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2011年9月 1日 (木)

「放射能の壁」を溶かしていく道

023
今日は素朴な話をします。

見た目には、私たちを取り囲む土も水も、海も、空もなにひとつ変わりはありません。

農業者という種族は、毎日それと接していますから、かえって分からなくなっている部分があるようです。

そりゃあ、観念的には分かりますよ。毎日放射線量とかセシウムとかを聞かない日はないんですから。

しかし、それは実感じゃないわけです。この「なにも変わりはない」という意識が、私たち農家の中に根強く存在します。

村に原発を作られるとか、最終処分場を作られるというなら分かりやすいのですが、いまの茨城や千葉の場合、農業経営の外堀を埋められるようにして、売り上げの激減、来年度米の予約の少なさなどでじわ~と真綿で首を締められ続けているといった雰囲気です。

炊飯にミネラルウォーターを使っているとか、西日本の食品しか食べないと聞くと、私たちはゲゲっとなってしまいます。

このあたりが、おそらくは都市の消費者との温度差で、私たち「被爆地」の農家のほうがはっきり言って鈍いでしょう。

4月でしたか、東京で脱原発のデモがありました。若い人を中心にして、ハデな格好で笛や太鼓を鳴らしながら町を練り歩いていました。

そのプラカードの中には、「東日本はおしまいだ」とか、「フクシマはヒロシマ」、「もう何も食べられない」といったものが多数あり、私たち「被曝現地」の人間を大いにシラけさせたものです。

当時の私たちは、正直言ってなにがどうなっているのか分からない状況の中にいました。原発事故がどうなっているかもわからないし、私たちの頭上と農地にどれだけの放射能が降ったのかなどわかるはずもなかったのです。

だから目の前の「風評被害」をなんとかしようと必死でした。「これは風評です。食べてください」、と。

結果、どうなったのでしょうか。世論のリーダーとなった武田邦彦氏は私たちのことを「金がほしさに危険な食品をバラまいている。地産地消は危険」と言っています。

早川マップの早川由紀夫氏は、「農民は市民社会の中に毒物をバラまくテロリスト」とまで言い切っています。

両氏の、日本農業を悪玉と決めつける言説は大きな支持を集めて社会に定着してしまいました。

これが現実です。いまや日本社会の3悪は、東電、原子力村、農業です。

この大きな「放射能の壁」をなんとかしないと大変なことになると思ったのは、この私ですらこの5月あたりからでした。

私たち「被爆地」の農業はまちがいなく被害者だと確信していましたから、「あんたらは金目当てのテロリストだ」とまで言われると、理解する以前になにを言われているのかわからなくなったというところです。

私は、この都市と農業との間にある厳然とした「放射能の壁」を溶かしていかねばと思いました。

「溶かしていく」というのはコッパみじんにすることではありません。それは無理だし、そのような対決の構造をとってもしかたがないだろうと思ったからです。

私たちが武田、早川両氏を論理的に批判しても、それはかえって「放射能の壁」を高くしてしまいます。反論された側は依怙地に身構えて、いっそうこの「壁」を堅く、高くするからです。

では、私たちも都市の人にならってミネラルウォーターでメシを炊くのかといえば、しないでしょうな(笑)。そんなことをしたら、自分の拠って立つ土と水を全否定することになるからです。

至ってあたりまえのことから始めたいと思います。

私たちの作物がどのような土で育ったのか。それは健康なのか、それとも違うのか。放射線量はどれだけ含まれているのか、いないのか。

里山はどうなのか、腐葉土はどうなのか。そこから湧きだす水はどのようになっているのか。

その上に立って農作物が健康であるのかを調べていきます。よくやられている外部スクリーニングではなく、刻んで測定します。これらを大きく地域マップにしていきます。

その上で除染計画を立てます。どのような除染方法が適しているのかを知っていきます。

そして、これらの事実を掴み、伝えていきます。一見迂遠な道ですが、それしかないと思い定めているところです。

「放射能の壁」はやがてなくなっていくことでしょう。そのときに、私たち日本農業がいっそう強くなっていなければなりません。

7日の集会は延期いたします。

先生方との日程調整がうまくいかず、開催が困難になりました。

大変もうしわけありませんが、1か月ほど延期いたします。

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コメント

ありましたねえ。東電前にチンドン屋大終結デモ(本職のチンドン屋もいました)。私もシラーっとしました。
過激な文言のプラカードに比べて、かつての左翼デモなんかと違って全くユルイこと。
まるで、今なら東電や被災地農家に何を言っても許される社会的空気に合わせてやってやがる。

むしろその後のJA福島のデモ(牛連れてったやつ)は、鬼気迫るものがありました。なんせ目の前の生活がかかってますからね。

千葉のホウレン草や福島の牛肉の流通は痛恨の失敗でしたが、あれだけで農業者全てが悪党とかテロリスト呼ばわりされたらたまったもんじゃありません。
そして、報道もデカデカと報じ、ネットでは武田邦彦氏らの声ばかりが急速拡散されていきました。

http://radioactivity.mext.go.jp/ja/8849/8850/8864/1000_082914.pdf

文部科学省の考え方です。

http://journal.mycom.co.jp/news/2011/09/01/022/
産総研、土壌中のセシウムを低濃度の酸水溶液中に抽出する技術を開発

研究が進むといいですね。

原発は辞めた方がいいと思います。だから、デモ参加したかったです。
政治家や行政に 期待しない、落胆してシラケる。その気持ち、分かります。私も原発事故まではそうでした。新聞、テレビでの報道、見たくない。無関心を決め込むかんじ。。。でも、事故後、とにかく言わなきゃ、子供を守らなきゃという思いで草の根的に発言を行政に伝えていきました。夫からは過剰反応と言われ夫婦げんかもしました。でも、言ってよかった!柏や三郷の除染が始まるし、給食の拒否も堂々とできると思ってます。立場が違うと相手の気持ちで考えるといっても難しいから政治家や行政の人が知らない、きづいてないところはある。要望や意見でドンドン情報提供しましょうよ!無関心を決めて無視するのは楽ですが、それは会議とかで委任状出して欠席した人と同じだと思います。私にとって子供たちは自分の人生の一部です。汚染食品が加工食品などで出回ることがホントに嫌です。除染技術が確立されて、農作物が安心して作れる土地をとりもどせることを願ってますし、農地の浄化を政府や農林水産省に訴えていきます!

あと、武田先生のブログを読んで政府のごまかしに気づいたり、食品汚染で悲しんでるお母さんが助けられたりしてました。過激に書いてるな~と思うときもありますが、武田先生のブログに助けられている人もいることをお伝えします。
 武田先生も農家の人も、心は一つ。除染して、安全な農作物つくれるようになる!政府や行政を動かして対策を実現させる、だと思います(^^)

やすこさん。

何か激しく誤解されてませんか?
シラケさせたのは東電前でのチンタラしたデモそのものです。

武田邦彦教授は長年原子力推進で政府の安全委員会で要職を務め、福島の事故が発生した途端に平然と掌を返した御仁ですよ。
それがテレビ受けして、現在の政府・東電を批判すればいいという世論形成になりました。

彼はペットボトルや買い物袋など燃やせ!(コスト的には正しい)
温暖化?どんどん進めばシベリアが世界の食料基地になる!
とか、過激というより滅茶苦茶なことを言い続けていました。

心は1つなどという綺麗事からはほど遠いです。

武田氏がどうとかいうことは私は問題にしていませんので誤解なきように。
氏は原発事故後の時期に啓蒙者として働きました。それは評価しています。私自身も教えられた点も多々あります。

ただ、その矛先が農業に向かったのは筋違いだろうとは思っています。特に氏は私たちを「金目当て」という表現で何度も切り捨てました。

あのような言説が適当であったのかどうか、私は疑問に思っていることは確かです。

ただし、氏そのものが問題ではなく、そのように形成されてしまった「世論」が大きな見えない「放射能の壁」を作り出していることを言ったのです。

東電デモも同じです。私もこのような立場でなければ参加したい気持ちはあります。ただし、これも、私たちを必要以上に敵視する「放射能の壁」が存在するかぎり難しいでしょう。

被爆地の農家と市民が手をつないでいくためには、この「放射能の壁」をなくしていかねばなりません。

あー、すいません。
山形さんのコメントについて書いたわけではないんです。奥さんが政治の新聞記事を読むのも。。と前のブログにあったので、そのことを思い出してと、放射能の壁を読んでコメント書いたんです。
まぎらわしくでごめんなさい(^^)

でも、山形さんの新しいコメントを読んで「ふむふむ」と思いました。ありがとうございます。

人の評価は難しいな~。一人の人間でも色んな側面を持っているし、それが悪く出たり良く出たり。そして私なんて「これがいい、やっぱ辞めた」みたいな首尾一貫してないし。それが人の欠点でもあり長所になったり。そんなことを山形さんのコメントを読んで感じました。

管理人さんへ
放射能の壁問題は、農家の方を悪者にするのは何の解決にもならない、、と感じます。悪いのは無策で暫定基準値をゆるく放置している政府、、と思います。
農家の方は被害者!!です。農家の方々の声、発信、期待してます。また、ブログ、のぞかせて下さい。
私のコメントで気分を害したらごめんなさい。

農家さんは、悪くはないです。ただ、福島原発から放射性物質がでている以上、いくら除せんしてもまた積もりますし、除せんした土は放射性廃棄物でそれもまたおく場所がどんどんなくなってきます。茨城、福島ばかりじゃなく汚染はかなり広範囲になってきてます 除せんしてもまた、風向きによりふるのです。本当は、西にも過疎地で畑や田んぼが沢山ありやる人がいない場所が沢山あります。若い人は皆、都会だからです。私は、せっかく技術もたれた方は農業やめずにそのような場所で作って欲しいです。

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