• 20250113-133232
  • 20250113-134354
  • 20250113-134844
  • 20250113-135719
  • 20250112-044948
  • 20250112-050804
  • Dsc_1204
  • Dsc_1204_2
  • Dsc_1206_2
  • Dsc_1210

« 日本は食料輸入大国ではない。まともな農業認識を踏まえてTPPを議論してほしい | トップページ | NAFTAに見る日本の近未来 »

2011年10月22日 (土)

米国による種子の世界支配とTPP

018

ご承知のように、TPP推進派と日本農業解体派はほぼイコールな存在です。彼らは日本農業こそが前近代的な既得権益の巣であると思っています。それは一面当たっている部分があります。 

今日はそれを論じる所ではないのでふれませんが、TPP推進派の人たちは農業の内側からの変革は無理で、外圧のTPPで一回日本農業をぶち壊さないとダメだと主張します。この論調は小泉改革の時の新自由主義路線から現れてきて、DNAのように民主党に遺伝しています。 

しかし、その人たちが言うようにTPPによって日本の「前近代的既得権益」が破壊された後に何がやってくるのでしょうか?簡単なことです。米国による国内農業の支配です。

日本農業は諸外国と比べて変わった形をしています。それは徹底した内需主導型なのです。昨日、日本は輸入食料依存ではないと書きました。そうなのです。むしろ、食料自国調達型の一方の極でしょう。

日本農民は最近になるまで、果樹や米を外国に売ることなど頭の片隅にもありませんでした。よもや自分のりんごが世界一おいしいと思ってこなかったのです。

だから常に国内市場の枠内で他県の産地と激烈な競争を演じても、外国農産物との本格的な闘いを経験したことはまれでした。(*例外として中国輸入野菜やみかん、牛肉などがあります。)

一方、農業大国はおしなべて輸出農産物大国です。米国、フランス、ベルギーなどの畜産物はそもそも外国で消費されることを前提にして生産されています。ヨーロッパなどでは隣国に強力な同業があると、初めから生産を止めてしまうほどです。

だから、国内自給分以上を常に作り続ける分野があるために、自給率は高くなります。しかし、日本は国内自給を上回る農産物は、輸出に回さずに産地間の生産調整で解消されてしまいます。

言ってみれば、わが国は国内需給均衡型であったために、食味や品質管理は磨き抜かれましたが、国際市場のパワーは皆無に等しかったと言っていいでしょう。

これが日本の食料自給率が高くならない最大の原因であり、かつ、欧米農業の体質との最大の差です。わが国の外交が世界3位のGDPに匹敵する政治力がないように、日本農業は確かに欧州各国に匹敵する力を持ちながらも、国際市場力は皆無だったのです。

とりわけ農業分野の世界政治とでもいうべき「種子」と「穀物」の分野において、わが国は非常に危険な位置にいます。有体に言えば、価値判断をぬきにして、外国に全面的に依存しています。

種子は現在、急速な勢いでGM(遺伝子組み換え技術)化が進んでいます。米国の穀物はほぼ完全にGM化を完成させつつあります。このGM技術は、害虫耐性をもったり、あるいは農薬耐性を持たされて設計されています。

つまり、単なるタネではなく、使われる農薬とワッセットでそもそも商品化されているわけです。この技術は米国巨大農薬企業にして種子会社のモンサントが主力です。

そうです、農薬企業が種子までをも支配しているのです。これが21世紀の新しいスタンダードになりつつあります。しかし、世界支配には至っていません。なぜでしょうか。それはEUと日本が強力に反対しているからです。

反対している理由は、ひとつにはGMの安全性が確立していない技術であること、生態系の攪乱があること、そしてなにより、米国による種子の一元支配に対する警戒感です。

モンサントは、既にイモチ病耐性のGM水稲の種子技術を保有しており、TPP解禁と同時にこのGM種子の水稲と農薬をワンセットで販売攻勢をかけるでしょう。既に住友化成とは契約が結ばれています。

「農作物保護(雑草防除)分野におけるモンサント社との長期的協力関係について 」
http://www.sumitomo-chem.co.jp/newsreleases/docs/20101020_3.pdf 

ちなみに住友化成社長は、経団連の米倉会長その人です。

穀物のみならず野菜においても、現在ほぼすべての種子はF1ハイブリッド種子です。掛け合わされた品種が、生殖能力を持たず、持ったとしても劣化するために一代で消滅します。これが世界標準となっており、わが国もまたその渦に飲み込まれつつあります。

そして、野菜のFI種子の大本もまた、米国モンサントが握っています。彼らはありとあらゆる種を世界各国からジーン・ハントし、大規模にして長期の改良を加えた原種を握っています。

米国が世界農業の覇王であるのは、トウモロコシの輸出生産量にだけあるのではなく、その大本の原種を支配しているからです。

日本においては、穀物類はいうまでもなく、野菜類においてすら相当な品種の原種が米国に支配されており、原種の輸入を余儀なくされています。

TPPにおいて米国は確実にGM種子の解禁を要求してくるでしょう。そしてそれに対してわが国は抵抗するすべはありません。「内国待遇」なのですから、抵抗できる根拠はないわけです。

かくして、米国の種子の支配に対して、かろうじてEUと日本はGM拒否で足並みを揃えていますが、TPPはその抵抗を簡単に押し流してしまうことになります。

そしてわが国は、米国のおける種子支配のくびきに永遠につながれることになります。

TPPは単純に関税だけの問題にとどまらず、米国の農業戦略との関係で読み解かないと見えなくなります。

■写真 すすきが草原で首を降っています。秋真っ盛り。お天気はさえませんが。

 

 

 

« 日本は食料輸入大国ではない。まともな農業認識を踏まえてTPPを議論してほしい | トップページ | NAFTAに見る日本の近未来 »

TPP」カテゴリの記事

コメント

はじめてコメントさせていただきます。
昨日今日と自給率についてわかりやすくありがとうございました。
国内向けでしか作ってないから自給率が上がらないと聞いて納得しました。

こちらのブログを読ませていただくきっかけは放射能関係で、
同意したりそうかな?と思ったり色々ですが、
過去の記事も少し遡らせていただいてどれだけ真剣に農業をやっておられるかを知り、震災後の記事も現実を直視して対策を考えておられ、勉強になることばかりです。
感謝を一言伝えたくて。ありがとうございます。

TPPにASEANプラス3の日本をめぐる綱引きになってますなぁ。

野田政権の外交力と内政告知の真価が問われる、国家の重大事なのですが、なんだか緊張感が無いというが、田舎の農家までは現状が周知されておらず、対話や議論も低調です。
これでTPP進める?
理解に苦しみます。

近年FTAを急速に進めてきた対象国にしても、残念ながら成果は小さいものです。


F1種子。
飼料や穀物メジャー同様にアメリカがガッチリ握ってます。
学生時代に散々苦労して課題レポート纏めました。

それが今や「遺伝子組み換え」が当たり前ですからねえ。不信感は溜まります。

それこそ新自由主義的グローバル化の歪みですよ。

長年かけて地域統合を果たしたはずのEUですら、キュウリ問題やら金融メタメタなのが現実です。


日本は日本で美味しい米作って国内消費優先でよかろう。
贅沢品にはちょっと高い課税で。


不自然な円高は政治の無策と欧州危機・アメリカ経済低迷が原因。
そんな中で、一方的にウォンを助けるだけのスワップ協定とか、なんでマスコミは大きく報じないんですかね。

コシヒカリBL、IL。ササニシキ、BL。IL。と、GM種子とは、どう違うのでしょうか?

遺伝子組み換え種子は、運送中、道路わきに種がこぼれるので、気をつけて、散歩すれば、すでに、国内に、持ち込まれている状況は、わかりますし、オス、メス不要で、1世代種子を、米国が、製造するのは、毎年、種子を、購入してもらいたいためなので、よく解るし、経済戦略上は、あたり前のことでしょうね。

すでに、アフリカなど、遺伝子組み換えとうもろこしなど、かなり流通しているようだし。

米国の種子支配世界戦略は、遺伝子組み換え作物を推進している米国では、あたり前だと、思います。

品種改良の一部に、遺伝子操作が、存在するのだと思いますが、鳥インフルエンザとか、O157とか、論ずるときは、個人的には、遺伝子操作種子などは、どんな生態系になるのか、全く予期できないので、反対ではありますが、基本、病気に強い、生産性が高い、農薬が減らせるなど、農業経営的には、プラスの部分もあるようにも思えます。

国内の研究所は、遺伝子操作種子の研究は、あまり実用化していないようですが、本来、日本発祥の、生産性能力の高い種子開発は、あっても、良いように、思えますが。

気候変動によって、昔は、北海道産のお米は、不評だったのが、今や、北海道産のお米は、安くて、おいしい米になってしまいましたけど。

牛舎で、毒性の低いO26など、常時存在しているのに、ベロ毒素産生型のO157などに、変異するバクテリアファージ攻撃など、農畜産物については、もっと国内で研究してもらえば、人間にとっては、短期的には、良いと思えます。ただ、長期的に、環境破壊が起きるので、どこまで、OKにできるのかは、私には、解りません。
ただ、完全有機栽培より、減農薬栽培とか、温室栽培でのみつばち受粉とか、そういうものは、生産性向上のためには、良いと思えますが。。

日本が、世界特許を取れれば、良いようにも、思えますけど。。

私達が毎日たべている卵は、その卵の祖父母の世代の雛を輸入して、F1の親を国内で生産、、そして、卵の生産。黄身の色、白身の盛り上がりまでも、品種改良されている、、というのは、NHKBSの番組で見たのですが、農作物の種子も同様だとは、、。さすが、専門分野のお話は、聞いていて、わかりやすく、興味深く読ませて頂きました。
お米をおいしく作るには、その気候風土にあった品種を生産する必要があり、もし、日本の気温上昇などが起こっても、それに適する品種を特許で押さえられていたら、、と思うとぞっとします。
数十年前、日本のTORNが、非関税障壁として、教育分野でアメリカにつぶされ、パソコンのOSがすべてアメリカ製になって、日本のハードウエアメーカーが利益を吸い上げられたシステムを連想しました。

りぼん。様。
食管法時代以来か…ですが、残念ながらコメにかんしては、未だに不透明な流通が横行してます。

だからこそ、正確なトレーサビリティシステムの早急な構築が大切かとおもいますが。

BL米種子は、ほとんどの国内で、各県の農業試験場が、公開して、その地域に適合したBL米種子を、種もみで、使うのは、あたり前な状態と思いますよ。単純に、魚沼産こしひかりのもみを、それぞれの県が、持ち込んで使うことはなく、主系統が、ササニシキやコシヒカリであっても、それぞれの県で、BLササニシキやBLこしひかりの種もみを使うのは、あたり前だと思ってますけどね。

杏ママ様。
心配であることは、よーく解ります。


でも、東北のほとんどの米は安全だと確信しております。
野菜や果樹も含めて、無理にはすすめませんが、ずっと山形に住みつつ、福島からの移民を半年以上身近に受け入れてきたなか… まったく放射線障害は感じられません。

子供がいたら心配になるのは分かりますし親とて当然でしょう。

それでも、現実と生活を考えて、判断されることを望みます。


3月までは典型的な御用学者だった、武田ゼロリスク論者は、ただの馬鹿以上に便乗乗り換えでボロ儲けした『御用学者』です。

そんなことも知らないバカには
、先日一方的な攻撃を受けましたが…。


一国の主食であろう穀物の種子を、別の一国の一企業が独占する状態になったら、非常に危険ではないでしょうか?種子を握られた国は、種子を握った国に、殺生与奪の権利を与えたものになってしまうのではないでしょうか?
昨今の、種子のハイブリっト化には、非常に怖いモノを感じます。
世代を引き継げない、一代限りの種子だけになってしまったら、もしも(ありえない事かもしれませんが)戦争や自然災害、その他で、種子が入手困難になれば、速攻、食糧不足となり、飢えるのではないかと・・・
あるいは、これはおまりにもオカルテック、SFチックかもしれませんが、遺伝子操作で、人のエイズウイルスみたいなレトロウイルスを植物の遺伝子に組み込んで、収穫直前に枯らしてしまうとか?少し妄想モードが強いですね。
いずれにしても、種子を握るものが、今後の世界の食糧を握るのは間違いないことだと思います。

余談ですが、良くハイブリッドで抗病性や収穫量の増加など、素晴らしいことばかりでてきますが、本当にそれだけでしょうか?
抗病性で、使用される農薬の量が減るから良いと言う理論には、いささか疑問を感じます。病原体や害虫に強いと言うことは、それらに対して何らかのダメージを与える訳で、そのようなモノが、果たして人に対しては何の影響もないものなのでしょうか?
極論ですが、農作物に対する農薬の使用量を減らしたいのなら、要らぬ規格をなくしてしまえば、かなりの量の農薬が減る気がしますが?
どんな野菜でも果物でも、出来たモノは全て流通にのせて売る。そうすれば、農家は気兼ねなく減農薬にいそしめるはずだと思います。

どんな野菜でも果物でも、出来たモノは全て流通にのせて売る。そうすれば、農家は気兼ねなく減農薬にいそしめるはずだと>>>>>

これは、実際、やる気になれば、今でもできる話で、特に、野菜の規格などは、単純に、流通業者(農協も含む)で、決めてるにすぎませんから。。

今回だって、レタス。白菜、キャベツについては、流通量が、減った途端、いままで、規格外として、流通に乗らなかった農作物が、出周りました。ご都合主義ですよね。
まるで、コンビニに、賞味期限が、1日前でも、ダンピングせず、タイムサービスもせず、廃棄処理せよ。と言う事態と似てますね。

大体、年中出荷できる体制を持ちながら、一律の規格で、規制している日本って、どうなの?安全性より見た目重視しか、流通業は、考えていないですよね。

出荷タイミングも、流通上の理由から決めてますから、完熟トマトなんて、流通には、載りません。また、擦れたなすも、流通には、載りませんね。

本来、旬の時期以外は、温室暖房なので、燃料分、高くなるべきが、単価は、なぜか、自然災害時以外は、思ったより、安定してますよね。本来、農家さん自身が、小売値が決められる状況が、普及すべきと思いますが。

今回の記事は妄想などではなく、目の前に迫っている危機です。

メキシコでは主食であるトウモロコシで現実に起きている問題です。
北米自由貿易協定がもたらした現実です。
下のリンク先を濱田様も読んでいて、今日の記事を書いているのではないのでしょうか。
http://togetter.com/li/108382

皆様、一度、「メキシコ モンサント社」でググッてみてください。

連投すみません。

野田総理はおそらく、いや絶対に、こういう事実を認識しているはずです。知らないからTPPを推進しているのではなく、知っていて推進しているのです。松下政経塾で長年お勉強していたのですから、TPPを考える上で北米自由貿易協定を細かく分析することに脳みそを使ってないわけありません。前原、枝野、谷垣氏らも同様でしょう。

よくマスコミがTPPの実情や問題点がわからない。国民的な議論になっていないと述べていますが、明らかになっていないのではなく、政府や経済界はわざと明らかにしていないのです。

厄介な情報を自ら明らかにはしません。モンサント社のことなど、日本国民は知らなくていいと彼らは思っています。

原発や放射能汚染と全く同じ対応を、市民に対してとっています。
国からの情報を待っていてもろくな情報は出てきません。市民が自ら事実を見つけ出す努力をしなければ、とんでもないことになってしまいます。


りぼん。様。

3日も遅れてすいませんが、
新潟が全面導入しようとしたコシヒカリBL
遺伝子追跡で産地証明するのは良いのですが、残念ながら大騒ぎになりました。
特に旧山古志や南魚沼が反対でした。
何故か?
明らかに味覚が落ちるからです。

ヤミ米対策には有効ですが、地元の最高の自信の米だからこそです。

また、これはもちろん福島原発事故より遥か以前の出来事です。

新潟コシヒカリBLは大きな話題で全国ニュースになりましたが、
ササニシキBL?
聞いたことないです。
ひとめぼれやあきたこまちも。

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 米国による種子の世界支配とTPP:

« 日本は食料輸入大国ではない。まともな農業認識を踏まえてTPPを議論してほしい | トップページ | NAFTAに見る日本の近未来 »