除染特区を作れ!これ以上遅れると、「隔離・分離」の空気が支配的になるぞ
国はいつまでも漫然と「除染」を語っている暇はありません。前政権における、「なさざることの罪」により、広大な地域が放射能汚染された状態で放置されています。
避難準備区域は解除されましたが、今後の補償や、かんじんの除染すら行われていない状況での帰還です。到底心から喜べる状況ではありません。(資料8参照)
このような中で、国民の中に大震災支援疲れがにじんでくるに従って、0.6マイクロシーベルト/時を超える地域を厳重に管理して、その地域の出入りまでを国が管理しろ、という案も飛び出すようになってきました。
言っているのはいつもの有名なあの人です。
ttp://takedanet.com/2011/09/post_eca2.html
この0.6μSv以上を管理区域案は、旧ソ連の強制退去地域をモデルにしており、もし現実化されるとなると、かつて私が冗談半分で言った「放射能の壁」をほんとうに作ることになってしまいます。
退去勧告と、それでも残る住民はすべて登録されてIDを持たされて、スクリーニングと除染してからでないと外部の地域に出られなくなるというわけです。
「東北の野菜は食べるな」から、更に踏み込んだ「隔離・分離案」です。
このような「隔離・分離案」が、影響力の強いオピニオン・リーダーの口から平然と出るようになった、という事実を認識するべきでしょう。
論評はしませんが、このような「空気」がしっかりと醸成されつつあるということを政府は知るべきです。
「死の町」とか「放射能をつけちゃうぞ」という3日大臣の軽薄な発言は、それ自体の意味内容ではなく、このような空気の中で為政者の口から出たことの重さを問われたのです。
私は今まで誰も口にしなかった「隔離・分離案」が公然と出てきた状況を、非常に恐ろしく思います。今後もウオッチします。
一方、福島市もボティア頼りですが、器材の貸し出しや専門家派遣などで大規模除染を開始するそうです。(資料1・2・3・4参照)
しかし、地元福島市の住民によって作られている「ふくろうの会」は、福島市などが始めた市ぐるみの除染活動に対しても、本来は避難をするべきなのに人口減少を恐れる市がそれをさせないための動きだとして警戒しているようです。
http://fukurou.txt-nifty.com/fukurou/2011/09/144-38a2.html
さて、いつも頑張っている飯館村は5年間というスパンで農地の除染を行い、2年間で住環境の除染を行うことに決定しました。(資料5参照)
農地除染のめどは1千ベクレル以下、住環境は1ミリシーベルト/年以下だそうです。排出された汚染土壌などはコンクリート製の容器に入れて保管するとのことです。
おそらくはここがネックでしょう。飯館村の農水省除染実験で使われた保管容器は一個が10万円もしましたので、これをなんとかしないと、早晩膨大な除染排出物の行き場がなくなってしまいます。(資料6参照)
国は、飯館村などの農村避難地域、そして福島市、郡山市などの都市部を「除染特区」として、国家を上げた除染活動に集中すべきです。
「失われた半年」を取り返すにはそれしかありません。それをしないまま放置しつづければ、今は極小でしかない「分離・隔離」派が大勢を占めることになりかねません。
絶対に「放射能の壁」を作らせてはなりません。
■写真 台風一過。天高く馬肥ゆる秋ですな。イモ堀りのまっ最中です。早く放射能を気にせずに農作業をしたいものです。
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■資料1 福島市除染活動' 福島市除染マニュアル(第1版)
■資料2 【除染へ専門家助言】2011年07月23日 朝日新聞
●県、5人「アドバイザー」委嘱
子どもたちの生活環境から放射線量を減らすため、県は22日、放射線防護や放射性廃棄物処理の専門家5人を「除染アドバイザー」に委嘱したと発表した。任期は来年3月末まで。
アドバイザーは、元原子力委員会委員長代理で、放射線防護を専門とする田中俊一・放射線安全フォーラム副理事長ら5人。県一般廃棄物課によると、効果的な除染の方法などについて、県に助言する。
県は、通学路や側溝、公園などの除染活動をする町内会、PTA、ボランティアといった団体を対象に、線量計や高圧洗浄機、清掃用具などの購入費に関し、50万円を上限に補助する事業をはじめた。
県内の各市町村が今月末以降、除染活動をする団体を募集することから、こうした団体にも、アドバイザーが助言するという。
ほかのアドバイザーと専門分野は次の通り。
井上正・電力中央研究所研究顧問(放射性廃棄物処理)▽田中知・東京大大学院工学系研究科教授(放射性廃棄物管理)▽藤田玲子・東芝電力・産業システム技術開発センター技監(放射性廃棄物処理)▽石田順一郎・日本原子力研究開発機構福島支援本部上席技術主席(放射線防護・安全管理)
■資料3 福島市、市内全域の除染方針固める(2011年7月12日19時02分 読売新聞)
福島県内で自治体が全域の除染に乗り出す方針を決めたのは伊達市に次いで2番目。
福島市は今年度分の「ふるさと除染計画」を8月上旬までに策定する。策定に先立ち、放射線量の高い渡利、大波の両地区で先行して除染作業を実施。建物に高圧洗浄機を使用するほか、地面の表土除去などを行う。
市内全域の除染には、数年から十数年かかる見通し。公共施設や農地、河川、山林を主な対象とし、線量の高さや住民の利用度などに応じて優先順位を付ける。民家についてはマニュアルを配布し、市民自らの手で行ってもらうことも想定している。
費用は一時的に市が負担するが、最終的には国や東電に支払いを求める方針。同市では、同原発から半径20キロ圏の警戒区域以上に放射線量の高い地域が確認されており、住民に不安が広がっている。
子どもを避難させないための除染活動にしてはならない
その第1点目は、このような活動を大々的に宣伝することで放射能が低減して子ども達が避難しなくても「安全」が確保されるかのような雰囲気が作りだされる危険性です。産経新聞の報道では渡利地区の除染活動について「『避難が不要になるように』福島市の住宅地 住民ら3900人が除染」などと見出しを付けて報じています。
■資料4 「避難が不要になるように」福島市の住宅地 住民ら3900人が除染2011.7.24 産経
福島市中心部に近く、放射線量が局所的に高い「ホットスポット」の懸念が高い渡利地区で24日、放射性物質の除染作業が行われた。
市職員ら約400人と住民約3500人が参加。住民らは側溝の泥をスコップで取り除き、雑草を取った。渡利小などの通学路は路面清掃車が洗浄した。住民によると、毎時10マイクロシーベルトだった放射線量が除染後、約半分に下がった側溝もあったという。
渡利地区は福島県庁から約1~3キロ。東京電力福島第1原発から約60キロ離れているが、6月の市の空間放射線量測定で毎時3・83マイクロシーベルトを計測した。国は近く、同地区で特定避難勧奨地点の指定を検討する詳細調査を行う。
同地区の舟場町内会長、小平準之助さん(77)は「子供がいる世帯の転居が増えて寂しくなった。避難が不要になるよう今後も除染を続ける」と話した。
■資料5 飯館村が除染計画 宅地2年、農地5年で完了
東京電力福島第1原発事故で全域が計画的避難区域に指定されている飯舘村は、居住空間の追加被ばく線量を年間1ミリシーベルト以下に低減する除染計画を策定した。宅地など居住環境は約2年、農地は約5年、森林は約20年で除染を終え、原発事故以前の環境回復を図る方針。
菅野典雄村長は28日、政府と県に計画を提出した。計画によると村と県、国の連携とともに村民の参加を得ながら除染を進める。
農地や、キノコなどが自生する森林の低減目標は、土壌の放射性物質濃度で1キロ当たり1000ベクレル以下に定めた。村内の国有林に仮置き場を設置し、除染で生じた汚染土壌などをコンクリート製の保管容器で密閉して一時的に保管する。
(2011年9月29日 福島民友ニュース)
■資料6 除染土 最大2879万立方メートル 環境省試算 東京ドーム23杯分
東京新聞 2011年9月28日 朝刊
環境省は二十七日、東京電力福島第一原発事故で放射性物質に汚染され、今後の除染で土をはぎ取るなどして発生する汚染土壌の量をめぐり、試算結果を有識者検討会に示した。福島のほか宮城、山形、茨城、栃木の五県で年間の被ばく線量が五ミリシーベルト以上の区域を中心に除染する場合、土壌量は最大で東京ドーム二十三杯分に相当する二千八百七十九万立方メートル。
除染が必要な面積も最大で福島県の17・5%に当たる二千四百十九平方キロメートルに上る。政府は福島県に中間貯蔵施設を設置する方針だが、広大な施設の整備が必要で、地元自治体との調整は難航しそうだ。
これに関連し、細野豪志原発事故担当相は二十七日の衆院予算委員会で、十月中に中間貯蔵の在り方を含めて政府の考え方を提示する意向を表明。野田佳彦首相は「仮置き期間は何年という形で、住民の安心のためにも明示できるように努めたい」と述べた。
推計は、年間の被ばく線量に応じて(1)二〇ミリシーベルト以上の区域を除染(2)五ミリシーベルト以上の区域を除染(3)五ミリシーベルト以上の区域を除染するのに加え、一ミリシーベルト以上五ミリシーベルト未満の区域も部分的に除染(スポット除染)-の三パターンを想定。それぞれ森林の除染面積を100%、50%、10%の三類型に分けた。
住宅地や市街地で建物が密集している地域は、建物以外の土壌部分が全体の40%とみなし、表面を五センチはぎ取ると仮定。森林では落ち葉の回収や草刈りなどを行い、農地は表面の土五センチを除去する条件で試算した。
その結果、五ミリシーベルト以上の区域とスポット除染を組み合わせて森林を100%除染したときに、発生する汚染土壌量は最大となった。
■資料8 避難準備区域あす解除 「補償減るかも」遠い帰郷 除染いつ?「安全とは思えない」
東京電力福島第1原発事故を受けて設定された「緊急時避難準備区域」が30日、一斉に解除される。ただ、対象となる福島県の5市町村が想定する帰還時期は、いずれも除染にめどが立つ来春以降。東電の補償がなくなる不安を抱える住民も多く、帰郷はまだ先となりそうだ。解除されても帰れない状態に、避難を続ける住民の苦悩はかえって深い。
「帰ったら東電の補償が減るかもしれない」。自宅が緊急時避難準備区域に指定されている福島県広野町の50代男性は、こう話した。解除後も同県いわき市の仮設住宅に住み続けるつもりだ。
広野町は鉄道以外のインフラが復旧しており、放射線量も区域外の福島市より低い。男性も「帰るには全然問題ない」と話す。ただ、東電から送られてきた補償の説明書は分厚く、帰宅で補償がどうなるのか、読み取れない。「分からない以上は帰れない」と、仮設住宅中心の生活が続く。
同町の住民約5千人のうち、自宅に戻ったのは1割に満たない約300人。ほかの4市町村に比べ極端に少ない。同町幹部は「最初は原発の爆発を恐れて避難したが、放射線量が低いにもかかわらず、いつの間にか除染が帰還の基準になってしまった。帰るタイミングを失ったともいえる」とみる。「解除されても、安全とは思えない」。同町からいわき市の仮設住宅に避難している主婦、根本トミさん(74)も、帰宅のタイミングを計りかねている。
自宅で30年以上育ててきたマツの盆栽は赤く枯れ、庭の草は伸び放題。毎年のように遊びに来てくれた孫6人を狭い仮設住宅へ招くわけにもいかない。「何もいらないから家に戻りたい」と言いつつ、「本当に原発は爆発しないのか。何を基準にすればいいのか分からない」と漏らす。
同町の7割を占める森林については国の除染方針も定まらず、町も処置を決めかねている。「山林への立ち入りを減らしてもらうくらいしか対策がない」と町の担当者。「除染が進んでも若い人は帰らず、高齢者だけになる懸念が広がっている。払拭したいが…」と悩みは尽きない。
同町からいわき市内のアパートに夫と次男と避難している主婦、西内香奈江さん(48)は「放射線量はあまり気にならないけど、たまに町に帰っても人影がない。何となく不気味で帰る気になれない」。帰郷を阻む悪循環が生まれている。
(産経新聞9月30日)
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