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2011年10月

農業再生実現会議はTPPへの参加が前提だった!    政府TPP内部文書は語る

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オバマ大統領は9月に訪米した野田新首相に普天間の解決と、TPPの参加を促しました。最初の普天間問題はとうの前に解決のしようがない状態になっています。 

いくら環境アセスをしてみても無駄です。前にもこのブログでも書きましたが、、地元の反対派市長に民主党政権が肩入れした瞬間、容認派の仲井真知事までをも敵に回すことになったからです。 

地元の市長-県までもが反対ならば、普天間問題は普天間基地の固定化されるしかなくなります。米国は痛くも痒くもありませんが、オバマ大統領は議会から普天間とワッセットになったグアムへの一部移転予算で議会から攻撃を受けるでしょう。 

TPP加盟提案は、鳩山元首相がズタズタにした日米関係を修復をちらつかせながら米側から提案があったものです。菅前首相はわれもなく飛びつきました。それが去年の突然のTPP参加表明です。 

この流れの中で、野田氏はこんなオバマ大統領に、「普天間もダメ、TPPもダメ」とは言えなかったのも当然といえば当然です。民主党政権の軽率な反米路線が、TPPを招き入れてしまったのですから。

一転して媚米政権になった民主党政権にとって、TPPへの参加の決定は、いわば既決事項でした。初めから答えありきで、党内にプロジェクトチーム(TP)を作ったのもガス抜きでした。TPは真っ二つになったようですが、そんなTPの結論などどうでもいいのです。 

後は、国民になんの情報も漏らさないこと。そのためには完全な情報統制とマスコミの翼賛化です。

なにを大袈裟なとお笑いの方は、昨日あたりの報道番組でTPPを取り上げたものがありましたか?午後7時からのバンキシャでは、モバゲー球団がどうのと延々と時間をさいていても、TPPのテの字も報道されませんでした。まるでなかったもののように。 

おそらくはマスコミの上層部の意思決定なのでしょう。しかし、現場サイドの報道からはこんな骨のある記事がスクープされますから、日本のジャーナリズムも死んではいないようです。 

政府のTPP内部文書が毎日新聞によって見事にスッパ抜かれています。(全文は欄外参照)この文書はおそらく、政府の国家戦略室が作成したものの漏洩だと思われています。 

文書は「APECで交渉参加を表明すべき理由」として、12年の米大統領選を挙げた。「米国はAPECで相当の成果を演出したいと考えている」と指摘。日本が交渉参加を表明すれば「米国は『日本の参加でTPPが本格的なFTA(自由貿易協定)となる』と表明可能」になり、大統領の成果になると分析した。」

私はこれを読んだ時に思わずそこいらのものを投げたくなりました。バカバカしい!野田政権は国民のために11月のAPECまでと急いでいるのではなく、11月までに決めると米国の覚えがめでたいので急いでいるのです。

ここまであからさまに政府内部文書で、「米大統領の成果」がTPP参加表明の目的とまで書かれてしまえば、国民としては、あんたどこの国の政府、と言うしかなくなるではないですか。

私たちの国の首相は、アメリカ合衆国日本州知事だったようです。こういう人間たちが、国を弄び、農業を弄び、地域を地獄へ突き落とす道を掃き清めているのです。

そして当然出てくるであろう国民の怒りに対しても、この内部文書はこう書いています。

衆院解散がなければ13年夏まで国政選挙はない。大きな選挙がないタイミングで参加を表明できれば、交渉に参加しても劇的な影響は発生しない。交渉参加を延期すればするほど選挙が近づき、決断は下しにくくなる。」

大きな選挙が13年夏までないので、今は何をやっても通るのだ、今がやり時だ、と平然と書いています。自分たちの政権の幼稚な反米路線のツケをTPPで挽回するには今しかない、と言っているのです。

そして今進行中の「農業再生実現会議」とやらもについても、明瞭にTPPがらみだと言っています。

「政府の「食と農林漁業の再生実現会議」は事実上、TPP交渉参加を前提としている。見送れば外務、経済産業両省は農業再生に非協力になる。」

なにが「農業再生実現」だというのですか。TPPとワッセットだということは、この「再生実現会議」は、日本農業のTPP焼け跡を「再生実現」するのが目的だ、ということになります。ふざけるのもいいかげんにしろ!

即刻、この「再生実現会議」から農業関係者は全員退場すべきです。そして今後の野田政権のいかなる農業政策も、TPPが裏にあると思って疑ってかかることです。

前原民主党政調会長は、「TPPへの不安は実態のないおばけである」とまで言っています。仙谷政調会長代理は、「農協だけが反対をわめいている」と言いました。よくもこういうことをへらへらと言えるものです。

「おばけ」かどうか、分かる範囲でリスクを箇条書きにしてみました。交渉の進展と共に、こんな私の上げるリスクは氷山の一角だとわかってくるはずです。

なにせ24分野で、細かいものまで入れればおそらく100を超える分野の「自由化」が同時多発で2015年までに起きるのです。

➊関税自主権の放棄によって農業が大打撃を受ける。その中には地域の基幹産業が多く含まれており、加工業なども含めて地域産業が壊滅する。

➋関税自主権の放棄は農業だけではなく多岐の中小企業分野にまで影響を及ぼすが、未だ範囲すら明確ではない。

➌遺伝子組み替え(GM)種子の解禁により、種子が農薬とワンセットになる危険性がある。そのことによる種子の外国支配が強まる。

➍BSE対策や残留農薬などの国民の健康を守る食品安全の国内規制が撤廃される危険性がある。

➎協同組合の共済制度が解体される危険性がある。これを通じてJAの共済・金融部門の切り離しと弱体化が進む。

❻郵便局の簡易保険が解体される危険がある。これにより、国民が安いく加入できる保険や共済制度がなくなり、保険会社の一元支配になる。

❼農業への外国資本の参入が始まり、外国人による農地取得や外国資本の農業法人化が進む。

❽公的医療保険制度が解体され、公的医療保険+任意医療保険の混合診療となり、国民の負担が増える。

米国の法律サービスの流入。米国流訴訟システムの流入リスク。

❿いったん締結すれば゛いかに国民が不利益を被っても後戻りできない条項(ラチェット条項)を適用される可能性がある。また外国の企業が不利益を申し出て、ISD(「国家と投資家の間の紛争解決手続き」機関)で勝訴すれば国内法を超越できる。

このような農業、保険、金融、法務などの改変は米国は既に10年以上前から日本に対しておこなってきた「年次改革要求書」で要求してきており、その延長線上にTPPがあるのです。「おばけ」でもなんでもなく、米国の日本に対する要求の総仕上げとでもいうべきがTPPです。

明日にも民主党の党内とりまとめが開かれようとしています。TPの反対意見は無視され、グローバリズム路線を突き進むつもりでしょう。

そしてかつて小泉改革で見たハゲタカ共がまた、大挙して日本の農地を、国民の健康を、そして自然を食い散らすのです。

■写真 朝の山々がおぼろに浮かぶ

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TPP:政府、文書に本音 11月表明「米が最も評価 

毎日新聞 10月28日(金)2時31分配信 

 環太平洋パートナーシップ協定(TPP)交渉への参加問題で、交渉に参加した場合のメリットなどを分析した内部文書を政府が作成していたことが、27日分かった。文書は参加表明の時期について、11月のアジア太平洋経済協力会議(APEC)が「米国が最も評価するタイミング」と指摘。「TPPに参加表明するからこそ(現在進めている)EU(欧州連合)や中韓との交渉が動く」として、参加表明が他の2国間のEPA(経済連携協定)交渉にも好影響を与えるとの考えを示した。

 野田佳彦首相はAPEC前の交渉参加表明を目指しているが、与野党には慎重論もある。交渉参加のメリットと参加しなかった場合のデメリットを分析し、参加の必要性を説明するための資料となるとみられる。

 文書は「APECで交渉参加を表明すべき理由」として、12年の米大統領選を挙げた。「米国はAPECで相当の成果を演出したいと考えている」と指摘。日本が交渉参加を表明すれば「米国は『日本の参加でTPPが本格的なFTA(自由貿易協定)となる』と表明可能」になり、大統領の成果になると分析した。

 参加表明を決断できない場合、他のEPAやFTA交渉への悪影響に言及。交渉が始まっているEUについて「足元を見られて注文ばかりつけられる」と予想。中韓とのFTAも「中国に高いレベルの自由化を要求できなくなり、交渉入りできなくなる可能性が強い。中韓FTAだけ前に進み日本が取り残される」としている。

 選挙への影響を懸念する党内意見については、衆院解散がなければ13年夏まで国政選挙がないことに触れ「交渉に参加しても劇的な影響は発生しない」とした。
 文書は慎重派との「落としどころ」にも言及。実際の交渉参加は最短で12年3月以降と見込み「3月までにしっかり議論し『参加すべきでない』との結論に至れば、参加を取り消せばよい」と指摘。取り消す場合は「党側が提言し、政府は『重く受け止める』とすべきだ」と提案した。「日本が直面しているのは、参加を途中で取り消す『自らの判断』が批判を受けることではなく、方針を示せないという『自ら判断を下さないこと』に対する批判だ」と指摘した。【小山由宇】

 ◇政府のTPPに関する内部文書(要旨)

 ▽11月のAPEC(アジア太平洋経済協力会議)で交渉参加表明すべき理由

・米国がAPECで政権浮揚につながる大きな成果を表明するのは難しい。日本が参加表明できれば、米国が最も評価するタイミング。これを逃すと米国が歓迎するタイミングがなくなる

・交渉参加時期を延ばせば、日本は原加盟国になれず、ルールづくりに参加できない。出来上がった協定に参加すると、原加盟国から徹底的な市場開放を要求される

・11月までに交渉参加を表明できなければ、交渉参加に関心なしとみなされ、重要情報の入手が困難になる

・韓国が近々TPP交渉に参加する可能性。先に交渉メンバーとなった韓国は日本の参加を認めない可能性すらある

 ▽11月に交渉参加を決断できない場合

・マスメディア、経済界はTPP交渉参加を提案。実現できなければ新聞の見出しは「新政権、やはり何も決断できず」という言葉が躍る可能性が極めて大きい。経済界の政権への失望感が高くなる

・政府の「食と農林漁業の再生実現会議」は事実上、TPP交渉参加を前提としている。見送れば外務、経済産業両省は農業再生に非協力になる

・EU(欧州連合)から足元を見られ、注文ばかり付けられる。中国にも高いレベルの自由化を要求できず、中韓FTA(自由貿易協定)だけ進む可能性もある

 ▽選挙との関係

・衆院解散がなければ13年夏まで国政選挙はない。大きな選挙がないタイミングで参加を表明できれば、交渉に参加しても劇的な影響は発生しない。交渉参加を延期すればするほど選挙が近づき、決断は下しにくくなる▽落としどころ

・実際の交渉参加は12年3月以降。「交渉参加すべきでない」との結論に至れば、参加を取り消せば良い。(取り消しは民主)党が提言し、政府は「重く受け止める」とすべきだ

・参加表明の際には「TPP交渉の最大の受益者は農業」としっかり言うべきだ。交渉参加は農業強化策に政府が明確にコミットすることの表明。予算も付けていくことになる。
■野田首相は、TPP(環太平洋経済連携協定)の交渉に参加する意向を固めた。
フジテレビ系(FNN) 10月29日(土)21時7分配信 

 11月中旬にハワイで開かれるAPEC(アジア太平洋経済協力会議)首脳会議の際に、関係国に交渉参加を伝達する方針。政府関係者によると、野田首相は、TPP参加に慎重な鹿野農水相と、10月だけで数回極秘の会談を重ねてきた。

 鹿野農水相は、最終的に交渉参加を容認する考えを示唆し、これを受けて野田首相は、APECで交渉参加を表明する意向を固めた。民主党内では、慎重派が攻勢を強めているが、野田首相は11月4日をめどに、交渉参加容認の方向で意見集約したい考え。

 その後、記者会見などの形で交渉参加方針を国民に説明し、そのうえで、APECに臨む方針。しかし、慎重派が猛反発するのは必至で、政権運営に影響が出る可能性もあるとみられる。

追記 上記のフジ系列報道はまったくの捏造であることが分かりました。ここまで汚いことをするTPP推進派に唖然とします。 (11月2日記)

 

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We are the Antlers!

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勝った! 

鹿島アントラーズが今年もナビスコカップで一冠を得ることができました。絶望的なチーム状況と、アントラーズを支えてきた鹿行地域の震災による被災という最悪の条件の中で、ともかくひとつ冠をもぎ取ったことは、涙が出るほどうれしいことでした。 

上の写真は本拠地、カシマサッカースタジアムですが、大震災により客席や、照明塔の倒壊で4か月ちかく使用不能になってしまいました。今でも仮照明塔は本来の高さの3分の2の高さですから、目に直接入ってまぶしいこと。 

その上に放射能禍です。選手たちは練習さえできない時期が続きました。主将の小笠原は、岩手県大船渡高校の出身ですから、今回の被災には大きな衝撃を受けて、支援に走り回っていました。゛ 

彼のシューズに「東北魂」という文字がぬいつけられたのは、この時からです。彼はチームのためだけではなく、東北のためにも闘っているのです。 

今期の鹿島は、ちょうど選手層の変わり目の時期にいます。小笠原、中田、本山といった今までカシマの中核だった選手が年齢的な上限を迎えつつあります。このような時期は、次の時代を受け継ぐ選手層が育たないとガタガタになってしまいます。 

今期はその受け渡しがうまくいきませんでした。次代を担う、大迫、興梠のFW陣が調子をつかめず、気を吐いたのはエース野沢と山形から返ってきた田代でした。特に田代が帰ってこなかったらと思うとぞっとします。彼は素晴らしい選手です。 

昨日の試合を見ると、後方から中田、新井場、曽ヶ端といったベテラン陣が大声で指示を出していました。大歓声の中でも聞き取れたほどです。その檄を受けながら、チームの中堅に育ちつつある野沢、青木が突破し、新鋭の遠藤、大迫、柴崎が幾度となくレッズの守備陣を切り裂いていました。 

ベンチの西、昌子、そして最後に出場のチャンスがあった増田も共に闘っていました。このような一丸となる団結力の強さこそが、わが鹿島の強さの原動力です。 

今回の一冠の最大の収穫は、新しい次代の鹿島アントラーズの布陣が見れたことでしょう。そして私たち被災地に大きな力を与えました。 

最後まであきらめることなく闘ってくれた浦和レッズにも敬意を評します。レッズは、リーグ戦でカシマ・スタジアムが使えないときに、浦和スタジアムの提供を申し出ていただいた恩があります。 

レッズは永遠のラインバルです。国立を真っ赤に染められるのは鹿島と浦和しかいません。 

ああ、昨日は祝杯に酔いしれました。本当にこんな美味い酒は震災から初めてです。 

ありがとう、鹿島アントラーズ!
We are the Antlers!

 

 

■追記 仙谷氏が前原グループの会合で、「農協はTPP反対でわめいて走っているが、物の分かる人を何人か捕まえて中立化する。あるいはこちらの応援団を中につくっていく」とのことでした。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20111029-00000526-san-pol 

政権中枢の政治家とも思えない、あまりに品がない言葉にTPP推進派の精神の薄汚さをみます。TPPについて彼らは、「農協がわめいている」程度の浅い認識なようです。これで推進などとよく言えるものです。 

一方、野田首相はTPP参加を決意したそうです。http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/fnn?a=20111029-00000523-fnn-pol

農業と地域が潰れようと、主権を売り飛ばそうと平気なドジョウを許しておくわけにはいきません。

今日はせっかくいい気分なので、このテーマで書く気がしませんでした(笑)。

 

 

 

 

 

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TPP国民向け説明文書の虚偽記載と、公的医療制度の破壊をもくろむTPP

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TPPに対して政府が公表した国民向け文書がウソであることが発覚しました。この文書の中で、政府は「公的医療制度はTPPの交渉対象になっていない」とチャラっと書きました。(資料2参照) 

これが日本農業新聞10月26日のスクープででたらめであることが発覚してしまいました。(欄外資料1参照) 

真実は、米国はUSTR (米国通商代表部)が9月に「医療品アクセス強化のためのTPPでの目標」の中で、米国のTPP交渉で医薬品のアクセス強化を要求することを明言していました。(原文は資料3参照) 

ここにも先日の記事でふれましたISD(「国家と投資家の間の紛争解決手続き」)条項の発想と軌を一にするものです。米国が考える「国際自由貿易」の原則が分かります。 

それは、当該国の国民の健康、環境、福祉、医療などが主語にあるのではなく、あくまでも「海外投資家の利益」がTPPの主語なのです。ここを理解しないとTPPは理解できません。 

日本は長い時間をかけて、WHO(世界保健機構)が2005年の「健康達成総合評価」の中で世界一と絶賛する公的医療制度を作ってきました。問題はあるにしても、それはわが国が誇っていいことです。

どんな僻地でも、いつでも病院に行けば、安い対価で診療を受け、薬品を受け取れる仕組みは、外国にはほとんど見られないものです。これがどれほどの安心感を私たちの生活に与えているのか、空気のように忘れかけていたほどです。 

米国では公的医療保険制度はありません。ですから、急病で倒れて救急車で運び込まれて緊急救命室に運び込まれてとりあえずの措置を施されれば、病院スタッフからこう聞かれます。 

「あなた、現金持っていますか?あるいは医療保険に加入していますか?」。ノーと言おうものなら、「はい、すぐにお引き取りください。ご自宅で静養を」、というわけです。そしてこの医療保険がバカ高いときています。 

金持ちは医療を受けられるが、貧乏人は自宅で売薬でごまかすしかない、これが米国のもうひとつの姿でした。 

これはいくらなんでもひどいということで、オバマ政権はヘルスケア法案を作って、少しでも国民に平等な医療機会を受けられるようにと考えていますが、法案が通るかは不透明です。というのは、貧困層まで含めて税負担が増えるからです。 

さて、この米国でのヘルスケア法案に対し大反対した業界が2つありました。それが医療保険業界と製薬会社です。彼らは、これまでどおりの高価な医療保険と、それに支えられた医薬品販売ができなくなることを恐れたのです。 

そこで海外に目を向けました。それが世界第2の保険大国日本です。今まで小泉改革で、保険業界に参入は可能となったのですが、今ひとつうまみがありません。それはそうです。日本での医療保険は、あくまで公的医療保険の補完物でしかないからです。 

日本人で健保には入らず、全額医療保険という人は皆無に等しいでしょう。これでは米国の保険会社は、高度医療がどーしたとか、ガン成人病特約なんじゃらといったせこい儲けで我慢するしかないわけです。 

ほんとうは米国のように公的医療保険制度などなくて、全部を保険会社と医薬品会社が仕切りまくる、これが彼らの理想郷なのです。 

そこでTPPです。「TPPのための米国企業連合」に、ファイザーやジョンソン&ジョンソンが名を連ねているのはそのためです。

彼らがどのようなことをTPP渉において行うのか、目星はついています。米豪FTAと米韓FTAでの彼らの要求が分かっているからです。

それは、相手国に対して、「不当に安く薬価を抑えている」と難癖をつけます。それは「海外投資家の利益を損なうからだ」と決めつけます。なんてこったい、まったくヤクザだよ、これは!

思い出して下さい。TPPの主語は、あくまでも「海外投資家の利益」なのです。国民の福祉・幸福など二のつぎ、三のつぎでしかありません。

海外投資家にとっては、口では「皆様の健康のために」などとキレイゴトはタダですからいくらでも言いますが、保険会社は保険料で得た巨額の資金を投資市場にまわしたいのが本音なのです。

オーストラリアは情けないことにこの圧力に屈して、公的医療制度を改悪してしまいました。医療費と医薬品価格は急騰したことはいうまでもありません。

韓国はも防ぎきれずに、「薬価が安い」(!)という海外投資家の不服審議のための協議機関を設置させられてしまいました。早晩、オーストラリアと同じ運命を辿るでしょう。

米国はTPPにおいて、まず日本の公的医療制度、保険制度が、海外投資家の参入を妨げている関税外障壁となっていると断罪してくるでしょう。

その上で、医療費や薬価の規制撤廃を求めてきます。これの見直しを求めて協議機関の設置を求めます。おそらくは「医療制度改革」という耳に快い言葉を乱発するでしょう。

そしていったんこの協議の場に引きずり込めば、米国にとって勝ったも同然です。なにせ、TPPは2015年までに無条件の自由化が目標ですから、ダラダラと引き延ばす暇はないのです。

ちなみに、FTAのほうは15年かけてと悠長ですが、TPPは、来年3月が参加リミットとして、3年強しか交渉時間がないので、それだけでも日本は圧倒的に不利な立場にいます。せめて日米FTAだったらと、カレー味の〇〇〇か、〇〇〇味のカレーかと悩むほどです(笑)。

おそらく日本の公的医療制度を根本から破壊することは不可能でしょうから(そんなことをしたら、内閣のひとつやふたつは軽く吹っ飛びます)、現在の医療制度の部分解体による、公的医療+任意保険医療という混合医療制度に持ち込もうとすると思われます。

これは健保の財政的重圧に苦しむ厚労省にとっても悪くない話ですが、結局、全部のツケは国民に回ってくるでしょう。薬価格の急騰、医療費の高騰です。

これを憂いた日本医師会は、農業団体と共にTPPに反対する意思を表明しました。(資料4参照)

TPPは「海外投資家」、つまりは米国企業にとっての利益を優先する協定です。そのためには、既存の日本の制度がいかに優れていて国民の健康・福祉、環境を守っていたとしても、それを解体して自分たちの欲得を貫くのです。

■写真 竹林の合間からライジングサンを見る今日の朝。

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■資料1 TPP交渉 米国の目標 医療制度見直し要求 政府説明と矛盾 
日本農業新聞  10月26日
 

 米国政府が、環太平洋経済連携協定(TPP)交渉で獲得する目標を列挙した資料に、公的医療保険制度の運用について「透明性と公平な手続きの尊重を求める」と明記し、同制度の自由化を交渉参加国に要求するとの方針を示していたことが分かった。
 
米国は既存の自由貿易協定(FTA)でも医療制度への市場原理の導入を交渉相手国に迫り、一部の国では既に薬価が上がっている。医療制度の自由化を目指す米国の方針が明らかになったことで、同制度は交渉の対象外と説明してきた日本政府の情報の信頼性が問われそうだ。
資料2 日本政府が公開した「環太平洋パートナーシップ(TPP)協定交渉の分野別状況 」、
「(イ)なお、公的医療保険制度など国が実施する金融サービスの提供は,TPP協定交渉国間のFTAでもGATSと同様に適用除外とされており,議論の対象となっていない模様。 」(12.金融サービス)
 
■資料3 【TRANS-PACIFIC PARTNERSHIP TRADE GOALS TO ENHANCE ACCESS TO  MEDICINES】http://keionline.org/sites/default/files/USTR_11sep2011_TPP_Trade_Goals_Medicines.pdf

日本薬剤師会の七海朗副会長は医薬品の安全性の担保などに懸念を示したうえで、「国民皆保険は憲法25条にうたわれている。

憲法の精神を曲げてまで参加するのはいいかがなものか」と述べました。
 

日本歯科医師会の宮村一弘副会長は「日本という風土でつくり上げてきた医療などの人間関係は、いったん壊れたら再びつくり上げるのは不可能だ」と語りました。 

山田会長は冒頭あいさつで、「政府、党として早期に結論を出す動きが始まっている。(TPP参加は)単なる農業だけの問題ではない」と懸念を表明しました。

集会に参加した議員からも「農業ばかりが反対しているように見えるが、医療も危ないという危機感を共有した」「日本が米国の属国扱いされる国になるのではないか」などの意見が出されました。
10月13日 「しんぶん赤旗 」
 

■日本の医療が危険にさらされている (日本医師会)
http://dl.med.or.jp/dl-med/teireikaiken/20110126_11.pdf

■日本政府のTPP 参加検討に対する問題提起 (日本医師会)
http://dl.med.or.jp/dl-med/teireikaiken/20101201_1.pdf

 

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米国のTPPの標的は農業だけではない!

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私はこれほどまでに非民主的な方法で自分の国の未来を大きく左右する案件が決められるのを見たことがありません。 

野田首相は与党内部すらまとめきらないうちに、見切り発車のようにしてAPECでTPP参加表明をしてしまうことを考えています。 

与党内意見集約は2日といわれており、もはや1週間を切りました。参加するという結論は、既に政府与党内部では一部を除いて既決事項であるらしく、おそらくおざなりな意見集約をして「反対意見は聞きおいた」になると思われます。 

すさまじいまでの拙速です。事実上1か月あるかなしやの周知期間で、国民の運命を外国に預けてしまうことを決定してしまうとは!本来なら民意を問うべき案件です。 

今まで政府がまともなTPPの説明をしたのを聞いたことがありますか?何が自由化分野なのかさえわからず、未だ与党内部ですら情報開示しろ、と騒いでいる始末です。密室政治が進行しています。 

大手マスコミは財界のスポンサーを恐れて沈黙を守り、一部テレビがタレントのやくたいもないスキャンダルと同列でわずかに報道する程度です。このマスメディアの意図的沈黙が国民のTPP理解の大きな壁になっています。 

一般国民には、農業が高い関税率で保護されているという誤解があります。この誤解から、TPPになればもっと安く食品が買えるという錯覚が生じています。 

そして財界は日本農業過保護論を言い立て、あたかも農業こそが自分たちの国際競争力を妨げていると言っています。事実誤認からくるトンデモ論です。 

事実は、日本の農産品の輸入関税は世界でも最も低い方に属しています。平均16%です。これは財務省の関税表をみればすぐに分かることです。
財務省貿易統計 実行関税率表 

野菜のような10%以下のほうが圧倒的であることがわかるはずです。ただ、地域を支える基幹産品である乳畜産物、サトウキビ、コンニャクなどに例外的に高い関税がかけられています。これは農業保護というより地域保護です。

確かに、コメや乳製品には特出して高い関税をかけちれていますが、このような高い税率は例外中の例外です。米国はこのわずかな例外を狙って攻撃をしかけてくるはずです。 

そして米国のカーク通商代表は、「TPP交渉において例外品目はない」と明言しています。おそらくコメ、小麦、乳畜産物の防衛は、いったん参加してしまえばほぼ不可能になると思ったほうがいいでしょう。 

米韓FTAではコメが逃れたような報道がありますが、実態は自由化に向けての協議は継続されており、おそらく早晩のうちに韓国は開放するはめになると思われています。 

また、米韓FTAにおいては韓国が作ってきた伝統的な農業の制度やシステムが標的となりました。 

たとえば農業共済制度です。米国は韓国の農業協同組合や漁業協同組合、郵便局、信用金庫の提供する保険サービスの自由化を求めました。 

このような各種の協同組合自体が米国には存在せず、これを世界標準=米国流に変えろという要求です。 

米韓FTAにおいて、米国の大きな要求項目は「保険、金融、法務の自由化」でした。この保険の自由化の中に、協同組合の共済事業が含まれていたのです。 

協同組合や郵便虚ルの共済制度は、地域を支える大きな柱として同じ職業や居住地を共にする人たちがお金を出し合って万が一に備える仕組みです。日本でもJAや漁協、郵便局の共済制度は地域の安心の柱です。 

これが自由化の障害となると米国は主張しました。共済制度を解体して、その資金を一般保険会社に預けろという無理無体です。とうぜん、この保険業界には、米国大手の保険会社が大量に参入しており、彼らの草刈り場となりました。 

また共済事業を切り離された農業協同組合や郵便局が大きな痛手を受けたのはいうまでもありません。韓国の農協は、近い将来分解されて株式会社化の道を歩むことになるでしょう。

そしてその農業法人に外国資本が参入する仕掛けです。こうして韓国農業と農地は外国資本に蚕食されて行くことになります。 

では、この共済の自由化で国民がなにか得をしたのか、といえば何もありません。協同組合や郵便局の低利の共済を奪われて、より高利の米国の保険会社に変わっただけです。 

米国は、既に小泉改革以来一貫して日本の保険業と郵便局の民営化・自由化を求めてきた歴史がありました。簡易保険と共済制度の解体も要求してきています。 

米国が狙うは、世界第2位の保険市場である日本の保険、金融分野です。TPPにおいて米国はこの完全自由化を要求してきます。 

そして同時に農地法の改正により農地の参入が認められた今、農地への外国資本の参入も考えているはずです。 

よく、「米国が何をTPPで何を売ろうとしているのか分からない、日本に米国から買う商品がそんなにあるのか」、という疑問の声を聞きます。そこで農産品野自由化のためのTPPなのかと短絡するのですが、そうではありません。 

米国は既に、日本の穀物市場を征圧して久しく、寡占状態だと言っていいでしょう。コメはそもそも売るほどのジャポニカ米を彼らは持っていません。

米国がほんとうに売りたいのはモノそのものではなく保険商品や金融商品、法務・会計・税務などのサービス商品です。あるいは、日本の農業・農地への外国企業の資本参入です。

そのために日本の伝統的な仕組みを解体してしまう必要があったのです。日本の仕組みを支えてきた組織を解体に追い込み、事業を外国資本が吸収し、法律を変えていくというのが彼らの描いている青写真です。

別の言い方をすれば、こういうことを植民地化と呼びます。

私がTPPを輸入食料が安くなってラッキーという近視眼的な見方ではなく、もっと大きなわが国の仕組み、風土、伝統への挑戦だとみるべきだと言うのはそのためです。

■写真 わが村の麦畑。ちょっと色調のトーンを落としてみました。

■ 放射能問題は止めちゃったのか、という声を頂きましたが、TPPが一段落したら戻りたいと思っています。ちょっとお待ちを。

 

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■ 民主 TPPに反発の意見衰えず

 野田総理大臣は、17日、TPP=環太平洋パートナーシップ協定の交渉参加に前向きな意向を表明しましたが、民主党内では、政府の情報提供が不十分だなどととして、反発する意見は衰えておらず、交渉参加を決断した場合、党内の意見対立が激しくなるのではないかという懸念も出始めています。

 野田総理大臣は、17日、内閣記者会のインタビューで、TPPについて「アジア太平洋地域は間違いなく成長のエンジンになるところで、その中で高いレベルの経済連携をしていくことは、日本にとってはプラスだ」と述べ、交渉参加に前向きな意向を表明しました。

 これに対し、同じく17日に開かれた交渉への参加の是非を検討する民主党の作業チームの総会では、出席者から「アメリカなどが、日本に対してどの分野で自由化を求めようとしているのか明示すべきだ」とか、「中国や韓国が交渉に参加する判断をしていないが、理由がよく分からない」などと政府の情報提供が不十分だという批判が相次ぎました。

 TPPへの参加に慎重な議員は、すでに190人を超える署名を集めており、輿石幹事長は記者会見で「この問題は、議論のしかたによっては党を二分することになりかねない」と述べました。慎重な対応を求める議員は、18日以降も会合を開いて、TPPに参加した場合、医療など農業以外の分野にも影響を及ぼしかねないと訴えていくことにしています。

 このため民主党内では、野田総理大臣が来月前半のAPEC=アジア太平洋経済協力会議の前に交渉参加を決断した場合、党内の意見対立が激しくなるのではないかという懸念も出始めています。


NHK 10月18日 5時16分

 

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反面教師米韓FTAの正体

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財界は米韓FTAをたいそううらやましいとみえて、何かと「ライバルの韓国が米韓FTAに合意したのだから、日本も乗り遅れるな」と煽ってきました。冗談ではない。あのどこをモデルとするというのですか。 

あの米韓FTAはいかなる意味でもわが国が見習うべき協定などではありません。あまりにもひどい協定内容に、愕然とするほどです。よく韓国がこんな不平等条約を呑んだな、とため息すら出てきます。 

米韓FTAは、従来のFTAと比べ格段に広い範囲が協定範囲になっています。分野の範囲は製造物や食品の貿易のみならず、金融、投資、政府調達、労働、環境にまで及んでいるのが特徴です。おそらく世界でもっとも過激なFTAと言ってよいでしょう。 

一国丸ごとの「包括的自由化」、これが米韓FTAの最大特徴だったわけです。そしてこれは今日本がまさに参加しようとしているTPPのひな型そのものです。 

その意味で、反面教師としての米韓FTAを見ることには無意味ではないでしょう。 

米韓FTAには、とうぜん「おいしい話」がちらつかされていました。いわゆる「餌」です。自動車関税2.5%、電気、電子製品関税の5%撤廃です。ヒョンダイ、サムソンはこれに涎を垂らしました。 

冷静になれば、韓国も米国での現地生産が進んでいたのですから、そういい話ではなかったはずなのに、米国が耳元でささやく「内国民待遇」という甘い響きにうっとりしたのでしょうか。 

現在の韓国企業のシェア拡大は、関税とは無関係です。海外生産があたりまえとなってしまっては関税は、いわれるほどのブロック効果を持ちません。シェア獲得競争で威力を発揮するのは、関税ではなく通貨価値・為替相場です。 

今、大変な外貨不足に呻吟していく韓国は、ウォンが売りまくられて史上空前のウォン安になる一方、わが国は真逆の超円高に苦しんでいます。

韓国はこれを奇禍として輸出攻勢をかけています。どうやら日本が通貨スワップを申し出て救済されるようですが、あんがい韓国の本心はこのまま破滅的ウォン安を武器にして突撃したいのではないでしょうか。 

しかし米国も伝統的重要産業である自国自動車業界を潰す気などさらさらなりません。ましてオバマ大統領は「200万人の雇用を創出する」と国民に宣言したばかりですから、しっかりとこの無関税化には付帯条項がついています。 

もし、輸入韓国車が、米国製自動車の販売や流通に対して悪い影響を与えると米企業が判断した場合、米政府は無関税条項を無効にできるという一項がありました。なんのことはない、米国のこりゃヤバイという恣意的な判断でいつでもこの甘い餌は取り上げることができるのです。 

逆に韓国は、自国の自由化がこりゃいかんと思って引き返そうと思ってもダメ。それはラチェット条項があるからです。ラチェットとは歯車の歯止めのことで、後戻り不可条項のことです。 

このラチェット条項が適用されるのは、銀行、保険、法務、特許、会計、電力・ガス、宅配、電気通信、建設サービス、流通、高等教育、医療機器、航空輸送などの米国が強力な競争力を持つ分野で、自動車、電気・電子製品はありません。 

つまり、米国は自国が有利な分野ばかりを選んでラチェット条項を入れさせたわけです。自国に有利な分野はノーリターン、自国に不利な分野は不利になったら無効というまさに二枚舌のダブルスタンダード協定の最たるものです。 

おまけにこんなものもついてきました。それがISD(「国家と投資家の間の紛争解決手続き」)条項です。 

耳慣れない言葉ですが、このISDとは、たとえば 日本が自国民の健康や安全のための政策を作ったとします。そうですね、BSE対策だとします。 

これによって米国は全頭検査を強いられていますが、FTAにおいてはこれを「海外投資家の不利益があった」としてISDに提訴できるのです。 

提訴先は、世界銀行傘下の「国際投資紛争解決センター」といういちおう第三者機関となっていますが、このての国際機関の多くがそうであるように、米国の息がかかっています。そもそも世界銀行やIMFからしてメイドインUSAの国際機関ですから、結果は分かりきっています。

ISDが審議するのは、投資先の国の公共の利益ではありません。あくまでも「海外投資家の被害」です。BSE対策が自国民の健康保護にいかに重要かを日本代表が訴えても、そんなことはWHOに言ってくれと一蹴されるでしょう。

マスコミ論調で、「GM(遺伝子組み替え)や、BSE対策を日本が取れなくなるのではないか、というのは杞憂だ。WHOがある」という論調がありますが、ISDはスピーディな審査がモットーですから、WHOで米国の強力な反対に出くわしてオタオタしているうちに、ISD裁定が出てしまいます。

その上にISDには控訴がありませんから、決まったらお終い。当該国の司法もこれをチェックできないというスーパー条項です。こんなものを韓国は丸々自国のみに飲まされてしまっているのです。

韓国にのみ?そう、信じがたいことには、米国に対しては適用されません。まさに不平等条約の典型といえます。繰り返しますが、よく韓国はこんなもの呑んだな・・・。

国内法をも超越し、逆に国内法を曲げてしまう非常に危険な条項です。現代の治外法権といってかまわないと思います。

韓国はFTAによって膨大な国内法の改訂を米国から要求されていますが、今後このISD条項を楯にしてさらなる治外法権化が進行することでしょう。ISD条項とは、各国が「国際自由貿易」の美名の下に、国民の安全、健康、福祉、環境より海外投資家の利益を優先する、まさに危険極まりない条項なのです。

私は韓国がわずかの関税撤廃の見返りで、自国民を外国に売り飛ばすが如きことをしてしまったと考えています。このツケはラチェット条項があるかぎり半永久的に続くことになります。

私が短期的な関税率の変化と消費者物価のみでTPPをとらえてはならない、という理由がお分かりいただけたでしょうか。

この米韓FTAの拡大バージョンが私たちに立ちふさがっているTPPなのです。まさに平成の不平等条約そのものです。絶対に阻止せねばなりません。

農業は農業のためにのみ闘っているのではなく、国民の安全、健康、環境のための闘いの先頭に立っているのです。

反面教師 米韓FTAについては、明日さらに続けます。

■ 秋空にたなびく流れ雲のシュプール。

 

 

 

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私の有機JAS体験からみたグローバリズムの実態

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私は今から12、3年前にグローバリズムの日本上陸の実体験をしたことがあります。有機JAS認証制度の上陸でした。

これは1990年代中ば頃から、コーデックスという食品の貿易自由化のための政府間協議の場で始まりました。

いや、正直な話、いきなり有機農産物という自分で言うのもなんですが辺境の地にバリバリのグローバリズムが降臨するとは夢にも思いませんでしたね(笑)。

なんで世間の片隅で、清く正しく美しく生きているわれわれに目をつけたのか、今でもさっぱりわかりません。要は、米国はオーガニック農産物で攻勢がをかけたかった、そして受けて龍農水省は、まぁあんな味噌っカス共はグローバリズムのいい実験台だと思ったのでしょうね。

コーデックスは、FAOとWHOによって設立された国連の下部組織ですが、事実上WTOの外部機関の色彩が強いところです。今回のTPPは何回もWTOのラウンドをやってもラチが開かないので、しびれを切らした米国が場を変えてみたくなったのでしょう。

やるたびに先進国と先進国、先進国と発展途上国と次々に火種が拡大してなにも決まらない、それがWTOでした。

そこで、米国は今度こそ日本に「逃げられない」ような仕組みを考えました。FTAすらやるかやらないかすらすったもんだする上に、やっても例外規定が山ほどありますからこれじゃだめだ。そこで最終兵器ででてきたのが、一見米国が環太平洋のワンオブゼムという顔ができるTPPだったわけです。

TPPは、要するに米国の罠ですね。おびき出す甘い餌は自動車や電気電子製品の関税自由化です。実際は現地生産のほうが今や多いですから、それほどのメリットはないはずですが、韓国に猛追されている強迫観念から抜け出せない日本財界にはえらく美味そうに見える餌だったようです。

さて、有機JASが国際協議の場で始まっているというのが私たち現場の有機農業者に知られるようになったのが、1990年代末のことです。実はそれまでにコーデックスでステップ7までいっていたのですから、なんのことはない、交渉の土壇場で私たち農家に知らされたというわけです。なんてこったい、ほとんど終わりじゃないか!

なんにつけ官庁は、自分で絵図を書いて、それにあった人選をした審議会を作って、何から何まで完全に決まってから、申し訳のようにパブリックコメントをちょっとだけ聞きます、というのが手口ですから、驚くには値しませんが。

ですから、TPPのようにやるやらないの段階から国民が関われるのは、たとえ1か月でも貴重です。有機JASはウンもスーもなく、「やりますから、意見言ってね」でしたから。

この有機JAS経験は2年ほど前に「私がグローバリズムと闘おうと思ったわけ」というシリーズで7回書いていますから、お暇だったら読んで下さい。
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2009/10/post-fbea.html

有機JASという制度は、ひとことで言えば有機農産物の挙証証明です。そもそも、農薬や化学肥料を「やった」ということを挙証するのではなく、「やらない」ということを挙証するんですから、話が逆だろうと思うのですが、「これもコーデックスで決まったことだ」のひとことです。

切り札は何といっても農水省の、「有機JASとらないと、今後有機と名乗れませんぜ」のひとこと。これじゃあ、やるもやらないもありしゃない。逃げ道塞いで、米国流を押しつけられたわけです。

苦い薬を飲む思いで、「しかたがない。ここを拒否すると話が進まない」と思い直して、コーデックス原案を読むと、一項一項腹がたつことばかりが、実にまずい翻訳文で列記されています。

たとえば、単肥と言って明治時代から使われてきた安全性になんの問題もない肥料の苦土石灰はダメ、硫安もダメ、尿素もダメ、、とダメダメ尽くしです。なんでかと言えば、コーデックス原案に、「天然由来の資材でも、製造工程で一切の化学処理がなされたものはダメ」という恐ろしい一項があるからです。

この一項に引っかけられて大部分の肥料資材が使用不可能になりました。これだけではありませんでした。

慣行農法の畑と有機農法の畑の距離が問題になったのです。「農薬の飛散防止」という一項があったからです。そこで原案を見ると、な、なんと40メートル開けろと書いてあるではないですか。

もう、唖然ボーゼンです。日本の農地で隣と40メートル開いている所があったら教えて欲しいもんです。関東では山間地しかないでしょう。

なぜこんな現実離れした一項があるのかといえば、米国やオーストラリアではそれが常識だからだそうです。バッキャ~ローと叫びましたね。ここは日本だ!(笑)

万事この調子です。わが国の風土、地形、歴史は一切合切完全に無視されます。伝統などクソくらえ。先行した国に合わせろ、靴に足をあわせろといわんばかりの無理無体です。

40メートル条項だけはいくらなんでもということで修正させましたが、後は丸飲みに近い形で決められました。いや、「見直しを5年後にやるからさ」という農水省の甘い声を信じた私がバカだった。

思えば、私に根深い農水省に対する不信はこの時に生まれたのですな。あの官庁は農民を守らない。官僚が規制できる仕事が増えるのが省益。

それをささやいた担当官は移動ししているわ、あった「見直し」とやらはもっと重箱の隅をつつくようなことまでがんじがらめにした強化案だったのです。もういちど言わせて下さい。バッキャーロー!ああ、スッキリした。

このように、私たち有機農業者は日本の農業界で最初の未知との遭遇をやらかしてしまったのです。

グローバリズムは、日本の伝統的、歴史的な技術、風土、経験、そしてそこから生まれた制度を一切認めません。あるのは「世界標準」という名の米国流です。

今、制度と言いましたが、米韓FTAでは農業共済制度がやり玉に上がって一般の保険制度と同格にさせられました。

おそらTPPでは日本の巨大な農業共済制度が標的にされるでしょう。米国の最大の標的は、農業ではなく保険、金融分野の自由化ですから。

おまけに韓国はラチェット条項も飲まされましたから、後戻りはできません。ラチェットとは歯車に後戻りをできなくする歯止めのことです。

当該国が、ちょっと自由化をやりすぎたかな、もう少し修正をしよう、としてもできない仕組みです。

米国がTPPで協議対象としている、銀行、保険、法務、特許、会計、電力・ガス、宅配、電気通信、建設サービス、流通、高等教育、医療機器、航空輸送などの分野で、自由化が認められれば、もう後戻りができないのです。

全中VS経団連というミスリードを大手マスコミはしているようですが、まったくの間違いです。経団連傘下のほとんどの分野に米国流グローバリズムの津波が押し寄せることになります。

こういってはおかしいですが、TPPにおいてわが農業などTPPの脇役のそのまた脇役程度の位置しか与えられていません。ただ、単独で受ける被害が大きいから主役扱いにされているだけです。

後戻りといえば、前原さんが「交渉の途中下車」などと口走って、さっそく官房長官に怒られたようです。一回交渉に参加表明すれば、締結のゴールまでいくしかない、したら最後、米国流のグローバリズムが怒濤のように日本に流れ込んできます。

私は自分の有機JAS体験から、それがいかに恐ろしいものであるのかを今日はお話しました。TPP反対議員が356名となったそうです。もはや農村議員だけがこの危険に気がついた状況ではないようです。ネット界では反対が大きく盛り上がっています。

野田政権とマスコミは、TPPを農業問題にすり替えることで締結を強行しようとしています。絶対にその暴挙を許してはなりません。以上、経験者は語るのコーナーでした。

■写真  秋の空にひつじ雲。

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TPP参加にNO!これしかありません!

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りぼんさん。コメント欄は狭いので本記事でお答えします。

まずは以下です。

「遺伝子操作について、何でも有りの米国に、対抗できるほど、日本の研究者は、研究していないことが、問題で、当然、隔離して、実験栽培する必要があるのに、日本の研究農場は、ほとんど隔離せず、実験を行っていて、下手をすれば、知らぬ間に、GM種が、一般農家の農作物に、まぎれて、存在しているかも知れないところまで、言ってます。」

別に日本が米国流のGM技術を持つ必要などいささかもないとは思いますが、モンサントはとっくの昔から茨城県つくば市に実験農場を持っています。ここではGM種の飛散・漏洩の噂が絶えません。

このどこが先進的なのでしょうか?「なんでもあり」という節操のなさ、倫理観の欠如においては非常に「先進的」ですが、彼らはGM種が漏洩・拡散していくことをなんとも思っていません。むしろいいことだ、くらいに思っているのではないでしょうか。

TPP締結以後はモンサント・ポリス(名は違いますが実在します)が、知的所有権侵害で訴状を持ってくることでしょう(笑)。己が企業の利益のみを追求し、地域農業の破壊などなんとも思わない彼らの姿勢が透けて見えます。

問題は、米国をどのように説得し、将来、どういう関係で、お互いの農業を、守るべきか?米国との交渉者が、あまりにも、日本農業を知らずに、交渉していることにあるのでは、ないですか?」

何をおっしゃりたいのか分かりません。米国と「将来どのようなお互いの農業を守るべきか」理解し合って交渉しろというのでしょうか。あるいは、米国の担当官が日本農業にもっと深い理解をするべきであるとでも。

そのようなことは何十年も延々とUSTR(米国通商代表部)とやってきて、米国は業を煮やしています。だから日米FTAではなく、無関税、内国民扱いを無条件に要求するTPPというダンビラを選んだのではないでしょうか。

TPPという大きなマサカリを研いでいる相手に対して、なにを今さら理解を求めるというのでしょう。米国には聞く耳などありません。

あるのは米国の一国利害です。それでいいのです。貿易交渉とはそもそもそういう冷徹なものなのです。

貿易交渉とは武器を持たない戦争です。そこには相手を崩すための知識は必要ですが、相手の立場への理解は必要はされていません。もしそのようなものがあれば、米国はわざわざTPPというFTAよりはるかにハードルが高い交渉の場に日本を引きづり出さなかったはずです。

日米FTAならば確実に日本に逃げられると米国は思っています。米韓FTAがそうであったように、さまざまな逃げを打たれて、結局は骨抜きにされるとにらんでいます。まぁそのとおりでしょう。

だからTPPだったのです。それに、米国が仮にコメ、牛肉をネガティブリスト(除外品目要求リスト)に入れることをアンダーテーブルでいいよと言っても、オーストラリアや東南アジア諸国、南米諸国がうんと言うとは限りません。

それに第一とっくに交渉ルールは決まってきており、多くの合意を積み重ねてきています。最後に加わってきて、そのちゃぶ台返しが出来るほど日本のお役人はバンカラではないと思います。

わが国は99%の確率で煮え湯をはがい締めにされて飲まされます。もっとも、自動車輸入関税2.5%廃止という小さな手土産くらいはもらえるでしょうが。

今どきになって能天気な前原氏は、「途中下車もありえる」などと党内融和を言っていますが、この人大丈夫でしょうか。そのていどの認識でTPPにノコノコ出かければ、大火傷しますよ。

いったん多国間外交交渉の場に出たら、引き返せません。そのようなことは外交のイロハのイでしょう。こんな人が外務大臣やっていたのかと、その幼稚さに思わずぞっとします。松下政経塾もたいしたことはない。

「日本政府は、遺伝子操作食物は、表面的には、嫌ってますが、実際は、すでに、輸入されてしまっている事実を、生産者だけでなく、消費者にも、理解してもらわねば、解決は、しないだろうと言うことを述べただけですから。」

 「韓国をはじめとして、中国も、いわゆるGM種を、海外の農地を大量に取得し、自国の農産物として輸入する、農地争奪状況が、進んでいるので、もう、日本の農地など、問題にしていない状況に、危機間を持っているだけです。」

GM農産物輸入とGM種子輸入はまったく違うのですが、ごっちゃにされていませんか。TPPにおいてはGM農産物など俎上にすら登りません。問題は「種」なのです。今は種が問題なのです。

今私たちは、米国巨大アグリビジネスからいかにしてわが国の固有品種を防衛するのか、GMに血道を上げている中国や韓国のような惨状にならないにはどうしたらいいのか、それを考えているのです。

GM種子が「日本など相手にしていない」なら大歓迎です。それとも相手にしてほしい、日本をパッシングしないでくれとでもおっしゃりたいのでしょうか。もしそのようなことで「危機感」を持つというならば、それは逆に私の楽観です。

日本はEUと同様に、GM種を意識的にブロックしてきています。単なる関税外障壁ではなく、それが外国による種子の一元支配に繋がるからです。まるで日本が遅れているから相手にされなくなるとでも言いたげな論法には大きな違和感を覚えます。

「輸入野菜が、安価で手に入ると言う消費者の求める、低単価農作物を支持する人が多すぎることにありますよね。」

TPPを議論する時にはずせないのはここです。「低価格の輸入農産物を求める消費者の声」そのものを説得していく必要があります。現実にTPP締結以降に農産物市場がどうなって行くのかについてシミュレートする必要があります。

私は牛肉、乳製品、豚肉、小麦、豆類、サトウキビなどの国内産業壊滅と引き換えに、わずかの「安さ」を手に入れるに止まると思っています。

そしてその「安さ」も、輸入食料が市場を征圧してしまえば、自由な値付けが可能です。すぐにちっぽけな「安さ」は取り返されるでしょう。

コメはかなり難しいので、単独で検討する必要があります。長くなりますから別稿ということでご勘弁ください。

そもそもデフレが日本経済の宿痾なのに、更にデフレにして何がいいのでしょうか。そろそろ「うれしい300円ランチ!」と叫ぶマスコミや、主婦層が気がついてもよさそうなものだと思いますが。デフレ脱却しなけりゃ、あなたのご亭主の給料も上がんないよ、と言いたいですね。

現在、「日本農業新聞」10月23日によれば米国経済団体は、オバマ大統領に、「TPPで例外を認めるな」という圧力をかけています。これは米国の最大の経済団体である全米商工会議所など43団体連名によるものです。

彼らの要求は、「いかなる産業分野、商品、サービスも除外しない包括的協定を達成すること」にあります。オバマ大統領は当然、再選を前にこの要求をうけいれるでしょう。というか、彼個人もこの考えだからです。

もはや政治的な手段による自由化例外措置は不可能だとわれわれは知るべきです。安易な譲歩はありえません。

TPP交渉に参加させない。一か月後に迫ったAPECで野田首相にTPP交渉参加などと言わせてはなりません。それは日本の地獄への道行です。

TPP参加にNO!これしかありません。

■写真 美しい朝焼けなのですが、よく見れば、いつのまにか日本の秋の雑草の主役となったセイタカアワダチソウ。なにかTPP以降を見るようです。

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モンサント社は日本固有の品種や米をGM化し、知的所有権を設定するだろう

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NAFTAでメキシコの種子がどうなったのかを調べてみました。

結論から言えば、すさまじいばかりのGM化の進行がありました。遺伝子組み換えトウモロコシが洪水のように米国から押し寄せてきたのです。

このGMトウモロコシによる被害はいくつかの側面に分けて見ることができます。

まずひとつは、GM種子が大量に米国から輸入されてしまったために、今までメキシコ農民が大切にしてきた多くの原種が失われていったことでした。

米国の巨大GM種子企業であるモンサントなどによる、原種のハンティングが盛んに行われたのです。その中には、密林のインディオたちが、先祖伝来大事に保存してきた原種トウモロコシや豆類も入っていました。これらが奪われていったのです。

そしてあろうことか、その一部はGM種子企業が商品化してしまい、それに特許権を設定して独占するという強盗まがいの非道なことすら行われました。

WTO体制下ではTRIPS協定(知的所有権の貿易に関する協定)が有効とされ、いったん裁判所により特許権を認められると、この。GM種子企業がその販売ができる唯一の法人となってしまうのです。

このような方法で、マジョコバ種の黒豆がメキシコの貧しい農民から奪われていきました。もはや、たとえば先祖伝来のマジョコバ黒豆を栽培するには、GM会社に特許料を支払うか、その種子を買うしかなくなってしまったのです。

TPP締結以降、モンサント社などのGM企業は堂々とさまざまな日本の品種を確保し、次々とGM化していくと思われます。

これはまったく合法です。彼らは日本固有の品種や磨き上げてきたコメを手に入れ(既に手に入れていると思われますが)、そのGM化を計るでしょう。

米ならば害虫耐性やイモチ病耐性を付加します。これだけで強い商品競争力を得ることができます。

既にコメは、愛知県試験場がモンサント社と協同してイモチ耐性GM種を作った実績があります。モンサント社つくば試験場にはさまざまな品種のGM化が実験されており、出番を待っています。

このGM処理された品種はまったく新たな品種として認定されます。それはさきほど述べたメキシコでのトウモロコシ原種裁判で、TRIPS協定(知的所有権の貿易に関する協定)が有効とされた判例があるので、日本でも同じく認められる可能性が高いと思われます。

たとえばGMコシヒカリは、木本のコシヒカリと異なった品種だとされて、GMコシヒカリの販売権は唯一モンサント社が有することになります。

そしてGMコシヒカリが風媒で花粉を他の水田に落とし、そこでできようものなら有名なモンサント・ポリスが飛んで来て、「これはわが社の知的所有権の侵害だ。提訴する」と脅すことでしょう。そうなったらもう買いたくなくても、買わないわけにはいきません。

そのときには、TPPで裁判サービスも今とはまったく変わって米国流になっているでしょうから、激増した弁護士がうれしそうに裁判を起こしてくれるはずです。

まるでマンガですが、実際にこれが米国やメキシコで行われている現実です。こんなことがなんの議論もないまま、後1か月後に野田政権によって強行されれようとしています。

心ある民党議員は脱党してでもこれを食い止める責任があります。山田さん、頑張って下さい。

■写真 北浦の湖湖畔の水田

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NAFTAに見る日本の近未来

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放射能のことを中断して、TPPについて考えています。実は放射能の研究会は昨日もやりまして、報告したいことは溜まっているのですが、なにせTPPまであと一か月ですんで、織りまぜながらやっていきます。

さて、私たちはTPPを考える時、米国が結んだ最大のFTAであるNAFTA(北米貿易協定)を参考にすることができます。

NAFTAはメキシコに巨大な影響を与えました。当初、このFTAにおいてメキシコが得るものが大きいと思われてきました。米国市場への労働力移動、トマトなどの安価な農産物輸出などは、疲弊していたメキシコ経済の救いの手とすら思われていたのです。

現実に、NAFTAはメキシコになにをもたらしたのでしょうか。それにはメキシコ人の食の中心であるトウモロコシを見ればわかってきます。

NAFTA以降のメキシコのトウモロコシを語る上で、問題点はふたつあります。

ひとつは、NAFTAによりメキシコのいわば命の食とでもいうべきトウモロコシの輸入量がどのように変化したのか、です。

メキシコ人にとってトウモロコシはありとあらぬる食に登場するソールフードです。粉にしてのトルテーア、スープに゛そして菓子にと、ありとあらぬるものに変化してメキシコ人の食を支えています。

それはマヤ文明から続く連綿とした食の歴史であり、伝統でした。それがどのように変化したのかを見ます。

そしてもう一点は、質の問題として、遺伝子組み替え・GMトウモロコシの侵入がどのていどなされてたのかです。このGM種に注目するのは、GM種が他の通常の品種と異なり、種子と農薬があらかじめワンセットになっているからです。

トウモロコシにたかるシンクイムシを殺すために、あらかじめ植物細胞内に殺虫成分を遺伝子組み替えで組み込んでしまいます。

これが害虫耐性ですが、これに耐性ができた害虫が生まれ、そうして更に強力な害虫耐性をもつ品種を作り・・・というお定まりの悪循環の中で、強力な農薬耐性をもった害虫が野に放たれました。これが予想もしなかった恐るべき生態系攪乱を引き起こします。

また、作物はなんともないのに雑草だけを枯らす、というのが謳い文句の除草剤耐性を持つGM種も作られました。これは、なんとこのGM種には同じモンサント社の除草剤にしか効かないというスグレモノでした。

農家はいったんGM種を導入すれば、ほぼ永遠にモンサントからGM種の種と除草剤を使い続けねばならなくなります。まるで麻薬中毒のようですが、これがモンサント社の目的だったのです。

元来農薬会社だったモンサント社が、いくつかの米国の種子会社を吸収していったのは、将来においてGM種子と農薬をセットで販売することによって、世界市場を種と農薬で一元支配することにありました。

やや誇大妄想が入っているように聞こえるかもしれませんが、事実、そのように進行しています。

モンサント社が米国市場を席巻しながら、次の標的と決めたのが隣国のメキシコでした。そして今、モンサント社の大きな障害は、頑固なブロック経済を築いて守りをかためるEUとわが日本だけとなったのでした。

ちなみに、米国の「TPP推進のための米国企業連合」の農業部門のメンツは次の通りです。顔ぶれだけで、米国の戦略がスケスケですね。

・カーギルモンサント、アメリカ大豆協会、トウモロコシ精製協会、全米豚肉生産者協議会

このような連中は、わが国内部の「思惑がある連中」と結びついてTPPで大儲けをしたいと考えています。それが先に明らかになったモンサント社と住友化成との「長期的協力関係」です。これが明らかに近い将来のTPPを見据えていることは言うまでもありません。

この「わが国内部の思惑がある連中」の筆頭が、住友化成の社長にしてTPP推進総司令部の経団連会長・米倉弘昌氏です。あまりの分かりやすさに失笑してしまうほどです。

さて、メキシカンのソールフードはどのような運命を辿ったでしょうか?

では、まずNAFTAによる米国産トウモロコシの輸入量をみてみましょう。アメリカからの輸入トウモロコシは、1991年締結時が131万トンであったものが、2005年には580万トンと4..4倍に膨れ上がりました。

なんだそんなていどかと、ふっと読み過ごしてしまうかも知れませんが、トウモロコシは実はメキシコ政府が国民の食の基本だとして重要品目(「センシティブ農産物」と呼びます)に特別に指定して保護してあるものなのです。

ですからNAFTAにおいても、1991年から2008年1月1日まで最長スパンで保護関税が認められていました。

本来、FTAにあっては「例外なしの関税撤廃」が原則です。ですから、当該政府がこれだけは待ってくれ、という品目(センシティブ農産物)を巡っては熾烈な交渉となります。日本ではさしずめコメを中心にして、牛肉、豚肉、乳製品あたりとなるでしょう。

メキシコ政府はとうぜん国民の主食の地位にあるトウモロコシに対して、高関税をかけてブロックしようとしました。ただし、先ほども言いましたが、条約で認められた最長幅である15年間に限ってですが。

ちなみに私は日米FTAが締結されてしまった場合、15年間ていどしか国産のコメを防衛できないと考えています。それはNAFTAの前例が有効だからです。

それはさておき、メキシコの現実はどうであったでしょうか。欄外図にその内実が無残に現れています。表の中心を斜め右上に伸びているのが、輸入制限枠です。毎年少しずつ輸入枠が増加する取り決めでしたが、現実には、斜め斜線で塗られた部分が輸入超過分です。

ところが、米国はまったく輸入枠制限を遵守しませんでした。平然と輸入制限枠を超えて輸出を増加し続けたのです。そのために本来はこれに賭けられるはずのメキシコの関税損失分は、12年間で実に33.6億ドルに達すると試算されています。

このようにしてメキシコは、本来の移行期間においてすら主食のトウモロコシを防衛できませんでした。そのために、マヤにオリジンがあるトウモロコシは、今や米国のトウモロコシ輸出第2位の輸入国に転落してしまったのです。

そして、1991年のNAFTA締結前には100%の自給率を誇っていたメキシコ国産トウモロコシは、2005年には既に67%にまで落ち込んでしまっていたのです。

自分の国の主食も守れんし、米国から関税も取れないなんて、メキシコ政府、なんたることだ、と思うのは私だけでしょうか。

このようにTPPは、いったん締結に持ち込まれてしまい、巨大な既得権益を与えてしまえば、煮て食おうと焼いて食おうとその国の首根っこを握った国の言うがままになるのです。それがメキシコとNAFTAの教訓でした。

私はNAFTAに日本の近未来を見ます。

■ 本稿は2009年9月3日の記事に加筆しました。

■ボリビアのラパスの風景。 撮ったのはカミさんです。

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* 農民連「メキシコ農業の実情」より参考のため引用させていただきました。ありがとうございます。

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米国による種子の世界支配とTPP

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ご承知のように、TPP推進派と日本農業解体派はほぼイコールな存在です。彼らは日本農業こそが前近代的な既得権益の巣であると思っています。それは一面当たっている部分があります。 

今日はそれを論じる所ではないのでふれませんが、TPP推進派の人たちは農業の内側からの変革は無理で、外圧のTPPで一回日本農業をぶち壊さないとダメだと主張します。この論調は小泉改革の時の新自由主義路線から現れてきて、DNAのように民主党に遺伝しています。 

しかし、その人たちが言うようにTPPによって日本の「前近代的既得権益」が破壊された後に何がやってくるのでしょうか?簡単なことです。米国による国内農業の支配です。

日本農業は諸外国と比べて変わった形をしています。それは徹底した内需主導型なのです。昨日、日本は輸入食料依存ではないと書きました。そうなのです。むしろ、食料自国調達型の一方の極でしょう。

日本農民は最近になるまで、果樹や米を外国に売ることなど頭の片隅にもありませんでした。よもや自分のりんごが世界一おいしいと思ってこなかったのです。

だから常に国内市場の枠内で他県の産地と激烈な競争を演じても、外国農産物との本格的な闘いを経験したことはまれでした。(*例外として中国輸入野菜やみかん、牛肉などがあります。)

一方、農業大国はおしなべて輸出農産物大国です。米国、フランス、ベルギーなどの畜産物はそもそも外国で消費されることを前提にして生産されています。ヨーロッパなどでは隣国に強力な同業があると、初めから生産を止めてしまうほどです。

だから、国内自給分以上を常に作り続ける分野があるために、自給率は高くなります。しかし、日本は国内自給を上回る農産物は、輸出に回さずに産地間の生産調整で解消されてしまいます。

言ってみれば、わが国は国内需給均衡型であったために、食味や品質管理は磨き抜かれましたが、国際市場のパワーは皆無に等しかったと言っていいでしょう。

これが日本の食料自給率が高くならない最大の原因であり、かつ、欧米農業の体質との最大の差です。わが国の外交が世界3位のGDPに匹敵する政治力がないように、日本農業は確かに欧州各国に匹敵する力を持ちながらも、国際市場力は皆無だったのです。

とりわけ農業分野の世界政治とでもいうべき「種子」と「穀物」の分野において、わが国は非常に危険な位置にいます。有体に言えば、価値判断をぬきにして、外国に全面的に依存しています。

種子は現在、急速な勢いでGM(遺伝子組み換え技術)化が進んでいます。米国の穀物はほぼ完全にGM化を完成させつつあります。このGM技術は、害虫耐性をもったり、あるいは農薬耐性を持たされて設計されています。

つまり、単なるタネではなく、使われる農薬とワッセットでそもそも商品化されているわけです。この技術は米国巨大農薬企業にして種子会社のモンサントが主力です。

そうです、農薬企業が種子までをも支配しているのです。これが21世紀の新しいスタンダードになりつつあります。しかし、世界支配には至っていません。なぜでしょうか。それはEUと日本が強力に反対しているからです。

反対している理由は、ひとつにはGMの安全性が確立していない技術であること、生態系の攪乱があること、そしてなにより、米国による種子の一元支配に対する警戒感です。

モンサントは、既にイモチ病耐性のGM水稲の種子技術を保有しており、TPP解禁と同時にこのGM種子の水稲と農薬をワンセットで販売攻勢をかけるでしょう。既に住友化成とは契約が結ばれています。

「農作物保護(雑草防除)分野におけるモンサント社との長期的協力関係について 」
http://www.sumitomo-chem.co.jp/newsreleases/docs/20101020_3.pdf 

ちなみに住友化成社長は、経団連の米倉会長その人です。

穀物のみならず野菜においても、現在ほぼすべての種子はF1ハイブリッド種子です。掛け合わされた品種が、生殖能力を持たず、持ったとしても劣化するために一代で消滅します。これが世界標準となっており、わが国もまたその渦に飲み込まれつつあります。

そして、野菜のFI種子の大本もまた、米国モンサントが握っています。彼らはありとあらゆる種を世界各国からジーン・ハントし、大規模にして長期の改良を加えた原種を握っています。

米国が世界農業の覇王であるのは、トウモロコシの輸出生産量にだけあるのではなく、その大本の原種を支配しているからです。

日本においては、穀物類はいうまでもなく、野菜類においてすら相当な品種の原種が米国に支配されており、原種の輸入を余儀なくされています。

TPPにおいて米国は確実にGM種子の解禁を要求してくるでしょう。そしてそれに対してわが国は抵抗するすべはありません。「内国待遇」なのですから、抵抗できる根拠はないわけです。

かくして、米国の種子の支配に対して、かろうじてEUと日本はGM拒否で足並みを揃えていますが、TPPはその抵抗を簡単に押し流してしまうことになります。

そしてわが国は、米国のおける種子支配のくびきに永遠につながれることになります。

TPPは単純に関税だけの問題にとどまらず、米国の農業戦略との関係で読み解かないと見えなくなります。

■写真 すすきが草原で首を降っています。秋真っ盛り。お天気はさえませんが。

 

 

 

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日本は食料輸入大国ではない。まともな農業認識を踏まえてTPPを議論してほしい

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「日本農業新聞」10月20日によれば、民主党は国民より「党内大連立」に目がいっていますから、分裂回避のために「非公式協議」というバイパスを考えているようです。 

正式参加だと途中でや~めたと降りることができないので、非公式協議で情報を採りながら、こちょこちょとやろうという賢明というか、姑息な方法なようです。外務省が知恵をつけたようです。悪い意味で、いかにも日本的です。 

まぁ、こんなことは国際的には通用しないでしょうね。いずれにせよ、国民にはなにがなんだかわからないままに、米国を「内国民待遇」する過激なFTA=TPPへの扉が目の前に迫ってきています。 

TPPはジャンルだけで24もの分野があり、工業やら農業の関税問題すら24分の1のさらにその一部に過ぎません。

むしろ米国は金融、サービス、地方自治体の購入参入などを目指しているともいわれ、国民生活全般に関わってくることでしょう。にもかかわらず、あいもかわらず、「TPPは農業問題」とする偏った考えがはびこっています。

また、繰り返して書いているとおり、TPPは、「例外なき貿易自由化」のことです。ですから拒否できる範囲が極めて狭いネガティブ・リスト方式でひとつひとつ小骨を抜くような交渉をしていかねばなりません。

11月に交渉参加を迫られておきながら、このネガティブリストに何を乗せるのか、なにを日本としては突っぱねるのかすら政府は明らかにしていません。というか、TPPがいかなる正確のものであるのか、野田首相は一度として国民に説明したことがあるのでしょうか。

野田首相はこのような重要なことを直ちに国民に正確に説明するべきです。コンバインに乗ってはしゃいでいる場合じゃない。

ところで驚くのは農業サイドが、こういうTPP参加の期限の紀元が迫って来ている中で、あいかわらず「円周率より自給率」と意味不明な歌を歌いながら、40%しか自給率がないと宣伝し続けていることです。 

こんな宣伝を農業サイドがすれば、それは「6割輸入食料に頼っているのだから、今さらTPPで日本農業が潰れても心配ないさ」、と自らふれて歩いているようなものです。バッカじゃなかろか。 

「TPPが決まれば13%になる」などというに至ってはオオカミ少年もいいところです。私もTPPには大反対ですが、農業サイドはいいかげんこんな間違った宣伝はやめたほうがいい。

どうせ輸入食料依存なら無関税でもっと安くなりゃいいじゃないの、フツーはそう思うでしょう。まさに自爆的宣伝とはこのことです。 

現にほとんどの論者が、TPP絡みで日本農業を語る時、「食料輸入大国」とか、「輸入食料依存大国」だのと、検証なしで決めつけています。

ここで改めて質問です。自給率40%という日本の農業は食料自給率が4割だから、6割は外国から輸入しているような食料輸入大国である。イエスかノーか? 

答えはノー。ちょっと驚きましたか? 

農産物輸入額は先進5カ国で順に大きいほうから並べてみましょう。根拠はFAO2007です。 

まず、輝ける農産物輸入額トップは、ジャ~ン、なんと747億ドルで米国!米国は世界の穀倉というイメージが強烈なので、おどろかされる順位です。 

第2位は、なんと703億ドルのドイツ!ドイツ大好きの篠原孝前副大臣にお聞かせしたい順位です。ドイツもイメージとしては拡がる田園、広大な牧草地、おお麗しのドイツの黒土、というイメージがあるのでびっくりします。 

ついで、英国が535億ドルで第3位に入ります。よく中学校あたりの社会科の先生から習いませんでしたか、「英国は自給率を回復したが、日本は大きく落ちた。英国エライ、日本ダメ」と、わが国となにかと比較される英国です。 

しかも、英国の人口は日本の半分以下の6千万人強ていどしかいないのですよ。それでいて食料輸入額はわが国より多い。 

そして惜しいことに銅メダルを逃して、わが国が460億ドルで第4位に滑り込みます。 

第5位には445億ドルのフランスが入ります。あのヨーロッパ最大の農業大国と自他ともに認めるフランスの食料輸入額とどっこいわが国は変わらないことになります。その差、わずかに14億ドル! 

日本は先進各国の中で、しごく常識的水準に位置していることが分かります。まとめてみます。
●農産物輸入額ラ世界ンキング(2007年)
・第1位・・・・米国・747億ドル
・第2位・・・・ドイツ・703億
・第3位・・・・英国・536億
・第4位・・・・日本・460億
・第5位・・・・フランス・445億

ではもう少し別のデーターを見てみましょう。まずは下の図表をご覧ください。根拠はFAOです。 

これは国民一人当たりの食料輸入額です。これを見ると、食料輸入の実体がより鮮明になります。これは人口で輸入額を割った数字です。二通りに数字がしめされています。 

輸入額は単純に人口で割ったもので、ひとり当たり食料輸入額がどのていどになるのかが分かります。輸入総額が多くても、人口が多ければ必然的に一人当たりの輸入額は減少していきます(あたりまえだ)。 

ちなみに、人口は米国が3億1千万人、ドイツが8千200万人、フランスが6千500万人、英国は6千万人、日本は1億3千万人です。少子化といわれても、世界の人口大国トップ10位入りしている一億人クラブのメンバーです。蛇足ながら、先進国で1億人クラブのメンバーは、米国と日本しかありません。 

_edited1  上図を見れば食料の依存度がよく分かります。
では第1位をご紹介しましょう。880ドルの英国です。あれ?食料自給率が長年の国内農業の育成でV字回復したんじゃなかったっけ。
 

続いて第2位は、851ドルでドイツ!評論家でなにかとドイツに学べという人は実に多いですなぁ。エコ大国ドイツ、黒きメイサではない森に覆われた田園国家、にしては食糧輸入が多いですなぁ。 ついでに電力もですが。

そして第3位は722ドルであの世界に冠たる農業大国のはずのフランスが続きます。国土面積は64万キロ平方メートルで、わが国の3千7百キロ平方メートルのざっと1.7倍(広いなぁ!)にもかかわらず、人口は半分しかいないフランスがです。  

わが日本は、第4位の360ドル。第3位フランスのわずか半分にすぎません。常識的水準と言えるでしょう。国土と人口からみれば、もっと買えと諸外国に言われるのも分かるような気もします。 

先進国のドンケツは244ドルの米国です。国土面積は、937万キロ平方メートルでわが国の248倍とバカっ広くて勝負にすらならない米国との差は116ドルにすぎません。

 まとめてみます。
●1人あたりの食品輸入額世界ランキング
・第1位・・・英国・880ドル
・第2位・・・ドイツ・851
・第3位・・・フランス・722
・第4位・・・日本・360
・第5位・・・米国・244

このようにデーターを読むと、必ず返ってくる反論が、「「日本が関税を高くしているので、輸入食料が入りにくい。安い飼料用穀物ばかりなので、金額が落ちて表示されるのだ」というものです。 

日本の食料関税は先進国で高くありません。むしろ最低に近い平均16%ていどです。野菜,、果樹などは無関税に近い。コメだけがあまりにバカな高関税(700%超)なので、イメージが引きずられてしまっています。 

金額ベースがイヤなら上図の薄いグレイの棒で表示されているひとり当たり輸入量(㎏)で見ればどうでしょうか。 

ひとり当たり輸入量の第1位は、660㎏でエコ大国ドイツの頭上に輝きました。
続いて第2位は555㎏で自給率先進国の英国です。残念なことに食料輸入額では首位だったのに順位を落としましたね。
 

第3位は、農業大国のフランスの548㎏です。プライドが高いフランス人は地団駄踏んでくやしがるでしょう (がらないか)。

そして惜しいことに(?)入賞を逃して第4位が427㎏の「食料輸入依存世界一」のはずのの日本です。 

最下位は米国でした。177㎏です。 

まとめてみます。
●農産物ひとりあたりの輸入量(㎏)世界ランキング
・第1位・・・ドイツ・660㎏
・第2位・・・英国・555
・第3位・・・フランス・548
・第4位・・・日本・427
・第5位・・・米国・177

だめ押しでもう一丁いきますか。輸入食料の対GDP比率をみます。ここまでデーターを見ると、おのずと答えが出てくると思います。 

第1位はドイツの2.6%、第2位が英国の2.4%、そして第3位はフランスの2.2%となります。 

で、わが国はというとここでも第4位の座を守っています。どの程度の数字か当ててみてください。2.0%?、1.5%?いいえ、0.9%です。輸入食料の対GDP比率は、ドイツの3分の1ていどです。 

まとめてみます。
●輸入食料の対GDP比率世界ランキング
・第1位・・・ドンツ・2.6%
・第2位・・・英国2.4
・第3位・・・フランス・2.2
・第4位・・・日本・0.9

ここまで読まれて、いまだ日本が食料依存大国で、輸入食料に6割頼っていると思われた人はそうとうにひねくれています。日本がヨーロッパ諸国とほぼ同等、ないしはそれ以上の力を持った農業部門をもっていることがおわかりいただけたでしょうか。

これが私が繰り返して、食料自給率40%という数字がいかに現実とかけ離れたミスリードの数字で、故意に日本農業を弱く見せるトリックだと主張している理由です。

民主党はTPPのアメとムチで、巨額のバラ撒きを農業に対して画策しているようです。バカな金はつかわないで下さい。 農家戸別補償もバカな制度でしたが、今そんなバラマキをしている余裕はないはずです。被災地に使って下さい。

TPPは全産業に影響を与える交渉です。正しい農業に対する認識に立って、TPP論議を深めていってほしいものです。もう時間がないのですから。

■写真 衛星フォボスから火星表面を見る(うそ)。

*本記事は10年12月28日の記事を加筆修正しました。

 

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守るべきものは護る。この国としてあたりまえのことができなくなるのがTPPです

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前原さんはあいかわらずTPPに入れ込んでいるようです。野田さんもどじょうの前のめりで突き進んでいるようです。松下政経塾出身者はよほどTPPがお好きと見えます。

TPP協定の分野状況を見ると24の分野が上げられていて、そのひとつでしかないにもかかわらず、「TPPは農業問題だ」とか、「農業保護か開国か」などというミスリードがあいかわらずなされています。

野田さんもあんがいあんな地味な顔をしてパーフォーマンスが好きなようで、大型農場でコンパインに乗っていましたね(苦笑)。

大規模農業こそが日本農業の生きる道ということなのでしょうか。集約化、大規模化、企業参入という財界型農業改革が念頭にあるんでしょうね。

それはさておき、政界一の迷いなきTPP推進論者の前原さんがTPP論議の時に国民に必ず言う殺し文句があります。そうあれです。

「GDP構成比1.5%の農業を守るために、残り98.5%を犠牲にしていいのか」。

いや~説得力あるなぁ。なんか郵政民営化選挙の時の小泉(チチ)の「郵政職員ウン万人のために郵政改革をできないのかぁぁぁ!」みたいな迫力ですな。

逆に言えばですが、このような「みじめな日本農業」、「保護されてばかりいる日本農業」論の根拠は、遡るとこの「わずかGDP比1.5%」という数字に行き着くのです。

わが国のGDP比を見る前に、世界に冠たるでは農業大国と自他ともに許すフランスの農業のGDP構成比を調べて見ましょうか。農水省のサイトを「○○国の農林水産業概況」でググるとバッチリ示されています。http://www.maff.go.jp/j/kokusai/kokusei/kaigai_nogyo/k_gaikyo/fra.html

■答え 先進国中第1位のフランスの対GDP比は1.8%。

そんなもんなのか~、ではありませんか。気を取り直してこれこそまさに世界の穀倉の米国はと言えば、1.1%。

ヨーロッパの黒い土、深い森林のエコ大国というイメージのドイツはといえば、はい0.9%。

なにかといえば、自給率が下がった日本と、自給率ダウンを反省して農業大国になったとうわさの英国は、0.8%。

もうお分かりでしょう。日本は先進5カ国中第2位のGDP比率を誇っています。それを前原さん「たった1.5%」とはよー言うよ。あんた農業、なにも知らないね。知らないくせによく言うよ。

先進国はおしなべて工業生産、サービス業の比率が高いので低く出るのです。ですから、農業の比率が対GDP比で相対的に少なくなっていきます。これはわが国だけの話ではなく、世界一般の状況です。

国際比較をしないで、自国の数字のみ見せるという数字のトリックというやつです。

今後前原さんにはこう言ってほしいもの。「先進国中第2位のGDP比率を誇る日本農業」と言って頂きたいものですな。

さて、日本農業ほど自国民から誤解を受けている分野はないのではないでしょうか。いわく、補助金づけ、老人ばかり、世界一高い農産物、農業鎖国、それに昨今は原意発事故で危険なものをばらまくテロリストという恐ろしいイメージまで植えつけられました。

ついでにそうあの自給率40%です。6割の食料はは外国産だという典型的ミスリード。これは長くなるので別稿にしますが、デタラメです。

この誤ったイメージを修正しないで、泣き言ばかり農業団体が言っているように聞こえるので、こういうTPPのような時になると「農業のために鎖国しているのか」みたいな馬鹿な論議になってしまうのです。

冗談ではない。農業はそんなものじゃない、と正面から反論しないから、TPPのいい生贄羊にされてしまうのです。

TPPが目指すのは例外なき自由化です。これは国として誤った選択です。自由化とは相手国の弱みを狙って攻め込むもの。これが原則です。

貿易相手国が自国民の健康保護のためにBSEの全頭検査を要求すれば、それを関税外障壁としていいがかりをつけ、取り払うことを要求するのはあたりまえのことです。

相手国の商品が高ければ輸出補助をつけてでも安値攻勢をかける、これもありです。相手の弱みこそわが強み、これが自由貿易なのですから。

そのときに、外国と一緒になって自国の弱みを言い募り(しかも間違って)農業叩きに精を出す。どうかしてやしませんか。本当に日本の政治家ですか。

わが国が酪農製品に高関税をかけてなにがいけないのでしょう。自国の酪農は地域経済の要なのです。サトウキビは離島の主要産業です。守ってなにがいけない。

消費者が高いものを買わされている?なにを言っているのですか。今日本経済で最大の問題はデフレではないですか。慢性的宿痾です。更にこれをTPPでデフレ促進してなにが楽しいのか、私にはさっぱり分かりません。

守るべきものは護る。この国としてあたりまえのことができなくなるのがTPPです。私はTPPにぜったい反対です。

■写真 昨日の夕陽はまるでオーロラのようでした。

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迫る世界恐慌とTPP   わずか2.5%の自動車関税で日本を潰していいのか?

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ギリシアはデフォールトの危機に直面しています。国民の4割を占める公務員貴族層は知らぬ存ぜぬとばかりに大規模ストライキを行って収拾がつきません。

自国の解決能力もなく、財政破綻したギリシアの危機はイタリア、ポルトガル、スペインといった南欧諸国の破綻へと連動するでしょう。もはやドイツ一国で支える規模を超えてしまいました。ドイツ国民はギリシア、イタリアのためにこれ以上出血することを許さないないでしょう。

ギリシアの解決方法はただひとつ。ユーロから脱退して、ドラクマに戻ることです。これで自国通貨切り下げによる輸出力回復が期待できます。しかし、それは同時に、自国内部の矛盾を独力で解決するしかないということでもありますが。

このまま、ドイツを中心とする諸国が身銭を切って財政破綻国家を助けながら、共にズルズルと沈んで行くのか、思い切って機能不全に陥った「壮大な歴史的実験」・ユーロを解体するか、いずれかひとつです。

行くも地獄、下がるのも地獄というわけです。

一方、米国の経済失速は目を覆うばかりであり、この4年で超貧困層が連邦政府の調査で6.7%に激増しました。失業率は下げ止まらず、今や過去最悪の数字になっています。

このような中、米国はイ・ミョンバク韓国大統領を下にも置かない国賓待遇でもてなしました。また、オバマ大統領は訪米した野田首相に事務的に11月までと短期で結論を迫り、交渉参加をうながしました。

交渉参加とは、中途で交渉から脱退することを許しませんから、事実上のTPP締結と同義語です。

米国にとって韓国市場などはメではないはずです。たかだか人口5千万人に満たない韓国市場より、米国が受ける韓国製自動車、電気製品などの無関税化のリスクのほうがはるかに高いはずです。

今、米韓FTAが米国にとって歓迎すべき事態なのは、米韓FTAをTPPの呼び水にしたいからです。個別FTAと多国籍TPPの乗合で、米国は巨大な自由貿易圏を得ることができます。

これがオバマ米国が考える恐慌脱出策であり、再選戦略です。

TPPとは名前を変えた日米FTAであり、米国が狙うのはわが国の金融サービス、投資関連、越境貿易関連、法律関連、そして地方自治体の調達への参入です。

TPPはネガティブリスト方式であり、特記されない限りすべての分野での自由化が求められます。、言い換えれば、米国に日本国民と同等の商業的自由を与える「内国民待遇」となります。

では、このTPPの日本のメリットはなんでしょうか?なしです。いや正確に言えば、日本はTPPにおいて唯一得るものは、たかだか2.5%でしかない米国の自動車関税の無関税化を得ることができます。額にして1219億円ていどです。

朝日から産経に至るTPP賛成論は、「バスに乗り遅れるな論」でしかなく、具体現実ものとしてTPP体制が現実化したらいかなることになるのかを考えていない心情的グローバリズム論です。

さて、私はあえてTPPの日本に与える影響から農業を省きました。長くなりましたので詳細は別の機会に譲りますが、牛、豚、酪農などの畜産はほぼ全滅、コメの聖域維持も困難となるでしょう。

結論だけ言えば、日本農業は半身不随となり、特に被災と原発事故からの復興が泥沼化している東日本においては、TPPは致命傷となると思われます。

また、TPPは二国間FTA、EPAとは違い、例外品目を認めません。二国間ならば執拗な交渉も可能でしょうが、多国間交渉ではそれも難しいでしょう。韓国がTPPを選ばずに二国間FTAにしたのはそのためです。

TPPはよく言われるように農業問題のみが重要なのではなく、米国を通商上の「内国民待遇」にしてしまうことによって日本社会全体に影響をもたらすことでしょう。農業はそのスケープゴートであるにすぎません。

農業を平成の「開国」の足を引っ張っている前近代的な部門として叩くことで、米国の利害に日本を屈伏させようとしています。

原発事故以来執拗に続けられる東日本農業に対しての誹謗中傷攻撃は、私はTPP推進派のもくろみにすら見えてきます。考えすぎだといいのですが。

■写真 わが家の欅の上にひつじ雲。

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放射能の研究グループを作ろうと思っています! チェルノブイリ事故と甲状腺ガンについて

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当地でも農業者を中心とする放射能除染研究会のようなものを作ろうとしています。 

これは測定のみで終わるものではなく、むしろトータルに放射能を学び、いかにして私たちに降りかかった千年に一度の大災厄である放射能から農業を護ることを目的としています。 

健康な大地を取り戻していくかを考えるグループです。講師をお招きして連続公開講座を開催し、合わせて農地の除染や測定のワークショップも考えています。 

福島県や茨城県の農業者との交流も念頭においており、お互いの情報と技術の交換を予定しております。 

来春くらいまでにまとめのシンポジウムが開ければいいのですが、まだなんとも海のものとも山のものともといった段階です。具体的には来月冒頭から開始したいと思っています。 

さて、欄外のようなコメントを頂きました。チェルノブイリの健康障害についてです。 

分かる範囲でお答えします。チェルノブイリ事故後20年目の節目の2006年に、WHOの調査がなされました。 

事故当時、18歳未満だった子供の甲状腺ガンの発生人数は約6000(*約4800人の異説あり)で、15名が死亡しています。 

事故処理作業員、高線量汚染地域住民、避難者の総計60万人の成人においては、ガン死亡率は数%目(*5%以下という説あり)と予測されました。 

乳児死亡率の統計は、86年から89年まで下がり、93年から再び高くなっています。そしてまた再び下降する曲線を描いています。この推移から体内被曝による乳児被曝との相関関係は明らかになりませんでした。 

さて、もっとも心配されるのはチェルノブイリでも大量に発生した甲状腺ガンです。これは爆発初期の放射性ヨウ素によるものです。

チェルノブイリで大量に子供の甲状腺ガンが出た原因は、放射性ヨウ素を含んだ被曝初期のミルクを供給してしまったことによるものです。これは被曝した牧草からの移行によるものとされています。

ヨウ素は、セシウムよりある意味危険だと言われています。というのは、セシウムが全身の筋肉に拡散していくのに対して、ヨウ素は甲状腺の一カ所にのみ集中的に蓄積されるからです。甲状腺はホルモンを分泌するためにヨウ素を必要としているために、甲状腺に放射性ヨウ素が溜まってしまうわけです。

チェルノブイリ被爆地周辺で起きた大量のガン患者は、この放射性ヨウ素が原因の8割まで占めています。

事故当時のベラルーシの被曝した人の平均甲状腺の線量は平均で1グレイ、最大で50グレイです。

一方、福島はセシウムの降下量は多いものの、放射性ヨウ素は5ミリグレイでした。単純な比較ではチェルノブイリの1000分の5にとどまるわけです。ただし、最大線量で30グレイの方もおり、定期的な診断が必要です。現在、千葉の放医研でのホールボディカウンタで診断しているはずです。

私見ですが、おそらくは数千人規模の甲状腺ガンは発生しないのではないかと思われますが、予断を許しません。今後5年、10年の注意深い観察が必要です。

また、日本人は、世界でもっとも海草を食べる民族ですので比較的甲状腺ガンになりにくいとも言われています。

だからというわけではないのでしょうかが、チェルノブイリでも、子供を中心として安定ヨウ素剤が緊急配布されなかったことが小児甲状腺ガンの原因になりましたが、日本政府はこの教訓を生かさずに安定ヨウ素剤を備蓄しながら配布しませんでした。

セシウムとガンの相関関係については寡聞にして分かりかねます。今のところ、チェルノブイリではセシウムによるガン発生との相関関係は有意なデータがないように思えますが、確たることは申し上げられません。

だからといってセシウムは安全だ、などと言うつもりはいささかもありませんので、もしご存じでしたら、ご教示ください。

■写真 田園を見渡すお墓には彼岸花と柿が盛りです。

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こんにちは、福島かその周辺で農業をされている方とお見受けしますが、放射能についてとても勉強されているようなので質問させてください。
ネットであれこれ調べたものの、疑問が残った点です。

政府その他の発表した人が居住する福島原発周辺地域汚染の線量は、チェルノブイリの人が人が居住する原発周辺地域の汚染量に比べても決して少なくないようです。数千万ベクレルなどとあります。
しかし、福島の農作物も基準値以下のものが多くありでたくさん出荷されております。そして、チェルノブイリの時も、農作物の基準値は一応設けられていたようです。

ではなぜ、チェルノブイリの時はその後避難した周辺住民にも膨大な数の癌患者が出たのでしょうか?皮肉とかではなく、私は政府や学者の言うことは信用できると思っております。
何かチェルノブイリと違う要因や状況があってのことなら、ぜひ知りたいのです。彼らは検査していない森のきのこを勝手に食べていた人々だとか、実は出荷規制がちゃんと行われていなかっただとか。
あるいは、福島同様のことが行われ、低線量だったはずなのにあれだけの癌患者が出たのでしょうか。

もし何かご存知でしたら、ご回答いただければ幸いです。
                                                     HN 東京在住

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「すべての食品にベクレル表示を」という人たちは矛盾した要求をしている

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こんなコメントがありました。武田さんを取り上げると来訪者数がはね上がるのは嬉しいのでずか、コメント欄はジャングル状態になります。私の記事は以下ですhttp://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2011/09/post-9df6.html#comment-66469684

武田邦彦が言うようにベクレル表示して売ればいいじゃん。
武田邦彦に文句を言わずに東京電力と保安院に身銭を切らせて保証と除染をさせなきゃだめなんじゃん。
ご先祖様から引き継いできた土地を汚されて、「汚染されてません。問題ありません」ってどうなのよ。
東北の人はもっと親やご先祖さまを大事にする人たちだとおもってたけど、「おら、お上に歯向かうのはこええ、じぃちゃんかんべんしてけろ」ってことなんじゃろか。
「おれのとこは汚されてねえよ、いいがかりつけんな!」って主張も心がない感じがする。
                                                        HN 埼玉県民



まぁ、とやかく批評するのもなんだという低レベル廃棄物ですが、よくこんなもの書いて自己嫌悪にならないなぁ、と思ってさらしておきます。私もだんだんと耐性がついてきたのかしらね(笑)。農薬耐性がついたコクゾー虫みたい。

いちいち反論するのも馬鹿げていますが、このような人たちがなにを考えているのかのエッセンスみたいになっていて面白いですね。

まず「ベクレル表示で売ればいいじゃん」とのこと。そうカンタンにいかないじゃん(笑)。

だって、まさか測定はガイガーカウンターで、表面測定して、ベクレル換算するなんて考えちゃいないでしょうね。このての人たちご愛用のガイガーカウンター測定ほど危ないものはありません。

だって、校正していない誤差あり測定器で、測る対象の食品も外部線量でザッと済ませればそりゃ楽ですが、そんな数値いいかげんです。

よくテレビで食料品店の店先になやら秤のような器械をおいておもむろに食品を計って売っているのをテレビで見ます。この投稿者のイメージはあれかな?しかし、、あんなものはスタンドプレーじゃん(もうやめようこの言い方)。

食品は外部からスクリーニングしても測定できません。外部がきれいに洗浄されている場合には線量は低く出ます。内部の線量はグチャグチャにディップ状にしないとわかりません。

私たちがやる場合、包丁で叩くかフードプロセッサでビュ~ンとやってからある程度の厚さにしてから計測します。それも計測管を表面に当てるのではなく、差し込むようにして測ります。

100万円以上するシンチレーション式なら30~40分ていどで結果がでます。ただし、測るモノや求める測定レベルで時間はかなり異なります。水は非常に計測しにくく、また今話題の低線量はエネルギーが微小なので気が遠くなるくらいの時間がかかります。

安物のガイガーカウンターですと電解能が低く、エネルギー補償されていませんから、5回計ってすべて結果は違うのがあたりまえですので、平均値を出すしかありません。

よく誤解されているのですが、放射線量測定器は、「今危ないですよぉ!」という高い線量に対しての警告を出すために作られています。もともと原子力施設内部で使っいたものが始まりですから。

ですから一般人ユースで、低線量を測るようにはそもそもできていません。やりゃあやれる、ていどで、時間もコストもかかります。

食品のベクレル表示をしろ、と叫んでいる人は、秤のような計測器に乗せると「、はい、12ベクレル出ました」、なんて光景を期待されているのでしょうが、無理です。できません。

食品スクリーニングならばスピードが要求されますから、おそらくは20~30ベクレル出すのも難しいのではないでしょうか。そりゃそうでしょう、1検体に1時間かかっていたら間尺に合わない。

300ベクレルなんていう暫定規制値以上か、以下かなんていう大雑把な測定ならバンバンできますが、このような「すべての東日本の農産物にベクレル表示を!」などと叫ぶ人は、20ベクレル以下の表示を求めているのでしょうから、残念ですが技術的に不可能です。

分かりますか。「すべての食品にベクレル表示を」という人たちは矛盾する要求をしているのですよ。

「すべての食品」ならば、現在出荷されている膨大な量の農産物ひとつひとつにベクレル表示義務しろということになり、大雑把なスクリーニングしかできません。暫定規制値に合致しているか、否かです。

しかしそうではなく、この人たちは低線量表示を求めています。つまり20ベクレル以下という「検出限界」を批判して、それ以下の5~10ベクレルという低エネルギーまで表示しろと主張しています。これには一検体で最低で1時間以上かかります。

またコストも通常で1検体3万円かかります。1検体3万円で1時間かけて、膨大な量の食品を表示しろ、と言う要求を平気でしているのです。わかって言っているのかなぁ。

どっちかにしていただきたいものです。暫定規制値に合格か否かということならば多少の現実性はあります。それもサンプリング方式しか不可能です。

同じ田畑の作物をひとつサンプリングして計って測定して表示することならば、コストはベラボーにかかりますが、技術的には可能です。

しかし、このようなゼロリスク派の人たちは、サンプリング方式すら批判するのではないでしょうか。「手抜きするな、農家はまたインチキしているだろう。文字通り全部を測定しろ」、ということのようです。

え、コストは国か東電に請求しろって。汚染した田畑の浄化もしない国や東電には、話の外です。そんな要求をめぐって闘争しているうちに数年たってしまいます。

「おかみに歯向かうのはこぇぇ」ですか。いいなぁ、バカ全開で生きていけて。なんでも鑑定団出品モノの馬鹿だな。

農家なんて、「おらぁこええだぁ。おらの土地はきれいだぁぁぁ」、とブツブツ言いながら地べたを這いずり回る無知な下等人種なんでしょうな。まるで時代劇のように「へへっえ、お代官さま~、ゆるしてくんろ」と土下座する農民像だな。

いやー、ひさしぶりにここまで露骨な農業と地方への蔑視を聞きましたよ。励みになります、村の仲間に教えてやろう。いい酒の肴になります(笑)。

それはさておき、結論として、すべての農産物に要求されるスピードと、低線量計測は同居できません。なぜなら、それが矛盾した要求だからです。

■写真 そろそろ芹の季節が始まります。芹畑にかかしが一本。抜けるような秋の空。空に向かって「バカヤロー」と叫びたい。

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賠償問題もまた除染問題ぬきに語ってはならない

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昨日の記事で中期的にやらねばならないことのひとつに賠償を上げました。

原賠法で大枠は示されつつありますが、もっともかんじんな点が欠落しています。それは汚染した土壌、宅地などの浄化です。

これに対してひとことも触れていません。かくも広大な地域に汚染を残しながら、その除去に対して初め国は朝霞の国家公務員住宅の自転車置き場ていどの予算しか計上しないという人を食ったまねをして被爆地の人間に怒りを買いました。

3次補正で2000億ですが、飯館村単一の除染費用の概算が3000億です。話になりません。おそらく避難地域のみの除染だけで数兆円規模でしょう。

これはかねてから書いているように、「放射能はクリーン物質」である」という仰天見解が国の公式のスタンスだからです。

「土壌汚染防止法」にはこういう一項があります。「特定有害物質とは、鉛、砒素、トリニクロエチレン、その他の物質(放射性物質を除く)」と記されています。

おそらく、今回原発事故と同時期に化学工場が事故を起こして鉛が大量放出されたならば、国は放射能など見向きもせずに鉛のみを除去することに必死になったことでしょう(苦笑)。

環境省管轄の「環境基本法」にもなんの記載もありません。ですから、環境行政の主管官庁である環境省は、「農地や住宅地が放射能汚染されたが、なぜ取り締まらないのか」という質問に対して、しかとしてこういうことを言っています。

環境省当該部部局見解。「違法性はないと認識しています。だから動けません」ということです。

ちなみに農地の汚染はわれらが農水省ですが、聞くだけヤボですが聞いてみれば、「環境省の規制値があれば動けますが、ないから動けません」、とこれまた他人事のような声を出しておりました。

ちなみに東電は、「法律にあるとおりの認識です」。おお、なんと素晴らしい順法精神。

つまり、宅地、農地、公共施設、教育関係施設などの放射能汚染は、いかなる法的な規制もないために100%「合法」であり、東電は永遠に法的な罪に問われることはないのです。

したがって、まったく賠償の対象にはなりません。被曝したら、被害者自らがきれいにしろ、というわけです。素晴らしき法治国家ニッポン。

あくまでも賠償の対象は、出荷規制を受けた農作物なのです。しかも行政単位での出荷規制がはまった地域のみで、はまらなかった地域はいかに出荷被害を受けようとも賠償対象にはなりません。

え、国が責任を持って除染すると細野さんが言っていたって?ああ、あれは避難区域だけで、しかも財政と人員の裏付けなき「言っただけ発言」です。

国が半年も放射能測定をサボったかというひとつの理由は、そもそも「特定有害物質」ではないから放っておけ、という無責任体質でしたが、チェルノブイリにおいてはどうだったでしょうか。

旧ソ連が行った検査は以下です。
・土壌サンプル数・・・・143万検体
・作物・・・・・・・・・・・・・・261万
・家畜・・・・・・・・・・・・・・750万
・検査された面積・・・・・3000万ヘクタール

一方わが国はもっとも汚染が激しかった5月9日時点で
・日本における検体数・・・・2775検体

検査期間はチェルノブイリのほうが長いのですか(家畜は20年間の統計)、それにしてもチェルノブイリのわずか千分の1とはあまりに情けない対応です。少なくとも科学立国の対応ではありません。

この問題に対して、避難地域だけ除染しましょう、などという姑息な逃げを打っていないで、国が3万7千ベクレル/平方メートル、すなわち1850bq/㎏以上の土地すべてをいかなる例外もなく、国家で除染すべきです。どんなに時間がかかろうとも、です。

その原資がないなら東電と掛け合いなさい。私たち被災者は知ったことではない。役立たずの国会議員を削減するなり、政党助成金を廃止するなり、仕事をしない国家公務員を半分にするなり、なんとでもすればよろしい。

特に農水省など30人で充分。各地農政局は、農民に役に立つことはなにもしていないのだから全廃止。クビになりたくなければ、国家公務員が除染作業の手伝いくらいしなさい。・・・ああ、いかん、だんだん過激になってしまう(笑)。

除染のための前提となる測定は、現在、民間のみの手でやられているのが現状です。これも国が責任を持って徹底した測定をすべきです。

東電に対しては事後法となるために罰したりはできないでしょう。しかし、なんらかのペナルティと除染の責任を与えるべきです。

賠償問題もまた除染問題ぬきに語ってはならないのです。なぜなら、浄化の道はあまりに遠く、それを個々の国民が背負うことは不可能だからです。

■写真 このところ空の写真にはまっています。ぼーっと空を見上げる時、嫌なことを大気の中に拡散できるようです。

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地域の包括的除染活動と暫定規制値引き下げは実は一緒のことなのです

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「南の島」様から頂戴したコメントが興味深いので、本記事のほうでお答えさせていただきます。頂戴したご意見は以下です。
 

濱田様、私は玄米40Bq/kgは実現不可能な数字ではないと思います。今年作付け出来なかった飯舘村などでは本格的に除染しないと難しいと思いますが、今年米作した所は出来ると思います。今日の記事の資料の赤と橙以外の水田です。ちなみに私が40にしようというのは主食の米だけです。その他の作物は十分なデータがありません。 

私が可能とする根拠は米の放射性セシウム濃度の検査結果を踏まえてです。
http://www.maff.go.jp/j/kanbo/joho/saigai/s_chosa/index.html
本調査でも100を超えたのは7箇所だけです。検査数に問題がありますが、何ら対策もせずに米作してこの結果ですから、来年度はプラウ耕とゼオライト投入し、谷津田を注意したら不可能ではないと思います。もちろん、原発の状況が悪化しないのが前提です。
今年並みに収穫米検査をし、40以上が出た場合流通させずに買い上げを約束したら実現できると思います。
福島県の玄米の検査のまとめもご覧下さい。

http://wwwcms.pref.fukushima.jp/pcp_portal/PortalServlet?DISPLAY_ID=DIRECT&NEXT_DISPLAY_ID=U000004&CONTENTS_ID=25325
来年度はND(<40)を目指し、出来る限りの対策を農家に伝えたら、きっと出来ます。
冒険的な目標は農水省のお役人は立てられないでしょうが、密かな目標にはしてもらいたいです。


さすが現役農業者です。非常に具体的です。このところ不毛なことが多かったので、がぜんとやる気になってきました(笑)。これは
反論ではないので念のため。

結論から言えば、私は段階的暫定規制値引き下げ論者です。そして包括的にすべての食品の規制値見直しと、今後の地域の包括的除染の展望を政府が明らかにするべき時期だと考えています。 

物事には短期、中期、長期というタイム・スパンがあります。

暫定規制値は大規模原発災害に際して、直ちに平時の規制値を当てはめるわけにいかないことから緊急避難的に作られた非常時規制値です。短期的措置の最たるもので、1年以内に見直さないと禍根を残します。 

どのような禍根かといえば、
ひとつは、国内市場に対して、「あいかわらず農産物は高濃度汚染を続けている」という誤ったメッセージを発信してしまうことです。
 

現実には地衣類など一部を除いて、ほぼ完全に放射能汚染は検出されていないのですが、警戒感の強い消費者は頑として信じようとしません。これはかつて政府が情報の虚偽と隠蔽を繰り返した反動です。 

また、農業者からの側の挙証証明とでもいうべき自らの田畑の土壌測定は遅々として進まないのが現状です。原因は色々ありますが、震災から回復してないところに半年間の売り上げの壊滅状態が続き、そしてその上に測定など無理だ、というのが本音でしょう。 

私はこの短期的で時期は7か月目で終了したと思っています。 

では、中期的にはなにを考えたらいいのかと言えば、やはり汚染された田畑の回復を中心に据えた大規模、かつ徹底的な除染活動と同時進行する暫定規制値の見直しです。 

短期的な個人作業ではなく、農業-商業-一般住民-教育関係者まで網羅した地域総ぐるみとなった包括的な地域除染活動がすぐにでも必要です。

これには市行政のみならず、県、国レベルの政策が必要なことはいうまでもありません。その時に問題となるのが暫定規制値です。

ここで暫定規制値が残した禍根のふたつめの問題がでてきます。
暫定規制値の性格は、いわば「高く検出されるかもしれない農産物のセーフティネット」にすぎず、汚染された田畑の上で働く私たち農作業者の健康などみじんも考えていなかった、という問題です。

たとえば、もっとも重要なすべての農業生産の基盤であり、また農業者の健康に直結する土壌暫定規制値は、チェルノブイリの「汚染区域」指定の3万7千bq/㎡以上をはるかに超える10万bq/㎡(*キログラム換算で5000bq)であることは再三指摘してきました。

つまり、土壌暫定規制値を引き下げるためには、いかにして現に今そこにある放射性物質を除染するのか、あるいは封じ込めるのかに対して明確な展望がなければならないのです。

それぬきで、最初に上げた、消費市場への誤った信号への恐れのみでこの暫定規制値を捉えると、地域の一部としての田畑の放射能汚染の現実しか見ないことになります。私が暫定規制値引き下げと除染はまったく同じことだと言うのはそのためです。

おそらく除染-封じ込め活動は10年では済まないでしょう。政権担当能力を欠いた民主党政権がこのまま任期一杯まで続くのならまったく見通しが立たない事態に追い込まれます。

チェルノブイリでは当初の日本流にいえば野菜の暫定規制値が3700bqから13年かけて40bqまで落としたという事例は参考になります。日本でも間違いなくそれ以上かかるでしょう。

そう考えると、暫定規制値のみを引き下げてもなんの意味もないことになります。仮に40bqが可能な田んぼがあったとしても、その田んぼを囲む耕作放棄田畑や森林からは絶えず放射性物質が照射されているわけです。

すると地域線量は減らず、いかにコメの移行率0.0026という極微量だとしても、この危険を看視するわけにはいきません。

もうひとつ重要な問題に補償がありますが、おおきな問題なので別稿にで論じることにいたします。

最後に長期的なことについてですが。これは危険きわまりない原子力発電からいかに脱却するかでしょう。脱原発という言い方がいいのならそう言ってもかまいません。

しかし私は現在の脱原発運動に参加する気はしません。体質的に違うといえばそれまでですが、あれは主に都市生活者の運動です。消費者の食と生活に対する脅威によって拡がった運動で、私たち食の作り手側と相当にすれ違っています。

放射能汚染された農業をどうするのかについて誰も真剣に考えようとしていない状況です。脱原発運動の一角を担うゼロリスク派は、食と農を分断し対立させる危険性すらあると思っています。

私は農業者として自分の田畑や地域からもう一回脱原発を考え直す時間はたっぷりあると思っています。なぜなら、脱原発という大きなテーマは国のエネルギー政策の根幹にふれますから、地域の包括的除染-暫定規制値の見直し作業といった中期的な展望が開けてからゆっくりと考えればいいのです。

現在、私たちの地域の測定グループでは新米はすべて「検出限界以下」でした。ですからおっしゃる40bqになっても私個人としてはいささかもかまわないのですが、現実問題として地域のスクリーニングがまったくといっていいほどされていない状況では大きな不安が残ります。

というのはあまりに国が指示した予備検査は粗雑そのものであり、隣町の鉾田は52bqが出ましたが、予備検査はわずかに3カ所でした。話になりません。ザルも極まれりです。そして新米に対するスクリーニングも例の調子です。

ですから、おっしゃるような「個人の目標」としてならともかく、暫定規制値の抜本的手直しとなると、先に述べたようなさまざまなことを考え合わせていかねばならないと思います。

■写真 ほおずきがたわわに実っています。わが農場には自生のホウズキの群落があって今そここで可愛い赤い実を風に震わせています。

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事故から7か月。社会全体の線量を下げる努力をしよう!危機を叫ぶだけでは何も変わらないのだから

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 典型的な質問がありましたので、お答えしておきます。 

質問 
土壌に蓄積された放射性物質が問題なんですよ。空間とは関係ないと思います。
 

私の答え 
野菜の一義的な放射能汚染は外部被曝です。人間と一緒です。外部被曝の主要なものは大気の放射線です。

ベラルーシ・ゴメリ地区スベェティロビィキ住民の被曝原因はこのようなものでした。(IAEAチェルノブイリフォーラム報告書)

・外部被曝(空気・土)・・・・・・50.3%
・食料による内部被曝・・・・・23.9
・魚介類による内部被曝・・・20.6
・水辺での被曝・・・・・・・・・・・・4.0

・飲み水による内部被曝・・・・・1.2

外部被曝と内部被曝は、時期によっても異なりますが、ほぼ半々だとわかります。空間線量が高ければ野外にある農産物は被曝します。ただし、農産物のほうが、土壌移行係数からみて(後に詳述)はるかに内部被曝の割合は少ないでしょう。

3月~4月の被曝直後の高い農産物汚染はそのためです。これはゼロリスク派の主導者である武田邦彦氏も認めているはずです。というか氏は空間線量派とでもいうべきな論者で、空間線量から農産物が被曝して人間の内部被曝に繋がるという論理でした。 

武田氏は土壌測定のように地味で根気がいる測定より、公共団体のHPで簡単に入手できる空間線量ですべてを説明する道を選んでいます。 

氏が農村を歩いて測定したという話はついぞ聞きませんし、今後もないでしょう。講演でお忙しいのでしょうが、あれだけ「東日本のものは食べるな」とおっしゃるのですから、一度東日本の農村に来られたらよろしいのに。歓迎しますよ(笑)。 

脱線しましたが、武田氏が関西のテレビ番組で宮城県一関で空間線量が高いから「東北のものは食べるな」と言った理由でF一関の空間線量が高いからでした。

空間線量は下図の茨城県北部の線量グラフでわかるように急激に下がっていきます。それは放射性ヨウ素が8日間で半減期をむかえるからです。一か月もたてばヨウ素はほぼ検出されなくなります。 

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上図の左端が事故当初です。北茨城市では実に16マイクロシーベルトが観測されています。今の避難区域とほぼ同量です。現在は0.05~0.08マイクロシーベルトにまで落ち着いてきています。 

ではここで、東日本の農産物に対しての忌避感が強い関西と東北・茨城地域の空間線量を比較してみます。 

・大阪府・・・・・・・・・・・・・・・・・0.076マイクロシーベルト /時
・宮城県・・・・・・・・・・・・・・・・・0.061
・岩手県・・・・・・・・・・・・・・・・・0.023
・茨城県・・・・・・・・・・・・・・・・・0.083
 

ほぼ大阪と東北は同程度であり、陸前高田送り火事件があった岩手県など、大阪の3分の1程度の空間線量しかありません。 

これは関西のバックグランドの自然線量が高いからです。下の図は日本の自然線量を表しています。赤色がホットスポットです。 

大阪府は日本有数の自然線量のホットスポットだと分かるでしょう。大阪の宇宙からと地底からの自然放射線量の計はおおよそ0.4マイクロシーベルト/時あるようです。

東日本はおおむね濃い青である0.00561~0.0178マイクロシーベルト/時と世界でも最小の放射線量地域です。

自然放射線量において大阪は、東日本平均のの7.5倍の放射線量が常に存在する地域だといえるわけです。

自然放射線は人口放射線と違って安全だ、などと言う人もいるようですが、ナンセンスです。ウランは自然放射性物質の最たるものですよ。ウランが安全なら、セシウムなんか鼻クソのようなものです。

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武田氏の説によれば、空間線量が農産物に影響を与えるもっとも強い要素ですから、岩手県は大阪府の農産物を忌避せねばならなくなります。

もちろん冗談です。大阪府で放射能汚染の農産物は検出されていません。そう、つまり0.076マイクロシーベルト/時の空間線量があっても農産物は汚染されることはないのです。

このように空間線量は1マイクロシーベルト/時以下ならば農産物を汚染することは考えられないのです。ただし地表面で栽培し、被曝した原木を使った場合のシイタケ類などは別です。(*どこからの閾値で空間線量が農産物に移行するかは今のところわかっていません。)

さて、ご承知のとおり「既に降ってしまった」セシウムなどは土中に残留します。これは土壌線量を測ることでどのていど土中に放射性物質があるのかが判定できます。 

では、この土中の残留放射性物質がどのていど作物に移行するのかは、日本土壌肥学会や農水省の科学的なデータがあります。 

・ほうれんそう・・・0.049
・ジャガイモ・・・・・0.030
・キャベツ・・・・・・0.026
・コメ・・・・・・・・・・0.0016

(*移行率には研究機関により異説が存在します。土質や測定条件によっても異なります。) 

これを見てお分かりのように土壌の放射線量は、100分の数十から千分の十数のオーダーです。

武田氏は、食品の最大限許容量は5~10ベクレル/㎏だと言っていますが、この農産物の規制値を5ベクレルに置くというのはすさまじくタイトな数字で、チェルノブイリの当事国であるベラルーシですらこのような食品規制値です。昨日にアップした野菜で見てみましょう。

・86年(事故の年)・・・3700bq/㎏ (* 日本暫の定規制値500bq/㎏)
・88年・・・・・・・・・・・・・・740
・92年・・・・・・・・・・・・・・185
・96年・・・・・・・・・・・・・・100
・99年・・・・・・・・・・・・・・ 40

初年度の86年は実に3700bqです。わが国の500bq/㎏と比較してください。それを2年後には一気にひとケタ落としで740に、そして6年後には185に、そして13年かけて40までもっていっています。

私は現在の暫定規制値を是としません。高すぎて不要な農産物への拒否感を生んでいる原因にすらなっていると思っています。しかし武田氏のように、初年度の事故直後から5ベクレルを主張する非現実性には到底ついていけません。

よくゼロリスク派の論者は、「福島はチェルノブイリ以上の災厄だ」と言っていますが、このベラルーシの食品規制値が3700bqから始まって13年で40bqにしていることの現実の重さをどのように考えているのでしょうか。

空論ならいくらでも言えます。ゼロリスク派の論者で避難区域で除染活動に協力している人が何人いるでしょうか。多くの論者は被爆地の線量を下げる努力に力を貸さないで危機を言い募るだけです。それが人として正しい態度なのか疑問です。

それはさておき、武田氏は「5bq以下を危険というのは科学的ではない」と言っています。いいことをおっしゃいます。そのとおりです。 

では、5ベクレル野菜が被曝するには、その土壌はその百倍から1千倍の線量がなくてはならないわけですから、その土壌は500bq~5千bq/㎏なくてはならないことになります。 

これは平方メートル単位換算でその20倍ですから、1万~10万bq/㎡となります。チェルノブイリの「汚染区域」指定は3万7千bq/㎡以上ですから、10万bq/㎡は避難区域のホットスポットを狙って作物を作らない限りありえない数値です。

いちばん下の図がセシウムの降下マップです。オレンジ色と赤色が1万bq以上の地点です。極めて限られた地域だとお分かりになるだろうと思います。

これを見て、なおかつ「東日本のものは食べない」と言い続けられるのは理解に苦しみます。

しかしなおかつ信用できないと私たちは言われ続けてきましたので、挙証証明として私は3月以来一貫して土壌放射線量を調べろと主張し、自分でも民間計測をしてきました。 

たとえば一例を上げると、140bqの土地で米を作っても、検出限界以下でした。これは玄米なので、精米するとほぼゼロになりました。

現実は危機を叫ぶだけではなにも変わりません。事故から7か月。どうやったら社会全体の線量を減らしていけるのかもっと真面目に考えませんか。怯えているだけではなにも変わりませんから。

■写真 「わが谷には緑なりき」というジョン・フォードの映画がありましたが、私の住む村もまた緑なりきです。。

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ベラルーシにおける食品規制値の推移

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ベラルーシに調査に赴かれた福島で放射能と闘っておられる方からデータを頂戴いたしました。ありがとうございます。

「被曝」現地で闘っている人たちは意外なほど明るいのに驚かされます。目標を持って着々と測定器具を集め、どのようにしたら線量を減らして行けるのかを具体現実の問題として取り組んでいます。

柏市では商売上手な人が測定ショプを始めて大盛況のようですが、福島県ではこの方たちのような民間のボランティア団体が多く活躍しています。

測定器材も、私たちのようなウン十万円のものではなく本格的なガンマスペクロメータや、なんとホールボディカウンターまで備えています。これには驚いた。

同じ福島県の東和町の測定グループは、企業が賛同してここも本格的な器材で測定しています。

この測定運動の成果は、地域にあるホットスポットの発見に生かされました。文科省のヘリ測定もやらないよりましなのですが、現実には上空からわからないホットスポットは多数あり、実地に現地を歩かないと分かりません。

この現地民間測定グループの活躍で地域がスクリーニングされてしまったことになり、東和町ではひとつの検出も記録されませんでした。

お隣には今回500bq出してしまった二本松市の地点があり、事前に東和町のようなスクリーニングがされたのならば、あのような悲劇は回避できたはずでした。

これから福島県は雪が降ります。もう一月もないでしょう。雪が降れば、除染はおろか計測すら難しくなります。

そこまで押し迫って国はようやく除染だと言うのですからなんともやる気があるのかどうかまで疑われます。

あるコメントで国にもっと要求してみたらどうか、という声がありましたが、私たちはしないでしょうね。最近は政府に怒りすら覚えなくなりました。 

政府など関係ありません。あのような国という「団体」はなんの役にも立ちません。期待していると遅くなるだけで、くだらない交渉をやっているより行動が先です。 

さて、以下がベラルーシ現地に言って入手された食品の規制値データです。ネット情報で切り貼りしたものではなく、現地で同じ放射能と闘うベラルーシの人たちとの交流から得たたものです。 

ご好意で転載を許可されましたが、一部のみを掲載するにとどめます。ご覧いただければおわかりのように事故直後から現在まで4回も改訂されており、その都度急激に規制値は4落ちていっています。 

今日本でも問題となっているきのこは、丁寧に生と乾燥とにわけて規制値を変えています。 

野菜などは3700bq/㎏から40bq/㎏まで13年かけて実に0.01%まで落としています。これは政府の徹底した除染作業と並行になされた結果であり、除染をサボタージュし続けた日本とは違います。 

除染して地域線量が下がるから、農産物の線量も安心できる規制値に落ち着いていくので、その反対ではありません。

そのために必要なことは、測定に基づく汚染マップづくり、除染方法の検討、そして除染活動です。ここで目標線量が明確になれば、それの結果を受けて規制値を下げることが可能になるのです。

よく「暫定規制値は信用できない」と叫ぶ人は大勢いますが、どこまでこのような一連の流れを知って言っているのでしょうか。

逆に福島県では農業をやめろとか、20ベクレル以下まで表示しろとか現実を無視した空論が飛び交っている有り様です。

これでは何も始まりません。放射能と闘っている現場の人の足を引っ張っているだけです。、

あくまでも食品規制値は、地域の包括的除染とひとつになって検討されるべきもので、蛍光灯の密室で検討するだけのものではないのです。 

ベラルーシにおける食品規制値の推移(抜粋)
単位ベクレル/㎏
 

      86年     88年   92年   96年  99年

 

・水    370     18.5   18.5  18.5   10
・野菜  3700    740    185   100     40
・果物          同上                  70
・牛肉  3700    2960   600   600    500 
・パン  -        370   370   100     60
・豚肉・鶏肉 7400  1850  185    185     40
・きのこ(生) -      -   370    370    370
・きのこ(乾燥) -  11100 3700   3700   2500
・牛乳   370     370   111    111    100
幼児食品  -      1850                37

 

 

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東京の核実験による放射性降下量と白血病・ガン患者数の相関関係

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私は「3丁目の夕陽」世代です。まさにあのマンガや映画の時代に東京で洟垂れ小僧時代を過ごしました。まったく当時はなぜか皆、青ッ洟を垂れていたような気がします(笑)。
 

当時のがき共の心配は、通信簿と「雨に当たるとはげる」という噂でした。それは核実験まっ盛りのアトミック・エイジだったからです。 

1950年代の半ばから、1980年代まで米ソ仏中が核実験をしまくりました。特に初期の核実験は大気圏内核実験といって空中爆発させる形式でしたから、地球全体が気流によってまんべんなく汚染されてしまったわけです。 

回数が何ともえぐい。いちばん多かった62年など実に年間178回です。年に178回ですぞ!この回数分原発が世界各地で爆発しているのも同然だったわけです。  

回数は図1をご覧ください。折れ線が核実験の回数です。 

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           図1 核実験回数とセシウム降下量推移

63年には、部分的核実験停止条約が締結されて実験回数は減りましたが、中国は締結には加わらず、国際世論を無視して執拗に地表核実験をウイグルで続けました。 

しかもやり方もあろうに、ウイグル民族居住区付近で無警告、しかも地表核実験です。彼らに大量の急性被曝が出たと言われています。この時の放射能も放射性黄砂となって日本に大量に飛来しています。

核爆弾というのは、意図的に放射性物質を核反応させるものですから、福島第1原発での事故など比較にならない高レベル放射線を出します。

放出される放射性物質もケタが違います。ビキニ環礁の核実験で放出された放射性物質は、甲状腺の内部被曝に換算するとこうなります。 

・ビキニ環礁・・・・・200グレイ
・チェルノブイリ・・・50グレイ
・福島県浪江町・・・5ミリグレイ
 

では、今から50年あまり前に東京に核実験時に放射性降下(フォールアウト)した放射線量はどのていどだったでしょうか。これは記録が残っています。(図2参照) 

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図2 核実験時代の東京への放射性物質降下とチェルノブイリ、福島原発事故との比較 

上図が文科省第48回環境放射能調査研究に掲載されたセシウム137の降下量グラフです。文科省は一貫してここでも平方メートル単位で被爆量を出しくれているので分かりやすくて助かります。 

もっとも核実験が多かった62年は約56万ミリベクレル/㎡です。

東京はもう2回ほど1放射能を浴びています。それが1986年のチェルノブイリ事故であり、そして今回の福島第1原発事故です。

62年の核実験時と奇しくもほぼ同じ56万ミリベクレル/㎡です。 

しかも核実験期が恐ろしいのは、これが一年で55年から70年代初期までほぼ15年間続いたことです。 まさに私たちの世代は「低線量被曝の時代」を15年間過ごした世代なのです。

私は当時小学校低学年でしたから、まさにもっとも被曝を吸い込みやすい細胞の成長期を過ごしたことになります。(おーこわ)ちなみに、東京にはストロンチウムもプルトニウムの降下も観測されています。 

ではこの結果、私たちの世代を中心として白血病やガンの有意な増加は見られたでしょうか。それが図3です
(*図2図3は「福島原発の真実」より参考のために引用いたしました。ありがとうございます。)

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           図3 日本人のガン白血病患者数の推移

上図は50年から続けられた厚労省人口動態調査による日本人のガンと白血病の増加動態を示したグラフです。

これと図2のセシウム降下量を合わせてご覧くださることで、セシウム137と白血病・ガンとの相関関係を知ることができます。

図2をみれば、緑と赤のドット62年をピークにして右肩下がりに減少しているのがわかります。一方、白血病とガン患者数は等曲線で一貫して右肩上がりの線を描いています。

もし放射性物質降下とガン患者数が相関関係にあるのなら、70年代を境にして白血病は減少傾向を辿るはずでなければおかしいことになります。

放射性ヨウ素による甲状腺ガンは、チェルノブイリでは事故後4年の1990年頃から増加しました。白血病・ガンはやや遅れて8年や10年後と言われています。

ならば、日本の白血病・ガン患者は70年代中期から激増していかねばなりません。折れ線グラフで描けば急上昇トレンドの線を描かねばなりません。

しかし、白血病・ガン患者数は70年代から80年代にかけてたしかに増えてはいるもののこれは高齢化やほかの原因とも考えられます。

そしてもう一点注意していただきたいのは図2で突然セシウム降下量が増加した1986年、、つまりチェルノブイリ事故とその後です。放射性物質が蓄積して発症するまでの時間差が仮に10年内外だとして、1996年前後に特出した急増がみられるでしょうか?

このふたつの図を見比べる限りありません。白血病・ガン患者数動態図は淡々と等曲線増加を示しているだけです。

むしろセシウム降下量は核実験が停止されるに従って右肩下がりになり、一方白血病・ガン患者数は右肩上がりになるという反比例関係が読み取れます。

もし、セシウム137の放射性降下と白血病・ガン発生が因果関係があるのならこのふたつの曲線は完全に同調していなければおかしいのではないでしょうか。

私は素人ですので、この不思議をどのように説明するのか皆目見当がつきません。

ただ当時幼稚園から小学校の期間すごしていたような私としては因果関係が発見できなくてよかったなぁ、とは正直そう思います。

ただし、これだけをもってして低線量被曝と晩発性の白血病・ガンとの因果関係が証明されないと言うのは飛躍でしょう。

逆に、低線量被曝と晩発障害の関係が既に完全に実証された事実だというのも、いささか行き過ぎなように思われます。

このように100mSv以下の低線量被曝には未だ解明されていないことが多いのです。

当時、誰も放射能なんて気にもしていなかったし、雨に打たれるは、校庭で泥まみれになるはの少年時代でした。おそらく当時の私を線量計で計ったら、警告音が派手に鳴り響いたのではないでしょうか。

くわばら、くわばら、であります。

最後に念のために書き添えますが、私は低線量被曝が晩発障害と因果関係がない、などと言っているのではありません。因果関係が実証された定説であるかのように言うのは躊躇する、と言っているにすぎません。

従って、低線量被曝の脅威はあるのだからおかしいというコメントはご勘弁ください。

■写真 彼岸花は今が盛りです。田園は秋色です。

          ゜。°。°。°。°。°。°。°。゜。°。°。°。

 

「青空」様のコメントを載せさせていただきます。まさに同感です。ありがとうございました。

青空です。
生産者と消費者の対立。というよりは一部の無責任者と地に足を着け日々戦い解決点を模索するものとの建設性のない議論。余りにも不平等で不毛です。

善し悪しは別として選択の自由が無限にあると勘違いをしている消費者を全て説得するなど不可能かと感じつつあります。また必ずしもそのような対策を望む消費者が多くないのも実感として感じています。至極まともな人が圧倒的多数なのではないでしょうか。

世界は真に世界恐慌になりました。
すでに過去形です。狂乱の時代になろうというこの時に知恵を出し合いこの狭い国土でこの大人口を維持していかねばならない時代に彼らは恐怖を感じないのでしょうか。
対立することに使う時間もコストもないという国難だとまるでわからない人が多いと感じてしまい、無責任と言うより呆れてしまうことが多い。

皆様が指摘するようにゼロリスク論者は何をいっても聞く耳を持たないでしょう。それでも生きてこれたのですから平和な時代でした。

ただゼロリスク論者は放射線ばかりに気を取られ関係機関に数時間もかけ携帯で電話したり、無線LANで数時間メールを打つのは避けた方がよいと忠告します。

欧米やインドの研究では高周波電波の健康被害は深刻で脳腫瘍や発ガン生殖異常や奇形リスクが1.7倍から3倍高まるそうです。放射線リスクの上昇による発ガン者発生率の上昇はチェルノブイリで0.5%の上昇だそうですからよほど恐ろしい。20ベクレル以下の危険を訴えるならこれらのリスクについても十分な対策をされているのでしょう。是非後学のため過去の自身の対策、実体験をお聞きしたい。

ゼロリスクを求め移住し一から生活を再構築するのも良いでしょう。
ただ日本では多くの場合生きていくのも困難になる場合が多いですが。海外移住も良いでしょう。国内の移住以上に家族の生命維持は困難になるでしょうが。
それらの想像がつきもしない人が放射能リスクばかり上目線で唱えるのはいらついてしまいます。人間ができておらず申し訳ないですが。

かつて生物の授業で教師がウィルス、細菌、発ガン性物質、有毒物質、宇宙線、自然放射能、ストレス、自然災害と生物は常に瀕死の状況下にあり種を持続できること事態が奇跡以外の何者でもないと言っていたのを思い出します。しかしもがいたものだけが生き残れるのは生命の真理です。

濱田様辛きときは吐露して下さい。心折れるなとは軽々にいえる環境ではない。
しかし私は皆様と同じく精一杯応援しています。

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東日本のものは食べないとおっしゃる方へ

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「低線量被曝脅威説派」とでもいうべき人々がいます。未だ放射線医学界では極少派ですが、世論の一角では存在感のある学説です。

先鋭な消費者の中や、西日本ではむしろ多数派になりつつある学説なのかもしれません。
いや、学説一般というよりも科学的「思想」、あるいは「哲学」といったほうがいいでしょう。

さて、低線量をどこに基準を置くのかという目安は諸説あるようですが、農産物の放射線量で5~10ベクレル/㎏、空間線量で毎時0.6~1マイクロシーベルトといったところでしょうか。

この派の特徴は、内部被曝を大きな脅威とすることです。ホットパーティカルを体内に取り込むことは高線量の被曝にも劣らない危険だと考えています。

ですから、内部被曝の主原因である農産物などに厳重な注意を払い、それこそが最大の関心事のようです。

さて、私は先日「検出限界以下」とされる20ベクレル以下の線量測定は、測定技術として難しいのだと書いたところ、この派の方からこんなコメントを頂戴しました。

「(低線量が計測できないのなら)やっぱり危なそうな地域の農産物を食べなかったというのは妥当だったのだ」

なるほどねぇ、そうなっちゃうの、といったところです。
低線量が測ることが困難で、「検出限界以下」になってしまうのならば、いっそうヤバそうな県のものはまとめて拒否だ、というわけです。

なんとも乱暴な意見ですが、現にそのように状況は進行しています。「ヤバそうな県」の代表格である私たち茨城県や福島県の農産物の苦戦状況は泥沼化しています。

では、この「低線量被曝脅威派」が安心できる状況とはどんなことでしょうか?

それはすべての農産物から放射性物質の検出がゼロになることです。そしてその農産物を育てる大地の放射線量も同じくゼロになることです。

おそらくここまでいかないと、この派の人たちの「安全・安心」はないのではないでしょうか。

私たち福島や茨城の農民は今必死に放射能と闘っています。さまざまな研究機関と協同して、知見を集めて、自分の田畑を測定し、マップを作り、放射能の除染や封じ込めの努力を積み重ねています。

しかし、この派にとってそれは無意味なことなのです。なぜなら、ぜったいに放射能が「ゼロ」になることはないからです。

おそらくは私たちの地域で土壌線量が50~70ベクレル/㎏を切ることはありえないでしょう。

もともとのバックグランドには大地と宇宙からの自然放射線量があり、かつ、60年代の核実験の残留があり、今回の事故で放出された放射線量もその中に紛れ込んでしまうからです。

農産物もこの土壌からの移行率は品種によっても異なりますが、おおよそ百分の1から千分の1のオーダーですから、逆に言えば、5ベクレルの放射能汚染をしてしまうためには、その土壌はその百倍から千倍の線量がなくてはならないわけです。

とすれば、仮に低線量派が摂取上限のように言う5ベクレルが検出されたとすれば、その土壌は500bq~5千bq/㎏なくてはならないことになります。

これは平方メートル単位換算でその20倍ですから、1万~10万bq/㎡となります。チェルノブイリの「汚染区域」指定は3万7千bq/㎡以上ですから、10万bq/㎡は避難区域のホットスポットを狙って作物を作らない限りありえない数値です。

ですから、高濃度被曝をしてしまった飯館村などは徹底した除染を自治体ぐるみでしようとしています。

しかし、このような努力は無駄だとこの派の人たちは思っています。そんな努力より、さっさと逃げればいいじゃないか、頑張っている奴がいるからかえって迷惑なんだよ、と。

農産物にしても、作っても低線量は計れないのだから、どうせあなたの地域は全部丸ごと拒否されるんだし、やったって無駄じゃないの、と思っています。

つまりは、今さら「被爆地」はなにをしても無駄だからなにもするな、と。国や東電に補償金もらって都会のアパートに越してきなよ、除染やったって終わりがないんだからさ、というわけです。

このような言辞は私の空想ではなく、実際にこのての台詞をお聞きになったことがあるでしょう。

いいでしょう。そうしましょう。除染活動や測定などバカバカしい努力ですから止めましょう。

これは楽でいい。私たち「被爆地」の農家は復興なんて考えずに、補償金で暮らして昼寝していればいいのですから(笑)。

つまり、低線量被曝脅威派の人々の言う通りにすれば、除染などはやる必要がなくなるということになります。
「低線量が計れないのだから丸ごと拒否」というこの派の人たちの考え方に沿えばそうなります。

低線量脅威派、別名ゼロリスク派は、どこまでが危険で、どこからはこの状況で許容すべきかという閾値をもちません。目標値がないのです。

「閾値なし線形モデル仮説」の極端な解釈であるために、一切の閾値は存在しません。

たとえ今5ベクレルだと言っていても、明日には3に、そしてやがては0.5に、そしてゼロをと要求をエスカレーションすることでしょう。

この派に農民や漁民はいないでしょうから(まったくいないとも思いませんが)、言うだけで済みます。

しかし、私たちはそれを実現せねばならない役割です。
たとえば、現に今自分の田畑が100ベクレルの土壌線量があれば、来春までには70くらいまで低減しようとなどと計画をたてています。

そして冬の間に裏の山林の落ち葉を集めて処分せにゃあならんか、などと計画しています。

あるいは堆肥設計も見直してゼオライトやカリ、木質を増やして熟成期間も増やすなどの努力もしているでしょう。

そしてそれの基礎となる土壌測定もシコシコと続けて、そのデータに一喜一憂しています。私たち農民はそんな生き物なのです。

低線量被曝脅威派の人たちは、えてして自分のことだけしか見ていません。自分の健康、子供の健康、それは大事です。かけがえもなく大切な宝です。誰もそれを否定できません。

しかし、現実にこの社会に放射能は降ってしまったのです。だから危険な食品を拒否するのは正当な権利でした。ただし、緊急避難的には、です。

あの忌まわしい大震災から今日で7か月たちました。

もう少し視野を拡げてみませんか。ひとつはこの先の時間へと、そしてもうひとつは今この時代を共有しているはずの東日本へと。

覚悟していただきたいのは、この放射能との闘いは長いのです。おそらくは5年、10年は優にかかるでしょう。

いつまでも西日本と輸入食品のものしか食べない、と言っていられますか。緊急避難としてはそれでもよかったかもしれませんが、そんな生活が今後も続けられるでしょうか。

ひと口ふた口食べて危険ならば、私たち「被爆地」の住民や農家はその数千倍、数万倍のリスクの上で生活しています。

そして私たち東日本の人間は、よりよい環境を取り戻すべく闘っています。それは自分だけが被曝をしないというのではなく、地域が放射能の枷から逃れることです。

社会全体で、地域全体で線量を徐々に下げていくことを目指すことです。

■写真 わが県は震災にもめげず平年並みの作柄でした。東北の汐をかぶった水田の人たちは大変な努力をして復旧されています。頭が下がります。

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感謝の気持ちと森林測定結果レポート

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「北海道」様。いつまでも変わらない温かいご支援、心から感謝いたします。

大震災直後のような物理的な破壊状況は去ったものの、あまりにも長い放射能との闘いに心身ともに疲弊しておりました。

当地でも後継者の中に、農業をこのまま継いでも自分の一生の長さで放射能とつきあわなければならないのか、と絶望する声も出始めています。

特に都市消費者の一部にみられる「被爆地」農産物に対する拒否反応が暗い気持ちをいっそう助長しているようです。

私たち年配者の農業者は、「そんなことはないさ。セシウムは工夫次第で毎年どんどん減らしていけるんだ。5年もたてばあの時はね、と笑える時がくるさ」と励ましているのですが、励ましている当人たち自身も、ぐらつきかかっているというのが実情です。

昨日も私の所に「プルトニウムが出るようならお終いだ」というメールが来ました。ブログでメルアドを公開しているために、一週間に何本か同様な「お前らは終わった」といったメールが来ます。

またなぜか武田邦彦氏批判の先鋒だと誤解されているみえて、「先生を批判するな」という類のメールもよく来ます。

それにしても世の中には、被災地の傷に塩をすりこんで楽しい人があまりに多いことに驚かされます。

そのような時に私たち被災地の人間が感じるのは怒りではなく、言い知れぬ深い絶望感です。孤独感と言ってもいいかもしれません。

北海道様の支援はこのような時に到着しました。涙がでるほどありがたいことです。私たちのことを想ってくださる方がしっかりといると確信できる安堵感です。

ありがとうございました。このご恩は終生忘れません。

さて、森林の測定値がではじめていますので、ご報告をします。

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この調査によれば、6月から8月までに測定された去年の落ち葉からは高い線量が測定されています。セシウム134、137の合計が平均5000ベクレル/㎏弱といった数値です。

一方、同時期に測定された今年の緑葉からは平均300bq/㎏強ていどの線量しか測定されておらず、放射性物質は大部分が去年の落ち葉に吸収されたことが分かります。

そして8月~9月に測定された今年の落ち葉からは平均1300bq/㎏弱でした。昨年の30分の1でした。

樹皮の放射線量を示す落ち枝からは、平均1300bq/㎏弱が測定されました。

まとめてみます。測定単位はキログラムですので、平方メートル単位に換算するには20倍してください。

・去年の落ち葉のセシウム合計・・・・・平均5000bq/㎏・・・10万bq/平方メートル
・同上・今年の緑葉・・・・・・・・・・・・・・・平均300
・同上・今年の落ち葉・・・・・・・・・・・・・平均1300
・同上・落ち枝・・・・・・・・・・・・・・・・・・・平均1300

また欄外資料にあるように筑波大の恩田教授らによって福島県の計画的避難区域内(川俣町)の森林も目測定されています。測定単位は平方メートルです。

・広葉樹林の土壌内セシウム合計・・・・71万bq/㎡
・同上・杉の若歳林・・・・・・・・・・・・・・・・47万
・同上・壮齢林・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・91万

この筑波大の測定では、若歳林の土壌表面からは約1割ていどの線量しか測定されませんでした。しかし同時に測定された壮齢林では樹間が広いために5割が地表面から測定されました。

これらの測定結果を見ると、3月から4月に森林に降った放射性物質は、若歳林においては大部分の約9割が地表面の落ち葉に吸収されたことが分かります。

落ち枝の測定から、樹の表面にもセシウムが沈着していることがわかります。

ただし、今年の落ち葉からは急激に線量が低下したことがわかります。低減率は約30分の1ですので、使用量をあやまらねば堆肥化が可能なレベルの堆肥規制値の400bq以下です。

残念ながら、去年の落ち葉は茨城県においても使用は不可能だと思われます。

福島県の避難地域内森林は、チェルノブイリの55万5000bq以上の「強制移住区域」レベルなので、しっかりとした除染作業が不可欠です。

それ以外の被爆地地域の森林も、森林公園や里山レジャー施設などの人と触れ合う場所、そして田畑に森林からの水を利用している農地は、去年の落ち葉を除去することが必要です。

          ゜。°。°。°。°。°。°。°。゜。°。°。°。

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         朝日新聞9月14日 参考のために引用いたしました。ありがとうございます。

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暫定規制値は、農民の労働環境安全基準値ではないのか

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励ましてのお言葉ありがとうございます。しばらく休載しようかとも考えていたのですが、がんばって続けることにします。

私は私だけのために書いているのではない、という気持ちで進みます。私は同じ「被爆地」の境涯に置かれた同胞のために微力ですが力を出します。

さて、放射能問題を語るときにいちばん忘れられていることは、農家被曝です。食品被曝は本だけで数多く出ていますが、農家被曝を扱った本はまったくありません。

いや、ニュースにもネットにすら登場しません。あたかも初めから「なかった」かのようにです。

しかし、考えてもいただきたいのです。農産物の「検出限界以下」の超微量の低線量被曝が問題となるのならば、それが生産された大地の上で歩き、土埃を吸い込み、手で直に触り働き、地元の野菜を食べている私たち農民はどうなるのでしょうか。

農産物や土壌の線量を測定するのは食品衛生のためである、という大きな誤解を正さねばなりません。

先日、日本には放射能汚染を規制する法律がないために、放射能を放出することは「合法」だと書きました。

しかし、まったく放射能を規制する法律がないわけではありません。「原子炉等規制法」です。

これは原子力施設の内部環境を規制する法律ですが、そこにはこうあります。

「平方メートルあたり4万ベクレルを超える建物や労働環境は、国が放射線管理区域に指定せねばならない。」

平方メートル当たり4万ベクレルという数値は、実はチェルノブイリで示された旧ソ連の汚染区域の3万7000bq/㎡以上と対応する国際基準値です。

この4万bq/㎡という原子炉等規制法の数値は、日本が採用しているキログラム単位に換算すれば、2000bq/㎏に相当します。

日本の土壌残径規制値はいくつですか?そう、5000bq/㎏です。私たち農民は原子力施設で定めた安全基準の2.5倍以上もの濃度が「安全の閾値」だと信じ込まされてきたのです。

私たち農民は、日々原子力施設内部ですら危険水域である「放射線管理区域」で仕事をさせられていたのです。

ぶざけるのもいいかげんにしてほしい!政府は農民の健康などこれっぽっちも考えていないから、こんな馬鹿げて高い暫定規制値を作るのです。

二本松の500bqが検出された水田では3000bqの土壌放射線量が測定されています。そのとき、マスコミは大騒ぎを演じました。

彼らは消費者がこれを食べささせられたら、という角度のみで報じました。

なにか忘れてはいませんか。そこで働いている人間がいるのですよ。泥をこね、全身泥まみれで働く私たち農民がそこにいるのですよ。

西日本の人は超低線量の送り火の灰ですら恐怖しているというのに、私たちは「放射線管理区域」というれっきとした高濃度汚染地帯を「安全」だと信じ込まされてきたのです。

日本政府とマスコミは高濃度汚染地帯で働く人々より、たまに一口二口食べる人たちの方を向いて仕事をしています。

農民を見ろ!私たち農民の今そこにある危険を見なさい!暫定規制値は、農民の労働環境安全基準値ではないのか。

私たち農家が汚染区域に生きているなら、それを強いられているのならば、私たちはいやがおうでもそれと闘う最前線にいることになります。

私たち農民が最初に汚染地域に放たれたカナリアであり、それを除去する本隊なのです。

暫定規制値を下げるのはあたりまえ。問題は、そこからどうして継続的に放射線量を確実に下げていくのかに、日本は国家を上げて叡知を集めねばなりません。

既に、農家は自主的に自らの汚染された大地を浄化し始めています。これは闘いです。しかも長期間に渡る闘いです。

私たちは農地だけを浄化すればいいわけではありません。それを包む里山の森林、水系、そして住宅地も含めてきれいにしていかねばなりません。

つまり地域の包括的除染をせねばならないのです。空からの汚染マップ一枚に7か月もかかる国は信用できません。いや、「汚染」であることすら認めようとしない国は信用するに値しません。

私たちは農家が協力し合って測定し、自分の故郷を浄化していくつもりです。県や国の「安全宣言」などは聞き飽きました。

ほんとうの「安全宣言」を自分たちで出さねばなりません。出口のないトンネルの中でそう考えました。

■写真 ちょっと前でですが、合歓木の花がさかりでした。ネムノキは「眠の樹」ではないのですか、たしかに見ていると眠くなる。

          ゜。°。°。°。°。°。°。°。゜。°。°。°。

      ■ 東北、関東10県のセシウム134、137の合計沈着マップ

*右端が切れていますが、クリックすると大きくなって見えるようになります。

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          産経新聞10月9日より参考のために引用

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出口のないトンネル

放射能を考えないで生きていけたらと思います。
2011年3月12日から、私は心から笑ったことは一度もなくなりました。
この7カ月間、毎日放射能との闘いでした。
心の芯から疲労を感じます。

あなたたちの農産物は怖いと言われ、毒を撒くいたとまで言われる。
不条理です。

自分たちの大地を汚され、そして悪玉呼ばわりまでされる。
救いがありません。

そしてこの闇はいつまで続くかわかりません。
セシウム半減期の30年後ですか。

出口のないどこまでも続くトンネル。
それが今の私たちの生活です。

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放射線測定において、20ベクレル以下は「検出限界以下」なのが技術的現実だ

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昨日の記事は全編データだけでしたのでパスされた方も多いでしょう。しかし、。今後もできるだけ、放射能関連の一次資料を沢山収拾したいと思っています。
 
一次資料は、伝聞ではないことが条件です。そして簡易計測器ではなく、しかるべき公的機関、あるいは計測機関や大学で計測された数値が必須です。
 
このような地道な数値を拾い集めて、今何が起きているのか、どの範囲でなのかということを確定せねばなりません。
 
さもないと、徒に恐怖心のみを募らせて、福島県で作られた橋や花火まで恐怖することになります。
 
橋や花火はやがて人そのものへの差別に向かうでしょう。私はそれを恐れます。
 
さて、ある今週発売の週刊誌に川上未映子さんという女性作家がエッセイを書いています。
 
先日あった脱原発デモに参加したことを綴っているのとですが、その一節にこうあったのに引っかかってしまいました。彼女はこう書きます。
 
「依然として野菜から高濃度の放射性物質が検出されていた」。
えっ、と思ってしまいました。なんのことを書いてらっしゃるのですか?「野菜から依然として高濃度の放射性物質が検出」・・・?なにを根拠にそう言われるのでしょうか。いつの話です。
 
現在、いかなる県の野菜からも、「高濃度の放射性物質汚染」などは出ていません。
 
限定的にあるのは地衣類のシイタケなどだけです。3月4月ならともかく、そこまで状況は終息してきています。
 
なぜなら、東日本の野菜の放射能汚染の原因である空間線量が、0.02~0.08マイクロシーベルト/時にまで低下して安定しているからです。
 
福島県ですら、避難区域でこそ16マイクロシーベルト/時前後ですが、おおむね0.04~1.03マイクロシーベルトの範囲に収まっています。
 
このていどの空間線量では、野菜の外部被曝による汚染の移行は考えられません。
 
また、植物の内部被曝である土壌からの移行も、極小であることがこの間の経験で分かりました。
 
心配されていたイモも少なく、コメは特殊な条件でしか検出されませんでした。
 
特出して高い数値が出てしまった二本松市の米の500bqをして「高濃度の汚染」と呼ぶのかどうかは主観の問題としか言いようがありません。
この暫定規制値は私たち農家が決めたものではなく、政府が安全だと定めた数値であり、しかもドンピシャの数値ですから。
 
暫定規制値問題も何度も書いてきました。私や村の仲間のおおかたの意見は、「あんな高い数値は誤解の元だ。出ていないのだから下げてもらって結構」といったものです。
ところで、私がこう書くと、必ず消費者の方から「低線量被曝こそがもっとも危険だ」という声を頂戴します。
 
私には低線量被曝の危険を論じるに足る知見がありません。しかし、ひとつだけ指摘しておきます。
 
現在社民党などが、「東日本の全農産物にベクレル表示をしろ」と叫んでいます。馬鹿なことを言うものだと聞いています。
おそらくは、農産物が軒並み「検出限界以下」であることを怪しんでいるのではないでしょうか。
 
国会で除染の緊急の必要を訴えられた東大教授の児玉先生もいともかんたんに、流れ作業でベクレル表示ができる機械がすぐに登場する、といったことを月刊誌に書かれていました。
 
児玉先生の勇気と誠実さは疑うべくもないのですが、先生はあまり測定現場をご存じないようです。
 
私はとある放射線研究所の研究者に話を伺ったことがありました。それは私が20bq以下の「検出限界」に疑問を持って、さらなる精度を求めたためです。
 
その放射線研究所の専門家はこう答えました。
 
「なぜ、そこまでの計測数値が必要なのですか?20bq以下は測定誤差の範囲内ですよ。」
 
私が、「消費者が20bq以下の5~10bq以上の低線量被曝を恐れているからです」、と答えると、彼はこう続けました。
放射線は空間を浮遊する電気であって常に変化している 
「放射線測定は、石とかコンクリートのように体積がある塊を計測するものではありません。放射線は電荷をもったいわば電気です。しかも電線内部を流れているのではなく、空間を浮遊しています。ですからその時々で細かく変動します。」
ベクレルは極めて微量な単位であって、測定には高コストと長時間かかる。 
「そのような形がない放射線を、しかもベクレルという極めて小さな単位で計測するとなると、現在の放射線測定機器では最新のものを用いたとしても、相当な時間かかります。40分から数時間です。当然コストも極めて高くなります」
放射線測定には誤差が出る。低線量は誤差の範囲内である。 
「放射線測定の専門家なら100bq以下の測定には必ず誤差があると言うでしょう。誤差は20%といわれています。」
「これは放射線の性格上そうなるので、どんな高い測定器を使っても同様な誤差はありえます。」
放射線測定は「安全の確認」のためにあるのではなく、ホットスポットを見つけ出すスクリーニングの技術である。
「そもそも放射線測定の技術は、安全を保証するために出来たのではなく、逆にスクリーニングでホットスポットを見つけ出すための技術なのです。」
「スクリーニングというのは、ひとつの集団の中から、一定以上の放射線量を持つ危険なホットスポットを見つけ出す技術のことです。」
線量は依頼されれば計測できるが、測定誤差が一定範囲内でありえる。
「今、低線量被曝が問題になっているのは私も知っていますが、純粋に測定技術上の問題として20bq以下を求められても、現在の測定技術では測定誤差範囲内ですが、それでよろしければやります、としか言えないのです。」
流れ作業的にベクレル測定はできないことはないが、非常にラフなものになって低線量測定には向かない。
「流れ作業のラインにベクレル測定する機械はできますが、相応に粗いものになります。おそらくは100bq以下は検出限界以下となって、それ以上を弾き出すスクリーニングが可能なていどの装置でしょう。暫定規制値以上の農産物を見つけ出すスクリーニングには利用できます。」
これが放射線測定の現実です。この現実を理解した上で、低線量被曝問題を語らないと、おかしなことになります。
■写真 カラスウリの花とカタツムリの子

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二本松周辺の水田における放射線量測定調査結果

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本松において放射性物質が玄米で500bq検出された水田付近について詳細な調査結果が入りましたのでお伝えします。

これは新潟大学農学部土壌研究室・野中昌法教授(まさのり)研究室が、この9月16日、24日の稲刈り前に行った調査結果です。

なお、地名は伏せさせて頂きました。数値はエクセルグラフからの読み取りなので多少の誤差はご勘弁ください。

この調査において、周囲の森林が水田にどのような影響を与えているのかを主眼に見ています。

採取場所は森林から沢水が流入する水口、その下の中央部、そして水田の週末部分の水尻です。

■A地点
➊土壌表面(1㎝)の空間線量(マイクロシーベルト)
・水口・・・・・・1.3
・中央・・・・・・0.83
水尻・・・・・・・0.73

➋地表下20㎝・乾土の土壌線量ベクレル /㎏・セシウム134・137の合計)
・水口・・・・・3000
・中央・・・・・2600
・水尻・・・・・2600

■B地点
➊同上の空間線量
・水口・・・・0.83
・中央・・・・0.6
・水尻・・・・0.52

➋同上の土壌線量
・水口・・・・4500
・中央・・・・1900
・水尻・・・・1200

■C地点
➊同上の空間線量
・水口・・・・0.58
・中央・・・・0.51
・水尻・・・・0.63

➋同上の土壌線量
・水口・・・・2600
・中央・・・・2200
・水尻・・・・2600

■D地点
➊同上の空間線量
・水口・・・・1.58
・中央・・・・0.48
・水尻・・・・0.56

➋同上の土壌線量
・水口・・・・2850
・中央・・・・1800
・水尻・・・・1900

■E地点
➊同上の空間線量
・水口・・・・1.52
・中央・・・・1.05
・水尻・・・・1.05

➋同上土壌線量
・水口・・・・6200
・中央・・・・3900
・水尻・・・・2600

以上の調査でわかったことは、沢水が流入する水口付近は空間、土壌線量共に高く、それが中央部に行くにしたがって下がり、出口の水尻付近では更に下がるという結果でした。

ただし、C地点のように有意な低下がみられない地点もありました。これは土質によるものだと推察されます。

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農水省は原子力施設の2.5倍の土壌放射線量基準で農民を働かせている!そして「汚染区域」の大部分は除染しないつもりだ

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農水省は10月1日にこのような除染方針を出しました。 

「2013年の8月末までに、推定被曝線量を半減させる目標を掲げた。長期的には空間線量を1ミリシーベルト以下にする。
推定被曝線量が20ミリシーベルトを下回る地域で今後、除染が本格化する。」
(日本農業新聞10月3日)
 

「20ミリシーベルト以下」という線量数値は、空間線量です。はて?農水省はいつから放射能汚染の指標を空間線量に置いたのでしょうか。 

被曝初期ならともかく、農業作業者の安全・健康を保証する環境基準は、農業者が歩く、吸う、手にする、作物を作る、家畜を飼う土壌でなければならないのはあたりまえすぎて言う気にもならないことです。 

ならば、放射線量の指標は空間放射線量ではなく、土壌放射線量です。それ以外考えられません。 

それが今の除染開始の前段になって、年間空間線量の積算量が指標だということです。理解に苦しみます。 

しかしこれでは先に進まないので、とりあえず良いとしましょう。空間線量累積でも、ベクレル単位に変換が可能ですから、いちおう土壌汚染度もラフですが、わかることはわかります。ただし、正確さを欠きますが。 

ではその空間線量の年間累積量の推定マップはというと、既にあります。 

Photo 産経新聞10月2日より参考のため転載いたしました。ありがとうございます。 

このマップは、文科省が9月11日というちょうど半年間の節目の積算値を、年間推定にシミュレーションしたものです。 

マップの黄色、オレンジ、赤色が20ミリシーベルト「以上」の地域です。「以下」は青色とグレイです。 

「20ミリシーベルト以下で農地除染が活発化する」(日本農業新聞)・・・?意味が分かりません。まさかとは思いますが、20ミリシーベルト以上の農地は除染をしないというわけでしょうか。

となると、上図の避難地域の大部分は放置されることになります。まぁ、そうなことをしたら福島県民の総スッカンを食いますからやることはやるのでしょうね。

飯館村の除染計画は非常に緻密に考えられている計画書ですが、国との協同、特に財政支援を要求しています。あまりにも当然な要求です。

政府は飯館村の除染事業の予算3224億円を満額で支援すべきです。

そして今後出揃うであろう、南相馬市、浪江町、双葉町、大熊町、富岡町、楢葉町、広野町など30キロ圏内の除染事業を全力で支援してください。

おそらく2兆円規模の大事業となるでしょうが。国家の全力をかけてやらねばなりません。

飯舘村除染計画
http://www.vill.iitate.fukushima.jp/saigai/wp-content/uploads/2011/10/b2eb22467554edc1286c0f22672344be 

問題はむしろ、チェルノブイリで言うところの3万7000bq/㎡、つまり日本流でいうキログラム換算で1850bq/㎏以上の土壌放射線量の残留している土地です。

そもそも政府が出した5000bq/㎏という暫定規制値自体のインチキさは今までさんざん書いてきました。

5000bqは、国際的な基準となっているチェルノブイリでいうところの10万bq㎡、すなわち「汚染区域」に相当するあり得なく高い放射線量です。

わが国の法律でほぼ唯一放射線量を規定している「原子炉等規制法」には、原子力施設で働く作業者の労働環境は、平方メートル当たりにして4万bq以下にすることとされています。

それを2.5倍もの10万bq/㎡を基準値にするとは、信じがたい棄民政策だと言わざるを得ません。

昨日掲載したセシウム134、137の土壌沈着マップをもう一度見て下さい。

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       *「朝日新聞」より参考のために転載いたしました。ありがとうございます。

この汚染マップで一目瞭然なのは、3万bq/㎡という黄色、オレジ、赤色地域が広大にひろがっていることです。国際基準に照らせば、これが除染が必要な「汚染区域」です。

わが国政府は、この「汚染区域」は除染しないつもりですか?おそらくそうでしょう。暫定規制値である5000bq/㎏=10万bq/㎡以上を楯にしてサボタージュする気です。

だから、今になって年間放射線量の積算などという空間線量に指標を切り換えたのです。

「チェルノブイリは旧ソ連のことだ。わが国は関係ない」、というのならそれでも結構です。ならば、チェルノブイリの2.5倍の土壌放射線量を許容する科学的根拠を明らかにして下さい。

原発事故当時の農水副大臣だった篠原孝さん、チェルノブイリに行ったのが自慢なら、この矛盾を説明してください。

日本の農産物は各国で輸入禁止にあっています。関西でもそうです。その多くは間違った情報の伝聞ですが、根はあるのです。

その風評を作っている元凶は他ならぬ農水省です。風評のみならず、私たちを「汚染区域」で働かせて平気という農水省に農民を守れるはずがありません。

農水省は「汚染区域」の大部分を除染しないつもりです。これを許してはなりません。

■写真 すすきを見ると妙に秋しますね。朝日を浴びてたよやかなすすきはなごみます。珍しく縦位置で撮ってみました。

 

 

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日本政府はチェルノブイリの8倍もの線量を汚染地域の下限とした

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諸外国の認識では、日本政府の原発事故対応は「チェルノブイリ以下」だとされています。 

その大きな理由は、放射能汚染を「汚染」として法的に認めなかったということから始まっていることは昨日お話したとおりです。 

「法的に無規定だから、除染してはならない」というサボタージュがまかり通っていました。 

これは単なる「たら・れば」論ではなく、この責任は原発を国策としておきながら、その事故処理を何も考えてこなかった歴代政府と現在の政府にあります。 

さて、サェルノブイリの事故対応には学ぶべきものが多々あります。そのひとつが私が3つの考え方の一番目に述べた「何が、どこにどれだけ降ったのか」、という被害の範囲の確定です。 

旧ソ連政府が、大規模避難の後の事故処理にあたって真っ先にやったことは、この被害範囲の確定でした。 

それは「汚染地域」と「非汚染地域」を区分し、それぞれに対して除染方法を定めていく方法でした。 

このラインを旧ソ連政府は、土壌放射線量が1平方メートル当たりセシウム137の線量で3万7000ベクレル(bq)と定めました。

3万700bq/㎡とは、日本で使用されているキログラム単位で言えば1850bq/㎏に相当します。 

チェルノブイリにおいては、実に日本の国土の4割にあたる面積である15万ヘクタールが汚染区域に指定されました。 

Photo
上図で薄いグレイ部分が日本流にいえば1850bq/㎏の汚染地帯に相当します。

ここから旧ソ連政府は1986年4月26日の事故後のほぼ1か月後の6月上旬には、既にこの図の原型を作り上げて公表していました。

そして3か月後の8月から9月にかけては、汚染区域に指定されたコルホーズやソルホーズに対して個別汚染状況のマップを渡し、更に小規模個人農家に対しても集落ごとの汚染マップを手渡しています。

同時に並行して、線量低下の目標を設定して、積極的な除染活動に国家規模で乗りだしています。

では、続いてわが国の汚染マップを見ます。

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 *以上ふたつの図版は「農業経営者」7月号より参考のために転載いたしました。ありがとうございます。

この図は4月29日の測定値を基に作られた最初のマップです。単位は国際単位の平方メートルに直してあります。

この図で右脇の切れてしまいましたが、汚染段階は上から300万~2000万bq/㎡、100万~300万、60万~100万、30万~60万、30万以下、そして斜線が測定していない地域です。

何か気がつきませんか?そうなんと最小単位が30万bq/㎡です!旧ソ連では3万7000bqでしたね。実に8倍もの高い数値が最小区分なのです。

日本政府は、当時既に事実上の国際的な基準となっていたチェルノブイリの汚染地域区分の3万7000bqを国民の目から隠すために、㎡単位ではなく、キロ単位にわざわざ書き換えた上で、その上限を30万bqという途方もなく高い数値に置いて公表したのです。

したがって、国際的には、「汚染区域」は更に多いだろうという認識を諸外国に与えてしまったわけです。これが「フクシマはチェルノブイリ以上の人類史上最悪の災厄だ」という誤った国際認識に繋がりました。

あげくに国民を被曝の危険にさらし、暫定規制値を5000bq/㎏、すなわち国際的には10万bq/㎡という「汚染区域」に設定したあげくは、二本松市での汚染米が出る原因を作り出したのです。

昨日、二本松市の市長が、農水省に対してサンプリングではなく全量調査するように申し入れしたのは、遅まきとはいえ、まったく正しい要請です。

そもそも5000bqという暫定規制値の設定自体が問題視されるべきであり、規制値以下なら4600bqでも耕作を許可したこと自体が深刻な失敗なのです。愚かというよりも、むしろこれは犯罪的と言っていいでしょう。

さて、下図が7か月たった今頃になって文科省が出した汚染マップです。

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    *「朝日新聞」より参考のために転載いたしました。ありがとうございます。

この図は文科省の航空機モニタリングマップですが、ほぼ国際標準で書かれています。最小単位も平方メートル単位で、下限が3万bq/㎡となっています。

この日本の汚染マップを、チェルノブイリに置き換えるとこうなります。

・薄い黄色3万~6万bq/㎡・・・・・汚染区域
・オレンジ色6万~60万・・・・・・・・汚染区域から永久管理区域
・赤色60万以上・・・・・・・・・・・・・・永久管理区域から立入禁止区域

ちなみに私の農場は、ギリギリで汚染区域より数キロ南にあります。

チェルノブイリが5段階に分かれていたのに対して、3段階だけというラフなものですが、ないよりましです。

ようやく初歩的な調査に7か月たって着手したのは、前進と評価すべきでしょうね、やっぱり。

この文科省の測定箇所は非農地が管轄です。ここでも農地の測定のみする農水省とおかしな縄張り争いがあるようですが、困ったことに測定方法が異なっています。

文科省は表土から5㎝下で測定し、農水省はその3倍の15㎝で測定しています。

いうまでもなく、文科省の測定方法のほうが正しいわけで、農水省はセシウムが表土下5㎝に集中してあることを知りながら、すっとぼけて15㎝下で計っています。ズルい上にボケています。ズルボケです。

農水省は測定をしていた夏には大部分の「汚染区域」の農地が耕耘されていたことを知っており、結果としてセシウムが希釈されていたことを知って、こういう計測をしたとしか思えません。

文科省のほうも、農地は計れずに農地は雑草などでお茶を濁しているようですし、千葉県では15㎝で計ったかと思えば、茨城県では3㎝になるなど一定していません。

海洋は海水部分が農水省で、海底の泥は文科省です。もうこうなるとお笑いですね。

そしてこの農水省よりなんぼかましな文科省汚染マップすらも、実測ではなく航空機モニタリングだということに留意ください。

あくまで飛行機でブーンと飛んで計ったもので、大枠は掴めますが、細かいン地形の褶曲が多い東日本ではラフなのものでしかないのです。

放射能測定は歩いて測るのが原則です。それが無理なら文科省のモニタリング・カーで土埃を採集するほうがより正確な汚染マップが出来るでしょう。

この汚染マップがあって初めて、除染計画が成立するのです。

■写真 台風が去って。ようやく秋が来ました。稲借りも完全に終わりました。最後は台風との競争でした。

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除染は違法だからしてはいけない

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放射性物質は安全である、これが政府の公式な立場です。

だから、いくら放出されようと永久に犯人は捕まることがありません。捕まえる法律がないからです。

ですから、放出された放射性物質は出し放題です。出しても罰せられないのですから、当然です。

原子力賠償法によって賠償が行われている?何に対してですか?

それはあくまで、原子力特別措置法第20条による「出荷の停止・制限・自粛」に対して行われているのであって、被曝した農地、農民、農産物に対してなされているものではありません。

なぜなら政府見解では、放射能はいかなる法律にも制約されない物質だからです。ここにすべての問題の根っこがあります。

除染がされないのも、その根拠法がないからです。そもそも法で制約されない物質をどうして排除するのでしょうか。

汚染物質でないものをどうして清浄化するのでしょうか?

汚染物質を規定する法律はあることはあります。「大気汚染防止法」、「海洋汚染等防止法」、「土壌汚染対策法」、「水質汚濁防止法」などがあります。

しかし、いずれの法律においても放射性物質は「適用除外」になっています。

たとえば「土壌汚染防止法」にはこういう一項があります。

「特定有害物質とは、鉛、砒素、トリニクロエチレン、その他の物質(放射性物質を除く)」と記されています。

環境法令の基本となる環境基本法にもなんの記載もありません。

では原子力基本法はというと、グダグダと長い条文にはいかなる環境汚染に対しての規定がありません。

驚くべきことに、わが国には原子力災害における被曝に対してのなんらの救済法は存在しないのです。

だから国による放射能除染など考えられもしない、それが真実です。

「農地や住宅地が放射能汚染されたが、なぜ取り締まらないのか」という質問に対する各省の見解をあげます。

環境省の見解。「違法性はないと認識しています。千年に一度の災害ですから」。

農水省の見解。「環境省の規制値があれば動けますが、ないから動けません」。

経済産業省の見解。「原子力対策本部に問い合わせて下さい。」。

では、放出の当事者である東電の見解。「法律にあるとおりの認識です」。

なぜ除染が行われないかが分かりましたか。

そうです。除染しては「いけない」のです。

放射性物質にはいかなる規制法も存在せず、いかなる被害救済法も存在しません。

除染するためにわざわざ新法をつくらねばならなかった理由はそれです。

したがって、放出された放射性物質は東京電力の私有財産です。私有財産である以上、放射性物質を勝手に第三者が移動したり、棄てたりすることは「違法」です。

もし、放射性物質の遺棄が発見されれば、最寄りの交番に持って行って下さい。一定期間が過ぎれば、東電のお礼状と共に一割戻ってくるでしょう。

まったく私たちはいい国に生まれたものです。国家公務員住宅に105億円だそうという国が、福島の除染にたった5億弱しかださないという素晴らしい国です。

チェルノブイリがうらやましい。皮肉ではなくそう思います。

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チェルノブイリの汚染区分と、福島第1原発事故の汚染状況を比較すると見えてくるもの

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昨日、私はいたって簡単な自分が放射能汚染と闘っていく上での考え方を整理してみました。

こんなことです。

第1に、何が、どれだけ、どこに降ったのか。

第2に、どれだけが危険あると言えるのか。

第3に、どこからを「除染」する対象とするのか。

これをすることにより、「何と闘うのか」、「どこまで闘うのか」という目標と範囲を設定できます。

昨日は第2番目を考えてみました。これは三つに分かれます。

空間、土壌、そしてもうひとつは農産物です。

3月、4月においては空間線量が重要でしたが、今は東北、関東は一部の地域を除いて、0.04~0.08マイクロシーベルトの間にありますので、問題視する必要とはなくなりました。

土壌放射線量は、残留放射能問題としてかなり長期間私たちを苦しめることでしょう。

土壌の残留放射線量を考えるひとつの手がかりとなる指標はチェルノブイリにあります。

旧ソ連の放射能汚染土壌の区分は以下です。単位はすべてbq(ベクレル)/平方メートルです。

➊148万以上・・・・・・・・・・・・・・・立入禁止区域

➋55万5千~148万・・・・・・・・永久管理区域

➌18万5000~55万5千・・・一時的管理区域

➍3万7千~18万5千・・・・・・・汚染区域

➎3万7千以下・・・・・・・・・・・・非汚染区域

日本政府の単位は、なぜかすべてキログラムですので換算せねばなりませんが、こんな換算でいいとします。正確には土壌の体積で変化しますので、あくまでひとつの目安です。

5000bq/㎏⇒⇒10万bq/㎡

農水省の土壌暫定規制値5000bq/㎏は、チェルノブイリの「汚染地域」、しかも上限値に近い数値であることが分かります。

農水省は遅まきですが、8月末になってようやく土壌放射線量マップを出しました。おそらく耕耘によって線量が減る時期を待っていたのだと思われます。

ちなみに、政府が「汚染」マップという表現をとらないのは、放射性物質は法律上クリーン物質なために、いくら放出しても法律違反ではないからです。

政府・東電が原子力賠償法で賠償すると言っているのは、あくまで農産物が売れなかったことに対する被害や、避難地域の人たちが避難せねばならなかったことに対する被害に対してであって、放射能汚染そのものではありません。

したがって、今でもそうですが、政府・東電は土壌や海の放射能汚染は一切視野に入ていませんでした。放射能の漏洩と被曝を規制する法律がないためです。

規制する法律がないので、当然のこととして賠償も除染もする必要がない、というのが政府の建前です。それがここまで除染が遅れた真相です。

脱線しますが、朝霞で作ろうとしている国家公務員住宅の予算は105億円、一方福島県の除染予算は5億円です。日本政府の体質が実によくわかる数字ですね。

ですから、政府は除染活動をするためにはわざわざ除染新法を作らねばなりませんでした。底抜けに愚かなことです。

さて、そのような政府対応は別にして、福島県内では避難地域に赤丸の2万5千bq超えが各所に点在しています。単位はヘクタール。(欄外資料参照)

これを、さきほどの5千bq/㎏⇒10万bq/㎡で換算してみます。

➊2万5千bq/㎏超・・・・50万bq/㎡超
             
・・・チェルノブイリの一時的管理区域・永久管理区域に相当

➋1万~2万5千・・・・・3千bq/㎏・・・・20万~50万bq/㎡
                     ・・・・・同上の一時的管理区域に相当

➌5000~1万bq/㎏・・・・10万~20万bq/㎡
               ・・・・同上の汚染区域と一時的管理区域に相当

なお、チェルノブイリの「非汚染区域」は1850bq/㎏以下に相当します。妥当な線だと私も思います。

まず土壌に関して、政府は「汚染」を認めることからはじめねばなりません。

そもそも「暫定」規制値の「暫定」という意味を、「今まで放射線量を規制する法律がなかったので急遽作りました」などというトンチンカンな提出の仕方をするからいけないのです。

これでは「暫定」はやっつてけ仕事ですといわんばかりです(実際にそうですが)。

「暫定」の意味は、「緊急時だから高い数値に暫定的に設定してあります」という意味の「暫定」です。

当然、放射能「汚染」をいかにして下げていくのかという目標と対になっていなければなりません。

チェルノブイリでも暫定規制値はありました。当初の野菜の暫定規制値はこうです。

・1986年事故当初のウクライナ(当時ソ連)の暫定規制値・・・・3700bq

・1987年の同上・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・740

・1991年の同上・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・600

・同年に改定された現行規制値・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・40~70(種類によって違う)

ご覧のように、チェルノブイリでは、当初は野菜の暫定規制値は日本以上(*500bq)に高かったわけですが、1年で一桁にまで下げ、更に5年後にはそれを更にもう一桁下げてほぼ10分の1にまで下げています。

日本政府は、「暫定」の意味を正しく説明していなかったために、この規制値が一人歩きしてしまって、あたかも「ここからは安全」、「超えたから危険」といった閾値のようになっています。

野菜、米にしても、土壌にしても暫定規制値は、あくまで1年以内に大幅に引き下げられるべき文字通りの「暫定」的なものでしかなく、次のステップに移行する最初の階段でしかないのです。゛

そのためには、現状を真正面から認識せねばなりません。

福島県を中心にして東日本には、約3万ヘクタールものチェルノブイリの区分に従えば「一時的管理区域」と「永久管理区域」が拡がっており、2500ヘクタールの「汚染区域」が存在するのです。

これを何年かけて除染して清浄化するのか、という国家目標を立てるべきです。それを政府が明確にしないから、いつまでも「東日本はおしまいだ」といった流言蜚語が絶えないのです。

■写真 少年の頃に読んだロバート・ハインラインの「地球の緑の丘」という小説の題名を思い出しました。

          ゜。°。°。°。°。°。°。°。゜。°。°。°。

 

      日本農業新聞 8月30日 農水省放射性物質分布図(土壌線量です)
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生産者が健康で安全な作業をできる環境は、また消費者にとっても健康・安全なのです

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放射能問題をこじらせている原因のひとつは、「消費者の側」に立つのか、「生産者の側」に立つのか、でしょう。

この両者で必ずと言っていいほど意見が食い違います。私が生きる有機農業の世界は、ある意味ジャンルとして安全、安心、地産地消、産直提携を唱えていただけに受けたダメージは大きく、生産団体によっては売り上げが半減という壊滅状態に追い込まれました。

今、消費者サイドから言われているのは、全点検査、全ほ場測定でしょう。

もちろん、団体によって温度差はありますが、いすれにせよ、農産物のベクレル表示が品質保証証明のようになりつつあるようです。

これは、ただでさえ大震災と、それから延々と続く風評被害による打撃から立ち直っていない生産者サイドにとって、さらなる負担となっています。

おっといけない。私たち生産者サイドが「風評」だと言うと、必ず消費者サイドからは「いや、それは実害だろう。嘘ばかり農家は言う」と決めつけられます。

私たち生産者は濃厚に自分が被害者であり、故無き汚名を着せられて苦吟していると認識しています。一方、消費者も故無く危険な農産物を食べさせられている、と認識しています。

つまり皮肉にも、お互いに「自分は被害者である」という認識において共通しているのです。

お互いが「被害者」であるという奇妙な世界です。これでたやすい解決や和解などはありえるはずがありません。

では、このような時に、原発が悪い、東電が悪い、これからは脱原発だ、それ再生エネルギーだ、と言っても屁の突っ張りにもなりません。そんなものは、現にここにある放射能の前には抽象的スローガンでしかないからです。

消費者と生産者の間に開いた隔たりは一朝一夕に埋まるほど浅くはないし、原発問題が存在しつづけるかぎり、いかに冷温停止しようとも問題は別な形で残り続けるからです。

その「別な形」とは、ひとつには残留放射能問題であり、ひとつには除染して健康な国土に戻せるのか、という問題です。

この対象は数限りなくあります。土、水、大気、草、森林、枯れ葉、そしてそれが育んだ農産物です。対象があまりにも多すぎ、あまりにも多岐にわたっています。

私が放射能の実測運動をひとりで開始して3か月になりますが、ほぼ自分が生きる周囲すべてを測定せねばならないという事実に、時折うちのめされる時があります。

特に米問題は、今回の二本松市でみられるように、いったん検出されてしまえば、その水田を取り巻く条件、ほぼすべてが疑い得るという迷宮にさまよい込んだ気持ちがしました。

対象が多岐に渡って絡んだ糸のようになった時に、私たちが取るべき方法は範囲を特定することです。

人は世界全体を相手に闘えません。「脅威X」とは闘えない。犯人を絞り込み、特定し、それと闘うことです。

つまりこのようなことが必要です。

第1に、何が、どれだけ、どこに降ったのか。

第2に、どれだけが危険あると言えるのか。

第3に、どこからを「除染」する対象とするのか。

なんだあたりまえのことではないかと思われた方もいらっしゃるでしょうが、そうです。実に素朴なことです。

ただし、ここにおいてもまた、消費者と生産者のサイドに分かれた対立が残ることでしょう。

特に第2の「どこからが危険あるのか」で意見がわかれるでしょう。今日はこのことにだけ触れます。

私は農家こそが第一の被爆者であると考えています。食品として摂取する放射性物質の量と、耕作によって吸い込む量は桁が違います。

ですから、国際基準はすべてまず「作業者の健康と安全」が前提になって作られています。

たとえば原子力施設内部で働く作業員の健康・安全があり、その上で一般人のそれがあると立てます。

農業問題でいえば、農作業者の健康・安全が立てられて、それを土台にして一般の人たちの基準が作られるのが国際ルールです。

今回の二本松市の事件で、私が驚いたのは、農水省が4600bq(ベクレル)/㎏で耕作を許可していたことでした。

日本の暫定規制値は、国際的に通用しないキログラム単位で表示されているので解りにくいのですが、4600bq/㎏とは、IAEA(国際原子力機関)の検査基準でいえば、おおよそ10万bq/平方メートルに相当します。(ただし、土の比重によって変動する可能性があります。)

旧ソ連の放射能汚染土壌の区分は以下です。単位はすべてbq(ベクレル)/平方メートルです。

➊148万以上・・・・・・・・・・・・・・・立入禁止区域

➋55万5千~148万・・・・・・・・永久管理区域

➌18万5000~55万5千・・・一時的管理区域

➍3万7千~18万5千・・・・・・・汚染区域

➎3万7千以下・・・・・・・・・・・・非汚染区域

そう、農水省の土壌暫定規制値の五千bq/㎏は、旧ソ連では「汚染地域」に指定されるべき線量です。

農水省に対して、「汚染区域」で耕作してよい、というのは何が科学的根拠かお聞きしたい。

明らかに農水省は、500bqという米の暫定規制値から逆算して土壌の規制値を決めたのです。

0.1という移行係数はその辻褄合わせの政治的数値です。そしてこれに気を取られて、かんじんの農作業者の健康・安全をおざなりにしたのです。

したがって、それが作られる土地で働く農業者の健康・安全とはなんの関係もありません。悪しき消費者優遇政策です。政府は、農家のことなどなにも考えていないのです。

生産者が健康で安全な作業をできる環境は、また消費者にとっても健康・安全であるのです。

逆に言えば、生産者にとって危険な土地は、消費者にとっていかに移行係数が小さかろうと「危険」なのです。

政府はいたずらに高い数値を暫定規制値にすることで、農家を風評被害から守ったような顔をして、実は農家を危険に陥れていたのではないでしょうか。

■写真 台風の被害にもめげず、当地は大根がまっさかりです。

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