福島県はベラルーシ方式をとるべきだ
ようやく、ほんとうにようやく、除染が予算化されました。実に震災-原発事故から5か月後のことです。
政府・与党は「日本農業新聞」(8月16日)によれば、「福島第1原発により放射性物質に汚染された土壌や瓦礫の汚染の処理法を定める特別措置法案の骨子を固めた」そうです。
「汚染が著しい地域を特別地域に指定し、国の責任で除染作業をすると明記」されています。
「がれきに関しては、汚染廃棄物対策地域を指定し、国が廃棄物の収拾、運搬、保管、処分を行うとした」そうです。
言ってもせんないことかと思いつつ、やはり言わないわけにはいかないでしょう。
遅い!遅すぎる!
5か月も立った今、ようやく政府が本腰を入れようかな、どうしようかな~、とりあえず政府提出立法ではなく議員立法で特措法を作ってみました、というところです。
政権末期になって、次の政権にやらせようという魂胆のようで、毎度のことながら、いい根性しています(笑)。
結局なんにもしない、なんにも出来ないということで、無為に貴重な初動の5カ月間が過ぎたということです。
この貴重な初動5カ月間に真っ先に取り組むべき課題のひとつが、除染とその元となる土壌の線量測定でした。これを民主党政権は完全にサボタージュしました。
結果、どうなったでしょうか?、未だ福島県や周辺の県の「薪の灰ひとひらでも怖い」という東日本全体を危険視する風潮が、国民の中に生まれました。
また、「瓦礫のひとかけらから汚染が拡がる」という瓦礫ボイコット運動が盛んになってしまいました。
これは東日本の農産物といった従来の狭い枠ではなく、東日本地域全体を「汚染地域」として色眼鏡で見るところまで成長しました。
先だっての私の送り火事件の記事に対して、「東日本はもうおしまいでも、西日本は無事でいてほしい」、「拒否を批判するなら義援金を返せ」という論評不可能な書き込みがなされるような始末です。
瓦礫にしてもそうです。ある福島県の近隣県では、「放射能汚染の拡大」を恐れて、搬入拒否運動が拡がっています。
ここまで問題をこじらせて、今になって、政権があと1週間もないという時期になって、除染をすると言うのですから、与党議員諸氏の頭の上からバケツで冷却水をかけてやりたい気分です。
この「被爆地」の土壌線量の測定と除染は4月から始めるべきでした。
ここで正確な測定数値が出れば、早川マップ(*群馬大早川教授の出した汚染マップ)も必要なかったし、週刊誌が各誌競争のようにして、面白おかしくホットスポット探しをする流行を生み出すことも、西日本が必要以上に東日本を怖がる風潮ができることもなかったのです。
土壌線量測定などそんなに大変なことではありません。私のような素人でも簡単に出来ます。
ベータスペクトロメータという器材があれば迅速に計れるものです。こんな器材を市町村自治体に5、6台ていど供与すればいいのです。計測自体は自治体職員がやればいいだけの話です。
そもそもこんなことは、議員立法だなんだと言う前に、県と相談して官僚がさっさとやればよかったのです。
しかし、あの悪名高き「政治主導」とやらで、官僚の中に「余計なことをすると怒られる。判断を仰ぐと判断しない」というヒラメ的空気が生まれていました。
霞が関の蛍光灯の下から出るのがイヤなら、せめて予算を農水省、厚労省、文科省、環境省など関係各省が協力して緊急予算をぶん獲ってくればよかったのです。
国は測定方法の基準だけ決めても、自分はなにもしませんでした。
ビタ一文予算も付けないし、官庁に問い合わせれば、「民よ、モニタリング・ポストを見ればいい。それでも心配なら、自分でガイガーカウンターでも買って、勝手に計れ」とのダルなご託宣が返って来る始末でした。(←実話です)
結局、国に見放された国民は不安の中で5カ月間を生きなければなりませんでした。
自分が生きている土地がどのていど汚染されているのか、自分の街や学校の庭にホットスポットはあるのか、食物に微量の放射性物質が入っているのか・・・、と。
そしてある主婦は、庭を自前で買ったガイガーカウンターで測り、その数値に恐怖し、庭の樹を切り、芝生をはぎ、ミネラルウォーターで炊飯するようになりました。
食はすべて西日本のものか、輸入食料です。・・・そして子供の疎開が始まりました。
これは特にすごい例ではありませんよ。今やこれが、東日本全体を覆っている「不安の雲」なのです。
この「不安の雲」を取り除くには、ふたつしか方法はありません。調べることと除染することです。ここにベラルーシという手本があります。
チェルノブイリ事故で大きな汚染を被ったベラルーシでは、各街の小学校に簡易食材の検査装置があります。主婦は空き時間に小学校に行って短時間で計測を済まして、夕食を作ります。
また、小学校の保健室には簡易ホールボディカウンターまであり、子供の線量を定期的に計測して、異常はないかを確認しています。
土壌測定も綿密に定期的に行われています。空中線量などはモニタリングポストが街の各所にあります。
ベラルーシの国家予算など、おそらくはわが国の千分の1のケタです。そのような小さな国すらこれだけのことをしているのです。
恥ずかしくないのでしょうか?
私は、福島県では早急にベラルーシのレベルの放射線防護のための保健施設を作るべきだと思います。
とりあえず、福島が優先順位第一位です。その後に徐々に東北各県、茨城、千葉、栃木、東京東部に拡げていけばいいのです。
たとえば、今、福島県下でベラルーシ方式でやるべきなのはこんなことです。緊急時避難地域だけでお茶を濁すなんてバカなことを行っている場合ではありません。
➊ヘリ測定ではない、土壌放射線量の徹底計測。
➋除染の方法と除染基準作り。
➌各自治体による除染活動。
➍小学校への食材放射線量計測器の導入。
➎小学校への簡易型ホールボディカウンターの設置。
❻空間線量測定のモニタリング・ポストを学区単位で導入する。
❼一部線量が大きな学校児童の疎開。
こんなていどのことは、民主党の政党助成金ていどの金があれば可能です。
後世、福島方式と言われるような、しっかりとして被爆地支援方式を、政府は作ってほしいと思います。
■写真 ブルーセイジに急接近するミツバチ。あんがい後ろから見ることは珍しいでしょう。
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■国の責任で除染=地域指定し放射能対策
時事通信 8月15日
福島第1原発事故で放射能に汚染された土地の除染やがれきなど廃棄物の処理に関する特別措置法の整備に向け、政府と民主、自民、公明3党がまとめた案が15日、明らかになった。汚染が著しい地域を環境相が「特別地域」に指定し、国の責任で除染計画を策定、実施する。
特措法に関しては、民主党が今月に入って骨子案を作り、その後、政府と民主、自民、公明3党の枠組みで協議を進めている。政府・民主党としては、今国会での法案成立を目指し、詰めの調整を急ぐ方針だ。
政府と3党の案によれば、「特別地域」から外れた地区の除染については、都道府県知事が定める実施計画に基づき、市町村などが実施する。
がれき処理をめぐっては、汚染度の高い廃棄物が集積する地区を「汚染廃棄物対策地域」に指定。同地域内では、国が廃棄物の収集、運搬、保管、処分に責任を負う。また、同地域外であっても、一定の基準を超える汚染が確認された廃棄物は「特定廃棄物」とし、国が処理に当たる。
このほか、国は、地方自治体による放射能汚染対策に必要な「財政上の措置」を講じるとし、財政面で国が自治体を支えることとした。
■放射性物質:高濃度土壌、国が除染…3党が特措法案提案へ
2011年8月16日 2時34分
民主、自民、公明3党などが、東京電力福島第1原発事故による放射性物質で汚染された
がれきや土壌の処理に向けてまとめた特別措置法案の骨子案が15日、判明した。
土壌汚染が著しい地域を「特別地域」に指定し、国が除染を行う。
議員立法で各党が賛成する「委員長提案」として提案し、26日の参院本会議での成立を目指す。
民主党が3日にまとめた原案では特措法に基づく処理費用を東電に「請求するのを妨げない」としていたが、
骨子案では原子力損害賠償法に基づき東電の「負担の下に実施する」と明記、東電により厳しい内容になった。
「特別地域」は原発から20キロ圏内で立ち入りが禁止される「警戒区域」を想定しており、環境相が指定。
特別地域以外でも土壌汚染が基準を超えれば「汚染状況重点調査地域」に指定し、
」自治体が除染を行う。民主党の原案では原則自治体が行うとしていたが、被災自治体に配慮した。
がれきなどの廃棄物が「特別の管理が必要な程度に汚染されているおそれがある」地域は、
環境相が「汚染廃棄物対策地域」に指定し、国が処理する。
◇除染◇
放射性物質を汚染場所から除去し、放射線量を下げる作業。拡散させないよう、
土壌の表面をはぎとったり汚染された植物を刈り取ったりする。高い線量が確認された建物は、根や壁、雨どい、窓などを水などで洗う。福島県南相馬市災害対策本部のマニュアルでは、
除去した土などは原則として発生敷地内に一時保管し、後に最終処分場へ移動するとしている。
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農水省、文科省、厚労省は地産地消(学校給食含む)をとりあえずは掲げています。
現状では、東日本では地産地消が現状のサンプル検査では不安、心配、危険というように思っている人が多いのではないでしょうか。特に小さなお子さんをお持ちの親御さんで。相馬、南相馬では給食に地元食材を使えないとの話もあるようです。
地産地消推進、農業の6次産業化(交付金、補助金)、子供手当ての予算で測定器購入できるようにならないものでしょうか。
また、腐葉土、堆肥の汚染問題も間便に測定できる体制を構築しないと、土作りができず、農地がやせていき、地域の資源循環に支障をきたすのではないでしょうか。
測定器の導入は、これこそ「政治主導」ですぐにでもやるべきで、今年度予算の付け替え、3次補正、来年度の概算請求に盛り込むべきで、今の政府、国会に日本の食を守る気があるのかどうか甚だ疑問です。
投稿: 下請です | 2011年8月16日 (火) 11時17分
まさにおっしゃるとおりです。各省ともその気にさえなれば、新たに新法まで作らなくても使える既存の予算枠がいくらでもあるはずです。
官僚はそれをやらない。知恵を使わない。現実を見ない。現場に行かない。
農業団体も補償しか言わない。「農業新聞」も補償しか書かない。
政治家はなにもしない。構想力も実行力もない。
これだけないない尽くしなら、私たちが自分で動くしかないですよ。
投稿: 管理人 | 2011年8月16日 (火) 11時55分
以前、ニュース番組の特集で、チェルノブイリ近郊の様子が放送されていました。
小さな村の市場の様子でしたが、そこのは放射線測定機がちゃんと備えられていて、市場にモノを売りに来た人々が、しっかり放射能の測定をして安全なモノしか売っていませんでした。それこそ、野菜から花まで、その市場で売られるモノ全てが測定されていました。
そう言った地道な努力をするしか、今のところは安全を担保する手段がないと思います。
日本でも、そのように当たり前に放射能の影響を自分の目で確かめられる状況になれば、この馬鹿馬鹿しい放射能バッシングが終わるかもしれません。
でも、1Bqでも嫌な人たちには、どんなモノも拒否の対象なのでしょうね。
話は違いますが、今朝のニュースで、京都に拒否された薪を千葉の成田山新勝寺が使いたいとの打診があった事がでていました。やはり住民の反応は賛成反対が五分五分だそうです。
投稿: 一宮崎人 | 2011年8月16日 (火) 11時55分
テレビ各局が、お盆の帰省渋滞状況を放送している中で、放射線不安を訴えるコメントが数多くありました。福島県の関係者以外でも話されていました。
この様な報道を見ると、土穣の細かな測定とそれに伴う除染、農林水産物の検査と公表が、全ての基本になる事が改めて知らされました。
当然水素爆発後、現地に住んでいた人及び土壌から検出された地域で生活していた人々、様々な作業をされた人々、特に子供たちを含め、全ての人の体内被曝の検査を継続して行って行く事が必要だと思っています。
責任は東電にあると言っても、東電が今すぐにどうこうできる体制に無い事は容易に分かる事であり、国が責任をもって速やかに行う事が求められています。
首相交代がマスコミを賑していますが、今更ながら議員のレベルの低さと、自身の事だけしか考えない人たちを見ていると、何故こんな人たちの口車に乗って国民が政権交代をさせてしまったのか・・と感じます。
今言っても仕方がないのは重々承知していますが、ぼやきたくなります。
無党派層が増えるのも頷けますが、無党派=無責任であってはならないと思います。
同僚が7月下旬松島に所用の為行って来ました。その時の報告では、仙台空港からレンタカーで松島に向かう途中、道路の両側には何も無く、うず高く積み重ねられた「被災車両」が延々と続いていた。ホテルも自衛隊や警察、復興作業の関係者で満室の状態だったとの話でした。
現地では復旧復興の途についただけ・・・と言う状況の様です。
まだまだ全国民での支援を継続して行かないと・・・と改めて思った次第です。
松明や薪でもめている場合ではありません。
投稿: 北海道 | 2011年8月16日 (火) 12時12分
なんというか、本当に「遅い!遅すぎる!」ですが、ようやく国の責任を明確にしたのは小さな前進。
お題目だけの「政治主導」が、どれだけ停滞を招き被災者救援の足枷となったのか。
霞ヶ関の官僚主導には長年の弊害や無駄なセクショナリズムなど問題は多くあったでしょう。
しかし、このような未曾有の大災害に於て菅政権はあくまで「政治主導」のお題目と反小沢内ゲバに拘り、情報隠蔽に内閣不和と学級崩壊政権に陥りました。
元々危機管理能力などなかったのです。我が国のリーダーたりえない力量。
そして、誰も望まない花道を自分で作って自己満足の誇りを胸に、問題は後継者に押し付けて退場ですか。
麻生総理が所信証明演説で「官僚はうまく使え」と当たり前のことを言ったら、マスゴミはフルボッコでしたね。
ホテルのバーで談笑とか。(別に何の問題も無かろう)菅になっても高級店ハシゴしてるんだけど、特には報じない。
あの池上彰さんの番組でも、雛壇芸人にボロクソ言わせてキャンペーン張ってましたね。
ポスト菅のメンバーが、また迫力無いですが、誰がやっても菅の尻拭い政権になるのは辛かろう…。
さらに世界的金融危機やらTPP、巨額債務。どうやってこの難局を乗り切るのか、乗り切れるのか。
大連立が成立なるのか?
また政治圧力でドタバタ劇が続くのか?
注視しています。
去り行く菅さん。
「なんとかお盆までには」と言っていた仮設住宅、8割程度でしたね。
なかなか頑張った数字とも取れますが、足りていないのは明確です。また、仮設とはいえあまりに杜撰な工事や、雨漏り・通気や断熱不良・エアコンあっても電気代が嵩んで使えないなど、課題は山積しています。誰に責任を取らせるんでしょう。菅さんは逃げ切りモードでしょうが。
すみません。今日は完成に民主政権批判モードになってしまいました。
投稿: 山形 | 2011年8月16日 (火) 13時09分