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2011年10月23日 (日)

NAFTAに見る日本の近未来

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放射能のことを中断して、TPPについて考えています。実は放射能の研究会は昨日もやりまして、報告したいことは溜まっているのですが、なにせTPPまであと一か月ですんで、織りまぜながらやっていきます。

さて、私たちはTPPを考える時、米国が結んだ最大のFTAであるNAFTA(北米貿易協定)を参考にすることができます。

NAFTAはメキシコに巨大な影響を与えました。当初、このFTAにおいてメキシコが得るものが大きいと思われてきました。米国市場への労働力移動、トマトなどの安価な農産物輸出などは、疲弊していたメキシコ経済の救いの手とすら思われていたのです。

現実に、NAFTAはメキシコになにをもたらしたのでしょうか。それにはメキシコ人の食の中心であるトウモロコシを見ればわかってきます。

NAFTA以降のメキシコのトウモロコシを語る上で、問題点はふたつあります。

ひとつは、NAFTAによりメキシコのいわば命の食とでもいうべきトウモロコシの輸入量がどのように変化したのか、です。

メキシコ人にとってトウモロコシはありとあらぬる食に登場するソールフードです。粉にしてのトルテーア、スープに゛そして菓子にと、ありとあらぬるものに変化してメキシコ人の食を支えています。

それはマヤ文明から続く連綿とした食の歴史であり、伝統でした。それがどのように変化したのかを見ます。

そしてもう一点は、質の問題として、遺伝子組み替え・GMトウモロコシの侵入がどのていどなされてたのかです。このGM種に注目するのは、GM種が他の通常の品種と異なり、種子と農薬があらかじめワンセットになっているからです。

トウモロコシにたかるシンクイムシを殺すために、あらかじめ植物細胞内に殺虫成分を遺伝子組み替えで組み込んでしまいます。

これが害虫耐性ですが、これに耐性ができた害虫が生まれ、そうして更に強力な害虫耐性をもつ品種を作り・・・というお定まりの悪循環の中で、強力な農薬耐性をもった害虫が野に放たれました。これが予想もしなかった恐るべき生態系攪乱を引き起こします。

また、作物はなんともないのに雑草だけを枯らす、というのが謳い文句の除草剤耐性を持つGM種も作られました。これは、なんとこのGM種には同じモンサント社の除草剤にしか効かないというスグレモノでした。

農家はいったんGM種を導入すれば、ほぼ永遠にモンサントからGM種の種と除草剤を使い続けねばならなくなります。まるで麻薬中毒のようですが、これがモンサント社の目的だったのです。

元来農薬会社だったモンサント社が、いくつかの米国の種子会社を吸収していったのは、将来においてGM種子と農薬をセットで販売することによって、世界市場を種と農薬で一元支配することにありました。

やや誇大妄想が入っているように聞こえるかもしれませんが、事実、そのように進行しています。

モンサント社が米国市場を席巻しながら、次の標的と決めたのが隣国のメキシコでした。そして今、モンサント社の大きな障害は、頑固なブロック経済を築いて守りをかためるEUとわが日本だけとなったのでした。

ちなみに、米国の「TPP推進のための米国企業連合」の農業部門のメンツは次の通りです。顔ぶれだけで、米国の戦略がスケスケですね。

・カーギルモンサント、アメリカ大豆協会、トウモロコシ精製協会、全米豚肉生産者協議会

このような連中は、わが国内部の「思惑がある連中」と結びついてTPPで大儲けをしたいと考えています。それが先に明らかになったモンサント社と住友化成との「長期的協力関係」です。これが明らかに近い将来のTPPを見据えていることは言うまでもありません。

この「わが国内部の思惑がある連中」の筆頭が、住友化成の社長にしてTPP推進総司令部の経団連会長・米倉弘昌氏です。あまりの分かりやすさに失笑してしまうほどです。

さて、メキシカンのソールフードはどのような運命を辿ったでしょうか?

では、まずNAFTAによる米国産トウモロコシの輸入量をみてみましょう。アメリカからの輸入トウモロコシは、1991年締結時が131万トンであったものが、2005年には580万トンと4..4倍に膨れ上がりました。

なんだそんなていどかと、ふっと読み過ごしてしまうかも知れませんが、トウモロコシは実はメキシコ政府が国民の食の基本だとして重要品目(「センシティブ農産物」と呼びます)に特別に指定して保護してあるものなのです。

ですからNAFTAにおいても、1991年から2008年1月1日まで最長スパンで保護関税が認められていました。

本来、FTAにあっては「例外なしの関税撤廃」が原則です。ですから、当該政府がこれだけは待ってくれ、という品目(センシティブ農産物)を巡っては熾烈な交渉となります。日本ではさしずめコメを中心にして、牛肉、豚肉、乳製品あたりとなるでしょう。

メキシコ政府はとうぜん国民の主食の地位にあるトウモロコシに対して、高関税をかけてブロックしようとしました。ただし、先ほども言いましたが、条約で認められた最長幅である15年間に限ってですが。

ちなみに私は日米FTAが締結されてしまった場合、15年間ていどしか国産のコメを防衛できないと考えています。それはNAFTAの前例が有効だからです。

それはさておき、メキシコの現実はどうであったでしょうか。欄外図にその内実が無残に現れています。表の中心を斜め右上に伸びているのが、輸入制限枠です。毎年少しずつ輸入枠が増加する取り決めでしたが、現実には、斜め斜線で塗られた部分が輸入超過分です。

ところが、米国はまったく輸入枠制限を遵守しませんでした。平然と輸入制限枠を超えて輸出を増加し続けたのです。そのために本来はこれに賭けられるはずのメキシコの関税損失分は、12年間で実に33.6億ドルに達すると試算されています。

このようにしてメキシコは、本来の移行期間においてすら主食のトウモロコシを防衛できませんでした。そのために、マヤにオリジンがあるトウモロコシは、今や米国のトウモロコシ輸出第2位の輸入国に転落してしまったのです。

そして、1991年のNAFTA締結前には100%の自給率を誇っていたメキシコ国産トウモロコシは、2005年には既に67%にまで落ち込んでしまっていたのです。

自分の国の主食も守れんし、米国から関税も取れないなんて、メキシコ政府、なんたることだ、と思うのは私だけでしょうか。

このようにTPPは、いったん締結に持ち込まれてしまい、巨大な既得権益を与えてしまえば、煮て食おうと焼いて食おうとその国の首根っこを握った国の言うがままになるのです。それがメキシコとNAFTAの教訓でした。

私はNAFTAに日本の近未来を見ます。

■ 本稿は2009年9月3日の記事に加筆しました。

■ボリビアのラパスの風景。 撮ったのはカミさんです。

       ゜。°。°。°。°。°。°。°。゜。°。°。°。

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* 農民連「メキシコ農業の実情」より参考のため引用させていただきました。ありがとうございます。

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コメント

まるで耐性病原菌と抗生物質のいたちごっこ。
しかも大企業に誘導されて強要される悪どさ。

ちなみに私、以前よく行ってたココスのトルティーヤ大好きでした。

NAFTA,TPP、EPA、FTA、ウルグアイラウンド、ドーハラウンド、など、あらゆる面で、農業に限らず、どこの国も、外貨を稼ぐ、貿易には、当然、興味があり、積極的に、自国の国益を優先できる協定を、結びたいと思っています。今回の韓国の米国とのFTAも、韓国産の米について、関税ゼロとは、ならなかったように、思います。
日本としては、移民の急激な自由化は、反対なのでしょうが、すでに、研修生ビザでの、労働力が無ければ、農林水産業は、成り立たないような事態も起きてます。

シンガポールと同じ時期に、FTA交渉も、どの国もはじめたのに、交渉が成功した2国間契約は、他国に比べ、非常に、低調と言わざるを得ません。

また、大量に輸入しないと成り立たない、小麦、大豆など、穀物類は、やはり、どこかの国から、安定輸入が出来ないと、日本の穀物文化は、多分、停滞してしまうでしょう。

官僚も政府も、当面、米国のご機嫌をそこねては、中国、ロシアとの安定交流は、難しいのでしょうが、米国は、各業界団体と、ここまでは、自由化して、これ以上は、自由化しないなど、個別に、契約締結の条件について、協議が出来ているのに、日本は、もし、契約する場合でも、きちんとした条件が、全く、話合われていないことに、疑問を感じます。少なくとも、マスコミは、そういう報道をしていませんし、高度成長時代の大手商社のような、将来計画と言うか、日本の未来像が、見えてこないし、提示されてません。

鎖国をする訳には、行きませんから、相手の要望は、ともかく、日本としての、要望が、まとまっていないと言う点では、農業界、産業界も、自分の態度表明だけで、海外に向けた国家としての交渉カードを持つ努力をしていないのは、なぜ、なんでしょうか?

小麦や家畜飼料など、穀物の種の世界戦略は、随分前から、進んでいて、もう、止められない状況に。来ているのに、一向に、具体的条件のシュミレーションが、農業団体自身が、持ちえていないのが、気になります。

農家・農業団体よりも、国会がハッキリした未来構想を提示できない(やるとは言ってるが)周知しない現状こそが問題でしょう。

りぼんさま。外国人研修生、つまり外国人労働者問題はTPPによって完全に締結域内では自由化されるはずです。おそらく日本の場合ベトナムから低賃金労働者が大量に入ってきます。既に、農業労働者は中国からベトナムにシフトして久しい状況ですが、それが加速されます。
現在は研修生枠内ですが、今後は就労ビザがついて入ってきます。労働条件、各種保証など雇用側はかなりの負担増になるはずです。

米韓FTAはわが国にとってまったく参考になりません。あれは二国間FTAです。日本が選んだのは日米FTA以上に縛りがきつい別名「過激なFTA」であるTPPです。コメをネガティブリストに入れるのは至難でしょう。

全農系列は、アルゼンチンやオーストラリアなどに多国化しようとしているようですが、安定供給となるとやはり米国中心とならざるをえないようです。
これもTPPでどうなるのか、わたしにも見えません。

米韓FTAに刺激されつつ、EUとのFTAをにらんでTPPへ向かっているのがわが国です。EUは経済危機を受けていっそうブロック化を進めると思われます。

世界はブロックかに進んでおり、TPPによって日本は米国のブロックに入るという選択をしたことになります。
これは種子と穀物などを米国に一元的に委ねることと同義語です。

それに対して、わが国はおっしゃるような「交渉カード」は見当たりません。
既にTPPはかなり前から始まっており、その交渉ルール作りに参加していないわが国は一方的に不利な交渉をせざるをえなくなるでしょう。

これならかつて民主党がマニュフェストで出した日米FTAのほうが例外規定が多いだけましと思えるほどです。

農業サイドができるのはあれこれという交渉ではなく、TPPに参加させない、という態度しかないと思われます。

国会や政府が、国会議員としての能力を発揮して、将来の中長期ビジョンを提案したことが、かつて、あったでしょうか?
ほとんどが、官僚が提示した試案を、後追いで、決議するか、産業、政治圧力団体が、持ち込んだ試案を修正可決してきたのでは、ないでしょうか?

議員立法でさえ、請願、委員会可決、本会議提案など、すべての段階で、産業圧力政治団体が、絡んでいました。

つまり、中央の農業団体が、昔のように、提案したり、誘導したりすることが、少なくなったと言うことではないでしょうか?
食菅制度廃止論時代は、かなり、生産者団体、消費者団体も、自分たちの主張を、国会議員に、文書で、ぶつけていたようにおもいます。

大体、国会議員が、農家の実情など、把握している訳がないのです。影になって、内閣法制局に通って、ほとんどの原案を、作り、委員会可決時点では、何もしらない、国会議員や大臣を、先生のお陰ですと、おべんちゃらを言って。気分よく、本会議提案してもらい可決するしか、ないのです。いつまでも、無知な国会議員の提案する法案を待っていても、実現は出来ません。
シンクタンクは、農業関係者が、設立して、とにかく、国際法の批准、国内法の整備に、リーダーシップを発揮しない限り、政府の言うことを待っていても、絶対、解決しないと思いますよ。

自分が、かつて、超党派議員立法を、成立可決させた経験で言うと、こちらが、国会での質問書と答弁書を作って、担当官僚に、FAXしていたのですから。

まあ、国会議員は、厚手のザブトンに座っていただいて、賛成票を投じていただく以外の仕事は、無理なんですよね。

私には、消費者団体が、大きなしゃもじを持って、国会や農水省の周りをデモ行進した絵が、今でも、よぎります。

また、農水省前で、生きた牛など、トラックで連れてきて、ビラ配りするなど、それぞれの立場で、積極的に活動され、決して、国会や政府が、試案を提案したことは、ほとんどないと思います。表面上、あっても、ブラックライターが、ちゃんと存在していましたから。。

りぼんさま。おっしゃりたいことはわかります。農業サイドは政策構築能力を失っています。それは、かなり前からで、仰せのような農業シンクタンクでもあればと常々思っています。

しかしこれだけ巨大な分野でありながら、それは存在しません。個人の研究所はあっても、国家と拮抗できるシンクタンクはありません。

それはわが農民が牙を抜かれたからです。残念ながら、今回、原発の事故でそう思いました。

なぜ、農民は怒らないのか。南相馬ですら、作付けをした農家はひとりでした。だが、これほどまでストレートな抗議があるでしょうか?これほどまでに農民魂のこもった闘いはあるでしょうか?

私は失礼ですが、貴兄のようになくなったわれらが「牙」を懐かしむ立場にいません。懐かしむにはあまりに重圧が私たちの背骨をたわめるからです。

農業サイドから書かれた発信は極めて微小で弱々しいのです。こんな小さなブログですが、ここで信号を止めたらだめだと思って毎朝やっています。

りぼんさま。お互いに農業ブロッガー同士、頑張りましょう。先は長いです(笑)。

メキシコがNAFTAに入ってからGDPと失業率がよくなったけど効果はあるんじゃないの?

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