ありがとう、JA! 大震災の時JAがなかったら、被災地の農業は壊滅していました
北海道様。すいません。JAの組織構造をよく知らなかったもので。「全中」と修正しました。
さて私は、JAについて長年批判的だった部分があるのですが、この震災で大きく再認識しました。
国民の大部分は知らなかったと思いますが、大震災により東北、東関東の被災地の家畜飼料は完全に枯渇しました。
今回の牛肉のセシウム事件の発端となった牛農家も、この飼料の枯渇期にどうしようもなく被曝した屋外牧草に手を出したものです。非難されるべきですが、切羽詰まった事情もあるのです。
東日本全域の飼料枯渇の原因は、大震災により飼料基地だった茨城県鹿島港が壊滅的被害を被ったからです。
鹿島港は私の農場のすぐそばなのですが、やはり5メートルの津波が来て港が一時干上がるは、車両が水中に転落して水路を塞ぐは、埠頭が液状化で使用不能になるはといった大損害を受けました。
鹿島-神栖のコンビナート地帯にも大火災が発生して数日間にわたって燃え続けました。
このボンボン燃える炎と、黒煙、そして途絶えることのない緊急車両のサイレンが私の心に焼きついた震災の風景でしょうか。
大停電と通信が途絶。携帯もアウトだったんですから、なんのために携帯あるんだと言いたいですね。こら孫社長、あんたのところがいちばん復旧が遅かったぞ。本業にいそしめよ。(笑)
私が原発事故を知ったのは大停電がやっと終わった4日後のこと。大津波の惨状を映像で知ったのもそうです。声もないとはこのことでした。
飼料基地がやられただけではなく、被災地まで来るインフラがズタズタ。そもそも送油施設が壊滅したためにトラックもガス欠。配送センターの施設も全壊。運転手さんまでもが被災していたのです。。
受け手の農場サイドも、施設が倒壊、飼料タンクは倒れる。家畜は逃げ出す。断水で水がない。
のみならず、家畜に与える餌がない!家なんかぶっ壊れようが、家具が転倒しようが後から直せばいいだけですが、家畜にやる餌がなくなれば、1週間足らずで家畜たちは死んでしまいます。
私など断水しているために川で水汲みをしながら、「在庫の米ヌカや麦で飼料を延ばしてもせいぜいが7日だな、その後どうする・・・」と憂鬱に頭の中で自問していたものです。
今になって思えば、この時期に私たちの頭上に放射能がフォールアウトしていたわけです。
え、政府。そんなもの日本にあったんですか?
自衛隊や消防、警察といった国家機関は大車輪で被災地救援をしましたが、政府?そんなものどこに消えたのやら。
農水省?話の外。平時に減反で買い込んだMA米の保管業務ていどの暇仕事しかしていないツケで、非常時にはまったくの役立たず。農水省という存在があることすら被災農家の私たちは忘れていました。
この危機に登場したのが、JA全農です。
西は志布志の飼料基地から配送をかける、北は新潟港から脊梁山脈を超えて餌を運ぶ、中部の渥美半島からもどんどんと飼料トラックが被災地に向かって走ってくるのです。
まさに日本を縦断する大被災地救援作戦です。おそらくは西日本、北陸、北海道など被災に合わなかった地域の使える飼料トラックが全部出払ったのではないでしょうか。
投入された人員、資材などまさに被災地救援大作戦の名にふさわしいものでした。
電話が復旧するや、いちばんに来た電話が、JA東日本飼料の担当者からでした。
「ぜったいにエサを届けます。信じてください。バラ車ダメなら、平ボディでフレコンに詰めても輸送します」
うれしかったですね。地獄に仏でした。涙が出ました。もう、JAには足を向けて寝られない。
そう思ったのは私だけではないはずです。震災以降初めて農場に入って来たJAのバラ車を拝んだという人もいたそうですから。
あれだけの被災地飼料輸送大作戦など、他のいかなる団体、企業も無理です。JAなかりせば、大震災で東日本の農業が壊滅したのは間違いありません。
また、原発の避難地域からの家畜の非難に対しても献身的にやったのはJAでした。政府が振り向きもせずに非情に切り捨てた家畜を、一頭一頭トラックに乗せて、預け先も探したのはJAでした。
まさにJAは日本農業の大黒柱の名に恥じない働きをしました。
農水省などなくてもいいが、というかないほうがましですが、JAは間違いなく日本農民の背骨なんだと思いを新たにしました。
ですから、昨日書いた苦言もあえて言わしてもらえれば、というふうに理解ください。
ありがとう、JA!あなたたちが東日本の農業を救ったのだ!
■写真 昨日と同じブルーセイジです。こっちがほんとうの色です。接近しているニホンミツバチが見えますか?
゜。°。°。°。°。°。°。°。゜。°。°。°。
■茨城県放射能実地測定研修の集い
❶茨城大学教員3名を講師として農地放射線量測定します。
➋空間線量と土壌線量測定の実測方法の実地研修
➌農地の測定
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❻場所 茨城県行方市
❼日時未定ですが8月中旬から下旬の大学夏休み期間中に予定しています。
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コメント
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JAを統括しているのは「全中」と言いましたが、全中は、運営財源は心配無いものの、経済団体ではない為、物資もお金もありません。非常時の物資供給で言えば、全農になると思います。全農支所は都府県それぞれにありますし、子会社(関連会社)により様々な農畜産物も生産しています。(北海道には支所は無く、ホクレン農業協同組合連合会=ホクレンが、都府県で言う全農の役割を果たしています)
農業団体も平常時には、色々功罪が言われており、時には邪魔な存在となる事もありますが、今回の様な災害や非常時には、持てる能力を最大限発揮する事が出来ますし、またそれを期待されています。
農業者が組織している団体ですから、中々アカぬけていない(イケてない)部分もありますが、その分「義理・人情」があるのではないでしょうか?
時の政府によっては、不要論が叫ばれますが、一般的に補助事業事務や様々な通達事項はJAに押し付けられます。都合良く使われていると言った所です。
愚痴を言っていても仕方ありませんね。
野菜・牛肉・これから収穫が本格化する米など、国民の食の安全と安心を担保する為の行動が、求められています。
JAも気持ちを引き締めて、対処して行かなければなりません。
昨日の記事も、しっかりやれよ!!と言うメッセージと受け取っています。
投稿: 北海道 | 2011年8月 8日 (月) 08時28分
本来、全中、全農、JAなど、農業者以外にも、組織の役割や存在意義が、広く国民に知られていて良いはずの団体なのに、ますます都市部居住者には、何がなんだかわからない組織に見えてしまっているのが、残念ですね。
JAは、金融機関や不動産仲介業、保険業しか、やっていないのではと思えるくらい、都市部では、農業の「の」の字も、PRしません。
国民の食を預かる団体なのに、正しく認識されていないのは、残念です。
農家さんを意識できるのは、道の駅と観光農園くらいでしょうか?
流通業者(スーパー)さんが、直接の窓口ですから。。
投稿: りぼん。 | 2011年8月 8日 (月) 09時00分
そういえば昔はワリノー(あれは農林中金か)のCMや、家庭に配られるマッチ箱やタオルなとずいぶん見掛けたものですが、最近は見ないなぁ。すっかり弱体化したものだ…と思ってましたが。
今回は見事に実力発揮しましたね。
先日、東京市場での暴落(1/3~1/5に!)と食肉公社のセリ休止の非常事態。
山形県が最初に「全頭検査」を発表することになった経緯においても、
初めに県は畜産農家の聞き取りと立ち入り調査・サンプル検査で十分と思っていたところに、JA全農山形が素早く動いて農家の意見集約→県に強力に「断固として全頭検査するしかない。それでしか山形牛・米沢牛のブランドは守れない!」と訴えて県知事発表に持って行ったという経緯がありました。
この間僅か数日間の出来事でした。走り回って汗だくになった方がいらっしゃったのでしょう。
まさにそれでこそ「圧力団体」としての面目躍如です!
私も拍手喝采でした。山形(特に内陸部)のJA組織率が高かったのも好を奏しました。よくやった!
じつは私も農協には批判的でした。長い自民政権時代に政府に取り込まれて行き、食管法解体でガラガラと…。職員の横領事件とか続いてましたし(代表だった山形2区遠藤武彦大臣がスピード辞任)、共済の自動車保険の周囲での悪評(未だに9時~5時での仕事だそうです)
今回は正に「圧力団体としての面目躍如」なできごとでした!素直に拍手と感謝の気持ちを贈ります。
あの震災当時、茨城方面の被災状況はなかなか入ってこなくてイライラしてました。
大変だったんですねえ…。
既に全電源喪失から時間が立って翌日1号基水素爆発ドカン!2号基地下爆発。3号基が黒煙上げてドカン!
この辺まで情報がリアルタイムで伝わってなかったとは…。
農水省?なにやってたんでしょ。鹿野大臣(山形1区で復活当選)は元々古い自民農政属なんですが…。
投稿: 山形 | 2011年8月 8日 (月) 10時34分
都市や都市近郊JAは金融JAで、信用部門(貯金・共済保険・融資)で、収入の大部分を占めていると思います。
北海道でも札幌市近郊や地方都市(と言っても都府県の都市とは違い人口はそれほど多くありませんが)のJAは似たようなものですが、地方のJAでは金融だけで組織を維持できませんから、営農指導に力を入れ、組合員に儲けてもらわないと、JAもそうですが市町村行政も成り立たないのが現状です。
JAも古い体質と改革しなければ・・と言う新しい考え方と同居しているのが現時点の状況です。
どこのJAであっても組合員に何かが有れば、「出来得る事は何でもやる」と言う基本姿勢は変わらないと思いますし、そう信じたいです。
ただ、短期的な対応は出来ても、行政と違い権限がありませんから一民間団体としての対応にならざるを得ないし、財政的にも中長期的な対応は出来無いのが現実です。
投稿: 北海道 | 2011年8月 8日 (月) 11時36分
関係無い話で管理人さんすいません。
北海道様、昔板塀の農家の小屋に黄色地に赤文字で「ミタス」という目立つホーロー看板がたくさんありましたが、絶滅しました。
ミタス(味を満たすグルタミン酸調味料?)
農協系のみの流通だったんでしょうか?
一度現物見て食べてみたいと、長年思ってたんですが…。
投稿: 山形 | 2011年8月 8日 (月) 12時33分
一口にJAと言っても、単協から経済連、信連の県レベル、そして全中や全農と言う国レベル、ぞれぞれの立場で、若干の温度差もあるのではないのでしょうか?
日々、農家と接している単協では、実際の危機感を肌で感じることができますが、上部になればなるほど、その感覚が薄れてくるのではないかと思います。
今回の震災に対する飼料給与体制の構築等、確かにJAの果たした役割は、大きくて重要であったと思います。しかし、その行動原理となった感情?は、単協と上部では微妙に違う気がします。
単協は、やはり家畜の命、農家の苦悩を肌で感じることが出来ますので、一刻でも早い供給をと考えたと思います。しかし、それは、上部になればなるほど、そのような感情論ではなく、極論かもしれませんが、組織の存続という危機感があったのではにでしょうか?
管理人様が言われるように、畜産と米は、現代の農業において、一種の聖域であり、その分野にかかる金額は、JA組織の大きな部分を占めているのではないかと思います。飼料給与が遅れて、大量の家畜が餓死すれば、もしかして、大量の廃業農家が生まれたかもしれません。家畜は、誰かが述べられていましたが、一度辞めたら、再開するには大変な気力とお金がかかります。つまり、大量の餓死家畜が発生することは、JA組織の収入源が激減する事を意味します。その点において、今回のJAの総力をあげたような行動が行われたのかもしれません。
私は今でもJAには批判的です。良く彼らの口から聞く「農家の為」と言う言葉が、偽善的に聞こえてくるからです。「農家の為」ではなく、農家が利益を上げることにより自分達の組織が成り立っていると言うことを言うべきではないでしょうか?
そして、ペーパーマージンを取るような、経済連みたいな中間組織が存在することも、未だに理解できません。それなりの存在意義があるのでしょうが、私にはわかりません。
投稿: 一宮崎人 | 2011年8月 8日 (月) 12時47分
山形さま
「ミタス」をネットで調べたら、JTが製造しているようですね。私は記憶がありません。
「味の素」的なウマミ調味料なんですかね?
看板は道内で見かけた事はありません。
一宮崎様のご意見ごもっとも・・と思う所もあります。
JAと言う組織と組合員との距離感もあると思います。
せっかく自ら出資している組織なら、有効に使えば結構、支払う賦課金や手数料などの元は取れると思いますし、便利に使う事が必要だと思います。また、そのJAに出資している組合員の3分の2以上が、組織は無用と判断すれば必要な手続き後、解散する事も可能です。
仰る通り上部の組織になればなるほど・・・と言うご意見は私も感じています。
マスコミは官僚の天下りを報じていますが、農業団体の上部組織の職員の天下りは、目に余るものがあります。農業改革は、そのような団体の見直しからスタートしなければならないと思っています。
上部組織と言えど、その会長や役員は、どこかのJAの組合長が就任しています。一JAの組合長時は一宮崎様の様な考えを持っていたとしても、何故か上部団体の役員に就任すると、勢いがなくなると感じているのは私だけでは無いと思います。
懐柔されてしまうのかな~
投稿: 北海道 | 2011年8月 8日 (月) 13時26分
北海道様
早速調べて頂きありがとうございます。
てか、まだあったんかい(笑)
子供の頃にはミタスの看板があちこちにあり、自転車に乗り始めて狭い自分の世界が拡がって行くときの街の目印でした。
ありがとうございました。
投稿: 山形 | 2011年8月 8日 (月) 13時55分