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2011年10月 1日 (土)

生産者が健康で安全な作業をできる環境は、また消費者にとっても健康・安全なのです

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放射能問題をこじらせている原因のひとつは、「消費者の側」に立つのか、「生産者の側」に立つのか、でしょう。

この両者で必ずと言っていいほど意見が食い違います。私が生きる有機農業の世界は、ある意味ジャンルとして安全、安心、地産地消、産直提携を唱えていただけに受けたダメージは大きく、生産団体によっては売り上げが半減という壊滅状態に追い込まれました。

今、消費者サイドから言われているのは、全点検査、全ほ場測定でしょう。

もちろん、団体によって温度差はありますが、いすれにせよ、農産物のベクレル表示が品質保証証明のようになりつつあるようです。

これは、ただでさえ大震災と、それから延々と続く風評被害による打撃から立ち直っていない生産者サイドにとって、さらなる負担となっています。

おっといけない。私たち生産者サイドが「風評」だと言うと、必ず消費者サイドからは「いや、それは実害だろう。嘘ばかり農家は言う」と決めつけられます。

私たち生産者は濃厚に自分が被害者であり、故無き汚名を着せられて苦吟していると認識しています。一方、消費者も故無く危険な農産物を食べさせられている、と認識しています。

つまり皮肉にも、お互いに「自分は被害者である」という認識において共通しているのです。

お互いが「被害者」であるという奇妙な世界です。これでたやすい解決や和解などはありえるはずがありません。

では、このような時に、原発が悪い、東電が悪い、これからは脱原発だ、それ再生エネルギーだ、と言っても屁の突っ張りにもなりません。そんなものは、現にここにある放射能の前には抽象的スローガンでしかないからです。

消費者と生産者の間に開いた隔たりは一朝一夕に埋まるほど浅くはないし、原発問題が存在しつづけるかぎり、いかに冷温停止しようとも問題は別な形で残り続けるからです。

その「別な形」とは、ひとつには残留放射能問題であり、ひとつには除染して健康な国土に戻せるのか、という問題です。

この対象は数限りなくあります。土、水、大気、草、森林、枯れ葉、そしてそれが育んだ農産物です。対象があまりにも多すぎ、あまりにも多岐にわたっています。

私が放射能の実測運動をひとりで開始して3か月になりますが、ほぼ自分が生きる周囲すべてを測定せねばならないという事実に、時折うちのめされる時があります。

特に米問題は、今回の二本松市でみられるように、いったん検出されてしまえば、その水田を取り巻く条件、ほぼすべてが疑い得るという迷宮にさまよい込んだ気持ちがしました。

対象が多岐に渡って絡んだ糸のようになった時に、私たちが取るべき方法は範囲を特定することです。

人は世界全体を相手に闘えません。「脅威X」とは闘えない。犯人を絞り込み、特定し、それと闘うことです。

つまりこのようなことが必要です。

第1に、何が、どれだけ、どこに降ったのか。

第2に、どれだけが危険あると言えるのか。

第3に、どこからを「除染」する対象とするのか。

なんだあたりまえのことではないかと思われた方もいらっしゃるでしょうが、そうです。実に素朴なことです。

ただし、ここにおいてもまた、消費者と生産者のサイドに分かれた対立が残ることでしょう。

特に第2の「どこからが危険あるのか」で意見がわかれるでしょう。今日はこのことにだけ触れます。

私は農家こそが第一の被爆者であると考えています。食品として摂取する放射性物質の量と、耕作によって吸い込む量は桁が違います。

ですから、国際基準はすべてまず「作業者の健康と安全」が前提になって作られています。

たとえば原子力施設内部で働く作業員の健康・安全があり、その上で一般人のそれがあると立てます。

農業問題でいえば、農作業者の健康・安全が立てられて、それを土台にして一般の人たちの基準が作られるのが国際ルールです。

今回の二本松市の事件で、私が驚いたのは、農水省が4600bq(ベクレル)/㎏で耕作を許可していたことでした。

日本の暫定規制値は、国際的に通用しないキログラム単位で表示されているので解りにくいのですが、4600bq/㎏とは、IAEA(国際原子力機関)の検査基準でいえば、おおよそ10万bq/平方メートルに相当します。(ただし、土の比重によって変動する可能性があります。)

旧ソ連の放射能汚染土壌の区分は以下です。単位はすべてbq(ベクレル)/平方メートルです。

➊148万以上・・・・・・・・・・・・・・・立入禁止区域

➋55万5千~148万・・・・・・・・永久管理区域

➌18万5000~55万5千・・・一時的管理区域

➍3万7千~18万5千・・・・・・・汚染区域

➎3万7千以下・・・・・・・・・・・・非汚染区域

そう、農水省の土壌暫定規制値の五千bq/㎏は、旧ソ連では「汚染地域」に指定されるべき線量です。

農水省に対して、「汚染区域」で耕作してよい、というのは何が科学的根拠かお聞きしたい。

明らかに農水省は、500bqという米の暫定規制値から逆算して土壌の規制値を決めたのです。

0.1という移行係数はその辻褄合わせの政治的数値です。そしてこれに気を取られて、かんじんの農作業者の健康・安全をおざなりにしたのです。

したがって、それが作られる土地で働く農業者の健康・安全とはなんの関係もありません。悪しき消費者優遇政策です。政府は、農家のことなどなにも考えていないのです。

生産者が健康で安全な作業をできる環境は、また消費者にとっても健康・安全であるのです。

逆に言えば、生産者にとって危険な土地は、消費者にとっていかに移行係数が小さかろうと「危険」なのです。

政府はいたずらに高い数値を暫定規制値にすることで、農家を風評被害から守ったような顔をして、実は農家を危険に陥れていたのではないでしょうか。

■写真 台風の被害にもめげず、当地は大根がまっさかりです。

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コメント

生産者と消費者の溝。
大変重要な視点です。
本来「食」を通して強力に繋がっているはずの両者が、いとも簡単に対立軸にされてしまい、それを煽り立てるアジテーターと匿名ネットユーザー。
インターネットは便利なものですが、危うさも改めて感じました。


見事な青首大根!
美味そうだなあ。

新聞・テレビ・週刊誌・ネットと情報入手は簡単になり、且つ大量にありますが、受け手側がどのように判断するか・・・ですね。一般的にはテレビでの有識者と呼ばれる人の言葉を信じるのではないでしょうか?
限られた時間の中での収録(生放送もありますが)では、本意の全てを伝える事は難しいでしょう。仮に収録ならディレクターや局の想いが編集に現れる事も否定できないと思います。
山形様が仰る通り、生産者ー消費者は対立するものではなく、信頼の下で繋がっている事が本来です。
その信頼を確保(担保)する為にも、濱田様が仰る通り、測定と情報開示が重要であり、お互いに健康でなければなりません。
テレビでは「プルトニュウム」検出のニュースが流れています。重いはずのものが、飯館まで飛散すると言う事は、爆発の大きさを想像させます。

見事な大根!!私の町でも夏大根を生産しています。
今は「大根抜き」も機械化され昔からみれば楽にはなりました。

作付まで時間が無かったとはいえ、単純に移行計算から5000Bq/Kgで線引きして水系の考えを軽視した農水省の失態ですな。今回の二本松の件は。

また、動きの重い農水省から昨日になって、森林に降ったセシウムは葉と下草・落ち葉を回収するだけで放射線は半減できるとのデータが出てきました。
今からすぐにやってほしいです。この冬場こそが勝負のつもりで!
放置して木に吸収されると、各種物質の中でも特にセシウムは長期に渡って木(チェルノブイリでの調査では白樺)の中で長年に渡り蓄積され続けます(おそらくカリウム置き換え)。→wikiのセシウムやチェルノブイリの項目に核種ごとのグラフ出てます。


北海道様。
さすが北海道!大根まで機械収穫なんですか。スケールでけぇ!
でも、今や手で「うんーっ、スポッ!」と抜けるときの大根抜きの快感は味わえないんですね…。


昨日夕方の東北ローカルニュース(NHK)では、
白河市の農園で、埼玉県の会員の消費者(かなり歳のいったオバチャンばかりでしたが)がサツマイモの収穫を楽しそうにやってる様子がありました。
各地でそんな風景が一刻も早く戻ってくることを望みます。

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