• 20250113-133232
  • 20250113-134354
  • 20250113-134844
  • 20250113-135719
  • 20250112-044948
  • 20250112-050804
  • Dsc_1204
  • Dsc_1204_2
  • Dsc_1206_2
  • Dsc_1210

« DASH村再訪  浪江町の現状の線量測定と帰る夢 | トップページ | 暫定規制値の「初めのボタンの掛け違い」 »

2011年9月13日 (火)

暫定規制値は「がまん基準」

052
「暫定規制値」というわかったようなわからないような規制数値があります。

ポジティブ・リストなどが典型のように、私たち農業はかなりの規制によって縛られています。

これは農産物の農薬の含有量やその種類などに対する規制で、大変に厳しいものです。

この農薬や食品添加物の規制数値の求め方は、無毒性量(NOAEL)をまず設定し、そこから桁落としに低い数値に「1日摂取許容量」(ADI)を設けています。

そしてこれからまた桁落としに低い数値に実際のポジティブ・リストなどの基準値の上限値を定めています。

今日はこれがテーマではないので触れませんが、よく武田邦彦さんが言っている「足し算」はこの方法を放射線リスクにあてはめたものですが、世界公認の方法ではありません。あくまで彼のオリジナルです。

さて、こうやって作られた規制値も、それが閾値(*しきいち。そこを境にして有害か無害かを決める有意性があるライン)とは違うことにご注意ください。

例えば、ある規制値を100と定めるとして101は規制値の上ではアウトですが、99ならいいのかと言えば、たった2しか違わないのにねぇ・・・というわけです。

この100という規制値は、実はなだらかなラインで移行していく曲線のある一点をとったもので、規制値は閾値ではないのです。

放射能の暫定規制値も同じことがいえます。野菜の暫定規制値が300bqだとすれど、301はダメですが、299はオーケーとなります。しかしちょっと考えれば変ですよね。

「たった2bqの差にどんな意味があるんだぁぁ!」と消費者が思っても当然です。だって実際差はないですもの。いわゆる測定器の誤差のレベルです、こんな差は。

で、この暫定規制値が高すぎる、いや妥当だ、なに言ってんだ、もっと上げろと立場によってケンケンガクガクの議論がされています。

この暫定規制値の大本を作ったのはあの有名なICRP(国際放射線防護委員会)です。いちおうNGOですが、実際は唯一の各国政府によって公認された国際機関です。

日本も唯一の被爆国にして、被曝国ですから多くの専門家を派遣しています。他にECRR(ヨーロッパ放射線リスク委員会)というのもありますが、こちらはヨーロッパの緑派が作ったものです。年中ICRPとケンカしています。

それはさておき、ICRPは「放射能に閾値なし」を掲げています。つまり、「放射線を浴びれば必ずリスクはあり、線量が増えればリスクも比例して直線的に増加する」という閾値なしモデルですね。

これを世界各国はリスク管理の基準にしています。わが国も同じです。

この考えはICRPの文献にありますが、素人にはまさに暗号表のようなものですので、たぶんこんなことではないかと市民語に訳してみましょう。

「平時は、放射線は浴びないほうがいいよ。特に食品は体内被曝しちゃうから、できるだけ取らないでね。

私らICRPはその目安の閾値を年に100ミリシーベルトとして、それでも心配だから2桁下げて1ミリシーベルトにしているんだ。

要するに、平時の健康を守る基準だと思ってほしい。

でもこれはあくまで平時の話だよ。平時ばかりだったらいいんだけばど、原発事故が起きたらどうするんだろう?

大量の放射性物質が大気中にバラ撒かれてしまうわけだ。そんな時に、平時の基準では追いつかないのは分かるよね。

もちろん政府は農業団体に命じて出荷制限などをするとは思うが、それでも事故以前とはまったく状況が異なる。そこで作られるのが、暫定規制値と日本で呼ばれているものだ。

言い方がやっつけみたいで誤解される表現だが、これが緊急時基準だ。これをICRPは認めている。

同じように原発事故の対処に当たる作業員にも平時の原発構内の基準とは違う基準を認めている。そうしないと災害がおさまらないからだ。

この時に無理やりに平時の規制値を当てはめると、技術的に無理なばかりか、社会的なコストがかかりすぎてしまう。

それにかえって消費者の気持ちが、えっ、こんなに高いのに大丈夫かしら、となってしまってかえって心理的ストレスのほうが健康に害となってしまう。

しかし、ある程度災害対策が進めば、環境に放出された放射線量は減っていき、農産物の安全管理や土壌の除染も進むから、緊急時規制値を下げていかねばならないのはあたりまえだよね。

だから事故から一定期間たったら緊急時規制値から平時の規制値に戻してやらなければならないんだ。」

なんとなく判りましたか?「平時の基準は緊急時にはあてはめられない」ということです。それは現実的ではないからです。

ちなみに、今の日本には輸入食品に対しての規制値はありますが、国内の平時における放射線リスクに対する規制値は存在しません。

これについて、おそらくは日本の生協でもっとも放射能対策が進んでいる東都生協はこういう言い方をしています。とても参考になるので引用します。
http://www.tohto-coop.or.jp/news/upload_pdf/upload/(20110707放射線当面の対応チラシNo6.pdf)

「東都生協は、今回の福島第一原発事故にともない政府が決定した食品衛生法 の「暫定規制値」は、あくまでも非常時のものであり、平時の規制値とは同列 には扱えない、「がまん基準」であると理解しています。

現在、「がまん」の許容程度についても専門家の間でも様々な意見が出されています。このような中で、東都生協が独自の残留放射能基準を設定することは、組合員や取引先、社会に誤解や混乱をもたらしかねません。

現状では、政府が発表する残留放射能検査結果(対象地域、品目、検出数値など)をしっかりと確認と分析をおこない、これを活用しながら自主検査を継続し、組合員に対して正確な情報提供をおこなっていくことが大切だと、考えています。」

もう私が付け加える必要がないほど妥当な方針です。この「がまん基準」という表現は、まさにそのとおりです。

今、この「がまん基準」から、もっと長い将来を見越した対策に立った本格的な規制値が作られようとしています。

■写真 霞ヶ浦の夏です。まだ悪あがきしている暑さよ、去れ!

« DASH村再訪  浪江町の現状の線量測定と帰る夢 | トップページ | 暫定規制値の「初めのボタンの掛け違い」 »

原子力事故」カテゴリの記事

コメント

暫定基準のお話ですが、基準と言う話では我々酪農家は365日基準との戦いです。

濱田様の歯がゆい気持ちは、とても理解出来ます。例えば、乳脂肪は3、5%をたった0、01切ってもペナルティ金を取られます。サンプリングの差、判定の誤差の範囲でもやり直しは受け入れられません。とても歯がゆいです(泣)。しかし、これに異議申し立てに応じていたらルールが崩壊してしまいます。

今回の放射線の基準に至ってはその基準の決め方から曖昧なものですから尚更ですね(涙)。

しかし、こと風評被害の話になると濱田様の言われる『武田氏の発言』以前に、決して農家が悪い訳ではありませんが放射線反応のでる肉や米を『安全です』と言いながら市場に出してしまった事です。あの放射線漏れ事故の後殆どの全国の農家は、被災地域の農業関係の方々に『慎重にやってくれよ』と思った筈です。私も素人ですがテレビで爆発の映像をみて『これは大丈夫じゃないだろ』とおもいましたよ、枝野氏がなんと言おうと。放射線反応の出る農産物が市場に万が一でればこうなる事は容易に想像出来ましたよね、でも出てしまった。だから武田氏がどうのこうのではないと思います。
既にその時点で政府ばかりでなく農業関

まさしく緊急時におけるガマン基準が500Bq/kg

せめて輸入品の370にまでは下げるべきだとは思いますが、たぶん今年はこのまま行くんでしょうね。

そんな現実を知らずしてか、玄米52ベクレルでこの前大騒ぎしてる人もいましたし、計って検出限界以下だと出ても「東日本の食い物は終わり」と唱える学者もいますからねえ。
そんなの知ったこっちゃないやです。

我が県でも収穫後玄米の検査が始まりました。結果が出るまでしばらくかかりますが、それまで出荷自粛。もし計測されても「検出限界以下」の製品から出荷されるとの決定がでました。

原田英男氏のTwitterから得た情報です。
厚労省9/12公表。「復興に向けたロードマップ」→http://t.co/G2i9CKH 11ページ「食品の安全確保に向けたロードマップ」、12ページ「原子力災害にかかる食品中の放射性物質への対応方針」

これを見ると、三次補正予算では暫定規制値に代わる規制値の設定に向けた必要な調査等を実施するための経費を計上と記されています。
実際にいつ新たな規制値が設定されるのかは、三次補正以降なのか24年度以降なのか、11ページの施策ロードマップを見る限り、曖昧ですね。

コンニチハ見てます。
ご存じだと思いますが
9月6日付で、国民に知られないようにひっそりと出した農林水産省「諸外国・地域の規制措置」 http://bit.ly/oUuJFm

東日本は放射能に汚染されている、東日本は終わりだ論で得をするのはアメリカです。日本人は放射能の東日本の農産物よりTPPのアメリカの農産物の方が良いとメディアを使ってそう扇動されているのです。しかしTPP導入は日本の農業の死を意味します。濱田様は東日本どころか日本の農業を守る使命があります。大変ですが頑張って頂きたくお願い致します。あの某番組は読売です。読売はアメリカのプロパガンダです。実際に正力松太郎とCIAの関係をお調べになってください。これを世の中陰謀論として片付けられている現状です。読売は原発を推進してきました。その責任は厳しく追求されてしかるべきです。私は読売、フジテレビは見ません。朝日、ТBSを見ています。すると左翼だというレッテルを貼られるのが日本の現状です。私は中道差左派です。しかし自称保守や沖縄の平和団体とは話が通用しません。私は祖父が農業をしていました。しかし祖父は農業を継げとは言いませんでした。自分のような苦労を孫にして欲しくなかったようです。農業とは日本人が先祖代々守ってきた文化です。これを破壊されてはもう日本は日本でなくなってしまいます。濱田様日本の農業の為にお願い致します。

暫定基準値一つで安心したり不安になったり、それが食べ物だけでも厄介なのに今や他に派生しつつあります。
それこそ「武田氏の発言」以前に基準値以上の食品の流出があり、不安感が広まる中で、「発言」によって過剰な反応をする人が増えました。
そんな人達の一部は、食品だけでなく物や人事態を差別し始めてます、悲しい事ですが。
宮崎口蹄疫の風評被害に似ていますね、今の状況は。あの時も宮崎の家畜だけではなく、「宮崎の野菜は買いたくない」「宮崎の車にいたずらをした」等、関係ないところにまで広がりました。
武田氏賛同者は一部の暴走する人にはしっかりと苦言を呈して貰いたい。
言ってる事は平時においては賛同する事もあるし、テレビの時のような中途半端な説明では誤解する人がいるのですから。

MICさん教養豊かなやさしい方が自身のブログで管理人さんの文句をズラズラ書いてましたよ。
あなたに向けても書いてたから見に行ったらどうですか?

言葉って難しいです。
5年以内に復興するぞ・・・を「吠えている」と解釈する人もいれば、復興してやるぞとの「覚悟(決意)」と捉えるか、人それぞれです。私は教養も無く優しくも無く加えて能力もありませんから、素直に後者で理解しました。
何かが起きた時は、現地の人でないと分からない事は多々あります。マスコミやネットからの部分的な情報をつなぎ合わせて、現地の状況を想像するしかありません。
マスコミの報道が全て正しく正確に伝えられているかまでは分かりませんが、一般国民はそれが真実だと思ってしまうのは極々普通だと思っています。
十勝沖地震の時も多くのマスコミが押し寄せてきました。その対応に苦慮したものです。
とかくマスコミは悲劇のヒーローを作り上げたいようで、二重苦三重苦の人は居ませんか?と探しまくります。よほど人の不幸を記事にしたいのでしょう。
そんな経験もありますから、マスコミ報道は話半分で見たり聞いたりする事にしています。
突っつき合うのではなく、知恵を出し合いましょうよ!!

福島からの避難者は私の村にも来ていらっしゃいますが、みな大変です。
ですから、もうこれ以上の避難民を出さない測定や除染が必要なのです。

福島からの避難者は当町にも9家族の方がいます。
たまたま福島県内のとある市と姉妹都市の関係もあり、避難されております。
私も相方と二人暮らしですから、子供たちの避難先として、役場にも申し出ています。たまたま私の所には今のところ要請はありませんが・・・・・
応援の方法はいろいろありますが、何か出来る事は無いか?といつも考えていますよ。

濱田様こんにちは。
県外に身寄りがあっても経済的に何とかなっても避難させてない二児の親です。子供らだけでも避難させたいと今まで何度となく家族で話し合いましたが、震災で心にキズをおったうちの子達は中学生ですが親元から少しの時間も離れることを拒絶しています。県民は除染除染で何とかこの地を人間の住める土地にしようとやっきになっています。残念ながらその一人一人の気持ちを行政や国がやっと追いかけている状況です。

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 暫定規制値は「がまん基準」:

« DASH村再訪  浪江町の現状の線量測定と帰る夢 | トップページ | 暫定規制値の「初めのボタンの掛け違い」 »