続・セシウム除去Q&A セシウムは封じ込めることが現実的。除染作物は困難なことがわかってきた
A1 2ツの経路があります。
➊空気中からフォールアウトして、葉などに吸着し、そこから植物の中に侵入します。葉面吸収といいます。
➋一度土壌に降下した後に根から吸収されます。経根吸収といいます。
Q2 土の性質によってセシウムの吸収に差がありますか?
A2 あります。土壌の粘土質(コロイド)と強く結着することが知られています。一方、セシウムは水に溶けやすい性質(水溶性)が特徴なので、粘土質にくっつかなかったセシウムは、時間がたつと急速に減少してしまいます。
Q3 ゼオライトという資材がセシウムを吸うというのはほんとうですか?
A3 ほんとうです。他にベントナイトという粘土質の資材も同様な結着効果があります。ただし、誤解してほしくないのですが、あくまでもゼオライトはセシウムを結着させて、土の中で動かなくしてしまう働きをするだけで、なくなしてしまうわけではありません。
Q4 というと、セシウムはゼオライトで「なくなる」わけではないのですね。
A4 もの足りないかもしれませんが、そうです。ゼオライトは、土の中の団粒構造から離れて悪さをするた遊離セシウムをくわつけてしまい、植物の中に侵入することを阻止するのです。
Q5 では、ゼオライトを入れても、放射線量は減らないのですか?がっかりだなぁ
A5 こんなていどでがっかりしないで下さい(笑)。確かに「なくす」ことはできませんが、植物に吸収されなくするというだけで、農業にとっては充分ではありませんか。このように粘土質に結着させて動かなくすることを、「放射性物質の封じ込め効果」とも言います。
Q6 先ほどセシウムは水溶性だと聞きましたが、植物が水分と一緒に吸収してしまうのではありませんか?
A6 あるていどはします。また水に溶けて沈降して行くことも理屈の上ではありえます。しかし、現在福島県などで調査が進んでいますが、まったく人が手を加えていない土地において、5カ月間たっても表土5㎝ていどでしっかりと止まっていることが確認されています。セシウムはあんがい頑固に表土にへばりついているものなのです。
Q7 学校の校庭の土を水を加えて洗浄している風景を見ましたが、農業で可能でしょうか。
A7 現実的ではありません。小面積なら水を加えて清浄し、水に溶けたセシウムを分離固着する方法も可能ですが、大面積でやるとなると、あなたがものすごく暇なら試して見てください。また手間だけではなく、その分離した後のセシウムの棄て場所の問題もあります。
Q8 セシウムの除染に菜種やひまわりが有効だと聞いたのですが。
A8 菜種やヒマワリを使って、植物に吸わせる除染実験が各所で行われていますが、中間報告では、現在のところ残念ながら、あまりかんばしいものではありません。
➊思ったよりセシウムを吸わない。植物の体内でセシウムは移動して、種子に移行すると思われていたのですが、植物は茎と葉だけで70%以上を吸収してしまい、種子に移行するのはごくわずかだと分かりました。種子は厳重にブロックされているのですね。
米の場合、稲藁に全体の73%、白米に7%、ぬかに10%、もみ殻に7%、根に3%が移行することがわかっています。(畜産草地研究所)
➋収穫した後に除染植物は根から引き抜いて集めます。しかし、現実にやってみると、ひまわりは大きな植物なので、大変にかさばって集めた後、小山のようになったひまわりの処分に大変手間取りました。
➌処分方法に決定打がない。除染作物を乾燥させて切断するか、あるいは発酵をかけて収縮させる、あるいは燃やすという方法がありますが、いずれも大変な作業でした。
➍燃やした場合、煙に出るセシウムより灰に残るセシウムのほうが圧倒的に多いことが分かりました。
➎灰は飛散するので処理が大変でした。結局、ガラス質に封じ込めるといったコストがかかる方法しかありませんでした。
❻最終処分所は現在のところありません。行政も引き取りません。したがって農業者がやる場合、自分の敷地内に穴を掘って投棄し、鉄板をかぶせるような方法しかありません。
(続く)
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コメント
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まず、灌漑用水の田んぼへの引き込み口で、ゼオライトで、吸着してほしい。理由は、汚染された山林から、長期に渡って、盆地状の耕作地に、セシウムが、集まるからと、田んぼなど、広い面積が汚染される前に吸着してほしいから。
2番目は、まずは、フォールアウトしたセシウムが多くを占めるので、出来るだけ早めに、たとえ数センチでも、表土を削って、どこかに、仮置きをしてほしいこと。セシウムは、ゼロにはならないが、農業者の呼吸器被爆が減らせる。
そして、汚染濃度の高い地域以外は、農作物の可食部への残存は、思ったより低いのではないか?と言う事を、測定して、公表してほしいことです。
高濃度汚染土壌対策と低濃度汚染土壌対策と分けて、具体的行動を、決めてほしいことです。
また、仮置き土壌の防護法の具体案を決めてほしいですね。いわゆるブルーシートは、日光に弱く、すぐ駄目になってしまうので、まだ、農業用のシートで、ましなものがあるように思えます。最低、地下浸透と、雨天時のオーバーフローを避ける簡易保管方法を、決めてほしいものです。
あくまで、植物に吸収させるのは、副次的方法に思われます。効率が良かった話は、あまり聞かないので、土そのものを、移動するのが、当面、フォールアウトしたセシウムには、有効のように感じます。
投稿: りぼん。 | 2011年8月18日 (木) 09時59分
真夏ですからプールの水を抜いて清掃作業して子供たちのために使いたいけれども、排水すると近所の田畑の用水路に流れてしまうのでどうしてもできない!という福島の学校がテレビで紹介されていました。
全くもって放射性物質とは厄介なものです。
それこそ、排水路にゼオライトやベントナイトの簡単なフィルターを設置できないものかと思いました。
投稿: 山形 | 2011年8月18日 (木) 13時45分
はじめまして 千葉県在住の者です。
うちは赤ちゃんがいるので気になり、自宅の庭の土壌を調べたところ、1062Bq/kgという値が出てしまい、除染方法を模索しているところです。一部表土をはいでみたのですが、たくさんの土壌が出ました。(農地では現実的ではないと改めて痛感。)かといって今日のブログを読むと植物を植えての持ち出しも効果が低そうで、こんな処分に困るゴミをまき散らかした東電に改めて怒りを感じました。
さて、土質と農作物への移行の関連が気になったので調べていたら、このような映像を見つけました。
http://www.youtube.com/watch?v=a7YLcLqLg7c
チェルノブイリの低濃度汚染地域においても
泥炭でセシウムを吸着しにくい土壌から
牧草→牛乳に移行し、人体中に高濃度汚染地域と
変わらない被ばくを引き起こすことを示す映像です。
(「終わりなき人体汚染~チェルノブイリ原発事故から10年~」NHKの最後のパートの映像のようです。)
また、この論文でもポレーシェ地方の移行係数が高いことが、中段にさらっと書かれています。
チェルノブイリ事故による内部被曝と防護対策の有効性
http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/NSRG/Chernobyl/JHT/JHT9511.html
泥炭は私は千葉県では見たことがないのですが、
(北海道の石狩平野などの土壌ではあると聞いたことがあります)園芸店でピートモスとして売られているのと同一のものです。
ピートモスは酸性の資材で、ブルーベリーを栽培する時に土壌改良資材としてよく使われるので、ブルーベリーの放射性物質の吸収量の多さも納得がいきます。(となるとpHも関係してくるのでしょうか?)
粘土質の土壌だと植物への移行は少なく、空中への飛散も少なくなるのかなと思います。
福島の試験場で土質による植物への移行の試験を行っているとの情報をこちらの掲示板で教えてもらったので、興味深く見守っていこうと思います。
投稿: ろこ | 2011年8月18日 (木) 15時48分
セシウムについて知りたいことがたくさん載っていました。頼もしい農家のあんちゃんです。実践しているところが知識だけをひけらかしている研究所のくされとは違う。これから毎日訪れてみたい。
投稿: fukuko | 2011年8月18日 (木) 16時44分
農文協のルーラル電子図書館コラム「環境保全型農業レポート」No.179からNo.182に土壌とセシウムについて参考になることが色々と書かれています。ここは通常、会員でないと閲覧できないのですが、このレポートは非会員でも閲覧できるようです。
http://lib.ruralnet.or.jp/libnews/nishio/
除染が難しければ封じ込め、封じ込めても農作業中に土ぼこりを吸えば内部被曝の危険、農作業にマスクが必須になるのか。
冬場の強風土ぼこり対策で緑肥、麦栽培が当たり前になるのか。
自分も含め農家の農業に対する姿勢が問われているような気がします。
投稿: 下請です | 2011年8月18日 (木) 19時25分
はじめまして。北浦向かいの元大野村在住です。今日身近にここまで冷静に、論理的に、書かれている文を見て即お気に入り設定させていただきました。
盆に帰省し、本家の跡取りがいないので百姓継がないか白羽の矢が立った外孫1号です。農薬の営業・販売を一時やっていましたので、百姓も何の抵抗もありませんが、実際に旧大野で百姓ができるのか、出来る土壌なのか悩んでいます。…まだ数日ですが。
鹿嶋市教育委員会のHPに線量表示があり、週一程度に見ていますがこの線量(0,1~0,3程度)でビビったら福島の方々に失礼なチキン野郎だと思いますし、でも実際に作付する場合、専業で食っていけるのか不安もあります。
こちらを今後毎日拝見し、(時間が取れ次第過去の記事も!)勉強させていただきたく存じます。よろしくお願い致します。
投稿: 外孫1号 | 2011年8月18日 (木) 20時55分
ろこ 様
泥炭土は北海道の十勝川流域(河口付近)に広く分布しています。
石狩平野は分かりませんが、暗渠排水を行うと結構農作物の収量は多いです。
かすかな希望を持っていた植物による除染が非現実的となると、厄介ですね。封じ込めと言っても中々私の頭では思いつきません。自分の畑や土地に愛着を持つ事が人一倍強い農業者ですから、集団移住なんて難しいでしょうし、福島県及び近隣県の農業者を移住できる土地の確保も現実的には困難でしょう。
うーん答えが見つからない・・・・・
作った農作物を買ってくれる、食べてくれるか否かより、農業者の被ばくによる影響が心配です。
投稿: 北海道 | 2011年8月18日 (木) 21時06分
「土壌のセシウム除去、水洗いとふるい分けで効率的に」という記事がありました。
http://www.asahi.com/special/10005/OSK201108160253.html
農地など粘土が多い土からはセシウムを取り除くのは難しいようですが、公園や住宅地の表層、砂場、砂浜などの粘土が少ない土では効果的みたいです。
投稿: 南の島 | 2011年8月18日 (木) 21時58分
セシウムやストロンチウムを除去するのに有効な微生物が存在するらしく、非公式な実験結果とその微生物のサンプルを入手したのですが、どのような機関にどんな形で持ち込めば、公的な臨床実験を施して頂けるのでしょうか?
投稿: 桑島裕 | 2011年10月16日 (日) 19時13分