• 20250113-133232
  • 20250113-134354
  • 20250113-134844
  • 20250113-135719
  • 20250112-044948
  • 20250112-050804
  • Dsc_1204
  • Dsc_1204_2
  • Dsc_1206_2
  • Dsc_1210

« 政府はこの女性の声を聞け! | トップページ | 現在の空間放射線量だけで、土壌放射線量を測定する必要はないという行政 »

2011年7月25日 (月)

私たち農業者は3月と同じ失敗をしてはならない

024_edited1
ひとがひとの痛みを知ることが出来るのは、たぶん当人にとっていいことだ。

しかしひとは他人の痛みを分からない。分かろうとするにはいくつかの壁がある。

その最大のものは自分だ。自分の「立場」だ。
生きている基盤と言ってもいい。

私の場合は農業だ。私はまず農業を「守る」と立ててしまう。
長い間そういう「立場」だったから、ほとんど本能的に自動的にそうしてしまう。

だから、今回の風評被害でも、まずティフェンスしてしまった。3月の農作物についてもまずディフェンスしてしまった。

「風評被害は人災だ」だと。このブログでもそう書いた。

違う。
3月から4月中旬頃までは「実害」だったのだ。
おそらく、3月12日からのフォールアウト下で測りさえすれば、規制値を県内でくまなく超えたはずだ。

ただ私たちには今と違って放射能を測る術がなかった。情報すら皆無だった。
そもそも放射能の知識すらなかった。
なにが起きたのか、今どうなっているのかさえ分からなかった。

行政からの情報や、ましてや支援などは一切なかった。
私たちはただひたすら、震災の大混乱をどうやって乗り越えていくのかで精一杯だった。

震災の傷跡も生々しい中で、売れないというのは致命傷に近かった。
私たち農業者は叫んだ。

「お願いだ、買ってくれ。生きていけない!」と。
しかし売れなかった。みごとなまでに売れなかった。福島県産、茨城県産と名がついた農産物は市場でゴミのように突き返された。

それは悪意ではなく、青果市場の抑制と均衡のシステムが働いたのだ。

だから皮肉にも、売れなかったから「実害」はなかった。
今思うと、それがせめてもの慰めだ。

あの時、普通に流通していたらと思うとゾッとする。
被害者の私たちがいつの間にか加害者になってしまっていたかもしれない。

しかし、消費者には深い不信感が残った。3月の高線量の状況下で「オレのものは安全だ」と叫んだ者を誰が信用するものか。

本来は無策な国に向けられるべき不信感が、目の前の私たち農家に向けられた。
消費者はこう言った。

あなた方が言うことは信用できない。あの時、あなた方は私たちの子供の命を考えてもいなかった」と。

そのとおりだ。すまない。

5月になってフォールアウトが止んでも、「信じてくれ。今は安全なんだ。風評被害なんだ」と言っても遅かった。

残念だが、私たち農家はなにも学んでいない。
今も同じだ。風の噂も70日。
藪をつついて蛇を出したくない。

「線量を計っていれば、危ないということを宣伝しているようなもんだ」と言う者もいる。
行政さえ同じことを言う。

違う。
私たち農業者は3月と同じ失敗をしてはならない。

震災前にJAは農業を「生命産業」と呼んだ。
そのとおりだ。私たちが消費者の命を預かっているのだ。

万が一にも、私たちが作るもので人を傷つけてはならない。
私たちの頭上に降った放射能という災厄を、私たちを信じて買ってくれる人たちに絶対に手渡してはならない。

自省を込めて言う。今ほど農業と消費者の絆が試されている時はないと。だからそれに私たちも応えようと。

■写真 霞ヶ浦の湖岸から筑波山を望む。ちょっと湖面が荒れ気味です。珍しくモノクロにしてみました。クリックすると大きくなります。

« 政府はこの女性の声を聞け! | トップページ | 現在の空間放射線量だけで、土壌放射線量を測定する必要はないという行政 »

原子力事故」カテゴリの記事

コメント

今日の農業新聞に東急エージェンシーがインターネットを使って調査した結果が囲み記事として掲載されていました。
「日本の復興に貢献するような行動や暮らし」(37.8%)、「なるべく国産のものを買いたい」(34.2%)と上位になったとの事です。濱田様が仰る通り、その期待に応える事がこれまでも、これからも大切です。裏切ったら二度と信用・信頼されないと肝に銘じるべきですね。
私も出荷牛乳の検査をしています。
微妙な反応(出荷可能か不可能かのライン上)も、当然ありますが、「疑わしきは出荷せず」を徹底しています。酪農家にしてみれば、一日分の牛乳を廃棄する訳ですから、損失は莫大なものになりますが、私達の検査結果を受け入れてくれています。

放射線汚染は自己の責任ではありませんが、汚染した可能性のある農産品を出荷する事は自己責任となります。補償や賠償云々は別の話です。
生産者と消費者の信頼が、これからの農業(漁業など)の維持発展につながるものと信じています。

政府や自治体の不作為は酷いもので、結局は農業者が自ら立ち上がり「現状はこうです」「これらは不透明」「これは安心」「でもこれは当分無理」と、誠実なデータを出して消費者の理解と互いの絆を再確認するべきです。一部で暫定基準オーバーを出荷したのは痛恨事でしたね。いくら安全率をみこした値とはいえ。

3月に売れなくて本当に良かったなんて、普通の大人しい農家なんて絶対言えない話です。
自らの意見(誤りも含め)を発信し、消費者と真摯に向き合おうとするブログ主の誠実さと現状。
それこそが、被災地と消費者を繋ぐ胆です。
心打たれました!

農村の良くも悪くも「村社会」では異端でしょうから。
ですが、濱田さんのような正直でかつ「安全性」に拘り続けてきた農家さんの意見こそが、大切な復興への第1歩でしょう。
挫けずに走り続けて下さい。時々はこまめに給水を取りながらね。


話は変わりますが、騒ぎの牛肉の500ベクレル/kgなんて、私個人は毎日馬鹿食いしない限り、全く気になりません。
1キロ肉食って、0.008μSv程度です。
しかも呼吸による肺への取り込みと違い、胃腸からはかなり排泄されます。
絶対の安全は保証できませんが。

食品汚染の心配より、農家の方やホットスポット近くの皆さんは、マスク等で呼吸で微粒子を肺から吸い込まないように注意なさって下さい。


で、今頃になって36万人甲状腺追跡調査とか…まさに泥縄式ですな。
甲状腺癌=ヨウ素被曝
3月に政府(厚生労働省)は何をやってたんでしょう。

しかしながらこれらの事は全て政府が悪いと自分としては思っています。政府はさっさと出荷を停止してちゃんと保証すると宣言をして早急に具体案を発表すべきだった。
政府の他人に責任押し付けて自分達は知らないみたいな政府発表や一点2点・・・全く違う発表。
これらの事に自分達(農家など)や国民が信用できないと混乱するのは当たり前だ。
幸い自分達のところは茨城としても全くとはいえないが関東ではほぼ被害ない状態の所だった。調査結果は3月15日くらいにはネット公表をしています。それでももろに風評被害を受けました。実害が全くないのでこれは風評被害でしょう。
ご存知の通り「茨城産だから」と言う事で出荷した箱すら返却されてきました。
もちろん価格は大暴落・・・出荷拒否もありました。これらは一切政府や東電から保証は確約されていません。実際は出荷制限もされてなければ停止もされてないからです。自主規制は保障の対象外だからです。多分保障なんてされないでしょう・・・。
確かに私達農家は生命産業なのかもしれません。しかしながら商売というものはお金を得て始めて次の作業に取りかかれるのです。
自ら何かをやって罰を受けるなら納得するでしょう。しかしながら原子力災害に関しては電力会社やお金まみれの官僚や政府のせいです。

私には今の政府が国民を使って人体実験をしているようにしか思えません。
やる事やる事が間に合ってないというかやる気すら感じないからです。

連投で申し訳ありません。
農家にも色々います。立場はほとんど一般の方と同じでしょう。ローンなどを抱えている人なら分かるでしょうが・・・・収入がいきなり無くなってしまったら?いくら一生懸命働こうがお金は入ってこない状態になってしまったら?
サラリーマンなら失業保険が一年近くでるでしょう・・。それで準備ができます。しかしながら農家ですと共済保険に入っていてもほとんど出ないのが現実です。
そうなった人間の末路は皆さんがご存知でしょう・・・。そうです「自殺」または「夜逃げ」です。意外と農家というものはお金がかかります。ハウスを最初から立てようと思えば100万-数千万かかります。ある程度出費より収入が勝る状態にするには数百万以上はかかるでしょう。
企業(農家もいわば一企業)として安全で美味しい物を出荷するのは当たり前ですが
実際は現実と理想というどこかの総理に聞かせたい現実があります。つまり理想には近づけるけどどこかで妥協しなければ生きていけません。
実際台風でハウスを立てて、出荷できるようになり「よーし!出荷するぞぉー!」となった時に台風によってハウスごと壊されて・・借金のかえせる予定が全くなくなって一家心中という結果になった人も身近にいるので知っています。農家は常に危険を背中に背負っています。
しかしそれらは自然災害によって起きた事です。それは農家にとって運に左右されるどうしようもない事と諦めがつきます。
しかしながら原子力災害に関しては相手がいます。その相手がのらりくらりと責任のがれをしている状態では・・・先が見えません。
全ての人が立派であれというのはやはり現実ではないような気がします。
今の政府にも言える事ですがもはや理想は望みません。だから現実との境界線をはっきりと決めて最大限出来る事をして欲しいものです。

こうして声をあげてくださる生産者様に感謝です。

全ての生産者さんに知識と情報を持って頂きたいです。

一部の生産者さんが基準値超えと知って出荷などもあります。
そのニュースだけで、その産地のもの全てが敬遠されてしまいます。
畜農家の皆様には、放射性物質検査の有無や対策をしている事を消費者へ知らせて欲しいです。

ちなみに主様の卵はどこで手に入りますか?

パル様ありがとうございます。私の平飼卵は「大地を守る会」(千葉県)で買うことが出来ます。ただし、もうしわけないのですが、生産者指定ができるかどうかわかりません。

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 私たち農業者は3月と同じ失敗をしてはならない:

« 政府はこの女性の声を聞け! | トップページ | 現在の空間放射線量だけで、土壌放射線量を測定する必要はないという行政 »