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米国のTPPの標的は農業だけではない!

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私はこれほどまでに非民主的な方法で自分の国の未来を大きく左右する案件が決められるのを見たことがありません。 

野田首相は与党内部すらまとめきらないうちに、見切り発車のようにしてAPECでTPP参加表明をしてしまうことを考えています。 

与党内意見集約は2日といわれており、もはや1週間を切りました。参加するという結論は、既に政府与党内部では一部を除いて既決事項であるらしく、おそらくおざなりな意見集約をして「反対意見は聞きおいた」になると思われます。 

すさまじいまでの拙速です。事実上1か月あるかなしやの周知期間で、国民の運命を外国に預けてしまうことを決定してしまうとは!本来なら民意を問うべき案件です。 

今まで政府がまともなTPPの説明をしたのを聞いたことがありますか?何が自由化分野なのかさえわからず、未だ与党内部ですら情報開示しろ、と騒いでいる始末です。密室政治が進行しています。 

大手マスコミは財界のスポンサーを恐れて沈黙を守り、一部テレビがタレントのやくたいもないスキャンダルと同列でわずかに報道する程度です。このマスメディアの意図的沈黙が国民のTPP理解の大きな壁になっています。 

一般国民には、農業が高い関税率で保護されているという誤解があります。この誤解から、TPPになればもっと安く食品が買えるという錯覚が生じています。 

そして財界は日本農業過保護論を言い立て、あたかも農業こそが自分たちの国際競争力を妨げていると言っています。事実誤認からくるトンデモ論です。 

事実は、日本の農産品の輸入関税は世界でも最も低い方に属しています。平均16%です。これは財務省の関税表をみればすぐに分かることです。
財務省貿易統計 実行関税率表 

野菜のような10%以下のほうが圧倒的であることがわかるはずです。ただ、地域を支える基幹産品である乳畜産物、サトウキビ、コンニャクなどに例外的に高い関税がかけられています。これは農業保護というより地域保護です。

確かに、コメや乳製品には特出して高い関税をかけちれていますが、このような高い税率は例外中の例外です。米国はこのわずかな例外を狙って攻撃をしかけてくるはずです。 

そして米国のカーク通商代表は、「TPP交渉において例外品目はない」と明言しています。おそらくコメ、小麦、乳畜産物の防衛は、いったん参加してしまえばほぼ不可能になると思ったほうがいいでしょう。 

米韓FTAではコメが逃れたような報道がありますが、実態は自由化に向けての協議は継続されており、おそらく早晩のうちに韓国は開放するはめになると思われています。 

また、米韓FTAにおいては韓国が作ってきた伝統的な農業の制度やシステムが標的となりました。 

たとえば農業共済制度です。米国は韓国の農業協同組合や漁業協同組合、郵便局、信用金庫の提供する保険サービスの自由化を求めました。 

このような各種の協同組合自体が米国には存在せず、これを世界標準=米国流に変えろという要求です。 

米韓FTAにおいて、米国の大きな要求項目は「保険、金融、法務の自由化」でした。この保険の自由化の中に、協同組合の共済事業が含まれていたのです。 

協同組合や郵便虚ルの共済制度は、地域を支える大きな柱として同じ職業や居住地を共にする人たちがお金を出し合って万が一に備える仕組みです。日本でもJAや漁協、郵便局の共済制度は地域の安心の柱です。 

これが自由化の障害となると米国は主張しました。共済制度を解体して、その資金を一般保険会社に預けろという無理無体です。とうぜん、この保険業界には、米国大手の保険会社が大量に参入しており、彼らの草刈り場となりました。 

また共済事業を切り離された農業協同組合や郵便局が大きな痛手を受けたのはいうまでもありません。韓国の農協は、近い将来分解されて株式会社化の道を歩むことになるでしょう。

そしてその農業法人に外国資本が参入する仕掛けです。こうして韓国農業と農地は外国資本に蚕食されて行くことになります。 

では、この共済の自由化で国民がなにか得をしたのか、といえば何もありません。協同組合や郵便局の低利の共済を奪われて、より高利の米国の保険会社に変わっただけです。 

米国は、既に小泉改革以来一貫して日本の保険業と郵便局の民営化・自由化を求めてきた歴史がありました。簡易保険と共済制度の解体も要求してきています。 

米国が狙うは、世界第2位の保険市場である日本の保険、金融分野です。TPPにおいて米国はこの完全自由化を要求してきます。 

そして同時に農地法の改正により農地の参入が認められた今、農地への外国資本の参入も考えているはずです。 

よく、「米国が何をTPPで何を売ろうとしているのか分からない、日本に米国から買う商品がそんなにあるのか」、という疑問の声を聞きます。そこで農産品野自由化のためのTPPなのかと短絡するのですが、そうではありません。 

米国は既に、日本の穀物市場を征圧して久しく、寡占状態だと言っていいでしょう。コメはそもそも売るほどのジャポニカ米を彼らは持っていません。

米国がほんとうに売りたいのはモノそのものではなく保険商品や金融商品、法務・会計・税務などのサービス商品です。あるいは、日本の農業・農地への外国企業の資本参入です。

そのために日本の伝統的な仕組みを解体してしまう必要があったのです。日本の仕組みを支えてきた組織を解体に追い込み、事業を外国資本が吸収し、法律を変えていくというのが彼らの描いている青写真です。

別の言い方をすれば、こういうことを植民地化と呼びます。

私がTPPを輸入食料が安くなってラッキーという近視眼的な見方ではなく、もっと大きなわが国の仕組み、風土、伝統への挑戦だとみるべきだと言うのはそのためです。

■写真 わが村の麦畑。ちょっと色調のトーンを落としてみました。

■ 放射能問題は止めちゃったのか、という声を頂きましたが、TPPが一段落したら戻りたいと思っています。ちょっとお待ちを。

 

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■ 民主 TPPに反発の意見衰えず

 野田総理大臣は、17日、TPP=環太平洋パートナーシップ協定の交渉参加に前向きな意向を表明しましたが、民主党内では、政府の情報提供が不十分だなどととして、反発する意見は衰えておらず、交渉参加を決断した場合、党内の意見対立が激しくなるのではないかという懸念も出始めています。

 野田総理大臣は、17日、内閣記者会のインタビューで、TPPについて「アジア太平洋地域は間違いなく成長のエンジンになるところで、その中で高いレベルの経済連携をしていくことは、日本にとってはプラスだ」と述べ、交渉参加に前向きな意向を表明しました。

 これに対し、同じく17日に開かれた交渉への参加の是非を検討する民主党の作業チームの総会では、出席者から「アメリカなどが、日本に対してどの分野で自由化を求めようとしているのか明示すべきだ」とか、「中国や韓国が交渉に参加する判断をしていないが、理由がよく分からない」などと政府の情報提供が不十分だという批判が相次ぎました。

 TPPへの参加に慎重な議員は、すでに190人を超える署名を集めており、輿石幹事長は記者会見で「この問題は、議論のしかたによっては党を二分することになりかねない」と述べました。慎重な対応を求める議員は、18日以降も会合を開いて、TPPに参加した場合、医療など農業以外の分野にも影響を及ぼしかねないと訴えていくことにしています。

 このため民主党内では、野田総理大臣が来月前半のAPEC=アジア太平洋経済協力会議の前に交渉参加を決断した場合、党内の意見対立が激しくなるのではないかという懸念も出始めています。


NHK 10月18日 5時16分

 

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コメント

本日付の農業新聞に酪農学園准教授のコメントがあり、米韓FTAに関して、「ラチェット条項」「医療・食の安全・規制制度」などへの影響内容も説明されています。
濱田様が仰る通りの事が記載されています。
どうして、業界誌だけではなく一般紙に記事を掲載して、広く国民に説明しないのか分かりません。
ほとんどの国民は理解していないと思います。
同紙には、米国からの「医療自由化目標」の文書も厚労省に9月16日届いていたのに、「公的医療保険制度は議論の対象になっていない」とTPP説明資料に掲載していた事も記事となっていました。推進派にとって都合の悪い情報は隠す姿勢が、いつもの事ですが今回も沢山有るようです。

投稿: 北海道 | 2011年10月28日 (金) 08時21分

最近、特に思うことは、何となく世界情勢が、第2次大戦前に似てきたような気がします。
世界的不況と、金融不安、その中で、経済のブロック化。既にEUは、実質ブロック経済化していると思いますし、アメリカもTPPでのブロック化を敷きたいのではないでしょうか?
ブロック化と言うと聞こえが良い?極論言えば、植民地化ですかね。
とにかく、富を自国に集めたい。そんな一心なのでしょうか?
言葉や表現は変わっても、今も昔も人間の欲望は、変わらないと言うことなのでしょう。
願わくば、3次大戦的な大戦争が起こらないことを望みたいです。
妄想がひどくてすみません。

投稿: 一宮崎人 | 2011年10月28日 (金) 11時56分

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