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TPPで「下方への協調」を強要される日本。 もし米国で原発事故が起きたら・・・

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仮にわが国が食品の安全基準を決めたとします。
 

そうですね、近々改訂されて「暫定」がとれるであろう放射能の食品基準値だとしましょうか。仮にミルクを50ベクレルと決めたとします。 

世論がどのような反応をするかは別にして、これで一件落着なはずです。後はまた何年後かに、放射線量の下がり方をにらみながら、もう一段下げていけれはいいだけのことです。 

ところがこの時、米国西部の活断層が沢山通っている地域の原発で大地震による原子力事故が起きたとします。 

そしてその時、運悪く北東の風が吹いていたために中西部から西部地域一帯の牧草や野外にいた牛などが被曝してしまったとします。 

計測してみると牧草は1万ベクレルなどザラで、ミルクも汚染されてしまいました。このときに米政府は、ミルクや牛肉の出荷を停止するでしょう。 

さて、話はこれからです。初期の放射性ヨウ素は急激に減っていきますが、放射性セシウムは頑固に土壌や牧草、作物に残留し続けることになります。 

米国も日本流にいえば「暫定規制値」、国際的にいうなら「緊急時規制値」を採用せざるをえません。 

食品の放射能規制値を、緊急時でいたしかたなく一時的に平時より高めに設定することはICRP(国際放射線防護委員会)でも認められています。 

日本でも同じことをしたのですが、それをちゃんと説明しないので、「暫定規制値」がずっと続くとおおかたの消費者や農家は誤解してしまいました。 

それはさておき、米国は膨大な量の穀物や牛肉も輸出している農産物輸出大国です。ミルクでさえロングライフで輸出しているほどです。米国の最大の輸出品は、映画と食糧とハゲタカファンドですから。 

で、とうぜんのこととして、米国は膨大な輸出不可能な危ない食糧を抱え込むことになります。 

まず、EUはとんでもないと完全輸入禁止措置を早々とるでしょう。ではわが国は? 

今なら、輸入食品の放射能規制でブロックしていますから、まずは安心していいでしょう。ひと頃は国内の暫定規制値より厳しかったくらいです。 

しかし、TPP発効以降は違います。米国はICRPなどに圧力をかけて自国に都合のいい規制値の解釈をもらうでしょう。 

米国は前科があります。たとえばBSEの時に、OIE(国際獣疫機関)に働きかけて、異常プリオンは特定危険部位である脊椎や脳だけ除去すれば「安全」だと言わせました。

この国際基準の見直しによって、日本は月齢30か月以下の牛の輸入再開を米国から迫られたのです。 

ところが日本のような個体飼育ではなく、群飼の米国ではトレサビリティがいいかげんで、そもそも「月齢30カ月以下」か、それ以上かさえ怪しかったのですから始末が悪い。

おまけに、全米の1%しか出荷にあたって検査されていないのが実情で、その衛生管理のひどさも批判の対象になりました。 

結局、「アメリカ大好き純ちゃん」が簡単に妥協してしまって輸入再開を許してしまったのですが、わずか1か月後に特定危険部位の脊椎が混入していたのがバレたという情けないおまけつきです。 

しかしあきらめることなく、今でも執拗に牛肉の月齢制限の撤廃を強烈プッシュしてきています。  

さて、TPPでもないのに、こんな圧力をかけることがお家芸の米国が、放射能残留食糧でおとなしくしていたら、そのほうが気持ちが悪い。  

おそらくは、日本の輸入規制値を上げることを要求してきます。きっとBSEの時のように、国際機関か、それなりに権威ある学者の「科学的安全性」の添え状を持ってくるはずです。 

そしてこれを楯にして、「日本の輸入規制値は科学的合理性にかける。日本の消費者に選択の自由を与えるべきである。」、とかなんかエラソーに言うんでしょうな。こういうレトリックにかけては米国は天才的です。  

そして、USTR(米国通商代表部)は、「下方への協調」(Downward Harmonization)を 迫ります。これは一国が国際基準を下げたために、他の諸国もそれに協調することです。

いいですか、みんなで高い方へ進化していこうというのではなく、真逆にダメなほうへ合わせていこうというんですから開いた口がふさがらない。  

これが米国のグローバル化戦略です。そしてTPPには従来にないISD条項という毒素条項があります。

これを使えば、海外の投資家にとって不利益と判断すれば、米国政府が代わって提訴でき、もし日本が負けようものなら、国内法の輸入規制値のほうを変えねばならなくなります。 

かくしてわが国食糧市場はどんどんと厳しくなる自国規制値と、米国の事情に合わせてゆる~いままの輸入食糧規制値の二つに分裂していってしまいます。

そして、TPPにより激安米国農産物との競争を強いられている国内産農産物も、やがて「下方への協調」により、本来は段階的に下げてゆくべき規制値が高止ってしまうかもしれません。これは「農産物の国際競争力をつけるための経営合理化」と説明されます。

米国が自分の国の国民にどんな劣悪な健康の基準をとも、それはカラスの勝手です。なぜなら、それは米国の主権だからです。

だから逆に、他国にわが国の国民の健康や安全の基準をとやかく言われる筋合いはありません。まさにこれこそが国家主権の基本の中の基本だからです。

しかしそのような「主権」の常識が通用しなくなり、「下方への協調」を迫られるのが、このTPPなのです。

■写真 夕暮れの村の風景。

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自民もTPP賛成派と反対派に二分されているようです。やれやれです。 

話し合い解散に言及=TPP、交渉参加を―自民幹事長

時事通信 11月22日(火)18時54分配信

 自民党の石原伸晃幹事長は22日、福岡市内で講演し、消費増税準備法案への対応について「野田佳彦首相と谷垣禎一自民党総裁、山口那津男公明党代表の3人で話し合い、法案を通して選挙ということもあるかもしれない」と述べ、自公両党の法案成立への協力と引き換えに、首相に衆院解散を約束させる「話し合い解散」の可能性に言及した。

 石原氏は想定される解散時期として、(1)同法案提出時(2)来年の通常国会会期末(3)来年9月の民主党代表選後―の3パターンを挙げ、「これくらいしか選択肢はないのではないか」と述べた。
 一方、環太平洋連携協定(TPP)交渉参加問題に関しては、「世界の目は間違いなく、日本はTPPに入ってくるとみている。(交渉参加に)反対という議論だけでこの問題は乗り越えられない」と指摘。その上で「日本の置かれている現状を各界で共通認識にして、守るべきものは何かを決めていかなければいけない」と述べ、交渉参加を前提に議論すべきだとの考えを示した

 

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