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私の有機JAS体験からみたグローバリズムの実態

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私は今から12、3年前にグローバリズムの日本上陸の実体験をしたことがあります。有機JAS認証制度の上陸でした。

これは1990年代中ば頃から、コーデックスという食品の貿易自由化のための政府間協議の場で始まりました。

いや、正直な話、いきなり有機農産物という自分で言うのもなんですが辺境の地にバリバリのグローバリズムが降臨するとは夢にも思いませんでしたね(笑)。

なんで世間の片隅で、清く正しく美しく生きているわれわれに目をつけたのか、今でもさっぱりわかりません。要は、米国はオーガニック農産物で攻勢がをかけたかった、そして受けて龍農水省は、まぁあんな味噌っカス共はグローバリズムのいい実験台だと思ったのでしょうね。

コーデックスは、FAOとWHOによって設立された国連の下部組織ですが、事実上WTOの外部機関の色彩が強いところです。今回のTPPは何回もWTOのラウンドをやってもラチが開かないので、しびれを切らした米国が場を変えてみたくなったのでしょう。

やるたびに先進国と先進国、先進国と発展途上国と次々に火種が拡大してなにも決まらない、それがWTOでした。

そこで、米国は今度こそ日本に「逃げられない」ような仕組みを考えました。FTAすらやるかやらないかすらすったもんだする上に、やっても例外規定が山ほどありますからこれじゃだめだ。そこで最終兵器ででてきたのが、一見米国が環太平洋のワンオブゼムという顔ができるTPPだったわけです。

TPPは、要するに米国の罠ですね。おびき出す甘い餌は自動車や電気電子製品の関税自由化です。実際は現地生産のほうが今や多いですから、それほどのメリットはないはずですが、韓国に猛追されている強迫観念から抜け出せない日本財界にはえらく美味そうに見える餌だったようです。

さて、有機JASが国際協議の場で始まっているというのが私たち現場の有機農業者に知られるようになったのが、1990年代末のことです。実はそれまでにコーデックスでステップ7までいっていたのですから、なんのことはない、交渉の土壇場で私たち農家に知らされたというわけです。なんてこったい、ほとんど終わりじゃないか!

なんにつけ官庁は、自分で絵図を書いて、それにあった人選をした審議会を作って、何から何まで完全に決まってから、申し訳のようにパブリックコメントをちょっとだけ聞きます、というのが手口ですから、驚くには値しませんが。

ですから、TPPのようにやるやらないの段階から国民が関われるのは、たとえ1か月でも貴重です。有機JASはウンもスーもなく、「やりますから、意見言ってね」でしたから。

この有機JAS経験は2年ほど前に「私がグローバリズムと闘おうと思ったわけ」というシリーズで7回書いていますから、お暇だったら読んで下さい。
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2009/10/post-fbea.html

有機JASという制度は、ひとことで言えば有機農産物の挙証証明です。そもそも、農薬や化学肥料を「やった」ということを挙証するのではなく、「やらない」ということを挙証するんですから、話が逆だろうと思うのですが、「これもコーデックスで決まったことだ」のひとことです。

切り札は何といっても農水省の、「有機JASとらないと、今後有機と名乗れませんぜ」のひとこと。これじゃあ、やるもやらないもありしゃない。逃げ道塞いで、米国流を押しつけられたわけです。

苦い薬を飲む思いで、「しかたがない。ここを拒否すると話が進まない」と思い直して、コーデックス原案を読むと、一項一項腹がたつことばかりが、実にまずい翻訳文で列記されています。

たとえば、単肥と言って明治時代から使われてきた安全性になんの問題もない肥料の苦土石灰はダメ、硫安もダメ、尿素もダメ、、とダメダメ尽くしです。なんでかと言えば、コーデックス原案に、「天然由来の資材でも、製造工程で一切の化学処理がなされたものはダメ」という恐ろしい一項があるからです。

この一項に引っかけられて大部分の肥料資材が使用不可能になりました。これだけではありませんでした。

慣行農法の畑と有機農法の畑の距離が問題になったのです。「農薬の飛散防止」という一項があったからです。そこで原案を見ると、な、なんと40メートル開けろと書いてあるではないですか。

もう、唖然ボーゼンです。日本の農地で隣と40メートル開いている所があったら教えて欲しいもんです。関東では山間地しかないでしょう。

なぜこんな現実離れした一項があるのかといえば、米国やオーストラリアではそれが常識だからだそうです。バッキャ~ローと叫びましたね。ここは日本だ!(笑)

万事この調子です。わが国の風土、地形、歴史は一切合切完全に無視されます。伝統などクソくらえ。先行した国に合わせろ、靴に足をあわせろといわんばかりの無理無体です。

40メートル条項だけはいくらなんでもということで修正させましたが、後は丸飲みに近い形で決められました。いや、「見直しを5年後にやるからさ」という農水省の甘い声を信じた私がバカだった。

思えば、私に根深い農水省に対する不信はこの時に生まれたのですな。あの官庁は農民を守らない。官僚が規制できる仕事が増えるのが省益。

それをささやいた担当官は移動ししているわ、あった「見直し」とやらはもっと重箱の隅をつつくようなことまでがんじがらめにした強化案だったのです。もういちど言わせて下さい。バッキャーロー!ああ、スッキリした。

このように、私たち有機農業者は日本の農業界で最初の未知との遭遇をやらかしてしまったのです。

グローバリズムは、日本の伝統的、歴史的な技術、風土、経験、そしてそこから生まれた制度を一切認めません。あるのは「世界標準」という名の米国流です。

今、制度と言いましたが、米韓FTAでは農業共済制度がやり玉に上がって一般の保険制度と同格にさせられました。

おそらTPPでは日本の巨大な農業共済制度が標的にされるでしょう。米国の最大の標的は、農業ではなく保険、金融分野の自由化ですから。

おまけに韓国はラチェット条項も飲まされましたから、後戻りはできません。ラチェットとは歯車に後戻りをできなくする歯止めのことです。

当該国が、ちょっと自由化をやりすぎたかな、もう少し修正をしよう、としてもできない仕組みです。

米国がTPPで協議対象としている、銀行、保険、法務、特許、会計、電力・ガス、宅配、電気通信、建設サービス、流通、高等教育、医療機器、航空輸送などの分野で、自由化が認められれば、もう後戻りができないのです。

全中VS経団連というミスリードを大手マスコミはしているようですが、まったくの間違いです。経団連傘下のほとんどの分野に米国流グローバリズムの津波が押し寄せることになります。

こういってはおかしいですが、TPPにおいてわが農業などTPPの脇役のそのまた脇役程度の位置しか与えられていません。ただ、単独で受ける被害が大きいから主役扱いにされているだけです。

後戻りといえば、前原さんが「交渉の途中下車」などと口走って、さっそく官房長官に怒られたようです。一回交渉に参加表明すれば、締結のゴールまでいくしかない、したら最後、米国流のグローバリズムが怒濤のように日本に流れ込んできます。

私は自分の有機JAS体験から、それがいかに恐ろしいものであるのかを今日はお話しました。TPP反対議員が356名となったそうです。もはや農村議員だけがこの危険に気がついた状況ではないようです。ネット界では反対が大きく盛り上がっています。

野田政権とマスコミは、TPPを農業問題にすり替えることで締結を強行しようとしています。絶対にその暴挙を許してはなりません。以上、経験者は語るのコーナーでした。

■写真  秋の空にひつじ雲。

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コメント

「有機JAS」なんて言うといかにも日本独自の有機栽培の素晴らしい規格ですよー!とアナウンスされてるかのように錯覚をする。
農水省の悪どさを感じます。現場の濱田さんは、さぞ大変だったことでしょうが、一般消費者には外圧に屈しただけだなんて伝わらないのが残念です。

JAがTPP反対署名議員を公表しましたね。
今後の経過に注目です。


パネッタ国防長官が来日して、普天間基地辺野固移設でガシガシと釘を刺してますが、これも米国の揺さぶりミックス戦術ですかねえ。

投稿: 山形 | 2011年10月26日 (水) 09時14分

グローバリズムと言いながら、その実態は、自国(ほぼアメリカ)に、いかに都合良いシステムにするかと言うことですかね。
グローバルスタンダードと各国固有の文化、制度が上手く共存できれば良いのでしょうが、それは、かの国にとっては障壁以外の何物でもないと言うことでしょうか。
管理人様が言われるとおり、TPPで農業が矢面に立っていますが、アメリカの思惑は、小泉郵政改革で自由に出来ると思っていた日本の資産が、思いのほか自由にならなかったので、TPPで一気に邪魔な日本の規制を取っ払うのが目的のような気がします。
記憶が定かではないのですが、自分たち日本人にしたら、何でそれが障壁になるの?的項目も、交渉の俎上に上がっていると言うことを聞きました。

投稿: 一宮崎人 | 2011年10月26日 (水) 15時32分

たくさん勉強させていただいてありがとうございます。
仕事で、「有機資材」について、農水省、認証団体と
けんけんがくがくと争っています。
みなさん現場を知らない。特に認証団体!!
アー固有名詞出してやりたい。
現実を知らない。
開いた口がふさがらないことだらけです。
どうしたら、日本の農業が良くなるのでしょうか?

投稿: | 2011年10月26日 (水) 16時16分

ナオミ・クライン著
 ショック・ドクトリン(上下)
  惨事便乗型資本主義の正体を暴く

 上巻帯
  戦争、恐慌、巨大災害等の「異変」=人間の不幸を 「利益チャンス」の餌食に変える新自由主義の酷薄。
 「創造的復興の欺瞞」を剥ぐ

 下巻帯
  大規模な民営化導入に災害を利用する。
  3.11以後の日本は確実に次の標的になる。

昨年買った英語原本 Naomi Klein
「The Shock Doctrine: The Rise of Disaster Capitalism」は数ページ読んだだけで断念しましたが、翻訳本が出てアマゾンに予約していましたが、ようやく届きました。今晩から読みはじめます。

1994年以降の自民党政権(政府、官僚)は米国の「年次改革要望書(要求書)」に従って、国益を易々と明け渡してきました。露骨な内政干渉です。「時価会計」、「大規模小売店舗法の廃止」、「確定拠出年金制度」、「郵政民営化」等々、「有機JAS」もその一つでしょう。
米国の要求を「拒否できない日本」、「ノーと言えない総理大臣」、その仕上げがTPPに引きずり込むことなんでしょう。

昭和20年8月、二発の原爆を落とされ降伏した日本は、ある意味米国の庇護の下に経済繁栄してきました。その刈取、収穫の時期が来たということでしょうか。

「豚は太(肥)らせてから食え」

今の日本は米国にとって「獲物」「御馳走」なんでしょう。

投稿: 下請です | 2011年10月26日 (水) 20時44分

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