感謝の気持ちと森林測定結果レポート
「北海道」様。いつまでも変わらない温かいご支援、心から感謝いたします。
大震災直後のような物理的な破壊状況は去ったものの、あまりにも長い放射能との闘いに心身ともに疲弊しておりました。
当地でも後継者の中に、農業をこのまま継いでも自分の一生の長さで放射能とつきあわなければならないのか、と絶望する声も出始めています。
特に都市消費者の一部にみられる「被爆地」農産物に対する拒否反応が暗い気持ちをいっそう助長しているようです。
私たち年配者の農業者は、「そんなことはないさ。セシウムは工夫次第で毎年どんどん減らしていけるんだ。5年もたてばあの時はね、と笑える時がくるさ」と励ましているのですが、励ましている当人たち自身も、ぐらつきかかっているというのが実情です。
昨日も私の所に「プルトニウムが出るようならお終いだ」というメールが来ました。ブログでメルアドを公開しているために、一週間に何本か同様な「お前らは終わった」といったメールが来ます。
またなぜか武田邦彦氏批判の先鋒だと誤解されているみえて、「先生を批判するな」という類のメールもよく来ます。
それにしても世の中には、被災地の傷に塩をすりこんで楽しい人があまりに多いことに驚かされます。
そのような時に私たち被災地の人間が感じるのは怒りではなく、言い知れぬ深い絶望感です。孤独感と言ってもいいかもしれません。
北海道様の支援はこのような時に到着しました。涙がでるほどありがたいことです。私たちのことを想ってくださる方がしっかりといると確信できる安堵感です。
ありがとうございました。このご恩は終生忘れません。
さて、森林の測定値がではじめていますので、ご報告をします。
この調査によれば、6月から8月までに測定された去年の落ち葉からは高い線量が測定されています。セシウム134、137の合計が平均5000ベクレル/㎏弱といった数値です。
一方、同時期に測定された今年の緑葉からは平均300bq/㎏強ていどの線量しか測定されておらず、放射性物質は大部分が去年の落ち葉に吸収されたことが分かります。
そして8月~9月に測定された今年の落ち葉からは平均1300bq/㎏弱でした。昨年の30分の1でした。
樹皮の放射線量を示す落ち枝からは、平均1300bq/㎏弱が測定されました。
まとめてみます。測定単位はキログラムですので、平方メートル単位に換算するには20倍してください。
・去年の落ち葉のセシウム合計・・・・・平均5000bq/㎏・・・10万bq/平方メートル
・同上・今年の緑葉・・・・・・・・・・・・・・・平均300
・同上・今年の落ち葉・・・・・・・・・・・・・平均1300
・同上・落ち枝・・・・・・・・・・・・・・・・・・・平均1300
また欄外資料にあるように筑波大の恩田教授らによって福島県の計画的避難区域内(川俣町)の森林も目測定されています。測定単位は平方メートルです。
・広葉樹林の土壌内セシウム合計・・・・71万bq/㎡
・同上・杉の若歳林・・・・・・・・・・・・・・・・47万
・同上・壮齢林・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・91万
この筑波大の測定では、若歳林の土壌表面からは約1割ていどの線量しか測定されませんでした。しかし同時に測定された壮齢林では樹間が広いために5割が地表面から測定されました。
これらの測定結果を見ると、3月から4月に森林に降った放射性物質は、若歳林においては大部分の約9割が地表面の落ち葉に吸収されたことが分かります。
落ち枝の測定から、樹の表面にもセシウムが沈着していることがわかります。
ただし、今年の落ち葉からは急激に線量が低下したことがわかります。低減率は約30分の1ですので、使用量をあやまらねば堆肥化が可能なレベルの堆肥規制値の400bq以下です。
残念ながら、去年の落ち葉は茨城県においても使用は不可能だと思われます。
福島県の避難地域内森林は、チェルノブイリの55万5000bq以上の「強制移住区域」レベルなので、しっかりとした除染作業が不可欠です。
それ以外の被爆地地域の森林も、森林公園や里山レジャー施設などの人と触れ合う場所、そして田畑に森林からの水を利用している農地は、去年の落ち葉を除去することが必要です。
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朝日新聞9月14日 参考のために引用いたしました。ありがとうございます。
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コメント
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無事到着し、安心しました。貴重なブログ記事に記載していただき恐縮しています。
困っている人、頑張っている人を応援するのは、しごく当然のことで、特に私も酪農畜産に携わっておりますので、放射線の風評被害の最前線に立ち、情報発信していただいている浜田様には感謝しているところです。一サラリーマンの私が出来ることは、支援のレベルには程遠く、応援レベルですが少しでも気を休めていただける時間を取ってもらえれば・・と考えています。
いつも思うのですが、結果を見て批評することは簡単ですが、結果を出すまでの苦労は中々分かってもらえません。
自分の信じる道を、一歩一歩地道に前をむいて歩んでいくしか、手は無い様に感じます。途中では徒労感に見舞われるかもしれませんが、多数派か少数派かは、わかりませんが、理解している人、応援している人が居ることは信じてください。
投稿: 北海道 | 2011年10月10日 (月) 08時29分
食品汚染計測に関して、先週のEテレでメカニズムを解説されてました。
もうちょっと掘り下げて欲しい内容でしたが、今週木曜日夕方に再放送があるので、興味ある方はご覧になってみては。
なぜに20ベクレルが境界なのかにもう少し説明して欲しかった。
東北版番組では、先日の農水省の森林除染実験の模様も。
落ち葉と腐葉土表面を取り除けば相当下がる。
現在IAEAも入って意見交換やってますね。
近いうちに深夜枠で再放送されることでしょう。
ゼロリスク信者には何を言っても糠に釘というか、マスコミに騙されるなとか言われそうですが、そんな人は何故武田邦彦みたいなアジテーターの言うことを平気で鵜呑みにして擁護するのでしょうね?
いつも疑問に思います。
ブログ本文にあるように、常に危険に曝されているのは、現地で作業を続ける農家の方々です!
投稿: 山形 | 2011年10月10日 (月) 08時34分
青空です。
生産者と消費者の対立。というよりは一部の無責任者と地に足を着け日々戦い解決点を模索するものとの建設性のない議論。余りにも不平等で不毛です。
善し悪しは別として選択の自由が無限にあると勘違いをしている消費者を全て説得するなど不可能かと感じつつあります。また必ずしもそのような対策を望む消費者が多くないのも実感として感じています。至極まともな人が圧倒的多数なのではないでしょうか。
世界は真に世界恐慌になりました。
すでに過去形です。狂乱の時代になろうというこの時に知恵を出し合いこの狭い国土でこの大人口を維持していかねばならない時代に彼らは恐怖を感じないのでしょうか。
対立することに使う時間もコストもないという国難だとまるでわからない人が多いと感じてしまい、無責任と言うより呆れてしまうことが多い。
皆様が指摘するようにゼロリスク論者は何をいっても聞く耳を持たないでしょう。それでも生きてこれたのですから平和な時代でした。
ただゼロリスク論者は放射線ばかりに気を取られ関係機関に数時間もかけ携帯で電話したり、無線LANで数時間メールを打つのは避けた方がよいと忠告します。
欧米やインドの研究では高周波電波の健康被害は深刻で脳腫瘍や発ガン生殖異常や奇形リスクが1.7倍から3倍高まるそうです。放射線リスクの上昇による発ガン者発生率の上昇はチェルノブイリで0.5%の上昇だそうですからよほど恐ろしい。20ベクレル以下の危険を訴えるならこれらのリスクについても十分な対策をされているのでしょう。是非後学のため過去の自身の対策、実体験をお聞きしたい。
ゼロリスクを求め移住し一から生活を再構築するのも良いでしょう。
ただ日本では多くの場合生きていくのも困難になる場合が多いですが。海外移住も良いでしょう。国内の移住以上に家族の生命維持は困難になるでしょうが。
それらの想像がつきもしない人が放射能リスクばかり上目線で唱えるのはいらついてしまいます。人間ができておらず申し訳ないですが。
かつて生物の授業で教師がウィルス、細菌、発ガン性物質、有毒物質、宇宙線、自然放射能、ストレス、自然災害と生物は常に瀕死の状況下にあり種を持続できること事態が奇跡以外の何者でもないと言っていたのを思い出します。しかしもがいたものだけが生き残れるのは生命の真理です。
濱田様辛きときは吐露して下さい。心折れるなとは軽々にいえる環境ではない。
しかし私は皆様と同じく精一杯応援しています。
投稿: 青空 | 2011年10月10日 (月) 20時44分
この前は匿名の私のコメントを取り上げていただいてありがとうございました。
コメントした日は田んぼの収穫前に地区全体で農道整備をした日でした。道祖神あり、棚池あり、勾配も尋常ではないの谷津田にはりついた赤道です。
草刈し水路を掘るという作業をしながら情けない気分になってしまい・・・感情的な文章を書いてしまいました。
私は大学で化学を専攻していました。原発事故後すぐに、化学で広範囲の放射性物質の降下を解決するのは不可能だと感じました。まずもって、セシウムなどがどんな化合物として存在しているかさえも同定できないのですから打つ手がありません。ですから私の絶望感は地元の他の方よりも深かったと思います。
よく地区の先輩から「〇〇くん!石灰みたいななんかを撒けば放射能なくなんねんだべか?」と質問されることもしばしばありました。そういう時は「そういうのはないぞい。スコップで土をぶん投げるしかないべない・・・」としか答えられませんでした。
でも、濱田さんのブログを読ませていただいて「農作物に吸収させなければ良い」ということに気づきました。
お前はバカか?と感じるでしょうが・・・原理主義のように自分の領分で「もうダメだ」と考えてしまっている人間は気づくことができません。
世の中の消費者というのも当時の私の感覚と同じだと思います。
「もうダメだ」という脳みそは、収穫された作物も同じだと判断してしまいます。
二本松の本検査も明日には全部の地区の結果が出るという報道がありました。おそらく問題ないと思います。
予備検査で県は2回の測定を敢行しました。2回目は490bqという値を出しました。
あれからずっとこのことばかり考えていましたが、2回目の結果が極端に下がったとしたら・・・二本松や福島という枠を超えて東日本全体が風評の嵐になったのではないかと感じました。
ですから、当該水田の方には申し訳が無いですが、下がらなくて良かったのかもしれないと思うようになりました。
福島県が発表した予備検査正式な検査結果は1回目の500bqです。コレは県・市の意地だったろうと思います。検査の客観性を失わないための意地だったろうと。こんなことを考えているなんて私はお人好しかもしれません。でも私は県職員も市職員も同じ福島の同胞ですから、その苦しみは同じだと思っています。
今後も「風評」という得体の知れないものが横行するでしょう。でも濱田さんのような方の発信で目から鱗が落ちる人が大勢いるのも事実です。濱田さんのような「お涙頂戴」ではない発信が最も重要な対抗ツールです。
投稿: ta | 2011年10月10日 (月) 22時05分