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2011年12月 3日 (土)

セシウム処分の謎を解く

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あのおぞましい3・11から8か月たち、当初あった「謎の放射能物体X」といった状況から、敵がどのような物質なのか、そしてその弱点は何かということについてかなり分かって来るようになりました。

結論から言えば、放射性セシウムは万能でもなければ、最強の物質でもありません。放射性であるという点を除けば、自然界にあるフツーの(非放射性)セシウムと同じだと思ってもかまわないのです。

問題を煎じ詰めればこのように整理されるでしょう。

いったんフォールアウト(放射性降下)したセシウムがどのような挙動をしているのかです。これにはふたとおり考えられます。

➊表層土壌の鉱物質や腐植物質(*植物が発酵分解されてできる物質のこと)に結着して、とどまるケース。

➋表層土壌から溶解してより下の地層に沈下するケース。

私たちは経験上、当初は耕したか、耕さないかがこの原因だと考えていました。

➊耕起していない牧草地や畑地の場合・・・地表面から5㎝までに9割以上のセシウム層が存在する。

➋ロータリーで耕起した畑地の場合は、ほぼ均等にロータリー深度に均一化する。

・0~5㎝の地層・・・・約30%が存在
・5~10㎝    ・・・・約30%が存在
・10~15㎝   ・・・約30%弱が存在

●プラウ(鋤)で耕起した畑地の場合
・0~5㎝の地層・・・約30%が存在
・5~10㎝   ・・・約30%が存在
・10~15㎝  ・・・約30%が存在

しかし、ややっこしいことには、このような放射性物質が必ず土壌に均一化されるのかといえば違うことも分かってきました。

それは現実に測定してみると、ある地点では上記のような均一化がみられる反面、海岸に近い地域では15㎝を超えてより下の層までセシウムが沈降しているケースが見られたのです。

ここで、セシウムがどのような移行をするのか見てみましょう。想定できる可能性は4つです。

➊土壌にとどまる
➋植物に吸われる
➌土壌下層に沈降する
➍周辺の水系に流出する

➊の土壌にとどまるケースは、土質が粘土質(コロイド)である場合でした。

放射性セシウムは1価の陽イオンです。そのために土壌が負電荷だった場合、それと結着してしまいます。セシウムはプラス電荷ですから、粘土質や腐植物質のマイナス電荷と電気的にくっついてしまうわけです。

粘土質土壌がセシウムを結着していることがわかったのは朗報でしたが、まだ先がありました。というのは、私たちの地域はおしなべて関東ローム層という粘土質なのですが、ある畑の作物は検出限界以下なのにかかわらず、ある畑は検出してしまうのです。なぜでしょうか?

これがわかりませんでした。条件はほぼ同一なのにも関わらずです。

初め私たちはフォールアウト時の風向き、あるいは地形によるものと考えていたのですが、それだけでは説明できない事例が出てきたのです。

わずか数m離れた畑2枚の作物が違う数値の検出をしていた場合があったのです。ありですかね。数メートルで明暗を分けるなんて。

解決のヒントは、一方の畑が化学肥料と厩肥(豚糞尿)に頼った畑であったのに対して、片や堆肥をしっかりと入れ続けてきた有機農法の畑であったことです。

同一の土壌、同一の地理的条件、そして同一の耕起をしていたとしても、有機農法の畑にはあり、化学農法の畑にはない物質があり、逆に有機には存在せず、化学農法には存在する「あるもの」があったわけです。

判じ物みたいですいません。答えは、こうです。

機農法の畑にあり、化学農法の畑にはなかった「モノ」とは、腐植物質です。これは堆肥に多く含まれています。堆肥中の落ち葉や木屑などが発酵分解して出来る腐植物質は、微生物を多く含み土を豊かにします。

別に放射能対策で堆肥を入れていたわけではないのですが、この堆肥中の腐植物質がマイナス電荷で電気的にセシウムをくっつけてしまっていたのです。

では逆に有機農法に少なくて、化学農法の畑に大量にあったもの。それは家畜糞尿や化学肥料に含まれる硝酸態チッソ(NH4)でした。農家は作物の成長を早めたり、大きくしたりするために過度の硝酸態チッソを入れる人がいます。

この過度の硝酸態チッソは、アンモニウムイオン(NH4+)なために、粘土がせっかく吸着したセシウムを放出させてしまっていたのです。カリウム(K)も同じことをしてしまうことも分かってきました。

過度なアンモニウムイオンやカリウムによって粘土土壌から引き離されたセシウムは、植物(作物)の根から吸収されやすい遊離セシウムとなってしまっていたのでした。

これがわかった時には、有機農法というのは放射能対策としても非常に有効だという確信が持てました。

では、このように粘土から放出されてしまった遊離セシウムはどのようにもう一回何かにくっつけることが可能でしょうか?

あります。それがゼオライトという結晶性アルミノケイ酸塩の鉱物です。これは絶妙なサイズのキレート構造を持っています。

「キレート」という耳慣れない言葉は、元々はカニのハサミのことで、カニがチョッキンするように金属分子を鉱物の構造の中にはさみ込んでしまいます。しかもめでたいことには、そのゼオライトのキレートの隙間がセシウム分子とあつらえたように同一だったのです。

そのためにセシウムはゼオライトのキレートにスッポリとはまり込みますが、なんと無情にもこのキレートの裂け目は徐々に閉まっていきます。

ピタッと閉まったゼオライトのキレートは簡単に再び開くことがないために、これほどうってつけの「セシウムの牢獄」はないでしょう。

この物理的結着は、通常の粘土や腐植物質の電気的結着よりはるかに強固です。電気的結着は時間がたつと自然とセシウムを手放してしまいますが、物理的な結着、というか「封じ込め」は時間がたつにつれ強くなる傾向すらあるようです。

他のセシウムと親和性がある物質としては、フミン酸などがあり、今さまざまな実験が行われているところです。

長くなりました。土質と微生物が果たす役割については別稿とすることにします。

■本記事は茨城大学農学部小松崎将一先生のご教示によりました。ありがとうございました。文責は私にあります。

■写真 青空に向かってトンボが空をにらんでいました。

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<放射性セシウム>コメからの検出 福島市渡利地区でも 

毎日新聞 12月2日(金)21時14分配信 

 福島市と伊達市の一部地区のコメから国の暫定規制値(1キロ当たり500ベクレル)を超える放射性セシウムが検出された問題で、福島県は2日、福島市中心部に近い渡利地区の農家計3戸のコメも規制値を超え、最大で590ベクレルのセシウムを検出したと発表した。県は同地区を含む福島市東部の農家約400戸に対し、コメの出荷自粛を改めて要請した。

 渡利地区は10戸で規制値超えが確認された大波地区に隣接。今回規制値を超えた3戸は今年計65袋(2トン)を収穫したが、市場には流通していない。

 一方、大波地区の全袋調査は154戸計4752袋(142.6トン)のうち111戸2679袋(80.4トン)で完了し、新たに2戸で規制値を超えるセシウムを検出した。同地区で規制値を超えた農家は計12戸になったが、流通はしていない。

 JA新ふくしまの菅野孝志代表理事専務は「空間放射線量が高いことが分かっていた地域の(収穫前後の)検査は、サンプル数を増やすなどもっと配慮すべきだった」と話した。

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コメント

これまでの近隣の圃場に比べて濃度は大分低いですが、さらに平地側(福島盆地の東の端)です。
渡利の小中学校は、よくテレビで線量と除染の取り組みが出てましたね。飯舘村の仮庁舎もあります。
ここは摺曲する阿武隈川1つこえれば、もう福島市中心部というロケーションにあります。

今年は大変な事故で、大きな混乱に見舞われましたが、今後の調査方法や対策に大きな示唆を残しました。
これからも里山からの水や落ち葉溜まりなど、季節で条件が変わることでしょうがいち早く対策方法が確立されることを希望します。そうやって地道に対策を施す以外に農地の再生はありません。

現在の飯舘村や国道115号線沿いの伊達市霊山町などは作業する人もいなくて、道路は大量の落ち葉だらけです。どこかに纏めて保管処理できればいいのですが…山林や農地の土壌表面処理よりはずっと簡単でしょう。


もうひとつ、やはり事故初期に安定ヨウ素材を配布・摂取させてほしかった。避難指示が遅すぎた(SPEEDIの予測通りにしておけば)が、今後の甲状腺追跡調査に注視する必要がありますね。

今回の記事にあるように、現場からの経験が、今後の対策に生かされることに期待してます。

同じようなセシウム降下量なのに、畑によって、農作物のセシウム量が違う、、、わかりやすい解説ありがとうございます。
都会の私には、厩肥がなんなのかぐーぐるで検索するまで堆肥との違いがわかりませんでした。
ただ、厩肥をいれる、、というのは、牛蓋の糞尿にふくまされるセシウムが継続的に畑にはいった可能性はないのでしょうか?


福島市の玄米からセシウムが検出されたことがニュースになっていましたが、私はそもそも、福島県のお米が早々に安全宣言されたことのほうに疑問を持っていました。

ここでは、航空機でのセシウム降下量と、土壌の関係、土壌と農作物の関係がおもに議論されていて、核実験時代にあれほどセシウムが降下したあとの農作物がどうだったか、、という歴史について調べると
農業環境中に存在する放射性核種の一般公開システム
http://psv92.niaes3.affrc.go.jp/vgai_agrip/

日本中に1年間に2000Bq/平方メートルも降下した1963年後、玄米中のセシウムは最大で20Bq/Kgまで上昇していたので、
数十万ベクレルのセシウム降下があったとおもわれる福島市周囲からは、数百Bq/Kgの玄米が収穫されてもおかしくないだろうと思っていたのです。ただ、最高と最低値の間には、4倍以上の違いがあるので、田んぼの性質もあるだろうし、降下以外のセシウムの流入の有無も関係するだろうと考えていました。

ただ、意外と急激に農作物のセシウム量が下がるのが一つの希望であるなっっと思いました。
多分、ベラルーシと違って、雨が多く、しかも川の勾配が急峻なで、田んぼが多い日本の特性なのかもしれません。
今年は、とりあえず、早川地図や文部省の航空機地図を参考にしていますが、来年以降は、その土地がどういうふうに耕されているかも影響するんですね。

さて、お米に出たことも大変ですが、稲藁には、玄米以上のセシウムが含まれているわけで、その処分が大変そうです。
そして、有機農法という営みをセシウムが根本から破壊しそうです。

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