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2011年9月14日 (水)

暫定規制値の「初めのボタンの掛け違い」

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暫定規制値というしろものについて考えています。

はっきり言って、私にとって今は迷惑な存在ですね。あくまで私個人ですから、多くの農家は違うかもしれません。

じゃあ、少し限定しましょうか。野菜にとってはです。畜産は牛肉の問題と藁、糞尿、堆肥の問題を抱えてしまいましたから、もっと複雑でしょう。

米は「ただ今現在奮闘中」という鉄火場ですので、ここで暫定規制値を変えられたらたまらないぜ、という気分はあるでしょう。

さて、ではなぜ私にとって迷惑かと言えば、答は簡単。緩いからです。緩すぎる規制値は消費者に誤解を与え続けています。

「農家は安全だというが、それは規制値ギリギリでも安全だって意味だろう」とか、「ヨーロッパはもっと厳しいゾ」とか、ですね。

そもそも、この暫定規制値は出し方からして失敗していました。初めのボタンを掛け違っていたのです。

今度事実上の原発担当大臣になった枝野さんが官房長官だった時ですかね、なにか大昔のような気がするのが不思議ですが、彼は政府の情報隠匿担当官のようでした。

例の放射能飛散状況を知らせるSPEEDI情報を「情報の一元化」で握りつぶして近隣住民、特に北西地域の住民に知らせず、当然3月中旬に分かっていたはずの炉心融解も知らせず、初期の放射性ヨウ素131とセシウム134、137を含む放射能雲が来る地域にも警告を発せずと、まぁ重要情報を隠しまくった人物です。

こんな情報隠匿の真っ最中に出てきたのがこの暫定規制値でした。

当初からナニこれ?というしろものでした。農業を知らないヤカバラが作ったに相違ないからです。

例えば、ホウレンソウが野菜で最初の出荷自粛対象になったわけですが、それを単品の規制として、地域を県単位にしてしまったのです。

県というだだっ広い単位の網でホウレンソウは出しちゃいかん、というわけです。おいおいですね。

放射能雲の通過は、3月12日、15日、22日のおおよそ3回ですから、その下にあった農地は皆ヤバイわけです。

ならば、放射能雲の通過した地域の農産物は、原則としてすべて出荷すべきではありませんでした。少なくとも、当時野外にあった農産物はすべてです。

問題は「品目」ではなく「地域」なのです。ところが、農水省ではなく、厚労省がこの暫定規制値を作ったもんですから、食品添加物や農薬規制と一緒の感覚でやってしまったのです。

食添や農薬なら、「〇月〇日をもって、これこれが禁止」で通るでしょう。しかし、農産物は同じ畑に植わっているのです。ホウレンソウの横には春キャベツがあるかもしれないわけです。

当然、キャベツにも放射性物質はかかっていますね。しかし、たまたま県の検出で引っかからなかったらオーケーだという論法です。

「そんなわけないでしょう」と消費者は思ったわけです。消費者の勘が正しい。

そんなわけないです。農家もそう思いました。しかし、当時は私たち農家も、一般国民と一緒で、なんの情報もなかったのです。県レベルですらそうです。

国は放射能雲の移動を知っておきながら、その地域を教えることすらしませんでした。

「農家は危険を知っていながらシカとしてわれわれに放射能入り食品を食べさせた」、という人が絶えませんが、批判は批判としてお受けしますが、当時は知らなかったのですからいかんともしがたい。

話はややそれますが、4月に放射能入り野外藁を出荷した農業者がバッシングを受けていますが、たしかに結果だけ見れば批判に値します。

だが、当時4月の上旬の国民に与えられた情報など限られたもので、私たち農家もその範囲の中で必死に情報をかき集めていたというのが実態です。

しかし、情報の大本にいた菅さんと枝野さんがひた隠しにしているんですからどうしようもありません。

結局、事故直後から3カ月間というもっとも重要な時期を、私たち農業者もまた、ネット情報しか頼るものはなかったのです。これが実情です。

話を戻します。このような大穴があいた規制で放射能を浴びた可能性がある農産物は出荷されてしまいました。

しかし、幸か不幸か、消費市場はそれを受け入れませんでした。これが「風評被害」です。

私は村の農家にボコボコにされること覚悟で言えば、あの風評被害は「正しかった」と思っています。

あの時期の農産物には放射能の危険性がありました。初期のもっとも高い外部被曝を受けているからです。

この初期のもっとも危険な時期を規制しきれていないから暫定規制値は消費者から信用されていないのです。

チェルノブイリの多数の子供を中心とする甲状腺障害は、被曝初期の牧草から来るミルクが原因でした。

おそらくは日本は、それよりはるかに低い放射線量であったと思いますが、しかし、厳然として危険はあったにもかかわらず、ザルのような暫定規制値の間違った「かけ方」で出荷されていってしまったのです。

結果、私たち農民は今に至るも批判を受け続けています。それは甘んじて受けましょう。私たちにも放射能に対する認識が不足していた点は多々あるからです。

胸に手を当ててみれば、結果論的になりますが、3月から4月にかけて私たち放射能の影響を受けた地域の出荷はすべきではありませんでした。

それに対する農家の損害のケアを、個々の農業者、団体がするのではなくJA全中レベルで政府や東電と交渉すべきでした。

しかし、今になってもなお、いやこのまま行けば永久に、国は自らの情報隠匿による社会に対する被害の非を認めないでしょう。

その証拠にその張本人の枝野さんが担当大臣になりました。この人事が意味するものは、あの原発事故処理で政府はなにも間違っていなかった、という政府のマニフェスト(宣言)です。

これが私の言う、「初めのボタンのかけ違い」です。

そして次の掛け違いは、これを国民に分かりやすく「緊急時規制値」だと説明しなかったことです。これについては昨日お話しました。

しかし、国民の多くはこれを緊急的な措置だと思っていません。そしてそれに農家は甘んじてぬくぬくと危ない農産物を出荷し続けていると勘違いしています。

これは事実と反します。私たちは、かなり前から農産物の放射能測定を開始し始めており、結果、現在は放射能の影響はないと言える段階に達していると思っています。

とまれ、暫定規制値はこのような不幸な誕生であったとしても法は法で生きています。私たち農家も不満があってもその下にいます。

それをして、「お前は暫定規制値の信奉者だ」などと言わないで頂きたいのです。

私たちも困っています。消費者も困っています。県も困っています。変えましょう。暫定規制値を変えていくしかありません。

国も反省こそありませんが、そのあたりは分かっていて、改正は既にそうとうなところまで始まっているようです。
食品安全委員会
http://www.fsc.go.jp/sonota/emerg/radio_hyoka.html

おそらく、来春の事故処理が区切りをつけた段階で改正案が出されるのでしょう。これに対して、消費者や私たち農業者も思ったことを言うべきです。

そうしないと、またいいように作られてしまいますから。

■写真 ニラの花です。実に地味ですが、今、路傍に咲き乱れています。

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コメント

早川地図は、早さとだいたいの危険性をまず示したという点で評価されると思います。そこに少しの想像力と応用力があったなら、、と思います。

http://www.agri.kagoshima-u.ac.jp/kfruit/Resources/FoliarUptake.html
お茶でどうして、セシウムが遠くの場所で出たのか、理解できました。農業って奥が深いですね。

そして、農作物?で食品ではないけれど、セシウム汚染腐葉土のように栽培された植物が汚染を広げてしまったようです。

http://atmc-tokyo.com/radiation/11160/
秋田:横手 【保育園の芝生からセシウム検出】

↑数値をみると、福島では問題にならないけれど、秋田じゃ、大問題になるんですね。

http://moribin.blog114.fc2.com/blog-entry-1065.html
芝生については、芝生がその下の土を守ってくれたことになるんでしょうか。

今日はWitam<放射能飛散状況を知らせるSPEEDI情報を「情報の一元化」で握りつぶして...>について、原発がある府県にはSPEEDの端末が有り知る事が出来ます。当然、”福島県知事”も知る立場です、他県での原発事故が起こった場合。北海道庁のSPEEDの端末で拡散状況が知る事が出来ます

斉藤さん。これは重大なことですが、おそらくこういうことではないでしょうか。

県は立地県なら末端があった。しかし、国から「一元化するから勝手な公表は差し控える」ように言われた。これにはソースがあります。

結果は同じです。国の隠匿です。県に末端だけあっても、それを公表をさせなかったのですから。

これも政府調査委員会の報告書ができるまで藪の中です。ただし、国が知っていたことだけは間違いありませんし、一義的な情報公開の義務が国あったことは変わりありません。

これは技術的質問ですが、おっしゃるとおりなら茨城のHPからでもSPEEDIは見れるわけですか。だとするなら、どうやってアクセスをするのでしょうか、ぜひご教示ください。
北海道ができるとして、3月12日から可能でしたか?当時の汚染地域の私たちは、必死の検索をしていましたがわかりませんでした。それが北海道で簡単にできるとなると・・・びっくりですね。

たしかに、立地県の中継機Ⅱで確認できると有りましたが仮に確認できたとして、情報を拡散したとすれば、まえの「中国船の衝突映像」同様、公開するのが当然の情報であっても公的秘密の漏洩となるのでは無いでしょうか

おそらくは現在時点ではSPEEDIは見られるのかもしれません。

しかし、今見られても仕方がないのですよ。あれの情報が欲しかったのは3月12日から23日までの間です。

あの時期隠蔽したのは間違いのない事実です。もし分かっていれば福島、茨城、千葉、宮城、東京東部などの1万人規模の人の被曝が防止できたはずです。

また、屋外に対する農産物や牧草、藁などに対する警報がひとつでもあれば、今の農産物の被曝のそうとうの部分を予防できたか、出荷しなかったはずです。

情報というのは、時を失しては無意味なデータにすぎません。

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