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TPPで来るであろう数年後の地方の未来

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TPP参加と言ったやいなや、鼻ヅラにUSTR(米通商代表部)カーン代表のきついジャブを一発食らったようです。(欄外資料1参照) 

こんなていどでオタオタする日本政府のほうが笑えます。全米自動車労組やビッグスリーはTPPに大反対で、これから半年の米議会での審議ではおおもめにもめることでしょう。 

そしてその都度USTRから日本政府に、「おい自動車の関税外障壁をなんとかしろ。たとえば、安全基準を低くしろしないとTPPにはいれねぇぞ」、などと事前交渉の席で言われ続けることでしょう。

「日本のTPP交渉参加に対し、米通商代表部(USTR)のカーク代表は11日に米国産牛肉の輸入規制撤廃、日本郵政への優遇措置見直しのほか、自動車市場の開放を事前協議のテーマとして例示した。」
(産経新聞11月14日)
 

TPP交渉は、TPP加盟が認められておもむろに始まるのではなく、参加表明と共に開始されるのです。私たちはこのことを肝に命じましょう。

さて、今の段階では、カーン代表は、自動車、郵政、牛肉の3分野を例示しただけですが、とてもじゃないが、こんなものは氷山の一角です。なにせ21分野(24分科会)もあるんですから。(資料2参照)

この中には「政府調達」がありますが、米国はオーストラリアにおいては、水道や水資源管理まで含んだ規制の撤廃と、海外投資家の参入をゴリ押ししました。

日本はTPPで、東北復興事業、農水産業などのインフラ整備まで餌食になる可能性が出てきました。(資料3参照)

政府調達とは、「公共施設の建設や公共サービスの入札」とされていますが、TPPにおいては海外投資家が国内企業より不利にならないために最恵国待遇の一段上の概念である「内国民待遇」を要求します。

これは、「海外投資家を自国民とまったく同列で待遇せよ」、ということで、おおよそ現代のこととは思えない19世紀的条項です。

いや、ISD条項という主権を超越したスーパー国内法がありますから、自国民以上の待遇となります。

建設業でも、「市場アクセス」にいかなる障壁がないことを要求されます。

たとえば、レーガン政権は1980年代に、米国は関西新空港の工事に米企業を参入させよと日本に圧力をかけてきました。

米国はとうに製造国を止めて金融国家になって久しいですが、こと建築業は数少ない得意な「作る」分野だからです。

この時は、1988年に大型プロジェクトに限って米企業に特別措置をすることで譲歩した経緯があります。

山田正彦前農水大臣はインタビューの中でこう言っています。

地方自治体の公共事業は23億円以上の案件に限ってできました。しかしTPPで公共事業の参入自由化となれば、地方の土木会社は致命傷を負うでしょう」。
(インターネットマガジン)

TPPにおいて、米国はまっ先に東北の復興特需に目をつけることでしょう。

未だ全貌すら分からない、おそらくは数十兆円にのぼるであろう、東北のインフラ復興に米国は、「内国民待遇」を錦の御旗にして大規模参入してきます。

そして一方で、農林漁業補助金によるインフラ整備にも待ったをかけつつ、米企業にとって有利な地位を占めようとします。

TPP交渉参加の議論で漁業補助金の原則禁止が論点の一つに浮上してきた。TPPでは漁港などのインフラ整備も禁止対象となる恐れがあるとされ、東日本大震災の復興の支障になりかねないと水産庁や漁業関係者は警戒を強めている。」
(北國新聞2011年11月2日)

たとえば、政府調達は地方自治体にも及びますから、米国は関税外障壁として国際語での入札システムを要求してきます。つまり英語で仕様書を書け、ということです。

地方自治体職員は泣きながら、馴れない英語で文書作成することになります。ここで既に負けています。

ついで、この事業は「農林漁業補助金であって、TPPでは原則禁止ではないのか」とイチャモンをつけます。

ほとんどヤクザのいいがかりですが、政府は補助金投入の必要性を挙証証明するはめになります。ここまでくればもう米企業の参入は約束されたようなものです。

その是認を条件として、ドカドカと土足で米企業は参入を開始することでしょう。

当然のこととして,、参入米企業の監督はアメリカ人、従業員はすべて東南アジアの安価な外国人労働者です。地域にはビタ一文落ちません。

山田さんなどの極小の例外を除いて、民主党政権の多くを占める松下政経塾出身者のお坊ちゃん方は、地方の事情をなにもご存じありません。彼らは机上の空論にふけり、パソコン画面でしか世界を見ていません。

だから巨大多国籍企業には目が行っても、中小企業は目に入りません。大都市に目が行っても、地方は視野の外です。

では、地方経済はなにで回っているのでしょうか。農業、漁業、その加工業、そして土木業です。

あくまでも第1次産業が中心にあり、そこから派生するさまざまな事業分野がすそ野なのです。都市部と違って農業・漁業と離れて土木業があるのではないのです。

地方の中小土木業は、農業、漁業のインフラ整備を主な仕事としています。道路、水道、水利、土地改良、漁港整備などですが、従業員もまた農家の季節労働者であることは常識です。

農業、漁業を源泉とするさまざまな土木工事こそが、地方経済の中核だと言っていいでしょう。

ここに海外企業が、安価な外人労働者を使って参入した場合、地本土木業は短期間で壊滅状態に置かれます。

巨大ゼネコンにとってはTPPは海外へのこれまで以上の侵出にしかすぎませんが、地方の大多数の土木業者にとっては、東北復興事業や地元のインフラ整備を根こそぎ奪われていくことになります。

かつての小泉改革で、地方はメチャクチャになりました。その疲弊から未だ立ち直っていません。そこに大震災があり、原発事故が重なり、東日本はカウント8ていどのダウンを喫してしまいました。

そこにTPPです。いいかげんにしてくれ!、と言いたい。地方は経済の中心である農林漁業を潰され、それを加工する製造業や運送業を潰され、土木業に至るまで壊滅するのです。

これがTPPで来るであろう数年後の地方の未来です。

■ 写真  森林から登る朝日ですが、天気の具合でこう写りました。

 

          ゜。°。°。°。°。°。°。°。゜。°。°。°。

 

■資料1 TPP交渉で日米自動車摩擦再燃懸念も

産経新聞11月14日

 米国がTPP交渉の事前協議の議題として日本の自動車市場開放を挙げたことが日本側に衝撃を与えている。TPPによる関税撤廃に期待してきた自動車業界にとって「まったく想定していなかった事態」(大手メーカー幹部)だ。業界内では「言いがかり」(別の大手幹部)との受け止め方が大勢だが、来秋の大統領選を控えるオバマ政権が米国業界の意向を無視できそうにない。日本側は日米自動車摩擦が再燃するかのような動きを懸念している。

 日本のTPP交渉参加に対し、米通商代表部(USTR)のカーク代表は11日に米国産牛肉の輸入規制撤廃、日本郵政への優遇措置見直しのほか、自動車市場の開放を事前協議のテーマとして例示した。

 米自動車政策評議会(AAPC)も「日本の自動車市場は先進国で最も閉鎖的だ」などと批判。米側はこれまでも、次世代エコカーの有力分野とされる燃料電池車を日本に持ち込む際の手続きが不透明だとして日本側に改善を求めていた。

 これに対して、日本側では「水素を扱う燃料電池車は現行法で危険物積載車扱いだが、これは米車だけでなく日本車も欧州車も同じだ」(日本自動車工業会幹部)と反論する。ただでさえ日本の国内市場が縮小する中で新たな市場開放を求められても対処できないというのが共通認識だ。

 日本側には、米国車が伸びないのは米側の努力不足だという認識が根強い。2010年の輸入車販売台数に占める欧州車の割合が8割程度なのに対し米国車はわずか4%。業界団体の幹部は「なぜ“アメ車”が日本で売れないのかを学んでいない。学習効果がなさすぎる」と切り捨てる。

 ただ、米業界とっては自動車関税撤廃の危機感は強い。すでに米国は韓国との自由貿易協定(FTA)で合意、韓国車の関税ゼロを認めており、日本車までゼロになれば死活問題となるためだ。米議会の超党派議員団も日本市場が参入障壁に当たるなどとする書簡をカーク代表に出し、政治問題の色彩を強めている。

 米国が日本の自動車市場の開放を求め、1995年に合意した日米自動車協議では、米側が日本に米車販売の数値目標を要望。日本企業の自主計画で要求の一部を受け入れた。日本側には今後、コメなどの関税撤廃を例外扱いとするための難しい交渉が待つ。そんな中で米側の要求が強まれば、自由貿易体制構築とは名ばかりの“ごり押し”が迫られる可能性もある。(太字引用者)

■資料2 TPP協定交渉の分野別状況http://www.npu.go.jp/policy/policy08/pdf/20111014/20111021_1.pdf
1.物品市場アクセス *農業も工業も含む無関税化のことを指す。
 2.原産地規則
 3.貿易円滑化
 4.SPS(衛生植物検疫)
 5.TBT(貿易の技術的障害)
 6.貿易救済(セーフガード等)
 7.政府調達
 8.知的財産
 9.競争政策
 10.越境サービス貿易
 11.商用関係者の移動
 12.金融サービス
 13.電気通信サービス
 14.電子商取引
 15.投資
 16.環境
 17.労働
 18.制度的事項
 19.紛争解決
 20.協力
 21.分野横断的事項

 

■資料3 「TPP 意見集約急ぐ民主
北國新聞2011年11月2日

漁業補助金禁止の恐れ
-TPP復興に支障を警戒

 TPP交渉参加の議論で漁業補助金の原則禁止が論点の一つに浮上してきた。TPPでは漁港などのインフラ整備も禁止対象となる恐れがあるとされ、東日本大震災の復興の支障になりかねないと水産庁や漁業関係者は警戒を強めている。

 漁業補助金をめぐっては、乱獲を招いて漁業資源を衰退させるとして原則禁止を訴える米国等と、これに反論する日本や欧州連合(EU)が世界貿易機関(WTO)の場で激しく論争中。政府は現在のTPP交渉でも「(米国などから)提案があるもよう」と指摘し、日本が参加する際の懸念事項に挙げている。

 日本は補助金の中には漁業制限への協力金もあるとし「過剰漁獲につながる補助金に限った禁止」を提唱した。
 全国漁業協同組合連合会は1日にTPP反対集会を開催。服部郁弘会長は「関税と補助金のどちらがなくなっても困る」と危機感を訴えた。』

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コメント

まったく良く存じ上げておりませんので、教えていただきたいのですが、農業における耕作技術とか、収穫時期の判断など、非常に、都市居住者には、わかりにくいが、重要な知的財産を守れる国際法と言うのは、あるのでしょうか?(TPP賛成では、ありませんが、ここまで、来たら、もう国際的には、私見ですが、戻れないでしょう)

結局、歴史的にみても、基礎学問は、欧米が強く、応用、生産、高精度技術は、日本が強く、大量生産、大量消費、相手国向け開発は、中国が、強いのは、当面の現状なのでしょうから、米国が、種、遺伝子で、知的財産を主張してくるなら、狭い土地でも、収量をあげて、老人でも、味の良い作物を作る日本のノウハウを、知的財産として、権利金が得られるのうな農業に密接した農外収入を得ることは、難しいのでしょうか?

東南アジアやアフリカで、現地調達できる材料で、収量を増やすテクニックは、日本人が、強いように感じてますが、このまま、何代も受け継いできたノウハウを、後継者不足で、没にしてしまうのは、非常に、もったいないことだと思うのです。

今は、中国に、日本の技術が盗まれ、見た目は、そっくりの模造品が、流行ってますが、農作物も同じで、味や栄養価を数値化すれば、国内農産物は、放射線問題を除けば、最高だと思えます。

本来、マクドナルド戦略に、負けてきた日本人が、本来の日本人の繊細な味覚を取り戻すことが出来れば、値段だけで、農作物を購入する消費者行動は、減ると思えます。

投稿: りぼん。 | 2011年11月15日 (火) 11時58分

まず、TPP参加は不可逆ではないと思います。というのは、米国議会が日本参加を承認しない可能性もありえますから(笑)。
冗談ではなく、弱まっているオバマ大統領の力で日本参加をゴリ押ししているというふうに米国内の反対派からはみられているので、米国国内の動向を注意深く見ていきましょう。
私たちとしては米国内反対派が勝ってくれればやったね、というもんです。

そしてもう一点は、仮に米国で承認されたとしても、日本の国会で批准せねばお終いです。今韓国はこの攻防を激烈にやっている最中です。

国会批准時には、いくらなんでも「民主党という災厄」は終わっていると思いますので、なにかしらの連立でしょうが、今の経過の流れで簡単に批准できるとは思いません。ここがほんとうの土壇場です。

むしろ問題は、米国に参加承認を餌にして締結前妥協をしてしまう可能性です。今の政権ならかんがえられないことはないでしょう。私はこの方を警戒します。

さて知的所有権ですが、ご承知のように国際特許で保護されています。りぼんさんのおっしゃる広義の知的所有権だと栽培管理や味まで含むわけですが、これを「農法」として製造特許的に特許申請できるとなると面白いことになりますね。

ちなみに米国流は米韓FTAでは、米国が直接に韓国国内の知的所有権の規制ができるような条項です。これも例によって主権超越です。

投稿: 管理人 | 2011年11月15日 (火) 15時06分

乳牛改良は、北海道の約70%、都府県の酪農家約30%が参加実施している、牛群検定(月に一回個体毎の乳量や乳成分率(量)を測定する)によるデーターを活用し、種雄牛(種牛)の能力を推計、その評価成績によって、種雄牛を選抜淘汰を行います。選抜された種雄牛の精液を、一般酪農家が交配し、雌牛の能力(体型)を改良して行きます。
数年前、アメリカのコーネル大学がこれら手法について特許を言いだし、カナダは特許料を支払っていますが、ドイツは要求に対して裁判に訴えた結果、ドイツの主張が認められた事から、日本も同じ手法を取り入れる事に道筋が付きました。
横道に逸れましたが、こんな一例を見るまでも無く、訴訟大国が何を言ってくるか分からなくなると思います。

投稿: 北海道 | 2011年11月15日 (火) 16時35分

訴訟大国が何を言ってくるか分からなくなると思います。

>>>基本的に、まず、訴訟ありき の米国社会において、TPPに関らず今後、課徴金とか訴訟とかは、減ることは、ないと思います。相手の訴訟権を取り上げることは、難しいでしょうし。

過去、パソコンのOSについては、マイクロソフトに、膨大な賠償金を支払い、結局、日本独自開発OSも含め、市場撤退したようですが、本当にどこまでが、物まねなのか、コピーなのか、正直、私には、解りませんけど。。

携帯電話OSも、お互い特許侵害だと、訴えあっているようですが、OSも数年で、変わっていくので、実際、訴訟して、勝っても、事実上、意味のない時間を経過することになるのかもしれませんし。

国際特許が、訴訟を減らすかどうかは、存じませんが、ないよりは、増しなのかも知れません。

日本も、弁護士、会計士の名前だけで、食べていける時代は、終わっています。食べるには、日本の弁護士も、国際弁護士として、対抗していく時代に、なっていくのではないでしょうか?

投稿: りぼん。 | 2011年11月15日 (火) 21時05分

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