« 農水省による飯館村の除染実験 第2回 実験から見えてきたセシウムの性格 | トップページ | 「汚染地域」にも色々あり、「除染」方法はそのレベルに合わせないとダメだ »

農水省による飯館村の除染実験 第3回 なんと、ヒマワリの放射能移行係数はレタスと一緒だった!

Img_0013
今回の実験で、なるほどというか、ある意味意外という結果が出たのは植物による除染の失敗でした。
 

植物にセシウムを吸わせるという除染方法は、チェルノブイリで大々的にされた経験もあって、いわば放射能除染のシンボルのように思われていた時期もありました。 

私自身も5月頃まではそう考えていました。なんというのか景観的にもいいのですよね。良質の国産食用油が絞れるのも魅力でした。 

防護衣を着てマスクを付けた白づくめの怪人たちが、なにやらガーガーと大型機械で土を削ったりしているのより、おおわが村はヒマワリと菜種で溢れんばかりのほうが気持ちがいいに決まっています。 

私自身は自分の農場で2007年と2008年の2回菜種の栽培実験をしたことがあります。上の写真がそうです。1h弱の面積を播種しました。 

この実験を経て、大面積での栽培の良いところと悪いところは掴めた気がします。ご報告は、長くなりそうなので、別途にすることにしましょう。 

当時は放射能除染など念頭の片隅にもありませんでした。3月12日以降の中でがぜん注目を浴びたのがこのヒマワリと菜種であったのとはたしかなことでした。 

私たち農家としても、菜種は栽培が長期間断絶したとはいえ、ジイ様の世代まではどの地域でも作られていた作物であり、栽培方法や輪作体系の組み立てなどのおおよそ見当がついたことにもありました。 

また、栽培自体に手間がかからず、収穫もコンバインのスクリューコンベアからタンクに入るメッシュを交換するだけで稲作機械が使えるというのも魅力でした。

とうぜんのこととして、良質の食用油が絞れるのは魅力です。

仮に除染に使用したとしても、種子への移行率が低いのは知られた知見でしたし(汚染濃度にもよりますが)、食用にならずとも、イザという場合はバイオ燃料にもなるという切り換えもポイントが上がった理由でした。 

さて、この思惑がはずれたのは、原子力情報資料室の講演であっさりと、「いや~、菜種は思ったより放射能を吸わないんですよね。理由はわからないのですが」ということを聞いた時からです。 

このひまわりなどの高吸収作物が有効ではないというのが、今回の飯館村の農水省実験で改めても証明されてしまいました。
http://www.s.affrc.go.jp/docs/press/pdf/110914-09.pdf 

なぜか菜種はこの実験には入っていませんので、類推するしかありませんが、結果は実用性なしと判定されてしまいました。 

■除染実験概要 

●飯舘村現地 ・・・・土壌/褐色森林土
         ・・・・気温20.0℃
         ・・・・播種日5 月27 日
         ・・・・開花日 8 月5 日
 *
他二カ所

●結果と考察の概要 

「1)飯舘村現地圃場のヒマワリについて、開花時(8 月5 日)の放射性セシウム濃度は硫安+無カリ区において茎葉で52 Bq/kg、根で148 Bq/kg であった(表参照)。この場合の、土壌(7,715 Bq/kg)から茎葉への移行率は0.00674 であった。」 

002_2

「2) 飯舘村現地圃場の土壌の放射性セシウムは、平方メートル当たり、1,067,820 Bqと計算される。 

一方、ヒマワリの収量(新鮮重)が約10 kg/m2、放射性セシウム濃度が52 Bq/kg とすると、平方メートルあたり520 Bq がヒマワリに吸収された計算になり、平方メートル当たりの土壌に含まれる放射性セシウム(1,067,820 Bq)の約2,000 分の1 にあたる。このことから、ヒマワリによる除染効果は小さいと考えられる。」 

ちょっとショックですね。ひまわりの土壌からの移行係数はなんとたった0.00674です! 

この数値は、レタスの0.0067と同格であり、さつまいもの0.033とは比較になりません。 

ならば、ひまわりのような大きく成長して、扱いと処分に困るものではなくさつまいもを植えたほうがはるかに効率的に放射能を吸ってくれれることになってしまいます。

いや、農業者としてはやや自虐的な比喩ですが、いっそうコメにしたら農水省発表の移行係数は0.1です!コメはひまわりの1.5倍も放射能を吸い込むのですから!

このコメの移行係数は大きく見すぎだとしても、(*異説として0.0026あり)田んぼになにも除染作物など植えず、そのまま稲を植えていたらよかったことになります。

現実にこの選択肢はありえると思います。NPO法人・民間稲作研究所の稲葉光I國氏は事故当初からそう提唱されていましたが、それが裏付けられた格好になりました。

この結果を見る限り、そのまま稲を植えて食用にするかどうかの最終判断は測定してから決めてもよかったということになります。

しかし、おそらく、それでなくとも風評被害の嵐の真っ只中にあった福島県としては、除染にコメを使うこと自体で福島米のブランド価値が下がると考えたのかもしれません。

いずれにせよ、「除染作物」としては、巷で言われたようなひまわりは失格であり、コメやサツマイモなどの通常作物のほうが優秀だったという皮肉な結果に終わったようです。

特に、今後の除染植物を考える上で重要なことは、「農業として除染できる作物」です。土を剥ぐという方法は農業生産になにひとつ寄与しません。奪うだけです。

高線量地域はいたしかたがないとして、5000bqていどならコメを作って行く中で、耕耘し、拡散させ、作物に吸着させて、危険な部分はなにかしらの処分をし、過食部分は測定した後に利用判定していくのが現実的ではないでしょうか。

食用にならなければ、アルコールにしてバイエタにもなります。除染作物としてのコメが改めて注目を浴びそうです。

最後にもう一点。農水省は今後の除染研究の中で、除染の作付け体系を線量ごとに指標を作ってほしいのです。

たとえば、コメあるいはサツマイモから始まって豆類に繋げ、麦か菜種を一作はさむといったような浄化と生産が遊離しないような作付け体系を実証試験し、どれだけ除染効果があったのか、どれだけ農業生産があがったのかも調査してほしいと思います。

農業をしながら除染もする、これが大事です。

■写真 2007年4月下旬のわが農場の菜種栽培風景。この世のものとも思えない美しさです。ミツバチの羽音とかぐわしい香り。翌年はミツバチも組み合わせました。


002

|

« 農水省による飯館村の除染実験 第2回 実験から見えてきたセシウムの性格 | トップページ | 「汚染地域」にも色々あり、「除染」方法はそのレベルに合わせないとダメだ »

原子力事故」カテゴリの記事

コメント

あちゃーっ!
と声が出てしまうくらい除染植物と言われていたものがセシウム吸わないもんなんですねぇ…。

高線量地域では、数年間に渡りいっそ芋や根菜類を植えまくって処分(そこが問題なんだけど)するほうが、遥かに速くて現実的かもです。
作っては棄てるという、農家にとっては辛すぎることですが…。


りぼん様。
昨日のあなたが言っていたのはコルホーズやソフホーズを作れということでしょうか?
全く現実的ではありません。
事は農地ですので、宮城県知事が提唱しているような漁港の集約とは訳が違いすぎます。あれはあまりにも小さな漁村が点在しているので、水揚げ港を集約しようというもので、それでさえ大揉めです。
また非難地域でもありません。

投稿: 山形 | 2011年9月19日 (月) 07時56分

米の移行係数が実際にいくらなのか、非常に重要です。
米の検査はたくさん行われていますが、その場所の土壌検査がセットで行われていません。私の知る限り、宮城県登米市のみです。

米の移行係数を正確に把握することは、除染で表土を削るか反転や耕耘にするのか判断する上で、重要ポイントだと思います。

ですから、5000ベクレル以上の飯舘村村でも稲の作付け試験は絶対に行うべきでした。

投稿: 南の島 | 2011年9月19日 (月) 07時57分

南の島さん。おそらく農業環境技術研究所の0.0026のほうが正解ですよ。私が今計っている限り、ぜんぶ検出限界以下。

耕耘する前の数値がわかったところでも、たとえば仮に200bqあってもNDでした。

17%がモミと米にいくだけで、大部分は葉と茎に移行してしまうという今までの知見は正しかったようです。

ただ高線量地ではどうなるのか、絶対にやるべきでしたね!特に2万bq超え地域でやるべきでした。

イモを植えてアルコールにしてバイエタにするとかもっとやりようがあったと思います。ともかく除染しました。はいそれでオシマイではなく、次に繋げていく仕組みが必要なんです。

投稿: 管理人 | 2011年9月19日 (月) 08時08分

以前の私のコメントで大きな誤りがありました。

セシウムの95%が表面2.5cmにあるので、30cm耕耘したら1/10以下になるというコメントです。

土壌の測定では30cmまで採取し混ぜて計測しています。
http://www.s.affrc.go.jp/docs/press/110830.htm
畑で30cm耕耘しても数値は変わりません。
私が導き出した、表土の剥ぎ取りは25000Bq/kg以上でいいのではないかという結論は再検討しなければなりません。

もちろん耕耘したら、実際の表面の放射線量は1/10になりますので、農家や住民の被曝は格段に低減されると思います。これに関するデータも欲しいですよね。


今回の農水省の実験、飯舘村においては少なくとも非食用の作物は充分OKだと思います。もちろん住民の被曝が問題なければという前提です。是非、秋まきの菜種や麦などで再度実験してもらいたいです。

投稿: 南の島 | 2011年9月19日 (月) 09時52分

南の島さんのいう耕耘すれば表面の放射線量が減るというのは作業する農家にとっては重要ですね。確かに深耕+食用以外の作物の栽培ならばかなり許容できる範囲が広がりそうな気がするのですが現実的にはどんなんでしょうね。
もう一つ、少し話題がずれますが田んぼの場合は水を入れて代掻きしてその後の生育期間を通した水の出し入れがありますが、これによるセシウムの除染効果というのもあるのでしょうか。今後データが出てくるのだろうと思われますが。それから高線量圃場での米は栽培されなかったようですが、減反田んぼのように水管理のみされたような圃場もあるのでしょうか?

投稿: ぽんた | 2011年9月19日 (月) 19時04分

りぼんさんへ
昨日コメントの返事です。セシウム単体では不安定な物質で水に激しく反応します。アルカリ性の水酸化化合物なので中和されると別の化合物に変化します。気体になる仕組みは分かりません。塩化化合物が多いのは海水を注入した事によって化学変化して出来たと考えられます。雨が降って沈下(土壌中)しにくいのは陽イオンのセシウムイオンの状態になっていて、土のコロイド(粘土、腐植)に結合して保持されているためです。
自分の知っている範囲で答えて見ました。間違っていたらごめんなさい。

投稿: さばっち | 2011年9月19日 (月) 20時06分

除染が第一選択肢であることは疑いもない事実です。しかし、予算や処分地の事を考えると短期間に行えるかと言えば先行きは怪しいと思います。

除染が済むまでの間、農地をそのまま荒らしておく訳にはいきませんから、移行率の低い作物を使って農業を継続させるというのも選択肢だと思います。

そのためには、移行率の高い植物を探すだけでなく、同時に移行率の低い植物を探すこともやってもいいような気がします。

それと品種ごと、耕作条件ごとの移行率データをデータベース化して、誰もが最新のデータを共有できる環境を作れれば、農業関係者、消費者ともに有意義な情報になると思うのですが。

投稿: のりー | 2011年9月19日 (月) 22時39分

ぽんたさん。僕、耕耘(深耕)の重要性はこの数か月ずーっと書いてますが・・・(苦笑)。
改めてコメント欄で発見しないで、せめて「続・セシウム除染Q&A」くらいは読んでから書き込んでくださいね。お願いします。

投稿: 管理人 | 2011年9月20日 (火) 06時20分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/515571/52769074

この記事へのトラックバック一覧です: 農水省による飯館村の除染実験 第3回 なんと、ヒマワリの放射能移行係数はレタスと一緒だった!:

« 農水省による飯館村の除染実験 第2回 実験から見えてきたセシウムの性格 | トップページ | 「汚染地域」にも色々あり、「除染」方法はそのレベルに合わせないとダメだ »