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2011年11月

2011年11月30日 (水)

ショック・ドクトリンと「改革」 大災害は米国と新自由主義者にとって福音なのか?!

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大震災と放射能禍の後に、出番を待っていたかのようにTPP参加が「決まって」しまいました。

TPPにとどまらず増税まで出して来るに及んで、政府は日本を大きく変えようとしていることは間違いのないことのようです。

その背景には、「こんな大震災だから増税もしかたがない。TPPも企業が活路を見いだすためにはしかたがない」、という漠然とした「空気」が存在します。

この空気が怖いのは、あくまでも実態が不明のアドバルーンのようなものなので、ほとんど判断停止状態で国の行く末を決めてしまうことです。

熱狂的に戦争に突入されるのも困りますが、逆にぼーっとしたままでTPPのような国を壊す国際条約を受け入れてしまうことも同じように怖いですね。

さて、今の日本国民のような状態に置かれた国民は世界に多くありました。

たとえば、それは2004年12月のスマトラ沖大地震におけるスリランカがそうでした。

大津波はこの小さな島国に計り知れない傷跡を残しました。津波のために亡くなったスリランカ人は実に約3万5000人以上に登り、100万人以上と言われる人々が自らの村を捨てて避難せざるを得ませんでした。

この犠牲者の80%は、沿岸部に住む漁師たちでした。私も見たことがあります。数人しか乗れない刳り舟で、波止場もない海に駆け上るように立ち向かって行くのです。

何度も波に押し返されても果敢に海に立ち向かっていました。このような彼らが大津波の最大の犠牲者でした。

実はこの時にスリランカ沿岸部には海外大手観光資本によるリゾート開発が持ち上がっていたのです。この開発に対して、漁師たちは生活の基盤が失われる、村がメチャクチャにされると反対の姿勢を頑として崩そうとはしなかったのです。

そしてこの大津波が来ました。漁師たちは村を捨てて内陸部に逃げざるを得なくなりました。ここに海外大手資本の待ちに待っていた「空き地」が生まれました。観光資本と一体となった政府が、警察力を使うことなく沿岸部は空白の土地になったのです。

時のスリランカ首相はこう言い放ちました。
「この天災はスリランカにまたとないチャンスをプレゼントしてくれた。」

そしてスリランカ政府は、この「またとないチャンス」を最大限に活かして大規模リゾートの建設を着工したのでした。同時に多くの公営事業も、解体されて民間に売り飛ばされました。それも「復興」という美名の下で。

同じような事例を、「ショック・ドクトリン」(上下岩波書店刊)の著者ナオミ・クラインはチリで、イラクで、韓国の例を上げて教えてくれます。

いずれの事件の背後にも米国がありました。いや米国内にすら事例がありました。

2005年8月末にアメリカはハリケーン・カトリーナに襲われました。そして零m地帯であるニューオリンズは大きなな被害を被ったのです。

ところが、この復興の過程でとんでもないことが起きていたことを大部分の米国民は知りませんでした。

被災者救援のために充てられ復興資金は、被災者たちの住宅や地域インフラの復興に使用されずに、まったく筋違いの公教育の解体と民間への移行措置に充てられていたのです。

これを連邦政府は見逃したばかりか、加担すらしていたことが発覚しました。これについてナオミ・クラインはこう言います。

市場至上主義を推進する最適の時は大きなショックの直後です。経済の破綻でも、天災でも、テロでも、戦争でもいい。人々が混乱して自分を見失った一瞬の隙をついて、極端な国家改造を一気に全部やるのです。」

この「ショック・ドクトリン」という言葉は、新自由主義の創始者であるミルトン・フリードマンが言ったこの言葉によります。
「危機のみが真の変化をもたらす。」

彼こそが、大企業の利害の代弁者として、すべての規制の撤廃、自由競争による市場主義こそが繁栄の王道であると唱えた張本人てした。

大災害に遭って、国民がショック症状に陥っている時に、「今こそ改革が必要だ」と叫んで、国民の福祉や医療の改悪、そして国の基盤ともいえる農業に大打撃を与える政策を次々とたたみかけるようにして放っていきます。

大災害で混乱している国民に対して、「今この改革行わなければ真の復興はない」、と繰り返し語りかけ、その内実すら満足に教えないまま「改革」を断行してしまうのです。

このような大災害の後こそが、民主主義のルールが麻痺しているからです。野田首相が国内論議もまったくしないまま、外国でTPPと増税を公約するという手法こそがまさにショック・ドクトリンそのもののやり口なのです。

TPPの中には、米国が望む「抜本的改革」のすべてが入っています。公的医療改革、共済改革、法務サービス改革、そして農業改革などです。

これらすべてを国民が苦しんでいるその時に、いや苦しむ時だからこそ行うのです。これがショック・ドクトリンです。

米国を背後にした新自由主義者である野田首相は胸の中でこうつぶやいていることでしょう。
「この天災は日本にまたとないチャンスをプレゼントしてくれた」、と。
 

 

 

 

2011年11月29日 (火)

福島県伊達市で暫定規制値を超えた米が検出された。この山系付近で徹底したスクリーニングを実施しろ!

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なんということ・・・!また福島県伊達市で暫定規制値超えの米が出てしまいました。しかも今回は規制値の倍です。 

既に、二本松で検出されたのを皮切りにして、近隣の大波地区で立て続けに6軒の米から基準値を超えた玄米がでていました。

この地域は計画的避難地域のわずか北西にあり、濃厚な被曝を受けた可能性がある地域です。 

そして、今回の伊達市は、尾根ひとつを超えた地域です。元々はひとつの小国村だったのが、西部は大波地区として福島市に編入され、東部は伊達市に編入されたという歴史があります。つまり、元々はひとつの小国村だったわけです。 

このような場合、ホットスポットのありかは共通しています。だいたいこのような場所です。 

・周囲を山林に囲まれた谷津田
・近接する山林からの沢水が流入する水口付近
・土質が粘土分の少ない砂質
 

放射能は開かれた平坦な平野部では、フォールアウトした放射性物質は速やかに農業用水や河川によって流されていきます。もちろんその後は、海辺の河口付近や湖沼の湖岸に沈着していくのですが、とりあえず水田の汚染度は低く抑えられます。 

水系の汚染は大変に大きな問題で、まだ調査自体が部分的にしか進んでいない状況です。わが茨城県においては霞ヶ浦の湖岸の自然護岸の沈着が心配です。

そこは在来魚の営巣場所であり、食物連鎖による汚染拡大と濃縮化が心配されます。 

さて、話を戻します。今回の伊達市の検出が、いままでの二本松、大波地区と異なるのは、それまでは保管状態での検出だったのが、今回は既に一部が市場に出回ってしまっていることです。 

既に福島県は同地区に対して全戸検査と出荷自粛をしていますが、それでは収まらないでしょう。 

福島県の努力と苦悩は察して余りありますが、いったん福島県産の米は全量をスクリーニングにかけることでしか市場の信頼を回復できないと思われます。 

まず、この大波地区と旧小国村、旧月館村が位置する山系沿いのすべての地区の米を出荷自粛にすべきです。

そして次に、危険地域の蓋然性がある場所をリストアップします。

おそらく、山林からの沢水が流入する水口の水田はかなりの数に登るはずですが、リストアップすることはそんなに大変なことではないはずです。地元の農水課、農業委員会やJA自治会には情報があります。

そしてこの山林周辺の水口付近のすべての水田の土壌線量と、そこから出来た米を例外なく全部スクリーニングします。ひとつの例外も許されません。

わずかひとつの穴から堤防が決壊するのです。既に堤防は決壊を開始しており、一刻の猶予もありません。

いちいちゲルマニウム測定器にかける暇はありません。シンチエーション・サーベイメータで充分です。おおよその危険地点の洗い出しができればいいのですから。

シンチエーション・サーベイメータは測定器としては安いので、福島県は何百台も持っているでしょう。これを一点投入します。人員も集中します。

ともかく今、この地域から福島農業は沈没しかかっているのだ、という厳しい自覚を持って下さい。船底に大穴が開いて海水が流入しているのだと思って下さい。

今は平時ではないのです。戦争なのです。放射能という人類の敵との。

おそらくはかなりの数のホットスポットがあり、そこで一定数の規制値前後の米が発見されるでしょう。もし、発見されないとすれば、もう一回やって下さい。

絶対にあります。ないはずがない。そしてこのような奮闘している姿を全国放送で紹介させて下さい。地を這い、泥水をなめてるようにして闘っている福島県の姿を全国に伝えて下さい。

今の県の当該地区の全戸検査、出荷自粛では微温的にすぎます。都市の消費者には「福島県産の米はこわい」という空気が刷り込まれています。これを払拭するには微温的対応ではだめなのです。

そしてこの冬の農閑期を利用して、徹底した福島県全域の土壌スクリーニングを実施してください。それぞれの地域が置かれた地形と、3・11以降の放射性物質飛散図を照らしあわせれば、検査すべき地点はおのずと限られてくるはずです。

雪をかきわけての作業となると思います。ほんとうに頭が下がります。頑張って下さい。福島県民にはなんの罪科もありません。しかし、やらねばならないのです。ここで踏ん張らないと、福島農業全体が押し流されてしまいます。

そして来年の春こそ、温かく心安らぐ春としましょう!

 

 

          ゜。°。°。°。°。°。°。°。゜。°。°。°。 

伊達市でも規制値超=コメのセシウム検査で―福島 

時事通信 11月29日(火)0時5分配信 

 福島県は28日、伊達市の旧小国村と旧月舘町の農家3戸で今年生産されたコメから国の暫定規制値(1キロ当たり500ベクレル)を上回る放射性セシウムが検出されたと発表した。最高値は1050ベクレルだった。既に少量が流通したとみられ、県は農家などに出荷自粛を要請した。
 県農林水産部の鈴木義仁部長は「(県産米の)安全性については調査を進め、改めて判断する必要がある」と述べ、県が先月出した「安全宣言」を見直す可能性を示唆した。
 福島県では、先に福島市大波地区(旧小国村)で暫定規制値を超えるセシウムが検出されている。政府は同地区のコメの出荷停止を県に指示しており、旧小国村と旧月舘町に対しても同様の措置を取る見通し。3地域はいずれも近接している。 
<コメ汚染>大波で新たに5戸…福島県検査 

毎日新聞 11月25日(金)21時0分配信

 
 福島市大波地区の農家のコメから国の暫定規制値(1キロ当たり500ベクレル)を超える放射性セシウムが検出された問題で、福島県は25日、同地区の別の農家5戸のコメからも最大で1270ベクレルの放射性セシウムを検出したと発表した。

 県は22日から同地区の稲作農家全154戸を対象に、今年産米計4752袋(142.6トン)の全袋調査を開始。16日に規制値を超える630ベクレルを検出した農家も含め、24日までに34戸864袋の調査が終わり、計6戸131袋(3.9トン)で規制値を上回った。新たに規制値を超えた5戸は16日に判明した農家から1~2.5キロ離れている。県は、地理的条件や土壌など、高い値が出た原因を調べている。

 同地区のコメはすべてJAの倉庫や米穀店などに保管されており、市場には流通していない。県は同地区に隣接する伊達市など環境放射線量が高い別の4市12地区でも全戸検査を進めており、結果が出るまで出荷しないよう呼びかけている。

 大波地区のコメ農家の男性(63)は「今回の検査でセシウムが検出されなければ、出荷停止の解除も期待していたのに。来年はコメそのものを作れるかどうかも分からなくなった。今後どうやって生計を立てればいいのか」と肩を落とした。
Photo
 
 
 
 

2011年11月28日 (月)

ブログ更新雑感

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毎日更新ということを自分に課してから大分たちます。

いや~、しんどいですね(笑)。大震災があって、放射能雲がやってきて、その上ご丁寧にもTPPです。トリプルで災厄がこられては、ここで書かなかったら負けだ、みたいな気分は確かにありました。

誰からも期待されているわけでもないし、頼まれたわけでもないのに、我ながらバカみたいです。意地でしょうね、強いて言えば。

更新が途絶えた有名ブログを見ると、だいたい似たことが書かれています。

ブログで食っているわけではないので、毎日2時間以上かけて書くという日常がもう続かない、ということです。図表や資料の多い論説ブログだと4時間くらいかかってしまうんじゃないでしょうか。

う~ん、多少分かりますね。私のブログで何も調べない日々の感想のようなことなら1時間、しっかりと資料を集めて、分析にかけてとなると、平均2時間から3時間というところでしょうか。

書いてる途中で分からなくなったりすると、もうヒサン。半分まで書きかけて全部削除したりしたこともたびたびでした。

いちおうの目安として遅くとも朝8時までにはアップするつもりでいますので、毎朝5時には起きて書き始めています。いや、この頃は4時半かな。

というのは起きて30分くらいは脳が寝ていて、何も浮かんできません。真っ白なホワイトボードの前で呆然とするワタクシ。

準備のいいブロッガーはきっと制作ノートなんかを作っているのでしょうが、グータラな私はなにもしていないので、ボーっとしちゃうんです。

今は朝飯の米を炊いたり、煮物を作ったりしながら脳味噌を覚ますことにしています。今日も目覚まし体操がわりに大根の煮つけと厚焼き卵を作りました。カミさん大喜びです。

ここで作ったメシを喰うといけない。また眠くなる。味噌汁のいい香りをかぎながら、早く書いて飯食おうと、もうひとがんばりということなります。

カミさんは労働時間に影響を与えるような亭主の道楽を許しませんので、時間が押すと食いながらキイを叩くという器用なことができるようになってきました。

まぁ、というような毎日からヘロヘロになりながら発信しております。ご支援ください。

さて、今朝もこれで朝飯を食って、仕事だ!

■ 百里エアショーのアクロバット飛行です。

2011年11月27日 (日)

「国際競争力」というトンチンカンな尺度一本で、異業種参入、大規模化を叫ぶことだけが農業が生きる道なのか

011

TPPが現実のものとなるにつれてかしましいのが、農業弱体論、農業補助金漬け論、そして国際競争力弱体論です。 

私はこれを、毎度おなじみ「反農業三点セット」と呼んでいます。 

日本農業は耕地が狭く、高齢化が進み、効率が悪いので国際競争力がなく、しかも補助金漬けだから、国民の税金で生き伸びているだけの不採算部門、とまぁこんなところでしょう。 

まぁ、いままでは聞き流してきました。実際に、私自身が所属している生産法人は、補助金はもらったことはなく、高齢化もしておらず、それなりに大きな面積でやっていたからですが、しかしTPPが目の前に来るということになると、そうもいかなくなったようです。 

じゃあ、日本農業をどうするのか、です。 

政府が出した処方箋は、土地を集約化・企業法人化し、新規参入を認めて異業種を受け入れ、「市場のニーズ」とやらに合わせた効率いい栽培管理に変えていく、ということらしいです。 

これを私は、「よくある処方箋三点セット」と呼びます。 

さて、週刊文春などを読んでいましたら、「TPPなんか怖くない、農業革命に立ち向かう男たち」という勇ましいというか、微苦笑してしまうタイトルの記事が載っていました。 

熊本のM農園さんで、だいたいこんなことをおやりになって「農業革命」を起こしているそうです。 

願いましては、まず、コスト意識を高めるためのIT化。「生産情報管理システム」だそうです。 

ネーミングはスゴイですが、要するに栽培管理履歴(トレサビリティ)ですよね。うちはこんなこと10数年前からやっておるだがや。 (←私は名古屋人か)

これでが評価されて大手スーパーに言い値で売れるようになったとか。まっこと嘘だぎゃー。スーパーのバイヤーにとってトレサビリティは鼻くそみたいなもの。 

トレサビリティなどはアクセサリーであって、美味くて安いものしか買いません。 

第一、トレサビリティは今やちょっと気の利いた生産団体なら、だいたいは持っているはずです。それをIT化というとなんかスゴイですが、要はPCにぶっ込んでいる、だからなんだってんだ、というくらい日常的な農業現場の仕事です。

今はGAP化などが取り組まれているのに、いまさらトレサくらいでびっくりしないでほしいものです。

こんなことで「農業革命」というなら、私たちは前世紀から「農業革命」をしていたことになりますなぁ(笑)。 

次に、「価格決定権」を取り戻すために徹底したコスト計算をしたとのことです。あのね、あるていどの規模以上の農業団体なら、資材屋さんは競争が激しいから価格決定権はこっちにあるの。

ただ、値切るだけでは品質が落ちるから、そこをよく資材屋さんと話あっていかねばならないんです。コストだけでは語れないのです。 

三番目。作っている作物をコンピュータ管理して品目を絞って大量生産した、ということです。はい、あまりによくある話で脱力感すら漂います。 

このように品目を、たとえばニンジンやゴボウといった手間がかからないので機械生産が可能で、あるていどの保管がきくというものに単品化するというのは、春が関東により先に来る九州や、逆に夏場に涼しいので葉物やレタスなどが出来る長野などでは可能です。 

しかし、考えてみて下さいよ。野菜売り場はニンジンやゴボウだけですかね。数えたことはないが、おそらく40数種類あるはずです。 

じゃあ、ニンジン、ゴボウ以外は誰が作ってるの、ということです。ほうれんそうなんかの葉物野菜は2ヘクタールいっぺんに作ったら、初夏になると一雨でグワッと成長してあっという間に徒長してしまいます。 

結局、3畝、4畝とコツコツと作っていくことになるわけです。大根、キャベツにしかり。だから、いつも徒長しないで旬の状態で消費者に届けられるのです。 

大規模栽培ができる農産物は限られています。大根、ニンジン、ゴボウなどの根菜類、サツマイモ、ジャガイモなどの芋類、畑であるていどの期間置いておける白菜などがそうです。 

あとは、大都市市場の裏をねらった夏場の葉物などでしょうかね。 

大規模栽培が特効薬のように言うのは農業現場を知らない人たちです。彼らは、大規模な農業団体に行くとIT管理、集中した品目に限った単作栽培に目が眩んで、こりゃ~スゴイと思い込むことになります。 

ついでに、M農場には大卒の若手社員がワラワラとパソコンを叩いていてたまげたようですが、当節の就職難で、大卒の肩書など紙屑です。農業団体側からみれば、要はやる気のある人材か否かが判断材料になるだけにすぎません。 

農家と言えば、ジィさん、バァさんばかりのがネコの額のような土地をクワで耕している風景でなければお気に召しませんかね。こういう色眼鏡で農村に来るからイヤになる。農業はそれなりに自己改革しながら進化し続けているんですよ。

あとはモヤシ屋さんが紹介されていました。あの~、モヤシも農業ですか(笑)。モヤシ、カイワレは農業ではなく軽工業です。ついでにウインドレス養鶏も軽工業。キノコ類もそうとうに軽工業。

別にいかんと言うことではないですが、農業を「大規模化」、「効率化」という尺度だけで見ようとしているからおかしくなるのです。

大規模化にはかならず単作化が表裏一体でついてきます。これでは大都市の多様な消費市場には対応できません。

生産団体が仮に一定のボリュームがあったとしても、作る品目や出荷時期などにはデリケートな配慮が必要なのです。そんなことはコンピュータにはできません。

やるのは人、それも農業をしてきて土が皺の間にしみこんだような「人」なのです。

私たちのグループは原則としていきなり事務職になる若手はいません。必ず栽培現場で何年かやってからパソコンの前に座ることになります。そうしないと農業をなめた人間になってしまうからです。

また、大きな農業団体であっても、地域農家といい関係を作っていくのかも大変に重要です。

あくまでも地域農業団体はその地域の農業全体によって支えられており、地域農業が潰れて自分たちだけが残ることなどありえないことです。

今の政府の農業の改革をみると、農業現場をまったく知らない人たちが蛍光灯の下で統計数字をいじって作ったような机上の改革案です。しかも手垢のついた。

日本農業はそもそも同胞を食わせるところから始まった内需主導型でした。そこにまったく次元の違う「国際競争力」なる尺度を持ち込んできた所からおかしくなりました。

国際競争力などという農業にとっては耳慣れない尺度を導入したのは財界ですが、かくいう製造業ですから自動車輸出の対GDP比率は1.23%、家電・電子機器輸出わずか0.036%にすぎません。輸出依存度は13.44%と先進国中最低です。

このようにわが国の自動車産業や電気製品すら内需主導なのですから、農業がそうであったとしても財界から文句をいわれる筋合いはなんらありません。

農業は工業がもまたそうであるように、さまざまな大きさの農業団体や農家が複雑に組み合わさってできています。それを大規模化、効率化の念仏ひとつで切り捨てようというのが、政府主導の「農業革命」です。

私は農業というのはひとつの自然生態系のようなものだと思っています。さまざまな人たちが、自分の生きる農地という自然を相手に工夫や努力をしています。それが集まって団体になるのもいいでしょう。法人化もいいかもしれません。

しかし、それだけが処方箋ではないはずです。ましてや、農業を「国際競争力」などというトンチンカンなモノサシ一本で切り捨てて、異業種参入、大規模化を叫ぶことだけが農業が生きる道だとはとても思えません。

農業が内部改革をせねばならないのはあたりまえのことです。それはいかなる産業においてもそうであるように、という意味合いにおいてです。

それをTPPという黒船外圧をかけねば、わが農業が目覚めない、とでもいうような論調には賛成しかねます。 

 

 

■写真 杉の木の根元のツルの葉も紅葉をしています。

2010年 輸出依存度、輸入依存度

 

2011年11月26日 (土)

韓国陥落! 米韓FTA締結される

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とうとう韓国が陥落してしまいましたね。いえなに、米韓FTAのことです。 

来年1月からいよいよ日本財界憧れの米韓FTAの始まってしまうわけです。これで韓国がどのようなことになるのか、少なくともこれで私たち日本人は半年間の観察期間ができたわけです。 

記事には、締結批准が紛争化した最大の理由をこう書いています。(産経新聞11月22日 欄外資料1) 

処理が停滞した最大の理由は条項に盛りこまれた「国家・投資家間における訴訟制度(ISD)」に対する警戒感が大きかったためだ。」(同上) 

なんだわかっているんじゃないですか。農業が既得権益を叫んで暴れたからではなく、ISD条項が最大の係争案件だったということです。 

韓国はこれを結局拒否できませんでした。今まで韓国がさんざん結んできたFTA・EPAのすべてにISD条項(Investor-state Dispute Settlement)が入っているからです。これでは米国にのみノーと言えないわけです。 

これで、韓国はサムスンやヒュンダイといった巨大企業数社のために韓国国内経済を焼け野原にしてしまったことになります。 

韓国は輸出が対GDP比率で5割に達するという超輸出依存国ですが、これでいっそうそのガリバー型寡占はひどくなる一方となるでしょう。 

ちょうどわが国が上場企業5%に満たない大企業のみが恩恵にあずかるTPPの未来図と一緒です。 

このような大企業は、本社が日本にあるだけで、実態は多国籍企業です。彼らはとうに生産拠点を海外に移しており、超円高とTPPでこのハードルは一層低くなっていきます。 

日本人の雇用が危機にさらされているデフレ経済時に、安い外国製品の輸入を増大させ、大企業が海外移転していくならば、日本の国内消費市場は今以上に冷え込むことは間違いありません。 

結果、税収が減少していき、その穴を埋めようと増税し、更に消費市場が冷え込み、財政失陥が大きくなり、、また増税し、というまさにデフレ蟻地獄です。 

それにしても震災復興がまったく進まない中でのTPPと増税・・・、野田首相の頭の中はどうなっているのでしょうか。開けて見てみたいものです。正気の沙汰ではない。

今、政府としてしなければならないことは、内需を成長させることです。農産物にしても、個人消費が伸びないために低迷が続いているのです。

輸出という外需に依存する一握りの大企業の利益保護のために、内需を切り捨てようというのがTPPです。

はっきり言って、経団連首脳の大企業を除いて、TPPで得をする者はいないのではないのでしょうか。もはや彼らの利益は今や「国益」ではなくなりました。 

さて、このISD条項(国家・投資家間における訴訟制度)という、わが国が経済的な主権を手放し、外国によって国内法を超越できる根拠となる条項を拒否できるでしょうか? 

不可能です。わが国もまた既に25カ国以上の国や地域と投資協定を締結して、フィリピンを除くすべてでISD条項を入れさせていますから、TPPがその例外になるはずがありません。 

今までわが国がISD条項にこだわったのは、特許や、ソフト製品、製造技術などの知的所有権が発展途上国でしばしば盗まれたからです。それらに対する法整備が遅れた諸国に進出する場合、ISD条項はセーフティネットだったわけです。 

ですから未だ推進派からは、TPPのISD条項について、ドンマイ、怖くないよ、という声が絶えません。 

外資が不利益を被った場合、国際仲裁機関に日本政府を相手取って訴えを起こせる制度も、慎重派が持ち出す懸念材料である。
だが、日本政府が、すでに投資協定を結ぶ20カ国余の企業から提訴された例は、一件もない。逆に、この制度は、日本企業が新興国などへの投資に際して不当差別を受けないために重要である。
」(産経新聞11月25日主張)

この社説を読むと、従来の投資協定一般と、TPPという日米過激FTAであるTPPとを意識的に混同しています。

ISD条項は、先進国と法的整備が遅れた発展途上国が締結する場合に有効なのです。GDP世界第1と3位の国家間である日米で入れるべき条項ではないはずです。

ほぼ同等の知的所有権法制と特許制度を持つ国家間において、ISD条項は米国のイチャモンつけと主権侵害のための凶器に転化します。これでカナダがさんざんにやられました。 

日米FTAならば、ISD条項は拒否することが可能でした。しかし、発展途上国を多く含むTPPでは日本は自国利益を守る意味でも、拒否することは不可能です。

それにしても、あれだけの口蹄疫禍から未だ立ち直ったとはいえない韓国の牛肉・豚肉生産者が哀れです。もはや韓国畜産は完全に壊滅コースの軌道に入りました。

       ゜。°。°。°。°。°。°。°。゜。°。°。°。 

■資料1 韓国議会、米韓FTA法案を可決 催涙弾や怒声で議場は大混乱

 

産経新聞11月22日 

韓国の与党ハンナラ党は22日、採決をめぐり与野党間で激しい攻防が続いていた米国との自由貿易協定(FTA)の批准同意案を、緊急招集された国会本会議で強行採決し可決、成立させた。米国側は批准手続きを10月に終えており、米韓FTAは李明博大統領が目指していた来年1月にも発効する。 

強行採決に最大野党・民主党が今後の全国会日程のボイコットを宣言するなど政権との対決姿勢を一層強めており、政権は厳しい国政運営を迫られそうだ。 

 野党側はFTA発効で「社会の二極化が進む」などと反発していたが、処理が停滞した最大の理由は条項に盛りこまれた「国家・投資家間における訴訟制度(ISD)」に対する警戒感が大きかったためだ。 

 ISDは投資家が不利益を被ったと認識した場合、投資先国の裁判所ではなく国際仲裁機関に提訴できる制度。企業の海外投資が多い韓国側に有利な側面もあるが、反対派は「政府や地方自治体が訴訟対象となる可能性があり、敗訴すれば国民にツケが回る」として削除を要求していた。 

 事態の収拾のため、李明博大統領は国会を訪問。与野党に協力を要請し、発効3カ月以内の再交渉という妥協案も示すなど異例の対応に出たが、野党側は同意しなかった。22日の本会議には与野党議員170人が出席。怒号の中、採決直前に野党議員が催涙弾を投げるなど一時混乱したが、賛成151票で可決された。

2011年11月25日 (金)

放射能の天敵とは。 放射能は最強ではない

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生物学者の福岡伸一さんと阿川佐和子さんの対談集「センス・オブ・ワンダーを探して」という本を読んでいます。 

 

生物学者は掃いて棄てるほどいますが、福島さんが面白いのは、、「知るということは大切じゃないよ。まずビックリする気持ちが大事なんだ」と言ってしまう人だからです。 

 

ビックリする気持ち、うわーと感動する心があって、初めて世界が見えてくるんじゃないのかな、と福岡さんは言います。 

 

いままでの科学者たちの生命認識は、DNAなどが精妙に組み合わさったパーツだと考えてきました。だから、虫などをせっせと磨り潰して、そのパーツを探そうとしてきたんですね。 

 

生命原理は実は精密器械みたいなメカニズムなんだ、というのが今のおおかたの科学者の見方です。そのような考えの先には、遺伝子だけを抜き出して別の生命体を作ってしまおうという遺伝子組み換え技術が生まれたわけです。 

 

そうかなぁ、と福岡さんは思ったそうです。ちょっと昔の科学者はもっと柔軟でした。たとえば、福島さんが敬愛してやまないバージニア・リー・バートンの「せいめいの歴史」では、地質学者と古生物学者、そして文学者までもが集まって、地球誕生と生命の歴史を考えています。 

 

しかし今の科学者たちは細分化された小さな箱に入って自分の世界の分野だけしか見なくなりました。あまりにも専門化が進みすぎて、異業種交流がまったくといっていいほどなくなってきてしまったのですね。

 

福岡さんは、たとえば手首の曲がる角度が疑問だったそうです。手首がなんである角度以上曲がらないんだろうかって。 

 

あんまり生物学者が考えそうなことじゃないのが面白いですね。答えは、人間は何かを支えるために手首を曲げた時は、別な部位でその力を分散させる仕組みがあるからです。

 

たとえばグッと掌に力が乗ると、身体が伸びてしなり、足が後ろに伸びて三角形で支えるようになります。 

 

手首だけ見ていても分からないんです。身体「全体」をみないと。それがどのように有機的に連携しているのかを見ないと判りません。 

 

こんなふうに一部だけみていても、「全体」は見えないのです。 

 

科学にはうとい私も最近起きたあることでなるほど、と思いました。「あること」とは土中の放射能残留問題です。 

 

いきなりシリアスになったと思わないで軽く聞いて下さい。 

 

3.11に放射能が降って土中に残留しました。それをどかさないと大変なことになると多くの人は思いました。 

 

土中の放射能がガンガンと作物に吸われちゃうと思ったからです。あるいは、地表を通過して放射線を出てしまって、ずっと空間線量が下がらないんじゃないか、などとも心配しました。 

 

そして8か月たちました。あんがい作物は吸っていないことが判ったんですね。たくさんの種類の野菜や米を計っても出ないんです。 

 

出ても検出限界以下のごく低い数値でした。福島県などは5ベクレル以下ですね。 

 

逆に、今回の福島県の暫定規制地を超えたようなケースはすごく稀で、ある共通点があることも分かってきました。その原因は過去ログで書きましたのでそちらを読んで下さい。http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2011/11/post-5209.html 

 

どうしてなんだろう、と私たちは思いました。

 

セシウム半減期は30年だとか言われてきましたが、実際はもっと早いスピードで放射能は減少し続けているようだし、植物はなんらかの土中の働きで移行できないんじゃないか、と考えられるようになってきました。 

 

こんなことどんな本にも書いてないですよ。 

 

だって、広域にばらまかれた放射能なんて、広島、長崎そして核実験場を除けば、ウクライナ、ベラルーシとわが国しか実例がないのですから。研究している学者がほとんどいないんです。 

 

福島の事故以来発言している学者の多くは、放射線の専門外の原子炉の専門家が大多数でした。この人たちは、原子炉にはくわしいでしょうが、放射能が地中でどんなふうになっていくのかなんてまるで素人でした。おそらく考えたこともなかったと思います。 

 

だから、除染をせねばという段階になって言うことは決まって、建物や道路は高圧放水で洗い流せ、土は削り取れでした。 

 

原子炉の専門家に取って除染は、せいぜい研究所の中の除染ていどまでしか考えが及ばなかったからです。 

 

ここでも福岡さんが言う、高度に専門化が進みすぎていて、「全体」が見えていなかったわけです。 

 

では、土中のセシウムは実際にどういう動きをしていたでしょうか。 

 

セシウムという放射性物質は、意外なことに最強の存在ではなかったのです。降ったら終わりではなくて、降ったらたちどころに、土中の色々なものよってこずきまわされ、はがい締めにされ、あげくは牢屋に入れられてしまうことがわかりました。 

 

セシウムは、まず粘土によって電気的に吸いつけられて動きがとれなくなります。粘土分子に粒々がつくようにして粘土の組織構造の中に吸着されていきます。

 

堆肥の腐植物質(*木の葉などが発酵分解してできた物質のこと)もピタピタとセシウムを電気的にくっつけていきます。 

 

それでもその電荷から逃げ出したセシウムには、それこそ無数いる土中地虫の諸君やそれより小さいバクテリア、そして微生物までがわらわらと食べに来ます。 

 

正確に言えばセシウムを食べるのではなく、セシウムがいる栄養分がある土を食べたら中にセシウムがいただけなんですがね。 

 

一部は排泄されますが、それはより下位の生き物が食べていき、またその排泄物は・・・、という土中食物連鎖にセシウムも取り込まれていきます。 

 

ちなみに「放射能を食べる特殊な微生物」などというエリート集団ではなく、そんじょそこらにいる地虫や在住の微生物です。 

 

それでもまだ逃げ回っているけしからんセシウムには、最後に恐ろしい仕置きが待っています。(←鬼平か) 

 

それが堆肥の素材でよく使われていたゼオライトです。ゼオライトは粘土の天然素材なのですが、この分子構造が特殊なのです。 

 

分子の隙間(キレートと呼びますが)、そこの寸法が嘘がかまことかセシウムにピッタリだったのです。ですからセシウム分子は、そのキレートからコロコロと中に入って言ってしまいます。

 

そしてセシウム分子が入ってしばらくすると、なんとそのキレートの隙間はゆっくりと閉まっていくらしいのです。これをシーニング現象と呼びます。

 

そしてやがてそのセシウム監獄と化したゼオライトのキレートの入り口はピッタリと閉じて牢獄の完成です。これがセシウムの物理的吸着という現象です。この物理的吸着のほうが、電気的吸着より強く長くキープできることもわかってきました。

 

こうして、これらの通常の粘土、腐植物質、各種の地虫、微生物、ゼオライトなどの土中の生物、無生物の曼陀羅の中に放射性物質も封じ込められてしまうのです。

 

このようなことは放射性物質だけを見ていても判りませんでした。ここに落とし穴があったのです。

 

放射能は万能ではありません。最強でもありません。彼らには天敵がたくさんいます。ただその天敵が学者の研究室にあまりいないからです。

 

なぜなら、あまりにもありふれたそこいらの地虫であり、土中微生物であり、珍しくもない粘土であり、ゼオライトだったからです。

 

自然生態系という曼陀羅は、放射性セシウムを自然界の一角として包み込み、悪さをしないように包み込んでしまうのです。

 

私は自然の回復力を信じるようになりました。それは放射能の恐怖よりはるかに大きい生態系の理(ことわり)の中にしかセシウムも生きられないということに気がついたからです。

 

これが私の希望です。

 

 

 

 

 

■写真 私の隣街の玉造の旧家。江戸時代からの建物です。

 

 

 

 

 

 

2011年11月24日 (木)

TPP言行録からみる民主党の多重人格障害

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民主党のTPPについての発言を読み返すとなかなか渋いものがあります。  

民主党を政権につかせることとなった09年の総選挙の最中に、当時の小沢代表が日米FTAをマニフェストで言い出したことに対しての菅直人代表代行の記者会見です。

「米国とのFTA交渉で日本の農林漁業・農山漁村を犠牲にする協定締結はありえないと断言する」
(菅
直人代表代行 2010年7月29日)
と、お聞きのように明確に日米FTAで農漁業を対象にしないと言い切っています。実はこの時は今まで自民党よりだった農業界が、石破農政の4品目横断政策にあるような集約化、大規模化誘導政策によってきしみが出た時期でした。
このきしみに手を突っ込むようにして、農村全体に巨額の金をバラまいてしまおうというのが農家戸別所得補償制度でした。
全部の農民に景気よく所得を補償してしまおう、というふうに聞こえた農家戸別補償政策によって、民主党が農村部でも圧勝してしまうという悲喜劇が起きたわけです。
もっとも、後日談として、政権についた民主党はこの農家戸別補償をする財源がないことに気がつき、結局はコメの減反補償金のようなものでお茶を濁しています。こんなていどのものは自民党時代にもありました。
ちなみに、石破農政が進めてきた土地の集約化事業も、土地改良区が自民党寄りだというだけで事業予算を半分に削られるというおまけつきでした。
これにより、農地、特に水田の近代化と集約化は一時停止することになります。

それはさておき、この日米FTAで農業を交渉対象にしないと明確に言い切った同一人物が、わずか1年後の2010年に首相に就任した直後の10年横浜APECの議長国としてこのような冒頭発言をします。

我が国においては,このAPECの開催を前にして、包括的経済連携に関する基本方針というものを閣議決定を既に致しております。つまりは,日本の今弱くなっている農業を活性化する、そのことと同時に他の国々に対して、やや立ち後れてきたこの経済連携自由化の一層の促進をまさに新しい平成の開国という形で推し進める、農業の再生と開国の両立をこの基本方針で明確にしたところであります。」
(菅直人首相 2010年11月14日)

この菅前首相のAPEC冒頭発言でわが国は、「農業の再生と開国の両立」、言い換えればTPPとそれに向けた農業の「改革」をいわば国際公約にしてしまいました。

そして今、野田首相が盛んに力を入れてしゃべっているのが、「農業の大規模集約化による国際競争力の確保」です。

もし、民主党がひとつの人格ならば、多重人格障害とでも評するしかありません。

選挙の時は、「FTAは断じてやりません!日本の農業を守ります!」と叫んで農家戸別補償制度で票を集めながら、一方で財界には「日米FTAやりますから、ひとつ支持をよろしく」、と耳打ちしていたわけです。

この矛盾は、当人にとってはさほど深刻なものではなくただの二枚舌に過ぎなかっただけなのは、菅直人氏が政権とって初めて出された体系的な農業政策をみれば分かります。

これが「食と農林漁業の再生実現会議」です。ネーミングは市民派を自称する菅氏らしいものですが、内実は古くからある新自由主義的な日本改造論にすぎません。

この農業政策は、「農業再生」に名を借りた財界型農業政策です。

「持続可能な農業経営」や「農林水産業の成長産業化」という項目の骨子は、ひとことでいえば、「規制緩和と制度改革」をやるぞということであり、なんのためかと言えば、TPPをやるための地ならしのためです。

2010年3月、行政刷新会議のなかに、「規制・制度改革についての分科会」が設けられました。この内容は、驚くほどTPPで想定されている{黒船」の内容と酷似しています。(資料1参照)

たとえば、農業分野では、「農林・地域活性化」として、「新規農協設立の強化」や「農業生産法人の規制のさらなる緩和」といった項目が登場します。

これは現在、農地が農地法3条により農家以外に解禁されていないことを緩和し、全面的に他業種の企業にも開放して参入を促すことが目的です。(*農地法3条自体は改正されていますが、資本比率などの規制があります。)

これもまた、TPPで米国が要求してくるであろう「農地の取得要件の緩和」という名の外国人資本による農地買収と、農業参入と同一文脈の上にあります。

私はこれらの政策をした場合、小規模農家の離農を引き起し、それが新たな新規就農者の参入や、地場農業団体の強化につながらないままに、外国資本による日本の農地や水源地の買い占めを招くと考えています。

とまれ、こう言う言い方もなんですが、やるなら日米FTAのほうがTPPより数等ましでした。FTAは協議の時間が十数年と長くセンシティブ項目といって協議対象にしない分野の幅もありました。

しかしTPPは待ったなし。交渉ルールすら決められており締結内容も既に9割9分決定しています。今からそれに参加しようというのは丸飲みにすると同義です。

そして発効までわずか3年余。いったいこんな短期で、農業のみならず21分野すべてでどんな対策を取れというのでしょうか。考えるだけ無駄です。

とうていこのようなTPPはわが国の「国益」に沿ったものだとは思えません。あるのはただ、選挙の時のようなドタバタの我が身かわいさの「党益」にすぎません。

政治家の言行不一致は今に始まったことではありませんが、民主党の虚言癖は国全体の運命を左右してしまう罪深いものなようです。

           ゜。°。°。°。°。°。°。°。゜。°。°。°。

■資料1 事業仕分け分科会の農業関係規制改革案

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2011年11月23日 (水)

TPPで「下方への協調」を強要される日本。 もし米国で原発事故が起きたら・・・

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仮にわが国が食品の安全基準を決めたとします。
 

そうですね、近々改訂されて「暫定」がとれるであろう放射能の食品基準値だとしましょうか。仮にミルクを50ベクレルと決めたとします。 

世論がどのような反応をするかは別にして、これで一件落着なはずです。後はまた何年後かに、放射線量の下がり方をにらみながら、もう一段下げていけれはいいだけのことです。 

ところがこの時、米国西部の活断層が沢山通っている地域の原発で大地震による原子力事故が起きたとします。 

そしてその時、運悪く北東の風が吹いていたために中西部から西部地域一帯の牧草や野外にいた牛などが被曝してしまったとします。 

計測してみると牧草は1万ベクレルなどザラで、ミルクも汚染されてしまいました。このときに米政府は、ミルクや牛肉の出荷を停止するでしょう。 

さて、話はこれからです。初期の放射性ヨウ素は急激に減っていきますが、放射性セシウムは頑固に土壌や牧草、作物に残留し続けることになります。 

米国も日本流にいえば「暫定規制値」、国際的にいうなら「緊急時規制値」を採用せざるをえません。 

食品の放射能規制値を、緊急時でいたしかたなく一時的に平時より高めに設定することはICRP(国際放射線防護委員会)でも認められています。 

日本でも同じことをしたのですが、それをちゃんと説明しないので、「暫定規制値」がずっと続くとおおかたの消費者や農家は誤解してしまいました。 

それはさておき、米国は膨大な量の穀物や牛肉も輸出している農産物輸出大国です。ミルクでさえロングライフで輸出しているほどです。米国の最大の輸出品は、映画と食糧とハゲタカファンドですから。 

で、とうぜんのこととして、米国は膨大な輸出不可能な危ない食糧を抱え込むことになります。 

まず、EUはとんでもないと完全輸入禁止措置を早々とるでしょう。ではわが国は? 

今なら、輸入食品の放射能規制でブロックしていますから、まずは安心していいでしょう。ひと頃は国内の暫定規制値より厳しかったくらいです。 

しかし、TPP発効以降は違います。米国はICRPなどに圧力をかけて自国に都合のいい規制値の解釈をもらうでしょう。 

米国は前科があります。たとえばBSEの時に、OIE(国際獣疫機関)に働きかけて、異常プリオンは特定危険部位である脊椎や脳だけ除去すれば「安全」だと言わせました。

この国際基準の見直しによって、日本は月齢30か月以下の牛の輸入再開を米国から迫られたのです。 

ところが日本のような個体飼育ではなく、群飼の米国ではトレサビリティがいいかげんで、そもそも「月齢30カ月以下」か、それ以上かさえ怪しかったのですから始末が悪い。

おまけに、全米の1%しか出荷にあたって検査されていないのが実情で、その衛生管理のひどさも批判の対象になりました。 

結局、「アメリカ大好き純ちゃん」が簡単に妥協してしまって輸入再開を許してしまったのですが、わずか1か月後に特定危険部位の脊椎が混入していたのがバレたという情けないおまけつきです。 

しかしあきらめることなく、今でも執拗に牛肉の月齢制限の撤廃を強烈プッシュしてきています。  

さて、TPPでもないのに、こんな圧力をかけることがお家芸の米国が、放射能残留食糧でおとなしくしていたら、そのほうが気持ちが悪い。  

おそらくは、日本の輸入規制値を上げることを要求してきます。きっとBSEの時のように、国際機関か、それなりに権威ある学者の「科学的安全性」の添え状を持ってくるはずです。 

そしてこれを楯にして、「日本の輸入規制値は科学的合理性にかける。日本の消費者に選択の自由を与えるべきである。」、とかなんかエラソーに言うんでしょうな。こういうレトリックにかけては米国は天才的です。  

そして、USTR(米国通商代表部)は、「下方への協調」(Downward Harmonization)を 迫ります。これは一国が国際基準を下げたために、他の諸国もそれに協調することです。

いいですか、みんなで高い方へ進化していこうというのではなく、真逆にダメなほうへ合わせていこうというんですから開いた口がふさがらない。  

これが米国のグローバル化戦略です。そしてTPPには従来にないISD条項という毒素条項があります。

これを使えば、海外の投資家にとって不利益と判断すれば、米国政府が代わって提訴でき、もし日本が負けようものなら、国内法の輸入規制値のほうを変えねばならなくなります。 

かくしてわが国食糧市場はどんどんと厳しくなる自国規制値と、米国の事情に合わせてゆる~いままの輸入食糧規制値の二つに分裂していってしまいます。

そして、TPPにより激安米国農産物との競争を強いられている国内産農産物も、やがて「下方への協調」により、本来は段階的に下げてゆくべき規制値が高止ってしまうかもしれません。これは「農産物の国際競争力をつけるための経営合理化」と説明されます。

米国が自分の国の国民にどんな劣悪な健康の基準をとも、それはカラスの勝手です。なぜなら、それは米国の主権だからです。

だから逆に、他国にわが国の国民の健康や安全の基準をとやかく言われる筋合いはありません。まさにこれこそが国家主権の基本の中の基本だからです。

しかしそのような「主権」の常識が通用しなくなり、「下方への協調」を迫られるのが、このTPPなのです。

■写真 夕暮れの村の風景。

      ゜。°。°。°。°。°。°。°。゜。°。°。°。

自民もTPP賛成派と反対派に二分されているようです。やれやれです。 

話し合い解散に言及=TPP、交渉参加を―自民幹事長

時事通信 11月22日(火)18時54分配信

 自民党の石原伸晃幹事長は22日、福岡市内で講演し、消費増税準備法案への対応について「野田佳彦首相と谷垣禎一自民党総裁、山口那津男公明党代表の3人で話し合い、法案を通して選挙ということもあるかもしれない」と述べ、自公両党の法案成立への協力と引き換えに、首相に衆院解散を約束させる「話し合い解散」の可能性に言及した。

 石原氏は想定される解散時期として、(1)同法案提出時(2)来年の通常国会会期末(3)来年9月の民主党代表選後―の3パターンを挙げ、「これくらいしか選択肢はないのではないか」と述べた。
 一方、環太平洋連携協定(TPP)交渉参加問題に関しては、「世界の目は間違いなく、日本はTPPに入ってくるとみている。(交渉参加に)反対という議論だけでこの問題は乗り越えられない」と指摘。その上で「日本の置かれている現状を各界で共通認識にして、守るべきものは何かを決めていかなければいけない」と述べ、交渉参加を前提に議論すべきだとの考えを示した

 

2011年11月22日 (火)

守らなければならない国の形と「広義の生産要素」  佐伯啓思氏の論説を読む

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京都大学の佐伯啓思教授がこのような論陣を張っておられます。(産経新聞11月22日) 

佐伯氏は、「TPPで日本は開国せよ、という論議があるが、それはまったくもって悪質な宣伝というものだ」と問いかけ、こう続けます。 

「この十数年日本は明らかに規制緩和を行い、市場を開放し、金融を自由化し、グローバル化をそれなりにしてきた。つま国を開いてきたのである。その開国の結果、日本は海外の安価な賃金と競争し、企業は海外へと移転することとなった。それは日本にデフレ経済をもたらした。」 

そしてこう続けます。 

「開国政策であった構造改革は決して日本経済を再生させなかった。(略)日本は国際経済で孤立しているわけでも国を閉ざしているわけでもない、充分に開国している。問題はいかにして、どのように国を開くかである。」 

「もっと正確に言えば、どこまで開き、どこを閉じるのかが問題なのだ。それは政治交渉力に依存する。」 

佐伯氏は「TPPを国益である」と安易に言う時の政権に対して、まだルールが決まっていもしないものを試算のしようがないではないか、と指摘します。 

推進派が吹くGDPの増大見込みは、交渉ルールに参加できるかさえわからない現状で、絵に描いた餅でしかありません。 

既存9カ国会議に門前払いを食わされた野田首相に、既存国の日本包囲網を破って、「国益」にかなった交渉ルール作りができるとは到底考えられません。 

そもそも、「国益」とはなんなのでしょうか?私は、民草の繁栄、安寧のことだと思います。この素朴な「国として守らねばならないこと」こそが、国の「原則」ではないのでしょうか。 

ではTPPで「守らねばならないもの」とはなんでしょうか? 

佐伯氏は、「生産物」、言い換えれば「製品」のことですが、これの多くは市場競争に委ねられておりTPPでも交渉対象となるだろうと言います。 

一方、この生産物は、無人の工場で、無人の荒野で作るわけではありません。働く人(労働力)があり、土地や資源があり、それを運営する資本が必要です。 

そしてさらにそれらを円滑に動かす社会のシステムである教育や医療、保険、交通、法律、社会秩序があり、食糧もその基盤の大事な一角をなしています。 

これらがすべてうまく噛み合っているから生産ができて、製品が生まれるのです。このような社会システムを「広義の生産要素」と言います。 

この「生産要素」は簡単に市場に委ねることができません。労働、資本、資源、交通、教育、、そして食糧といったものには、一定の規制が必要であり、、国や社会が責任をもって維持していくものだからです。 

「「それは私たちの社会生活の安定性と深く関わっているからだ」と佐伯氏は言います。 

ところが、現在のTPPで進められているのは、米国によるこの「広義の生産要素」の全面開放なのです。 

米国が求めているのはまさに、日本社会の基盤とでもいうべき、労働、投資、金融、医療、保険、公共事業(政府調達)であり、農業という命の糧です。 

佐伯氏はこう警鐘を鳴らします。

「ところが今日のアメリカ型の経済は、生産要素も生産物も区別しない。市場経済も社会生活(を構成する生産要素も)重なり合っている。すべてが自由競争原理でよいとみなしている。ここに(日本と米国との)大きな経済観の違いがある。」(カッコ内引用者) 

そしてこのような結論を述べます。 

「私には、人間の社会生活に密接に関連した生産要素や公共的資産を自由な市場取引から保護することは、決して特異で閉鎖的な経済観だとは思われない。それを国を開くか、閉ざすかの選択だ、などというレトリックでごまかすわけにはいかない。」

TPPについて声高に「開国しないと世界孤児になる」と根拠のない危機を叫ぶ人がいます。もう充分にわが国は低関税であるにも関わらず、です。 

あるいは、TPP協定書の全訳すらないにもかかわらず、「バスに乗り遅れるな」と言う人かいます。慌てて乗ろうとするバスがどこに行くかを見もしないで! 

政府は、TPP交渉は既に9割9分終結しており、日本が交渉参加できたとしてもわずか2か月ていどしかないことを隠し通しています。 

そこまでして、TPPをやりたい理由が私には皆目見当がつきません。国のなりたち、、社会が伝統的に作り上げてきた「広義の生産要素」である社会基盤を破壊してまで得られるのはなんなのでしょうか。

 

■写真 わが家の欅。植えて15年。ずいぶんと大樹になりました。今日はモノクロで。

2011年11月21日 (月)

除染は、土地の広さ、使用目的、土質、汚染濃度によって違います

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ひさしぶりに茨城に深度5という強震がきました。お見舞いありがとうございました。被害はありませんので、ご心配をおかけしました。

やっと5月までの日常的な揺れが終わったと思ったらまたかよ、と嘆いております。まだ東日本の地殻は不安定なようです。
 

さて、杏ママ様から頂いたコメントにお答えしましょう。こ質問はおおよそ2点です。 

初めは削土のことです。私はこのことについて何回か記事を書いていますので、そちらも参考にされて下さい。(資料1参照)

数日前、新聞に、、地表2cmまでにセシウムのほとんどがある、という記事がありました。2cmならば、土を削ることができて、それで、8割除去できたら、畑を効率的に除染できたのではないでしょうか?15cm削ったら畑の重要な土を消失してしまいそうですが 

この「除染」ということは一括りにできないことを知って下さい。除去する場所の広さや使用目的、汚染濃度で考えねばなりません。 

●まず、広さについては、住宅の庭と農地ではまったく広さが違います。
・住宅の庭・・・10坪ていどだと想定します。
・農地・・・・・・・狭い農地でも平均2ヘクタール((約6千坪)以上あります。
 

農水省が飯館村でやった除染実験をやってみて分かったのは、10aあたり3時間かかっています。2名の作業者が必要です。(資料2参照) 

2ヘクタールだとこの20倍になります。60時間の2名ですから、120時間マンパワーです。1日8時間丸々働いて、15日、半月といったところですか。う~ん。

これにセシウム凝固剤のマグネシウムや、土埃を抑える散水や移送を加えると数割増の時間がかるでしょう。 

この持ち出した土だけでおそらくは数千トンになるはずです。この保管場所を畑の中に置くとちょっとした炭鉱のボタ山ができることになります。 

この移送だけで、仮に千トンとして8トンの大型ダンプで125台。もはや農作業というより、土木工事ですね。 

残念ながら、これで終わったわけではありません。元の使える土に戻さねば生産基盤としての農地が再生したことにはなりません。 

ただ剥いだだけではだめで、これに客土をし、元の肥沃な地味にするために膨大な堆肥を入れねばなりません。 

客土だけで先ほど剥いだ量と同じ量の新たな土を持ってこなければなりません。剥いだままだと窪地になって、雨水が溜まって池になって海老の養殖ができますもんね(笑)。

というわけで、またどこかの土を削って、移送して投入して、均してという土木工事をせねばなりません。またダンプ百数十台です。

堆肥は10a当たり最低でも5トン、2ヘクタールで100t。3トンダンプで約30台。移送と散布の手間にとどまらず、これだけの堆肥を確保するだけで至難の業でしょう。

●次に土質です。 

「表土下2㎝」というのも、その土質が砂質であれば、はるか下まで沈降しています。今回の暫定規制値を超えた米が検出された大波地区や、その前に500bqだった二本松などのケースはこれです。 

表土付近で粘土が結着していない場合、その除去は非常にやっかいになります。というのは、お分かりのように、表土下数十㎝まで削り取る必要が出てくるからです。 

福島第1原発付近の海岸沿いの農地は砂質の土地が多いと思われます。となると、この除去を削り取りでやるとなると、膨大な手間とコスト、そしてその処分がのしかかってくることになります。 

使用目的を考えてみましょう。 

子供が遊ぶ校庭や家の庭、公園などと、農地は使用目的が違います。
・校庭、自宅の庭、公園・・・子供が直に地表に触る可能性があります。
 

洗えば放射性物質は確かに落ちますが、親の神経が休まらないでしょうから、5㎝ほど表土を剥がすのは有効な手段です。

農地・・・農地は作物を作る生産基盤です。 

要するに作物に放射性物質を吸わせなくさせればいいとテーマを立てます。ゼオライトなどの粘土を入れて結着させたり、堆肥の木質(バーク)に吸わしたり、ロータリーでかき混ぜて拡散させる方法が有効です。 

汚染濃度によっても異なります。  

濃度が高い高線量被曝の土地と、さほどでもない低線量から中線量被曝の土地は区別して考えるべきです。 

福島県の避難地域内の土地は数万ベクレル/㎏の土地がよくあります。時に十万ベクレルを超えるホットスポットもあります。 

このような高濃度に汚染されてしまった土地と、同じ福島県でも内陸部ではまったく違います。内陸部は百から数千ベクレルに止まっています。隣県の茨城県も、だいたいそのていどの線量です。 

この違う被曝のしかたをした土地を一律に対策を考えるのはいかがなものかと思います。高線量地域には、それにふさわしい方法があり、低線量地域にはまた別な方法があることを知って下さい。  

いちおうの汚染地域区分は、私見ですがこのようなものです。単位はベクレル/㎏です。 

低線量地域
・レベル1・・・・0~200bq未満
・レベル2・・・・200以上~500未満
 

中線量地域
・レベル3・・・・500以上~1000未満
・レベル4・・・・1000以上
・レベル5・・・1000以上~5000未満
 

高線量地域
・レベル6・・・5000以上~2万5000未満
・レベル7・・・2万5000以上~5万未満
・レベル8・・・5万以上
 

これのレベル区分は閾値ではないのですから、白黒二分法ではなくなだらかなグラデーションだと思って下さい。そう考えないと、1001bqは高線量地域なのかというバカなことになりかねません。あくまで目安にすぎません。

・高濃度汚染の土地の除染・・・除染作物のひまわりや菜種を低濃度の土地に植えてもほとんど吸いませんが、高濃度の土地では有効に放射性物質を吸収します。 

・低・中濃度汚染の土地の除染・・・除染作物はあまり意味がありません。むしろゼオライトや深耕ロータリーによる「封じ込め」をお勧めします。 

以上の要素を組み合わせて、各々最適な除去方法を選ぶべきだと思っています

もうひとつのご質問は土埃の吸入による内部被曝の問題です。 

粘土質の畑の土にセシウムが吸着され、作物に移行しないから作物は安全、、というのは、わかるのですが、では、その畑で作業する方々の健康が心配です。
畑の土壌にセシウムがあるかぎり、作物に移行して都会にセシウムが出荷されないとしても、外部被曝によって作業する方々は被曝するでしょう。さらに土埃を吸い込むことで内部被曝が避けられない、、、、。
ちょっと心配になりました。
 

ご指摘のとおりです。確かにこの問題は重いと思います。 

率直に言って農業でこの対策は考えられていないのが現状です。と同時に、低線量被曝については、未だ解明されていないのも事実です。 

ウクライナ、ベラルーシにおいては、初期の高線量の放射性ヨウ素の吸引や被曝したミルクによって、沢山の甲状腺ガンが発生したのはご承知のとおりです。 

しかし、放射性セシウムとガンの因果関係には諸説あります。公的資料において、放射性セシウムとガンの因果関係は疫学的には証明されていません。ただし、だから安全だ、などということではもちろんありません。

低線量被曝の中心はこのセシウムなので、今の段階では低線量被曝については、どのような健康被害が出るのか分からないので極力排除していこう、という段階です。

もの足りないかもしれませんが、農業現場としてはそれが実情です。 

建設的なコメントをありがとうございました。またどんどんご質問ください。わかる範囲でお答えしていきます。

■写真 去年の冬のわが家の三バカ小犬たちです。左からモナカ、モカ太郎、ミルクです。食べ物シリーズのネーミングです。安直ですいません。大飯食らいなので、今はこの数倍になってしまいましたが、ノーミソはあいかわらずの小犬のままです。

             ゜。°。°。°。°。°。°。°。゜。°。°。°。

■資料1 過去記事 「続セシウム除去Q&A」 1回~3回
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2011/08/post-6ca7.html

■資料2 農水省の飯館村での実験概要
http://ww.s.affrc.go.jp/docs/press/pdf/110914-09.pdf

〇表土削り取り

1.概要
農地に降下した放射性物質は、土壌の表層に集中して存在している。従って放射性物質を含む表層の土壌を除去することで、汚染された農地を利用可能な状態に回復できると考えられる。そこで、物理的に農地の表土を除去する技術を開発することを目的として試験を行った。

2.作業の流れ
砕土→削り取り→土壌の搬出・土のう詰めの作業手順で行う。

1)砕 土:農業用トラクタにバーチカルハローを取り付け、ほ場表面を浅く(4~5cm)砕土し、膨軟にする。

2)削り取り:農業用トラクタにリアブレード(排土板)を付け替え、砕いた表土を圃場の短辺方向に5~10m 毎に削り取り、集積する。

3)排土・土のう詰め:農業用トラクタのフロントローダで、集積した表土をダンプトラックに積み込み、ほ場外へ搬出し、バックホー等で土のう袋に詰める。

3.結果と考察の概要(表1、2参照)
1)水田の表土を約4cm(10a あたり約40m3)削り取ることにより、土壌の放射性セシウム濃度は10,370 Bq/kg から2,599 Bq/kg に低下した。除去の前後で土壌表面の空間線量率は7.14 μSv/h から3.39 μSv/h に低下した。削り取りまでの作業時間は10a あたり55~70 分かかった。

2)削り取った表層土壌の排出と土のう詰めに最も時間を要した。特に排出土の運搬を効率的に行う工夫が必要である。

3)所要作業時間は、ほ場条件、オペレータの熟練度、排出運搬距離などにより異なる。

4)作業により発生する土ほこりや粉塵による作業者の内部被ばくを防止する措置を講ずる必要がある。

5)放射線量の高い農地では、排土の放射性物質濃度が10 万Bq/kg を超えないよう、厚めに削り取ることを検討する必要がある。

■土壌中放射性セシウムの値(単位Bq/kg、表層15cm)
・削り取り前 ・・・ 10,370 bq 
・削り取り後・・・・2,599
・排土・・・・・・・・・
44,253
・低減率・・・・・・・75%

表2:作業別所要時間(10a 当たり)

・砕土 ・・・15~20 分 
作業者・・・ 1名
必要器材 ・・・トラクタ、バーチカルハロー
 

・削り取り ・・・40~50 分
作業者・・・1名
必要器材 トラクタ、リアブレード
 

・集積・排土・・・ 70~85 分
作業者・・・2名
必要器材・・・トラクタ、フロントローダ
 

・袋詰め・・・ 15~20 分
作業者・・・2(バックホー1、
補助者1バックホー、大型土のう、土のうスタンド作業
 

・所要時間計・・・140~175分 

※ほ場に雑草がある場合に行う除草作業は含まない。

2011年11月20日 (日)

TPP外国人労働者で地方はどう変わるか

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ひとつの地方にTPPが襲来するとどうなるのかを考えてみました。

日本の地方は、TPP参加諸国のそれと同列にはなりにくいのです。というのはボリュームが違いすぎるのです。

東京都だけで韓国と同じ経済規模があります。埼玉県だけでポルトガル一国のサイズです。

ですから、TPP参加諸国からすれば、一国規模の経済ボリュームが垂涎の的にならないはずがありません。

私の住む茨城県鹿行地域は地方空港と、隣接する県工業団地を持っています。入居企業ゼロで県にとって頭痛の種です。

こんな侘しい光景はよくあるんじゃないでしょうか。こんなしょぼいわが地域にTPPが来るとどうなるでしょうか。

案外わが地域はにぎやかになるかもしれません。ただし、それは政府のいうような地域活性化ではありません。

というのは、「Made in Japan」というブランドを求めてくる海外企業にとって、地方空港とスカスカの県工業団地という組み合わせほどそそるものはないからです。しかも首都圏ときています。

海外企業はここにまずは軽工業の工場を建てます。プラスチック成形とか布製品です。100円ショップの常連を思い浮かべればいいと思います。

マレーシアやベトナムあたりの華僑資本などが建てた工場に働くのは,、地元の日本人でしょうか?

わけはありません。TPP加盟国のマレーシアか、ベトナム人の安い労働力です。

海外投資家が作ったペナペナの工場と、そこで働く外国人労働者。そして彼らは超円高で安価に入ってくる原材料を使って、「Made in Japan」の商品を量産し、首都圏に出荷していきます。

軽工業から、本格的な生産工場にやがて移っていくかもしれません。

なんていっても、「Made in Japan」!国際市場で競争力が違います。日本人がまったく関わらなくとも、「Made in Japan」です。

そしてやがて、工業団地付近に、外国人労働者街ができていきます。アパート、飲食店、食材店、宗教施設、風俗店などです。

TPPには終わりがありませんから、しっかりとした労働ビザが発給されて、今までのように入管の摘発にビクつく心配はありません。

いったんこのような定住化が進むと、口入れ屋も栄えることでしょう。激安の輸入品と競わされいる農村や工場に時給300円くらいの外国人労働者が続々と派遣されていきます。

とうぜんのこととしてわが県の失業率は急速に上昇していきます。また賃金もみるみる下がってきます。なにせ、日本人労働者の下にもうひとつの外国人労働者という階層が大量に生まれるからです。

確実に日本の雇用情勢は悪化し、賃金は半永久的に低位安定してしまいます。

国内企業、特に中小企業は競争力を失って、みずからも日本人に替えて外国人労働者を大量に雇うか、海外移転せざるをえなくなっていくことでしょう。

また、外人労働者同士が結婚して子供が生まれますが、それは日本国籍を取得できますし、地元の学校に進むことができます。

外国人労働者は、自分たちの民族で固まって居住し、日本語を覚えず、自国の習慣どおりの生活をすることが可能です。

こうなると、ぜったいに外国人労働者は母国に帰らないでしょう。ヨーロッパ諸国のように外国人労働者地区が生まれます。場合によっては、英仏独のように地元民と紛争が起きる可能性もあります。

そして今、民主党が積極的に進めている外国人参政権法案が成立すれば、これらの外国人労働者に地方参政権が与えられ、ちいさな市町村では外国人議員が市政を握ることもあるかもしれません。

このようにしてTPPは政府の言うとおり「アジアの活力を取り込んで」、地方を「壊国」していくのです。

■写真 ゆずがたわわに実りました。今年は肌が悪いですが香りがいい。

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野田首相は中韓ともFTAをしたいようです。この人は徹底的に日本を壊しまくりたいようです。

日中韓、早期FTA交渉入りを確認
朝日新聞11月20日

野田佳彦首相と中国の温家宝(ウェン・チアパオ)首相、韓国の李明博(イ・ミョンバク)大統領による日中韓首脳会議が19日昼、35分間にわたって開かれた。日中韓自由貿易協定(FTA)の早期交渉入りを確認し、3国間の投資協定についても合意をめざすことで一致した。

 会談冒頭、野田首相が「3国間協力の進捗(しんちょく)と今後の方向性を確認し、地域・国際情勢について率直な意見交換を期待している」と表明。これに対し、温首相が「お二人の指導者と、関心を持つ重大な問題で意見を交わし、中日韓の協力を強化したい」と応じ、李大統領も「3国の緊密な協力は北東アジア地域の安定と発展だけでなく、世界経済の回復にも貢献する」と指摘した。

 

 日中韓FTAをめぐっては、2012年をめどに3カ国の産業界・行政・研究者といった産官学による共同研究が進んでいた。今回の首脳会議では、期限を前倒しして年内に終了させることを再確認した。3カ国FTAの早期交渉入りにつなげる狙いだ。

もう大笑いですね。推進派の産経が自社のアンケートでこんな結果を出してしまうなんて。

■テーマ「TPP問題」 産経新聞2011.11.18 07:21  

政府の説明不十分」94%  

 「TPP問題」について、15日までに9125人(男性6527人、女性2598人)から回答がありました。  

 「TPP交渉参加は日本に利益をもたらすか」については「NO」が87%に達しました。「交渉参加をしても不利になった場合は離脱できると思うか」は「思わない」が89%と大多数を占め、「政府の説明は十分か」については「NO」が94%と圧倒的大差をつけました。

 (1)TPP交渉参加は日本に利益をもたらすか  13%←YES N O→87%  

 (2)交渉参加をしても不利になった場合は離脱できると思うか  

 11%←YES N O→89%  

 (3)政府の説明は十分か  

  6%←YES N O→94%

 

 

 

 

 

 

2011年11月19日 (土)

農の営みが最大の「放射能との闘い」ではないのか


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昨日、ひさしぶりに乱暴なコメントが来ました。
 

内容的には支離滅裂でなにを言いたいのか分からないようなものなのですが、ひとつの特徴があります。 

それは「消費者は被害者だ」、とでも言いたげな口調です。 

「消費者は安全なものを食べる権利がある。しかし農家や行政は裏切っている」、ということのようです。そして被害者意識むき出しで怒鳴り込んできます。 

少しでも放射能を減らす努力を一緒にしよう、というのではなく、ただただ私たちを叩くことでストレスを発散させているようで、実に不毛です。

このような人たちは、誰が放射能との闘いの最前線で闘っているのかわかっていないのです。 

最前線にいるのは私たち農業者です。そのことを少しお話します。 

今年の3月の原発事故が起きた時、私は暗澹たる気分になったことを思い出します。数十年続くであろうトンネルの中に入ってしまった、という気分でした。 

大地には放射能が降り積もっており、一木一草まで汚染されているのだろうな・・・、と考えると、今まで見ていた田畑や村の風景までもが別の異様なものに見えてきました。 

ともかく無条件に怖い。福島第1原発がある北から風が吹けば怯え、土埃を吸うことさえ恐ろしいのです。 

事実、これは後に知ることになるのですが、放射能の「見えない雲」は3月21日午前6時頃に私たちの頭上を通過していたのです。 

友人が冗談半分に、「オレたち村ぐるみで第5福竜丸に乗っちゃったのかな」、と言いました。 

毎朝、起きて県のモニタリング数値に目を通すことが日課になり、それすらもどかしく、自分でもガイガーカウンターを買い込みました。放射能関連の本も手に入る限り買い込みました。 

まっさきに計ったのは田畑でした。村の中をガイガーカウンターを持って走り回ったような気がします。そしてわずかの数値の上下に心臓が縮む思いがしました。 

今になると、大昔からやり続けてきたことのようです。わずか8か月前の話なのが不思議なくらいです。

春真っ盛りに花を楽しむ余裕もない私に襲ったのが、前代未聞の不買でした。壊滅的と言っていいような何も売れない状況が続きました。 

学者や県は耕すな、と警告しましたが、春に耕さないような農家は農家ではありません。 

水がぬるみ、地温が上がり、大地はこんな年でも私たちを呼んでいました。 

「こんな時だからこそ、種を播こう」、というのが私たちのグループの合い言葉になりました。 

「とんでもない、汚染された野菜を食べさせるつもりか」、という声も沢山聞きました。というより、そのような声ばかりでした。 

震災直後にあった温かい支援の声はかき消され、耳を覆いたいような声ばかりが私たちを取り囲みました。 

罵声、罵り、蔑み。そして有名なある学者は、私たちを「テロリスト」、「詐欺師」とまで決めつけ、「絶対に食べるな」と言いました。 

やがて、「東日本はもうお終いだ」、という声すら聞こえ始めました。 

衝撃でした。農家が農地を耕し、作物を作ることがテロリズムだとは。計って安全を確認して出荷したものまで、東京の市場で危険なゴミのように箱も開けられずに棄てられるとは。 

金銭の問題ではなく、私たちが心の中でいちばん大事にしているものが踏みつけになっていきました。 

しかし、変わったのは私たち人間だけで、自然はなんの変化もしていませんでした。田んぼにはいつものように蜘蛛が朝露を光らせながら網を張っています。メダカは例年と変わらず、温水の中で泳ぎ回っています。 

麦の穂は風に気持ちよさそうに首を振り、野草は土を持ちあげて若芽を出しました。ツバメは今年も納屋に巣を作りにやってきました。 

なんの変わりもない。なんの違いもない例年どおりの春が、そこにあったのです。 

彼らは私たちに言っていました。「なにも変わらないよ。変わったのはあんたらの心の方だ」。 

そしてあれから250日。土の放射線量は着実に低下しています。もはや100ベクレルを超える田畑のほうが少ないくらいです。

そして作物はことごとく、検出限界以下です。 私たちが春に想定した何百分の1以下の線量でした。

こんなことが3月に予測できたでしょうか。私たちは、セシウムの半減期が来る30年の間、苦しみ続けるのだと覚悟していたのですから!

これは奇跡だと思いました。

ただ、私たち人間が起こしたのではなく、土地の粘土や腐植物質がセシウムをはがい締めにし、ゼオライトが分子の隙間の牢獄に幽閉し、地虫や微生物が食ってくれたのです。

私たちがしたことは、ただ最初の一歩である「耕す」ということをしただけです。大地とそこに住む生物は、耕されることで空気が入り、活性化し、混ざり合い、溶け合い、放射性物質をという外敵と立ち向かってくれたのでしょう。

私たちは大地とそこに小さい生物に助けられたのです。彼らの浄化力に救いだされたのです。

答えは、高価な除染資材にあったのではなく、私たちの足元にあったのです。私たちのこの気持ちは、今や確信に変わりつつあります。

飯館村で、今もっとも有効な「除染」をしている人々は、避難区域に残ることを選んだジィちゃん、バァちゃんたちでした。

彼らの作る畑がもっとも確実に放射線量を下げていく働きをしています。

農業は耕すこと。種を蒔くこと。堆肥を入れて豊かに保つこと。・・・このなんでもない農の営みが最大の「放射能との闘い」ではないのか、と私は思っています。

その意味で、私たち農家は放射能の闘いの最前線にいます。肩の力を抜いて、日々淡々と土と生きることを通して。

2011年11月18日 (金)

福島市で暫定規制値を超えるコメが発見された。事前にホットスポットを見つけ出さなかった失敗だ

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福島市大波地区のコメから暫定規制値を超える630ベクレルの放射線量が検出されました。(資料2参照)

今まで、出荷前の予備検査と出荷後の本検査と複数回の検査をしたにもかかわらず基準値をうわまわったものが発見されたことになります。

大波地区は福島市東部の山間地にあり、山林に沿って小規模の田んぼが散在する地域です。

この基準値超えを出した地点は、林に囲まれた川沿いの地形です。谷津田と私たちが言っている地形だと思われます。

この地形は、500ベクレルのコメが検出された福島県二本松市の地形によく似た地形だそうです。 

二点ほど指摘しておきたいと思います。

まず第1点ですが、このような山間地の山林に接する水田の「水口」(みなくち)、つまり取水口付近は山林の放射性物質を帯びた落ち葉が流入して汚染度が高い場合があります。 

新潟大学農学部土壌研究室・野中昌法教授研究室が、9月16日、24日の稲刈り前に行った調査結果をご覧ください。(資料1参照) 

採取場所は森林から沢水が流入する水口、その下の中央部、そして水田の終末部分の水尻です。

たとえばB地点をご覧ください。

B地点の土壌放射線量
・水口・・・・4500bq/㎏
・中央・・・・1900

・水尻・・・・1200

水口付近は付近の山林から流入する放射性物質を帯びた水によって汚染度が高く、下の中央部、水が出ていく水尻では徐々に低くなっているのが分かります。

明らかに、今回の暫定規制値を超えた水田は沢水が流入する地点にあり、ホットスポットだったであろうことは間違いありません。

おそらくは土壌を計測すれば、土壌暫定規制値を超える5000ベクレル超の測定値が出るはずです。

また、土質が粘土質ではなく、水口にありがちな砂地だったそうです。粘土質の土壌と違い、砂地はセシウムを結着しないのです。

次に2点目ですが、なぜこのような明らかに危険だと思われる地点が事前にスクリーニングで発見できなかったのか、という計測方法の問題です。(資料3参照)

国の計測指導方法は誤っています。市町村単位で合併前地域ごとに数カ所採取するわけですが、この地点はおそらく重点検査地域だったと思われます。

にもかかわらずなぜ検査で引っかからなかったのでしょうか。おそらくは、ホットスポットとおぼしき地点を測定せずに、たぶん水田中央部で計測してしまったのです。

厚労省監視安全課は、「予備検査と本検査で何カ所も調べ、すべて規制値以下だったのに、なぜ今ごろ規制値を超えるコメが出るのか。消費者の信頼を得るには、いったん出荷停止とし原因を究明する必要がある」。(毎日新聞)

などととぼけたことを言っていますが、ホットスポットがいかなる地点で生じるのか、まったく無知だったとすれば、監視安全課の看板など棄ててしまいなさい。不勉強にもほどがあります。

下の写真は私たちが行っている測定の風景ですが、周囲を山林に囲まれた山際の水路がある地点をあえて選んで計測しています。

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機械的に地域をメッシュで割って計測してみてもホットスポットは見つかりません。

計測する目的は、安全宣言を出すためではなく、逆に危険な地点を探し出すことだったはずです。

出そうもない場所を選ぶ心理はわからないではありませんが、そのような気持ちが今回のように出荷が始まって安全宣言を出した後に見つかるという最悪の事態に繋がったのです。

ホットスポットは限られています。 私たちがホットスポットと考えたのはこのような地点です。

・舗装された道路や森林からの水が流れ込む水口
・ハウスの周辺部
・森林との境
・森林の風雨が当たる前衛の立ち木の根付近
・樹木の皮
・耕耘していない土地
・草地あるいは牧草地
・雨樋の出口付近

・側溝と汚泥

このような場所を重点的にスクリーニングすれば、必ずホットスポットはあぶり出せます。見つかれば、その地点を徹底的に放射能除去作業をすればいいのです。

今回のことを教訓に、「スクリーニングはホットスポットを見つけ出すためのもの」という目的を徹底しましょう。二度とこのようなことを繰り返さないために。

■写真 真夏のわが村の水田風景。 

         ゜。°。°。°。°。°。°。°。゜。°。°。°。

 

■資料1 新潟大学農学部土壌研究室・野中昌法教授研究室 
9月16日、24日の稲刈り前に行った調査結果
 

■A地点
➊土壌表面(1㎝)の空間線量(マイクロシーベルト)
・水口・・・・・・1.3
・中央・・・・・・0.83
水尻・・・・・・・0.73
 

➋地表下20㎝・乾土の土壌線量ベクレル /㎏・セシウム134・137の合計)
・水口・・・・・3000
・中央・・・・・2600
・水尻・・・・・2600
 

■B地点
➊同上の空間線量
・水口・・・・0.83
・中央・・・・0.6
・水尻・・・・0.52
 

➋同上の土壌線量
・水口・・・・4500
・中央・・・・1900
・水尻・・・・1200
 

■C地点
➊同上の空間線量
・水口・・・・0.58
・中央・・・・0.51
・水尻・・・・0.63
 

➋同上の土壌線量
・水口・・・・2600
・中央・・・・2200
・水尻・・・・2600
 

■D地点
➊同上の空間線量
・水口・・・・1.58
・中央・・・・0.48
・水尻・・・・0.56
 

➋同上の土壌線量
・水口・・・・2850
・中央・・・・1800
・水尻・・・・1900
 

■E地点
➊同上の空間線量
・水口・・・・1.52
・中央・・・・1.05
・水尻・・・・1.05
 

➋同上土壌線量
・水口・・・・6200
・中央・・・・3900
・水尻・・・・2600
 

以上の調査でわかったことは、沢水が流入する水口付近は空間、土壌線量共に高く、それが中央部に行くにしたがって下がり、出口の水尻付近では更に下がるという結果でした。 

■資料2 放射性セシウム:福島市のコメから規制値超630ベクレル 

毎日新聞 2011年11月16日

◇政府が出荷停止検討
 

 福島県は16日、福島市大波地区産のコシヒカリ(玄米)から国の暫定規制値(1キロ当たり500ベクレル)を超える放射性セシウム630ベクレルを検出したと発表した。コメの暫定規制値超過は全国で初めて。政府は同地区のコメを出荷停止にする検討を始めた。【清水勝、佐々木洋】 

 県は同日、大波地区の稲作農家154戸に出荷自粛を要請。厚生労働省は県に対し、同地区や周辺で収穫したコメのサンプル検査の強化と、既に流通したコメの追跡調査を要請した。 

 県や市によると、今月14日、地区内の一農家が自宅で消費するために保管していたコメの安全性を確かめようとJAに持ち込み、簡易測定器で測定。高い数値が出たためJAが福島市に連絡し、県で詳しく検査した結果、玄米で630ベクレル、白米で300ベクレルを検出した。農家はこのコメの出荷も予定していたが、まだ市場には出回っていないという。 

 大波地区は東京電力福島第1原発から約60キロ離れた中山間地で、154戸の稲作農家がある。原発事故による放射線量が比較的高く、福島市は10月18日から地区の全世帯を対象に、本格的な除染作業を進めている。この農家の水田はくぼ地にあり、沢水を使っているといい、周囲の放射性物質が蓄積された可能性があるとみられる。コメは収穫後に天日干ししていたが、市は「セシウムの濃度が高かったこととは関係がない」としている。 

 原発事故を受け、政府は17都県を対象に収獲前の予備検査と収獲期の本検査を実施。大波地区では9~10月に予備検査を1地点、本検査を2地点で行い、検出値は28~136ベクレルだった。県内すべての検査が終了し、佐藤雄平知事は10月12日、県産米の「安全宣言」をしていた。 

 厚労省監視安全課は「予備検査と本検査で何カ所も調べ、すべて規制値以下だったのに、なぜ今ごろ規制値を超えるコメが出るのか。消費者の信頼を得るには、いったん出荷停止とし原因を究明する必要がある」と話している。

■資料3    米の放射性物質検査の実施方法

●空間放射線量が0.1マイクロシーベルトを超える市長村を予備調査

●本調査
➊一般地域・・・予備調査を行っていない市町村
              ・・・・予備調査の結果、一定の水準(200Bq/kg)以下であった市町村
              ・・・・・検体数400予定
 

➋重点調査地域・・・予備調査の結果、200Bq/kgを超えた市町村
                                      ・・・ 一般地域のアの市町村で、本調査を行ったところ、200bq/kgを          超えた市町村   ・・・15hで1点の検体
 

●出荷及び出荷制限 

 ・暫定規制値(500Bq/kg) 以下の場合、出荷

 ・500Bq/kgを超過した場合、旧市町村単位に出荷制限

 ・市町村全域で本調査が終了し、安全性が確認された時点で出荷可能。
   (早場米区域など市町村内で出荷時期に著しい差異のある場合は別途検討)

■資料4

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2011年11月17日 (木)

飯館村の奇跡。耕し、堆肥を入れ、種を蒔き、収穫するという営みの中で、放射能は急激に減少していた!

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昨日は生協の組合員さんに、私たちの放射能に対する取り組みをお話してきました。

このような組合員が参加できる放射能問題での取り組みは、まだこの生協連合ではされておらず、初めての試みだったとか。

意外ですが、そのようです。多くの産直組織は未だ組合員参加型の取り組みに至っていません。

というのは、流通対応がようやく整ってきたという段階だからです。流通での商品の放射能測定も、外注からようやく内部の品質管理室に移行したばかりのようです。

産直流通間の情報交換も一度はなされたようですが、暫定規制値に対する考え方の違いや、対策の立て方の違いが浮き彫りになって今は行われていないそうです。

もっとも遅れているのは、やはり組合員が自分の食べ物が生産される農地や自然環境を自分の目で見て、考えていくという取り組みがないことです。

これがされていないために、情報の電報ごっこのようになってしまっています。週刊誌や、テレビで面白おかしく流される情報が、どんどんと肥大して歪曲されて伝わっていってしまっています。

たとえば、昨日の消費者のお話でも、5ベクレルの煮干しに対する心配が話されていました。私はいかなる心配もない線量だと思いますが、生協は慮って供給を若いお母さん向け媒体では自粛してしまいました。

お母さんに怖いと言われると、無理に出しても恐怖心を煽るようなものだ、という生協側の気持ちもわかるのですが、ほんとうにそれで解決に近づいていっているのだろうかという気分にさせられました。

消費者は、これなら安全ですと言い切って欲しいのでしょうが、それを言い切れない供給側の苦しさが分かりました。

さて、昨日は茨大農学部の中島紀一先生がおだやかな口調でじっくりと、「農業が放射能を除去する最前線にいるのですよ」、というお話をなされました。

先生は福島の二本松を中心として調査支援活動を続けておられます。

先生が話された飯館村のお年寄りの話は心に残りました。

飯館村は今、元の薄の野原に戻りつつあるそうです。ほとんどすべての畑が耕作できない状況になったからです。

若い人や子供を持つ夫婦は避難してしまいました。残ったのは、もう誰がなんと言おうと、動かない。「死ぬのは生まれた村だ」と心に定めたこ老人ばかりです。

そのこ老人は、畑を耕します。あたりまえに日課として、土をいじり、種を蒔き、枝を選定し、土を寄せ、追肥を与え、収穫していき、食膳に乗せるのです。

そのようなわずかに残った老人夫婦の農地だけが、ポツン、ポツンと飯館村には残っています。まるで大海に浮かぶ孤島のようです。

この孤島にも子供や孫が休日に心配して見舞いに来ます。すると、ジジィやババァのほうが日焼けして元気一杯です。

そして土産に沢山採れた野菜を持たせました。しかし、その大部分が高速道路の休憩所で棄てられてしまったそうです。

子供たちに悪気はありません。ただそれを子供にはだ食べさせられないという一心です。こ老人はそれを知っても、また笑って土産にします。

「ほら、今年の枝豆は丸々としてうまいぞ。孫に食わせろ」。

そんなことが続いたある日、この土産の老人の作った野菜を放射能測定してみたのだそうですす。すると、ND!検出せずです!

驚いて、ご老人の畑や田んぼも計ってみました。もちろん放射能は検出されましたが、想像するような数万、数千ベクレルではなく、はるかに低い線量だったのです。

耕し、また耕し、堆肥を入れ、種を蒔き、収穫するという営みの中で、放射能を急激に減少させていたのです!

中島先生の科学的解説では、このようなプロセスがあったと思われます。

➊地中の粘土質がセシウムを電気的に吸着した。

➋堆肥の腐植物質が吸着した。

➌土中の微生物や地虫が取り込んだ。いったん微生物が吸収した放射性物質は根から吸収されにくくなる。

これにゼオライトなどの物理的吸着をつけ加えれば、もっと効果的でしょう。

このような地中の営みによって、植物の根からの放射性物質の吸収は大きく妨げられたのです。

この飯館のご老人の話は、私たちの経験と重なります。3月から4月中旬までは空間線量が高かったために野菜は外部被曝をして、それなりに高い線量でした。

しかし、私たちもまたこの春、種を蒔きました。種を蒔かない、稲を植えない春は考えられなかったからです。

そして土壌線量も計っていきました。3月期に500ベクレルを超える数値を出した農地も、この秋に改めて測定してみると100ベクレルを切る数値にまで減少しています。

農業をすることで確実に土壌放射線量は落ちるのです。

そして今、新たな爆発がないならば、土壌線量は空間線量を規定しますから、環境放射線量自体も下がっていきます。

こんなコロンブスの卵を、日本の学者は教えてくれませんでした。

いったん被曝したら、もうダメだ。土を剥げ、一カ所にまとめて覆いをしろ、フィルターをつけて燃やせ、そしてもっと高い線量地域では逃げろ、耕すなどもってのほかだ、と言いました。

それはやはり誤っていたのではないでしょうか。除去して、逃げるだけでは解決できません。

削り、棄てる、隔離するというだけではなく、まっとうな人の営み、土の営み、虫の営みに委ねてみてはどうなのでしょうか。

そんなことを改めて考えさせられた昨日の会合でした。

■写真 当地もそろそろ紅葉です。わが家には裏の山から移殖した自生のもみじがいつのまにか増えてもみじ林もどきとなっています。

2011年11月16日 (水)

野田首相舌先三寸は国際社会では通用しない

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野田首相という人は日本的あいまいさというのが、外国でも通用すると思っているらしいですね。 

帰国してすぐに国会で、「参加のための協議」に入る、というあいまい語が厳しい追求にさらされました。 

いやまぁ、日本語というのは便利ですな。この野田首相の表現では、TPPに「参加」するのか、そのための「協議」入りするのかがボカされています。 

目的語が、「参加」と「協議」のふたつあるのです。 

オバマ大統領やAPEC諸国に対してはTPP「参加」だといい、国内に対しては「協議」ですよと、いつでも「国益に範囲したら参加しないこともある」、つまりは「ちょっと内容を見てダメだったらクーリングオフしますからね」、と言うわけですから頭がクラクラします。 

もちろんこれは彼が出発の前日になって苦し紛れにひねり出したものにすぎません。本心は「参加する」だったのですが、それをいうと慎重派に大量脱党されてしまうから、なんとか山田さんたちのメンツを立てて、かつ規定路線でやるということでしょう。

こんなまやかしは日本国内だけで通用するのであって、国際社会では通用するわけはありません。アメリカ人がいちばん嫌うのはのテの日本人特有のあいまいさじゃないでしょうか。 

よせばいいのにオバマ大統領との会談でもこのアンパンマン流あいまい語を言ってしまったようです。 

野田首相が、オバマ大統領に言ったことが麗々しくホワイトハウスのHPに乗っています。(資料1参照) 

「Readout by the Press Secretary on the President's meeting with Prime Minister Noda of Japan」
http://www.whitehouse.gov/the-press-office/2011/11/12/readout-press-secretary-presidents-meeting-prime-minister-noda-japan

問題はこの部分です。 

Noda's statement that he would put all goods, as well as services, on the negotiating table for trade liberalization 

野田首相は、すべての商品、およびサービスを貿易の自由化のための交渉のテーブルに乗せると声明した。 

もしこの野田発言がオバマ大統領との会談で言われたとすれば、「交渉への協議」というあいまい語ではなく、明瞭に「すべての商品、及びサービスの自由化を交渉対象とする」参加表明を言った、ということです。 

考えてみれば、TPPとはそもそも「すべての商品とサービスを自由化する」ことですから、このようなことは大前提で読むと、特に驚くに値しません。 

野田首相は往生際悪く、そんなことは言ってないよ、と国会での追求に対して答えていましたが、ならば会談議事録を公開されたらいかがでしょうか。

既に民主党は、菅政権の時に、「センシティブ品目について配慮を行いつつ、すべての品目を自由化交渉対象とする」と決定してしまっています。

米側はとうぜんこの菅政権の新自由主義路線が継承されてTPP参加になったと理解していますから(そのとおりですが)、「すべての商品、サービスの自由化を交渉対象にする」と理解したのでしょう。

これを国に帰るや野田首相が言ってない、と否定してしまったのですから、オバマ大統領からすれば、「あんた一体なにしにハワイに来たの?」、ということになります(笑)。

なにか野田首相の脳味噌のようにゴチャゴチャしてきましたから、まとめてみますね。

➊「すべての商品、サービスを自由化交渉の対象とする」・・・・TPPに参加する

➋「そのようなことは言っていない」・・・・TPPに参加しない

➌「参加協議に参加する」・・・・すべての商品、サービスを自由化するとは言わないが、すべての商品、サービスを自由化するTPPの参加協議には参加する(なんじゃこりゃ?)

書きながら吹きだしてしまいました。もう支離滅裂、はっぱふみふみ(古いね)。

いいかげんな口先三寸を言うと、後で帳尻が合わなくなるという見本です。いい子はまねしてはいけませんよ。

彼は既にISD条項を「知らなかった」と言ってしまっているので、ひょっとしてTPPはなにをする条約なのかホントはよく知らないんじゃないのでしょうか。

いずれにせよ、米国側には「修正要求はしない」そうですから、日米間では「すべての商品、サービスを交渉のテーブルに乗せると野田首相は発言した」が公式記録とされます。(資料4)

こんなていどの人が主導するTPP交渉。結果はもう見えました

          ゜。°。°。°。°。°。°。°。゜。°。°。°。

■資料1 ホワイトハウスHP オバマ-野田会談要旨  (太字は引用者)

The President and Prime Minister Yoshihiko Noda had a good discussion today on a range of issues, including APEC and the upcoming East Asia Summit, and next steps on Futenma relocation.  The leaders also talked about Japan's interest in the Trans-Pacific Partnership (TPP) agreement.  Prime Minister Noda noted that he had decided to begin consultations with TPP members, with an eye to joining the TPP negotiations.  The President welcomed that important announcement and Japan's interest in the TPP agreement, noting that eliminating the barriers to trade between our two countries could provide an historic opportunity to deepen our economic relationship, as well as strengthen Japan's ties with some of its closest partners in the region.  The President noted that all TPP countries need to be prepared to meet the agreement's high standards, and he welcomed Prime Minister Noda's statement that he would put all goods, as well as services, on the negotiating table for trade liberalization.  The President noted that he would instruct USTR Kirk to begin the domestic process of considering Japan's candidacy, including consultations with Congress and with U.S. stakeholders on specific issues of concern in the agricultural, services and manufacturing sectors, to include non-tariff measures.  Prime Minister Noda also explained the steps he had taken to begin to review Japan's beef import restrictions and expand market access for U.S. beef.  The President welcomed these initial measures, and noted the importance of resolving this longstanding issue based on science.  We are encouraged by the quick steps being taken by Prime Minister Noda and look forward to working closely with him on these initiatives.

 

■資料2   米「発表はそのままだ」…TPP発表食い違い
2011年11月14日11時33分  読売新聞
 

12日の日米首脳会談の内容をめぐり、米ホワイトハウスは会談後、野田首相が環太平洋経済連携協定(TPP)交渉に関し、「すべての物品とサービスを貿易自由化交渉のテーブルに載せる」と述べたと発表した。 

これに対し、日本政府は「発言を行った事実はない」と否定する文書を発表した。

 米側が文書で発表した会談概要によると、首相発言は、オバマ大統領が「すべてのTPP参加国は、協定の高い水準を満たす準備をする必要がある」と広い分野での貿易自由化を求めたのに対して答えたものだとしている。日本政府は、米側が発表した首相発言は「日本側の基本方針や対外説明に米側が解釈を加えたものだ」として、実際の発言ではないとの主張を米政府に伝えたという。 

 日本側の主張に関し、フローマン大統領副補佐官は12日の記者会見で「両首脳はTPPの包括的な議論をした。(米側の)発表はそのままだ」と述べ、訂正しない考えを明らかにした。 

■資料3 首相、国益損ねるならTPP交渉不参加も 

TBS系(JNN) 11月15日(火)19時56分配信 

 APECで日本がTPP交渉に参加する意向を表明した野田総理、15日の参議院予算委員会では「国益を損ねてまで参加することはない」と答弁しました。一方、野党側は、野田総理とオバマ大統領との会談に関する日米の発表の食い違いについて厳しく追及しました。

 「日米両政府の記者発表の中身が食い違っていたと、こういうハプニングがあったという報道がされていますが、それは事実でしょうか」(自民党・山本一太参院議員)

 自民党の山本議員がとりあげたのは、「日米首脳会談で野田総理が『すべての品目を貿易自由化交渉のテーブルにのせる』と発言した」とするアメリカ政府の発表です。

 「ひと言も言っておりません。そして、そうだったということはアメリカも認めました」(野田首相)


 日本政府からの指摘に対し、アメリカ側は、野田総理の発言としてはなかったことを認めたといいます。しかし・・・。

 「我々の発表文は、オバマ大統領と野田首相の非公式のやりとりと、これまでの首相や政府の他のメンバーの公式の発言をもとにしたものだ」(アーネスト副報道官)

 アメリカ政府は、発表の訂正はしない考えを明らかにしました。

 「事務的な調整不足であって、アメリカ側の悪意はない」(野田首相周辺)

 ポイントは、1年前の閣議決定です。「センシティブ品目について配慮を行いつつ、すべての品目を自由化交渉対象とし・・・」と書いてあります。

 野田総理は、会談で「菅・前内閣が決めた基本方針に基づいて」と発言したことから、アメリカ側が「すべての品目を自由化交渉の対象」と解釈したのも無理はない、と関係省庁の幹部は指摘します。

 「ちゃんと訂正を要求してください。抗議してください。どうですか」(自民党・山本一太参院議員)
 「事実でないということは明らかになったということで、私はそれをもって良しというふうに思います」(野田首相)
 「総理、日本の外交を率いていく資格ないですよ」(自民党・山本一太参院議員)


 いったん鉾をおさめた形の民主党内の慎重派も、この問題に反応しました。
 「野田総理に十分な時間をとっていただいて、この点をはっきりただしたい」(民主党・山田正彦前農水相)

 「アメリカ側は、日本の交渉に臨む姿勢がどこまで本気なのか、不安を感じている」(関係省庁幹部)

 首脳会談での総理の発言をめぐる「言った」「言わない」の日米の食い違い。これから日本との協議に臨むアメリカ政府の姿勢の厳しさを、早くも示した形と言えます。

 ところで野田総理は、慎重派が強く警戒している公的医療保険制度の自由化について、あり得ないという認識を示しました。

 「それぞれの公的な保険制度を根本から変えていくようなことを、やるわけがないと基本的には思います」(野田首相)

 ただ、コメについては自由化の例外と主張するかどうか明言を避けました。(15日17:38)

■資料4 <TPP>米声明は「正しい」 発言内容で大統領副報道官

毎日新聞 11月15日(火)10時32分配信

 【ホノルル白戸圭一】12日の日米首脳会談で環太平洋パートナーシップ協定(TPP)への交渉参加を表明した野田佳彦首相の発言内容を巡り、日米政府の説明が食い違っている問題で、アーネスト米大統領副報道官は14日の記者会見で、発言内容に関する米政府の声明は「正しい」と述べた。

 野田首相のTPPに関する日米首脳会談での発言を巡っては、米政府が会談後に「首相は全ての物品、サービスを貿易自由化交渉のテーブルに載せると述べた」との声明を発表した。しかし、この発言は、例外品目を残す可能性を示唆してきた首相の立場と異なるため、外務省は「発言の事実はない」と米側に抗議。外務省はその後、日本メディアに対して「米側も発言はなかったことを認めた」と説明していた。

 アーネスト副報道官は会見で「(米国の)声明は野田首相とオバマ大統領の会話に基づいて作成された」と述べ、声明を訂正する考えはないことを明らかにした。

2011年11月15日 (火)

TPPで来るであろう数年後の地方の未来

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TPP参加と言ったやいなや、鼻ヅラにUSTR(米通商代表部)カーン代表のきついジャブを一発食らったようです。(欄外資料1参照) 

こんなていどでオタオタする日本政府のほうが笑えます。全米自動車労組やビッグスリーはTPPに大反対で、これから半年の米議会での審議ではおおもめにもめることでしょう。 

そしてその都度USTRから日本政府に、「おい自動車の関税外障壁をなんとかしろ。たとえば、安全基準を低くしろしないとTPPにはいれねぇぞ」、などと事前交渉の席で言われ続けることでしょう。

「日本のTPP交渉参加に対し、米通商代表部(USTR)のカーク代表は11日に米国産牛肉の輸入規制撤廃、日本郵政への優遇措置見直しのほか、自動車市場の開放を事前協議のテーマとして例示した。」
(産経新聞11月14日)
 

TPP交渉は、TPP加盟が認められておもむろに始まるのではなく、参加表明と共に開始されるのです。私たちはこのことを肝に命じましょう。

さて、今の段階では、カーン代表は、自動車、郵政、牛肉の3分野を例示しただけですが、とてもじゃないが、こんなものは氷山の一角です。なにせ21分野(24分科会)もあるんですから。(資料2参照)

この中には「政府調達」がありますが、米国はオーストラリアにおいては、水道や水資源管理まで含んだ規制の撤廃と、海外投資家の参入をゴリ押ししました。

日本はTPPで、東北復興事業、農水産業などのインフラ整備まで餌食になる可能性が出てきました。(資料3参照)

政府調達とは、「公共施設の建設や公共サービスの入札」とされていますが、TPPにおいては海外投資家が国内企業より不利にならないために最恵国待遇の一段上の概念である「内国民待遇」を要求します。

これは、「海外投資家を自国民とまったく同列で待遇せよ」、ということで、おおよそ現代のこととは思えない19世紀的条項です。

いや、ISD条項という主権を超越したスーパー国内法がありますから、自国民以上の待遇となります。

建設業でも、「市場アクセス」にいかなる障壁がないことを要求されます。

たとえば、レーガン政権は1980年代に、米国は関西新空港の工事に米企業を参入させよと日本に圧力をかけてきました。

米国はとうに製造国を止めて金融国家になって久しいですが、こと建築業は数少ない得意な「作る」分野だからです。

この時は、1988年に大型プロジェクトに限って米企業に特別措置をすることで譲歩した経緯があります。

山田正彦前農水大臣はインタビューの中でこう言っています。

地方自治体の公共事業は23億円以上の案件に限ってできました。しかしTPPで公共事業の参入自由化となれば、地方の土木会社は致命傷を負うでしょう」。
(インターネットマガジン)

TPPにおいて、米国はまっ先に東北の復興特需に目をつけることでしょう。

未だ全貌すら分からない、おそらくは数十兆円にのぼるであろう、東北のインフラ復興に米国は、「内国民待遇」を錦の御旗にして大規模参入してきます。

そして一方で、農林漁業補助金によるインフラ整備にも待ったをかけつつ、米企業にとって有利な地位を占めようとします。

TPP交渉参加の議論で漁業補助金の原則禁止が論点の一つに浮上してきた。TPPでは漁港などのインフラ整備も禁止対象となる恐れがあるとされ、東日本大震災の復興の支障になりかねないと水産庁や漁業関係者は警戒を強めている。」
(北國新聞2011年11月2日)

たとえば、政府調達は地方自治体にも及びますから、米国は関税外障壁として国際語での入札システムを要求してきます。つまり英語で仕様書を書け、ということです。

地方自治体職員は泣きながら、馴れない英語で文書作成することになります。ここで既に負けています。

ついで、この事業は「農林漁業補助金であって、TPPでは原則禁止ではないのか」とイチャモンをつけます。

ほとんどヤクザのいいがかりですが、政府は補助金投入の必要性を挙証証明するはめになります。ここまでくればもう米企業の参入は約束されたようなものです。

その是認を条件として、ドカドカと土足で米企業は参入を開始することでしょう。

当然のこととして,、参入米企業の監督はアメリカ人、従業員はすべて東南アジアの安価な外国人労働者です。地域にはビタ一文落ちません。

山田さんなどの極小の例外を除いて、民主党政権の多くを占める松下政経塾出身者のお坊ちゃん方は、地方の事情をなにもご存じありません。彼らは机上の空論にふけり、パソコン画面でしか世界を見ていません。

だから巨大多国籍企業には目が行っても、中小企業は目に入りません。大都市に目が行っても、地方は視野の外です。

では、地方経済はなにで回っているのでしょうか。農業、漁業、その加工業、そして土木業です。

あくまでも第1次産業が中心にあり、そこから派生するさまざまな事業分野がすそ野なのです。都市部と違って農業・漁業と離れて土木業があるのではないのです。

地方の中小土木業は、農業、漁業のインフラ整備を主な仕事としています。道路、水道、水利、土地改良、漁港整備などですが、従業員もまた農家の季節労働者であることは常識です。

農業、漁業を源泉とするさまざまな土木工事こそが、地方経済の中核だと言っていいでしょう。

ここに海外企業が、安価な外人労働者を使って参入した場合、地本土木業は短期間で壊滅状態に置かれます。

巨大ゼネコンにとってはTPPは海外へのこれまで以上の侵出にしかすぎませんが、地方の大多数の土木業者にとっては、東北復興事業や地元のインフラ整備を根こそぎ奪われていくことになります。

かつての小泉改革で、地方はメチャクチャになりました。その疲弊から未だ立ち直っていません。そこに大震災があり、原発事故が重なり、東日本はカウント8ていどのダウンを喫してしまいました。

そこにTPPです。いいかげんにしてくれ!、と言いたい。地方は経済の中心である農林漁業を潰され、それを加工する製造業や運送業を潰され、土木業に至るまで壊滅するのです。

これがTPPで来るであろう数年後の地方の未来です。

■ 写真  森林から登る朝日ですが、天気の具合でこう写りました。

 

          ゜。°。°。°。°。°。°。°。゜。°。°。°。

 

■資料1 TPP交渉で日米自動車摩擦再燃懸念も

産経新聞11月14日

 米国がTPP交渉の事前協議の議題として日本の自動車市場開放を挙げたことが日本側に衝撃を与えている。TPPによる関税撤廃に期待してきた自動車業界にとって「まったく想定していなかった事態」(大手メーカー幹部)だ。業界内では「言いがかり」(別の大手幹部)との受け止め方が大勢だが、来秋の大統領選を控えるオバマ政権が米国業界の意向を無視できそうにない。日本側は日米自動車摩擦が再燃するかのような動きを懸念している。

 日本のTPP交渉参加に対し、米通商代表部(USTR)のカーク代表は11日に米国産牛肉の輸入規制撤廃、日本郵政への優遇措置見直しのほか、自動車市場の開放を事前協議のテーマとして例示した。

 米自動車政策評議会(AAPC)も「日本の自動車市場は先進国で最も閉鎖的だ」などと批判。米側はこれまでも、次世代エコカーの有力分野とされる燃料電池車を日本に持ち込む際の手続きが不透明だとして日本側に改善を求めていた。

 これに対して、日本側では「水素を扱う燃料電池車は現行法で危険物積載車扱いだが、これは米車だけでなく日本車も欧州車も同じだ」(日本自動車工業会幹部)と反論する。ただでさえ日本の国内市場が縮小する中で新たな市場開放を求められても対処できないというのが共通認識だ。

 日本側には、米国車が伸びないのは米側の努力不足だという認識が根強い。2010年の輸入車販売台数に占める欧州車の割合が8割程度なのに対し米国車はわずか4%。業界団体の幹部は「なぜ“アメ車”が日本で売れないのかを学んでいない。学習効果がなさすぎる」と切り捨てる。

 ただ、米業界とっては自動車関税撤廃の危機感は強い。すでに米国は韓国との自由貿易協定(FTA)で合意、韓国車の関税ゼロを認めており、日本車までゼロになれば死活問題となるためだ。米議会の超党派議員団も日本市場が参入障壁に当たるなどとする書簡をカーク代表に出し、政治問題の色彩を強めている。

 米国が日本の自動車市場の開放を求め、1995年に合意した日米自動車協議では、米側が日本に米車販売の数値目標を要望。日本企業の自主計画で要求の一部を受け入れた。日本側には今後、コメなどの関税撤廃を例外扱いとするための難しい交渉が待つ。そんな中で米側の要求が強まれば、自由貿易体制構築とは名ばかりの“ごり押し”が迫られる可能性もある。(太字引用者)

■資料2 TPP協定交渉の分野別状況http://www.npu.go.jp/policy/policy08/pdf/20111014/20111021_1.pdf
1.物品市場アクセス *農業も工業も含む無関税化のことを指す。
 2.原産地規則
 3.貿易円滑化
 4.SPS(衛生植物検疫)
 5.TBT(貿易の技術的障害)
 6.貿易救済(セーフガード等)
 7.政府調達
 8.知的財産
 9.競争政策
 10.越境サービス貿易
 11.商用関係者の移動
 12.金融サービス
 13.電気通信サービス
 14.電子商取引
 15.投資
 16.環境
 17.労働
 18.制度的事項
 19.紛争解決
 20.協力
 21.分野横断的事項

 

■資料3 「TPP 意見集約急ぐ民主
北國新聞2011年11月2日

漁業補助金禁止の恐れ
-TPP復興に支障を警戒

 TPP交渉参加の議論で漁業補助金の原則禁止が論点の一つに浮上してきた。TPPでは漁港などのインフラ整備も禁止対象となる恐れがあるとされ、東日本大震災の復興の支障になりかねないと水産庁や漁業関係者は警戒を強めている。

 漁業補助金をめぐっては、乱獲を招いて漁業資源を衰退させるとして原則禁止を訴える米国等と、これに反論する日本や欧州連合(EU)が世界貿易機関(WTO)の場で激しく論争中。政府は現在のTPP交渉でも「(米国などから)提案があるもよう」と指摘し、日本が参加する際の懸念事項に挙げている。

 日本は補助金の中には漁業制限への協力金もあるとし「過剰漁獲につながる補助金に限った禁止」を提唱した。
 全国漁業協同組合連合会は1日にTPP反対集会を開催。服部郁弘会長は「関税と補助金のどちらがなくなっても困る」と危機感を訴えた。』

2011年11月14日 (月)

民主党政権は新自由主義TPP改革をめざしていた

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ここに2つの「新成長戦略」があります。 

ひとつは、菅内閣が2010年6月に作った「新成長戦略」です。

二番目は、経団連の2010年4月に出した「経団連成長戦略2010」です。 

では、これら2つを対照しながら見ていきましょう。6つ分野があります。 

➊・グリーン・イノベーション、環境・エネルギー大国戦略(民主党)
 ・環境・エネルギー大国戦略(経団連)

➋・ライフ・イノベーションによる健康大国(民主党)
 ・健康大国戦略(経団連)
 

➌・アジア経済戦略(民主党)
 ・アジア経済戦略(経団連)
 

➍・観光立国・地域活性化戦略(民主党) 

 ・観光立国・地域活性化戦略(経団連」 

➍・科学・技術・通信立国戦略(民主党))
 ・科学・技術立国戦略(経団連)
 

➎・雇用・人材戦略(民主党)
 ・雇用・人材戦略(経団連)
 

❻・金融戦略(民主党)
 ・成長を阻害する規制の改革(経団連)
 

6番目を除いてまったく丸写しです。参考にした、という生易しいものではなく、経団連戦略に沿って忠実に作ったのが、民主党「新成長戦略」です。 

なお、経団連が6番目に上げた規制緩和は、民主党政権発足と同時に行政刷新会議による事業仕分けで既に実現しています。 

国民はあれを「税金の無駄使いをなくす」と好意的に受け取りましたが、実態は財界による「成長を阻害する規制の改革」でした。 

つまり、民主党の「成長戦略」と称するものはすべて財界の言うがままに作ったものだったわけです。 

さて、この➌の「アジア経済戦略」の中に、「アジア・太平洋自由貿易圏」(FTAAP)としてTPPが出てきます。 

このTPPが、膨大な国内「改革」を伴うものであることは前提です。今まであった2つの「改革」に続く「第3の改革」です。 

・第1の改革・90年代末 橋本政権による「橋本5大改革」
・第2の改革・21世紀初頭 小泉政権による「小泉改革」
 

そして、2010年からの小泉改革を受ける形で始まった民主党政権の新自由主義的TPP改革革す。これが「第3の改革」です。

おそらく戦後最大の「改革」となることでしょう。その力量が民主党にあるかははなはだ疑わしいですが。民主党には突破口さえ作ればいい、それから先はまた自民にやらせるさ、というのが財界の本音でしょう。 

国民は小泉改革で受けたダメージを癒すために「生活第一」を高らかに謳った民主党に過剰な票を与えてしまいましたが、現実の民主党はリベラルの仮面を被った小泉改革の継承者だったのですから、救いようがありません。 

それはさておき、平成22年11月9日、菅内閣は閣議決定として「包括的経済連携に関する基本方針」を決めました。

これはTPPに参加することを決めたいわば歴史的文書と後世言われるしろものですが、この中にTPPを参加する「前提条件」としてまっさきに農業がでてきます。

閣議決定の3、「経済連携交渉と国内対策の一体化」の(1)項農業の中にはこうあります。

「競争力向上や海外における需要拡大等わが国農業の潜在力を引き出す大胆な政策対応」。

この受け皿としてできたのが、「食と農林漁業の再生実現会議」です。

「農林漁再生実現会議」とは、今まであった各種の農業振興対策一般ではなく、TPP締結をにらんでの地ならしのための会議だったわけです。

「再生会議」が狙っているポイントのみ記します。後日詳述します。

・09年の「農地法」改正による企業の農業参入を、現在の食品関連企業から一般企業レベルまで拡げる。

・農業法人に対する出資比率を原稿の50%未満から、無制限にする。

・農地監視機関としての農業委員会の弱体化と解体

・生産規模と農地の集約化・大規模化

このようにTPP締結を待たずして、先行して「競争力強化」の名に隠れて21分野すべての「改革」が実行されると考えたほうがいいでしょう。

わが農業は、その最大のTPP地ならしのための戦場となります。

民主党政府は、財界型農業改革を強制してくるでしょう。農業団体を黙らせ、農業を「改革」しなければぶち上げた「国際公約」としてのTPPは実現しないからです。

2011月13日、野田首相は戻ってこれないルビコン河を渡ってしまいました。

の数年が日本農業にとってほんとうの切所となるでしょう。財界の言うがままに農業を解体されるのか、それとも真に強い農業を作るのかの生き残りをかけた闘いです。

■写真 花です。枠組みだけを蛍光させてみました。

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■牛肉、郵政、自動車で事前協議=日本のTPP参加問題で―米通商代表

時事通信 11月12日(土)16時11分配信

 【ホノルル時事】カーク米通商代表部(USTR)代表は11日、アジア太平洋経済協力会議(APEC)閣僚会議終了後の記者会見で、日本の環太平洋連携協定(TPP)への参加是非を判断する事前協議に関し、牛肉輸入制限と郵政改革、自動車市場への参入障壁を、2国間協議の対象に取り上げる考えを明らかにした。

 カーク代表は日米間の貿易交渉の長年の懸案である三つの問題について「これまでも莫大(ばくだい)な時間をかけて協議してきた特別な問題であり、この機会を利用して協議する」と話した。
■APEC首脳会談の米側発表に外務省ビックリ!

産経新聞 11月13日

12日昼(日本時間13日朝)にホノルル市内で行われた日米首脳会談の米側の報道発表をめぐり、とんだハプニングが起きた。

 米側の報道発表資料には環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)について「野田佳彦首相が『すべての物品およびサービスを自由化交渉のテーブルに載せる』と述べた」と書かれていた。

 これに対し、外務省は「そのような発言を首相が行った事実はない」として、米側の報道発表を否定する報道発表をして火消しに躍起となった。外務省によると、首相は「昨年11月に策定した『包括的経済連携に関する基本方針』に基づいて高いレベルでの経済連携を進める」と述べただけだという。

 外務省が米側に説明を求めたところ、米側は同基本方針に「センシティブ品目(自由化に慎重な品目)について配慮を行いつつ、すべての品目を自由化交渉対象とし…」と書かれていたことを踏まえ、報道発表したと説明。誤解を認めたという。

とはいえ、この基本方針は菅直人政権が閣議決定したもので、民主党政権のあいまいな姿勢が今回のような誤解を招いたともいえそうだ。(太字引用者)
 

■TPP、日本参加で交渉遅れ許されぬ」マレーシア首相
日経新聞11月13日

太平洋連携協定(TPP)拡大交渉の参加国、マレーシアのナジブ首相は12日、将来の日本の交渉参加について「原則的に賛成だが、交渉を遅らせることは許されない」と述べた。アジア太平洋経済協力会議(APEC)が開かれた米ハワイのホノルルで、共同通信などの会見に応じた。
 交渉に参加するには現在拡大交渉中の9カ国の同意が必要。ナジブ首相は「すでに合意された事項について再交渉はありえない」として、これまでの交渉で9カ国が合意した通商ルールを受け入れることが日本参加の前提だと強調した。

 また、ナジブ首相は、同日開催の首脳会合で9カ国が「来年7月の交渉妥結が望ましいとの認識で大筋一致した」と明らかにした
 一方、「残された作業は多い」と発言。「(来年は)参加国の一部が選挙を控えており、保護分野について繊細な扱いを要する」として、市場アクセスなどで難航する交渉の行方が不透明であることを示唆した。(太字引用者)

 

 

2011年11月13日 (日)

TPP締結国首脳会議に野田首相呼ばれず。交渉ルール作りに参加できる可能性は消えた

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予想どおりの展開となっています。 

野田首相は、ホノルルで交渉参加を表明しましたが、TPPの既存加盟9カ国の首脳会合にも招待されないという状況のようです。(資料2、3参照)。

あれだけの反対を押し切って逃げ出すようにして行って、ざまぁないと言ってやるべきでしょうね。 

どうもやら国外逃亡する前日の国会審議で佐藤ゆかり議員が指摘したとおりとなることは間違いないようです。(資料1参照) 

「仮に総理がAPECで参加表明をしてもですね、米国で先ほど言いましたように90日承認手続きかかるんですよ。要するに、TPPの条約の中身の交渉は、我が国日本としては手遅れなんですね。」 

TPPをウオッチしていた者にはこれは当然のありえたことでした。外務省内部文書はあらかじめこう警告していました。 

米通商代表部(USTR)の高官が、日本の参加を認めるには米政府・議会の非公式な事前協議が必要で、参加決定に時間がかかるため「受け入れが困難になりつつある」との認識を示していた。」  

「(米高官は)日本を受け入れるため、現在、米国やチリ、豪州など九カ国で進行中のTPP交渉を遅らせることは望ましくなく、既に参加期限は過ぎた。」

米議会で約90日間、日本のTPP参加協討議 が行われます。米国内でもTPPへの日本参加歓迎一色ではないからです。

全米自動車労組やビッグスリーは、、わが国の自動車にこれ以上の競争力がついては困るので、反対し続けています。全米自動車労組は米国民主党の支持基盤ですから、そうそう簡単に彼らをなだめるのは難しいでしょう。(資料4参照)

「(米自動車通商政策評議会マット・ブラント代表は)米国の対日貿易赤字の7割は自動車関連が占める、と指摘。その上で、「日本の自動車市場は先進国の中でも最も閉鎖的だ」と主張し、日本のTPP交渉参加は、「日本に都合の良い通商慣行を正当化し、重要な通商合意の進展を妨げる、と批判した。」

原加盟国は、いったん決めていた交渉ルールや締結内容の変更を望まないはずです。それどころか、これを金科玉条にして、最も遅れてやってきた日本に押しつけようとしています。

米国はNZとのTPP交渉においてこんなことを言っていました。
(資料5 日本農業新聞5月19日)

「初のTPP交渉8カ国でゴールド・スタンダード(絶対標準)に合意できれば、日本、韓国その他の国を押しつぶすことができる。それが長期的な目標だ」

つまり、原加盟国の間で締結されたTPP協定の協定内容(なぜか翻訳がありません。とうぜん外務省は訳文を持っていきるはずですから、さっさと出しなさい)は、「絶対基準」なのだから、日本はこれに合わせろということです。

にもかかわらず、松下政経塾上がりのお坊ちゃんたちは、11月APECで参加表明しさえすれば、交渉ルール作りに乗れると踏んでいました。

、「交渉参加時期を延ばせば、日本は原加盟国になれず、ルールづくりに参加できない。出来上がった協定に参加すると、原加盟国から徹底的な市場開放を要求される。
(国家戦略室内部文書)

しかし、そんな甘い読みはホノルルの露と消えたようです。米国を先頭にして、既加盟国は交渉ルール作りにも、さらには締結内容そのものにも日本の口を突っ込ませることを許さないでしょう。

おそらくさんざん待たされたあげく、来年の初夏頃になって「参加を認める」というありがたいお言葉を賜り、ついで「交渉自体はもう終わっているんだよね」、とおごそかに告げられるのです。

わが国はオバマ大統領に泣いてすがりつくでしょうが、彼とて大統領選を前に日本に安易な妥協的態度をとることなどできません。

かくて、わが国民が誰ひとりとして知らないTPP条約締結内容という「絶対基準」という煮え湯を、わが国は口を開けられて流し込まれることになるのです。

そしてそれは国際条約ですから、国内法に優先する上位であり、わが国の国内法はズタズタに切り裂かれていきます。

そもそもTPPのキモであるISD(S)条項を何も勉強していなかったというお人がTPPを推進していたのですから、もう先は見えていたというべきでしょう。 

「ISDS(ISD条項)は、寡聞で詳しくしらなかった。条約と国内法との上位関係だったら、条約です(条約が上)。だからこそ、我が国が守ってきたもので、良いものだというものを、条約を結ぶために(国内法を)殺したり、壊したりはしない。」
(野田総理大臣11月11日国会答弁)
 

「日本が守ってきたもの、良いもの」を守れなくなるから、私たちは反対しているのです。こんな不勉強なお坊ちゃんたちが、今、掃き清めているのは「壊国」への道です。

■写真 小川に夕陽がきらめています。小画面だと黒潰れになっていますから、できたらクリックして大きくしてご覧ください。

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■資料1 野田首相の国会答弁 「ISD条項を寡聞で知らなかった」  
(YouTube11月11日)

http://www.youtube.com/watch?v=XJtWmYBNKck  

佐藤ゆかり議員 貿易協定におけるISD条項について説明、国内法がISD条項によって曲げられる可能性について首相に質問 

野田首相 基本的には我が国が守ってきた法律で対応できるよう交渉していきたいと思います。
国内法よりも、条約のほうが上位にあり、それに対応しなければいけない現実の中で、どう対応するか考えるということでございます。
 

野田首相 これですね。投資協定・・・国際仲裁判断に委ねる、そういうような場合ですね。仲裁人が入ってきて、仲裁人により決めていくというわけなんで、というプロセスがあるということで。 

ISDS(ISD条項)は、寡聞で詳しくしらなかった。条約と国内法との上位関係だったら、条約です(条約が上)。だからこそ、我が国が守ってきたもので、良いものだというものを、条約を結ぶために(国内法を)殺したり、壊したりはしない。 

佐藤ゆかり議員 仮に総理がAPECで参加表明をしてもですね、米国で先ほど言いましたように90日承認手続きかかるんですよ。要するに、TPPの条約の中身の交渉は、我が国日本としては手遅れなんですね。 

決まった段階で、二者択一で、日本政府、これを丸呑みするんですか、しないんですか、どちらかにしてくださいよと、それを半年後に言われるしかないんですよ。 

ですから、日本の国内法というのは、条約が上位にあるわけですから、TPPで決められたものを丸呑みにすれば、国内法は曲げなければいけない。変えなければいけない。TPPを選ばなければ、国内法は我が国がこのまま管理をすると、そういうシナリオになるんですね。 

条約のことをお応えいただかなかったのは、これは極当たり前の質問でして、憲法に書かれていることですから、わたくしはお伺いしたまでで、すぐにお応え頂かなかったのは、非常に驚愕で、ここで決めるってことはですね、

こういうことも分からないでお決めになるということは、あまりにも国民軽視ではないだろうかなと、非常に大きな問題を感じたわけでございます。

■資料2 TPP交渉9カ国「大筋合意に達した」、米大統領が見解
朝日新聞11月12日
 

オバマ米大統領は12日朝(日本時間13日未明)、米ハワイ・ホノルルでの環太平洋経済連携協定(TPP)の交渉9カ国による首脳会合後、記者団に対し「大筋合意に達した」と語った。オバマ大統領は「詳細については詰める必要がある」との見解を示し、最終合意に向けた道のりが残っているとしながらも、「それができると確信している」と語った。  

■資料3  TPP、首相さっそく厳しい洗礼 加盟国会合招かれず
朝日新聞11月12日

オバマ米大統領が12日朝にホノルルで開く環太平洋経済連携協定(TPP)交渉9カ国の首脳会合に、野田佳彦首相が招待されない見通しであることが11日わかった。9カ国が積み上げた交渉の成果を大枠合意として演出する場に、交渉参加を表明したばかりの日本は場違いとの判断が背景にあるものとみられ、TPP交渉の厳しい「洗礼」を受ける形だ。
 

 日本政府の一部には、野田首相がアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議前に「交渉への参加」を表明すれば、TPP首脳会合にも招待される可能性があると期待があっただけに、落胆が広がっている。TPP交渉を担当する日本政府高官は「日本(の出席)は少し違うということだろう」と語り、現時点では、出席できない見通しであることを認めた。  

 昨年11月に横浜であったAPEC首脳会議の際にも、TPP関係国の首脳会合が開かれ、当時の菅直人首相がオブザーバーとして招かれ参加していた。

■資料4 米自動車業界団体、日本のTPP参加に反対声明

(ニューヨーク=小谷野太郎】米自動車大手3社でつくる業界団体「米自動車通商政策評議会」は11日、日本が環太平洋経済連携協定(TPP)交渉に参加することに反対する声明を発表した。

同評議会のマット・ブラント代表は、米国の対日貿易赤字の7割は自動車関連が占める、と指摘。その上で、「日本の自動車市場は先進国の中でも最も閉鎖的だ」と主張し、日本のTPP交渉参加は、「日本に都合の良い通商慣行を正当化し、重要な通商合意の進展を妨げる」と批判した。

 同代表は、米自動車産業はこれまでのリストラで国際競争力を強化し、雇用創出などで米経済の回復の先導役を果たしている、と主張。TPPへの日本の参加は「これまでの努力を危険にさらす」との警戒感を示した。米国では、自動車産業が集積するミシガン州知事や同州選出の上院議員も日本のTPP参加に反対する声が出ている。

2011年11月12日11時14分  読売新聞
■資料5 TPP“主導国”] 米国外交公文から読む 本音と現実 

 ニュージーランド外交貿易省のマーク・シンクレアTPP首席交渉官は「TPPが将来のアジア太平洋の通商統合に向けた基盤である。もし、当初のTPP交渉8カ国でゴールド・スタンダード(絶対標準)に合意できれば、日本、韓国その他の国を押しつぶすことができる。それが長期的な目標だ」と語った。(米国大使館公電から) 

 環太平洋経済連携協定(TPP)交渉でニュージーランドと米国は、農地への投資制度や食品の安全性などの規制や基準を統一した「絶対標準」を定め、受け入れ国を広げることで経済自由化を進めようとしている――。TPP交渉を主導する両国のこうした狙いが、在ニュージーランド米国大使館の秘密公電に記載されていた両国政府の交渉当局者の会話から浮かび上がった。 

ニュージーランドの交渉当局者は「絶対標準」を受け入れさせる国として日本と韓国を名指ししている。これは国内の規制や基準の緩和・撤廃につながり農業だけでなく国民生活の多くに影響を与える可能性がある。公電は、内部告発ウェブサイト「ウィキリークス」が公表。ニュージーランドの当局者らへの取材と合わせて分析した結果を報告する。 

 2010年2月19日、ニュージーランドのシンクレアTPP首席交渉官が、米国務省のフランキー・リード国務副次官補(東アジア・太平洋担当)に語った内容だ。シンクレア氏は、TPPの目標が農産物などの市場開放だけではなく、アジアなどで推進する米国型の経済の自由化が両国(アメリカ合衆国、ニュージーランド:古田注)の長期的利益につながると強調した。 

 公電は、ニュージーランドのウェリントン市内で行われた両者の会談の概要を、当地の米国大使館がまとめた。「秘密」扱いだ。外交を担当する国務省だけでなく、農務省や通商代表部などにも送るよう記述してある。
(日本農業新聞5月19日 太字引用者)

2011年11月12日 (土)

TPPが始まった。しかしまだ闘いは終わったわけではない

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とうとう日本農業はオバマ大統領の手土産にされてしまいました。

経験豊富が売り物の鹿野農相は、内閣の一員として有効な掣肘をしませんでした。彼が腰を据えた抵抗で粘ったのならば、せめて「議論に時間をかける」というていどのことはできたはずです。

彼のだらしなさを見ると、あながち密約説も嘘ではなかったのかもしれないと思えてきます。

国民で、野田首相が「事前協議にでかけたのであって、参加表明ではない」ということをまともに信じている人は皆無だと思います。

どじょう男のずるいことは、すべてに言語明瞭、意味不明なことです。今回も「事前協議に入る」という言い方で、実質参加表明をボカしています。今まで一貫してこの調子です。

「皆さんのご意見を聞いて慎重に検討する」というようなどうとでも取れることを言って、実質何も聞いていず、情報も公開しない。党内議論すらまとめあげないまま「実質参加表明」を首相個人の資格でしてしまう、これほど卑劣な男は珍しいと思います。

ほんとうにずるい、汚い自己保身の塊のような卑劣漢が野田という男の本質です。

私たちはTPPを思いつきで言い出した菅直人と、それを本当に実行してしまった野田佳彦という名を、日本政治史に刻まれた汚名として忘れることはないでしょう。

さてこれで、グローバリゼーションの大津波が5年後に来ることが決定しました。この5年間で徹底した抵抗運動を組まないと、日本農業は生き残ることができなくなりました。

TPP締結を前にした5年間でグローバリゼーションは既に始まっていると思わなくてはなりません。

おそらく「農業の自立強化」などという美名で、4品目横断政策を数倍する大型化政策がとられ、自立農家を切り捨てて、代わって企業の新規参入が公然と行われることでしょう。

農家は企業農場の従業員になるか、土地を貸して離農することになるでしょう。

これがいわゆる財界型農業改革です。この流れがTPP対策として間違いなく登場します。兼業農家を多数抱えるJAには、さまざまな改革要求が来るはずです。

そして減反廃止。関税による管理価格制から、TPPに備えた新たな制度に切り替わっていくことでしょう。

その時の痛み止めとして、新たな装いで農家戸別所得保障制度がバラ撒かれることになります。

そして農家の多くが安楽死を選び、村は解体します。

これはメキシコでカナダで既に見てきた風景です。グローバリゼーションという名を借りたアメリカ化は、人々を押し流し、一部の企業に富を集中する仕組みです。

そして日本という国柄を支えてきた大きな柱であった農業という堤防が破れて、社会全体を極端な格差社会の津波が洗います。

デフレはいっそう進行し、賃金は切り下げられ、失業者が溢れ、若者が就職できない社会、その代わり99円牛丼が食べられる「素晴らしい新世界」の始まりです。

さぁ、それに備えましょう。まだ闘いは終わったわけではないのですから。

資格写真 霞ヶ浦の彼方に筑波山が見えます。

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首相、オバマ米大統領らに方針伝達へ APEC首脳会議

産経新聞 11月12日(土)0時48分配信

 野田佳彦首相は11日夜、官邸で記者会見し、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)について「交渉参加に向け関係国との協議に入る」と表明した。民主党内には慎重論も強いが、日本経済再生のためアジア太平洋地域での経済連携強化が不可欠と判断した。

 菅直人前首相時代の昨年11月に閣議決定した「包括的経済連携に関する基本方針」で、「国内の環境整備を早急に進め、関係国との協議を開始する」と明記しており、野田首相は「交渉参加に向け」を付け加えることで「参加方針」を打ち出した形だ。

 首相は12、13両日のハワイでのアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議でオバマ米大統領らに方針を伝える。交渉参加に向けた手続きとして、すでに交渉中の9カ国から参加への同意を得る必要がある。

 首相は「(協議を通じて)情報収集し、国民的議論を経た上でTPPについての結論を得たい」と述べた。これに関し、鹿野道彦農水相は「(首相は)参加表明と言わなかった。交渉参加を前提としたものではない」との認識を示した。

 首相は会見で日本の農業を「断固守り抜く」と強調した。農業支援策に関しては「5年間で集中的に行うとの基本方針と行動計画に基づき必要な予算措置をする」と述べ、若者の新規就農支援や、農地の大規模化などを進める考えを示し、民主党内の慎重派に理解を求めた。平成23年度第4次補正予算案編成には否定的な考えを示した。

【速報TPP】 TPP参加へ関係国協議 首相表明 全中は阻止運動強化

日本農業新聞11月11日

野田佳彦首相は11日、首相官邸で記者会見し、環太平洋経済連携協定(TPP)について「交渉参加に向けて関係国と協議に入る」との方針を表明した。TPP参加に伴う国民生活への影響をさらに分析するため、情報を収集するとの狙いも明らかにした。

慎重な判断を求めた党の提言を受け、党内融和に配慮したとみられる。しかし「関係国との協議」は米国が求めている事前協議と同じで、野田首相が示した方針は「実質的な参加表明」だとして農業者、消費者、医療従事者や関係団体、地方自治体などの広範な層から反発を招くのは必至。

JA全中の萬歳章会長は同日、記者会見し「参加を断念しなかったことは極めて問題であり、わが国の将来に大きな禍根を残す」との抗議声明を発表。交渉参加阻止に向けて引き続き徹底して行動するとの決意を表明した。

「交渉参加表明ではない」 農水相、首相会見で認識表明

産経新聞 11月11日(
鹿野道彦農林水産相は11日、野田佳彦首相の環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉参加表明について、「総理は交渉参加表明と言わなかった。交渉参加を前提としたものではないと理解している」と述べ、参加表明ではないとの認識を示した。

 「交渉参加に向けて関係国との協議に入る」と、野田首相が曖昧な表現を使ったことにより、閣内からこうした“解釈”が出たことで今後、TPP交渉参加に向けた国内の環境整備にも影響が出そうだ。

「守るところは守る」首相、交渉参加に決意表明

読売新聞 11月11日(金)21時50分配信

 野田首相は11日の記者会見で、環太平洋経済連携協定(TPP)交渉参加に向けた決意を表明する一方、党内外に根強い慎重論への配慮も示した。

 首相は交渉参加の意義を、「貿易、投資立国である日本がアジア太平洋地域において、よりフロンティアを開拓していくところに意義がある」と唱えた。首相の言葉には、「TPP参加は日本経済復活のラストチャンス」(首相周辺)という思いもにじんだ。

 一方で交渉に臨む決意として、「守るところは守り、勝ち取るものは勝ち取る」と強調した。母の実家が農家であることにも触れ、「母の背中のカゴに揺られながら、のどかな農村で幼い日々を過ごした光景と土のにおいが私の記憶の原点にある。美しい農村は断固として守り抜く」と訴えて、慎重派に理解を求めることも忘れなかった。

最終更新:11月11日(金)21時50分[ホノルル 8日 ロイター] 米下院歳入委員会と上院財政委員会の幹部を務める超党派議員4人は8日、オバマ政権に対し、日本が今週環太平洋経済連携協定(TPP)交渉に参加する意向を表明した場合、議会との事前協議なく早急に決断することがないよう要請した。  

「日本とのTPP交渉判断慎重に」、米超党派議員がオバマ政権に要請

ロイター 2011年 11月 9日
議員グループが米通商代表部(USTR)のロン・カーク代表に宛てて書簡を送った。 

 それによると、議員らは「日本が交渉に参加すればTPP交渉に新たな次元と複雑性が加わることになる。このため(米政府に対し)いかなる決断も下す前に連邦議会その他の関係者に相談するよう強く求める」と要請した。 

 その理由として、同書簡は「日本は長い間、国内市場を意味のある競争から保護してきた」と指摘し、米国は日本政府が本気で市場を開放し、米自由貿易協定(FTA)が求める高い水準を満たす用意があるのかを十分確認する必要があるとしている。 

 ハワイ州ホノルルには、今週末に開催されるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議を控え、各国の高官が集結しつつある。12日には、このうちTPP交渉に参加する米国、オーストラリア、ニュージーランド、チリ、ペルー、シンガポール、マレーシア、ベトナム、ブルネイの9カ国の首脳による個別の会合も予定されている。

2011年11月11日 (金)

今日がTPPの山です。国民皆で政府を看視しよう!!「壊国」は絶対に許さない!

021
野田どじょう政権は見苦しいドタキャンを演じました。与党内すらまとめ上げることができず、みんなの党を除く全野党の反対に遭遇してしまいました。

考えてみれば、首相が「まとまる」と思ったとすれば、TPPの内容を知らなかったからとしか思えません。こんな国論を二分するようなことを、野田氏ていどの力量の政治家がまとめ上げられるはずもありませんから。

今や野田どじょう政権の同盟軍は財界と大手マスコミしかいない状態です。このような状況の中で急速にTPPに対する疑問が国民の間に広まってきています。

野田どじょう政権が就任当初から考えていた手は三つです。

ひとつめは、完璧なまでに情報を出さないことです。私はかくも国家のゆくえを決する案件に対して、゛政府から一切の情報提供がなかったことを知りません。

マスコミもこれに加担しました。フジテレビなどは昨日に至っても、TPPよりKポップアイドルのお受験のほうが大事なようです。

私たちはマスコミから絶無にちかい報道しか受けてきませんでした。私が日本農業新聞の購読者でなければ、TPPの存在すら知らなかったでしょう。大部分の国民はTPP情報の真空状態に置かれていたのです。

ふたつめは、TPP問題を、未だ多くのマスコミが決まり文句のように言っている構図、「農業vs工業」という極端に矮小化した枠組みの中に押し込めようとしたことです。

実は農業以外に、金融、共済、保険、医療制度、法務、政府調達、知的所有、安全基準など24もの分野における自由化をめざしていることが政府資料の公開で判明しました。

これらひとつひとつが国民の生活にダイレクトに影響を与えるにもかかわらず、野田どじょう政権は、これらを隠蔽したり、時には「公的医療制度は協議対象に含まれていない」などというすぐバレる嘘をつき通しました。

農業が壊滅的な打撃を受けることは確実ですが、それをいいことに農業のみが自らだけの利害のためにだけ反対しているような印象操作を、政府関係者と大手マスコミは流し続けました。

いわく、「農業がこのまま変革しないで持続できると思うのか」。
いわく、「農産物は鎖国していたから高かったのだ。改革して自由化の風に立ち向かえ」。
いわく、「TPP開国で食品は安くなって消費者のメリットは巨大だ」。
いわく、「TPP開国で経済復興しようとしている,農業が足を引っている元凶だ」
などといった言説が大量に流されました。

これは農業の内在的な矛盾を、黒船の力で強引に改革するしかない、という農業の力を信じない暴論です。

内政干渉であるTPPによって変えられる日本農業があるとすれば、それは外国にとって都合のいいものでしかないのは明らかではないですか。

そして彼らは、放射能問題から続く「農業敵視の空気」を最大限に利用して、「閉ざされてぬくぬくと保護された日本農業vs経済復興をかけて開国を要求する工業」という構図を一挙に作り出したのです。

真実は、日本の輸出総額が占める対GDP比率は14%ていどにすぎず、対米輸出比率は対GDP比率のわずか2%でしかないのです。

TPP圏内で圧倒的に大きいGDP国である米国(67%)においてすら2%ですから、他の東南アジア、オセアニア諸国(7%)は桁違いに少ない輸出比率なのです。

そして、輸出総額の中に占める自動車の対GDP比率は1.23%、電気製品に至っては0.036%という額に過ぎません。(欄外グラフ参照)

これをみれば一目瞭然のように、TPPで利益を得る企業は工業の中でもほんのひと握りにすぎません。

しかも米国の自動車関税は2%であり、電気製品も5%です。こんな関税率など、円高の進行や、韓国のウォン安がすすめば、すぐに元の木阿弥になってしまうていどのものです。

それでもなお財界首脳を占める自動車、電気、カメラ産業などのボスたちにとっては起死回生の手段なのかもしれませんが、それで国全体をTPP地獄に巻き込むのは止めて頂きたいものです。

一方デメリットのほうは、数え上げるのすら簡単ではありません。まだまだTPPの全貌がわかるに連れて急増すると思われますが今わかる段階で、アトランダムに挙げていきます。

・日本農業の崩壊
・地方の疲弊
・農村風景の崩壊
・外国資本の農業参入
・JAの崩壊
・食の安全の崩壊
・公的医療制度の崩壊
・国民皆保険制度の崩壊
・共済制度の崩壊
外国人労働者の大量流入による治安悪化
・デフレ経済下の更なるデフレの進行
・勤労者の所得の低下
・失業率の上昇と貧困層の増加
・若者を中心とする格差社会の永久固定化

このようなデメリットのみが大きく、得るものは一部の巨大企業の輸出の伸びにすぎないTPPになにがなんでも参加しようとしているのが、野田どじょう政権です。そのための狡賢い方法が三つ目です。

野田どじょう政権の狡猾な手法の三つ目は、大きな反対に会えば、「慎重に検討する」と言質をあたえずに泥の中に潜行してまともな議論に参加せずに、最後の最後で自分と与党幹部だけで「政治決断」してしまうという卑劣な方法です。

見猿、言わ猿、聞か猿のどじょう政権に激しい憤りを覚えるのは私だけでしょうか。

まさに暴挙です。このような形で国民と国家の運命を決定していいはずがありません。野党は全力でこの暴挙を止めるべきです。

与党内慎重派は、脱党することなくしては自らの選挙区での来期はないと心すべきです。止められないならば、与党内慎重派も推進派と同じ穴のむじなにすぎません。

今日が山です。国民皆で政府を看視しましょう!「壊国」は許さない!

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野田首相 TPP参加表明へ

NHKニュース 11月11日 4時19分

TPP=環太平洋パートナーシップ協定について、野田総理大臣は、11日、改めて政府・民主三役会議を開き、交渉への参加を決定し、記者会見で表明する方針です。これに対して、民主党内では、交渉参加に慎重な議員が参加表明を見送るべきだと、活動を活発化させており、TPP交渉への参加問題は、決着に向けて、大詰めの局面を迎えます。

TPP交渉への参加の是非を巡って、10日、政府・民主三役会議が開かれ、党側は、APEC=アジア太平洋経済協力会議での参加表明について、慎重に判断するよう求めるなどとした提言を報告しました。

そのうえで、民主党幹部は、野田総理大臣に、「党の混乱を避けるために、決定を一日延ばした方がいい」と進言しました。これに対し、野田総理大臣は、「党の提言は、重く受け止めたい。1日ゆっくり考えさせてほしい」と応じ、決定を先送りました。

これについて、別の党幹部は、「野田総理大臣に迷いが出たのではなく、ワンクッション置くという政治判断だ」と述べ、野田総理大臣の交渉参加への意欲に変わりはないという認識を示しました。

野田総理大臣としては、日本の未来を切り開くためには、TPPへの参加が必要だとして、11日、改めて、政府・民主三役会議を開き、交渉への参加を決定し、記者会見で表明する方針です。

これに対し、「TPPを慎重に考える会」の会長を務める民主党の山田前農林水産大臣は、「政府が参加表明することはあり得ない」と強調し、連立を組む国民新党の亀井代表も、「参加を表明するのであれば、大変な事態になってくることを覚悟すべきだ」と述べました。

そして、交渉参加に慎重な議員は、野田総理大臣が、12日、APECに出発する前に考え方を聞きたいとして、11日中に両院議員総会を開催するよう求めて、署名を始めるなど、活動を活発化させています。

さらに、自民党の大島副総裁は、「集中審議が終わってから記者会見し、しゃべるだけしゃべってAPECに出席するということだろう。『逃げるな、総理大臣』と申し上げたい」と述べ、決断を先送りした野田総理大臣の対応を批判しました。

野党側は、11日に行われる衆・参両院の予算委員会の集中審議で、野田総理大臣の姿勢を追及することにしており、TPP交渉への参加問題は、決着に向けて、大詰めの局面を迎両院総会の開催求める 

どんづまりになって外務省がいきなりTPP資料をどどっと出し始めました。知っていてなぜ出さない!
■環太平洋パートナーシップ(TPP)協定交渉

http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/tpp/index.html 

■産経 2011.11.11 15:07
 

 山田正彦元農水相ら環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の交渉参加表明に慎重な民主党議員は11日午後、野田佳彦首相からTPP問題の説明を聞くための両院議員総会開催を求める141人分の署名を提出した。応対した輿石東幹事長は「重く受け止める」と述べたが、同日中の総会開催には「時間の制約があり難しい」と応じた。

 

 民主党は規約で、党所属議員の3分の1以上の要請があった場合、両院議員総会長が「速やかに両院議員総会を招集しなければならない」と定めており、山田氏らの署名は要件を満たした。

 

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2011年11月10日 (木)

鏡の国TPP。ここは海外投資家の楽園。自国民を守るという常識が通用しない「壊国」が始まった!

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JNNの世論調査で「TPPについて政府は充分に説明しているか」という問いに、実に90%が「思わない」と答えています。

国民はなにも判断の基礎となる情報を与えられず、21分野(あるいは24分野)にも及ぶ国民の生活の隅々まで根っこから変えていってしまうTPPに、判断停止状態になっています。

こんな中で、民主党TPPのPTは「慎重論が多かった」ていどのどうとでもとれる玉虫色の結論で、後は結論が決まっている政府判断に委ねしまいました。

これでガス抜きの時間は終わりです。慎重派の与党議員は選挙で民意を問う勇気もなく、ましてや脱党する気概などないでしょう。

選挙をすれば、1人区が多い農村議員は、民主党に対する激しい怒りが渦巻いている農村で生き残れるはずがありません。

そして交渉内容を与党内部でチェックするという言い訳を選挙区でしながら、短い時間のうちにTPP容認派に溶解していくのでしょう。

さて、TPP推進のキモとでもいうべきISD条項に対して奇妙な楽観論がはびこっています。

ISD条項(*ISD 国際投資紛争仲介センター)とは、たとえば、TPP発効以降、海外投資家が投資している現地法人が国内法によって不利益をこうむった場合、国際仲介機関に提訴できるというものです。

このISD条項を使えば、この海外投資家が「期待した利益がえられない。これは日本の国内法の障壁のせいだ」と思ったら、米国政府が代わりに提訴できるという危険きわまりない条項です。

その場合日本政府自身がいかなる条約違反もしていなくとも、提訴可能となります。そしていったんその提訴がSDIで認められれば、国内法を変えるか、超越することができます。

わかりますか、この意味のスゴサを。私たちは、自国民の健康、安全、環境を自分の意思ではなく、外国に委ねてしまうということですよ!

たとえば、米国の自動車の安全基準はわが国より低い水準にあります。農薬の制限もゆるく、その中には既にわが国で禁止された農薬も多数あります。

遺伝子組み換え(GMO)は無規制です。というより、今や9割の米国穀物がGMOです。

BSEの米国の検査体制のルーズさは有名で、いまだに割った脊椎が入ってくる始末です。全頭検査も日本にいわれてイヤイヤやっているのです。

このように、米国の安全基準はわが国よりはるかに低いレベルにあります。米国は輸出に際して、余計な検査を強いる国内法が関税外障壁になっていると1990年代から一貫して主張してきました。

TPP以前ならば、これらは国内法という主権でガードされていましたが、TPP以降はまったく違ってきます。ISD条項は国内法を超越する「スーパー法」だからです。

先に述べた農薬規制、GMO、BSEなどは真っ先に米国の提訴の餌食となるでしょう。

推進派の人にお聞きしたいものです。わが国の官僚がISDで勝てる交渉力があると本気で思っていますか。

TPPは結局のところ、国と国の外交交渉です。わが国が米国と有利に交渉したことなど一度としてあったかどうか、胸に手を当ててみるがいいのです。

わが国の情報収集能力の低さはあまりにも有名で、TPPは1990年代から始まったにもかかわらず、外務省はろくな情報収集もしていなかったことが、今回分かりました。

貿易交渉の豊富さにおいて米国はおそらくは世界最高の能力を持っています。USTR(米国通商代表部)の意地汚ないばかりのタフネゴシエーターぶりはあまりに有名です。

本気で、ISD条項という絶大な武器をもったUSTRに勝てる能力を、外務省や経済産業省、農水省がもっていると思っているなら、それはお幸せです。

日本は国際交渉の場でタフな交渉をできる担当官を育ててきませんでした。WTOの交渉の場で鍛えられた担当官が何人もいません。

推進派は、「ISD条項で日本の知的所有権が守れる。どんどん東南アジアの違法行為をISDで訴えていく」と意気込んでいるそうです。

この人たちはどうやら、東南アジアなでどではなく米国が主要な相手国だという現実を忘れたいようです。

今までどれだけ米国市場で自動車やカメラが煮え湯を飲まされたのか、すっかり忘れています。トヨタなど、でっち上げの巨大訴訟事件まで起こされて大打撃を食いました。もう忘れたのですか。

あの時は米国に輸出した日本製品でしたが、今度はその逆が起きるのです。国内に上がってきた米国企業は、今まで国民を守ってきた法的規制や安全基準を障壁としてISDに提訴するでしょう。

そして、日本も米国も担当官が代理で争うことになります。残念ながら、それなりにタフなネゴシエーターや弁護団を抱える日本企業と比べて、日本の官僚には国際交渉の場で鍛え上げられた人材がまったく不足しています。

米英仏にはこのような国際交渉で闘う専門官を育成する伝統がありますが、わが国にはありません。このような人材はすぐに育つものではないのに、作ろうとしてこなかったからです。

米韓FTAでは、韓国政府が「規制の必要性を自ら証明できなければ、市場開放の追加措置を取る必要がある」という条項を押しつけられました。毎度の感慨ですが、よくこんな不平等条項を韓国は呑んだものです。

TPPにおいても同様の条項が盛られるでしょう。たとえばその場合、日本はわが国で禁止している農薬に対しての膨大な規制の正当性をひとつひとつ挙証証明せねばならなくなります。もちろん英語でです。

馬鹿な話です。こんなことをなんで外国人に説明せにゃならんのですか。農薬の健康上の害を受けるのはわが国の人間で、ここはわが国の主権内なのに、なぜ外国人に英語で膨大な説明をしなければならないのでしょうか。

そしてTPP以降できる国内法は、TPPでクレームをつけられるかどうかを自主規制して考えねばならなくなります。単に経済協定なのにかかわらず、わが国はまるで憲法のようにTPPを仰ぎ見ることになるのです。

鏡の国TPP。ここは海外投資家の楽園。自国民を守るという常識は通用しないのです。まさに「壊国」です。

■写真 ようやく暑かった秋も深まり、紅葉が色づいてきました。

■追記(12時21分)
山田さんたちが本気なら評価しますが・・・。

TPP慎重派抵抗、前農相ら「離党カード」も

読売新聞 11月10日(木)

「もう一度、みんなと協議するが、首相が(TPPへの)参加を表明したら、重大なことになる」

 山田正彦前農相は9日午前、国会内で緊急の記者会見を開き、首相がTPPの交渉参加を表明した場合、離党も辞さない構えを強調した。

 慎重派の議員はこれまでも「離党カード」をちらつかせ、首相に交渉参加を思いとどまらせる戦術をとってきた。

 山田氏が率いる議員連盟「TPPを慎重に考える会」には、衆院比例単独議員や選挙地盤の弱い若手議員も多い。「このまま民主党に残っても先はない。いっそのこと、TPPや消費増税に反対する新党をつくった方が、次期衆院選で当選する可能性が高くなるのではないか」(民主党1回生)と、選挙最優先の姿勢をあらわにする議員もいる。

2011年11月 9日 (水)

放射線量測定会が始まりました!

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昨日、念願の放射能測定会が開かれました。

茨城大学農学部・小松崎先生のご指導で、会員の田畑、自宅周辺の計測を行いました。

使用した機器は、先生にご持参いただきましたシンチエーション・サーベイメータ、会員所有のガイガーカウンター2台です。

同時に3台で測定したのは、精密機器と一般ガイガーカウンターとの数値のズレを校正するためです。結果は、案外ズレがないのにはかえって驚きました。ちなみに誤差範囲は.以下です。

3台の数値のズレ 単位μSv
・シンチエーションサーベイメータ・・・・・0.22(基準数値とする)
・ドイツ製ガイガーカウンター・・・・・・・・0.18(誤差(0.04)
・アメリカ製ガイガーカウンター・・・・・・0.065((誤差0.15)

数字でみると非常にあるような感じを受けますが、実際に測定してみるとわかりますが、メーターの針は常に一定ではなく、常に震え続けています。おおよそブレが静まったところでエイヤっと計っているので、0.05μSvていどの誤差はありえる誤差範囲ではないでしょうか。

シンチエーション・サーベイメータは本来は外部からスクリーニングするためのもので、土壌線量自体を計測するものではありませんが、先生によると土壌放射線量と空間放射線量には一定の相関関係があるとのことで、空間線量測定でおおよその土壌放射線量の目安は分かるとのことでした。

計測ポイントとしては、ホットスポットを発見することに重点を置きました。というのは、二本松の例でもわかるように、沢水が入る水口と、下の田んぼでは線量が大きく異なる場合があります。

田畑をメッシュで仕切ってしらみつぶしに計測するより、経験的にあらかじめホットスポットと思われる地点を選んで計測し、一般の地点と比較してみる方法をとりました。

私たちがホットスポットと考えたのはこのような地点です。

・舗装された道路や森林からの水が流れ込む水口
・ハウスの周辺部
・森林との境
・森林の風雨が当たる前の立ち木の根付近
・樹木の皮
・耕耘していない土地
・草地あるいは牧草地
・雨樋の出口付近

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上の写真は計測風景ですが、これは耕耘されて収穫を終わった水田の道路からの流水の水口部分です。

前日の雨で舗装道路からかなりの流水があったので、上の自宅の樋付近はかなりの線量が出ましたが、一段下がった農道では水田水口では通常の数値に戻っていました。

以下地表面スレスレ1㎝数値です。単位はマイクロシーベルト。測定器はシンチエーション・サーベイメータ。

・自宅雨樋周辺・・・・0.26μSv
・農道・・・・・・・・・・・・0.16
・水田水口・・・・・・・・0.16
・水田内・・・・・・・・・・0.17
・山林との境・・・・・・0.19
・不耕起地・・・・・・・0.16

森林内での測定結果は以下です。測定位置地表1㎝。
・森林・・・0.24μSv
・樹皮・・・0.24

測定は高さを3カ所に分けて測定しました。

水田水口
・地表面1㎝・・・・0.17μSv
・地表面50㎝・・0.16
・地表面1m・・・0.12

このように地表面に近いほど数値は高くなります。

今上げたデータはごく一部で、現在これを地図にポイントして分布図を作成中です。今月下旬までには作り上げて、ひとめで自分の田畑の放射線量分布がわかるマップにまとめていきます。

こうしてまずは始まった農地測定、今後もどんどんと計って実態を明らかにし、対策を立てていく予定です。計測も3か月ごとていどのペースで行い、数値の推移を調べていきます。

■写真 霞ヶ浦の夕陽。水鳥が一羽夕陽に向けて飛んでいきました。

参考 行方市の小中学校の放射線量(11月8日)
・単位:マイクロシーベルト毎時
●麻生小 0.091
●太田小 0.189
●大和一小 0.184
●大和二小 0.170
●大和三小 0.239
●行方小  0.152
●小高小  0.158
●津澄小(北浦幼) 0.126
●要小   0.185
●武田小 0.235
●羽生小  0.143
●玉造西小 0.147
●現原小 0.160
●玉川小 0.141
●玉造小 0.140
●手賀小 0.129
●麻生中 0.167
●麻生一中 0.184
●北浦中 0.189
●玉造中 0.090
●麻生幼 0.110
●太田幼 0.144
●玉造幼 0.142
●市役所麻生庁舎 0.127
●市役所北浦庁舎 0.178
●市役所玉造庁舎 0.141
●のぞみ幼稚園 0.220

 

2011年11月 8日 (火)

政府は交渉参加するなら、21分野すべてでなにが協議されるのか、なにをわが国がブロックするのかを、明確に示しなさい!

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いよいよTPP問題が刻限を迎えようとしています。

TPPと比べればはるかに影響力の少なかった郵政改革ですら総選挙にかけられたことを考えると、まさに数の横暴、いや与党内部すら真っ二つですから、野田政権の独裁的体質が露になりました。

なにひとつ情報を出さず、わずかの間にドタバタとかくも大きな国際案件を決めていく理由は以下のようなオバマ大統領への身も蓋もないゴマスリだというのですから、呆れてものが言えません。

米国がAPECで政権浮揚につながる大きな成果を表明するのは難しい。日本が参加表明できれば、米国が最も評価するタイミング。これを逃すと米国が歓迎するタイミングがなくなる。」 (国家戦略室内部文書より。全文は以下から。)
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2011/10/post-b53e.html

しかし、この野田政権の願望むなしく、外務省の内部文書は以下のようにAPECで参加表明しても、米議会にかけられて半年ペンディングになるという見通しを伝ています。

米通商代表部(USTR)の高官が、日本の参加を認めるには米政府・議会の非公式な事前協議が必要で、参加決定に時間がかかるため「受け入れが困難になりつつある」との認識を示していた。」 (外務省内部文書より。全文は以下から)
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2011/11/post-00fa.html

となれば、野田首相の「自分の政治決断で決定する」という独裁手法をとってまで参加にしがみついているのは、あんがいこんな風見鶏よろしくの動機なのかもしれません。

マスメディア、経済界はTPP交渉参加を提案。実現できなければ新聞の見出しは「新政権、やはり何も決断できず」という言葉が躍る可能性が極めて大きい。経済界の政権への失望感が高くなる」。(前出 国家戦略室内部文書より。)

要するに、財界の支持がなくなるのが怖いと、「なにもできない新政権」とマスコミから叩かれたくないと、こんなチャチな計算で国の大きな舵を取っている小心者が野田首相のようです。自衛官のお父上がさぞお嘆きでしょう。

さて、このように強引な方法でTPPに参加したとしても、腰が座っていないので、もうTPP交渉から逃げる準備をしています(笑)。

実際の交渉参加は最短で12年3月以降と見込み「3月までにしっかり議論し『参加すべきでない』との結論に至れば、参加を取り消せばよい。取り消す場合は、党側が提言し、政府は『重く受け止める』とすべきだ。」(前出 国家戦略室内部文書より)

なにが「重く受け止める」だ。初めから逃げる準備をして、その場合の口実まで考えて、TPPなどという世界相手の複雑な交渉ができるものですか。できたら奇跡だ。

こんな手の内は全部米側に筒抜けで、交渉もクツソもありはしません。参加表明して、半年待たされ、その間にTPPの恐るべき実態が国民周知のものとなると、「党側の提言を重く受けとめて」、参加取り消しだそうです。

だから前原イケメン政調会長が、「途中下車もある」と言っていたんですね。
子供か、あんたらは。国をオモチャにするんじゃない!ひとつの覚悟もなく、こんな大きな国際交渉をまとめられるとうぬぼれるな!

交渉参加するからには、まず全情報を開示しなさい。そして、21分野すべてでなにが協議されるのか、なにをわが国がブロックするのかを、明確に示しなさい。獲得するのはなにで、なにを守るのか、明らかにならない交渉など世の中にありません。

こんな最低限の民主的ルールすらも守れないなら、郵政解散にならってTPP解散したらどうですか。

■写真 朝の水辺。ハレーション・バージョンでした。たまにいじりたくなります。

2011年11月 7日 (月)

私たちの放射能との闘いは、警鐘をならす段階から実践に入りました

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この間、緊迫するTPP問題に記事を集中していたためか、「もう放射能問題は止めたのですか」、という問い合わせが来ます。
 

もちろん放射能問題は、継続しております。というか、警鐘を鳴らしている段階から、放射能との闘いの実践の段階にパワーアップしました。そのために、あまり声高にならなくなっただけです。

放射能研究会としての組織的な枠組みもできつつあり、茨大の中島紀一先生を講師にお呼びしての研究会を既に2回、茨大の先生による精密計測機器を用いたワークショップも今週中に行う予定でおります。

計測器も高価なものは買えませんでしたが、それなりのものは買い入れました。 

構想が立ち上がったのが2か月前ですから、10日刻みというハイペースでの活動となります。今後はむしろペースダウンして、持続的な取り組みをしていくつもりでおります。 

ともかく放射能はしつこいのです。こちらも息長い構えをしないと顎があがってしまいます。 

目途としては、会の計測器を使って、会員の田畑を一枚一枚計測し、それを基にしておおよその地域の土壌放射線量分布図(汚染マップ)を作るのが来年の春まではかかるでしょう。 

これには田畑周囲の谷津の山林計測も入っています。森林は全域はとても無理ですが、田畑の近辺や、水系にかかる所は重点的に行っていきます。 

春というめどをたてたのは、水田の田おこしが来春から始まるためで、それまでに計測のあらましを終了しないと、耕耘前と後の比較ができません。

さてここで集まったデータを、一挙公開ということになるかは実は決まっていません。会員、それぞれの消費者-流通との関係に応じて対応することになるでしょう。
 

というのは、先鋭な消費者意識を持つ消費者と産直をしている場合は、逐次の報告が必要となりますが、一般市場に出荷している生産者にとっては、市場が要求する以上の過剰なデータと思われてしまいます。

というのは、わが地域は行政の田畑の自主計測が皆無な状況だからです。 

えっ、と思われた方もいらっしゃるかもしれませんが、福島県は例外として、セシウム降下がたしかな群馬、栃木、茨城、千葉、東京東葛の各自治体で、田畑の計測はほぼ手つかずのはずです。 

自治体が計測しているのは、あくまでも児童が多く集う場所である学校、保育園の校庭や公園などであり、一般農地はやる余裕がないというか、行政側の問題意識が希薄というのが現状です。

おそらく文科省のヘリからの計測データ分布図が唯一ではないでしょうか。他県の詳細は分かりませんが、わが茨城県においてはそうです。

県南地域は住宅地も多いために、一般市民の計測と合わせて田畑もされるケースもあるようです。しかし、これも個人の努力によるもので、組織的な計測には至っていません。

こういう中でも放射能パニックは進行を止める様子がありません。すべての農作物にベクレル表示をしろとか、有機JASに放射能項目を入れろ、あるいは20ベクレル以下も表示しろ、という声も聞きます。

農業現場にいる私としては、現実からあまりに離れた要求には答えようがない、というのが本音です。

一方では「計測するから風評が起きる」という空気があり、一方では20ベクレル表示でも信用できないという声もある時、私たちとしては現実を踏まえて最善を尽くす、と答えるしかありません。

なぜなら、一方はナッシング、一方はオールだからです。ゼロかオールではなにも始まりません。

私たち農民は、結局、このような地道な計測-集計-分析-除染、そしてまた計測という繰り返しの中から、しっかりとした地に足がついた放射能との闘いのスタイルを作るしかないのです。

私たちはそれでも種を撒き続けます。耕耘することが、私たちの最善の「放射能対策」だと信じているからです。

多くの都市生活者には亀の歩みのように見えるでしょうが、飽きることない歩みで放射能に打ち勝っていきます。

■写真 柚子がなりました。は農薬をまかないので肌は汚いのですが、それはかぐわしい香りが楽しめます。鍋にはもちろん、ポン酢にしたり、マーマレードにしたりします。

2011年11月 6日 (日)

米国はTPPで、日本の沃土を狙ってくる。 関税以外のもうひとつの農業侵略

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昨日のTBS系の「報道特集」は、私が知る限り報道番組として初めて真正面からTPPを分析していました。読売とフジ系列は完全な無視を決め込んでいます。フジなどたまに流すと捏造です(苦笑)。

ようやくTPPが、単なる「農業VS工業」などではなく、日本全体を米国流に改造してしまうとんでもないことだという認識が拡がってきています。自民は反対に党内をまとめたようです。民主は山田さんたちが、有効な抵抗を継続しています。
 

どじょう首相は、わざわざ外国で「自分の政治的決断でやる」と見切り発車を匂わせる発言をしました。10日の閣僚懇談会で決定し、夜の記者会見で発表する予定だそうです。 

実に卑劣なドジョウ戦法です。国内でこれだけ大胆な見切り発車発言をすれば大反発を受けることがわかっているので、外遊の地を選んだのです。

増税でも民意を問うのは法案が通った後だそうで、誠実そうな見せかけとは裏腹に計算と保身にのみ長けた狡猾な人のようです。 

このようなTPP強行参加が行われた場合、その政治責任はもちろんのこと、前原政調会長の発言どおり、日本に不利なことが分かった場合、「途中下車もありえる」ということを言葉通り実行していただきましょう。 

外交上非常識であろうとどうしようと、責任はあげて彼ら民主党政権と党執行部にあります。最後まで責任をとって頂きます。 

さて、TPP問題をややこしくしているのは、農業関係の反対論が、「自給率が13%になる」とか、「米価崩壊で経営崩壊」というトーンなことです。 

私は同じ農業者ですが、そうならないと思っています。確かに農業が危機的状況になることは確かですが、無関税化⇒米価暴落ではない道筋で襲来すると思います。 

というのは、TPPの前身であるNAFTA(北米自由貿易協定)での、カナダと米国の穀物紛争をみればわかります。 

米国はカナダを、カナダ政府小麦局やカナダ農協によって独占支配されているとWTOに提訴しています。 

確かにカナダ農協は、各地域の協同組合組織を統合して株式会社化していますが、それはなぜだったでしょうか。

NAFTAによってカナダの穀物生産は短期間で危機的状況を迎えます。小麦、大麦、油糧穀物(キャノーラ)、食用牛の加工までもが、7割から9割米国系アグリビジネスに独占されるという事態が生じたのです。 

それに対抗してカナダは、自国の穀物生産を統合し、強化する必要に迫られました。これと似た対抗措置は、米韓FTAにおいても韓国が牛肉などの流通統合や合理化でしています。 

もしこのカナダの統合政策がなければ、間違いなくカナダ農業は短期間でほぼ完全に米国支配に置かれてしまったであろうことが想像できます。 

現時点においても、カーギル一社だけでカナダ・サスカチュワン州のキャノーラ製造の45%を支配していますが、協定締結時のシェアが11.9%だったことを考えると、未だカナダ農業の大きな部分を米国アグリビジネスが握ったままななのが分かるでしょう。 

ではここで、米国の日本農業市場のTPPによる「侵略」はどのようになされるのかを考えてみます。 

私はジャポニカ米のモノとしての流入は限られるのではないか、と考えています。というのは何回も書いて来ていますが、米国産のジャポニカ米は市場でわずか4%でしかありません。しかも、それが生産できる地域は限定されています。 

できるのはカリフォルニアと南部諸州ですが、カリフォルニアは水に制限があり、南部諸州の気候では、日本人の口に合う高品質な米を生産することは難しいと思われます。

東南アジアという声もありますが、現在日本商社が現地邦人向けとして少量を生産している段階です。今後TPPをにらんでベトナム、マレーシアでの日本向け生産も始まるでしょうが、脅威となるにはまだ相当な時間がかかります。 

そのていどにはわが国のコメの生産と育種技術は、外国の安易な追随を許さないレベルに達しています。 

したがって短期的にはコメの暴落はないと私は思っています。しかし、中長期的になると様相は違います。それはTPPが関税問題だけではないからです。 

TPPは煎じ詰めると、「モノ、カネ、ヒト」の三つの自由化のことです。 

モノで入ってくるのは、関税問題です。カネで入ってくるのは、資本投資や保険、金融サービスなどです。ヒトで入って来るのは、看護士や介護士、医師、単純労働者の移民問題です。 

米国は農業部門においておそらく資本投資の道を選ぶでしょう。モノである穀物や油糧穀物はすでに日本市場に行き渡っており、牛肉、豚肉、小麦、酪農製品の輸出の無関税化は当然のこととしてまっさきに要求するでしょう。 

問題はモノに止まりません。2009年の農地法改訂で、農地に企業参入の道が開かれました。TPP発効となれば、米国アグリビジネスの参入は可能となります。

米国が日本という世界でもっとも生産性の高い沃土を狙っているとすれば、TPPというビッグチャンスを逃すはずがありません。

コメの生産は経団連や同友会の計算どおり農地の統合、整理による大規模化が実現すれば、理論的には今の3分の2ていどのコストでの生産が可能です。

ただし現実には、地権や点在する農地の問題が出てくるでしょうが、国が資本と組んで農業団体の反対を押し切ればまったく不可能なわけではありません。

居抜きで使える改良区などは真っ先に標的になり、外国アグリビジネスが札束で頬を叩きに来ます。その時には、外国アグリビジネスは、国内農業法人格を取得して外国資本日本農業法人として農地を借りたり、買ったりできるようになっています。

そこに、TPPで大量に流入してくる安価な東南アジア農業労働者を使って大型化すれば、国際競争力のあるコメ商品の一丁上がりです。

それを売りさばくのは同系列のアグリビジネス商社であり、、GM種とGM対応農薬とのワンセット販売もアグリビジネスを更に潤おわせることでしょう。

このようにして、コメのGM品種-GM対応農薬-大規模農地-大量生産-大量流通-大量輸出というコメ・インテグレーションのラインが完成します。

現状ではOECD留保扱いになっているようですが、そのようなものはTPPの前に一瞬で消滅します。

同じようなことは野菜や果樹でも進行するでしょう。それは外国アグリビジネスの日本農業支配です。TPPによって、米国は日本農産物という世界有数のアグリ商品を手にすることができるのです。

このようなことになった場合、日本農業は死活をかけて闘うことになりますが、その予防線も既にTPP条項に仕込んであります。

それがISD条項です。これは別稿に続けますが、ISD条項は、「海外投資家が不利益を被ったと自分で判断すれば、協定違反であろうとなかろうと相手国を提訴できる」というすさまじいまでに海外投資家を優遇した条項です。

このような米国アグリビジネスの日本農業支配をぜったいに許してはなりません。

そして、原発事故処理の失敗、、震災復興の遅滞、増税、年金改悪、その上にTPPで外国に内通し危機まで呼び込む政権党は、速やかに民意を問うべきです。

■写真 朝焼けとすすき。前に縦アンルでアップした横版です。

2011年11月 5日 (土)

米国がTPPで狙うのは保険と金融。野田政権の姑息などじょう戦法を許すな!

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2004年に締結された「オリジナルTPP」を、外務省や経済産業省が何も知らないはずがありません。TPPは既に20世紀末から各国間で交渉が行われていたのですし、もし情報をまるで取っていないとしたら、単なるバカです。

政府は、工業、農業、金融、法務、政府調達などの完全自由化を行う多国間協定こそがTPPである、という認識は当然持っていたはずです。

そして2009年に就任したオバマ大統領が参加を表明した「新TPP」に、どのような期待をもって参加表明したかも簡単に透けて見えたはずです。

結論から言えば、米国は金融、保険、法務などの各種サービスと建設業を売りたいのです。

米国はもはや製造国ではありません。あまりのクレーム訴訟の多さに家電メーカーが音を上げて消滅してしまったといった情けない国です。

「GMにとっていいことは、米国にとってもいいことだ」とまで言い切ったGMすら、GMのローン会社(GMIC LLC)の金利で食いつないで、あげくはチャプター11(破産更生法)のドツボにはまってしまったような国です。

既に、米国のGDPの8割ちかくを金融や保険などのサービス産業と住宅建設などが占めています。こんな金融サービスに特化したような米国が、自由貿易圏構想に乗り出す時に、自分の最も売りたいものを除外しますか?

わけはない。米国が売りたいのは、自動車でもなければ、農産物でもない。自動車は国際競争力を失って久しいし、農産物は今でも低関税で輸出できています。

ジャポニカ米など米国産米の4%しかもっていなのですから、今さら売るものなど特にありません。もちろん乳製品などはありますが、そのためだけにTPPといった大仕掛けを作るほどのボリュームはありません。

米国が、オバマ大統領の演説のように、「輸出を2倍、3倍にする」とすれば、それは金融、保険、法務、建設業などのサービス分野以外考えられないのです。

ところで、TPPやFTAが、既存のWTOなどの自由貿易協定と異なるのはふたつあります。

ひとつは、当該国の国民とまったく同等か、あるいはそれ以上の優位を与える「内国民待遇」です。

「それ以上の優位」というのは、米韓FTAに見られるように、米企業、米国人に対して、韓国の国内法の規定上回る優位な条項があった場合、国内法を超越して米韓FTAを優先適用する条項が盛られているからです。

自国民より外国人を優遇するというまさに19世紀的不平等条約です。

ふたつめに、海外投資企業や個人は、関税や非関税障壁一切を除去して、当該国に「市場アクセス」できる権利をもちます。

米韓FTAにおいては、米国企業が期待した利益を上げられなかった場合、韓国が協定違反をしていなくとも、米政府が米企業に代わってISD(「国家と投資家の間の紛争解決手続き」機関)に提訴できます。

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          (日本農業新聞11月4日より参考のため引用しました。ゆがんでいてすいません。)

上図は北米FTA(NAFTA)における投資国が当該国家を提訴した事例数です。米国からの提訴が7割ちかくを占め、加盟3カ国の訴訟王だとわかるでしょう。

このISDというのも米国の息のかかったクセのある機関で、これに提訴された場合、当該国は非常に不利な立場に追い込まれるでしょう。これも負ければ国内法を超越します。

これなど先の不平等条約のたとえで言えば、治外法権とでもいうところです。現代は、ザンギリ頭の開化の時代かつうの。

このようなTPPに日本が参加した場合、米国資本は、国内法を超越する「内国民待遇」を得て、しかも完全にフリーな「市場アクセス権」を有する国内企業より優位な立場のモンスター資本となります。

そして米国が狙うのは日本の世界第2位の保険市場と金融市場です。ここが彼らが狙う本丸であって、農業分野のモノの輸出増加は二の次なはずです。

TPP推進派は、この米国の真の獲物をカモフラージュするために農業を前面に出し、あたかも日本農業が遅れているるからTPPが結べないのだ、と盛んに宣伝しました。

野田首相は子熊の電車ゴッコよろしくコンバインに乗る芸をみせ、前原政調会長は「たった1.5%が98.5%をジャマしている」と自慢の顔に青筋を立てました。

仙谷政調会長代理に至っては、「農協が反対だと騒いでいる。手を入れて分裂させてやる」(意味そんなところ)と放言しました。(しかし、よく言いますなぁ、あの人。だんだん顔が悪くなるよ。)

まったくあんたらはどこの国の政治家なんでしょう?

この人たちは明らかに米国の利害の手先と呼ばれてもしかたがありません。相手国の意図をひた隠しにし、筋違いな農業攻撃に明け暮れる人たちです。

民主党内でも、TPPをめぐって真っ二つに割れてしまいました。山田前大臣は意気軒昂なようです。この中から、明らかに与党内部や官僚からのリークと思われる文書が続々と漏洩してきています。

推進派のともかく11月中にタッチダウンするまでは、一切の議論を封じ、情報は出さないという姑息などじょう戦法は通用しなくなりつつあります。

推進派を公の場に引きづりだし、公開討論させましょう!

■写真 石岡の蔵です。石岡には国府があったためにこのような古い家並みが沢山残っています。

            ゜。°。°。°。°。°。°。°。゜。°。°。°。

■追記 自民党はは反対にまわるようです。大変にいいことです。民主党はあいかわらずグチャグチャですが、慎重派が勢いを盛り返しています。これで見切り発車するとなると、野田首相は独裁者の汚名を着ることになります。

TPP(環太平洋経済連携協定)の交渉参加問題は、民主党内の意見集約が難航する一方、自民党は、11月中旬のAPEC(アジア太平洋経済協力会議)の首脳会議での交渉参加表明に反対する方針を取りまとめた。

自民党の谷垣総裁は「まったく今の段階で(TPPを)拙速にやるのは、情報も十分ないし」と述べた。
4日に開かれた自民党の調査会では、「政府が、正確な情報を出さないため、国民的議論が全く熟していない」などとして、APECでのTPP交渉参加表明に反対する方針を決めた。
一方、民主党の参加慎重派の会合には、田中 真紀子元外相が出席して、「現時点でTPP交渉に参加表明すべきでない」と訴え、そのうえで、参加慎重派は、関係団体とともに決起集会を開き、APECでの参加表明反対を決議した。

一方、推進する立場では、玄葉外相がTPPについての討論会に出席し、TPPの交渉の中で、特定品目を関税撤廃の原則から除外することは可能との見通しを示し、交渉参加に理解を求めた。

玄葉外相は「米豪のFTA(自由貿易協定)は、非常にレベルの高いものです。除外したものが108タリフライン。砂糖とか。たとえば、お米って調整品含めてどれくらいのタリフラインかっていうと34。じゃあ除外の可能性はゼロなのかといえば、そうではない。ということはですね、申し上げてもいいかと。これはもう、交渉次第ということではないかと思います」と述べた。

一方、民主党のプロジェクトチームは、4日の役員会で、鉢呂座長が取りまとめの議論に入りたい考えを示したものの、慎重派の幹部が猛反発するなど紛糾し、その後の総会でも、賛否両論が出て、意見集約への道筋は見えていない。

民主党執行部は、6日にも会合を開き、党の提言案の策定に向けた議論を始めたい考えだが、取りまとめは、野田首相のAPEC出発直前までかかる見通し。
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2011年11月 4日 (金)

TPPには黒船と、それを導き入れる勢力があった

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TPPは、日米関係の悪化に怯えた菅前首相の思いつきのように出てきました。しかし果たして、TPPとは単に米国への外交的配慮からだけのものなのでしょうか? 

おそらくそうではありません。わが国内部には外の黒船に呼応する考え方がしっかりと存在しています。 

「TPPの思想」とでも言うべき流れはいままでも日本国内にあり、外国勢力と結びつくことで外圧利用で国内の「改革」を遂げたいと思っています。 

たとえばここに民主党が目玉政策としている「行政刷新会議」というものがあります。なんのために作られたのでしょうか。結果的にバラ撒きの財源が出ればよし、しかし目的は別にあったはずです。 

ひとことでいえば、「規制緩和と制度改革」です。 

2010年3月、行政刷新会議のなかに、「規制・制度改革についての分科会」が設けられました。この内容は、驚くほどTPPで想定されている{黒船」の内容と酷似しています。 

たとえば、医療介護分野の「ライフ・イノベーション」と称される中には、今TPPで問題となっている公的医療制度の解体と、民間医療保険による混合診療制度への解禁が堂々とうたわれています。 

この行政刷新会議の医療改革が実現すれば、いかなる僻地でも、老人でも等しく安い価格で受けられた医療・薬価制度が崩壊してしまうことになります。

これはTPPで米国の要求してくることが確実な公的医療保険の解体と、米国などの民間医療保険会社の参入と見事に照応しています。

TPPにおいては、外国人医師、看護士や介護士の大量移民も要求に登ることでしょう。行政刷新会議とTPPが違うことは、ただ「外国」を表に出すか出さないかだけの話です。

また、農業分野でも、「農林・地域活性化」として、「新規農協設立の強化」や「農業生産法人の規制のさらなる緩和」といった項目が登場します。(欄外資料参照) 

これは現在、農地が農地法3条により農家以外に解禁されていないことを緩和し、全面的に他業種の企業にも開放して参入を促すことが目的です。(*農地法3条自体は改正されていますが、規制があります。)

これもまた、TPPで米国が要求してくるであろう、「農地の取得要件の緩和」という名の外国人資本による農地買収と、農業参入と見事に対をなしています。 

この目指すところは、まっすぐにJAの胸元に突きつけられています。「改革」を唱える新自由主義経済的流れにとって、JAは最大の障壁だからです。

かつての新自由主義の先駆であった小泉改革の郵政改革が、郵便局を「敵」にみたてたとすれば、今回のTPPの標的はJAと医師会です。

おそらくTPPによって、JAは共済制度をもぎとられて経営基盤が揺らいだところに、コメや酪農の無関税化による離農で組合員数を大きく減らし、更にとどめのように新規外国資本参入を食らって壊滅的な状態になるでしょう。

さて、民主党中枢は、2011年10月1日に横浜APECで菅直人氏がTPP参加を言い出すまで、その内容を知らなかったはずがありません。知らなかったのは私たち国民だけです。

山田正彦前農水大臣は、このTPPという文字を「2010年夏に閣僚懇談会で見た」と証言しています。(インターネット誌「ザ・ジャール」による)となると、もう既に去年の夏の時点で、民主党内部ではTPPが何者か、なにを目指しているのかについて情報があったことになります。

時計を遡ると2009年11月14日に、訪日したオバマ大統領は、「米国はTPPに参加する」と演説しました。

そしてまさにその同日、USTR(米国通商代表部)のロナルド・カーン代表は、「米国はTPPをAPECなみの広域自由貿易協定にするつもりで、これはFTAではできなかった諸懸案を解決することだ」と述べています。

そして翌月、カーク代表は、「TPPは工業、農業のみならず、金融サービスまで含む」と書簡の中で述べています。

またオリジナル・メンバーによるTPPは、2004年に締結し、2006年に発効していますが、その中にもしっかりと「農業、工業、金融、医療、政府調達、法務サービスの自由化」が書き込まれています。

では、時系列に沿って整理しましょう。

・2004年。締結のTPP原型締結時の内容が「工業、農業、金融、法務、政府調達」に及ぶ大きな範囲を覆っていること。

・2009年11月。オバマ大統領訪日演説で、「米国はTPPに参加する」との発言。

・同日,及び翌月のUSTRカーク代表の「TPPは工業、農業、金融にまたがる広域自由易圏である」という発言。

・2010年3月。行政刷新会議の「ライフ・イノベーショ」(混合医療制度)と、「農業の規制緩和」。

・20010年夏。山田前大臣証言。「TPPは閣僚講で資料が配られていた」。

・2010年10月。菅直人首相のAPEC席上のTPP参加発言。

このような流れで見れば、TPPが突然現れたものではないことがわかるはずです。そして、前原前外務大臣が言うような「農業の対GDP比率は1.5%。98.5%は農業の犠牲になるのか」という発言が、いかに虚偽に満ちたものかお分かりになるでしょう。

前原氏はTPPをがいかなるものかのすべての情報を持ちながら(でなければ外相などやめてしまえ)、あえて農業のみを叩いたのです。

それは農業が分かりやすい「悪役」だったからです。農業ほど反論せずに耐え忍んでしまう部門が他にありますか。だから、彼は農業を標的にしたのです。あたかも98.5%の国民が農業によって迷惑しているような比喩を用いて。

民主党政権は、TPPが農業のみならず、医療、金融、法務、政府調達まで含むことをそうとう前から知りながら、農業を生贄とするTPPによる黒船型日本改造をもくろんでいます。

そのためにTPPの全容から国民の目からそらし、単なる農業問題に過ぎないという誤った情報を国民に印象操作したいのでしょう。

私はこの間、あえて農業ブログなのにもかかわらず、TPPを農業分野としてだけ語ってこないようにしました。

それは、農業問題は確かに大きいが、農業者がそれのみで主張していくならば、相手の攻撃の幅と大きさを見誤るからだと思ったからです。

TPPを止める闘いは、「規制緩和、制度改革」を錦の御旗にした新自由主義的日本改造が底流にあり、それを米国流の黒船でなし遂げようとする勢力との「国の形」をめぐるものになります。

それがわかっているからこそ推進派はわずか1か月で、なにもかも国民に秘匿したまま突き進もうとしているのです。

■写真 夕焼けの空。まるで緋色のカーテンのよう。

 

Photo

 

2011年11月 3日 (木)

11月APECで参加表明しても、米議会承認まで半年待たされて、TPP交渉ルール作りには参加できないことがわかった

011
TPP推進派はどうかしているのではないでしょうか。鹿野農水大臣の「10月に既に密談して屈伏していた」報道は、まったくの根も葉もない捏造だとバレてしまいましたhttp://www.youtube.com/watch?v=Ycw0VEhSSvQ 

野田総理との「密談」自体がなかったそうですから、鹿野大臣とすれば、とんでもない濡れ衣を着せられたものです。

私もよもやフジテレビがこんなウソ100%の報道を流すとは思わなかったために、まことに申し訳ないことをしました。当該記事には訂正とお詫びをつけておきました。なお、フジは未だ訂正報道はしておりません。 

さて、このTPP交渉参加で国民皆が思うのは、「なんでこんなに急ぐんだろう」という推進派の焦り方です。わずか正味1か月で決めようというんですから、なんともすさまじい限りです。 

常識的に言っても、これだけの大問題を、ろくな国会審議もせずに、国民に内実を知らせずに踏み切るということ自体、なんだかな~と思う国民は賛成反対を問わず圧倒的に多いようです。 

その理由のひとつを、国家戦略室のおそらくは玄葉光一郎氏(現幹事長代理・松下政経塾第8期))が書いた内部文書は、こう説明しています。http://mainichi.jp/select/biz/news/20111028ddm005020026000c.html

米国がAPECで政権浮揚につながる大きな成果を表明するのは難しい。日本が参加表明できれば、米国が最も評価するタイミング。これを逃すと米国が歓迎するタイミングがなくなる。」 

再選をめざすオバマ大統領は、11月のAPECでの成果を上げたいと思っているから、日本がTPPで手柄をたてさせてやることで、米国が評価してくれるだろう、という願望めいたものだったことが分かりました。 

そしてもうひとつの理由が、「交渉参加時期を延ばせば、日本は原加盟国になれず、ルールづくりに参加できない。出来上がった協定に参加すると、原加盟国から徹底的な市場開放を要求される」、というものです。 

前者は政府の思惑ですからともかくとして、後者は政府筋と推進派からひんぱんに流されたアナウンスでしたからご記憶に新しいと思います。 

このTPP推進派の理由づけも、どうも怪しくなりました。
(欄外資料1 東京新聞11月2日切り抜き参照)
 

これも政府内部文書です。このような政府内部文書が続々と漏洩するのは、諸官庁にも多くの懸念があることを物語っています。

さて、外務省と思われるこの内部文書は次のように政府に状況を説明していました。 

米通商代表部(USTR)の高官が、日本の参加を認めるには米政府・議会の非公式な事前協議が必要で、参加決定に時間がかかるため「受け入れが困難になりつつある」との認識を示していた。」 

この政府内部文書によれば、米国議会の参加審議には半年かかるために、いくら11月のAPECで米国にゴマをすっても、米国としては、「歓迎しますが、議会にかけてみますので半年待って下さい」、と答える公算が高いということになります。 

そして米議会筋はこう言います。
日本を受け入れるため、現在、米国やチリ、豪州など九カ国で進行中のTPP交渉を遅らせることは望ましくなく、既に参加期限は過ぎた、と明確に述べている」。
 

つまり11月に参加表明をしようとしまいと、参加ルール作りには日本は加わる余地はないのだ、という先行国の意思です。 

実は既に、米国はNZとのTPP交渉においてこんなことを言っていました。
(欄外資料2 日本農業新聞5月19日参照)
 

初のTPP交渉8カ国でゴールド・スタンダード(絶対標準)に合意できれば、日本、韓国その他の国を押しつぶすことができる。それが長期的な目標だ」と語った。(米国大使館公電から)」 

この在NZ米国大使館の公電は、ウイキリークスの"Viewing cable 10WELLINGTON65, DAS Reed Engages on TPP, U.N. Reform, Environmental"(2010年2月19日)が原文です。http://wikileaks.org/cable/2010/02/10WELLINGTON65.html

これによれば、米国は去年10年2月段階で既に、日本と韓国を標的とした「ゴールド・スタンカダード」を考えていたことになります。

「ゴールド・スタンダード」という言葉は元々は、「金本位制」のことですが、転じて絶対基準という意味で使われています。

この米国はNZとの交渉の席上で、このようなもくろみを語っています。

農地への投資制度や食品の安全性などの規制や基準を統一した「絶対標準」を定め、受け入れ国を広げることで経済自由化を進めようとしている」。

もう既にレールは敷かれているのです。そしてルール作りには日本は参加させない、これが先行諸国の意思であり、なによりも米国の意思です。

そして、極めてわが国に不利な「ゴールド・スタンダード」が、なんのルールづくりにも参加できないわが国を待ち受けているというわけです。

常識に立ち返る必要があります。このような拙速の極みでTPP参加に突っ走ってもなにひとつ良いことはない、これが時間が立つに連れて明瞭になってきました。

政府は、各関係省庁のTPP関連内部文書を開示し、国民に情報を提供するべきです。

話をいったんそこまで戻してから、進めても遅くはありません。なにせ、どう急いでも米議会で半年間ペンディングされてルール作りには間に合わないのですから。

■写真 北浦の夜明け。水鳥の羽音とさえずりがをお聞かせしたいものです。

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■資料1 TPPルール 主張困難 米「参加承認に半年」
東京新聞 2011年11月月2日 07時03分
 

環太平洋連携協定(TPP)交渉について、米通商代表部(USTR)の高官が、日本の参加を認めるには米政府・議会の非公式な事前協議が必要で、参加決定に時間がかかるため「受け入れが困難になりつつある」との認識を示していたことが、日本政府の内部文書で分かった。 

正式協議を合わせると米議会の参加承認を得るのには半年間程度が必要な見込みで、早期参加表明しても来夏にまとまる予定のルール策定作業に実質的に加われない可能性も出てきた。 

 日本に有利な条件を得るため早い参加が必要、というTPP推進派の主張の前提条件が崩れかねない状況だ。 

 野田佳彦首相は、今月十二、十三日にハワイで開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議で参加表明を行いたい意向とみられ、民主党内で調整中。表明すれば、これが最速となる。 

 日本政府は、米国の承認手続きに関連し、米議会の了承には最低九十日間の協議期間が必要としていたが、事前協議には触れていなかった。日本政府関係者によると、この期間は三カ月間程度という。 

 内部文書によるとUSTR高官や米議会関係者は、事前協議は「米政府と議会が時間をかけ非公式な協議を行う」とし、日本政府のTPPへの姿勢を歓迎できる見通しがついて「初めて九十日の期間に入る」と説明している。 

日本を受け入れるため、現在、米国やチリ、豪州など九カ国で進行中のTPP交渉を遅らせることは望ましくなく「既に参加期限は過ぎた」と明確に述べている米議会関係者もいる。 

 TPP参加を後押しする経済産業省などはこれまで「早期に参加して有利な条件を獲得すべきだ」と主張。しかし、APECで参加を表明しても、交渉参加できるのは早くて来年の夏前。九カ国は来夏までの合意を目指している。日本が加わった段階ではルールの細部まで議論が終了している可能性が大きい。 

 内部文書は、日本の外務省などの職員がTPPの交渉に集まった米国などの担当者に、日本参加の期限などについて質問し、まとめた。 

 

■資料2 TPP“主導国”] 米国外交公文から読む 本音と現実  

 ニュージーランド外交貿易省のマーク・シンクレアTPP首席交渉官は「TPPが将来のアジア太平洋の通商統合に向けた基盤である。もし、当初のTPP交渉8カ国でゴールド・スタンダード(絶対標準)に合意できれば、日本、韓国その他の国を押しつぶすことができる。それが長期的な目標だ」と語った。(米国大使館公電から)  

 環太平洋経済連携協定(TPP)交渉でニュージーランドと米国は、農地への投資制度や食品の安全性などの規制や基準を統一した「絶対標準」を定め、受け入れ国を広げることで経済自由化を進めようとしている――。TPP交渉を主導する両国のこうした狙いが、在ニュージーランド米国大使館の秘密公電に記載されていた両国政府の交渉当局者の会話から浮かび上がった。  

ニュージーランドの交渉当局者は「絶対標準」を受け入れさせる国として日本と韓国を名指ししている。これは国内の規制や基準の緩和・撤廃につながり農業だけでなく国民生活の多くに影響を与える可能性がある。公電は、内部告発ウェブサイト「ウィキリークス」が公表。ニュージーランドの当局者らへの取材と合わせて分析した結果を報告する。  

 2010年2月19日、ニュージーランドのシンクレアTPP首席交渉官が、米国務省のフランキー・リード国務副次官補(東アジア・太平洋担当)に語った内容だ。シンクレア氏は、TPPの目標が農産物などの市場開放だけではなく、アジアなどで推進する米国型の経済の自由化が両国(アメリカ合衆国、ニュージーランド:古田注)の長期的利益につながると強調した。  

 公電は、ニュージーランドのウェリントン市内で行われた両者の会談の概要を、当地の米国大使館がまとめた。「秘密」扱いだ。外交を担当する国務省だけでなく、農務省や通商代表部などにも送るよう記述してある。
(日本農業新聞5月19日 太字引用者)

 

 

 

2011年11月 2日 (水)

TPPは日本包囲網だ

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TPPは当初、環太平洋の比較的小さな国同士が経済自由化協定を結ぼうとして始まりました。それは、TPPオリジナル・メンバーを見れば分かります。 

ベトナム、マレーシア、シンガポール、ブルネイ、チリ、ペルー、NZ(ニーュージーランド)などです。ここでまとまった自由化ブロックを作っていれば、それなりに小ぶりながらカチッとした自由貿易圏ができあがったことでしょう。 

しかしそうは問屋が卸しませんでした。なぜでしょうか?

上のオリジナル・メンバーの国々の中に、「オレも入れろや」と、オセアニア域内大国のオーストラリア、そしてなにより世界最大の市場である米国がのっそりと入ってきたからです。これでTPPの性格は激変します。 

自由貿易を建前にする以上、米国とオージを門前払いにするわけにもいかず、オリジナル・メンバーたちにはさぞかし困惑が走ったことでしょう。 

たとえば、NZです。NZは防衛のかなりの割合をオージーに預けてしまっているほどつながりが深いのでが、自国の乳製品、畜産物はしっかりとブロックしてきました。 

NZは協同組合がしっかりと根付いている国で、過剰な競争を排して国民に安く農製品を供給してきた実績がありました。消費者と生産者がウイン・ウインの関係でバランスしていたのです。ちょっとわが国と似ている部分がありますね。 

ここに隣の大国オージーから「自由化ですからごめんなさいよ」、とばかりに怒濤の輸出をされたら防ぐ方法がなくなります。おまけに、オージーだけならともかく、世界最大の畜産国のひとつである米国まで涎を垂らして門の外に待っているとなると、反対運動が起きないはずがありません。 

この反対運動は、実はオリジナル・メンバーの国々すべてで起きました。それらの国は、特異な貿易国家であるシンガポールを除けば、1次産品(農産物、鉱物資源)輸出国であり、とてもじゃないが大国の市場主義にかなうタマではなかったからです。

これは農畜産物大国のオージーですらそうで、米国と完全自由化された市場で競争力を競うとなると、果たして太刀打ちできるか大いに疑問なようです。 

そして当惑する彼らに、米国がこう言ったのでしょう。
「大丈夫、テイクイットイージーね。ミーが日本をTPPに引っ張ってくるから、そうしたら君らにも大いにメリットがあるでしょう。いかがかしら名案でしょう。今、日本は震災で青息吐息で、しかもうちの国が恩を売っておいたから、バッチリよ」。

米国は叫びます。「わが国はゴネるが、その代わり皆んなで世界でも指折りの市場規模を持つ日本を標的にしようではないか。さぁ、TPP諸国よ、めざせ日本を!」。

米国からすれば、一次産品の輸出の受け皿は、自分ではなく日本に向けたかったし、日本を入れることでTPPテーブルの主導権を握ることができると読んだのです。

そもそも虫がいいことには、米国には輸入を増やす気などさらさらありません。ただでさえ不動産バブルが弾けて以降、国内景気が悪く、大統領選に赤信号がともっているのに、輸入を増やしてこれ以上失業者を増やす?とんでもない。

もちろん輸出は大いにしたい、しかし輸入で国内産業をに影響は出したくない、実にはっきりとした国家利害です。

どこかの国の首相のように、「わが国は鎖国している。平成の開国だ!」などと国際会議で口走って、いまでも充分に低関税なのに、ターゲットは関税外障壁だ、とばかりに自分のウィークポイントを大声でしゃべるバカヤローは世界にはいません。

日本はTPP参加表明国の中で、ずば抜けた特質を持っています。下図をご覧ください。Photo
わが国は、よく数字もろくに調べないコメンテーターたちが言うような、「日本は輸出で食っていますからねぇ」という国ではありません。輸出の対GDP比率はわずか10.71%にすぎず、先進国を問わず世界第2位の非輸出依存国です。

ちなみに、TPPに参加する東南アジア諸国は100%以上の輸出依存率です。

一方韓国はと見ると、輸出依存率43.64%、つまり国の経済の半分は輸出で回っています。しかもサムスンとヒュンダイ、LGの3社で稼ぎだしているようなものです。こんな歪な経済構造の国だから、米韓FTAを結ばざるをえなかったのです。

ですから、韓国には国内産業を切り捨てても、輸出市場を拡大する巨大なメリットがあるのです。

一方、輸出依存率10%ていどのわが国には、一部産業(自動車、電気・電子製品)には多少の恩恵はあっても、国全体としてみた場合メリットはまったくありません。

そして輸入依存率もまた低くわずか9.86%にすぎません。これまた先進国第1位の低さです。輸入品は、ほぼすべてが一次産品か、エネルギー関連に絞られています。

こんな内需と外需のバランスが取れた国をどうやって外国は攻めるのでしょうか。

日本に残る数少ない高関税部門を叩き潰して、強引に輸入食料をこじ入れるのがひとつ。そしてもうひとつが、関税外障壁によって守られている金融、保険、法務サービスをこじ開けて侵入すること、このふたつしかないではないですか。

TPPに交渉において日本の同盟国は存在しません。日本のような先進技術による付加価値製品を得意とする国が他に存在しないからです。

もしアジアにドイツのような国がいたら状況は違うでしょうが、アジアでの孤立した高付加価値製品輸出国である以上、1次産品輸出国連合の拡げた手の中に自ら飛び込むようなものです。

まさに飛んで火に入るなんとやら。日本包囲網を拡げている国々に対して、「開国」を叫んで自分から飛び込んでいくお人好しな馬鹿者、それがわが国です。

■写真 夕陽に染まる畑がまるで火星みたいですね。

2011年11月 1日 (火)

自動車輸出の対GDP比率は1.23%、家電・電子機器輸出わずか0.036%! こんなていどのためにTPPで国内をめちゃくちゃにするのか!

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貴重なコメントありがとうございました。まったく同感です。 

私たち首都に近い農業者は、今週いっぱいをかけて、最後の抵抗をします。蟷螂の斧ですが、30年ぶりでデモにも行くことにします。私がやると、発声しながらの健康ウォーキングみたいですが(笑)。 

鹿野農水大臣は既に10月段階で野田首相に受諾を合意していたことが発覚しました。この節操がない男は、内閣決定に渋々という言い訳をしながら消極的賛成をしてしまうことでしょう。山形選挙区の農業者の皆さん、この男は必ず落として下さい。

追記  この鹿野大臣密談・容認報道はフジテレビの捏造報道でした。鹿野大臣は強く否定しました。私はそれを信用して、お詫びして訂正します。

残る薄い壁は、前農水大臣の山田氏と前副大臣の篠原氏たちです。宮崎口蹄疫の時、私がさんざん批判し、しかし今にして思えば、あの悪党づらが頼もしかった山田氏の最後のふんばりに期待します。 

南の島さんが仰せのような、TPPを軸とする政界再編があれば素晴らしいと思います。しかし、残念ながら、マスコミが黙殺を決め込み、国民に問題の論点が見えない今の状況では、そこまで彼らが踏み切ることは難しいでしょう。

もし出来たのならば、私にとってもひさしぶりの支持政党が生まれることとなります。 

さて、TPPについて推進派は私たちのことを「おばけ」扱いにしながら、具体的な数字を出してきません。出てくるのは、「平成の開国だ!」、「世界の無関税ネットに乗り遅れるな」、「閉塞をTPPで吹き飛ばせ!」と言った景気がいいようで、よく考えると意味不明な情緒論ばかりです。 

このタイコを叩いているのが、自動車業界と家電業界なのはご承知のとおりです。彼らは確かに焦っています。世界最大の需要国・米国市場で、韓国に首の差まで追い上げられてきているからです。 

2010年にサムスン電子は大型フラットテレビの分野で、実に40%のシェアを獲得しました。ヒョンダイ自動車も、毎年売り上げ新記録を達成してきています。前年比率24%という驚異的伸びをしています。 

理由は実に分かりやすい。これまた驚異的ウォン安だからです。08年からウォンは手のつけようもなく売りまくられて通貨危機一歩手前の水準にまでなっています。 

・1980年のウォン対米ドルレート・・・・700ウォン
・2007年               ・・・・900
2008年(リーマンショック)    ・・・・1600
・2010年               ・・・・1200
・2011年               ・・・・1100

また対日本円レートでも同様に過激な下落を続けています。

・2007年のウォンの対円レート ・・・7.5ウワン
・2010年              ・・・・13ウォン

つまり、韓国製品は米国市場で、「常に半額ダンピングをしている」に等しいのです。これで日系企業の苦戦は、米国のたかだか自動車関税2%、家電・電子製品関税5%などなんの関係もないことが分かります。

韓国の猛追と驚異的伸びは、自国通貨危機を逆手にとった彼らの唯一の延命策でしかないのです。こんなヤバイ方法を日本がまねできるはずもありません。

北朝鮮が破滅カードを使った瀬戸際外交ならば、韓国のそれは自国の破産カードを使った瀬戸際輸出でしかありません。これをしてエコノミストは、「韓国に学べ」、「サムスンに学べ」、というつもりでしょうか。

この流れの上に、更に自国の国内経済を壊滅に陥れるリスクを覚悟の上で締結したのが米韓FTAです。結果。数年後には、サムスンとヒョンダイのみが栄えて、韓国の国内経済は焼け野原になることが約束されています。

TPP推進論者たちは、世界最大の米国市場でのシェア確保のために関税の自由化を叫んでいます。しかし、それが特効薬なのかどうか、はなはだ怪しいものです。

まず、自動車業界は日米自動車摩擦以降、米国現地生産分を6割にまで増やしています。たかだか4割に満たない日本輸出の製品の、それもわずか2%ていどの関税が大きな寄与するとは思えません。

あるとすれば、5%関税をかけられて、まだ米国内生産分が少ない家電・電子製品でしょう。これが無関税化によって一息つけることはありえます。しかし、また韓国ウォンが安値を更新すれば、たかだか2%の関税幅など一瞬にして吹っ飛んでしまうことでしょう。

ではそもそも、彼ら自動車、家電・電子製品の輸出の伸びが、わが国のGDPの躍進に貢献すること自体があるのでしょうか。

ありません。それでは「たかだか1.5%にすぎない」と前原政調会長に馬鹿にされたわが農業と比べてみればすぐにわかることです。下図をご覧ください。

Photo
自動車輸出の対GDP比率は1.23%、家電・電子機器輸出に至っては0.036%です。もはやお笑いではないですか。 

自動車輸出ですらわが農業の対GDP比率1.5%より少なく、家電・電子機器に至っては2ケタ違いの少なさです。 

こんなていどでよくもまぁ、「農業の1.5%のために、残り98.5%が犠牲になるのか」、などと前原氏が言えるものです。 

あ、彼とドジョウ総理はパナソニック政経塾出身でしたっけ。パナソニックが作った最悪の商品、とはあなた方のことでしたよね(笑)。 

こんなていどのために、わが国が「開国」し、国内経済の基幹産業たる農業を壊滅に追い込み、さらに法律、保険、金融サービスなどを米国流にしなければならない理由などなにひとつありません。

 

■写真 北浦の夜明けです。わが地域は、東に北浦、西に霞ヶ浦をもつというゼイタクさで「弐湖の国」と自称しております。

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