私たち農民が、放射能から自分たちの土地と水と人を守っていくしかないのだ
なにか大きな災厄に出あった場合、対処方法は基本的にみっつしかありません。
逃げるか、立ち向かうか、考えないか、です。
私は逃げることを卑怯だとは思いません。むしろあまりにも人間的なことだと思います。私だって逃げたくてうずうずしているし、逃げてしまえばなんとなく解決したような気分になります。
ただし、あたりまえですが、なんの解決にもつながりません。状況はいささかも変わらないし、いつかは逃げた場所から現実に立ち帰えらねばなりません。
では、もうひとつの立ち向かうはどうでしょうか。これがまた、実にしんどい。トラブル山積は目に見えています。得なことはなにひとつない気さえします。
第一、災厄が大きすぎて勝てる見通しが限りなくゼロです。家業もおろそかになるかもしれない。資金もない。支援もない。仲間は少ない。誤解は受けやすい。まさにないない尽くしです。
そういう場合、おおむね私たちは第3の道である判断停止に陥ります。
「とりあえず様子を見よう。他がどうしているかをじっくり見てから決めよう。お上がなにかを決めたらそれに従おう」、というアレですね。、
まぁ、賢明といえなくもありませんが、近視眼的で姑息です。悪い意味での農民気質です。
今の東日本の被災と被曝を同時に受けた多くの農村地域はこの3番目の状況です。奇妙なしらけと、沈黙が支配しています。
そして、続々と出るコメの測定結果を息を飲んで待っています。
私は、日本農民は「待つ」こと、「耐えるこ」とは得意ですが、逃げることと闘うことは苦手だと改めてこの原発事故で思いました。
農家の仲間に言いたい。もう止めませんか、待つことは。もう半年ちかくも待ったのですよ。政府がなにをしてくれましたか。なにか私たちを救ってくれましたか。
私たち農家を国民的バッシングの嵐にさらして、平然と鼻毛を抜いて権力闘争にふけっていただけじゃないですか。待っても無駄です。彼らは私たちを救いません。
政治は私たち農民を救いません。
私たちは自分で自分の土地がいかなる状態にあるのかを、国民に、いや、私たち自身が知る必要があります。
放射線量を測りましょう。それしかない。農地と作物の放射線量を計って開示する、それしか農業が信用を回復する手段はないのです。
行政がやる「測定」とやらがいかに杜撰か、私たちがいちばん知っています。消費者だって知っています。
厳しい数値を出したくない行政と農家の阿吽の呼吸での測定など、誰が信じますか。だから政府の暫定規制値など、いまや誰も相手にしないのです。
それを知っている関西系の大手量販店は、おそらく放射能GAPのようなものを取り入れるでしょう。原型は既に出来ています。
そして独自基準も作るかもしれません。そうなったら生協系も追随せざるを得ません。
情勢はそこまで来ているのに、かんじんな私たち農家がいつまでも判断停止でいいのでしょうか。
自分で自分の「放射能疑惑」を吹き払う。実態を明らかにしていく、そして除染に向けてなにをしているのかをはっきりと発信する、これしかありません。
私たちの地域は有志グループが放射線量マップ作りを開始します。自分の農地の放射線量を測定し、記録し、公開します。
とりあえずは各々の農地から始まり、ゆくゆくは自分たちを囲む里山や水系にも向かいます。
除染方法を確立し、理論づけしていきます。汚染レベルにあった除染方法を体系化していきます。
そして、農民として農業にとっての脱原発がどのようなことなのかを考えて発言していきます。
補償ですか。それはやる中でおのずと出てきます。それを目当てに始めてはだめです。
自分たちを取り囲む豊かな土と水と人を守る手段はそれしかないと思います。
農民は、このような嵐の時代にこそ、後ろ指を指されないようにまっすぐに生きなければならないと思います。
■写真 今や大メジャーになってしまったゴーヤです。私が沖縄で百姓修行している時は、沖縄と南九州限定野菜でした。沖縄はチャンプルーに、鹿児島、宮崎は味噌炒めにするようです。
« 「茨城民間放射線測定所」のようなものを目指してがんばります! | トップページ | 私たちの地域土壌放射線量測定の構想 »
「原子力事故」カテゴリの記事
- 福島にはもう住めない、行くなと言った人々は自然の浄化力を知らなかった(2019.03.11)
- トリチウムは国際条約に沿って海洋放出するべきです(2018.09.04)
- 広島高裁判決に従えばすべての科学文明は全否定されてしまう(2017.12.15)
- 日本学術会議 「9.1報告」の画期的意義(2017.09.23)
- 福島事故後1年目 大震災に耐えた東日本の社会は崩壊しかかっていた(2017.03.16)
コメント
« 「茨城民間放射線測定所」のようなものを目指してがんばります! | トップページ | 私たちの地域土壌放射線量測定の構想 »
金もない。支援もない。仲間は少ない。誤解は受けやすい。まさにないない尽くしです<<<<
まさにその通りです。待っていても誰も助けてはくれませんし、今の国に縋っても時間ばかり無駄に過ぎてしまいます。代表選云々ばかりですが、それについても争点が見えません。どっちみち誰がなっても短命政権でしょうが・・・・
無い無い尽くしの中で、何とか方法を模索し信じる事を地道にやって行くしか、現時点手はない様に感じています。
その数値を信じてくれるかどうかは相手任せになってしまいますが、何も手を打たず待っているだけでは前には進めません。僅かでも動き出す事が必要だと思います。
お笑いタレントの引退が、昨夜ニュース速報で流され、予定を変更して記者会見を報じていましたが、
引退してもマスコミやテレビ局には大きな影響があるかも知れませんが、一般国民にとって何の影響もありません。(フアンに叱られるかな?)
そんな事はどうでもよい事であって、目の前の食の安全や、営農継続(生活継続や復帰)・復帰を最優先で報じて欲しいと願っています。
(その前に原発収束ですね・・・)
投稿: 北海道 | 2011年8月24日 (水) 16時37分