「すべての食品にベクレル表示を」という人たちは矛盾した要求をしている
こんなコメントがありました。武田さんを取り上げると来訪者数がはね上がるのは嬉しいのでずか、コメント欄はジャングル状態になります。私の記事は以下ですhttp://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2011/09/post-9df6.html#comment-66469684。
武田邦彦が言うようにベクレル表示して売ればいいじゃん。
武田邦彦に文句を言わずに東京電力と保安院に身銭を切らせて保証と除染をさせなきゃだめなんじゃん。
ご先祖様から引き継いできた土地を汚されて、「汚染されてません。問題ありません」ってどうなのよ。
東北の人はもっと親やご先祖さまを大事にする人たちだとおもってたけど、「おら、お上に歯向かうのはこええ、じぃちゃんかんべんしてけろ」ってことなんじゃろか。
「おれのとこは汚されてねえよ、いいがかりつけんな!」って主張も心がない感じがする。
HN 埼玉県民
まぁ、とやかく批評するのもなんだという低レベル廃棄物ですが、よくこんなもの書いて自己嫌悪にならないなぁ、と思ってさらしておきます。私もだんだんと耐性がついてきたのかしらね(笑)。農薬耐性がついたコクゾー虫みたい。
いちいち反論するのも馬鹿げていますが、このような人たちがなにを考えているのかのエッセンスみたいになっていて面白いですね。
まず「ベクレル表示で売ればいいじゃん」とのこと。そうカンタンにいかないじゃん(笑)。
だって、まさか測定はガイガーカウンターで、表面測定して、ベクレル換算するなんて考えちゃいないでしょうね。このての人たちご愛用のガイガーカウンター測定ほど危ないものはありません。
だって、校正していない誤差あり測定器で、測る対象の食品も外部線量でザッと済ませればそりゃ楽ですが、そんな数値いいかげんです。
よくテレビで食料品店の店先になやら秤のような器械をおいておもむろに食品を計って売っているのをテレビで見ます。この投稿者のイメージはあれかな?しかし、、あんなものはスタンドプレーじゃん(もうやめようこの言い方)。
食品は外部からスクリーニングしても測定できません。外部がきれいに洗浄されている場合には線量は低く出ます。内部の線量はグチャグチャにディップ状にしないとわかりません。
私たちがやる場合、包丁で叩くかフードプロセッサでビュ~ンとやってからある程度の厚さにしてから計測します。それも計測管を表面に当てるのではなく、差し込むようにして測ります。
100万円以上するシンチレーション式なら30~40分ていどで結果がでます。ただし、測るモノや求める測定レベルで時間はかなり異なります。水は非常に計測しにくく、また今話題の低線量はエネルギーが微小なので気が遠くなるくらいの時間がかかります。
安物のガイガーカウンターですと電解能が低く、エネルギー補償されていませんから、5回計ってすべて結果は違うのがあたりまえですので、平均値を出すしかありません。
よく誤解されているのですが、放射線量測定器は、「今危ないですよぉ!」という高い線量に対しての警告を出すために作られています。もともと原子力施設内部で使っいたものが始まりですから。
ですから一般人ユースで、低線量を測るようにはそもそもできていません。やりゃあやれる、ていどで、時間もコストもかかります。
食品のベクレル表示をしろ、と叫んでいる人は、秤のような計測器に乗せると「、はい、12ベクレル出ました」、なんて光景を期待されているのでしょうが、無理です。できません。
食品スクリーニングならばスピードが要求されますから、おそらくは20~30ベクレル出すのも難しいのではないでしょうか。そりゃそうでしょう、1検体に1時間かかっていたら間尺に合わない。
300ベクレルなんていう暫定規制値以上か、以下かなんていう大雑把な測定ならバンバンできますが、このような「すべての東日本の農産物にベクレル表示を!」などと叫ぶ人は、20ベクレル以下の表示を求めているのでしょうから、残念ですが技術的に不可能です。
分かりますか。「すべての食品にベクレル表示を」という人たちは矛盾する要求をしているのですよ。
「すべての食品」ならば、現在出荷されている膨大な量の農産物ひとつひとつにベクレル表示義務しろということになり、大雑把なスクリーニングしかできません。暫定規制値に合致しているか、否かです。
しかしそうではなく、この人たちは低線量表示を求めています。つまり20ベクレル以下という「検出限界」を批判して、それ以下の5~10ベクレルという低エネルギーまで表示しろと主張しています。これには一検体で最低で1時間以上かかります。
またコストも通常で1検体3万円かかります。1検体3万円で1時間かけて、膨大な量の食品を表示しろ、と言う要求を平気でしているのです。わかって言っているのかなぁ。
どっちかにしていただきたいものです。暫定規制値に合格か否かということならば多少の現実性はあります。それもサンプリング方式しか不可能です。
同じ田畑の作物をひとつサンプリングして計って測定して表示することならば、コストはベラボーにかかりますが、技術的には可能です。
しかし、このようなゼロリスク派の人たちは、サンプリング方式すら批判するのではないでしょうか。「手抜きするな、農家はまたインチキしているだろう。文字通り全部を測定しろ」、ということのようです。
え、コストは国か東電に請求しろって。汚染した田畑の浄化もしない国や東電には、話の外です。そんな要求をめぐって闘争しているうちに数年たってしまいます。
「おかみに歯向かうのはこぇぇ」ですか。いいなぁ、バカ全開で生きていけて。なんでも鑑定団出品モノの馬鹿だな。
農家なんて、「おらぁこええだぁ。おらの土地はきれいだぁぁぁ」、とブツブツ言いながら地べたを這いずり回る無知な下等人種なんでしょうな。まるで時代劇のように「へへっえ、お代官さま~、ゆるしてくんろ」と土下座する農民像だな。
いやー、ひさしぶりにここまで露骨な農業と地方への蔑視を聞きましたよ。励みになります、村の仲間に教えてやろう。いい酒の肴になります(笑)。
それはさておき、結論として、すべての農産物に要求されるスピードと、低線量計測は同居できません。なぜなら、それが矛盾した要求だからです。
■写真 そろそろ芹の季節が始まります。芹畑にかかしが一本。抜けるような秋の空。空に向かって「バカヤロー」と叫びたい。
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コメント
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私はゼロリスク至上主義の「販売されるすべての食品にベクレル表示せよ」との意見には、とてもついていけません。
もしこれを実現すれば、流通食品はすべてとんでもない高価になり、鮮度の落ちた流動食状態になりますよ。
賞味期限切れで廃棄されるコンビニのコールスローサラダをイメージして下さい。
全く馬鹿馬鹿しいことです。
サンプル検査で信用できないなら、大盛況の「ベクミル」などで自ら食品を全部測ってから食うしかありません。
肉も魚も野菜もミキサーぐちゃぐちゃ状態になりますよ。
牛肉でスクリーニングをすり抜けた事例があったように、外部からのガイガーカウンター測定では適切な測定が出来ないのは既知のことです。
だからこそ農業者には誠意と信念を持ってサンプル測定と除染が求められるのです。消費者との信頼関係の構築と維持のために。
また、東北の農民を舐めすぎなコメントには、断固抗議します。
ふざけた妄想はいい加減にして下さい。
農家は常に不安に駆られ、生活崩壊に怯えながら黙々と仕事をしています。
投稿: 山形 | 2011年10月17日 (月) 08時02分
はっきり調べてないので、記憶で、申し訳ないのですが、たぶん、輸入食品は、370ベクレル/kg以下なら、輸入されてしまっていると思ってます。
現状、3.11以降に、作付けし、収穫した農作物は、たぶん、一部の屋外のきのこ類のようなセシウムを吸着しやすいもの以外は、東北産より輸入食品の方が、汚染されている可能性も多分に、ありますし、輸入食品は、防腐剤など、薬品汚染の問題も多いです。
最近ようやく、第1原発1号機レベルで、数億ベクレル/時レベルに、空間放出放射性物質量が下がったそうですが、爆発時は、推測値レベルで、桁違いな放射性物質が出ていたそうですので、わずかと表現すると怒られそうですが、20ベクレル/kg以下なんて、生易しい値では、なかったのですが、京ベクレルとかテラベクレルとか、言われても、ピンとこない自分でもありますが。。
(たぶん、原発開発者にとって、20ベクレル/kgの物質から出る放射線量など、微少すぎて、議論にならない範囲なんでしょう。そうでなければ、原発の実用プラントは、未だ出来ていないはず。)
都会の人も、マスコミも、時間とともに、汚染レベルや核種が、変化していることや、汚染箇所も移動していることを、認識しなければ、広島には、被曝後100年は、草1本生えないと言われたのと同じレベルの風評被害でしょうね。たしかに、汚染は、ゼロには、ならないでしょう。過去の水爆実験の汚染すら残っているのですから。それでも、人間の人口は、増え続けているのですから。。除染は、大事ですが、あまり、極端な怖がりもどうかとも思います。
投稿: りぼん。 | 2011年10月17日 (月) 09時27分
私も原発事故の直後は、ガイガーカウンターでわかるでしょうなどと、安易に考えていました。でも色々調べていくうちに、馬鹿なこと言っていたと反省しています。
ゲルマニウム検出器については、勝川俊雄氏のサイトで分かりやすく解説されています。ご存知の方も多いと思いますが、見たことのない方は参考になりますよ。
http://katukawa.com/?p=4778
久しぶりに勝川氏の文章を読みなおしたのですが、検出器の問題は今後の暫定基準値の引き下げにも技術的に影響しますね。
世間をアット言わすほどの検出器を、どこかのメーカーが開発しないですかね。
投稿: 南の島 | 2011年10月17日 (月) 10時15分
半減期の短い放射性物質の場合、仮に測定が可能だとしても、時間の経過と共に、線量は減少していきます。
ですから、これも非現実的ですが、食品(包装物も)に含まれる放射性物質を特定し、その組成(比率)も明らかにし、横軸を時間、縦軸を線量としたグラフか、目安になる表でも添えないと、微妙な低線量のベクレル表示など無意味な気がします。
だって、缶詰なんて、消費期限が長いんですから、測定した時より、実際食べるときは、線量、かなり減ってるわけじゃん。
投稿: Cowboy@ebino | 2011年10月17日 (月) 11時32分
今朝のNHKの「あさいち」と言う番組で、面白い実験を行っていました。
北海道、福島、東京、大阪、広島(東京は2世帯)の実際の家庭で食べられている朝、昼、夕食を1週間分細かくミキサーにかけ、一番正確に放射線が測定できる機械で、通常より長い時間をかけて、放射性物質の測定を行っていました。
結果は、北海道と大阪、それと東京の1世帯で、一日だけ、ごく微量(最大で9.0ベクレル/Kgくらいだったと記憶しています)セシウムが検出されました。空間線量が高めの福島では、すべて0でした。
サンプル数としては、あまりに少ないのかもしれませんが、比較的安全ではないか?と思われている北海道や大阪でも、食品に微量であるが、放射性セシウムが存在していたことは、驚きとともに、全ての産品のベクレル表示の無意味さを表すものではないかと考えます。
投稿: 一宮崎人 | 2011年10月17日 (月) 12時31分
番組の詳しい内容はこちらのHPにあります
http://www.nhk.or.jp/asaichi/2011/10/17/01.html
参加世帯数や、検査結果もあります。
最終的には、7世帯(福島2世帯)の参加で、東京は2世帯とも検出されたみたいです。
投稿: 一宮崎人 | 2011年10月17日 (月) 12時53分
南の島様
良いサイトをご紹介いただきありがといございます。
海外の汚染シミュレーションなどは、福島から仙台湾まで真っ赤。遠くはミッドウェイまで。
わたしは構わず食べてますが…。
りぼん。様
まったくその通りでして、輸入食品は370bqなんですよ。
国内産品もせめてそこまでは下げる必要があります。
投稿: 山形 | 2011年10月17日 (月) 13時06分
私も全ての食品のベクレル表示は不可能だと思うしそんなことは求めません。
そのかわり「○○県産」ではなく「○○県○○町産」と書いていただければ文科省航空モニタリング等を参照して自分で判断します。
それも難しいでしょうか?
投稿: otto | 2011年10月20日 (木) 21時34分