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2011年7月11日 (月)

南相馬産牛肉からセシウムが検出されました

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緊急避難準備区域の南相馬市で胸をふさがれるような事件がふたつ起きました。 

ひとつは、南相馬市から出荷された牛肉から東京都が規制値を上回るセシウムが検出したことです。 

今ひとつは、「私はお墓に避難します」という遺書を残して南相馬市のご老人が首吊り自殺をしました。 

「家族には「毎日原発のことばかりでいきたここちしません」。先立った両親には「こんなことをして子供達や孫達、しんるいのはじさらしとおもいますが いまの世の中でわ(は)しかたない」とわびていた。」(毎日新聞) 

この先、住みなれた家を出ていかねばならない不安や、目に見えない放射能の恐怖tが毎日彼女を襲っていたのだと思います。

私は原発が彼女を殺したと思います。今後この生殺しの状況が何年続くか想像もつきませんが、弱い者から亡くなっていくのでしょう。むごいことです。

菅首相は先日、「解決まで30年かかる」と発言していました。よくこのような無神経なことを口に出来ます。

官邸を臨時に避難準備区域に置かれてはいかがでしょうか。そうすれば、このようなことを言っていいことか、悪いことかわかるでしょう。為政者は考えてそれに備えていても、口に出してはならない言葉の重みがあるのです。

亡くなられた方の来世が安らかであるようにお祈りします。合掌。
(資料2参照)

さて、同じ南相馬で牛肉からセシウムが6倍の規制値を超える濃度で検出されました。
(資料1参照)

検出線量は、1530~3200bq/㎏です。この農家は5~6月に6頭を検査しないで出荷したとされています。一部は既に市場に出回ってしまっていました。

避難区域と避難準備区域の牛肉出荷のチェック体制はこのようになっています。

●飼料が適切に保管され、使用されているか。
                 ↓

●サーベイメーターによる体表面の放射線量検査・全頭⇒検出されれば除染
                 ↓                       ↓
                       食肉処理場
●出荷先都道府県の抜き取り検査⇒検出されれば出荷制限

問題点はおそらくは2ツです。

ひとつは、出荷家畜の放射線量の計測方法が間違っています。サーベイメーターとはスクリーニングする時に使う手持ち式の線量計ですが、これでは家畜の内部被曝の状況はまったくわかりません。

肉類や魚介類は外部をスクリーニングしてもわかりません。体内被曝がありえるからです。野菜ですらありえます。

ですから、外部からの被曝チェックは、はっきり言えば消費者向け気休めにすぎません。

内部被曝は生きたまますしたいのなら、ホールボディカウンターで計測するしかありませんし、そもそも家畜用のものは日本にありません。

食肉にしてから一定量を下のような放射能検出装置に入れて小一時間かけて検査します。

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(この機械は茨城県環境放射線監視センターのものです。NHKスペシャルより参考のため引用しました。ありがとうございました。)

検査に際しては、ほうれんそうのような葉物野菜ならビーカーなどに刻んで入れます。食肉も同じように刻んで計測します。

ただ、家畜は出荷先まで生体で運ばれますから、この流通方法が変えられない以上、出荷地での出荷前計測は事実上不可能です。

次に、なぜ舎内飼育している牛に放射性物質が入ったかの原因です。これはルートはたった2ツしかありません。

●ルート1 飼料①・・・・濃厚飼料。いわゆる完全配合飼料とも言われる飼料会社から供給されるカロリー、タンパクが高い飼料です。工場製品なので被曝することはありえません。

 飼料②・・・・粗飼料。牛は牧草を食べさせないと死んでしまいます。放牧時を除いて、乾燥牧草を与えます。これには輸入牧草と自家製があります。ありえるセシウム付着はこの自家製牧草です。

●ルート2 水①・・・・・・井戸水。セシウムは粘土質と結合するので、水系に沈下するまでに非常に長い時間かかりますので、今回はありえません。

       水②・・・・・・水道水。水源地や浄水場に放射性物質がフォールアウトした場合、放射能汚染される可能性はあります。東京都の浄水場でも同様の検出がありました。

消去法で考えると、飼料の濃厚飼料は除外され、井戸水を使っていたようですので水からのルートも除外されます。

従って原因は、飼料用ワラです。おそらくは3月のフォールアウト時の牧草を使用禁止されていたはずですが、誤ってなんらかの理由で使ってしまったのだと思われます。それ以外考えられません。

牧畜は自家用牧草が重要な柱です。特に牛は飼育期間が非常に長く、食べる量も多いため自家製の牧草を与えることは、牛の健康にもよく、またコスト的にも大きな助けになっています。

今、被災地の多くでは自家製牧草が使用できないために、非常に厳しい経営を余儀なくされています。

チェルノブイイリでもそうであったように、牧草、ベリー類、キノコ類などは地表面で育つために特に放射性物質を吸収しやすく、それが原因でミルクや肉、そして地衣類を食べたトナカイなどにまで汚染が拡がりました。

最後に、また「東電の手先」と書かれそうですが、いちおう言っておけば、セシウムはカリウムと同族元素であり、吸収されたとしても体内でカリウムほどではありませんが似た挙動をします。

生物学的半減期といって、水溶性ですのでおおよそ子供なら1週間か2週間以内に大部分がオシッコと一緒に体外に排泄されます。成人でも70日ていどで大部分が体外に出てしまいます。(資料3参照)

私としてはこのことによって、だから安全であるとも、危険であると断言することも避けます。

いずれにせよ、このような牛肉の出荷前産地検査のあり方をなんらかの改善をしない限り、また福島産牛肉全体を風評被害にさらす危険があることは間違いのないことです。

 

 

■ お断り 除去技術の2回目は明日にいたします。

 

                   .。.:**:.。..。.:**:.。..。.:**:.。..。.:**:.。.

 

■ 資料1 福島・南相馬市産の牛肉からセシウム 全国初 

産経新聞 2011.7.8 

 東京都は8日、福島県南相馬市産の牛肉から食品衛生法の暫定基準値(1キログラム当たり500ベクレル)の約5倍に当たる2300ベクレルの放射性セシウムが検出されたと発表した。牛肉から基準値を超えたセシウムが検出されたのは初めて。  

 福島県は、南相馬市に対し出荷自粛を要請。また、厚生労働省は、福島県や隣接県に対して牛肉検査態勢の強化を求めた。 

 検出されたのは、南相馬市の緊急時避難準備区域内の農家から、都立芝浦と場に搬入された牛11頭のうちの1頭。 

 福島県内では食品などについての検査が追いつかないため、厚労省の依頼で都が検査。残りの10頭についての検査結果は、9日午後にも判明する。 

 この牛肉については、都の施設内で管理されており、一般に流通する可能性はないという。これまで、ほかの自治体などでも同じような検査はされていることから、放射性物質が検出された牛肉については、市場には流通していないとみられる。 

ただ、都などによると、これらの牛は、体表面が放射性物質に汚染されていないかや育成過程がどうだったかについては、農林水産省の指針に基づいて、出荷段階でチェックされていたという。チェック体制が適切だったかどうか、今後、課題になりそうだ。  

 ある自治体関係者は「出荷前のチェックでは問題ないということで、モニタリング検査していた。今後、農水省などが事前の検査態勢などを見直す必要があるのではないか」と話した。

 

■ 資料2 東日本大震災:お墓にひなんします 南相馬の93歳自殺

毎日新聞 2011年7月9日

 

 「私はお墓にひなんします ごめんなさい」。福島県南相馬市の緊急時避難準備区域に住む93歳の女性が6月下旬、こう書き残し、自宅で自ら命を絶った。東京電力福島第1原発事故のために一時は家族や故郷と離れて暮らすことになり、原発事故の収束を悲観したすえのことだった。遺書には「老人は(避難の)あしでまといになる」ともあった。 

 女性は同市原町区の静かな水田地帯で代々続く田畑を守り、震災時は長男(72)と妻(71)、孫2人の5人で暮らしていた。長男によると、以前から足が弱って手押し車を押していたが、家事は何でもこなし、日記もつけていた。

 第1原発の2度の爆発後、近隣住民は次々と避難を始めた。一家も3月17日、原発から約22キロの自宅を離れ、相馬市の次女の嫁ぎ先へ身を寄せた。翌日、さらに遠くへ逃げるよう南相馬市が大型バスを用意し、長男夫婦と孫は群馬県片品村の民宿へ。長距離の移動や避難生活を考え、長男は「ばあちゃんは無理だ」と思った。女性だけが次女の嫁ぎ先に残ることになった。 

 4月後半、女性は体調を崩して2週間入院。退院後も「家に帰りたい」と繰り返し、5月3日、南相馬の自宅に戻った。群馬に避難している長男にたびたび電話しては「早く帰ってこお(来い)」と寂しさを訴えていたという。 

 長男たちが自宅に戻ったのは6月6日。到着は深夜だったが、起きていて玄関先でうれしそうに出迎えた。だが緊急時避難準備区域は、原発事故が再び深刻化すればすぐ逃げなければならない。長男夫婦が「また避難するかもしれない。今度は一緒に行こう」と言うと、女性は言葉少なだった。「今振り返れば、思い詰めていたのかもしれない」と長男は話す。 

 住み慣れた家で、一家そろっての生活に戻った約2週間後の22日。女性が庭で首をつっているのを妻が見つけ、長男が助け起こしたが手遅れだった。 

 自宅から4通の遺書が見つかった。家族、先祖、近所の親しい人に宛て、市販の便箋にボールペンで書かれていた。家族には「毎日原発のことばかりでいきたここちしません」。先立った両親には「こんなことをして子供達や孫達、しんるいのはじさらしとおもいますが いまの世の中でわ(は)しかたない」とわびていた。 

 奥の間に置かれた女性の遺影は穏やかに笑っている。近所の人たちが毎日のように訪ねてきて手を合わせる。「長寿をお祝いされるようなおばあちゃんが、なぜこんな目に遭わなければならないのですか……」。遺書の宛名に名前のあった知人が声を詰まらせた。

葬儀で読経した曹洞宗岩屋(がんおく)寺前住職、星見全英さん(74)は「避難先で朝目覚め、天井が違うだけで落ち込む人もいる。高齢者にとって避難がどれほどつらいか」と心中を察する。 

 取材の最後、長男夫婦が記者に言った。「おばあちゃんが自ら命を絶った意味を、しっかりと伝えてください」【神保圭作、井上英介】

資料料3 セシウムの生物学的半減期について
● セシウム137の場合生物学的半減期は70日とされています。
(Wikipedia, 
http://en.wikipedia.org/wiki/Caesium-137英語版です)

●原子力資料情報室:セシウム 
http://www.cnic.jp/modules/radioactivity/index.php/12.html?page=print 

■追加情報(毎日新聞 7月11日12時)

 

<放射性物質>餌のわらにセシウム…南相馬産の黒毛和牛汚染

福島県南相馬市の畜産農家が出荷した黒毛和牛11頭から暫定規制値(1キロあたり500ベクレル)を超える放射性セシウムが検出された問題で、農家が餌に使用していた稲わらから高濃度の放射性セシウムが検出されたことが分かった。県によると、昨秋刈り取り、田んぼに放置していた稲わらを牛に与えていたという。県は稲わらが汚染源だった可能性が高いとして、餌の管理体制強化を検討している。

 県畜産課や農林水産省の職員が10日、この農家への調査を実施。牛の飲み水にしていた井戸水や配合飼料、稲わらなどを調べたところ、井戸水や配合飼料に問題は見つからず、稲わらからは問題となった食肉(3200~1530ベクレル)の10倍以上の放射性セシウムが検出された。

 福島第1原発事故後、国は家畜について、餌となる干し草や稲わらは事故後に刈り取ったものを使わず、屋内で管理することなどを県に通知。指導が守られているか聞き取り調査した上で安全確認できた牛を出荷していた。この農家は毎日新聞の取材に「国の指導通りにやってきた」と話しているが、県は今後、稲わらの保管状況や量、時期などを詳しく調べる。

 

 

 

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コメント

ところが、今朝のテレビでは南相馬市の畜産担当者が電話出演して
「当該の牧場では、原発事故以降は前年の乾草しか与えていない。何故なんだ?」と憔悴しきった感じでした。

これは本当にわかりません。

今始まったNHKあさイチでも、なぜ流通は止められなかったのか?とやってます。
牛用ホールボディカウンターでもないかぎり無理だっての。

報道からすると、粗飼料にCsが混入していたとしか考えれませんね。
ラップサイレージなら、Cs混入は考えられません。
ということは、今年収穫した牧草の乾草としか疑う余地はないですね。
この牧場、栃木の会社(恐らく、預託依頼主)から粗飼料を購入していたとの記事がありましたので、そちらをトレースすべきですね。
待てよ、栃木?

あわただしい日常の中ロムのみで申し訳ありません。
二つの記事、本当に胸ふたがれます。

現実を見つめて一日一日を精一杯生きるしかないですが、
若い自分でさえ故郷のこれからを考えると絶望感にとらわれそうになります。
今ふるさとに生きるばっぱやじっちがどんな気持ちで暮らしているか。
毎日毎日世話する牛が汚染されているなんて、
牛をたてている農家さんの気持ちはいかほどか。

東京にいる自分は何ができるのでしょう。
歯がゆくてたまりません。

>出荷家畜の放射線量の計測方法が間違っています。サーベイメーターとはスクリーニングする時に使う手持ち式の線量計ですが、これでは家畜の内部被曝の状況はまったくわかりません。

国は福島から大量の牛豚鶏を全国各地に移動しましたが、移動前の検査は外部を計ったのみで、内部被曝については全然検査しませんでしたよね。
移動先で家畜の糞は堆肥として利用され、日本各地の農地の汚染を引き起こすことになるのでは

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