に屋外に置かれていた稲わらを肉用牛に与えていたという。この稲わらは使い切っていて、調査できなかった。この7戸からは3~7月、62頭を県内のほか、東京都と神奈川県にも出荷しており、県は厚生労働省を通じて情報提供を行った。 

(2011年7月20日20時10分  読売新聞)

10県で目安超え稲わら確認

NHK 7月21日 5時53分

餌の稲わらから国の目安を超えた放射性セシウムが検出された問題で、20日、新たに静岡県などでも目安を超えた稲わらが確認され、こうした地域は10の県に広がっています。稲わらの多くは宮城県内の業者から仕入れたもので、各自治体は引き続き調査を進めています。 

この問題は、福島県などで肉牛に与えていた餌の稲わらから国の目安を超える放射性セシウムが相次いで検出されたものです。

20日、新たに静岡県富士宮市の農家で、牛に与えていた稲わらを調べたところ、国の目安のおよそ7倍の放射性セシウムが検出されました。さらに、秋田県や岐阜県などでも目安を超えた稲わらが確認され、こうした地域は、岩手県、秋田県、山形県、福島県、新潟県、群馬県、埼玉県、静岡県、岐阜県、茨城県の、10の県に広がっています。

稲わらの多くは宮城県内の複数の業者から仕入れたもので、各自治体は引き続き調査を進めています。一方、こうした農家から出荷された牛の肉の流通先は、鳥取県と沖縄県を除く全国45の都道府県に広がっています。

福島の生産者 牛全頭検査要望

NHK 7月20日 21時10分

政府が福島県のすべての牛の出荷停止を指示したことを巡り、福島県の生産者団体が20日、鹿野農林水産大臣と会い、消費者の信頼を回復するためにはすべての牛の検査を行うよう要望しました。しかし、生産者団体によりますと、鹿野大臣からは全頭検査の実施について明言はなかったということです。 

福島県内の畜産農家が牛に与えていた稲わらや、出荷した牛肉の一部から、国の暫定基準値を超える放射性セシウムが相次いで検出されたことを受けて、政府は19日、福島県内のすべての肉牛の出荷停止を指示しました。

この問題を受けて、県内の農協や畜産団体の代表者およそ30人が20日、上京し、農林水産省など関係省庁を訪ね、出荷停止の間に出荷時期を迎えた牛は国が買い上げることなど支援策を要望しました。

このうち、農林水産省では鹿野大臣と会い、出荷停止を解除する要件を巡り、すべての牛の検査を行う対象が計画的避難区域と緊急時避難準備区域に限られていることについて、「消費者の信頼を回復するには、県内のすべての牛と出荷されたすべての牛肉の検査を実施すべきだ」と要望しました。

これに対し、鹿野大臣は「原発事故のあとの稲わらの情報を周知できていなかったことを反省している。市場に出回っているものは安心だと言える態勢を築きたい」と述べましたが、JA福島中央会によりますと、鹿野大臣からは全頭検査の実施について明言はなかったということです。要望のあと、JA福島中央会の庄條徳一会長は「福島の農畜産物の信頼回復には徹底した検査が欠かせない。国はBSEや口てい疫に対応した経験を生かして、どうすれば全頭検査を実現できるかを考えてほしい」と述べ、あくまで全頭検査を国に求める姿勢を強調しました。

汚染疑い牛、1485頭に…出荷新たに6県から

高濃度の放射性セシウムに汚染された稲わらが肉牛に与えられていた問題で、岩手、秋田、新潟、群馬、静岡、岐阜の6県は20日、各県内の畜産農家が汚染の疑いのある稲わらを肉牛に与え、637頭を出荷していたと発表した。

 これで山形、宮城、福島、新潟各県で判明している約850頭を含め、汚染された疑いのある稲わらを食べた牛の出荷数は9県で約1485頭になった。各県などは牛の流通経路を調べ、残っている肉については放射性物質の検査をする。

 秋田、群馬、静岡県で与えられていた稲わらは宮城県産で、岩手県では同県産だった。稲わらから高濃度のセシウムが検出されたのは、福島、宮城に次いで3県目。岩手県では、一関市の3戸と隣接する藤沢町の2戸が計19頭を東京都に出荷。稲わらからは1キロ・グラムあたり最高値で5万7000ベクレルのセシウムを検出した。水分を含んだ状態に換算すると国の規制値(300ベクレル)の43倍に相当する

 

 

 

読売新聞 7月21日

2011年7月20日 (水)

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2011年7月19日 (火)

政府はセシウム汚染藁を焼却・堆肥混入する指示をやめろ! 国が責任を持ってセシウム藁を回収し、処分しろ!

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セシウム藁は白河以外の福島県内各地で発見され、既に給与してしまったことによるセシウム検出牛は全国で発見されるようになりました。

そして、そのかなりの数量は既に市場に出て消費されていることが分かりました。まさにこれ以上ない最悪の事態です。

岩手、宮城、福島、栃木、茨城、千葉、群馬、埼玉の8県で、畜産農家と稲作農家を対象に、わらの取り扱いに関する緊急調査を実施するといいます。

日本の畜産界は往年のBSE規模の災厄に備える必要があります。

農水省は、計画的避難区域・緊急時避難準備区域内の全ての飼養農家について牛肉のモニタリング検査を行い、この区域外の福島県や周辺県(牧草について自粛した地域等)で飼養される牛についても牛肉のモニタリング検査を強化するとしています。

しかし鹿野農相は12日の閣議後の記者会見で、福島県の「全頭検査に出来ることでありますならば、協力もして参りたい」と述べるに止まりました。

あくまで主語は県であり、国は「協力」する支援者にすぎないというわけです。

今の政府は、初代復興大臣が頭ごなしに知事を叱り飛ばすような中央権力意識の権化であるにもかかわらず、ことこういう国こそが責任をもって解決すべき大きな問題ではころっと変身して地方分権主義者になるというムシのよさです。

福島県はこの腰が引けた国の「協力もして参りたい」という対応に業を煮やし、国に全頭検査体制を要望していくことにしました。当然すぎるほど当然の要請です。

国のなんという太平楽なことよ。なんという危機感のなさよ。今、ここでこのセシウム牛・藁の解決方法を確立しなければ、この秋の米の収穫において大変なことになるとどうして思わないのか不思議なくらいです。

このセシウム牛・藁問題は、おそらくは間違いなく出るであろうセシウム検出米の第一波にすぎません。

すべての始まりは「最初のボタンの掛け違い」にあります。農水省は、「事故以降の飼料を与えることは自粛をお願いしていたのに、指導が行き届かなかった」と弁明に勉めています。

あんたらバカか。ぜんぜん農業現場に来ないで霞が関の蛍光灯の下でパソコン画面をボーっ眺めているのが農政だと思っているからこうなるのです。冬の田んぼに藁が積んであるなんて、地域にもよりますが関東、東北では珍しい風景ではないでしょうに。

この農水省通達は3点で重大な抜け落ちがありました。

❶ BSEなみ、いやそれ以上の飼養管理態勢を敷くべき放射性物質汚染の対象区域を避難区域・避難準備区域に限定してしまった。

➋ 牛が当然食べるはずの粗飼料の藁の供給元を対象外としてしまった。

➌ 牛を外部スクリーニングのみで出荷許可できる検査方法としてしまった。

結果はご覧のとおりです。責任はあげて不作為の政府にあることは明々白々です。

当該の避難区域・準備区域外の農家は、よもや自分のことだとは思わなかったのです。事実、18日までに問題が出た藁を出荷した14軒の農家のうち13軒までは、この通達が自分たちも対象にしているとは思わなかったそうです。

3月12日、15日の水素爆発と、それに続く放射性物質が希ガス化した放射能雲(プルーム)の通過に対しても、国からなにひとつ放射能情報は提供されていませんでした。

時々刻々と放射能雲の通過を通報するSPEEDI情報は安全・保安院と内閣が隠匿しました、いや正確には、福島県に一部伝えられたものの、それに対して「公表してはならない」(福島県原子力対策課の証言)と箝口令まで押されたそうです。

放射能被曝した地域の国民は、後に福島、茨城両県と文科省のモニタリングで徐々にその脅威を知ることになるのですが、それはとうに放射性物質のフォールアウトが過ぎた後のことでした。

前首相補佐官・馬淵氏の言うようにまさに「情報隠匿体質」そのものです。

さて、このような後手後手というより無為無策の結果、問題は今や事後対策に移っています。ところが、事後対策は事前対策の百倍難しいのですよ。

しかし、今ここで止めないとコントロールが不可能になります。既に411頭もの疑いのある牛が流通してしまっています。汚染ワラは全国に散らばってしまいました。

いまやババ抜きゲーム化した日本畜産市場において、西日本産、九州、北海道産を問わずすべての牛肉が風評被害にさらされてしまうことは目に見えています。

対策は整理すればいくつに絞られてくるでしょう。

❶ 放射能雲の通過域内すべての牛、粗飼料(*稲ワラや麦ワラ、牧草などのこと)、飲料水の徹底した検査の実施。

➋ 3月12日以後屋外にあったすべての粗飼料を検査した後、汚染したものの廃棄。

➌ 放射能汚染された牛の処理。

➍ 市場に出た汚染肉の早急なる回収。

➎ 以上の国家賠償。

では、現実にどうしていったらいいのでしょうか。

❶はようやく始まろうとしていますが、国の責任体制が見えません。国はここで前面にたつとおそらくは国家賠償につながりかねないとビビっているのだと思われます。

しかし、福島県も言うように、県下全域での全頭検査、藁の放射能検査などは気の遠くなるような仕事であり、とうてい地方自治体の手に負えることではありません。

そもそもいいかげんな通達の結果、このような事件を引き起こしたわけですから、政府が責任をもって全頭・全藁の検査をすべきなのが筋です。

➋も大きな問題を抱えています。「どうやって放射性物質を処分するのか」という大前提の方法論が確立されていないのです。

方法としては放射性物質を除去する基本的は2ツの方法しかありません。

❶ 除去する。
・土壌なら客土。あるいはクリーニングプラント(ひまわり、菜種など)で除染する。
・藁などの処分では持ち出した後に焼却して埋設する。

➋ 希釈する。
・土壌場合は深耕ロータリーなどで表土から50㎝ほどを天地返しする。
・藁などの場合は焼却した後処分する。

ところが「焼却した後に堆肥と混入すること」という指示を農水省が出しているのです。常識を疑います。

これは放射性物質を新たに畑にバラ撒いて、もっと汚染濃度をあげろという指示に等しい、おおよそ諸外国では考えられもしない愚案です。いや愚案というより危険極まる指示です。

農水省は、放射性物質は不滅であり放射性物質の総量は不変であるという大原則をお忘れか?

放射性物質は煮ても焼いても、高温高圧をかけようとも、希釈されたり、別な場所に行ったりすることはあっても消えないのです。だから怖いんじゃないですか。

煮たり焼いたりすれば、かえって濃度を高めます。それをしろと政府農水省は言うのですから開いた口がふさがりません。

灰にすることで茎葉の水分が完全消滅し、かえって放射性物質の濃度は高まります。

放射性廃棄物をわざわざ高濃度廃棄物にして、そしてあろうことかそれをそれでなくとも汚染されたか可能性がある農地に撒け、というに至っては絶句するしかありません。

これで放射能の実害がいっそう拡がるばかりか、風評被害がでなかったら奇跡というものです。このような非常識な農水省指示は即刻撤回すべきです。

藁の処分を考えるのなら、牧草キューブのような方法で圧縮して穴を掘ってシートを敷き、詰めた後に鉄板を被せる方法しか、私には思いつきません。

しかしこのような私的な保管方法では、長年のうちに放射性物質が漏洩することはを防げないでしょう。漏洩した場合、農地の再汚染、水系汚染につながります。

また処分過程での放射性物質を含んだ粉塵の吸入による健康被害もあるでしょう。

つまりは、行政が責任をもって回収し、処分するしか方法がないのです。

県内いくつかのゴミ焼却場を放射性物質専用とし、放射性物質除去フィルターを装着した後に焼いてキューブ化し、特定の最終処分場に持ち込んで一元管理するしかない。

今、直ちに始めないと手遅れになります。国が責任をもってセシウム藁を回収し、処分しなければなりません。

■写真 本日の台風接近前の早朝の空。なんか不気味ですね。

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■農水省 鹿野農林水産大臣記者会見概要http://www.maff.go.jp/j/press-conf/min/110712.html

鹿野道彦農林水産相は15日の閣議後の記者会見で、福島県白河市の稲作農家が販売した高濃度の放射性セシウムに汚染された稲わらをえさとして与えていた畜産農家2戸が、聞き取り調査に対して、福島第一原発の事故を受けて国が示した飼育管理方法を「知らなかった」と話していることを明らかにした。

農水省は原発事故後の3月19日に「乾いた牧草を家畜に与える場合は事故発生前に刈り取ったものだけを使う」との通知を出した。ただ、通知は畜産農家向けに出たもので、稲わらを供給する稲作農家は通知の対象外だった。鹿野農水相は「今後あらゆるルートで飼育管理の徹底を図る」と述べた。

■ 農水省 原子力発電所事故を踏まえた家畜の飼養管理について(22消安第9976号、22生畜第2385号、平成23年3月19日)

■農水省 東日本大震災について~調査結果が暫定許容値を上回る地域において刈取り、保管している牧草等の取扱い等についてhttp://www.maff.go.jp/j/press/seisan/c_kikaku/110608.html

■ 日本農業新聞7月19日 1面

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■新潟に宮城産セシウムわら=東京などへ肉牛24頭出荷

時事通信 7月18日

新潟県は18日、同県長岡市の畜産農家2戸が保管していた宮城県産稲わらから、国の暫定規制値(1キロ当たり300ベクレル)を超える1万500~2万600ベクレルの放射性セシウムを検出したと発表した。乾燥する前の水分を含んだ状態に換算すると、規制値の8~15倍に相当する。うち1戸の農家からは新潟県内と東京都のと畜場に肉牛計24頭が出荷されたことも分かった。これらの農家はいずれも宮城県内の業者から稲わらを購入したという。

 新潟県は2戸に対し、この稲わらを与えた牛の出荷や移動の自粛を要請するとともに、流通状況の調査を開始した。県内で宮城県産の稲わらを使用している他の農家が保管する稲わらを対象に、セシウム検査も実施する。 

2011年7月18日 (月)

すごい、優勝だ!なでしこジャパン、ありがとう!

033

すごい!こんなすごい試合ひさしぶりに見た! 

夢を見ているのか!  

バンザイ!ありがとう!なでしこ ジャパン!

奇跡は起きるものじゃなくて、起こすものだと教えてくれた。 

踏まれても踏まれても食いついていく彼女たち。
大震災からうなだれてへこみかかっているわれら日本人に勇気をありがとう!

ほんとうにあなた方は美しい!

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■蛇足 とてもじゃないですが、まともな記事は書けません。明日ちゃんとした更新をします。

2011年7月17日 (日)

放射能災害における棄民政策

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白河で検出されて肉牛農家に販売されてしまったために大きな事件に発展したセシウム検出の稲藁の保管状況がわかってきました。 

確かに稲藁は収穫時の田んぼに置かれていました。しかし、ブルーシートで覆ってあったようです。

・・・なんと! 

前回の白河の組合に責任が「ある」と書いてしまったことをこのように修正します。
「責任はあることは確かだが、限定的なものである」。
 

白河の組合はラッピング(*梱包用ポリシートで密着包装すること)こそしていませんでしたが、ブルーシートで覆っていました。通常はこれで放射性物質は防げると思ったとしても不思議ではありません。 

3月中旬から下旬の時点で、私たち農業者は放射能の知識などまるでありませんでした。この私ですら、あれから4カ月間、いやおうなしに勉強させられてしまったのですが、3月の時点での放射性物質に対する知識など危ないものでした。

ではここでいい機会ですから、セシウムを簡単におさらいしてみましょう。 

セシウムとヨウ素という放射性元素はβ(ベータ)崩壊してベータ線を出します。あのもっと怖いブルトニウムやウランはα崩壊してアルファ線を出します。 

意外なことですが、α線は重くて遅いので、紙ペラ一枚で遮蔽が可能です。厚さ0.02㎜くらいのアルミ箔や紙で防ぐことが可能です。 

セシウム、ヨウ素といった聞き慣れた(←聞き慣れたかねぇよ)β線を出す放射性物質はどうかというと、α線より軽く、速い性質を持つために、厚さが1㎝くらいのアルミ板か3㎜の銅板、鉛板でないと防げません。 

下敷き一枚で大丈夫という人もいますが、あまり自分じゃやってみたくないですね。 

ちなみにγ(ガンマ)線は電磁波なので、鉛10㎝くらい持ってこないとダメです。 

では、今回問題となった野積み藁にかけてあったブルーシートはどうかと言えば、残念ですが、β線であるセシウムやヨウ素は透過してしまいます。 

ブルーシートではなく、表面にアルミを蒸着させたシルバーシートならばあるいは防げたかもしれません。 

いずれにせよ、私がここで注意を喚起したいことは、「あの時点」でそんなベータ線の透過がどうたらということを知っていた農家など、原発反対運動をしていた人を除けば、日本に両手両足の数くらいしかいなかったことです。 

もちろん私だってえばることではありませんが知りはしません。知らなくて当たり前です。だから、この白河の農家はブルーシートをかければ大丈夫だと思ったのでしょう。 

私でさえ、「あの時点」ならばそうしたかもしれません。結果論で「今」を知っているから、何でも言えるのです。 

しかしその知識は「あの時点」、つまり3月中旬から数カ月たって情報が浸透してきたものです。 

水素爆発が起きた3月12日、15日、そして放射能雲(プルーム)が移動した20日からの時点で、ほとんどすべての国民は放射能に対する知識はおろか、現時点での情報すら与えられていませんでした。 

与えられていたのは、枝野官房長官からの「直ちに健康に被害はありません」、「炉心融解は起きていません」、「レベル4です」といったヨタ話だけだったのではありませんか。 

ハッキリ言って、最低最悪の情報の出し方です。その中で、確かに農水省は屋外にある牧草は使用禁止と通達しています。 

しかしそれも昨日書いたように、3月19日に農水省から指導が出たには出ましたが、東北農政局を通じて福島のJAなどの農業団体に伝わったのは翌20日です。 

しかも連休だったので、各農家に通知したのは22日。JA系列以外の農業団体には通達さえ来ていなかったのです。おそらくは、この白河有機農業研究会には通達すら来なかったのではないでしょうか。 

しかし、この「失われた3日間」の時期こそ、まさに放射能雲が福島の頭上を移動しているまさにその時だったのです。 

その上、農水省は外部スクリーニングのみで大丈夫」という明らかに誤った測定方式を福島県に命じています。

内部被曝検査は、福島県は6台しか保有しておらず野菜で手一杯ならば、尿検査という手段だってあったはずです。 

政府にお聞きしたい。
政府は福島県全域、茨城県ほぼ全域、千葉県房総半島を除くほぼ全域、そして栃木県の一部、群馬県の一部、岩手県の一部、東京都の一部に対して的確な放射能情報を与えたのですか?

いや、まったく与えてはいない。放射能雲が通過していることをSPEEDIという原子力安全・保安院が管理するスパコン予報システムで知りながら、一切の情報を握り潰し、国民を放射能雲の通過に無防備で立ち向かわせ、3月22日の放射能雨に打たせたのです。

この罪をぜったいに許してはならない。私は、このようなことを放射能災害における棄民政策と呼びます。

ああ、いかん血圧が上がる。過呼吸になる。ゼーゼー(笑)。

政府はこう福島、茨城、千葉の農民に警告を出すべきでした。

●3月12日以降の露地野菜、牧草、お茶はすべての検査が終了し、安全が確認されるまで出荷してはならない。

●野外に野積みしてある去年産の稲藁、乾燥牧草は至急室内に取り込むこと。そして測定を待つこと。それまでの使用は厳に禁じる。

●屋外の蓋がない用水、貯水槽は測定が終了し、安全が確認されるまで使用を禁じる。

●3月22日の降雨がかかった場合は、直ちに衣類や靴類を荒い、シャワーを浴びて洗浄すること。

●これらの政府通達による農業被害はすべて国家が責任をもって補償する。

このていどの警告と指示は、政府にはひと山ほど原子力の専門家がいるのですから出せたはずです。しかしそれをしなかった。

こういうことを「行政の不作為」といいます。

政府として成すべきことがあり、それが可能だったにも関わらずしなかったために国民の生活と健康に大きな被害を与えたのです。

私はこの行政の不作為のもっとも大きな被害者のひとりが、牛肉を出荷してしまった農民たちであり、そして政府の適切な指示と情報提供を受けなかったために加害者の烙印を押された白河の農家の人たちだったと思うのです。

 

 

 

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流通先、33都道府県に拡大=餌汚染の牛42頭―福島 

 福島県浅川町の農家が肉牛に餌として与えた稲わらから放射性セシウムが検出された問題で、この農家が出荷した肉牛42頭の流通先は33都道府県に拡大したことが16日、分かった。埼玉県内で保管されていた牛肉からは、食品衛生法に基づく暫定規制値(1キロ当たり500ベクレル)の4倍を超える2100ベクレルのセシウムが検出された。
 
 東京都も同日、東京食肉市場(港区)で競り売りされた21頭のうち、2頭の牛肉から暫定規制値を超える670ベクレルと610ベクレルのセシウムが検出されたと発表した。一部は都内と埼玉、静岡両県の業者に販売されていた。この他、山梨県に流通した牛肉から680ベクレル、岐阜県で保管されていた牛肉から630ベクレル、青森県で保管されていた牛肉から1050ベクレルのセシウムが検出された。
 
 この日は、北海道、新潟県、京都府、和歌山県などで牛肉が流通していたことが新たに確認された。北海道では、札幌市の食肉卸業者が、芦別市の食肉販売業者と恵庭市の飲食店に計12.3キロを販売。新潟県では5月に約22キロが新潟市内のホテルで調理され、全て消費された。京都府では5月に約85キロが府内の飲食店に販売され、全て調理して客に提供された。
時事通信 7月17日(日)0時29分配信
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■早川由紀夫群馬大教授作成による放射能雲の移動図
(白河の位置を確認ください。図版の版を大きくしました。クリックすると大きくなります。参考のために引用させていただきました。ありがとうございます。)
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緑色と黄色のエリアに注目。緑色は0.25μSv/h(毎時マイクロシーベルト)以上、黄色は0.5μSv/hから1μSv/hのあいだです。
爆発以前の関東地方の放射線量はだいたい.05μSv/h前後ですから、5倍から20倍は高い数値が観測されています。

2011年7月16日 (土)

私たちには自分で自分の安全・安心を確保するしか残された道はないのです

009
今回の浅川町の農家から出荷されたセシウム検出された肉牛が、放射性物質を被っていたワラが原因だったとして、福間氏全域の肉牛に対して出荷制限がかけられました。

当該の南相馬市、浅川町だけではなく県全域です。

また県内3カ所の藁から、乳牛と肥育牛の暫定規制値(300bq/㎏)を上回るセシウムを検出したために、福島全域の原発事故後に収拾した藁を与えないようにとの指示が県から出ました。

この規制値を超えた放射性物質が検出されたのは登米市2カ所、栗原市1か所です。これらのワラは原発事故後時に水田に置いてあり、3月下旬から4月に収拾し屋内保管したものです。(資料1参照)

とうとう出たか、というのが私の最初の感想でした。というのは、この1週間、地元農業関係行政と「なぜ土壌放射線量を計測しないのか」をめぐってやりとりをしていたからです。

わが行政は、「モニタリングポストで異常な数値は出ていないからやる必要はない」というような空間線量と既にフォールアウトしてしまった放射線量を混同した回答を寄越しました。

「既にフォールアウトしてしまった土壌。特に牧草は除染も困難であり、長く牧草自体に残留し続けるが、わが市でそれに対する警告はしているのか」と問うと、「まったくしていない」とあっさり答えられてしまいました。

これが現実です。この程度のレベルが地方自治体の水準です。おそらくは福島県も同じていどだったようです。

私が言う、土壌放射線量には、当然牧草も含まれます。というか、牧草のほうが土壌よりはるかにやっかいなのです。その理由は4つ。

●フォールアウトした放射性物質は、牧草に吸収され、いったん吸収されるとセシウムは半減期30年間は動かない。

●土壌はクリーニング・プラントや深耕ロータリーなどで希釈するなどの除染が可能だが、牧草は剥がすしかない。

●3月12日以降の牧草を乾燥保管している農家は多数存在する。生乳の出荷規制が解かれた段階で通常どおり給与している。

●給与前の事前計測は行政から警告されていないためにまったくといっていいほどなされていない状況である。

わが茨城県の牧草に3月15日、3月20日の2回にわたって放射性物質がフォールアウトしたことは確実であり、現に石岡市の牧草を食べた乳牛の生乳に規制値を超えるセシウムが検出されています。

はっきりと言いましょう。わが県においても福島と同様の事件が起きる可能性は極めて高い。

私は群馬大学早川教授の飛散図でわかるように、放射能雲が移動した地域すべての土壌、牧草を早急に検査すべきだと思います。(資料2参照)

責任問題は後でゆっくりやればいい。

●当然のこととして、一義的には原発事故を起こした東電と国。

●二義的には、3月12日以降屋外にあったすべての牧草、ワラなどを検査せずに、ワラに対して警告すらしなかった農水省と福島県。

3月19日に農水省から指導が出て、東北農政局を通じて福島のJAに伝わったのは翌20日。しかし連休だったので、各農家に通知したのは22日。この時期がもっとも線量が高かったはずです。

●そして結果としてはですが、フォールアウトの危険を知りながらそれを出荷した白河有機農研にあります。

1と2に関しては異論は出ないでしょう。鹿野農相は責任を取って辞任すべきです。そして被害農家は国家賠償請求訴訟をしてください。

問題は3です。ワラ出荷組合にまで責任はあるのか、です。

私はあえて「ある」と考えます。白河は原発から70㎞ですが、当然フォールアウトはありえると考えてしかるべきでした。

もし福島県内の農家で、自分の畑や牧草がまったく放射性物質がフォールアウトしていないと思っている者があれば、それはあまりにも現実から乖離しています。ちなみにわが県も一緒です。

避難区域はあたりまえとして、福島市や郡山市の市民感覚からすら離れています。農業者は放射性物質についてあまりにも鈍感に過ぎます。

いったん事あれば自分の出荷物のみならず県全域を出荷制限という地獄に叩き込み、全国の枝肉相場すら下落させることを真剣に考えるべきです。

農家の中には、計って出たら風評が怖いという人がいます。逆です。農家が放射性物質のフォールアウトの現実を自分で把握しないから、いつまでも風評被害が治まらないのです。

「東電が悪い、国が悪い、オレらは被災者だ」という泣き言はもういい。もう沢山だ。そんなことを今さら百回言ってもいまや誰も同情してくれませんよ。

国は何もしてくれないと腹をくくることです。地元行政はもっとダメ。政党も議員はいてもいなくても一緒。

ではいったい誰が自分の農産物を守るのでしょうか。自分です。農家が自分で守るしかもう手はないのです。

私たちには自分で自分の安全・安心を確保するしか残された道はないのです。このセシウム稲藁事件以降、私たち農家は逃げられない現実を直視すべきです。

           ゜。°。°。°。°。°。°。°。゜。°。°。°。

資料1 

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                (日本農業新聞7月16日)

■資料2 群馬大学早川由紀夫教授による放射能雲(プルーム)の移動図

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■ 福島の全肉牛出荷制限

福島県産肉用牛から相次いで国の暫定規制値(1キロ・グラム当たり500ベクレル)を超える放射性セシウムが検出されている問題で、政府は15日、同県内のすべての肉用牛について原子力災害対策特別措置法に基づき出荷を制限する方針を固めた。

 菅首相が19日以降、福島県の佐藤雄平知事に指示する。

 厚生労働省と農林水産省は15日、放射性物質に汚染された肉用牛が福島県全域に広がっている恐れがあると判断。市場に流通させないために、出荷制限に踏み切ることを決めた。同県はすでに県内のすべての肉用牛農家約4000戸に対し18日まで出荷自粛を要請。両省は出荷自粛の期限後に、制限する方針だ。同県の昨年2月時点の肉用牛飼育頭数は約7万8000頭。

読売新聞 :7月16日

■ 肉牛餌放射性セシウム汚染問題 牛出荷の農家「断腸の思い。どうしていいかわからない」

フジテレビ系(FNN) 7月15日(金)13時37分配信

福島・浅川町の畜産農家で、高濃度の放射性セシウムに汚染されたわらが肉用牛に与えられていた問題では、福島第1原発から70km以上離れた場所の稲のわらから、高濃度の放射性物質が検出されていた。
放射性物質に汚染されたわらを出荷していたのは、福島第1原発から70km以上離れた福島・白河市の営農集団。
汚染されたわらを牛に与えた浅川町の農家は「福島県の地図で、(原発から)20km、30kmの円の外で、はるかに離れたとこで、そんなこと考えたこともないんですよ」と語った。
この農家は、6月16日までに40頭を出荷していて、すでに大半が消費されたとみられている。
農家は「知らないことで、もう流通させてしまったということに対しては、ものすごい断腸の思いでね、どうしていいかわからないの、はっきり言ってね。だから、俺も行政の指示を仰ぐしかないです」と語った。
この問題で福島県は、残っている肉の放射性物質を検査することにしている。

2011年7月15日 (金)

電気なければ農業は死滅。「脱原発」は慎重にやってください。  新たな福島セシウム牛、ワラからが原因

025
停電についてちょっと考えてみます。結論から言えば、農業が停電をやられれば、致命傷になりかねません。

特にこの炎天下で計画停電を食ったらと思うと、ゾッとします。わが農場の家畜は半分は死ぬでしょう。

都市と農村では「電気」の意味が違います。

実際に私たち被災地の人間は3月11日の大震災当日から、私の地域で4日間、長い地域で1週間にも及ぶ停電を体験しました。

私たち農家は生活と生産が密着しています。生活のほうはまだ「暗いな」といいながら闇生活に耐えれば済んだのですが、生産はそうはいきません。

わが農場は井戸です。よい地下水が出るので念のため予備まで入れて2本の井戸を掘っています。まぁ、水は完全自給できるわけですね。

ところで、井戸はなんで動くんだ?ポンプです。ポンプはなんで動くんだ?電気です。今日び、手で汲み上げている農家は珍しいですね。というよりいない。

そうそう震災の時は、村でいまや数本しかない手で汲む井戸が大活躍したんですよ。

では水道はというとこれもダメ。なんででてしょうか?浄水場の配水ポンプも電気で動くので、これもダウンしてしまいました。それと震災時にパイプが地下で破断してしまったためもあるようですが。

とまれ井戸にしても水道にしても、電気がこないと水が遮断されるのです。

私たち畜産農家にとって、家畜にやる水が切れるほどの恐怖はありません。あの震災がまだ寒い3月でよかったと思うほどです。

震災が今の梅雨明けの炎暑下で起きたのなら、もう目も当てられません。今は平均で最高温度は32℃を超えて35℃になる日も出ています。

この状況で断水が、震災時のように4日間も続けば・・・おお考えたくもない。プルプル(首を振る音)。

3月の大震災の時は、私はこんなふうに水を求めて3千里をしました。

●震災初日・・・そう長くはないだろうとタカをくくっています。明日には回復するだろうからちょっとシンボーしろよ、「水出てねぇじゃないか」とギャギャ言うトリを慰めます。

●震災翌日・・・まだ停電・断水。トリが産卵する午前中の給水は必須なので、わが家の風呂の水をありとあらゆる水が入る容器に入れて(台所の皿洗い用ボールまで動員)、どうにか喉湿ていどやりました。しかし、数時間で空に。

●震災3日目・・・隣の妹の家の風呂の水まで頭を下げてもらいに行きました。しかしこれもわずかしかなく、トリの怒りと渇きは頂点に・・・!

●震災4日目・・・まだまだ停電・断水。手汲み井戸をもらいに行きますが、とうに人間サマの水で長蛇の列。とてもじゃないが、家畜用の水を下さいとは言えません。

しかたがないので、近所の小川にバケツを持って汲みに行きました。午前午後数回。急斜面で滑りやすい川岸を数十回往復して、配餌車の100㎏入り容器を満杯にして、農場に帰ってようやく満足できる水やりができました。

ただし、人間様はヘロヘロ。いや~腰に来たこと。

川で水を汲んでいると、橋を通る村の仲間が物珍しげに、「ハマちゃんよー、川の水で飯炊くのけェ。きたねぇぞ。おらげの下水入ってかんなぁ。ハハ」。

なにがハハだつうの。畑屋はノンキでいいよ。オレだってここまで困んなければ、川の水なんか汲まねぇてえの。

大規模畜産屋もバルク車(:飼料を供給する8トン車のこと)にガソリンポンプを積んで、やはり川の水を汲んだそうです。

ウインドレス鶏舎(*工場式無窓鶏舎のこと)など、天まで届くケージが倒れた上に、倒壊を免れた棟も、酸欠、給餌、給水不可能となって、数十万羽が数時間で死にました。

この夜に復旧したので、どうにか川に水汲みという荒技はこれで終了したのですが、あと数日この停電・断水続いたら(実際に茨城県の一部ではそれからもえんえんと続いた地域が沢山あります)、私はここでノンキにブログなんか書いておらずに、今頃ドカチンの出稼ぎに行っていたでしょうね。

こんな悲喜劇は被災地のいたるところにころがっています。電気来なけりゃ水もない。ノーモア停電&断水。

さて、カン首相が「脱原発」をするとかなんとか言ってます。まことに高邁なお話ですが、正直言って私たち農家は「なんだかなぁ~」という気分で聞いています。

言っている当人が、大震災や原発事故でなんの役にも立たなかったばかりか、むしろ足を引っ張りまくった張本人だというのが痛いですなぁ。

そもそも大学でマージャン点棒計算機が専攻だったくせに、原子力事故の直接指揮なんかするもんじゃないよ。

なにも原発の冷温停止など難しいことを頼んでいるのではなく、身近な国民がほんとうに心配している放射能の汚染状況すら明らかにできない政府が、なにが脱原発、笑っちゃいます。

ましてや、除染作業など政府は小指一本動かしていません。この問題で必死に活動している与党議員など見たことがない。彼らの心配しているのは、総選挙があったらほとんど討ち死にだという自分の運命だけです。

わが選挙区の与党議員さん、あなた自分の選挙区で放射能測定したことがありますか?まして除染活動をしたことがおありですか?そういう地道な活動をしないから信頼されないんですよ。

そもそも、あなたの選挙事務所がある鉾田にメルトダウン後の3月21日午後4時30分、放射能雲(プルーム)が頭上を通過したことを知っていますか?

そして松戸、柏選、葛飾、江戸川選出の与党議員さん、あなたは3月22日午前8時に放射能雲と雨雲がぶつかり放射性物質を大量に含んだ雨が降ったことをご存じですか?柏、松戸、東葛にホットスポットが多数できたのはそのせいです。(資料1参照)

私の7月8日の記事でも書きましたが、この放射能雲の移動した地域の与党議員は自らの選挙区に帰って、率先して放射能測定を行い、汚染マップを作り、除染活動の乗り出すべきです。
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2011/07/post-d5ba.html

また、初めから計画停電を前提とするような「脱原発」には私は賛成できません。

よく知識人が、「電気を使いすぎる現代生活を考え直すいい機会です」などとしたり顔で言っているのを聞きます。

私から見れば、あんた川から水を汲んで家畜に「ごめん、ごめん、今日はこれだけなんだ」と謝りながら水をやってからその台詞を言え、と言いたくなります。

愚かなプロセスで「脱原発」をすれば、農業は半身不随になります。農業のみならず、国内の生産業の生産拠点は、円高と電力不足を嫌って海外へ逃げるでしょう。

わが国はドイツやイタリアのように、同じ域内の原発立国フランスから電気を売ってもらって「脱原発」をするという小器用なまねはできません。

そもそも原発事故の広域な被害から考えれば、域内すべてで「脱原発」をせねばならないはずです。一国脱原発主義でいいのか、どうなのか。

所信表明演説でベトナムに原発を売ったことを得意気に手柄話した首相が、アジア域内脱原発まで考えているのかお聞きしたいものです。

こんなカン首相の言う「脱原発」なんて、自分の原発事故対応の失敗を大ぼら吹いて目先をすり替えようとしているだけにしかみえませんよ。

あるいは、篠原農水副大臣が大好きなドイツのように、これから大原発立国となろうという中国から電気を売ってもらうことまで考えて言っているとしたらなかなかしたたかです。

しかしそんな困った時の買い物は、足元を見られてさぞかし高いものにつくでしょうが。ああ、いかん、暑いせいで今日の私はヒジョーにイヤミ。

まずは地道な放射能防護をすること。正しい放射能についての情報を出すこと。除染活動を汚染地区の隅々まですること。

それが選挙民の代表としての政府の国民を守るということです。それをしないで、なにが「脱原発」か。話になりません。

まず国民を守ることが出来てから、数十年かかる高邁なお話はお伺いしましょう。ラジウム鉱泉で顔を洗ってこい!

■追記 新たなセシウムが検出された牛が見つかり、その原因がワラ組合の出荷したワラにあることが判明しました。明日記事にします。(欄外の追加情報1、2をご覧ください)

             ゜。°。°。°。°。°。°。°。゜。°。°。°。

■資料1群馬大学早川由紀夫教授による放射能雲の移動概念図

Photo(「週刊現代」7月16日号より参考のために転載させていただきました。ありがとうございます。クリックすると大きくなります)
 

柏ママの放射線だよりhttp://members3.jcom.home.ne.jp/2143800701/

 

別な農家からもセシウムワラを食べた牛が出たことが発覚しました。もっと出る可能性が高くなりました。 

■セシウム汚染餌の牛、42頭出荷=仙台、千葉、東京、横浜で食肉処理―福島県 

 時事通信 7月15日  

福島県は14日、南相馬市の農家が出荷した肉牛から食品衛生法の暫定規制値(1キロ当たり500ベクレル)の放射性セシウムが検出された問題で、新たに浅川町の農家が規制値を大幅に超える高濃度の放射性セシウムに汚染された稲わらを餌として肉牛に与えていたと発表した。  

この農家からは今年4月以降、42頭が出荷され、東京都や千葉県、仙台、横浜両市のと畜場で食肉処理された。肉は岩手、山形両県にも出荷されており、既に一部は消費された可能性がある。福島県は県内すべての食肉用牛農家約4000戸に対し、14日から5日間程度、肉牛の出荷と移動を自粛するよう要請した。  

 県によると、県内の食肉用牛農家に対する立ち入り調査を実施したところ、浅川町の農家が保管していた稲わらから、1キロ当たり最高9万7000ベクレルという高濃度のセシウムが検出された。これは乾燥する前の水分を含んだ状態に換算すると、規制値の73倍に相当する。  

 42頭は、4月20日までに横浜市(14頭)、5月11日までに千葉県(5頭)、6月16日までに東京都(13頭)、7月6日までに仙台市(10頭)に、それぞれ出荷され、食肉処理されたという。福島県はこれらの牛肉の流通先について、厚生労働省などを通じて調査を急いでいる。

 仙台市によると、同市のと畜場で処理された肉のうち、1頭分420キロは7月7日に東京都港区の卸業者に出荷された。7月11日には岩手県花巻市の業者が8キロ、山形県酒田市の業者が360キロをそれぞれ購入したという。

追加情報 福島の肉牛に高濃度セシウム汚染の稲わら供与、42頭流通

産経新聞 2011.7.14  

 福島県によると、横浜市に14頭、東京都に13頭、仙台市に10頭、千葉県に5頭を出荷した。仙台市によると、10頭のうち1頭分は食肉加工後に東京都の業者に販売され、さらにもう1頭分は山形県酒田市や岩手県花巻市、仙台市の業者に販売。残り8頭の流通経路は不明で解明を進める。

 また、厚労省によると、千葉県で解体された牛は都内の施設を通じて流通しているという。

 福島県によると、浅川町の農家のわらからは、セシウムが最大で1キログラム当たり9万7千ベクレル検出。わらの水分量を補正すると暫定基準値の約73倍だった。わらは福島県白河市の稲作農家から購入したもので、計4種類。うち2種類は、田んぼに置いていたものを福島第1原発事故発生後の3月15日以降に集めたものだった。残り2種類は昨秋に集めたものという。

 農水省は岩手、宮城、福島、栃木、茨城、千葉、群馬、埼玉の8県の畜産農家と稲作農家を対象に、わらの取り扱いに関する緊急調査を行う。

■追加情報2 肉牛の餌に高濃度セシウム 42頭 首都圏などに出荷

東京新聞7月15日

福島県は十四日、同県浅川町の肉用牛農家が高濃度の放射性セシウムを含む餌の稲わらを牛に与えていたと発表した。この農家は四月八日から七月六日の間、四十二頭を東京都、千葉県、横浜市、仙台市に出荷。食肉も汚染されている可能性があり、厚生労働省は食肉処理された後の流通経路について、関係自治体に調査を要請した。

 福島県によると、わらからは、セシウムが最大で一キログラム当たり九万七〇〇〇ベクレル検出された。わらの水分量を補正すると暫定規制値の約七十三倍となる。

 わらは、肉用牛農家が福島県白河市の稲作農家から購入した。稲作農家は福島第一原発事故発生後の三月十五日以降に水田から収集してロール状にしていた。昨秋にロール状にしたものもあった。

 農家は「事故後のわらを食べたのは三十五頭だけ」と説明しているが、昨秋のわらからもセシウムが検出されており、福島県は「全四十二頭の追跡調査が必要」としている。この農家で飼われている牛の尿からもセシウムが検出された。

 白河市の中心部は福島第一原発から約八十キロの距離で、避難が求められる区域ではない。農林水産省はわらの適正管理が必要と判断。岩手、宮城、福島、栃木、茨城、千葉、群馬、埼玉の八県で、畜産農家と稲作農家を対象に、わらの取り扱いに関する緊急調査を実施する。

 福島県によると、牛四十二頭の出荷先は、横浜市十四頭、東京都十三頭、仙台市十頭、千葉県五頭。

 仙台市によると、十頭のうち一頭分は食肉加工後に東京都の業者に販売され、もう一頭分は山形県酒田市や岩手県花巻市、仙台市の業者に販売された。残り八頭の流通経路は不明。千葉県で解体された牛は都内の施設を通じて流通しているという。

 福島県は県内の肉用牛農家への立ち入り調査を実施しているが、県内の生産者に調査終了まで牛の出荷と移動の自粛を求めた。調査は今月十八日ごろに終了する見込み。

 福島県によると、浅川町の農家が「稲わらを搬入してもらったが心配だ」と連絡。県が立ち入り調査し、汚染が判明した。

(東京新聞)

2011年7月14日 (木)

このブログについてひとこと

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ひとこと申し上げておきます。コメント欄でどのようなことを発言なさっても、原則自由です。

ただし、ブログはこれまた原則「私のもの」です。一般に公開を前提としていますが、掲示板ではありません。

私のテーマや主張とあまりに異なっていると感じたら、削除する権利は一義的に私にあります。

活発な討論は結構ですが、掲示板化することをあまり私は好みません。じつを言うと私は2chはかなり嫌いです。

これは別に私だけの勝手なルールではなく、一般的に主張を持ったブログの原則のようなもので、ブログによってはコメント許可制をとっているところもあるほどです。

それからもう一点。
コメント投稿者同士のレッテル貼りは見ていていいものではありません。「まだいたのか」という書き方は行き過ぎですし、逆にそれに対して「身内の傷のなめあい」と応酬するようになるからです。

さて、私は頑固なアナログ人間で、若い人には信じられないでしょうが携帯のない青春を送り、PCを覚えたのも中年でした。ですから、発言する「人間」を重要に思っています。

コメントを読む時はそのお人の顔が浮かびます。と言っても実際の顔はまったく知らないのですが(笑)。

たとえば、cowboyさんは口蹄疫と闘った宮崎在住の気鋭の牛農家ですし、南の島さんはとある島でがんばっている青年畜産家です。このおふた方は、中古品の畜産屋の私にはまぶしいくらいの存在です。

りぼんさんは、こんな人がひとりわが村にいたら状況が違っていたろうなと思えるような博学強覧の豚農家です。一宮崎人さんはある地方の獣医師をされています。 医師らしく非常に理詰めな理論家です。

北海道さんはJA系の組織の重鎮を務められている心優しき北海道人です。いつも穏やかで、いい意味での常識を備えておられます。 こういう大人になれたらといつも思う方です。

青空さんは仙台で被災された金融関係にお勤めの大変な論客です。私の記事より量質共に高いコメントを書くという悪い癖がありますが(冗談)、金融関係者とは思えない農業に対する愛があります。 

山形さんは宮崎口蹄疫の時に、体の不調にもかかわらずスコップを持って現地に駆けつけたいと思った心優しき熱血漢です。熱血のあまり管理人補佐のようなことをしてしまう場合もあるようです。 

コンタンさんは常連さんではありませんが、建築家らしい数値の世界が展開されます。数字とデータが欲しい方は、彼のブログにお行きください。 

これらの方々の多くはご自身でブログを運営されている論客揃いです。おそらく農業関係ブログでは、私の記事はともかくとして、コメントの質の高さはそうとうなハイレベルだと自負しております。 

また、原子力事故を契機にこれらのいわば常連さん以外の多くの方々が参加されて発言されています。嬉しい限りです。 

やや農業関係者に固まりすぎたかなとこのところ思っているので、むしろどんどんと農業外の風を吹き込んで頂けると有り難いですね。 

というわけで、ここはこれらの農業を愛する人たちの「農をめぐるサロン」のような性質があります。ですから、農業の危機に際しては、意図せずに一定の「コメント内世論」のトーンが出来てしまうようです。 

大阪在住さんがその中で異質なことは仕方がありません。正直言って、たまにカチンときますがむしろ異化効果のようなものと思ったほうがいいのかもしれません。 

異質であっても、いわゆる「荒らし」とは違って筋道が立っているので、「なるほどなぁ。こんな風に考える人もいるのであるかい」という眼で読んでいます。まぁ、懲りずにご来訪ください。 

てなことを書いていたら記事を書くスペースがなくなってしまいました。さあて、今日もアチイぞ。いっちょ表で働いて来るか!

■追記 なでしこジャパン、な、んと勝った!FIFAワールドカップで優勝決定戦だ。ホントか信じられない。バンザイ!バンザイ!

 

2011年7月13日 (水)

このセシウム牛事件は国に見捨てられた農家の落ち込んだ陥穽だと私は思います

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多くのご意見をいただきました。ありがとうございます。

私の意見もほとんどその中に含まれているほどの活発な討論だったのですが、私からはこの事件を見て、「ああ、さもありなん」という気分になったことを少しお話させていただきます。

今、南相馬市のセシウム牛事件で、農水省が「体表面のスクリーニングでいい」という指示を出していたことが明らかになり、この事件後あわてて福島県に対して検査機械の補助をすると言い出して失笑をかっています。

なにを今さら!

つまり農水省は、牛の生体表面を線量計測すれば、被曝状況が分かると思っていたらしいのです。

もはや笑うしかありません。私たち平民ですら知っていることを霞が関の雲上人たちは知らなかったことになります。

●まず、牛は外部被曝をしても、体内に取り込むことは少ない。第一、避難準備区域、避難区域の肥育牛で山間放牧している牛はない。すべて舎内肥育である。

●次に、問題は内部被曝であり、それは枝肉にして計測しなければ測定不可能である。ところがこの内部被曝検査が可能な検査器材を福島県はわずか6台しか持たず、野菜などの検査で手一杯状態でした。

この指示を出したのが、他ならぬ農水省本省だということを銘記していただきたいと思います。

日本農業新聞によれば、この両地区からの牛を食肉加工するのは郡山食肉センターです。

1日に処理される牛は35頭ていど。食肉センターとしては決して大規模施設ではありませんが、それでもこれらの処理済食肉を放射能検査機に入れて小一時間(約40分前後)で検査するとなると、単純計算で35時間かかるということです。

はっきり言って話になりません。そもそもそんな高精度な検査器械は郡山センターにはないはずです。

だから、仮に農水省本省が、「両地区からの牛を全頭内部被曝検査にかけること」という指示を出したとしても、そんなことはできるはずもなかったわけです。

地元自治体がそもそも無理だから農水省は出さなかったのか、あるいは内部被曝検査の重要性を知らなかったのか、いずれにせよ、検査を命じておきながら自治体に責任をすべてを丸投げして、適切な器材と財政の配置を怠った農水省の不作為が今回の事件の陰の主役です。

鹿野農水大臣は別に悪びれる様子もなく、「「放射性物質計測器械の導入などで県を支援していく」(日本農業新聞7月13日)とシャラとして言っています。まさに鉄面皮とはこのことです。

そんなことは3カ月前にすべきではなかっのですか?なにも全国のすべての都道府県に高精度線量計を配備しろと言っているのではありません。たかだか福島と茨城両県くらいの話です。そんな予算もなかったとは言わせない。

官僚と猿には反省という言葉はない。官僚栄えて、農民死す。国破れて菅と官あり。ああ、もっと言いたいがやめとこう。(←イヤミくらい言わせてくれぇ!)

さて、おそらくこのセシウム牛事件はこんな流れだったはずです。

●3月11日の大震災による東北、北関東全域への飼料供給基地の被災⇒東北、東関東全域の飼料供給全面停止。

●ほぼ2~3週間、畜産農家すべてが飼料供給ストップ状態に陥り、家畜に食わせるものがないという深刻な危機的状況となる。

●JA全農を中心とする全国規模の東北、北関東畜産農家支援作戦の発動。(ちなみに農水省は機能停止状態)

●原発事故。牧草から高濃度放射性物質検出。福島県に出荷制限。牧草給与禁止令。

●原発に近く、インフラが寸断されていた南相馬市への飼料供給再開は他の被災地域と比べて非常に遅れた。

●当該農場においては、原発事故以前に刈り取った牧草が野外保管されていた。

●当該農家は飼料が底を尽き、「事故以前のものだからいいだろう」と自分を納得させて使用してしまった。

●県の検査には強制立ち入り調査権がなく、任意の聞き取りだけ。当該農場は、牧草は与えていないと虚偽の答えをする。

●外部スクリーニングだけで出荷パス。

●東京都などで発覚。大事件へと発展。

要するに、大震災による飼料供給の長期ストップ、飼料枯渇といった状況に置かれて、国の助けがまったく期待できない中で、「事故以前」の野外保管牧草に手が伸びた、それがこんな大事件に発展したのです。

農水省は、言い換えれば政府は、飼料供給の建て直しを放擲し、農家に対しての有効な救援を打ち出せないまま、原発事故に突入してしまいました。

そして原発事故においても、暫定規制値の設定に失敗し、放射能対策を的確にすることができず、検査の指示も外部スクリーニングだけでいいとするような科学性を欠いたいいかげんなものでした。

避難区域では多くの家畜を生きたまま放置する非人道行為を行いました。救援したのはJA全農です。

この4カ月間、農水省はいかなる放射能対策もおこなっていません。

土壌線量検査は自治体まかせ。その自治体は金がないので、安物のガイガーカウンターで計っている始末です。高精度な計測器機器は県に数台あるだけでフル稼働状態。

風評被害の根を断ち切るためにもっとも有効なはずの除染すら、実施はおろか、技術的な指導すら放棄したままです。飯館村のあんなアリバイ工作はカウント外です。

まさに無能無策無為!人の心すらない。

この事件は国に見捨てられた農家の落ち込んだ陥穽だと私は思います。

ですから私には到底、この農家だけを責める気にはなりません。しかし多くの彼の仲間はその誘惑に負けず乗り切ったわけです。

その意味において、彼の責任は重いと思います。ただし、彼の責任だけを問えば済むという単純な問題ではないのです。

■写真 真昼の炎天下の村の道。もう稲が青々と繁る時期になりました。

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■福島第1原発:セシウム検出で福島牛全頭検査検討 厚労相
毎日新聞 2011年7月12日

福島県南相馬市の畜産農家が出荷した黒毛和牛11頭から暫定規制値を超える放射性セシウムが検出された問題を受け、細川律夫厚生労働相は12日の閣議後会見で、「国民も心配しており、福島県内で地域を区切って全頭検査を考えないといけない」と述べた。福島県は既に計画的避難、緊急時避難準備の両区域内の農家約260戸から出荷される肉牛の全頭検査の実施を決めており、厚労省は今後、県と具体的な検査体制などについて協議する。

 また、細川厚労相は暫定規制値を超える肉牛が出荷、流通したことについて「一回、その牛肉を食べたからといって特に(健康に)問題はないが、どうしてこういうことになったのか原因調査にしっかり取り組む」と語った。

 鹿野道彦農相も閣議後会見で、「飼養管理について周知徹底をしたつもりでも、このような事態に至ったことは反省しなければならない。改めて徹底を(農家に)要請した」と述べた。

 鹿野農相は「(飼養管理が)大変重要だということを(農家に)理解してもらえなかった」と反省点を挙げた。また、両区域から出荷される肉牛の全頭検査に全面的に協力する意向を示した。

 一方、細野豪志消費者担当相は閣議後会見で、「専門家の意見を聞いているが、一部をわずかに口にしたことで健康に大きな影響はない」と述べ、国民へ情報発信する必要性に言及した。

■<セシウム検出牛>不安拡大…給食使用自粛、客に提供判明
毎日新聞7月12日

福島県南相馬市の畜産農家が出荷した黒毛和牛から暫定規制値(1キロ当たり500ベクレル)を超える放射性セシウムが検出された問題で、同じ農家が出荷した牛肉が流通していた自治体では12日、学校給食で牛肉の使用を自粛したり、飲食店で既に客に提供されていたことが次々に判明するなど影響が広がった。流通先は11都道府県に拡大し、各自治体や流通業者は対処に追われる一方で、消費者に冷静な対応を呼び掛けている。

 ◆学校

 横浜市は12日、市立小学校の給食で、1学期最後の給食となる15日まで牛肉の使用を自粛すると発表した。

 厚生労働省は8日、福島に加え宮城、山形、茨城、栃木、群馬、新潟7県に牛肉のモニタリング検査を強化するよう依頼しており、横浜市は夏休み明けの2学期以降は当面の間、7県産以外の牛肉を使用する方針。1学期は全面自粛とした理由を、市は「短期間で7県以外から調達することが難しく、保護者の不安に配慮した」と説明している。

 市によると、対象は344小学校と96保育所。市教委は11日に各学校に通知しており、11日の一部小学校のメニュー「牛肉のトマトソース炒め」は牛肉から豚肉に変更された。保育所では当初から4~7月は牛肉の献立がないという。小学校の4~6月の給食では、牛肉の献立のうち約17%で福島産の肉を使っている。【杉埜水脈】

 ■飲食店

 神奈川県藤沢市は12日、南相馬市の同じ農家が5月に出荷した1頭の肉から、規制値の6倍を超える3240ベクレルのセシウムが検出されたと発表した。

 市や県によると、5月末に東京都内の食肉処理施設で処理され、6月3日に藤沢市内の業者が304.5キロを仕入れた。うち73キロを同市内の消費者などに販売。123.9キロを都内と川崎、相模原両市の飲食店など4店に販売した。川崎の店からは59.6キロ全てが千葉県内の1店に販売され、全量が保管されている。

 北海道では、6.65キロを千歳市内の飲食店が仕入れ、焼き肉用に約2キロを客に提供、煮込み料理にした約1キロの一部も提供した。余りを12日に道立衛生研究所が調べたが、検出された放射性セシウムは暫定規制値を下回った。道は「毎日500グラム食べても年間被ばく許容量を超えないレベル」と冷静な対応を呼び掛け「流通の末端になればなるほど検査の事務量は膨大で困難になる。まずは川上で食い止めてもらうしかない」と話す。

 愛知県では、5.9キロを同県あま市の焼き肉店1店が購入し、うち3.15キロが消費されていた。秋田県では、横手市の食肉販売店に流通していたが、店内で全量保管しており、消費者には販売されていなかった。【永尾洋史、坂本太郎、田中裕之、加藤潔】

 ■スーパー

 徳島、高知両県の222人に牛肉17.6キロを販売した松山市のスーパー「フジ」は、購入者のうち、同社発行のポイントカードを使った約8割を特定し、「健康には影響がない」と伝えて謝罪と返金を進めている。販売した2店舗では、購入者に連絡を呼び掛ける張り紙と、他の店舗では入荷していないことを伝える張り紙をした。

 フジから8.8キロを納入された高知市の「ヴェスタ桜井」では計168パックを既に完売。12日朝から店頭に「重要なお知らせ」と題した張り紙を掲示して連絡を呼び掛けた。12日は数件の問い合わせがあったという。徳島県阿南市の「フジグラン阿南」でも「購入した商品は該当するものか」など約80件の問い合わせがあった。

2011年7月12日 (火)

ここで踏ん張るために失敗の原因をしっかりと究明しよう

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南相馬市のセシウム牛肉事件に3ツの新たな情報が加わりました。

まず、南相馬市の当該牛が10都道府県に既に出荷されていたことが仲買業者の伝票から分かりました。

またこれを受けて、福島県は県内処理する牛の全頭検査をすることに決めました。ただし、報道では「全頭検査」とあるだけで、今までのような意味のない外部被曝のチェックなのか、内部被曝まで踏み込んだ放射線量検査なのかはわかりません。

もし前者のスクリーニングならば、やっても無駄です。今は福島県産ブランド牛が踏ん張る時です。信頼回復のために、大変であることは重々承知ですが、内部被曝検査をされることをお願いします。

そして、出荷した農家のワラからも1万7045ベクレルの高濃度セシウムが検出されました。出荷農家は、調査に対して今までは屋内保管していたムラのみを与えていと言っていたが、実は「爆発時に屋外にあったワラも与えていた」(朝日新聞7月11日)そうです。
(資料1、2参照)

私は自分が農家だというせいもあって農業者の今回の原発事故の受難は、わがことのような痛みを覚えています。

その農家に言いたい。ダメだ、ダメだ、やっちゃぁいけない!こんなことをしたら、自分だけではなく、村をいっそう地獄に引きずり込む手伝いをしているようなものだ!

南相馬のみならず、福島牛ブランド全体が崩壊の淵に立っています。想像していただきたい。今、東京の消費者で福島産牛肉と知って買い求める人がどれだけいますか。

私も茨城の農家です。風評被害の恐ろしさは骨の髄まで知っています。

今まで福島産はブランド牛の宝庫でした。しかし既に飯館牛は消滅しかかっています。残酷なことを言うようですが、南相馬の牛もこの事件で同じ運命を辿る可能性が大きく高まりました。

やがて事件の影響は内陸部のブランド牛にも波及していくかもしれません。そうなったら立ち直るまでどれだけの時間がかかると思っているのでしょうか。

今、必要なことは失敗の本質を限定していくことです。言い換えれば、「南相馬の空気、土、水、みんな危ない」という馬鹿げた中傷を毅然としてはねのけていくことです。

一部のネット界では既に、「南相馬の井戸水が危ない、土壌もだ」というような無責任な風評が立ち上っています。馬鹿者どもが!他人の不幸を面白がるな!

井戸水は放射性セシウムの挙動をすこしでも勉強すればありえないことが分かるはずです。

セシウムは確かに水溶性ですが、地下水脈に到達するはるか以前の地表面せいぜいが5㎝ていどでストップしてしまいます。それは土壌の団粒構造(*地中の土と水、空気の結合する構造のこと)内部の粘土と結合してしまうからです。

土壌も同じく表土は汚染されている可能性がありますが、それも村全体が均一に汚染されているわけではなく、3月12日、15日の爆発以降の風の通り道や降雨などで大きく左右されます。

放射性セシウムが揮発性の極めて軽い物質で、風に乗って移動し、降雨で落ちる性質があるからです。

谷津田であるのか、平坦な畑なのかでも違います。アスファルト道路か、未舗装かでも違います。

あるいは、土質によっても異なります。粘土質ならばセシウムの沈降は遅く、今でも地表面付近に残存しているはずです。

一方砂地ならば、団粒構造が緊密ではないので粘土質より早く沈降するかもしれません。

ですから、右の畑で検出されても、左の畑では微量しか出ないということもあります。

いずれにせよ、土や水の性格を知っていれば、軽々に「南相馬の水と土がみんな汚染されている」などと絶対に言えないはずです。

ホットスポットはあるでしょう。しかし、そんなものは東京にも千葉にも、わが茨城にも沢山あります。

今は徹底した事件調査をする時期です。

どんな状態で問題のワラが保管されていたものなのか、ラッピングされていたのか、それとも裸だったのか、屋内でも雨がかかるような軒下だったのか。牧草のロット管理はしていたのか、していなかったのか、などを詳しく調査せねばなりません。

現在、去年のワラを野外に置いていたという報道がありますが、それがほんとうがどうか、なぜそのようなことをしたのかを明らかにするべきでしょう。

この農家の失敗の原因を特定して明確にせねばなりません。不心得者だと批判する前に、村全体が生き残るために踏ん張りましょう。

これはあくまでも「失敗」であって、悪行ではないのです。悪いのは彼ではなく、あくまでも悪魔の原発なのですから。

頑張りましょう、南相馬!踏ん張りましょう。南相馬の牛飼、頑張れ!

負けるか、原発ごときに!

          ゜。°。°。°。°。°。°。°。゜。°。°。°。

■資料1 日本農業新聞7月12日

Photo_2 

■資料2 2頭の牛肉からもセシウム・10都道府県に
(時事通信 7月11日)

福島県南相馬市の農家が出荷した肉用牛11頭から国の暫定規制値(1キロ当たり500ベクレル)を超える放射性セシウムが検出された問題で、同じ農家が原発事故後に出荷した別の牛の肉が少なくとも10都道府県に流通し、一部は消費されていたことが11日、東京都などの調査で分かった。

 一方、農林水産省と福島県は同日、この農家の稲ワラから規制値の約57倍に相当する同セシウムを検出したと発表。県は、原発周辺の緊急時避難準備区域と計画的避難区域の全牛農家約230戸の出荷した全頭を対象に、肉の放射性物質の検査を行う方針を決めた。

 南相馬市の農家は、11頭を出荷する前の5月30日から6月30日までに6頭の牛を東京・芝浦の食肉処理場などに出荷。都が流通先に残っていた肉を調べたところ、1頭から最大で規制値の6・8倍となる1キロ当たり3400ベクレルの同セシウムが検出された。

 業者の保管する伝票類を調べたところ、東京、神奈川、大阪、静岡、愛媛の5都府県の卸売業者や小売業者に流通していたことが判明。さらに、愛媛県などの卸売業者を通じ、北海道、千葉、愛知、徳島、高知県の業者にも渡っていた。

■資料3 稲わらから高濃度セシウム 南相馬の汚染牛のえさ
(朝日新聞7月12日)

福島県南相馬市の畜産農家が出荷した牛11頭から基準を超す放射性セシウムが検出された問題で、同県がこの農家から提出を受けたえさなどを検査した結果、稲わらから高濃度の放射性セシウムが検出されたことが、関係者への取材でわかった。農家は県の聞き取りに、東京電力福島第一原発が爆発した際に屋外に置いていたわらを牛に与えていた、と説明したという。

 県と農林水産省は、原発事故で汚染されたわらで内部被曝(ひばく)した可能性が高いと判断。農家は出荷時の県側の聞き取りには正しく申告していなかったとみられ、点検のあり方について改善できないか検討を進める。

 県と農水省は10日、農家を実地調査。えさの配合飼料と牧草、わら、井戸水を検査用のサンプルとして採取した。検査の結果、わらからかなり高濃度の放射性セシウムが検出された。

 問題の牛11頭は7日に出荷された。これに先立ち、県は6月26日に牛の体表の放射線量検査(スクリーニング)を行い、全頭が数値ゼロでクリア。この際、えさの管理状況や牛の飼育状況の聞き取りをし、農家はわらについて「震災前に収穫したもの」と申告していた。しかし、10日の聞き取りには「爆発時に屋外にあったわらも与えていた」と話したという。

 原発事故を受け、県は3月25日、飼料は事故前に刈り取って屋内に保管されたものを使うことなどを農家に指導していた。

 この農家は「緊急時避難準備区域」にある。県は、同区域と「計画的避難区域」から牛などを出荷する際の取り扱いについて農水省に照会。同省は4月18日付で点検内容を県に提示した。(井上亮)

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2011年7月11日 (月)

南相馬産牛肉からセシウムが検出されました

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緊急避難準備区域の南相馬市で胸をふさがれるような事件がふたつ起きました。 

ひとつは、南相馬市から出荷された牛肉から東京都が規制値を上回るセシウムが検出したことです。 

今ひとつは、「私はお墓に避難します」という遺書を残して南相馬市のご老人が首吊り自殺をしました。 

「家族には「毎日原発のことばかりでいきたここちしません」。先立った両親には「こんなことをして子供達や孫達、しんるいのはじさらしとおもいますが いまの世の中でわ(は)しかたない」とわびていた。」(毎日新聞) 

この先、住みなれた家を出ていかねばならない不安や、目に見えない放射能の恐怖tが毎日彼女を襲っていたのだと思います。

私は原発が彼女を殺したと思います。今後この生殺しの状況が何年続くか想像もつきませんが、弱い者から亡くなっていくのでしょう。むごいことです。

菅首相は先日、「解決まで30年かかる」と発言していました。よくこのような無神経なことを口に出来ます。

官邸を臨時に避難準備区域に置かれてはいかがでしょうか。そうすれば、このようなことを言っていいことか、悪いことかわかるでしょう。為政者は考えてそれに備えていても、口に出してはならない言葉の重みがあるのです。

亡くなられた方の来世が安らかであるようにお祈りします。合掌。
(資料2参照)

さて、同じ南相馬で牛肉からセシウムが6倍の規制値を超える濃度で検出されました。
(資料1参照)

検出線量は、1530~3200bq/㎏です。この農家は5~6月に6頭を検査しないで出荷したとされています。一部は既に市場に出回ってしまっていました。

避難区域と避難準備区域の牛肉出荷のチェック体制はこのようになっています。

●飼料が適切に保管され、使用されているか。
                 ↓

●サーベイメーターによる体表面の放射線量検査・全頭⇒検出されれば除染
                 ↓                       ↓
                       食肉処理場
●出荷先都道府県の抜き取り検査⇒検出されれば出荷制限

問題点はおそらくは2ツです。

ひとつは、出荷家畜の放射線量の計測方法が間違っています。サーベイメーターとはスクリーニングする時に使う手持ち式の線量計ですが、これでは家畜の内部被曝の状況はまったくわかりません。

肉類や魚介類は外部をスクリーニングしてもわかりません。体内被曝がありえるからです。野菜ですらありえます。

ですから、外部からの被曝チェックは、はっきり言えば消費者向け気休めにすぎません。

内部被曝は生きたまますしたいのなら、ホールボディカウンターで計測するしかありませんし、そもそも家畜用のものは日本にありません。

食肉にしてから一定量を下のような放射能検出装置に入れて小一時間かけて検査します。

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(この機械は茨城県環境放射線監視センターのものです。NHKスペシャルより参考のため引用しました。ありがとうございました。)

検査に際しては、ほうれんそうのような葉物野菜ならビーカーなどに刻んで入れます。食肉も同じように刻んで計測します。

ただ、家畜は出荷先まで生体で運ばれますから、この流通方法が変えられない以上、出荷地での出荷前計測は事実上不可能です。

次に、なぜ舎内飼育している牛に放射性物質が入ったかの原因です。これはルートはたった2ツしかありません。

●ルート1 飼料①・・・・濃厚飼料。いわゆる完全配合飼料とも言われる飼料会社から供給されるカロリー、タンパクが高い飼料です。工場製品なので被曝することはありえません。

 飼料②・・・・粗飼料。牛は牧草を食べさせないと死んでしまいます。放牧時を除いて、乾燥牧草を与えます。これには輸入牧草と自家製があります。ありえるセシウム付着はこの自家製牧草です。

●ルート2 水①・・・・・・井戸水。セシウムは粘土質と結合するので、水系に沈下するまでに非常に長い時間かかりますので、今回はありえません。

       水②・・・・・・水道水。水源地や浄水場に放射性物質がフォールアウトした場合、放射能汚染される可能性はあります。東京都の浄水場でも同様の検出がありました。

消去法で考えると、飼料の濃厚飼料は除外され、井戸水を使っていたようですので水からのルートも除外されます。

従って原因は、飼料用ワラです。おそらくは3月のフォールアウト時の牧草を使用禁止されていたはずですが、誤ってなんらかの理由で使ってしまったのだと思われます。それ以外考えられません。

牧畜は自家用牧草が重要な柱です。特に牛は飼育期間が非常に長く、食べる量も多いため自家製の牧草を与えることは、牛の健康にもよく、またコスト的にも大きな助けになっています。

今、被災地の多くでは自家製牧草が使用できないために、非常に厳しい経営を余儀なくされています。

チェルノブイイリでもそうであったように、牧草、ベリー類、キノコ類などは地表面で育つために特に放射性物質を吸収しやすく、それが原因でミルクや肉、そして地衣類を食べたトナカイなどにまで汚染が拡がりました。

最後に、また「東電の手先」と書かれそうですが、いちおう言っておけば、セシウムはカリウムと同族元素であり、吸収されたとしても体内でカリウムほどではありませんが似た挙動をします。

生物学的半減期といって、水溶性ですのでおおよそ子供なら1週間か2週間以内に大部分がオシッコと一緒に体外に排泄されます。成人でも70日ていどで大部分が体外に出てしまいます。(資料3参照)

私としてはこのことによって、だから安全であるとも、危険であると断言することも避けます。

いずれにせよ、このような牛肉の出荷前産地検査のあり方をなんらかの改善をしない限り、また福島産牛肉全体を風評被害にさらす危険があることは間違いのないことです。

 

 

■ お断り 除去技術の2回目は明日にいたします。

 

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■ 資料1 福島・南相馬市産の牛肉からセシウム 全国初 

産経新聞 2011.7.8 

 東京都は8日、福島県南相馬市産の牛肉から食品衛生法の暫定基準値(1キログラム当たり500ベクレル)の約5倍に当たる2300ベクレルの放射性セシウムが検出されたと発表した。牛肉から基準値を超えたセシウムが検出されたのは初めて。  

 福島県は、南相馬市に対し出荷自粛を要請。また、厚生労働省は、福島県や隣接県に対して牛肉検査態勢の強化を求めた。 

 検出されたのは、南相馬市の緊急時避難準備区域内の農家から、都立芝浦と場に搬入された牛11頭のうちの1頭。 

 福島県内では食品などについての検査が追いつかないため、厚労省の依頼で都が検査。残りの10頭についての検査結果は、9日午後にも判明する。 

 この牛肉については、都の施設内で管理されており、一般に流通する可能性はないという。これまで、ほかの自治体などでも同じような検査はされていることから、放射性物質が検出された牛肉については、市場には流通していないとみられる。 

ただ、都などによると、これらの牛は、体表面が放射性物質に汚染されていないかや育成過程がどうだったかについては、農林水産省の指針に基づいて、出荷段階でチェックされていたという。チェック体制が適切だったかどうか、今後、課題になりそうだ。  

 ある自治体関係者は「出荷前のチェックでは問題ないということで、モニタリング検査していた。今後、農水省などが事前の検査態勢などを見直す必要があるのではないか」と話した。

 

■ 資料2 東日本大震災:お墓にひなんします 南相馬の93歳自殺

毎日新聞 2011年7月9日

 

 「私はお墓にひなんします ごめんなさい」。福島県南相馬市の緊急時避難準備区域に住む93歳の女性が6月下旬、こう書き残し、自宅で自ら命を絶った。東京電力福島第1原発事故のために一時は家族や故郷と離れて暮らすことになり、原発事故の収束を悲観したすえのことだった。遺書には「老人は(避難の)あしでまといになる」ともあった。 

 女性は同市原町区の静かな水田地帯で代々続く田畑を守り、震災時は長男(72)と妻(71)、孫2人の5人で暮らしていた。長男によると、以前から足が弱って手押し車を押していたが、家事は何でもこなし、日記もつけていた。

 第1原発の2度の爆発後、近隣住民は次々と避難を始めた。一家も3月17日、原発から約22キロの自宅を離れ、相馬市の次女の嫁ぎ先へ身を寄せた。翌日、さらに遠くへ逃げるよう南相馬市が大型バスを用意し、長男夫婦と孫は群馬県片品村の民宿へ。長距離の移動や避難生活を考え、長男は「ばあちゃんは無理だ」と思った。女性だけが次女の嫁ぎ先に残ることになった。 

 4月後半、女性は体調を崩して2週間入院。退院後も「家に帰りたい」と繰り返し、5月3日、南相馬の自宅に戻った。群馬に避難している長男にたびたび電話しては「早く帰ってこお(来い)」と寂しさを訴えていたという。 

 長男たちが自宅に戻ったのは6月6日。到着は深夜だったが、起きていて玄関先でうれしそうに出迎えた。だが緊急時避難準備区域は、原発事故が再び深刻化すればすぐ逃げなければならない。長男夫婦が「また避難するかもしれない。今度は一緒に行こう」と言うと、女性は言葉少なだった。「今振り返れば、思い詰めていたのかもしれない」と長男は話す。 

 住み慣れた家で、一家そろっての生活に戻った約2週間後の22日。女性が庭で首をつっているのを妻が見つけ、長男が助け起こしたが手遅れだった。 

 自宅から4通の遺書が見つかった。家族、先祖、近所の親しい人に宛て、市販の便箋にボールペンで書かれていた。家族には「毎日原発のことばかりでいきたここちしません」。先立った両親には「こんなことをして子供達や孫達、しんるいのはじさらしとおもいますが いまの世の中でわ(は)しかたない」とわびていた。 

 奥の間に置かれた女性の遺影は穏やかに笑っている。近所の人たちが毎日のように訪ねてきて手を合わせる。「長寿をお祝いされるようなおばあちゃんが、なぜこんな目に遭わなければならないのですか……」。遺書の宛名に名前のあった知人が声を詰まらせた。

葬儀で読経した曹洞宗岩屋(がんおく)寺前住職、星見全英さん(74)は「避難先で朝目覚め、天井が違うだけで落ち込む人もいる。高齢者にとって避難がどれほどつらいか」と心中を察する。 

 取材の最後、長男夫婦が記者に言った。「おばあちゃんが自ら命を絶った意味を、しっかりと伝えてください」【神保圭作、井上英介】

資料料3 セシウムの生物学的半減期について
● セシウム137の場合生物学的半減期は70日とされています。
(Wikipedia, 
http://en.wikipedia.org/wiki/Caesium-137英語版です)

●原子力資料情報室:セシウム 
http://www.cnic.jp/modules/radioactivity/index.php/12.html?page=print 

■追加情報(毎日新聞 7月11日12時)

 

<放射性物質>餌のわらにセシウム…南相馬産の黒毛和牛汚染

福島県南相馬市の畜産農家が出荷した黒毛和牛11頭から暫定規制値(1キロあたり500ベクレル)を超える放射性セシウムが検出された問題で、農家が餌に使用していた稲わらから高濃度の放射性セシウムが検出されたことが分かった。県によると、昨秋刈り取り、田んぼに放置していた稲わらを牛に与えていたという。県は稲わらが汚染源だった可能性が高いとして、餌の管理体制強化を検討している。

 県畜産課や農林水産省の職員が10日、この農家への調査を実施。牛の飲み水にしていた井戸水や配合飼料、稲わらなどを調べたところ、井戸水や配合飼料に問題は見つからず、稲わらからは問題となった食肉(3200~1530ベクレル)の10倍以上の放射性セシウムが検出された。

 福島第1原発事故後、国は家畜について、餌となる干し草や稲わらは事故後に刈り取ったものを使わず、屋内で管理することなどを県に通知。指導が守られているか聞き取り調査した上で安全確認できた牛を出荷していた。この農家は毎日新聞の取材に「国の指導通りにやってきた」と話しているが、県は今後、稲わらの保管状況や量、時期などを詳しく調べる。

 

 

 

2011年7月10日 (日)

除染の第1方法・客土 でも現実には無理。ではどうする?

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具体的に除染がスケジュールに登っています。今日はこの話をします。

私は除染が日常的な農作業をやりながら出来る方法でなければ、絶対にうまくいかないと思っています。

たとえば放射線防護の専門家に聞くと、あっさりと「そりゃ客土しかないですよ」と答えられてしまいます。

専門家が妙に明解に、「そりゃ客土ですよ」的な言い方をしてしまったために、農家のほうは「冗談じゃねぇや。そんなことできっか」と腰が引けていました。

そうでしょうとも、そうでしょうとも。客土と簡単に言ってくれますが、言うほうは完璧に放射性物質が除去できることを念頭においていいるらしいのですが、現実的じゃないですよね。

さて、放射性物質を「除去」するにはふたとおりしかありません。

ひとつめは、対象の土地から「外に持ち出す」ことです。

その代表的な方法は、土の入れ換え、つまり客土です。表面から3㎝~5㎝程度をはぎ取って一カ所に捨てます。

これは既に福島県の校庭などで実施されている方法で、表土をスクレイパーで剥いで、散水してから新たな土に入れ換えます。

ちょっと小学校の算数をしてみましょう。

問題 「表土5㎝削って10アール(1000㎡)剥ぐと、何tの土になるでしょうか?」

0.05㎡×1000㎡=50容積トン

答え 150t/a

ちなみに日本の農地平均規模が150アールですから、22500tとなります。

どひゃ~です。4tダンプで5625台。もう笑うしかない。誰がやんの、こんなこと。

次に持ち出してお役所風に言えば「適切な方法で保管すること」ですが、放射性物質の廃棄場所は現行法ではありません。

ですから自分の農地の一角にそれはそれは深いバカデカイ穴をユンボで掘って、ブルーシートを張って、そこに捨てて蓋をするしか方法はありません。

宮崎の口蹄疫の埋却処分を更に大がかりにしたようなものです。もはや土木工事です。

新しい土を入れると言っても、これほど大がかりになると新規のいい土などどこを探してもないでしょう。

では、入れるのを止めるかとはいかないんですな、これが。

新しい土を入れないと、元の土地の水準から5㎝下がって、雨が降れば大きな池となってアヒルでも飼うしか能のない土地になってしまいます。

第一、表土というもっとも肥沃な層が喪失してしまうので、今まで丹精して増やした土壌の養分や微生物が一瞬にしてパー。堆肥をガッポリ入れてしばらく寝かさないと農地としては使い物になりません。

あ、国も東電も客土にはビタ一文出す気はありませんからね。いったいいくらかかるんだろう。計算する気力もなくなります。

結論。客土は無理。やったら農家の自殺行為。

ではどうするのか、ということで二番目の方法、「希釈する」という方法が現実味を帯びてきたわけです。

長くなりましたので、次回に詳述しましょう。

 

 

 

2011年7月 9日 (土)

あんたの家の庭にも降った。子供の遊ぶ校庭にも降った。オレらの畑にも降った。一緒の運命だべ。だからがんばって一緒に放射能を減らしていきましょう!


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ある農家と飲みながらこんなことをボヤキあいました。

除染っていう前に、放射能が降った現実を認めねばならんでしょう。そこなのよ。

そりゃ検査すべぇっていうあんたの意見はもっともだが、抵抗感があるんだなぁ。なんでまたオレの土地さにこんな危険なもんが、っていうやるせなさがまずあんべぇ。

やるせなさじゃカラオケみたいだって、じゃあ不条理って言い換えるか。

なんでそれなりに順調にやってきて、何も悪いことさしてねぇオラゲの畑や水田にセシウムとかが降ってくんのか、わかんねぇ。

いまでこそオレらだって「なんベクレルでした」なんて知ったかぶりしてんが、3月12日以前までは、誰もそんなこと知らなかったぺよ。

あんただって初めはベクレルじゃなくてベクトルって言い間違えて恥かいたッペよ、ブハハ。

銀行で見た女性誌には、「あなたの累積放射線量のチェック」なんて記事があったぞ。消費者も詳しいしなぁ。

この4カ月で放射能の大学院教育まで受けちまったんだなぁ、オレら。

じゃあこの土地を汚された怒りをぶつけようにも東電って言っても、民間企業とは言ってもあまりにも巨大で、半ば官庁みたいだっぺよ。

隣町の支店に押しかけて「店長だせ」って言っても、ひたすら謝られて「私どもも原賠法に基づき賠償には全力をあげる所存です」とかなんとか言われてチョンだべ。

東京の東電本社、え本店って言うの、まぁそこにデモかけるべぇと言っても、某政党に先越されちゃたしなぁ。

やっても本店のエライさんに同じこと言われるだけでしょうよ。

補償は最終的に決まってないが、たぶんあんだけイカイ事故だったんで、風評までは対象にならんだろうというのがもっぱらの噂だっぺ。

じゃああれだけ食えなかった2カ月はなんだったんだ?政府の出荷規制だけが対象なら、12年前の東海村再臨界事故より賠償範囲は後退しているっぺ。

え、除染やるよ。重いがやるよ。やりたくねぇがやるよ。頭、くっけどやるよ。やるしかなかっぺ。

茨大農学部の先生呼んで、立ち会い指導してもらって、しっかりと除染作業のやり方の実証実験して、「バッチリこれだけ放射能が減ったべ!」と言ってやるべぇ。

それでもまだ残ってるって言うお客にはこう言うことに決めているんだ。

「あんたの家の庭にも降った。子供の遊ぶ校庭にも降った。オレらの畑にも降った。一緒の運命だべ。だからがんばって一緒に放射能を減らしていきましょう」ってさ。

もうここまで来たら、政府も代議士も頼りなんねぇ以上、自分で自分の土地さ守るしかなかッペよ!

ほら飲め。除染してうまいビール飲むっぺ!

■写真 雨上がりのクモさん。写真、椿から差し替えました。なぜって、暑苦しいでしょう。

 

 

2011年7月 8日 (金)

早川由紀夫教授の放射性物質飛散図の衝撃

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現在、関東圏のみならず群馬、長野、岩手の各地でホットスポットが相当数見つかっています。 

私の私見の目安である0.28μSv/hを超える地点が続出しています。高い地点では1μSv/hを超える地点も出ています。

現実には相当広範囲に放射性物質が飛散したことは確かなようです。 

ではその原因は何かとなると、3月12日、3月15日の水素爆発による飛散だというところまでしかわかっていませんでした。 

なぜなら、政府が情報をひた隠しにしているからです。例のSPEEDIですら、3月12日夜の北へ流れて飯館にかかっている図しか見ることができない有り様です。 

馬淵前補佐官ですら「情報隠匿があった」と証言するほどの陰湿な情報秘匿により、市民はガイガーカウンターを求めてアキバに走らねばなりませんでした。 

この役立たずのSPEEDIに替わって、福島第1原発からの詳細な放射性物質飛散図が現れました。 

県内にいくつかのホットスポットを抱える群馬大学の火山学研究者である早川由紀夫教授の作成したものです。 

教授は自らのブログでみずからの火山灰飛散のメカニズム手法を使って福島第1原発からの放射性物質の飛散図を公表しました。
(「早川由紀夫の火山ブログ」http://kipuka.blog70.fc2.com/
)、 

まずはこの早川教授の作成した飛散図からご覧ください。

Img_2af8f3a46ffcedd8880dc4c8d3d018a
(中川教授のブログより参考のために転載させて頂きました。ありがとうございます。

緑色と黄色のエリアに注目しよう。緑色は0.25μSv/h(毎時マイクロシーベルト)以上、黄色は0.5μSv/hから1μSv/hのあいだです。

3月12日以前は、関東地方の放射線量は0.05μSv/h前後だから、5倍から20倍は高い数値です。

続いて、これを拡散ルートごとに分けた概念図も見てみます。

Photo

(「週刊現代」7月16日号より参考のために転載させていただきました。ありがとうございます。クリックすると大きくなります)

早川教授のこの飛散図は、自治体や国が出した公的データを基にしています。タコの足のように四方に放射性物質の雲が伸びているのが分かります。

今まで北方向に伸びたことは確認されていましたが、その後の挙動が分からなかったのが一挙に解明されたわけです。

まず時系列を追って放射能雲の飛散ルートを検証していきます。
福島第1原発からの放射性物質の大量放出は大きく4回ありました。

●第1ルート/3月12日夜から・・・・・南相馬⇒太平洋⇒太平洋を北上⇒西旋回して女川から内陸に侵入⇒一関、平泉に到達

●第2ルート/3月15日午前中から・・・・太平洋を南下⇒いわきをかすめて、水戸から内陸へ侵入⇒3方向に分裂

・2-1ルート・・・宇都宮方向ルート
・2-2ルート・・・群馬方向ルート
・2-3ルート・・・首都圏に南下ルート

●第3ルート/3月15日夕方から・・・・北西に進み飯館⇒西旋回して内陸部へ⇒福島、二本松、郡山、那須⇒日光

●第4ルート/3月21日午前から・・・太平洋を南下⇒鉾田から内陸部へ⇒柏、松戸⇒東葛地区⇒東京湾⇒太平洋を南下⇒足柄⇒一部が静岡

東京の東葛地区を汚染したのはこの4回目の太平洋南下ルートです。

では第4ルート(3/21太平洋軟化ルート)が、なぜ途中の鉾田より線量が高い数値が出てしまうのでしょうか。

その原因は雨です。3月21日に北から放射性物質を運んできた風と、南からの湿った風がぶつかり、東葛地域に雨を降らせました。

ここには折り悪く金町浄水場があり、水道水から放射性物質が出たのはこれが原因でした。

あとともうひとつホットスポットが出来る要因は、地形です。山に放射能雲が差しかかった時に降雨があると、そこで高濃度のフォールアウトをします。足柄のお茶などがそのケースです。

足柄も第4ルートの末端に位置します。東葛から東京湾にいったん出て、そのまま太平洋を南下して内率部に再び入って、箱根山系の手前で降雨にあってフォールアウトしました。

これでお分かりのように、福島第1原発からの距離はいちおうお目安になりますが、距離はかならずしも絶対的なものではなく、そのときの風向き、降雨、地形が大きく左右します。

また水素爆発時だけではなく、爆発後の3月15日から高濃度な放出が観測されるなど未だ公表されていないことが沢山あるようです。

本来これは原子力安全・保安院がやるべき仕事です。政府はスパコンを駆使したSPEEDIでこの事実を3月中旬には知り得ていたはずです。

にもかかわらず、同心円的避難区域を設定した以外一切の対処を怠りました。今頃になってホットスポット対策を勧告のような寝ぼけた方法でやっているだけです。

政府が国民を守らないことがまたひとつ明らかにしなりました。

■写真 なにかわかりますか?シロツメクサ(クローバー)の花です。

 

 

 

 

2011年7月 7日 (木)

「低線量被曝の時代」を生き抜くために最初にしなければならないのは除染です!

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放射能はなくなることはありません。ウイルスのように高温高圧をかけても死ぬことはありません。いや彼らに死という概念すらないのです。

そもそも放射能は無生物ですから「常にある」のです。このように「常にある」放射能と向かい合って生きる時代、これが現代、そしてこの地です。

逃げられる人たちは逃げ出したらいいと思います。子供を沖縄こ逃がすのもいいでしょう。

日本はいまや大分のシイタケにまで検出されくましたから、日本の食物を食べることを拒否することもいいでしょう。それはその人のまさに生きる権利です。誰も否定できません。

ただひとつ言えることは、いつまで逃げることが出来るのかということです。いつまで逃げて、逃げて、逃げ回ることが出来るのかということです。

多くの人間は逃げることが出来ません。生きていくために仕事があるし、第一生まれ育った土地を人は簡単には捨てられないからです。

また戻ることが出来るからいったんは捨てられるのであって、帰ることの出来ない旅に出ることはある意味で悲劇ですらあります。

放射能はなくなることはありません。いつまでもそこにいます。ですからいったんこの地を恐怖し、逃げることを生き方とした人たちには帰還という言葉はなくなるのです。

放射性セシウム134、137の半減期はおおよそ30年。人の人生の半分よりやや少ない時間です。

私のような歳の人間にとっては生涯こいつらとつきあうことを覚悟せねばならない時間です。私に晩発性障害がでるとしても、それは一般のガンの発生ともはや見分けがつかないでしょう。

もし今私に保護せねばならない子供がいたのならば、大いに悩むでしょう。しかし、おそらく私は子供を「逃がす」選択をすることはない思います。

子供が40代になるまで放射性セシウムはなくなることはありませんから、逃げても無駄だからです。

彼らはこの「放射能の時代」、正確に言えば「低線量被曝の時代」を生き抜いていかねばならない宿命の下にあるのです。

実は私たち昭和30年代育ちの子供たちもそうでした。

当時米ソの大気圏内核実験により、地球規模の放射能汚染が生まれました。現在の関東圏よりはるかに高い放射生物質が長期間フォールアウトしました。

私たち洟垂れは雨が降ると「ハゲるぞ」などと冗談を言ったものでした。雨傘を使わないで濡れて帰ると、いつもは優しい母が真っ青になってすぐに身体を洗ってくれたものでした。

私の住んでいた地域のすぐそばには米軍基地があったので、森の向こうの基地の方角に、毒々しく赤い巨大なきのこ雲がそそり立つ悪夢をよく見たものです。

核の時代に生きるとはそういうことです。核の時代の恐怖とはそういう悪夢と暮らすことなのです。

しかし、それでもなお人は生きねばなりません。生き延びねばなりません。

そのために全力を使い果たさねばなりません。低線量放射性物質は甲信越、中部、関西圏でも検出されています。

原子力発電所は全国に点在しています。この安全性が確認されたと政府は言いますが、そのようなことを信じているおめでたい人は玄海町長だけでしょう。いや、彼も心の底では信じてはいないはずです。

もはや現代日本に白い手袋は存在しない。私たちは好むと好まざるとを問わず「低線量の時代」を生き抜かねばならないのです。

しかし、放射性物質はなくなることはないが、「持ち出す」ことや「希釈する」ことは可能です。

私はひとりの農業者として農地の除染プログラムを作りました。これをこの夏から始めていきます。

そしてその都度計測を行い、毎年除染プログラムを更新していきます。たぶん政府はビタ一文の助成も出さないでしょう。

政府は頼りにしていません。農業者の使命だと思って続けていくことになるでしょう。この除染活動が3年で済むか、5年かかるか、果たして10年になるのか、まったく未知です

確かにヨーロッパの除染記録は知ることが出来ますが、セシウムと決着しやすい東関東の粘土質の土質がどのように影響するかまっいたく予測がつかないからです。

私たち農業者は低線量時代をそのようにして生きていくしかないのです。

では消費者はどうしたらいいのかでしょうか。よくコメントにあるようにドイツやベラルーシの線量規制値を比較して政府の暫定規制値を批判するのもいいでしょう。

野菜はよく洗って、魚はストロンチウムが骨にたまるのではずして食べるのもいいでしょう。国産食料を食べない自由すらあります。

究極は遠方に逃げることです。もっとも私にはそれは解決にはつながらないように見えます。

私たちがこの日本という土地で生きていくためには、批判を繰り返して白い手袋を探し求めても時間稼ぎをしているだけなのです。

やるべきことは、放射性物質で汚れた土地を浄化することです。市民が生産者と連帯して、除染活動を各地で行うことです。農地も都市も浄化することです。

本来この除染は国家の義務なはずてす。国民の健康を守るのは国家の重要な働きだからです。そのために私たちタックス・ペイヤーは高い税金を払っているのです。

しかし今の政権はそれをまったく忘れ去り、権力の亡者と化しています。彼らは信用出来ません。期待しても無駄です。

次の国民の選択で、しっかりと放射性物質と向き合って除染を掲げる候補者を選ばねばなりません。

高邁な国家のエネルギー政策の議論など除染をしながら話し合っていけばいいのです。再生エネ法など後の後です。目の前に危機があるのに、今はそんな時じゃない。

ともかくフォールアウトした放射性物質を除染をすること。子供を守ること。母親の心配を少しでも取り除くこと。農業者の健康を守ること。これが最優先です。

そして原子力発電所を拙速な基準で運転再開するのではなく、しっかりとした安全基準が満たされる時まで運転を凍結することです。

なにから今すぐに着手しなければならないことなのかをはっきりさせて、この「低線量の時代」を生き抜くしかありません。

2011年7月 6日 (水)

私の地域の農家の水田土壌放射線量を計測してみました。 政府暫定規制値を10分の1にしても、まったく問題のない線量です

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ゾンビというハイチの化け物がいます。

ホントはとっくに死んでいるのに自分では生きていると錯覚している困った君です。このゾンビが政府を乗っ取って、こともあろうに震災-原子力事故対応をするはめになってはや4カ月。

ゾンビ首相はまだまだやる気一杯ですが、いいかげん被災地の議員たちが結束して墓に連れ戻してやって下さい。国民の大迷惑です。

さて、ゾンビ党にばかりかまってばかりいられないので、わが地域に戻ります。

わが地域でも行政がまったくやらないので、やる気のある農家から土壌の放射能汚染度を調査し始めています。いわゆる汚染マップ作りですね(←表現がイヤだな)。

え、行政ですか?市の農業セクションは県に任せきり。県はそれなりにやっていますが、あまりにも広大なエリアなので、なかなか進捗していません。

なんせ政府がゾンビに乗っ取られたままなので、信じがたいことには土壌放射線量検査や除染には一円の予算も付いていません。まぁ勝手に地方自治体でやれってわけですね。 

普通はこんなことは政府が率先してやるべきでしょうが、その気配もないためにやる気のある農家は自分で自腹を切って土壌放射線量検査を開始しています。

一検体が2万円。大規模農家だと全部やると数十万円の検査費用がかかります。もちろんん、東電が補償してくれる予定もありません。

で、ある農家の水田の数値の検出結果が分かりました。もちろんガイガーカウンターによる簡易検査ではなく、検査機関によるものです。

・セシウム134・・・52bq/㎏
・セシウム137・・・71
・計・・・・・・・・・・・・123

これはベクレルですから、マイクロシーベルトに換算してみましょう。換算式は小学校算数です。メンドーだったら子供に計算させましょう。

・セシウム・ベクレル/㎏÷100×1.3=マイクロシーベルト

この換算式にさきほどの123bq/㎏を当てはめると、1.599μSv/㎏、約1.6μSv/㎏となります。

では、1.599μSv/㎏が作物、この場合は米でしたが、農水省によれば以下のようになります。ちなみに、外国文献のデータとは異なった数値ですが、農水省は東日本の土壌を調べてこのデータを出したようです。

移行係数は0.1、つまり10分の1です。これは私たち農業者からすればかなり高い移行係数ですね。

というのは野菜類ではだいたい千分の1から1万分の1のレベルだからです。
たとえば、野菜類で比較的移行係数が高いホウレンソウで0.00054です。

農地土壌中の放射性セシウムの野菜類及び果実類への移行の程度(PDF:83KB)

このように水稲の移行係数が高くなるのは、おそらくは農業用水が流れ込む水田の特殊性によると思われます。

通常の畑作では水からの放射性物質の移行は灌水ていどで済みますが、生育期間がほぼ水に漬かっている水稲はそれだけ水からの放射性物質を取り込みやすいとはいえます。

さきほどの検査した土壌の数値を移行係数に従って10分の1にすると12.3bq/㎏=0.16μSv/㎏が玄米に移行すると考えられるわけです。

しかしこの数値はまだ家庭の実際ではないですね。玄米食をしていない人が15%精米したとしましょう。(実際の市販米はもっと高い精白をしています)

すると、0.024μSv/㎏が現実に近い放射性物質の数値だと言うことになります。

政府の暫定規制値は
・米の暫定規制値・・・・500bq/㎏=6.5μSv/㎏

ですから、この農家の土壌の数値は、暫定規制値の0.37%ということになります。どこをどうとっても考えても問題のない数値です。

穀類、肉、乳製品をまんべんなくいろいろ食べて、それを365日続けたと仮定した政府の暫定規制値が2000bq/㎏です。

この政府数値は高すぎる、内部被曝が怖いという方のために一挙に規制値を10分の1にしても20bq/㎏ですので、まったく問題のない数字だと私は考えます。

これでも怖いと言うならば、タイ米でも食べるしかないですね。
ああ、メンドーだった、今度酒おごれよな (*^-^)

■写真 柿の葉をお日様に透かしてみました。葉脈がきれいでしょう。

2011年7月 5日 (火)

松本復興担当大臣閣下暴言事件   これは「暴言」ではなく、政府の「本音」だ!

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これで被災地の復興や除染といった日本が国家としての最優先事項が、なぜここまで遅れに遅れているのかの理由がわかりました。 

もちろん一昨日の松本復興担当大臣閣下の暴言によってです。違いました。暴言ではなく、まさしく政府の「本音」が赤裸々に出ています。
(この暴言はこちらからYouTube
http://www.youtube.com/watch?v=VtUqWdbjnTk 

この暴言の中で、松本復興担当大臣閣下はいくつかのことを言っています。 

ひとつめは、「県は、それにコンセンサス得ろよ!そうしないと我々は何もしないぞぉ。」という部分です。 

「それ」とは直接には被災した漁港をいくつかに集中再編する宮城県案に対してですが、この台詞は、村井県知事か県の復興案と陳情の書類を渡した後に松本大臣の口から飛び出しました。 

そして県文書を手にするやいなや、松本大臣はそれをゴミのようにテーブルに放り捨てて゛「こんなもんはみんな頭に入っとる」と言っています。 

これが被災県知事が直に担当大臣に手渡した正式文書に対する対応として適切であるか否かはとりあえず置きます。そんなことは問う必要もない社会人のマナーに当たることです。

かつて私もがサラリーマンをしていた頃、相手先企業に企画書を何度か出したことがありましたが、あんな受け取り方をする担当者がいたらこちらから願い下げです。よしんば受注しても、うまく展開するはずがないじゃないですか。

それはさておき、問題は被災県の復興はあくまでも「県がやる」ことだ、と政府が考えていることがこれで明らかになりました。 

そう、むしろ問題はここなのです。国は復興を単に「助けてやる」存在で、復興は県が勝手にやれということです。いや勝手にではなく、最終承認は自分たち政府が口出しするが、そこまでの汗や財源は県が取れ、と言いたいようです。なんと虫のいい。 

これで分かりました。なぜ仮設住宅が菅首相の公約のように8月一杯で完成しないのかの原因です。

仮設住宅の進捗状況はこのようなものです。(資料1参照)

必要とされる仮設住宅の1割にも満たない着工状況のために、多くの被災者は空調もない過酷な避難所暮らしを半年間以上する覚悟をせねばならなくなりました。

国はこれでいいのです。なぜならこれは「県が知恵を出してすること」であり、国は首長の態度が気に食わない程度のことで「助けてやらない」ことができるご大層な存在らしいからです。 

復興の重要な一環である放射能の除染も同じでしょう。「県が知恵をだせ。出さないと助けてやらんぞ」ということなのです。そうです。これこそが政府の本音なのです。

これでわかりました。大震災から4カ月がたとうとしているのに、まったく復興が進まず、除染作業など陰も形もないことの理由が。

私たち被災県の人間は、政府の「助けてくれること」を待っていてはならないのです。

仮設住宅は県がなけなしの財源をはたいて県有地を開放して自力で作り、除染は各種法律で自治体ができない仕組みですが超法規で進める覚悟が必要なのです。

他ならぬ復興担当大臣閣下がマスコミを前にして被災県の首長に向かって大きな声で言った以上これが政府の公式見解なのです。

次に、松本復興担当大臣閣下は自分を「お客」であり、しかも万座の席で首長を「叱りつける」ことさえできる国賓ならぬ「県賓」であると思っているようです。

首長はその県の有権者によって選出された県民の代表者です。大臣の僕でもなければ、御用聞きでもない。

首長をに対するこのような態度は、被災県民に対する態度とイコールとなるのです。

なんともすごい。今まで自民党のバカ大臣は1ダースほど見てきましたが、ここまで品性低劣、粗暴野卑な「大臣閣下」は始めてです。

思わず、去年5月に山田前大臣(当時副大臣)が口蹄疫対処で宮崎県入りした時と比較したくなりました。

山田大臣もやはり現地首長と摩擦を起こしました。東国原前知事とはまさにバトルの様相でした。

しかし山田氏には一本筋の通った信念のようなものがありました。それは「国が責任をもって口蹄疫を終結させる」ということです。

家伝法の建前から県が主体となるような歪みがありましたが、あのような大規模な悪性海外伝染病は県の能力をはるかに超えます。今回の大震災、原発事故とある意味同じです。

山田氏は口蹄疫特別措置法-ワクチン接種-全殺処分-終結宣言までを一気にやり抜きました。

手段においては私は異論がありますが、見事な手腕だったと思っています。もしあの時松本氏が農水大臣だったらこうなるのでしょうか。

「おい県知事、お前が知恵だせよ。出さん奴は助けてやらんぞ。なんだその態度はワシは客だぞ。これオフレコだ。報道したら社は潰すゾ」(←ほんとにほんとに閣下はこう言った!)

言うまでもありませんが、復興は国の責任です。放射能対処も国の責任です。国が責任を持って、地方自治体と協力して復興に全力を上げる、これが原則です。

分かりきったことじゃないですか。「知恵を出さん奴は助けてやらん」ですと!
ふざけるな!大臣閣下、あなた何様のつもりだ?自治体の生殺与奪を大臣になったくらいで握ったつもりなのか?

いやはや国ってそんなにおエライ、県の上にそびえ立つ上部構造物だったんですね。これで民主党マニュフェストの地方分権など、またまた「票を取るために見てくれのいいことちょっと言ってみました」の類だと分かりました。

例によって首相官邸に棲む「乱心の暴君」(日本農業新聞の表現)は、シカトを決め込んでいるようです。都合が悪くなると死んだふりモードに入って、部下のせいにする。

手柄は自分のもの。汚れ役は部下がする。毎度のことながらこの人の作法の悪さにはうんざりします。

この「松本大臣閣下暴言事件」ではっきりしました。民主党政権にはもはや大震災と原発事故対処能力はありません。「もはや」ではなく、「もともと」だったのかもしれませんが。

松本大臣閣下の罷免はあたり前。国民に震災-原発事故対応の審判を仰ぐ総選挙をしろ!

           ゜。°。°。°。°。°。°。°。゜。°。°。°。

資料1  「国土交通省が5月13日までにまとめた東日本大震災被災者向け仮設住宅の完成数は、1万571戸と、震災発生から2カ月が過ぎているがようやく1万戸を突破した数であった。
必要戸数の6万8,305戸に対しては、着工済み戸数を合わせても3万2,865戸と半分にも届いておらず、1万戸以上については用地確保もできていない状態である。」
(住宅情報ナビ」)
7月4日(月)21時15分配信

<松本復興相>「助けない」発言陳謝 辞任はしない考え強調

毎日新聞

松本龍復興担当相(60)は4日午後、東京都内で記者団に対し、3日の岩手、宮城両県訪問の際に「知恵を出さないやつは助けない」などと発言したことについて「被災者の皆さんを傷つけたということがあれば、おわびを申し上げたい」と述べ、陳謝した。野党などから出ている辞任要求については「すべての(被災)市町村の皆さんに対し、しっかりこれから取り組んでいく決意を表明したい」と述べ、辞任しない考えを強調した。野党は6日から審議を再開する延長国会で、菅直人首相の任命責任を追及し、早期退陣に追い込む構えを強めている。

【ニュースの一報】松本復興担当相「復興は知恵合戦」

 松本氏が記者団を集めたのは、政府の復興対策本部の事務局が入った東京・虎ノ門のビルの屋上。業務の合間に訪れる喫煙所のすぐそばだった。松本氏は3日の発言について「九州の人間ですけん、ちょっと語気が荒かったりして」と、博多弁を交えて釈明した。

 また松本氏は「今回は知事に対して申し上げたことだ。私は市町村や被災者との話でこういうことは申し上げない」と述べ、復興に向けた知事の取り組みに対する不満が背景にあったことをにじませた。さらに「(知事に対し)さまざまなことで住民合意をしていただきたいということを申し上げた、ということに尽きる」と述べた。

 松本氏は3日、復興相就任後初めて東日本大震災の被災地を訪問。岩手県庁で達増拓也知事(47)に「知恵を出したところは助け、知恵を出さないやつは助けない」と発言。宮城県庁では漁港の集約を主張する村井嘉浩知事(50)に対し「県でコンセンサスを得ろよ」と命令口調で語った。

 枝野幸男官房長官は4日、「真意が理解されるよう努力していただくことが重要だ」と述べ、辞任する必要はないとの認識を示した。

 これに対し野党は「言語道断。知恵を出していないのは国の方だ」(山口那津男・公明党代表)など一斉に非難。自民党の谷垣禎一総裁は「菅さんが(内閣の)中を掌握できていない一つの典型例だ。内閣全体として早くお辞めになった方がいい」と述べた。

 自民党は松本氏の罷免を求めるより、首相の早期退陣に照準を合わせる。山本一太参院政審会長は記者会見で「予算委員会などで菅政権の姿勢を厳しくただし問責への道を切り開いていきたい」と首相問責決議案提出につなげる考えを示した。

 民主、自民、公明3党は4日の幹事長会談で、空転の続く国会審議の6日からの正常化に合意した。与野党協調ムードに松本氏の発言が水をかける形になり、民主党の岡田克也幹事長は松本氏に電話して「大事な立場なので注意していただきたい」と苦言を呈した。【岡崎大輔、笈田直樹】

松本復興相が辞任…「言葉荒かったのは不適切」

読売新聞 7月5日(火)9時19分配信

 首相は慰留したが、最終的に了承した。

 松本氏は、東日本大震災の被災地の視察で3日、岩手、宮城両県知事に会った際、「知恵を出さないやつは助けない」などと述べ、宮城県知事が不快感を表明するなど、被災地で反発が広がっていた。野党は国会で、菅首相の任命責任を含めて追及する方針だ。政府の復興の取り組みへの影響も予想され、首相に対する退陣圧力がさらに高まるのは必至だ。

 松本氏は首相との会談後、内閣府で記者会見し、「被災者とは人一倍寄り添っているつもりだったが、言葉が足りなかったりして、被災者の心を痛めたことを本当におわび申しあげたい。言葉が足りなかったり、荒かったりしたのは不適切だった」と述べ、一連の発言を改めて謝罪した。

 辞任の理由を問われると、「個人的な理由なので話せない」と述べた。

 復興については「岩手でキックオフして、3日でノーサイドになった。相変わらず嫌いな与野党だが、心を合わせて復興に取り組みたい」と述べた。

 松本氏は、東日本大震災の復興に取り組む復興相に、防災相と兼務する形で6月27日に就任した。政府の「復興対策本部」(本部長・菅首相)の副本部長に就任した。

 首相は5日午前の閣僚懇談会で、「(松本氏の)意志が固いので、(辞表を)受理した」と報告した。

最終更新:7月5日(火)10時10分

 

2011年7月 4日 (月)

松本復興大臣の傲慢無礼と、元首相補佐官から原発対処は「隠蔽体質だったと言われても仕方がない」といわれる内情

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松本龍復興担当大臣はすさまじいまでの傲慢無礼を宮城県庁で働いたようです。このような男に復興などができるはずもありません。 

そもそも被災地に行って、「自分は防災担当大臣として無能であったためになにもしてこなかった。大変に申し訳ない。今後は死ぬ気で働く」と頭を下げるのが筋なはずです。

それをなにをか勘違いしたのか、「復興住宅は県の責任だ。頭を使わんと助けてやらんぞ」とはなんという暴言!

被災地を助けようという気持ちがみじんもないばかりか、陳情した県知事にサラ金取り立てまがいの汚い言葉で恫喝をかけるとは呆れ果ててものが言えません。

即刻解任すべきです。

 松本復興相、岩手・宮城両知事にきわどい発言連発
(朝日新聞7月4日)

松本龍復興担当相は3日、東日本大震災の被災地である岩手・宮城両県を訪ね、両県知事と会談した。前日の福島県に続く就任後初めての被災地訪問だが、被災者の感情を逆なでしかねない発言を連発した。週明けの国会で野党が追及する可能性もある。

 最初に訪れた岩手県庁の玄関前では、衛藤征士郎・衆院副議長からもらったというサッカーボールを持ち出し、「キックオフだ」と達増拓也知事に蹴り込んだが、達増氏は取り損ねた。

 会談では、仮設住宅の要望をしようとする達増知事の言葉を遮り、「本当は仮設はあなた方の仕事だ」と指摘。仮設住宅での孤独死対策などの国の施策を挙げ、「国は進んだことをやっている。(被災自治体は)そこに追いついてこないといけない。知恵を出したところは助けるが、知恵を出さないやつは助けない。そのくらいの気持ちを持って」と述べた。また、「九州の人間だから、東北の何市がどこの県とか分からない」と冗談めかして話した。

 午後に訪問した宮城県庁では、応接室に後から入ってきた村井嘉浩知事に「お客さんが来る時は、自分が入ってから呼べ。しっかりやれよ」と語った。被災した漁港を集約するという県独自の計画に対しては「県でコンセンサスをとれよ。そうしないと、我々は何もしないぞ」などと厳しい口調で注文をつけた。 

松本氏は防災相から引き続き震災対応に当たることもあって村井氏は面会後、記者団に「地元のことをよく分かっている方が大臣に就任して喜んでいます」と述べた。しかし、ある県幹部は「被災地に来て、あの言動はない」と憤っていた。(山下剛、高橋昌宏)

 

 以下、YouTubeで実際にご覧ください。これはもうヤクザです。茨城に来たら塩を撒いてやる。
http://www.youtube.com/watch?v=VtUqWdbjnTk

 

「県にそれ、コンセンサス得ろよ!そうしないと我々、何もしないぞぉ。ん、ちゃんとやれよ。
今、後から自分(知事)は入ってきたけど、 お客さん(復興担当大臣様のこと)  が来るときは 自分が入ってからお客さん(自分のこと)を呼べ! いいかぁ?!
長幼の序が分かってる自衛隊なら、そんなことやるぞ? 分かったぁ? はい。しっかりやれよぉ! 

最後の言葉はオフレコです。いいですか、皆さん。いいですか?はい。書いたらもう、その社は終わりだから。」
(TBS YouTubeより

このような男を任命した官邸は首相補佐官から「隠蔽体質と言われてもしかたがない」とまで言われるような内情だったようです。

しかし馬淵さん、これだけ言うんなら官邸にいる時に発言してほしいものです。安全地帯に来てドロドロとなんとも見苦しい人たちばかりなことです。

以下引用
(産経新聞7月4日)

馬淵元首相補佐官が政府を痛烈批判
  「脱原発ではなく脱原発依存」「解散なんてあってはならない」

次期民主党代表選への出馬に意欲を示している馬淵澄夫元首相補佐官が3日までに産経新聞のインタビューに応じた。東京電力福島第1原発事故への政府対応を「隠蔽(いんぺい)体質といわれても仕方がない」と批判し、菅直人首相に早期の退陣を促した。

 6月27日に菅直人首相から経済産業副大臣を打診されたけど断りました。すると菅さんに「では首相補佐官を外れてもらうことになる」と言われたので退任しました。

 首相補佐官を引き受けたのは、福島第1原発事故の収束という未曽有の危機に対処する仕事だったからです。国土交通相を退任して2カ月しかたっていなかったが、「ノーの選択肢はない」と思いました。

 飛散防止剤の散布で放射性物質を押さえ込んだり、気体を封じ込めるためにカバリングを行ったり…。汚染水が地下へ流入するのを防ぐ対策や燃料プールの耐震補強もやり、成果は出してきたと自負しています。

 志半ばで退くのは非常に残念です。でも首相が「免ずる」と言うならば従うしかない。政府は浜岡原発の停止を要請しながら他の原発には安全宣言を出し、地元に再開を要請してますね。国民は情報開示と徹底した説明を求めているにもかかわらず、とにかく「指示した安全基準を満たせば安全だ」と。あれを見て「全然分かっていない。体質は何も変わっていない」と感じましたね

 福島第1原発事故の対応にしても「後から事実を出す」の繰り返しではなかったか。1号機がメルトダウンしていたなんて私でさえ発表まで1回も聞かされませんでした。これでは隠蔽体質といわれても仕方がないじゃないですか。経産副大臣を引き受ければこれらを追認しなければならない。とてもじゃないが、私にはできない。

 菅さんにも言ったが、混迷の原因は法に基づいた責任と権限が曖昧だったことにある

 首相補佐官の時は、組織人としてこういうことは一切口にしなかったが、今は一議員。誰にはばかることなく持論をどんどん言っていくつもりです。

 原発問題は、国際社会から信任を得られる安全技術基準をいかに定めるかが重要。その上で国内の原発を再検証すべきなんです。ただ、原発の全てを否定したらとてもじゃないが今日の生活はできない。大切なのは「脱原発」ではなく「脱原発依存」なんです。

 どさくさ紛れでやる増税も基本的にダメですね。

大震災による社会資本の喪失を補うのは一世代でできるものではない。復興資金の償還は30~60年の長期で考えるべきでしょう。社会保障の財源がないから消費税増税という短絡的な議論の前に景気回復、名目成長率4%を掲げていくデフレ脱却をやるべきなんです。

 民主党の「国民の生活が第一」というスローガンは、田中角栄元首相の「政治とは生活だ」という言葉に通じます。生活を真っ正面にとらえない政治はない。民主党政権はそれを標榜(ひょうぼう)して政権交代を果たしたのだから、その使命感と覚悟が必要なんです。6月28日の両院議員総会で菅さんは衆院解散をにおわせているように聞こえたが、解散なんてあってはならない。

(ゴチック引用者 まだぐだぐだ続きますが、以下くだらないので略)

 

2011年7月 3日 (日)

国は放射性物質の除去が進むとなにか不都合があるようです

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国は私たち国民をモルモットにしたいのでしょうか。 

事故から既に100日以上たっているのに除染はまったくされていない状況です。計画も聞いたことがないとは異様ですらあります。 

まったくです。コンプリートリー・ナッシング。 

あ、飯館で首相候補(笑)の鹿野農水大臣が猫の額のような実験田になにやら植えていましたが、あれ以外なにかやっているのでしょうか? 

農水副大臣の篠原孝氏は、チェルノブイリに国際会議で行って以来、脱原発と自然エネルギーの伝道師のようになっていますが、講演で説教を垂れられるのは結構ですが、自分が農地除染の政府責任者だってことをお忘れになっているのではないでしょうか。 

国民の健康を守るのが役割のはずの厚労省も、暫定規制値を作って以来、何か積極的に既にフォールアウトしてしまった放射性物質を取り除く作業をしている、あるいは予定しているという話はまったく聞こえてきません。 

除染はたしか東電がデッチ上げた工程表のどこかにあったようですが、そもそもあんなもの国民の誰も信じちゃいません。

放射性物質の除去、つまり除染は地方自治体ができません。下の資料一覧をご覧ください。 

地方自治体はやりたくとも法的にがんじがらめで放射性物質の除染活動ができないのです。逆に言えば、国が主管してやちなければまったく除染はできないということになります。 

では国がなにかやっているのでしょうか。先ほど言ったように飯館で猫の額に菜種などを「実験」で蒔いた以外なにもしていません。 

そもそも、今、100日もたって「実験」など悠長にやっている場合でしょうか。菜種、ひまわりなどが効率よく土中のセシウムを取り込むのは常識の範疇です。 

チェルノブイリの除染作業で大規模に使用され、評価は定まっています。それ以外にもゼオライトやベントナイトなど除染に有効な資材は沢山あります。

それを国が買い上げて無料で関東圏の農家に配布すればいいだけです。必ず私たちは使いますから。もう風評被害はこりごりですから。

それをなに今さら「実験」ですか。今やるべきことは実験ではなく、「実行」です。飯館の実験など単なるアリバイ工作でしかありません。 

政府は実践どころか、農民はおろか国民いに対して除染の「呼びかけ」さえしていません。

多くの国民が不安に怯え、自腹でガイガーカウンターを買い込み、食品に当てたり、子供が遊ぶ公園で計測している風景は日常になってしまいました。

ネット内は素人計測の線量数値であふれ返っています。いまや不安は食品、そして土壌から水と空気へと移っています。

食、土地、水そして空気は人が生きていく根本中の根本です。この安全を守れないような政府はいりません。

国は放射性物質の除去が進むとなにか不都合があるようです。国民が被曝に怯えているのを見ているのが楽しいようです。

なるほどそうかもしれないですね。被曝で問題でも起きれば、また首相の延命のカードが生まれますから。

「私を辞めさせたかったら、放射性物質除去特別措置法案(←そんなものないけど)を通しなさい!」とでもやりたいんでしょうか。

しかし、ここまで除染に無関心な政府を見ていると、避難区域は国家管理地域にでもして、高濃度放射性物質最終処分場でも作る計画なのかと勘ぐりたくなります。

あ、そうすれば、原発の解体最終処分場になりますか。避難地区域に廃炉後に出る高濃度放射性物質を集めて、外側に高いフェンスでも張って電流でも流しますか。

住民は菅首相の腹案どおりに域外のエコタウン(なんというブラックジョークなネーミング!)に集中して住んでもらえばいい。なんなら核の墓場で働いてもらえば雇用対策にもなって一石二鳥。

いやそれどころか、原発の最終処分場が決まれば、本格的に廃炉が日程に登って3度おいしい。

さすがは日本初の脱原発宰相!( ゚д゚)、パカヤロー、シネ!

うう、自分で書いていて気持ちが悪くなりました。あながち冗談ともいえないのが怖い(笑)。彼なら考えかねない。

それはさておき、なんやかやでもう梅雨は終わりかけています。福島第1原発から出た60京ベクレルの放射能は、梅雨の雨に乗ってどこにいくのでしょうか。

コンクート路面から側溝へ、側溝から下水処理場へ。川や湖から上水施設へ。浄水場から水道へ。

農業用水から水田へ。水田から米へ。水田から再び川へ。川から湖や海へ。海から魚へ。

そして、これからの台風の強風は放射性物質を、更に関東各県、いや西日本までへと拡げていくことでしょう。

一部週刊誌報道では関西圏でも関東と変わらない線量が計測され始めています。この傾向は梅雨と台風でいっそう強まることでしょう。

政府の重い腰をあげるには、選挙区の議員、なかでも与党議員を動かす必要があります。

現在、与党議員は「乱心の暴君」(日本農業新聞」の表現)をめぐる権力闘争に忙殺されて、機能停止状態です。

選挙民が彼らに働きかけてなんとかして除染の動きをせねば大変なことになります。ぜひ皆さん、地元選挙区の与党民主党議員に働きかけてください!

■写真 きょうの写真は去年秋のものです。あまり暑いので、きれな色を選んでみました。 

 

            ゜。°。°。°。°。°。°。°。゜。°。°。°。

下記に地方自治体が放射性物質除去をできない法的根拠を列記しました。
逆に放射性物質を除去することを定めた法律はありません。また作ろうという動きは政府内部、与党にはありません。

 

資料 汚染されたものは地方自治体が処理できない法律一覧

●環境基本法(平成五年十一月十九日法律第九十一号)
(放射性物質による大気の汚染等の防止)

 

第十三条  放射性物質による大気の汚染、水質の汚濁及び土壌の汚染の防止のための措置については、原子力基本法(昭和三十年法律第百八十六号)その他の関係法律で定めるところによる。 

●大気汚染防止法(昭和四十三年六月十日法律第九十七号)
(適用除外等)
第二十七条 この法律の規定は、放射性物質による大気の汚染及びその防止については、適用しない
 

●水質汚濁防止法(昭和四十五年十二月二十五日法律第百三十八号)
(適用除外等)
第二十三条 この法律の規定は、放射性物質による水質の汚濁及びその防止については、適用しない
 

●土壌汚染対策法(平成十四年五月二十九日法律第五十三号)
(定義)
第二条 この法律において「特定有害物質」とは、鉛、砒素、トリクロロエチレンその他の物質(放射性物質を除く。)であって、それが土壌に含まれることに起因して人の健康に係る被害を生ずるおそれがあるものとして政令で定めるものをいう。
 

●特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律
(平成十一年七月十三日法律第八十六号)
(定義等)
第二条 この法律において「化学物質」とは、元素及び化合物(それぞれ放射性物質を除く。)をいう。
 

●環境影響評価法(平成九年六月十三日法律第八十一号)
(適用除外等)
第五十二条 この法律の規定は、放射性物質による大気の汚染、水質の汚濁(水質以外の水の状態又は水底の底質が悪化することを含む。)及び土壌の汚染については、適用しない
 

●廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和四十五年十二月二十五日法律第百三十七号)
(定義)
第二条 この法律において「廃棄物」とは、ごみ、粗大ごみ、燃え殻、汚泥、ふん尿、廃油、廃酸、廃アルカリ、動物の死体その他の汚物又は不要物であつて、固形状又は液状のもの(放射性物質及びこれによつて汚染された物を除く。)をいう。

●循環型社会形成推進基本法(平成十二年六月二日法律第百十号)
(定義) 
第二条  略
2 この法律において「廃棄物等」とは、次に掲げる物をいう。
 一  廃棄物
 二  一度使用され、若しくは使用されずに収集され、若しくは廃棄された物品(現に使用されているものを除く。)又は製品の製造、加工、修理若しくは販売、エネルギーの供給、土木建築に関する工事、農畜産物の生産その他の人の活動に伴い副次的に得られた物品(前号に掲げる物並びに放射性物質及びこれによって汚染された物を除く。)

 

 

2011年7月 2日 (土)

チェルノブイリ原発事故の避難実態

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昨日の私の記事におけるチェルノブイリの避難措置について記述の行き過ぎをご指摘頂きました。私の記述にはいきすぎた単純化があり、事実を正しく伝えておりませんでした。

ご教示頂きました田口様には心から感謝いたします。

福島第1原発事故におけるわが国政府の対応はお粗末そのものでしたが、それとチェルノブイリ原発事故対応を過大評価することはまったく別の問題でした。

指摘を受け入れて、改めてチェルノブイリの避難状況について詳述いたします。

 

さて、1986年4月26日、ウクライナにあるチェルノブイリ原発4号炉で原子炉の暴走による重大事故があったことはどなたもご存じだと思います。

この事故はECCM(緊急炉心冷却装置)が切られた状態での安全試験を行ったために、炉心が暴走を開始しても冷却ができない状態になりました。

そして午前1時24分、原子炉制御を回復させようとする試みのすべてが失敗し大爆発を起こしました。

チェルノブイリ原発は、福島第1原発と違い原子炉を収納する分厚い格納容器がなく、爆発は直ちに環境中に放射性物質を大量に吐き出すことになりました。

この事故により10日間にわたって放出された放射性物質は2エクサベクレル、広島型原爆の500個分に相当します。

この爆発で、放射性希ガスであるキセノン133、クリプトン85は原子炉内の100%が放出されました。

他の希ガスとしてはヨウ素131が20%、テルル132が15%、セシウム134、137がそれぞれ10、13%放出されました。

揮発性ガス以外の放射性核種の中にはストロンチウム89、90がそれぞれ4%プルトニウム238、239、240、241、242が3%放出されています。

今回の福島第1原発事故もそうですが、ストロンチウムやプルトニウムが検出されたということは、燃料棒自体が融解していることを示すなによりもの証拠です。

また致命的な中性子であるナトリウム24が検出されなかったのは不幸中の幸いでした。

しかし、この事故現場の放射線量は地獄というしかない線量に達していました。

この地獄の中で隣接する3号炉に延焼することを防いだ消防士たちはマスクも防護服もない状況でこの地獄の釜の中に送り込まれました。

死亡した28名中17名が急性放射線障害でした。

今回の福島においても政府は意味のない爆発直後の原子炉上空からのヘリによる冷却水投下や、ぎりぎりまで接近しての放水などを自衛隊員やレスキューに命じています。

人類的災厄をくい止めようとする隊員たちの尊い犠牲的精神に感謝すると同時に、これを平然と命じた政府中枢に対して強い憤りを覚えます。

それはさておき、チェルノブイリにおいて政府対策委員会は、3㌔離れたプリピャチ市が事故直後の26日時点で、既にソ連国家放射線防護委員会の定めた緊急避難基準であるガンマー線外部被曝25㍉シーベルト/hを超えると判断しました。

この200ミリシーベルトというとてつもない線量は年単位の積算量ではなく、まさにその時点の毎時であることにご注目ください。

当時政府のプリピャチ市放射線量は既に500ミリシーベルト/hに達することを示していました。

5月12日には500ミリシーベルトを避難基準として(ただし妊婦と14歳以下の子供は100ミリシーベルト)避難を一部開始しました。

10日後の5月22日には100ミリシーベルトを新たな避難基準とし、全住民4万5千名の避難措置が取られました。

脱出作戦にはバス1200台が投入され、27日午後2時から開始され、5時に終了しました。

この時、市民が緊急摂取したのがヨウ化カリウム錠剤でした。これは希ガスであるヨウ素の体内吸収に対して効果を上げたとされています。(*効果がなかったという説もあります。)

ソ連国防省中央陸軍医療部門は、生物物理学研究所の助けを借りて(線量計の不足のため)250名の軍医を現地に派遣して医療活動と避難民の検査をしています。

そのとき検診したのが1万3千名で、後に生物物理学研究所は10㎞圏内の村の15万人を検診し、5月後半にはウクライナ15万名の子供の甲状腺の放射能測定をしました。

結果、パブロフスキーの報告書によれば、村落部では避難が完了するまでに最高で750ミリシーベルトの被曝があったとされています。

つまり、プリピャチ市の避難はスムースになされたが、その陰で同じ10㎞圏内であるトルスティ・レス、チストゴロフカ、コパチなどの村落部の避難が遅れたために高い放射線を浴びてしまったようです。

また、ウクライナの隣のベラルーシ側での被曝状況もひどく、ホイニキ郡、プラーギン村の18歳未満の子供たちの甲状腺線量は、実に3.2と2.2グレイにも上り、これはプリピャチ市の同年齢の子供の平均線量0.44グレイ、大人0.15グレイを大きく上回りました。

10㎞圏内のミルクの出荷が停止されなかったために2次災害も引き起こしています。昨日の記事で出荷停止という誤りがありましたので訂正します。

パブロフスキーはこのような避難の遅れと避難基準の拡大を強く批判しています。

この事故直後の市内の避難活動のみが注目されますが、事故後100ミリシーベルト/h圏に多くの住民が取り残されていたことを忘れてはなりません。彼らが避難し終えたのは4週間後でした。

事故後、被曝限界の基準が見直され、翌87年になって30ミリシーベルト/年、そして2年後に25ミリシーベルト/年となりました。

5ミリシーベルト/年になったのは、事故後4年。そして救済法が成立したのが事故後6年後のソ連が崩壊した後の1992年でした。

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ロシアにおける法的取り組みと影響研究の概要 

 

イーゴリ・A・リャプツェフ,今中哲二
ロシア科学アカデミー・エコロジー進化問題研究所(ロシア),京都大学原子炉実験所

http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/NSRG/Chernobyl/saigai/Ryb95-J.html

 

 

1(略)

 

2.ロシアのチェルノブイリ関連法令

 

被曝量限度に関する規制

 

 19864月から5月にかけて,ソ連政府事故対策委員会とソ連保健省は,チェルノブイリ事故を終息させ人々を防護するためにさまざまな活動を行なった.人々の放射線被曝を減らすための最初の決定は,空間放射線量が25ミリレントゲン/時を越えている地域(チェルノブイリ原発周辺の半径ほぼ10km圏)の住民を避難させることであった.ついで,半径30km5ミリレントゲン/時の地域からの避難が行なわれた.

 

 この時期のソ連政府の決定のうち,以下を記しておく. 

  • 1986512日,ソ連放射線防護委員会(NCRP)は,住民の被曝限度を年間500ミリシーベルトに決定した.ただし,妊婦と14歳以下の子供は年間100ミリシーベルト.
  •  

  • 1986522日,被曝量限度は全住民に対し年間100ミリシーベルトに決定.

 

  • 1987年,NCRPは放射線安全規則(NRS-76/87)を採択.その規則によれば,放射線事故の際の住民の被曝量限度は,ソ連保健省が設定する.チェルノブイリ事故による1987年の限度は30ミリシーベルト,1988年と1989年に対しては25ミリシーベルトとされた.

 

 1990425日のソ連最高会議決議No.1452-1,「チェルノブイリ原発事故の影響および関連する問題を克服するための総合計画」,ならびに1990630日のソ連閣僚会議政令No.645によって,チェルノブイリ事故による放射能汚染地域での“生活概念”が策定された.その目的は,チェルノブイリ事故によってもたらされるであろう健康影響と損害とに関連し,その害的影響を最大限に軽減するための対策についての原則と基準を定めることであった.

 その基本的な原則と基準は以下のようなものである.

 

     

  1. 放射能汚染地域に居住している住民,または一定期間以上かつて居住していた住民は,その損害に対する法的な補償と,社会的および医療の問題で保護される権利を有する.
  2.  

  3. 防護対策の必要性,その内容と規模,また損害補償について決定する際の基本的な基準は,放射能汚染にともなう被曝量である.
  4.  

  5. (自然放射線レベルを越える)年間の被曝量(実効線量当量)が1ミリシーベルト(0.1レム)を越えなければ,その被曝は容認され,チェルノブイリ事故による放射能汚染に対し何らの防護対策もとる必要はない.
  6.  

  7. 定められた基準値と社会経済的状況を考慮しながら,汚染地域の居住区から移住を実施することが必要である.
  8.  

  9. 放射能に対する防護のほか,つぎのような対策が必要である.

 

     

  • 弱者に対する特別な配慮を含む医療サービスの改善,サナトリウムや保養地での療養.
  •  

  • 微量元素やビタミンを含む,十分な栄養補給
  •  

  • 社会的精神的な緊張を和らげる対策
  1. 汚染地域に居住している人々は,その土地に住み続けるか又は他の場所に移住するかについて,汚染状況,被曝量,起こりうる危険性についての客観的な情報を提供され,自ら判断する権利を有する.

 

 以上のような“概念”に基づいて,ソ連の法律「チェルノブイリ原発事故による被災者の社会的保護について」が立案され,1991年5月採択された.この法律により,チェルノブイリ事故処理作業従事者(リクビダートル),避難・移住した住民,および汚染地域に居住している住民の権利が確立された.

 

 ソ連の崩壊により,チェルノブイリ事故の影響に立ち向かう課題は,ロシア連邦に引き継がれた.ロシア連邦では,事故被災者への放射能防護,社会的保護,およびリハビリテーションに関する“概念”が立案され,事故の影響に対する一連の具体的な対策が定められている.汚染地域とは,年間の被曝量が1ミリシーベルトを越える可能性のある地域である.その汚染地域は以下のようなゾーンに区分されている.

 

     

  • 無人ゾーン1986年と1987年に住民が避難した地域(ブリャンスク州の一部).
  •  

  • 移住ゾーン:住民の年間被曝量が5ミリシーベルトを越える可能性のある地域(セシウム137汚染が555kBq/m2以上).
  •  

  • 移住権利のある居住ゾーン:年間被曝量が1ミリシーベルト以上の地域(セシウム137汚染が185555kBq/m2).
  •  

  • 社会経済的な特典のある居住ゾーン:年間被曝量が1ミリシーベルトを越えない地域(セシウム137汚染が37185kBq/m2).

 

 上記の概念では,短期的に50ミリシーベルトまたは長期的に70ミリシーベルトを越える被曝をうけた人を“特別被曝者”,またチェルノブイリ事故と病気との関連が証明されている病人を“特別被災者”と定義している.これらの人々はすべて,国家被曝疫学登録に登録されている.

 

 すべての特別被曝者と特別被災者を対象に,医療支援とリハビリテーションのプログラムが実施されている.とりわけ,特別被災者と,特別被曝者のなかの弱者グループに注意が払われている.医療支援とリハビリテーションには,被曝をうけた人々のガンへの抵抗性を高めたり,放射線以外の害的要因の影響を和らげる対策が含まれている.また,汚染地域に住んでいる人々に対し,ストレスを緩和するための精神的な支援やリハビリテーションの対策も含まれている.被曝の影響に関する知識を普及させ,放射能の状況に関する的確な情報を提供するといった,汚染地域に精神的支援サービスを確立するための努力が払われている

 ロシア連邦では,上記の概念に沿って法律「チェルノブイリ原発事故による放射線被災者の社会的保護について」が採択され,その後1995612日に,ロシア連邦・ドゥーマ(ロシア連邦議会)が修正を加えた.

 

食品,飲料水,空気の放射能レベルの規制

 

 チェルノブイリ事故が起きる以前においては,食品,飲料水,空気に対する放射能の許容濃度は,「放射線安全規則(NRS-76)」ならびに「放射性物質および放射線源に関わる作業衛生基準(PSR-72/80)」に基づいていた.これらの規則を遵守することは,ソ連のすべての企業,機関,団体の義務であった.しかしながら,チェルノブイリ事故が起きると,広大な地域において規則を遵守することが不可能になった.198653日,ソ連放射線防護委員会(NCRP)は,飲料水と食品中の放射性ヨウ素に対し,3.7kBq/kg,lという暫定基準を設定した.1986530日,ソ連保健省はセシウム137とセシウム134に対する基準を追加した.これらの基準値は,事故後の最初の1年間の内部被曝量が50ミリシーベルトを越えないように設定されたものであった.

 

 またソ連保健省は198657日,地面,車,衣服,皮フ等の表面汚染に関する暫定基準を設定し,その後19861026日にその基準値は引き下げられた.

 

 内部被曝量を引き下げるため,1988年に食品と飲料水中のセシウム137に関する暫定許容濃度(TAL-88)が設定され,1991年にはTAL-91に変更された.1994年にはTAL-94が導入された(表1).食品と飲料水中の許容レベルは徐々に引き下げられ,TAL-94では多くのヨーロッパ諸国や米国と同等のレベルになっている.

 

 

表1 食品中のセシウムとストロンチウムに関する暫定許容レベル(TAL-94)

 一方,1987年に新しい「放射線安全規則(NRS-76/87)」と「放射性物質および放射線源に関わる作業衛生基準(PSR-72/87)」が決定された.これらの規則では放射線被曝の人体影響についてより明確な基準が設定された.チェルノブイリ事故影響に対処した経験を含め,施設や環境での放射線管理や予防措置に関してそれまでの経験から得られた知識が新しい規則に反映された.PSR-72/87はソ連全体に適用され,その崩壊後は,最近までロシアにおいて適用された.現在それらの規則の改訂作業が進められており,近い将来ロシア全土に適用される新しい規則となるであろう.

 

 被曝量を制限し汚染地域住民や種々の活動に携わっている人々に対する放射能の取り込みを減らすため,上述の法律や規則に加えて,多くの規則,勧告,原則が制定されている.たとえば,「環境中への放射能放出をともなう事故時に人々を防護するための手引き」,「チェルノブイリ原発周辺30kmにおける放射線安全手引き」,「森林における放射能汚染と放射線安全に関する暫定規則」,「放射能汚染地域における農業・産業活動に関する勧告」,「放射能汚染地域における人々諸活動に関する勧告」などなどである.

2011年7月 1日 (金)

チェルノブイリがうらやましい

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さんは、私たち日本の農家がチェルノブイリをうらやましいと言ったら笑うでしょうか?

チェルノブイリと同じレベル7の原子力事故である福島第1原発事故の「その後」の政府対応を、農業面に絞って比較してみましょう。

●避難地区の人の避難移動

・チェルノブイリ・・・事故後直ちにバス1000台で住民全員が避難退避

・福島・・・・・・・・・・20キロ圏内⇒30キロ圏内⇒屋内退避⇒計画的避難地域⇒警戒区域と二転三転・大幅な避難の遅れ

●避難地区の家畜とペット類の避難

・チェルノブイリ・・・人と同時に全頭避難完了

・福島・・・・・・・・・・避難地域に放置し見殺しにし大量の家畜が惨死した・非難を浴びて家保により薬殺処分・JA全農とNPOが主体で避難活動

●農産物出荷対策

・チェルノブイリ・・・30㎞圏内のミルクが流通

・福島・・・・・・・・・・従来の農産物輸入の規制値を改悪して暫定規制値としたためにかえって風評被害を拡大

●汚染マップ

・チェルノブイリ・・・・事故後直ちに空間線量と土壌線量の調査開始。数カ月後に集団農場(コルホーズ)などに汚染マップを交付・地域集落ごとの地域汚染マップも同時に交付

・福島・・・・・・・・・・・2カ月後から福島県のみで汚染マップづくりを開始・予算わずか7億円のはした金。茨城、千葉などの近隣圏の予定なし。

●環境放射線量測定

・チェルノブイリ・・・・同上。

・福島・・・・・・・・・・・事故初動でSPEEDI情報を隠匿・非難を浴びて1カ月たってようやく気象庁、文科省のデータを出し始める・現在も詳細な地域線量計測は県行政が主体

●除染活動

・チェルノブイリ・・・・放射線量を中長期的に減少させる農業技術的手段を政府が提供・国家レベルで大規模除染活動

・福島・・・・・・・・・・・なし。非難を浴びてようやく飯館村で小規模の「実験」を開始・予算わずかに5億円。茨城、千葉などでの除染計画なし

●放射性物質放出の違法性認識

・チェルノブイリ・・・・・国家責任

・福島・・・・・・・・・・・・「放射性物質は特定有害物質ではないので、放射性物質の放出は合法である。従って放出した東電を罰することはできない」。(環境省見解)従って、空間に放出しようが、海に放出しようがまったくの自由。

こうしてみるといかに民主党政府がなにもしてこなかったのかがよく分かります。彼らがやってきたのは、党内の内ゲバと権力闘争だけです。恥ずかしくないのか!

政権が私たち農業者に対して何かをした形跡は皆無。これでなにがなにが「脱原発解散」ですか。

菅さん、ちゃんちゃらおかしいぜ。あなただけには「脱原発」を言われたくない。これだけ事故をひどくした最高責任者はあなただ。そしてその後に被曝地を見捨てたのもあなただ。

皮肉ではなく思います。チェルノブイリがうらやましい。圧政下にあったと言われるソ連の農民は、今の日本農民よりずっと人間として扱ってもらっていたのでから。

お断り・本記事にはチェルノブイリと今回の福島第1原発事故を比較するに際して、避難措置の記述に無理な単純化があります。明日にチェルノブイリについてもう少し詳細に記述いたします。

■写真 新緑がまぶしい時期になりました。たまさかの梅雨の晴れ間はもう夏です。当地ももう連日30℃越え。昨日は軽い熱中症になりました。あわてて水風呂に直行して冷温停止(ああ、われながらイヤな冗談だこと)。

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