TPP締結国首脳会議に野田首相呼ばれず。交渉ルール作りに参加できる可能性は消えた
野田首相は、ホノルルで交渉参加を表明しましたが、TPPの既存加盟9カ国の首脳会合にも招待されないという状況のようです。(資料2、3参照)。
あれだけの反対を押し切って逃げ出すようにして行って、ざまぁないと言ってやるべきでしょうね。
どうもやら国外逃亡する前日の国会審議で佐藤ゆかり議員が指摘したとおりとなることは間違いないようです。(資料1参照)
「仮に総理がAPECで参加表明をしてもですね、米国で先ほど言いましたように90日承認手続きかかるんですよ。要するに、TPPの条約の中身の交渉は、我が国日本としては手遅れなんですね。」
TPPをウオッチしていた者にはこれは当然のありえたことでした。外務省内部文書はあらかじめこう警告していました。
「米通商代表部(USTR)の高官が、日本の参加を認めるには米政府・議会の非公式な事前協議が必要で、参加決定に時間がかかるため「受け入れが困難になりつつある」との認識を示していた。」
「(米高官は)日本を受け入れるため、現在、米国やチリ、豪州など九カ国で進行中のTPP交渉を遅らせることは望ましくなく、既に参加期限は過ぎた。」
米議会で約90日間、日本のTPP参加協討議 が行われます。米国内でもTPPへの日本参加歓迎一色ではないからです。
全米自動車労組やビッグスリーは、、わが国の自動車にこれ以上の競争力がついては困るので、反対し続けています。全米自動車労組は米国民主党の支持基盤ですから、そうそう簡単に彼らをなだめるのは難しいでしょう。(資料4参照)
「(米自動車通商政策評議会マット・ブラント代表は)米国の対日貿易赤字の7割は自動車関連が占める、と指摘。その上で、「日本の自動車市場は先進国の中でも最も閉鎖的だ」と主張し、日本のTPP交渉参加は、「日本に都合の良い通商慣行を正当化し、重要な通商合意の進展を妨げる、と批判した。」
原加盟国は、いったん決めていた交渉ルールや締結内容の変更を望まないはずです。それどころか、これを金科玉条にして、最も遅れてやってきた日本に押しつけようとしています。
米国はNZとのTPP交渉においてこんなことを言っていました。
(資料5 日本農業新聞5月19日)
「初のTPP交渉8カ国でゴールド・スタンダード(絶対標準)に合意できれば、日本、韓国その他の国を押しつぶすことができる。それが長期的な目標だ」
つまり、原加盟国の間で締結されたTPP協定の協定内容(なぜか翻訳がありません。とうぜん外務省は訳文を持っていきるはずですから、さっさと出しなさい)は、「絶対基準」なのだから、日本はこれに合わせろということです。
にもかかわらず、松下政経塾上がりのお坊ちゃんたちは、11月APECで参加表明しさえすれば、交渉ルール作りに乗れると踏んでいました。
、「交渉参加時期を延ばせば、日本は原加盟国になれず、ルールづくりに参加できない。出来上がった協定に参加すると、原加盟国から徹底的な市場開放を要求される。」
(国家戦略室内部文書)
しかし、そんな甘い読みはホノルルの露と消えたようです。米国を先頭にして、既加盟国は交渉ルール作りにも、さらには締結内容そのものにも日本の口を突っ込ませることを許さないでしょう。
おそらくさんざん待たされたあげく、来年の初夏頃になって「参加を認める」というありがたいお言葉を賜り、ついで「交渉自体はもう終わっているんだよね」、とおごそかに告げられるのです。
わが国はオバマ大統領に泣いてすがりつくでしょうが、彼とて大統領選を前に日本に安易な妥協的態度をとることなどできません。
かくて、わが国民が誰ひとりとして知らないTPP条約締結内容という「絶対基準」という煮え湯を、わが国は口を開けられて流し込まれることになるのです。
そしてそれは国際条約ですから、国内法に優先する上位であり、わが国の国内法はズタズタに切り裂かれていきます。
そもそもTPPのキモであるISD(S)条項を何も勉強していなかったというお人がTPPを推進していたのですから、もう先は見えていたというべきでしょう。
「ISDS(ISD条項)は、寡聞で詳しくしらなかった。条約と国内法との上位関係だったら、条約です(条約が上)。だからこそ、我が国が守ってきたもので、良いものだというものを、条約を結ぶために(国内法を)殺したり、壊したりはしない。」
(野田総理大臣11月11日国会答弁)
「日本が守ってきたもの、良いもの」を守れなくなるから、私たちは反対しているのです。こんな不勉強なお坊ちゃんたちが、今、掃き清めているのは「壊国」への道です。
■写真 小川に夕陽がきらめています。小画面だと黒潰れになっていますから、できたらクリックして大きくしてご覧ください。
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■資料1 野田首相の国会答弁 「ISD条項を寡聞で知らなかった」
(YouTube11月11日)
http://www.youtube.com/watch?v=XJtWmYBNKck
佐藤ゆかり議員 貿易協定におけるISD条項について説明、国内法がISD条項によって曲げられる可能性について首相に質問
野田首相 基本的には我が国が守ってきた法律で対応できるよう交渉していきたいと思います。
国内法よりも、条約のほうが上位にあり、それに対応しなければいけない現実の中で、どう対応するか考えるということでございます。
野田首相 これですね。投資協定・・・国際仲裁判断に委ねる、そういうような場合ですね。仲裁人が入ってきて、仲裁人により決めていくというわけなんで、というプロセスがあるということで。
ISDS(ISD条項)は、寡聞で詳しくしらなかった。条約と国内法との上位関係だったら、条約です(条約が上)。だからこそ、我が国が守ってきたもので、良いものだというものを、条約を結ぶために(国内法を)殺したり、壊したりはしない。
佐藤ゆかり議員 仮に総理がAPECで参加表明をしてもですね、米国で先ほど言いましたように90日承認手続きかかるんですよ。要するに、TPPの条約の中身の交渉は、我が国日本としては手遅れなんですね。
決まった段階で、二者択一で、日本政府、これを丸呑みするんですか、しないんですか、どちらかにしてくださいよと、それを半年後に言われるしかないんですよ。
ですから、日本の国内法というのは、条約が上位にあるわけですから、TPPで決められたものを丸呑みにすれば、国内法は曲げなければいけない。変えなければいけない。TPPを選ばなければ、国内法は我が国がこのまま管理をすると、そういうシナリオになるんですね。
条約のことをお応えいただかなかったのは、これは極当たり前の質問でして、憲法に書かれていることですから、わたくしはお伺いしたまでで、すぐにお応え頂かなかったのは、非常に驚愕で、ここで決めるってことはですね、
こういうことも分からないでお決めになるということは、あまりにも国民軽視ではないだろうかなと、非常に大きな問題を感じたわけでございます。
■資料2 TPP交渉9カ国「大筋合意に達した」、米大統領が見解
朝日新聞11月12日
オバマ米大統領は12日朝(日本時間13日未明)、米ハワイ・ホノルルでの環太平洋経済連携協定(TPP)の交渉9カ国による首脳会合後、記者団に対し「大筋合意に達した」と語った。オバマ大統領は「詳細については詰める必要がある」との見解を示し、最終合意に向けた道のりが残っているとしながらも、「それができると確信している」と語った。
■資料3 TPP、首相さっそく厳しい洗礼 加盟国会合招かれず
朝日新聞11月12日
オバマ米大統領が12日朝にホノルルで開く環太平洋経済連携協定(TPP)交渉9カ国の首脳会合に、野田佳彦首相が招待されない見通しであることが11日わかった。9カ国が積み上げた交渉の成果を大枠合意として演出する場に、交渉参加を表明したばかりの日本は場違いとの判断が背景にあるものとみられ、TPP交渉の厳しい「洗礼」を受ける形だ。
日本政府の一部には、野田首相がアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議前に「交渉への参加」を表明すれば、TPP首脳会合にも招待される可能性があると期待があっただけに、落胆が広がっている。TPP交渉を担当する日本政府高官は「日本(の出席)は少し違うということだろう」と語り、現時点では、出席できない見通しであることを認めた。
昨年11月に横浜であったAPEC首脳会議の際にも、TPP関係国の首脳会合が開かれ、当時の菅直人首相がオブザーバーとして招かれ参加していた。
■資料4 米自動車業界団体、日本のTPP参加に反対声明
(ニューヨーク=小谷野太郎】米自動車大手3社でつくる業界団体「米自動車通商政策評議会」は11日、日本が環太平洋経済連携協定(TPP)交渉に参加することに反対する声明を発表した。
同評議会のマット・ブラント代表は、米国の対日貿易赤字の7割は自動車関連が占める、と指摘。その上で、「日本の自動車市場は先進国の中でも最も閉鎖的だ」と主張し、日本のTPP交渉参加は、「日本に都合の良い通商慣行を正当化し、重要な通商合意の進展を妨げる」と批判した。
同代表は、米自動車産業はこれまでのリストラで国際競争力を強化し、雇用創出などで米経済の回復の先導役を果たしている、と主張。TPPへの日本の参加は「これまでの努力を危険にさらす」との警戒感を示した。米国では、自動車産業が集積するミシガン州知事や同州選出の上院議員も日本のTPP参加に反対する声が出ている。
ニュージーランド外交貿易省のマーク・シンクレアTPP首席交渉官は「TPPが将来のアジア太平洋の通商統合に向けた基盤である。もし、当初のTPP交渉8カ国でゴールド・スタンダード(絶対標準)に合意できれば、日本、韓国その他の国を押しつぶすことができる。それが長期的な目標だ」と語った。(米国大使館公電から)
環太平洋経済連携協定(TPP)交渉でニュージーランドと米国は、農地への投資制度や食品の安全性などの規制や基準を統一した「絶対標準」を定め、受け入れ国を広げることで経済自由化を進めようとしている――。TPP交渉を主導する両国のこうした狙いが、在ニュージーランド米国大使館の秘密公電に記載されていた両国政府の交渉当局者の会話から浮かび上がった。
ニュージーランドの交渉当局者は「絶対標準」を受け入れさせる国として日本と韓国を名指ししている。これは国内の規制や基準の緩和・撤廃につながり農業だけでなく国民生活の多くに影響を与える可能性がある。公電は、内部告発ウェブサイト「ウィキリークス」が公表。ニュージーランドの当局者らへの取材と合わせて分析した結果を報告する。
2010年2月19日、ニュージーランドのシンクレアTPP首席交渉官が、米国務省のフランキー・リード国務副次官補(東アジア・太平洋担当)に語った内容だ。シンクレア氏は、TPPの目標が農産物などの市場開放だけではなく、アジアなどで推進する米国型の経済の自由化が両国(アメリカ合衆国、ニュージーランド:古田注)の長期的利益につながると強調した。
公電は、ニュージーランドのウェリントン市内で行われた両者の会談の概要を、当地の米国大使館がまとめた。「秘密」扱いだ。外交を担当する国務省だけでなく、農務省や通商代表部などにも送るよう記述してある。
(日本農業新聞5月19日 太字引用者)
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