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2011年12月 4日 (日)

農業にとってのセシウム「処分」とは

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セシウム処分について続けます。あ、そうそう、その前になぜ私が「処分」という言い方をしているのかをご説明します。 

通常は「除染」という言い方をしますし、そのほうが通りがいいでしょう。しかし、この除染という言い方には落とし穴があって、「完全に放射性物質をクリーンに除去する」といったニュアンスがあります。 

そのほうが消費者にとってわかりやすいのは間違いないのですが、誤解を呼ぶ可能性があります。それは農地においてはかなり困難なことです。 

農地においての除染は農水省の飯館村除染実験にあるように、表土を剥ぐこと(削土)することがいちばん効果的だと言われています。過去記事で飯館村除染実験はレポートいたしましたので、そちらもご覧ください。
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2011/09/post-1f22.html 

これは一面の真実で、確かに地表下5㎝までに結着しているセシウムを除去するには、表土を削って捨ててしまうのがいいのは確かです。しかし、問題は農業が続けられなくなったらシャレになりません。 

何度か書いてきているのですが、削ればこのようなことになります。 

➊大規模土木工事並の手間とコストがかかる。
➋削った土の処分と保管が困難。
➌削ったままだと窪地になるので客土せねばならず、膨大な客土用土壌が必要となる。
➍元の沃土に再生するには膨大な堆肥が必要。
 

これについては過去記事を参照ください。
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2011/11/post-8835.html 

削土にはこのような大きな問題があるために、私は「除染」という言い方に疑問を持つようになりました。

念のために申し上げますが、私は宅地の庭、公共施設、学童たちの校庭などは削土するほうが適していると思っています。子供たちの放射性物質に対する感受性は大人よりはるかに高いからです。

また、避難区域のような高線量被曝地域においても削土するほうが適している場合もあると思っています。

私は自分が住む「低・中線量被曝地帯における農地のセシウム対策をテーマにしている」のだという限定の上で語っているのだ、とお考えください。さもないと、私がどこでも「耕せば大丈夫だ」と言っている、と誤解を受けてしまいます。(実際、先日にある人からそう言われてショックを受けましたので・・・。)

話を戻します。 

私たち農業にとって、セシウム対策のポイントは、要するに「植物に利用させない」ということです。セシウムの吸収を阻止すればいいのです。ここが通常の市街地などの「除染」と大きく異なるところです。

言い換えれば、私たち農業者は、「放射能汚染した作物を出さないことにより、消費者の安全・安心を保障する」という大目的があるわけです。私たち農業者はこの大目的に沿って発想し、実践します。

さて、お断りついでにもうひとつ。・・・今日はお断りが多いですな(汗)。

私はゼオライトのセシウム吸着効果があることを東京農大後藤教授の実験データなどから確認していますが、万能であってゼオライトを撒けば問題解決すると短絡的には思っていません。

というのは、後藤教授の実験も未だ実験室内でのデータであって、現実の農地においての検証データが揃っているわけではないからです。

つまり、残念ながら実践的に完全に実証されているとは言い難いのです。どの程度の量を、どのようにして散布し、どのような方法で撹拌すればいいのか、その結果がどのていど有効と判定されるのか、実証データが揃っていません。

たとえばひとつ例を上げれば、未耕起の農地にゼオライトを散布する場合、通常ならば散布してからロータリーをかけるところですが、この方法だと汚染していない非集積層と、汚染土が高い表土とが混和してしまうために、ゼオライトの吸着能力が万全に発揮されるとは言い難くなります。

そのためにはロータリーではなく、バーチカルハーローという垂直に耕耘できる機械で、超浅耕耘をしてみることも茨城大学の実験ほ場では進んでいます。
(知見と下図は茨城大学小松崎准教授によりました。ありがとうございます。)
Photo
このように未だ明確に言い切れることと、できないことがあります。妙に確信を持って断言することを連発する人がいたら眉にツバをつけて聞いて下さい。その人はほんとうに科学的な実証データを持っているのかどうなのか疑って下さい。

正直に言って、未だ分からないことばかりです。ただ、対策の立て方が分かり始めたていどの段階なのだということです。

先日、私が放射能について消費者にお話をしたところ、ある人から「学者の受け売りはやめろ」と評されました。もし、研究者の知見を取り入れているということをして「受け売り」というのなら、そのとおりです。

しかし、今私たちが進めている農業者と研究者の協同が「受け売り」という言い方で切り捨てられるのなら、今の被曝した農地で生きる農業者の状況はなにひとつ変わらないでしょう。

私は自分の実践の中で壁に頭をぶつけるようにして、なにが正しいのか、間違っているとしたらなぜなのかを自分の目と頭を使って確かめながらこつこつと進んでいます。そのなかでお話していくつもりでいます。

■写真 アカトンボ(アキアカネ)は無条件で好きですね。

 

 

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コメント

現実に農地に出て闘っている農家さんの、厳しい現実が伝わってきます。

そう、いくら現地での測定データを示しても「学者の受け売りだろ!」と言われ罵声を浴びても完全な実践データなど無いわけで、『共同研究』の段階なのですよね。
だからといって、現場で働き土地を知り尽くす地域農民の知見こそが大切です。宝です。
科学者とのコラボレーション。これしかありません。一刻も早く結論を出したいところですが、どうしても時間はかかるかもしれません。

批判や罵声を浴びせるのは、いわゆる「御用学者」への不信と、それこそもう一方の日和見御用学者T氏などに煽られてのものが多いことでしょう。

地道にやっていくしかありません。
昨日の杏ママさんのような不安も、ほんとによく理解できます。
牧草や稲藁がアウトなら、同じように多孔質の腐葉土や堆肥の乾燥藁やモミガラは当然心配になります。
そして、今は昨日のコメントに残したように、落ち葉の舞い散る季節です。福島県飯舘村~伊達市・南相馬市の山間部など、幹線道路も落ち葉だらけ。おそらくかなりのセシウム濃度と推測されますが、誰も何もしません。

それこそ有機農法の背骨を揺るがすことですが、ここを抜かしてしまっては消費者は納得しないでしょう。有機の要として、徹底的な管理が求められます。

一歩ずつ前向きに(時には挫けることもあるでしょうが…)進んで行くしかありません。

心より応援しております!

今年は明らかにトンボが少ないと感じてます。
秋アカネの乱舞は秋の定番の風物詩でしたが、私は真夏の真っ赤な夏アカネのほうが好きです。あとクルマトンボ。
あとはやっぱり高速飛行する水辺のシオカラトンボ(あれは捕まえにくい)が大好き。カッコイイ!
ヤンマは特別な存在。ド田舎の母の実家や、会社(菓子食品大手)で仕事前の朝礼で、物理センターから入り込んだオニヤンマが高速飛行するのを、空中でバシッ!と素手キャッチしたことあり。
何故に超高速性能を持ちながら、回避せずに直接飛行を貫く633爆撃隊の如く突っ込んでくるのか…孤高で敬意を表する存在です。

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