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「国際競争力」というトンチンカンな尺度一本で、異業種参入、大規模化を叫ぶことだけが農業が生きる道なのか

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TPPが現実のものとなるにつれてかしましいのが、農業弱体論、農業補助金漬け論、そして国際競争力弱体論です。 

私はこれを、毎度おなじみ「反農業三点セット」と呼んでいます。 

日本農業は耕地が狭く、高齢化が進み、効率が悪いので国際競争力がなく、しかも補助金漬けだから、国民の税金で生き伸びているだけの不採算部門、とまぁこんなところでしょう。 

まぁ、いままでは聞き流してきました。実際に、私自身が所属している生産法人は、補助金はもらったことはなく、高齢化もしておらず、それなりに大きな面積でやっていたからですが、しかしTPPが目の前に来るということになると、そうもいかなくなったようです。 

じゃあ、日本農業をどうするのか、です。 

政府が出した処方箋は、土地を集約化・企業法人化し、新規参入を認めて異業種を受け入れ、「市場のニーズ」とやらに合わせた効率いい栽培管理に変えていく、ということらしいです。 

これを私は、「よくある処方箋三点セット」と呼びます。 

さて、週刊文春などを読んでいましたら、「TPPなんか怖くない、農業革命に立ち向かう男たち」という勇ましいというか、微苦笑してしまうタイトルの記事が載っていました。 

熊本のM農園さんで、だいたいこんなことをおやりになって「農業革命」を起こしているそうです。 

願いましては、まず、コスト意識を高めるためのIT化。「生産情報管理システム」だそうです。 

ネーミングはスゴイですが、要するに栽培管理履歴(トレサビリティ)ですよね。うちはこんなこと10数年前からやっておるだがや。 (←私は名古屋人か)

これでが評価されて大手スーパーに言い値で売れるようになったとか。まっこと嘘だぎゃー。スーパーのバイヤーにとってトレサビリティは鼻くそみたいなもの。 

トレサビリティなどはアクセサリーであって、美味くて安いものしか買いません。 

第一、トレサビリティは今やちょっと気の利いた生産団体なら、だいたいは持っているはずです。それをIT化というとなんかスゴイですが、要はPCにぶっ込んでいる、だからなんだってんだ、というくらい日常的な農業現場の仕事です。

今はGAP化などが取り組まれているのに、いまさらトレサくらいでびっくりしないでほしいものです。

こんなことで「農業革命」というなら、私たちは前世紀から「農業革命」をしていたことになりますなぁ(笑)。 

次に、「価格決定権」を取り戻すために徹底したコスト計算をしたとのことです。あのね、あるていどの規模以上の農業団体なら、資材屋さんは競争が激しいから価格決定権はこっちにあるの。

ただ、値切るだけでは品質が落ちるから、そこをよく資材屋さんと話あっていかねばならないんです。コストだけでは語れないのです。 

三番目。作っている作物をコンピュータ管理して品目を絞って大量生産した、ということです。はい、あまりによくある話で脱力感すら漂います。 

このように品目を、たとえばニンジンやゴボウといった手間がかからないので機械生産が可能で、あるていどの保管がきくというものに単品化するというのは、春が関東により先に来る九州や、逆に夏場に涼しいので葉物やレタスなどが出来る長野などでは可能です。 

しかし、考えてみて下さいよ。野菜売り場はニンジンやゴボウだけですかね。数えたことはないが、おそらく40数種類あるはずです。 

じゃあ、ニンジン、ゴボウ以外は誰が作ってるの、ということです。ほうれんそうなんかの葉物野菜は2ヘクタールいっぺんに作ったら、初夏になると一雨でグワッと成長してあっという間に徒長してしまいます。 

結局、3畝、4畝とコツコツと作っていくことになるわけです。大根、キャベツにしかり。だから、いつも徒長しないで旬の状態で消費者に届けられるのです。 

大規模栽培ができる農産物は限られています。大根、ニンジン、ゴボウなどの根菜類、サツマイモ、ジャガイモなどの芋類、畑であるていどの期間置いておける白菜などがそうです。 

あとは、大都市市場の裏をねらった夏場の葉物などでしょうかね。 

大規模栽培が特効薬のように言うのは農業現場を知らない人たちです。彼らは、大規模な農業団体に行くとIT管理、集中した品目に限った単作栽培に目が眩んで、こりゃ~スゴイと思い込むことになります。 

ついでに、M農場には大卒の若手社員がワラワラとパソコンを叩いていてたまげたようですが、当節の就職難で、大卒の肩書など紙屑です。農業団体側からみれば、要はやる気のある人材か否かが判断材料になるだけにすぎません。 

農家と言えば、ジィさん、バァさんばかりのがネコの額のような土地をクワで耕している風景でなければお気に召しませんかね。こういう色眼鏡で農村に来るからイヤになる。農業はそれなりに自己改革しながら進化し続けているんですよ。

あとはモヤシ屋さんが紹介されていました。あの~、モヤシも農業ですか(笑)。モヤシ、カイワレは農業ではなく軽工業です。ついでにウインドレス養鶏も軽工業。キノコ類もそうとうに軽工業。

別にいかんと言うことではないですが、農業を「大規模化」、「効率化」という尺度だけで見ようとしているからおかしくなるのです。

大規模化にはかならず単作化が表裏一体でついてきます。これでは大都市の多様な消費市場には対応できません。

生産団体が仮に一定のボリュームがあったとしても、作る品目や出荷時期などにはデリケートな配慮が必要なのです。そんなことはコンピュータにはできません。

やるのは人、それも農業をしてきて土が皺の間にしみこんだような「人」なのです。

私たちのグループは原則としていきなり事務職になる若手はいません。必ず栽培現場で何年かやってからパソコンの前に座ることになります。そうしないと農業をなめた人間になってしまうからです。

また、大きな農業団体であっても、地域農家といい関係を作っていくのかも大変に重要です。

あくまでも地域農業団体はその地域の農業全体によって支えられており、地域農業が潰れて自分たちだけが残ることなどありえないことです。

今の政府の農業の改革をみると、農業現場をまったく知らない人たちが蛍光灯の下で統計数字をいじって作ったような机上の改革案です。しかも手垢のついた。

日本農業はそもそも同胞を食わせるところから始まった内需主導型でした。そこにまったく次元の違う「国際競争力」なる尺度を持ち込んできた所からおかしくなりました。

国際競争力などという農業にとっては耳慣れない尺度を導入したのは財界ですが、かくいう製造業ですから自動車輸出の対GDP比率は1.23%、家電・電子機器輸出わずか0.036%にすぎません。輸出依存度は13.44%と先進国中最低です。

このようにわが国の自動車産業や電気製品すら内需主導なのですから、農業がそうであったとしても財界から文句をいわれる筋合いはなんらありません。

農業は工業がもまたそうであるように、さまざまな大きさの農業団体や農家が複雑に組み合わさってできています。それを大規模化、効率化の念仏ひとつで切り捨てようというのが、政府主導の「農業革命」です。

私は農業というのはひとつの自然生態系のようなものだと思っています。さまざまな人たちが、自分の生きる農地という自然を相手に工夫や努力をしています。それが集まって団体になるのもいいでしょう。法人化もいいかもしれません。

しかし、それだけが処方箋ではないはずです。ましてや、農業を「国際競争力」などというトンチンカンなモノサシ一本で切り捨てて、異業種参入、大規模化を叫ぶことだけが農業が生きる道だとはとても思えません。

農業が内部改革をせねばならないのはあたりまえのことです。それはいかなる産業においてもそうであるように、という意味合いにおいてです。

それをTPPという黒船外圧をかけねば、わが農業が目覚めない、とでもいうような論調には賛成しかねます。 

 

 

■写真 杉の木の根元のツルの葉も紅葉をしています。

2010年 輸出依存度、輸入依存度

 

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コメント

まず、単作化ですが、野菜の産地を見ていると最後は薬剤の効かない
土壌病害虫などの連作障害で行き詰っていることが結構あります。
(指定産地制度もそれを助長したのでしょうか)
日本の風土にあって、連作障害のない米を主食に選んだ祖先って
すごいなあと改めて思います。

大規模栽培についても、例えば栽培面積を2倍にして収入が2倍になっても
単純に所得は2倍にはならず、ロスが出ることが多いです。
(雇用労働力がきちんと働かなかったり、機械装備を更新
しなければならないことによる設備投資が余計にかかるなど)

異業種参入についても、うちの地域で参入してきた方を
知っていますが、地域の農家の人なら当たり前のように
持っている知恵がなく、例えば夕方にじゃんじゃん水をかけて
全滅させてしまったり、被覆しなければ出来ない時期に露地につくり
霜が降りて全滅させてしまったり、「商品」になる農作物を作れるまで
時間がかかるのが現状です。
(富里のセブンファームのように今までその土地で農業をやっていた
農家と組むのなら問題ないと思いますが)

毎年同じ時期に同じ作物を作付けしても、その年の気候などにより
同じ時期に同じ作物はまず収穫出来ません。
(良い農作物を作る農家の方ほど、「何年やっても一年生だな・・・」
とおっしゃる方が多いです。)

農作物の価格が、現在は流通側が主導権をもって決められてしまい、
時には再生産価格を下回っているのが問題だと思います。

国の施策にのってうまくいくのはほんの一握りだと思います。

投稿: ろこ | 2011年11月27日 (日) 12時14分

土日と出かけていて、ネット環境が無いホテルで濱田様の記事を読む事が出来なく、悶々としていました。
(電源配線をランに使っているホテルでしたが、私のパソコンとの相性が合いませんでした)
「農業」と一言で言っても、都道府県、各町村、各地域、各農家、作物毎に栽培や出荷はそれぞれであり、多種多様・千差万別です。
国は「大規模化・法人化」と言いますが、全国的な視点で捉えた場合、当てはまる地域よりもそうでない地域が圧倒的に多いのが現状でしょう。
仮に大型資本が参入しても、結局のところ条件の良い畑を使う事になり、以前の記事に書いてあった「棚田」なんて見放される事になります。

農業は「線」の仕事です。土づくりから始まって、播種や肥培管理をし、収穫します。
首相がコンバインに乗ってパフォーマンスした作業は、収穫と言うあくまでも「点」の作業です。
「点」の作業が継続的に行われ、「線」になり、何年も経験して、その「線」を徐々に太くし、本人だけが持つ技術として確立して行きます。
農業は一朝一夕にできるほど甘いものではありません。当然気象など自然条件にも大きく左右されます。
「なめたらいかんぜよ!!」と映画のセリフにありましたが、その通りだと思います。

投稿: 北海道 | 2011年11月28日 (月) 08時26分

競争力の有る商品て 日本人買えるの?
スーパーのトマトですら 最近高くて買えないよ

自動車だって 手厚い保護の中なのに
どうなんでしょう?
結局、発展途上の単価の安い方に
流れるのでしょう
屁理屈みたいな理屈で 日本はすごいとか
踊らされてるけど

メイドイン チャイナのパナソニック
メイドイン タイのトヨタ車
日本ブランドの 海外製は軒並み・・
家電の質なんか かなり落ちてますよ
過去に世界中がうっとりした
メイドイン ジャパンは
もうないですよね

中国ブランドのメイドイン チャイナと
日本ブランドのメイドイン チャイナ
殆ど同じ内容で サポートも最近大差なし
そんで ちょっと高い
そんなもん 買わないでしょう?

農業も 企業化してコストダウンして
結局、海外に拠点移して それでも日本製?
韓国で日本の企業が りんご作ったら
日本ブランドの韓国製か?

理想は理想で分かるけど
今の現実考えると 変だよね

やっぱり 日本ブランドの 日本製 
メイドイン ジャパン
勝負するなら これで勝負してほしい
また、
そうできる努力の方が 未来が有りそう
(日本の単価を下げる等)
(TPPみたいに 外圧で下がった
    単価じゃ ただ安いだけになりそう)

投稿: 微妙な人 | 2011年12月 8日 (木) 17時28分

微妙な人さん。なにを言われているのか理解できません。酔ってます?

投稿: | 2011年12月 9日 (金) 08時15分

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