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事故から7か月。社会全体の線量を下げる努力をしよう!危機を叫ぶだけでは何も変わらないのだから

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 典型的な質問がありましたので、お答えしておきます。 

質問 
土壌に蓄積された放射性物質が問題なんですよ。空間とは関係ないと思います。
 

私の答え 
野菜の一義的な放射能汚染は外部被曝です。人間と一緒です。外部被曝の主要なものは大気の放射線です。

ベラルーシ・ゴメリ地区スベェティロビィキ住民の被曝原因はこのようなものでした。(IAEAチェルノブイリフォーラム報告書)

・外部被曝(空気・土)・・・・・・50.3%
・食料による内部被曝・・・・・23.9
・魚介類による内部被曝・・・20.6
・水辺での被曝・・・・・・・・・・・・4.0

・飲み水による内部被曝・・・・・1.2

外部被曝と内部被曝は、時期によっても異なりますが、ほぼ半々だとわかります。空間線量が高ければ野外にある農産物は被曝します。ただし、農産物のほうが、土壌移行係数からみて(後に詳述)はるかに内部被曝の割合は少ないでしょう。

3月~4月の被曝直後の高い農産物汚染はそのためです。これはゼロリスク派の主導者である武田邦彦氏も認めているはずです。というか氏は空間線量派とでもいうべきな論者で、空間線量から農産物が被曝して人間の内部被曝に繋がるという論理でした。 

武田氏は土壌測定のように地味で根気がいる測定より、公共団体のHPで簡単に入手できる空間線量ですべてを説明する道を選んでいます。 

氏が農村を歩いて測定したという話はついぞ聞きませんし、今後もないでしょう。講演でお忙しいのでしょうが、あれだけ「東日本のものは食べるな」とおっしゃるのですから、一度東日本の農村に来られたらよろしいのに。歓迎しますよ(笑)。 

脱線しましたが、武田氏が関西のテレビ番組で宮城県一関で空間線量が高いから「東北のものは食べるな」と言った理由でF一関の空間線量が高いからでした。

空間線量は下図の茨城県北部の線量グラフでわかるように急激に下がっていきます。それは放射性ヨウ素が8日間で半減期をむかえるからです。一か月もたてばヨウ素はほぼ検出されなくなります。 

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上図の左端が事故当初です。北茨城市では実に16マイクロシーベルトが観測されています。今の避難区域とほぼ同量です。現在は0.05~0.08マイクロシーベルトにまで落ち着いてきています。 

ではここで、東日本の農産物に対しての忌避感が強い関西と東北・茨城地域の空間線量を比較してみます。 

・大阪府・・・・・・・・・・・・・・・・・0.076マイクロシーベルト /時
・宮城県・・・・・・・・・・・・・・・・・0.061
・岩手県・・・・・・・・・・・・・・・・・0.023
・茨城県・・・・・・・・・・・・・・・・・0.083
 

ほぼ大阪と東北は同程度であり、陸前高田送り火事件があった岩手県など、大阪の3分の1程度の空間線量しかありません。 

これは関西のバックグランドの自然線量が高いからです。下の図は日本の自然線量を表しています。赤色がホットスポットです。 

大阪府は日本有数の自然線量のホットスポットだと分かるでしょう。大阪の宇宙からと地底からの自然放射線量の計はおおよそ0.4マイクロシーベルト/時あるようです。

東日本はおおむね濃い青である0.00561~0.0178マイクロシーベルト/時と世界でも最小の放射線量地域です。

自然放射線量において大阪は、東日本平均のの7.5倍の放射線量が常に存在する地域だといえるわけです。

自然放射線は人口放射線と違って安全だ、などと言う人もいるようですが、ナンセンスです。ウランは自然放射性物質の最たるものですよ。ウランが安全なら、セシウムなんか鼻クソのようなものです。

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武田氏の説によれば、空間線量が農産物に影響を与えるもっとも強い要素ですから、岩手県は大阪府の農産物を忌避せねばならなくなります。

もちろん冗談です。大阪府で放射能汚染の農産物は検出されていません。そう、つまり0.076マイクロシーベルト/時の空間線量があっても農産物は汚染されることはないのです。

このように空間線量は1マイクロシーベルト/時以下ならば農産物を汚染することは考えられないのです。ただし地表面で栽培し、被曝した原木を使った場合のシイタケ類などは別です。(*どこからの閾値で空間線量が農産物に移行するかは今のところわかっていません。)

さて、ご承知のとおり「既に降ってしまった」セシウムなどは土中に残留します。これは土壌線量を測ることでどのていど土中に放射性物質があるのかが判定できます。 

では、この土中の残留放射性物質がどのていど作物に移行するのかは、日本土壌肥学会や農水省の科学的なデータがあります。 

・ほうれんそう・・・0.049
・ジャガイモ・・・・・0.030
・キャベツ・・・・・・0.026
・コメ・・・・・・・・・・0.0016

(*移行率には研究機関により異説が存在します。土質や測定条件によっても異なります。) 

これを見てお分かりのように土壌の放射線量は、100分の数十から千分の十数のオーダーです。

武田氏は、食品の最大限許容量は5~10ベクレル/㎏だと言っていますが、この農産物の規制値を5ベクレルに置くというのはすさまじくタイトな数字で、チェルノブイリの当事国であるベラルーシですらこのような食品規制値です。昨日にアップした野菜で見てみましょう。

・86年(事故の年)・・・3700bq/㎏ (* 日本暫の定規制値500bq/㎏)
・88年・・・・・・・・・・・・・・740
・92年・・・・・・・・・・・・・・185
・96年・・・・・・・・・・・・・・100
・99年・・・・・・・・・・・・・・ 40

初年度の86年は実に3700bqです。わが国の500bq/㎏と比較してください。それを2年後には一気にひとケタ落としで740に、そして6年後には185に、そして13年かけて40までもっていっています。

私は現在の暫定規制値を是としません。高すぎて不要な農産物への拒否感を生んでいる原因にすらなっていると思っています。しかし武田氏のように、初年度の事故直後から5ベクレルを主張する非現実性には到底ついていけません。

よくゼロリスク派の論者は、「福島はチェルノブイリ以上の災厄だ」と言っていますが、このベラルーシの食品規制値が3700bqから始まって13年で40bqにしていることの現実の重さをどのように考えているのでしょうか。

空論ならいくらでも言えます。ゼロリスク派の論者で避難区域で除染活動に協力している人が何人いるでしょうか。多くの論者は被爆地の線量を下げる努力に力を貸さないで危機を言い募るだけです。それが人として正しい態度なのか疑問です。

それはさておき、武田氏は「5bq以下を危険というのは科学的ではない」と言っています。いいことをおっしゃいます。そのとおりです。 

では、5ベクレル野菜が被曝するには、その土壌はその百倍から1千倍の線量がなくてはならないわけですから、その土壌は500bq~5千bq/㎏なくてはならないことになります。 

これは平方メートル単位換算でその20倍ですから、1万~10万bq/㎡となります。チェルノブイリの「汚染区域」指定は3万7千bq/㎡以上ですから、10万bq/㎡は避難区域のホットスポットを狙って作物を作らない限りありえない数値です。

いちばん下の図がセシウムの降下マップです。オレンジ色と赤色が1万bq以上の地点です。極めて限られた地域だとお分かりになるだろうと思います。

これを見て、なおかつ「東日本のものは食べない」と言い続けられるのは理解に苦しみます。

しかしなおかつ信用できないと私たちは言われ続けてきましたので、挙証証明として私は3月以来一貫して土壌放射線量を調べろと主張し、自分でも民間計測をしてきました。 

たとえば一例を上げると、140bqの土地で米を作っても、検出限界以下でした。これは玄米なので、精米するとほぼゼロになりました。

現実は危機を叫ぶだけではなにも変わりません。事故から7か月。どうやったら社会全体の線量を減らしていけるのかもっと真面目に考えませんか。怯えているだけではなにも変わりませんから。

■写真 「わが谷には緑なりき」というジョン・フォードの映画がありましたが、私の住む村もまた緑なりきです。。

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原子力事故」カテゴリの記事

コメント

船橋の公園のように、場所によってはこれからもマイクロホットスポットは見つかることでしょう。
しかし、この例のように雨水が落ちた所に集中するものだろうと。
農地のほうがはるかにマシです。

国の調査があまりにも遅かったりしたのは「ヨウ素下がるまで待っていたのでは?」などと疑問も感じますし、セシウム134にしても。

世田谷のラジウム騒ぎとか分からないこともありますが、あくまで「セシウム137」基準で良いと思います。
ストロンチウムなら計測されてもセシウムの0.3%程度の割合ですから。

農水省がまだ計測していないエリアの新潟(谷川岳越えたら、コシヒカリ最高の南魚沼です)や長野・山梨のマップを雪に覆われる前に早く測定して欲しいです。
後は消費者の判断となりますが、実際に計測されたとしても稲の移行係数から考えて多分NDレベルでしょうが…。

投稿: 山形 | 2011年10月14日 (金) 08時06分

そんな武田邦彦が、今日県南部の川西町に講演にやってきてます。
当然管理区域を通過した列車を止めてスケリーニングやってから、山を越えていらっしゃるのでしょうね。(もちろん嫌み)

で、どうするんだか。
米沢駅で待ち構えて玉子100発ぐらい投げつけてやりたい。
しかし、こんなのに玉子は勿体ない!

石つぶてや投石、藁束燃やしたロールで撃退したい!
パンジャントラムでもいいや。


何を言い出すやら…

投稿: 山形 | 2011年10月14日 (金) 13時58分

連投失礼しますね。

提案します。
意見があって書き込むなら、せめてわかりやすいHNを名乗り、ケータイやネカフェからに分けての投稿は辞めるくらいの分別つけましょう。
匿名でも大体の在住地がわかるていどには。自己紹介しましょうよ。

ここは農業を愛し応援するブログです。

勿論、反対意見や反論があってもよいはずです。
が、匿名・名無し・転載なんてのは、まともに相手にはされません。
2ちゃんなどの掲示板ではなく、ここは農業をしながら戦う農家さんの個人ブログてございます。

転載…出入り禁止食らってまた来たのか。
実生活で転びまくらないようにご注意下さい。

投稿: 山形 | 2011年10月14日 (金) 14時26分

私の住んでるとなりの県、岐阜県では、年間1.19ミリシーベルトが、地面から放出されていますので、国の言う年間1ミリシーベルト未満にすると言う構想は、達成できません。
そのかわり、恵那の錆び石と言って、非常に良い花崗岩が、取れますし、水晶など鉱物資源が、良く取れます。
化石なんかも多いです。

http://todo-ran.com/t/kiji/13644

投稿: りぼん。 | 2011年10月14日 (金) 14時54分

連投すみません。
年間1ミリシーベルト以下の被曝に抑えたいと言う発言は、もちろん、自然被曝量や健康診断とか医療行為被曝を含めず、純粋な原発由来の被曝に限定していると判断しているのが、国の見解のようではありますが、国民は、そのことをどこまで理解しているのかは、わかりませんが。。

投稿: りぼん。 | 2011年10月14日 (金) 15時14分

自然線量と核実験残留線量でバックグランド線量になるのですが、地域によってそれだけでかなりの線量になる地域があります。

政府はこのバックグランド線量を無視して事故由来のみで語っているとしか思えません。

しかし、ここまでナーバスになってしまった世論がここまではバックグラウンド、ここからは原発由来と切り分けて認識してくれるのかどうかはなはだ疑問ですね。

ともかくリスクコミュニケーションがぜんぜんダメなのがわが政府です。


山形さん。あんまり戦闘的にならんで。武田さん批判がこの記事のテーマじゃないんですから。

投稿: 管理人 | 2011年10月14日 (金) 15時56分

>ケータイやネカフェからに分けての投稿は辞めるくらいの分別つけましょう。

山形様、気持ちは分かりますが、携帯URLも紹介されているのですから、そこまでの自主規制は行き過ぎじゃないかな。

実際のところ、農村部の役場から離れている地域等ではADSL回線がなくインターネット接続していない農家さんもまだまだ多いと思います。
それに、携帯入力の方が得意な若者だっていますしね。PC持たずに携帯だけって人、結構いると思います。


コメントの本題が後ろになりましたが、消費者の信頼を取り戻すためにも、農水省は今年の米の結果を受けて、来年以降の玄米の規制値を低くすべきです。主食ということで、米だけでもいち早く変えるべきです。

今年100Bq/kg程度の値が出た地域でも(100以上はかなり少なかったですが)、今年の米作で耕してしまった15cmを30cmのプラウ耕でひっくり返すだけでも、米が吸収するCs1は半分以下になるでしょう。ゼオライト投入も同時に行えば、40Bq/kg以下に規制できると思います。40をクリアーできない圃場は、今の時点では食用米を作るべきではないと思います。除染作物を植えるか、Cs移行の少ない作物を植えるべきです。

この程度の目標を最低でも農水省は掲げるべきです。もしも、今年は100以上がほとんどなかったので来年は100などという目標を立てたら、農水省は農作物のセシウムを低減しようという意欲がないことを、世間に示すようなものだと思います。

投稿: 南の島 | 2011年10月14日 (金) 16時34分

投稿についてですが、まぁ要するに常識でやって下さい、というこです。
私としては何からアクセスしてもかまいません。ただ、管理者として、私がいいかげんにしなさい、と言うのも聞かずにしつこく同内容のコメントを入れ続けると、私のほうもいいかげんにしろ、となります。

私はアク禁はしたくありません。いまでも一種の農業討論サロンだと思っているですが、正直に申し上げて、放射能問題で雰囲気がガラリと変わりました。

今までなかった攻撃的な書き込みや、ルールをわきまえないコメントが目立つようになってしまいました。
放射能問題は誤解に基づく立場による利害対立があるようなのです。
しかたがないことと当初はあきらめていたのですが、あまり続くと疲れます。

まぁフレンドリーにやって下さい。お願いします。

さて南の島さん。40bqは無理ですよ(笑)。ベラルーシだって穀類(パン)は370bqから始まって10年かけて100、13年で60ですよ。

いきなり40は過激。地域によって不可能になってしまって離農者を増やしてしまいます。やはり来年は100~250くらいからじゃないかな。5年間で80~100以下まで下げる。
私たちの地域は40でも可能だが、地域によってバラつきがひどいんですよ。

と言って、農家の言うことだけ聞いていたらいつまでもさがらないのも現実ですが。

投稿: 管理人 | 2011年10月14日 (金) 17時51分

濱田様、私は玄米40Bq/kgは実現不可能な数字ではないと思います。今年作付け出来なかった飯舘村などでは本格的に除染しないと難しいと思いますが、今年米作した所は出来ると思います。今日の記事の資料の赤と橙以外の水田です。ちなみに私が40にしようというのは主食の米だけです。その他の作物は十分なデータがありません。

私が可能とする根拠は米の放射性セシウム濃度の検査結果を踏まえてです。
http://www.maff.go.jp/j/kanbo/joho/saigai/s_chosa/index.html
本調査でも100を超えたのは7箇所だけです。検査数に問題がありますが、何ら対策もせずに米作してこの結果ですから、来年度はプラウ耕とゼオライト投入し、谷津田を注意したら不可能ではないと思います。もちろん、原発の状況が悪化しないのが前提です。
今年並みに収穫米検査をし、40以上が出た場合流通させずに買い上げを約束したら実現できると思います。

福島県の玄米の検査のまとめもご覧下さい。
http://wwwcms.pref.fukushima.jp/pcp_portal/PortalServlet?DISPLAY_ID=DIRECT&NEXT_DISPLAY_ID=U000004&CONTENTS_ID=25325

来年度はND(<40)を目指し、出来る限りの対策を農家に伝えたら、きっと出来ます。
冒険的な目標は農水省のお役人は立てられないでしょうが、密かな目標にはしてもらいたいです。

投稿: 南の島 | 2011年10月14日 (金) 20時29分

管理人さん、みなさま、ご迷惑をおかけしてすみません。
PCがないので、迷惑をかけたくなくて携帯のURLを貼りましたが、みなさんにご迷惑をかけたようで本当にすみませんでした。

応援しています。

投稿: なづな | 2011年10月15日 (土) 07時44分

なんなバタバタとコメントを入れてしまい、管理人様・南の島様・なづな様・そして皆様に不快な思いをさせてしまい申し訳ありません。
我ながら暴走しがちなことがありまして、反省しております。

ちなみに私はこちらにお邪魔する時は3年落ちのケータイ1本です。
打ち込むのもパソコンよりはるかに左手だけのケータイのほうが遥かに早い者です。

投稿: 山形 | 2011年10月15日 (土) 08時25分

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