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2011年11月22日 (火)

守らなければならない国の形と「広義の生産要素」  佐伯啓思氏の論説を読む

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京都大学の佐伯啓思教授がこのような論陣を張っておられます。(産経新聞11月22日) 

佐伯氏は、「TPPで日本は開国せよ、という論議があるが、それはまったくもって悪質な宣伝というものだ」と問いかけ、こう続けます。 

「この十数年日本は明らかに規制緩和を行い、市場を開放し、金融を自由化し、グローバル化をそれなりにしてきた。つま国を開いてきたのである。その開国の結果、日本は海外の安価な賃金と競争し、企業は海外へと移転することとなった。それは日本にデフレ経済をもたらした。」 

そしてこう続けます。 

「開国政策であった構造改革は決して日本経済を再生させなかった。(略)日本は国際経済で孤立しているわけでも国を閉ざしているわけでもない、充分に開国している。問題はいかにして、どのように国を開くかである。」 

「もっと正確に言えば、どこまで開き、どこを閉じるのかが問題なのだ。それは政治交渉力に依存する。」 

佐伯氏は「TPPを国益である」と安易に言う時の政権に対して、まだルールが決まっていもしないものを試算のしようがないではないか、と指摘します。 

推進派が吹くGDPの増大見込みは、交渉ルールに参加できるかさえわからない現状で、絵に描いた餅でしかありません。 

既存9カ国会議に門前払いを食わされた野田首相に、既存国の日本包囲網を破って、「国益」にかなった交渉ルール作りができるとは到底考えられません。 

そもそも、「国益」とはなんなのでしょうか?私は、民草の繁栄、安寧のことだと思います。この素朴な「国として守らねばならないこと」こそが、国の「原則」ではないのでしょうか。 

ではTPPで「守らねばならないもの」とはなんでしょうか? 

佐伯氏は、「生産物」、言い換えれば「製品」のことですが、これの多くは市場競争に委ねられておりTPPでも交渉対象となるだろうと言います。 

一方、この生産物は、無人の工場で、無人の荒野で作るわけではありません。働く人(労働力)があり、土地や資源があり、それを運営する資本が必要です。 

そしてさらにそれらを円滑に動かす社会のシステムである教育や医療、保険、交通、法律、社会秩序があり、食糧もその基盤の大事な一角をなしています。 

これらがすべてうまく噛み合っているから生産ができて、製品が生まれるのです。このような社会システムを「広義の生産要素」と言います。 

この「生産要素」は簡単に市場に委ねることができません。労働、資本、資源、交通、教育、、そして食糧といったものには、一定の規制が必要であり、、国や社会が責任をもって維持していくものだからです。 

「「それは私たちの社会生活の安定性と深く関わっているからだ」と佐伯氏は言います。 

ところが、現在のTPPで進められているのは、米国によるこの「広義の生産要素」の全面開放なのです。 

米国が求めているのはまさに、日本社会の基盤とでもいうべき、労働、投資、金融、医療、保険、公共事業(政府調達)であり、農業という命の糧です。 

佐伯氏はこう警鐘を鳴らします。

「ところが今日のアメリカ型の経済は、生産要素も生産物も区別しない。市場経済も社会生活(を構成する生産要素も)重なり合っている。すべてが自由競争原理でよいとみなしている。ここに(日本と米国との)大きな経済観の違いがある。」(カッコ内引用者) 

そしてこのような結論を述べます。 

「私には、人間の社会生活に密接に関連した生産要素や公共的資産を自由な市場取引から保護することは、決して特異で閉鎖的な経済観だとは思われない。それを国を開くか、閉ざすかの選択だ、などというレトリックでごまかすわけにはいかない。」

TPPについて声高に「開国しないと世界孤児になる」と根拠のない危機を叫ぶ人がいます。もう充分にわが国は低関税であるにも関わらず、です。 

あるいは、TPP協定書の全訳すらないにもかかわらず、「バスに乗り遅れるな」と言う人かいます。慌てて乗ろうとするバスがどこに行くかを見もしないで! 

政府は、TPP交渉は既に9割9分終結しており、日本が交渉参加できたとしてもわずか2か月ていどしかないことを隠し通しています。 

そこまでして、TPPをやりたい理由が私には皆目見当がつきません。国のなりたち、、社会が伝統的に作り上げてきた「広義の生産要素」である社会基盤を破壊してまで得られるのはなんなのでしょうか。

 

■写真 わが家の欅。植えて15年。ずいぶんと大樹になりました。今日はモノクロで。

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