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現在の空間放射線量だけで、土壌放射線量を測定する必要はないという行政

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私のところには、既にいくつか土壌測定をしたというメールの報告をもらっています。 

これからしたいのだが、どうしたらいいのかという問い合わせもぼちぼち入ってきています。 

少しずつですが、自分の「土」が3月12日以降どのような状態になっているのかを知ろうという動きが少しずつ始まってきています。 

ただし、個々別々のひとりの農業者としての動きです。私はそれで充分だと思っています。 

というのは、行政や団体の動きは大変に鈍い。というかむしろ私のような土壌放射線量の測定をする動きを迷惑に思っていることを隠そうともしないからです。 

行政は、私が市内の土壌汚染を測定していこうという提案をした時なんと答えたのでしょうか。 

「現在、モニタリングポストで異常な数値は出ていないからする必要はない」。 

唖然とする答えです。そもそも放射能のイロハがわかっていない。これが農家を指導する部署にいる人間が言うことなのです。 

モニタリングポストの数値は、現在ただいまの空間放射線量でしかありません。時々刻々、変化する空気中の放射線量を測定する「だけ」のものです。 

このモニタリングポストの数値が有効だったのは、3月12日、3月15日の水素爆発時と、3月21日から数日間の放射能雲(プルーム)の移動した時です。(*欄外の図参照。放射能雲には4ルートあり、放射能雲は3月12日から22日まで出現しています) 

放射能雲は、3月21日午後4時に私たちの村の頭上を通過し、22日午前8時に柏,、松戸、葛飾、江戸川地域に降雨により高濃度の放射性物質をフォールアウトさせました。 

今、柏や松戸の住宅地で5万bq/㎏もの高濃度ホットスポットが計測されるのはこのためです。 

これに対して政府は、この放射能雲が茨城、千葉を抜け東京に向けて移動していることをSPEEDI(スピーディ・緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム)という悪い冗談のような名前のシステムで充分知りながら、なんの警告も出しませんでした。 

菅首相がその時、すべての情報が集中する首相官邸危機管理センターにいたことは首相動静で明らかです。知らなかったとは言わせない。 

政府は事故を小さく見せかけるために握りつぶしたのです。 

そして、高濃度の放射性物質の雨に市民や子供を無防備で浴びさせたのです。この時の放射能雲により被曝した国民は実に1万人以上に上ります。

これは政府の国民への背信行為、いや犯罪行為とすら言っていい。 

柏、松戸、葛飾、江戸川市民は、状況が一段落したなら国家賠償請求するべきです。そして法廷に原子力安全・保安院、原子力安全委員会、菅首相、枝野官房長官、海江田経済産業大臣などを召還して真実を証言させて下さい。 

話を戻します。モニタリングポストの数値とはあくまで「ただ今」のフォールアウトしている放射性物質の線量を示すもので、「既に降下してしまった」土壌の線量を教えるものではありません。 

ですから、とうぜんのこととして下図(*茨城県HPより)にあるように空間放射線量は減少して低位で推移しています。現在の茨城県の数値は0.087mSv/hていどです。

 

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このグラフは、明瞭に3月15日、16日、21にフォールアウトのピークがあることを教えています。 

最大のピークである3月16日には実に16μSv/hもの高濃度のフォールアウトがありました。(初期の核種は大部分がヨウ素です) 

実に平常時の2千倍です!2千倍の放射線が注いだのです!冗談ではない。これが農作物を、3月から4月中旬まで放射能汚染した元凶です。

ちなみに3月15日以前の数値がないのは、大震災でモニタリングポストの電源が切れてしまったためです。もし電気があれば、12日、13日にも大きなピークが観測されたはずです。 

今、私が言っているのは、この3月12日から4月初旬まで約2週間強も続いた放射性物質のフォールアウトが累積しているはずの土壌と水系の放射線量のことです。 

あの原発の爆発でいったいどれだけの量の放射性物質がこの私たちが住む地域に降下して地中に累積しているのか、それを知りたいのです。 

私たち農家だけではない、消費者はもっと知りたいはずです。

それを知るには土壌放射線量を測定するしかない。それをなにが「今モニタリングポストでは安全です」だ。 

水素爆発から4カ月もたった「今」の空間放射線量などは、なんの安全の証明にもなっていないのです。分かりきったことではないですか。子供だましを言わないで下さい。 

昨日の「日本農業新聞」で慶応大学金子勝教授も書いていましたが、「国家は義務をはたせ」。 

マスコミは放射性物質で汚れたキユウリが出れば農家が犯罪者のように叩き、セシウム藁が出ればまた叩く。まるで責任が農家にあるようです。国や行政は懐手してニヤニヤ笑っているだけ。 

冗談ではない。土壌放射線量の測定、そして除染は本来国の仕事です。その国がなにもしないばかりか、その責任をすべて私たち農家に押しつけて平然としています。 

今ちょうど夏作のために畑の上をトラクターが走り回っていますが、その表土下5~10㎝まで浸透しているであろうセシウムが、ロータリーの巻き上げる粉塵で体内吸収されることを行政は警告しようともしません。 

呼吸器から肺に入ったホットパーティカル(放射性物質)は、全身の血流に回って随所でガンを発生させる危険があります。 

よく畑で見るトラクターの後ろにカミさんがついて歩いてマルチを張っている姿を見ると、思わず「やめてくれ。ロータリーの後はもろに放射性物質を吸い込むぞ!」と止めたくなります。 

今、農作業をする、特にロータリーをかける仕事をする農家はマスクを装着してください。おそらく行政はなんの警告もするつもりはないでしょうから、自分で自分の身を守るしかないのです。

私たち市民、農民は国から見捨てられていると自覚すべきです。政府はみずからの果たすべき最大の義務である国民の安全と健康を省みず、権力闘争にふけっています。

もう国や行政になにも期待してはいけません。なんという情けない国でしょうか、わが日本は!

国はすべての汚染された土地を測定し、除染することに全力を上げろ。そして被害にあって出荷できなくなったすべての農水産物を賠償しろ。

国は国の義務を果たせ!

■写真 今年もなんの変わりもなく、稲の穂がふきました。わずかに白く見えるのが稲の花です。 

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上図の説明 群馬大学早川由紀夫教授が、火山灰の飛散の原理を用いて作成した、福島第1原発からの放射性物質の飛散図。これを基にルートを黒線で書き込んであります。

時系列を追っこ放射能雲の飛散ルート
福島第1原発からの放射性物質の大量放出は大きく4回。

●第1ルート/3月12日夜から・・・・・南相馬⇒太平洋⇒太平洋を北上⇒西旋回して女川から内陸に侵入⇒一関、平泉に到達

●第2ルート/3月15日午前中から・・・・太平洋を南下⇒いわきをかすめて、水戸から内陸へ侵入⇒3方向に分裂

・2-1ルート・・・宇都宮方向ルート
・2-2ルート・・・群馬方向ルート
・2-3ルート・・・首都圏に南下ルート

●第3ルート/3月15日夕方から・・・・北西に進み飯館⇒西旋回して内陸部へ⇒福島、二本松、郡山、那須⇒日光

●第4ルート/3月21日午前から・・・太平洋を南下⇒鉾田から内陸部へ⇒柏、松戸⇒東葛地区⇒東京湾⇒太平洋を南下⇒足柄⇒一部が静岡

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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コメント

汚染された農作物による消費者の内部被曝も心配ですが、それ以上に汚染された土地で農業をやる方の呼吸器からの放射性物質取り込みによる内部被曝が心配ですね。腸から取り込むのにくらべて肺などに取り込まれた場合は同じ量の放射性物質でもより健康被害が大きいという事でベクレルからシーベルトに変換する係数も高めになってるというのに……。


>国は国の義務を果たせ!

本当にその通りだと思います。もはや今の政府がやってる事は犯罪的ですらあります。

ベラルーシと日本の食品検査数の違い
http://hamstern.air-nifty.com/mogumogu/2011/07/post-28b9.html

検査についてベラルーシと日本の比較をされてる方もいます。これ読んで愕然としました。
これによると、ベラルーシ政府は農作物などの出荷前検査については毎日平均して3万の検体を検査しているとの事。一方、日本は本当にやる気がなく1日最大で全国あわせてたった200の検体しか検査してないとの事。
検査が杜撰すぎるから汚染牛も日本全国に大量に出荷されてからようやく後になって見つかる始末。

牛肉の件で消費者も検査の回数の少なさを知った人が増えていってるわけで、こんな杜撰な検査が続くようじゃますます関東東北の農産物の消費者離れが加速してしまいます。
国の不作為が続くとその間ずっと農家は苦しめられる事になってしまいます。

投稿: aga | 2011年7月26日 (火) 13時22分

ベラルーシは独裁政権の批判はありますが、国家予算の2割という大金を被曝対策に割いています。

大赤字でも遥かに予算規模の大きな日本で、政府がその程度の対策をするのは当然だと思います。
全力で国民の生命を守るのは、政府の最低限の義務です。当たり前です!

もう、おかしいよ。民主政権、早く潰すべき。
みんな目を覚ませ!

投稿: 山形 | 2011年7月26日 (火) 16時08分

首相が13年の同時選挙を言ったとか言わないとかニュースになっていますが、後2年も現政権(首相は変わったにせよ)を維持する事が、国益に叶うかどうかの問題ですね。
しからば現野党と言っても・・・ウーン何とも言えないものがあります。
現政権を支持している訳ではありませんが、他の党なら何とか出来るのかも、考えてしまいます。
結局のところ、誰がやっても大きくは変わらないが、今よりはチョットでもましか・・・程度かな?

国民の幸せより自分の幸せを優先する議員さんたちですから、期待は出来ないでしょう。
次回選挙にはしっかりした判断をして、投票して欲しいと願っています。
バラエティ番組ですが、昨日の「TVタックル」で松原議員が出演していました。以前と違ってずいぶん歯切れが悪くなったものと感じました。
また、首相の政治団体が、拉致事件関係者を応援している「市民の会」に間接的に献金している事も伝えていました。事実関係は分かりませんが、そんな話が出てくる事自体、この国はどうなってしまうのでしょう。
・・・・・とぼやいていても、生活もありますから逃げ出すわけにも行かないし、北関東で土地を大切にしながら、その土地を放り投げるわけにもいかない農業者の心情と、今後の健康に対する不安も同時に考えてしまいます。

八方塞がりですが、線量検査の実施と検査結果の公表が唯一、消費者の信頼を得る方法である事を信じて、地道でも実行して行くしかないように思っています。

投稿: 北海道 | 2011年7月26日 (火) 17時02分

3/21、この流れは川崎を通過し、黒い雨となって放射性物質が降下しました。
なんでわかるかというと、川崎にある原子力関連施設周囲で、神奈川県がこの事故のはるか以前から空間放射線量を測定し、それをHPで公開しているからです。しかし、事故直後、明らかに黒い雨が降り、危険な状態になっている時、文部省の各県の放射線一覧には、このHPの情報はなぜか、載りませんでした。マスコミも報道しませんでした。
いまだに、過去1ヶ月までしかデータは残りませんし、県のHPでもわかりにくいところにこっそり事故直後からのデータが残っているだけです。

http://www.pref.kanagawa.jp/sys/bousai/portal/6,4205,14.html
過去の神奈川県内の環境放射線量の時間別推移について

http://cgi.pref.kanagawa.jp/index.html

投稿: bluemo | 2011年7月26日 (火) 20時01分

家庭向け放射線測定器1万5750円 エステー、10月発売  :日本経済新聞 http://s.nikkei.com/opLYKF

同様に、簡易型の測定器も安価に大量生産してくれたらいいのに、、、と思います。電子レンジくらいの大きさと値段だったら買うと思います。

投稿: bluemo | 2011年7月26日 (火) 20時19分

国や行政は懐手してニヤニヤ笑っているだけ。

投稿: 匿名 | 2011年7月27日 (水) 09時50分

ベラルーシの政府がすばらしいのではなく、原子力災害はこれぐらいひどいものである、と言うのはチェルノブイリ時に証明されていたことで、誰でも文献を読めばわかることだったのに、私たち国民は、東電や政府や東大の賢い人たちが、そんなことは考えていてくれるだろうと誤解してしまっていて、正しい情報を見てこなかったのです。
政府が、情報を公開しなかったのは、原子力でおいしい思いをしてきた人たちが、身内だからです。
本当の責任者は、今の民主党政権だけではなく、原子力でおいしい思いをしてきた、東電や原子力安全委員、そして1986年以降の政権すべてであると思います。
現政権だけにすべての責任をおっかぶせて粛清し、それですんだことにしてしまったなら、(今まで何度もやってきた日本的解決法)日本を確実に滅ぶと思います。ソ連邦が崩壊したように。

投稿: mimi | 2011年7月27日 (水) 10時57分

mimiさま、
私はもちろん白ロシアの独裁体制などは支持しておりません。
ただ、少ない予算から目一杯の放射線対策を進める姿勢事態は見倣うべきでしょう。

たとえば、各学校の理科教師に教育をして検査機を学校に配備して、持ち込んだ物を即座に検査する。

そんなシステムが構築されています。


危険区域近くの住民にとっては、現状の日本より遥かに先を行っていて、安心でしょう。

投稿: 山形 | 2011年7月27日 (水) 11時37分

山形さま
もし、ご意見を批判するように書いてしまったとしたらごめんなさい。
起こってしまった災害について、理想的には「国家」は人民にとって最良の手を打つべきです。けれども、これは天災ではなく、「国家」の身内が起こした人災であるが故に、「国家」は情報隠蔽せざるを得ない。加害者が権力者の一部にいる、その人たちを公然と批判すると権力自体を維持できなくなる、権力を維持できなければ政策を実行できない、というところが、この問題の難しいところではないでしょうか。原子力災害においては、アメリカでも、ソ連でも同じことがあった、と言うことが言いたかっただけなのです。ソ連が崩壊した今、20年以上たった現ベラルーシ政権は、ソ連がもはや存在せず、情報隠匿の必要性もないので正しい方法をとることが出来るのだと思います。
もちろん、そんなことを言っても、農業、酪農、漁業に携わっている当事者が、「そんな悠長なこと言ってられないよ!」と言うのは当然です。「起こってしまったことなんだから何とかしろ!」と言うのも当然です。
私も正直そう思います。でも、それを実行するためには、本当の加害者をはっきりさせ、その人たちの権力を奪わなければ難しいと思います。菅さん、枝野さんなどの個人的な資質の問題ではなく国家組織全体の問題で、未だ、本当の加害者が全く表に出てこないことを残念に思います。

投稿: mimi | 2011年7月27日 (水) 13時03分

茨城県では4月8日の土壌の検査をやったようですが、あれではデータが古いのでしょうか?
「県内農用地の土壌調査結果(4月8日)」
http://www.pref.ibaraki.jp/important/20110311eq/20110408_20/

投稿: あおやま | 2011年7月29日 (金) 01時43分

あおやま様。私もこれは見ていますが、最大の問題は統計上の母集団が少なすぎます。

ひとつの市で一検体ではなんとも評価しようがありません。「行政もやています」というアリバイと県外から言われても返す言葉もありません。

やるなら、少なくとも市単位で測定グリッドを作って、座標軸の枡目を埋めるような検査をしないとほんとうの実態はわかりません。

投稿: 管理人 | 2011年7月29日 (金) 05時38分

確かに数が少ないですね。ただ早川先生の地図と比べれば、大まかな推定ができるのではないでしょうか。行政がやらないとなれば、市民がするしかなくなっちゃいますが。

投稿: あおやま | 2011年7月29日 (金) 09時02分

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