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セシウムの半減期は、現実に自然界で計ってみないとわからない

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先日来の酷暑が一転して清々しい朝です。いやぁ、すごい雷雨でしたね。被害を受けられた方には申し訳ありませんが、有り難い。もう日照りで干からびていましたから。

しっとりと水を含んだ朝の土は、森の香りがします。百姓をやっていてよかったと思える一瞬です。

野原に出て写真を撮ってきました。月見草が雨露を含んで輝いています。こいつらも時ならぬ雨で喜んでいるようです。

しかし、また予報では今日も酷暑。いいかげんにしてほしいね、まったく。朝方には地震もありました。福島が心配です。

さて、この豪雨でセシウムはどこに行くのかな、とぼんやりと考えてしまう我が身のつらさよ(笑)。

放射性セシウムは、フォールアウト(放射性降下)してくると、まず屋根や庭に付着します。ヨウ素のほうは、フォールアウト初期の8日間ていどで消滅しますから、以後はセシウムが主体となります。

ただし、セシウムの他には、テルル、テクネチウム、ランタンなどの核種が降下しています。
(日本国際問題研究所 軍縮不拡散促進センター「高崎に設置されたCTBT放射性核種探知観測所における放射性核種探知状況」8月1日時点)
http://www.cpdnp.jp/pdf/110808Takasaki_report_Aug1.pdf

ようやくですが、茨城県がヘリによる空中からの放射性物質の散布図、俗に言う「汚染マップ」(聞こえが悪いね)作りを始めるようです。

コメの収穫に先行して、消費者や農家の不安を和らげたいという政治的配慮のようです。

結構なことです。ただし、やるなら4月下旬の田植え前に一回やっていたら、稲刈り時にどのような推移があるのかわかったろうと思いますが。ま、いいか。

何度となく私は言っているのですが、文科省や県の空中からの測定は大雑把なものでしかありません。

早川マップ(*群馬大早川教授の作った飛散図・何回も本ブログで紹介しているので見てね)より詳細にしたていどのものだと思っています。

もちろん、思わない場所にホットスポットを発見する可能性があるので、大いに参考になります。

しかし最終的には、私たちが地ベタを歩いて計って行かねばならないでしょうね。

チェルノブイリでも86年の爆発時から、セシウムは翌年、翌々年と減少を続けていくことがわかっています。

これは除染の有無にかかわらずの減少です。

モノの本にはセシウムの物理的半減期は30年と書いてありますが、実際にチェルノブイリではそれよりはるかに早いスピードで減少しています。

その理由は、おそらくは実験室の数値である物理的半減期とは違って、現実の減少はさまざまな自然界の要素によって左右されるからです。

たとえば、昨夜のような土砂降りの雨が降ります。おそらく、屋根の上や舗装された道路、コンクリートの瓦礫表面などからは洗い流されるはずです。セシウムは軽い物質で、おまけに水に溶けますから。

洗い流された結果、樋の下や、樹木の下にいったん溜まり、流れ流れて下水溝から下水の処理施設の汚泥に集積します。

別なルートは、植物が吸い上げることです。植物は生育中に栄養素の一種のカリウムと間違えてセシウムを吸い込みます。同族元素だからです。

この植物が吸い込んでしまったセシウムは、生物半減期というものがあって減り続けます。だいたい生物的半減期は100日です。

コメのセシウムが話題になっていますが、100日弱田んぼにいますので、そのあたりがどうなっているのか知りたいところです。

いずれにせよ、コメは茎、葉が吸い上げて、実であるコメ粒に移行するのですが、米ぬかとなる胚の部分により多く残留します。

農水省の土壌からの移行率は10分の1ですが(*他の移行率数値もあります)、現実には5分の1を切ると思いますが、これも今年計ってみねば結論めいたことは言えません。

今年はぜひ、葉、茎、根に分けて測定し、さらに玄米と精米の比較もしたいものです。

あともうひとつのルートは、下水系に流れ込まないセシウムの行方です。これは水系の構造によって異なりますが、おおよそ里山・山地⇒水田⇒農水路⇒小川⇒河川⇒湖・海となります。

セシウムは水に溶けますから、この過程でどれだけ希釈されていくのかが分かればいいな、と思っています。

セシウム希釈の過程で、植物プランクトン⇒動物プランクトン⇒小型魚類・幼虫⇒捕食生物(魚類、昆虫・両生類・鳥類など)という食物連鎖の中で、昨今言われるような放射性物質の食物連鎖と生体濃縮が起きているのか、いないのかも知りたいところです。

これらは空中からの測定ではわかりません。地道にひとつひとつ計測するしかないのです。(欲しいよぉ、ガンマ・スペクトルメータ!)

いずれにせよ、さまざまなルートを通じてセシウムは、30年を待たずして急激に減少するはずです。

ただしその過程で二次汚染が生じるかどうか、どのような新たな希釈ルートが出来ているのかなど、まだまだ未知です。

報道関係のかたへ。
一部報道関係者が、私たちが企画している測定会の取材を茨城大学の教員に対して行っています。今回のこの企画は、有志の教員の皆さんとの企画であり、大学当局は関知していません。まだメンバーも日程も決定されていない状況です。

このような段階での大学、あるいは教員への取材は混乱の原因となりますのでお止めください。取材を希望される場合は、必ず事務局である濱田を通して下さい。よろしくご配慮のほどをお願いします。

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原子力事故」カテゴリの記事

コメント

お忙しい中の更新お疲れ様です。

チェルノブイリについて調べるほど、セシウム137は植物による吸収が多くを占めていることが推察されますね。
事故後10000日近くまで数値が上がり続けて、ようやく上げ止まった感じです。

これは、残念ながらヒマワリ作戦や菜の花作戦にもマイナスの影響を与えるかもしれません。

投稿: 山形 | 2011年8月12日 (金) 08時09分

今後このような事故が起きて欲しくはないし、考えたくもありません。
しかし、発生してしまった以上、詳細な調査や研究を行い、今後に向けての対策に役に立つようにして欲しいと思います。

稼働中か停止中かは別として多くの原発が存在している事実があり、いつ・どこで同じ様な事が起こるか誰にも分からないのですから・・・

どこかの研究所か何かが動いてはいると思いますが、
尊い犠牲を無駄にして欲しくは無いと思います。

投稿: 北海道 | 2011年8月12日 (金) 11時55分

山形様。セシウム137だけ上がり続けるというのは理論的にはかんがえにくいですよね~。第一、放射性物質の放出が終了すれば、下がっていくわけで、なぜ上がり続けるのでしょう。

間違っているか、謎ですね。

投稿: 管理人 | 2011年8月12日 (金) 14時18分

はじめまして。
農業環境技術研究所の公開データの中に1959年から2006年までの白米・玄米・玄麦・水田作土・畑作土の90Srと137Csの分析データが公開されています。米ソ中仏の原水爆実験の影響を測定したものです。
水田作土中の全137Csの全国平均を見ると、64年の42.7Bq/kgを頂上に80年には23.0Bq/kg、90年には15.5Bq/kg、00年には8.4Bq/kgと下降線を描いてきました。試料中最高値は67年の138Bq/kg。
玄米の137Csに関しては全国平均で63年の11533.7mBq/kgが山で、00年には31.9mBq/kgとの事。
何かの参考になればいいのですが。
では。

投稿: 好実 | 2011年8月12日 (金) 14時18分

好実様。情報提供をありがとうございます。
63年のセシウム11533.7mBq/kgというのはすごいですね!1万bq越えというと、今の避難区域の2万bqに相当しています。
しかも偏西風に乗って全国に降下していますから(日本海側が高いようですが)、ある意味、日本全国「避難区域」だったようなものかもしれません。

私、64年というと12歳だったんで、モロに成長期がこんな時代だったんですね(涙)。

確かこの時には東京にもストロンチウムやプルトニウムまでフォールアウトしていたはずです。

一度この大気圏内(中国は地表)核実験と、日本の放射線量との関係をまとめてみたいと思っています。

投稿: 管理人。 | 2011年8月12日 (金) 14時59分

過去に学ぶのは非常に大事ですね。60年代に、そんなに高い放射性物質が存在していた事を、今、福島原発事故で騒いでいる人達が、どれほど知っているのでしょうか?
正直、我々が大きくなる時には、そんな事に対する情報は全くなく、今考えれば、思う存分、放射性物質に内外被ばくしていた可能性もあるわけで・・・・

晩発性障害も、そろそろ出ても良い頃で・・・

時々、思うのですが、放射性物質に対して、過剰ともとれる反応を示している人達は、そもそもこの日本には、原発事故以前には、放射能と言うものは全く無かったとでも思っているのでしょうか?
そんな事はないとは、思うのですが・・・

ある意味、行き過ぎた潔癖症的なものなのでしょうか?

投稿: 一宮崎人 | 2011年8月12日 (金) 15時38分

連投失礼します。

ちょっと嫌なニュースを見つけました。
ご存じかもしれませんが。

http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2011081200573

投稿: 一宮崎人 | 2011年8月12日 (金) 16時38分

>いずれにせよ、コメは茎、葉が吸い上げて、実であるコメ粒に移行するのですが、米ぬかとなる胚の部分により多く残留します。


汚染レベルが高い糠が家畜の飼料に使われないよう国がしっかり検査・規制をするか心配ですね

これが疎かになると豚肉や鳥肉の方で牛肉と同じように騒動になって農家や流通がまたダメージを受ける事になってしまいます

投稿: aga | 2011年8月12日 (金) 19時35分

好実さんのデータはm(ミリ)ベクレルですので、1万ベクレル/kgではなく10ベクレル/kgって事ですよ>管理人さん

投稿: aga | 2011年8月12日 (金) 19時39分

好実さま、情報ありがとうございます。

私、64年というと幼稚園6歳でした。一家全員ごはん大好きで年寄り含め7人で年間12~13俵を毎年食っています。

農業環境技術研究所の公開データを確認してみました。
http://www.niaes.affrc.go.jp/sinfo/publish/niaesnews/086/news08608.pdf
http://www.niaes.affrc.go.jp/sinfo/publish/niaesnews/086/news08608.pdf

上の文書を精読したところ、mBq/kgはメガBq/kgではなく、ミリBq/kgではないでしょうか。
セシウム11533.7mBq/kg=セシウム11.5337Bq/kg≒12Bq/kg
これなら少し安心です。

間違っていたら、素直にゴメンナサイします。

今年は管理人さんのところより、南西方面で飼料米(エサ米)を32ha超(約150t)契約していますので、豚に食わせて良いのか、もみ殻は使えるのか、心臓ドキドキバクバクです。

投稿: 下請です | 2011年8月12日 (金) 19時50分

>今年はぜひ、葉、茎、根に分けて測定し、さらに玄米と精米の比較もしたいものです。

これは、物凄く大切な視点です。全国の農業関係者が共有すべきです。


稲のセシウム 白米への移行わずか 分散割合を発表 畜産草地研究所  (08月04日)

 稲の放射性セシウムの分布割合はわらに73%、白米に7%――。農研機構・畜産草地研究所の松本光人所長は3日、食の安全・安心財団が東京都内で開いた意見交換会で、稲の部位別のセシウム分布割合を発表した。松本所長は「白米で規制値を下回っても、稲わらなどの家畜給与にはモニタリングで注視する必要がある」と述べた。

 松本所長は外部機関の過去の研究結果を基に、稲を「わら」「白米」「ぬか」「もみ殻」「根」に分け、各部位が稲全体に占める乾燥重量割合とセシウムの分布割合を紹介した。

 セシウムは、稲わら部分に全体の73%、白米に7%、ぬかに10%、もみ殻に7%、根に3%が分布すると説明。松本所長は、白米のセシウム濃度が玄米の半分以下になる可能性も指摘した。


稲は人間が食べる部分以外も有効利用しています。この視点をおろそかにしたら、絶対に「予想外」の事態が待ち受けています。

投稿: 南の島 | 2011年8月12日 (金) 21時06分

セシウムは水に溶けやすいのに、地下に浸透しない。

これは、とても矛盾する事象に思えますが・・・・

一宮崎人 様のhttp://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2011081200
日本土壌肥料学会の放射性セシウムに関する一般の方むけのQ&Aによる解説
http://jssspn.jp/info/secretariat/4137.html
それから、日本農業新聞の記事
放射性物質の作物移行係数 条件ごとに算出を 日本土壌肥料学会シンポ (08月11日)
 日本土壌肥料学会は10日、茨城県つくば市でシンポジウム「放射線核種の土壌中での挙動と植物汚染」を開いた。その中で、環境科学技術研究所の武田晃研究員は、放射性物質の作物への移行係数のデータを拡充させていく必要性を指摘した。

 移行係数は土壌中の放射性物質濃度から作物中の濃度を推定するために、重要な数値。「現在の値は大きな幅があり、被災した場所の土壌の種類や栽培方法は考慮されていない。条件に応じた正確性の高い値が必要だ」と強調した。

 武田研究員は、1960年代、70年代に行われた大気圏での核実験の由来によるセシウムの動態も紹介。「雲母などに保持されるため、年経過しても表層作土の0~20センチにとどまっている。水に溶けにくいために、水を介しての移動がほとんどない」と話した。

 同研究所の調査で、セシウムは沈着直後は移行係数が高いが、時間の経過につれ吸収されにくくなることも報告された。

もっともっと実際の圃場で確認しなければなりませんが、この国の有様を見るに、菜種や
ひまわりなどを利用してセシウムを濃縮して取り出しても処理できない。それならば、土壌鉱物のセシウムを吸着する力を最大限に利用して、土の中で数百年セシウムに静かにしてもらうしかないのではと思います。
もちろん汚染度合いによっては、その様な対応はできませんし、その線引きが私は分かりません。土ぼこりによる農家の被曝も軽減されませんし、土中の生物には大迷惑でしょうし・・・


投稿: 南の島 | 2011年8月12日 (金) 21時59分

訂正します。

地下に浸透しない。→地下に浸透しにくい。

投稿: 南の島 | 2011年8月12日 (金) 22時10分

半減期についてはβ崩壊の一種である軌道電子捕獲は温度によって影響を受けるようですが、0.15%程度と言われています。他の半減期は地球上で実現できる環境では変わらないようです。-243℃での実験がされたようです。
生物的半減期については、プルシアンブルーを使うと生体からのセシウムの排出が早くなるといわれています。ラディオガルダーゼという商品名だそうですが、千葉の放医研と防衛省に備蓄があるそうです。
セシウムが土壌深くに入れば、土壌の遮蔽効果で地表面の放射線量は下がるでしょうね。南の島さんが書いておられるように 土壌は陽イオン吸着力があるのでセシウムイオンは吸着されますが、硫安や硝安に含まれる硫酸イオンは陽イオンなので、硫酸イオン濃度が高いとセシウムが土壌から溶脱するのではないかと言われていますが、実験はされていないようです。
水産物の放射性物質のデータを見るとウニやイワシの数値が高いようで、海藻やコウナゴを食べたせいかと思うのですが、研究者は何も言っていません。魚では一定濃度以上の生体濃縮は起こらないとの説もあります。

投稿: あおやま | 2011年8月13日 (土) 10時29分

訂正
「硫酸イオン」→「アンモニウムイオン」です。
失礼しました。

投稿: あおやま | 2011年8月13日 (土) 10時42分

セシウムやテルルは、非常に、反応性が高く、複雑な化合物をたくさん派生させるように思えます。
放射性セシウムが気化している場合と、上水道の水で、溶けている場合、土壌で、何らかの化合物になっている場合など、物質形状によっても、水溶性なのか、不溶性なのか、私には、よくわかりません。
気になるのは、アンチモンやヒ素など、毒性の強いものとの化合物を作りやすいことです。放射性セシウムが、土壌では、どのような化合物で、固体化しているのかが、知りたいところですし、水の中では、イオン化する可能性があるのかも知りたいところです。

実験室的には、セシウム単体は、激しく水と反応するようですが。。気化したセシウム単体が、冷えたら、どんな化合物になるのか、よく解りません。

放射性セシウムと安定セシウムが、同じような反応をするとしたら、どのような化合物が、冷えて落ちてくるのか、知りたいところです。

そういうことが解れば、除染方法も、開発できるような気がするのですが、反応式が、いろいろたくさん、ありすぎて、どういう反応をするのか、理解できてません。ジルカロイドと先に反応してしまうのか、鉄と反応するのか、コンクリートとアルカリ反応するのかも、僕には、よくわかりません。

報道では、水素爆発時に、気化していた放射性物質が、空気中で、水蒸気とともに、反応しながら、落ちてきたような感じに報道されているようですが。。

遠くに飛んだ=軽い化合物ってことなんでしょうかねえ?

投稿: りぼん。 | 2011年8月13日 (土) 16時58分

半減期というのは土壌から半分の濃度になる滞留半減時間をおっしゃっているのでしょうか。でしたら水田で9~24年、畑で8~26年だそうです。
日本土壌肥料学会「放射性セシウムに関する一般の方むけのQ&Aによる解説」
Q5. 放射性セシウムはどれくらいの期間で土からなくなりますか?
http://jssspn.jp/info/nuclear/4137.html

投稿: あおやま | 2011年8月13日 (土) 22時59分

大気圏内核実験が禁止され、26年ちかくなりますが、なぜセシウムの放射能がいたるところで、微量ですが残っているのでしょうか?

投稿: kiyo | 2011年8月30日 (火) 17時55分

セシウムの半減期が30年と言うのは厳密ではありません。
厳密にはセシウム同位体である137の半減期が30年。
もう一つ等量含まれているセシウム134の半減期は2年です。
そして、こちらの方が137の2.7倍も放射線を出します。
両者から出る放射線の半減期は3年になります。
それがさらに半減するには、さらに6年かかります。
チェルノブイリでのセシウム半減期が短い理由の一つがこれではないかと考えています。

投稿: あき | 2011年10月30日 (日) 16時25分

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