米国がTPPで狙うのは保険と金融。野田政権の姑息などじょう戦法を許すな!
2004年に締結された「オリジナルTPP」を、外務省や経済産業省が何も知らないはずがありません。TPPは既に20世紀末から各国間で交渉が行われていたのですし、もし情報をまるで取っていないとしたら、単なるバカです。
政府は、工業、農業、金融、法務、政府調達などの完全自由化を行う多国間協定こそがTPPである、という認識は当然持っていたはずです。
そして2009年に就任したオバマ大統領が参加を表明した「新TPP」に、どのような期待をもって参加表明したかも簡単に透けて見えたはずです。
結論から言えば、米国は金融、保険、法務などの各種サービスと建設業を売りたいのです。
米国はもはや製造国ではありません。あまりのクレーム訴訟の多さに家電メーカーが音を上げて消滅してしまったといった情けない国です。
「GMにとっていいことは、米国にとってもいいことだ」とまで言い切ったGMすら、GMのローン会社(GMIC LLC)の金利で食いつないで、あげくはチャプター11(破産更生法)のドツボにはまってしまったような国です。
既に、米国のGDPの8割ちかくを金融や保険などのサービス産業と住宅建設などが占めています。こんな金融サービスに特化したような米国が、自由貿易圏構想に乗り出す時に、自分の最も売りたいものを除外しますか?
わけはない。米国が売りたいのは、自動車でもなければ、農産物でもない。自動車は国際競争力を失って久しいし、農産物は今でも低関税で輸出できています。
ジャポニカ米など米国産米の4%しかもっていなのですから、今さら売るものなど特にありません。もちろん乳製品などはありますが、そのためだけにTPPといった大仕掛けを作るほどのボリュームはありません。
米国が、オバマ大統領の演説のように、「輸出を2倍、3倍にする」とすれば、それは金融、保険、法務、建設業などのサービス分野以外考えられないのです。
ところで、TPPやFTAが、既存のWTOなどの自由貿易協定と異なるのはふたつあります。
ひとつは、当該国の国民とまったく同等か、あるいはそれ以上の優位を与える「内国民待遇」です。
「それ以上の優位」というのは、米韓FTAに見られるように、米企業、米国人に対して、韓国の国内法の規定上回る優位な条項があった場合、国内法を超越して米韓FTAを優先適用する条項が盛られているからです。
自国民より外国人を優遇するというまさに19世紀的不平等条約です。
ふたつめに、海外投資企業や個人は、関税や非関税障壁一切を除去して、当該国に「市場アクセス」できる権利をもちます。
米韓FTAにおいては、米国企業が期待した利益を上げられなかった場合、韓国が協定違反をしていなくとも、米政府が米企業に代わってISD(「国家と投資家の間の紛争解決手続き」機関)に提訴できます。
(日本農業新聞11月4日より参考のため引用しました。ゆがんでいてすいません。)
上図は北米FTA(NAFTA)における投資国が当該国家を提訴した事例数です。米国からの提訴が7割ちかくを占め、加盟3カ国の訴訟王だとわかるでしょう。
このISDというのも米国の息のかかったクセのある機関で、これに提訴された場合、当該国は非常に不利な立場に追い込まれるでしょう。これも負ければ国内法を超越します。
これなど先の不平等条約のたとえで言えば、治外法権とでもいうところです。現代は、ザンギリ頭の開化の時代かつうの。
このようなTPPに日本が参加した場合、米国資本は、国内法を超越する「内国民待遇」を得て、しかも完全にフリーな「市場アクセス権」を有する国内企業より優位な立場のモンスター資本となります。
そして米国が狙うのは日本の世界第2位の保険市場と金融市場です。ここが彼らが狙う本丸であって、農業分野のモノの輸出増加は二の次なはずです。
TPP推進派は、この米国の真の獲物をカモフラージュするために農業を前面に出し、あたかも日本農業が遅れているるからTPPが結べないのだ、と盛んに宣伝しました。
野田首相は子熊の電車ゴッコよろしくコンバインに乗る芸をみせ、前原政調会長は「たった1.5%が98.5%をジャマしている」と自慢の顔に青筋を立てました。
仙谷政調会長代理に至っては、「農協が反対だと騒いでいる。手を入れて分裂させてやる」(意味そんなところ)と放言しました。(しかし、よく言いますなぁ、あの人。だんだん顔が悪くなるよ。)
まったくあんたらはどこの国の政治家なんでしょう?
この人たちは明らかに米国の利害の手先と呼ばれてもしかたがありません。相手国の意図をひた隠しにし、筋違いな農業攻撃に明け暮れる人たちです。
民主党内でも、TPPをめぐって真っ二つに割れてしまいました。山田前大臣は意気軒昂なようです。この中から、明らかに与党内部や官僚からのリークと思われる文書が続々と漏洩してきています。
推進派のともかく11月中にタッチダウンするまでは、一切の議論を封じ、情報は出さないという姑息などじょう戦法は通用しなくなりつつあります。
推進派を公の場に引きづりだし、公開討論させましょう!
■写真 石岡の蔵です。石岡には国府があったためにこのような古い家並みが沢山残っています。
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■追記 自民党はは反対にまわるようです。大変にいいことです。民主党はあいかわらずグチャグチャですが、慎重派が勢いを盛り返しています。これで見切り発車するとなると、野田首相は独裁者の汚名を着ることになります。
TPP(環太平洋経済連携協定)の交渉参加問題は、民主党内の意見集約が難航する一方、自民党は、11月中旬のAPEC(アジア太平洋経済協力会議)の首脳会議での交渉参加表明に反対する方針を取りまとめた。
自民党の谷垣総裁は「まったく今の段階で(TPPを)拙速にやるのは、情報も十分ないし」と述べた。
4日に開かれた自民党の調査会では、「政府が、正確な情報を出さないため、国民的議論が全く熟していない」などとして、APECでのTPP交渉参加表明に反対する方針を決めた。
一方、民主党の参加慎重派の会合には、田中 真紀子元外相が出席して、「現時点でTPP交渉に参加表明すべきでない」と訴え、そのうえで、参加慎重派は、関係団体とともに決起集会を開き、APECでの参加表明反対を決議した。
一方、推進する立場では、玄葉外相がTPPについての討論会に出席し、TPPの交渉の中で、特定品目を関税撤廃の原則から除外することは可能との見通しを示し、交渉参加に理解を求めた。
玄葉外相は「米豪のFTA(自由貿易協定)は、非常にレベルの高いものです。除外したものが108タリフライン。砂糖とか。たとえば、お米って調整品含めてどれくらいのタリフラインかっていうと34。じゃあ除外の可能性はゼロなのかといえば、そうではない。ということはですね、申し上げてもいいかと。これはもう、交渉次第ということではないかと思います」と述べた。
一方、民主党のプロジェクトチームは、4日の役員会で、鉢呂座長が取りまとめの議論に入りたい考えを示したものの、慎重派の幹部が猛反発するなど紛糾し、その後の総会でも、賛否両論が出て、意見集約への道筋は見えていない。
民主党執行部は、6日にも会合を開き、党の提言案の策定に向けた議論を始めたい考えだが、取りまとめは、野田首相のAPEC出発直前までかかる見通し。
(FNN)
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コメント
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政府は一昨日からまやかしの「公開討論会」
そして野田総理は、選挙前にTPP批准をすませてしまい、後は政権がどうなろうと野となれ山となれの焦土作戦!?
次の政権はどのみち地獄です。
山形県でも民主系知事(バックは鹿野道彦)も含め反対派が多く、決起集会や署名運動も起きてますが…いかんせん時間切れが近い。それこそ政府の戦術ですな。あー、イライラする。
見事な蔵と板塀です。秋空に映えますね。
投稿: 山形 | 2011年11月 5日 (土) 07時51分
これまでのTPPに関する数多くの濱田様の記事で、地方の農家よりも都会の一般市民の方が、TPPによってダメージを受けることが明らかになってきたと思います。
東京などの都市生活者こそTPPに異議を唱えるべきです。TPPによって日本のGDPが経産省の言うように仮にUPしたとしても、その利益は一部の輸出企業に流れるだけで、90%(もしかしたら99%)の市民は所得減・不安定な職場環境に悩まされることでしょう。
輸出企業も更なる利益を求めてTPP締結国のベトナムやマレーシアなどに進出して、日本国内の空洞化が加速するだけでしょう。
更に、今日の記事のような、庶民の金融・保険も不安定になります。
アメリカの狙いだけでなく、TPPを推進する日本企業の目論見も明らかになれば、都会の市民にもTPPが人事ではなくなるはずです。
杞憂かもしれませんが、年金や医療保険等が政府の無能で破綻する前に外資に差し出して甘い汁を吸わせて、どうにもならない状態にしてから、アメリカ流の小さな政府にして、面倒な年金や医療保険や福祉から政府は手をひこうと、中枢部の悪党達は考えていそうな気がします。政府の失敗をグローバル化のせいにしそうです。
投稿: 南の島 | 2011年11月 5日 (土) 19時28分