昔、ヤンバルに馬鹿な百姓志願の男がいた。 誰にも勧められない就農マニュアル
昔、沖縄のヤンバルの山の中に百姓志願の男が暮らしていました。隣は米軍のジャングル戦専用の北部訓練場があるような場所でした。
なにを考えたのか、牛がいいだろうとなけなしの金を出して和牛を飼い始めました。しかも二頭です。
牛を選んだのは、粗飼料で飼えるとどこかで聞きつけたからです。粗飼料ということは餌がタダじゃないか、とこの男はそう思ったのです。
ついでに養護施設で飼えなくなったというアーグ(在来豚)も2頭とヒージャ(山羊)もタダでもらってきました。これもウンム(イモ)のクズと葛だけで飼えるはずだと算盤を弾いたようです。
考えてみれば、農業技術がない、経験もない、ついでに金もないという逆トリプルAのこの男が、いきなり難易度トリプルAのヤンバルに入って百姓をしようということ自体が英雄的なバカであります。
この男の日課は、午前中は火星の土のように赤いヤンバルの土の上でスコップ仕事をしていました。
畑とは名のみ。ただの原っぱの中でスコップでなにやらほじっているというのも異様な風景ではあります。別に当人としては掘り出しているのではなく、耕しているつもりです。、
それほどまでにヤンバルの山土はガチガチでした。初めに入れた鍬は一発でグニャとだらしなく曲がり、これではならじと満身の力を込めて耕しても表土をなぜるだけでした。
土をなぜていても仕事になりませんから、剣スコップでまるで側溝を掘る要領で「耕す」のです。よもやスコップにこういう使い方があるとは知りませんでした。
いや、今でもスコップ農法など聞いたことがありません。今の私なら、なぜトラクターをかけないのか、とその男に問うでしょう。
まずは土質を調べ、肥料設計し、そして堆肥などの土壌改良材を充分に散布してから、おもむろにプラウニングし、仕上げにロータリーをかけろ、と指導するところです。
さすがこの男もトラクターの存在くらいはおぼろに知っていたようです。しかし牛に金を出しすぎて手が出ませんでした。若かったし体力自慢でしたから、まぁなんとかなるだろうと、甘く思っていたようです。
後にこの男は小さな管理機を手に入れることになるのですが、これが機械化農業だと感動したものです。
ちなみにこの管理機には、ヤンバルの土は手に負えず、すぐに黒煙を吐き出して抗議のストライキをしたものです。
沖縄の農家は、長袖のダブダブの上着を着て、首回りにもしっかりとタオルを巻き、軍手は必須、足元はゴム長が定番装備でした。
この男は、コザで買った米軍払い下げの迷彩服を着ていましたから、この姿でスコップをふるう姿はさぞかし異様なものでしょう。
ついでに襲い来るシーベ(ブヨ)の大群から身を守るために、これも払い下げのモスキートネットを頭からスッポリとかぶっていましたので、知らない人がみれば、米兵が特殊任務でもしているように見えたかもしれません。いや、見えないか。
しかし、このネットが息苦しいこと。やけくそで取ると顔かたちが変わるほど刺されました。 米軍の臭い防虫クリームが手放せませんでした。
借りた土地はサトウキビ畑が5反歩と畑と称する原っぱが7反歩でしたから、毎日学校の校庭ほどの土地をスコップでほじているのが日課だったわけです。
午後は優雅な昼寝の後に、草刈りに出かけました。沖縄の夏で本土のように1時から働こうものなら、たちどころに干からびて死んでしまいます。
沖縄の百姓には、「朝ブシ、夕ブシ」(朝星、夕星)という言葉があると教わりました。暑いので星が消える前の朝5時から働き、夕方は星が出るまで働くという格言のようなものです。まぁ途中で昼寝しているんですがね(笑)。
グヒチ(カヤ)を2トントラックで満載になるまで刈ります。これがこの男の農家経営の核心でしたから、それは必死でした。
沖縄北部を泣くような思いで毎日さまよってはグヒチを刈り続けました。しかも鎌で手刈りです。あまりめげることを知らないこの男も、連日2トントラック一杯の手刈り作業には顎が上がりかかっていました。
ハブがウヨウヨする山奥にひとりで鎌一本を腰に差して分け入るのですから、無知ほど強いものはないと言いたくなります。ハブ採り名人ともお近づきになりました。
一度山奥で指2本をすっぱりと鎌で10針縫うケガをした時には、傷口をタオルで縛りながら片手運転で山から逃げ帰ってきたものでした。
そこで、名護の農機屋の裏に捨ててあった刈り払い機をもらって治し、機械がブンブンいった時には飛び上がって喜んでいました。たわいないものです。
こんな男の唯一の楽しみは、共同売店という北部にしかない地域共同の店で大きなテンプラ(さつま揚げ)を一枚買い込み、いちばん安いオリンピアというビールを一本買って、荷台に積んだ刈ったばかりのグヒチの香りに包まれて、誰もいない海岸でひとりで乾杯することでした。
「沖縄に乾杯、がんばっているオレに乾杯・・・!」
■写真 ヤンバルのパイン畑から八重岳を望む。
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最後まで何処の馬鹿かと思ってました。
それにしてもお世辞抜きで大した文章力です。
TPPで失業しても文筆家として充分生活できますよ。
投稿: keiko | 2011年12月23日 (金) 08時14分
keikoさんよ。
相変わらず何も反論できずに、散々揚げ足取りばかり繰り返したあげく、こんな罵倒コメントですか。
皮肉のつもりなのでしょうが、あなたの過去の言動を何度も警告しながらお相手してきた管理人さんに、あまりに失礼でしょう。
だったら何故延々と1週間以上も話題逸らしを続けて逃げ回りながら、粘着してきたのは何故ですか?
あなたが荒らしてばかりいたので、クールダウンで昨日からほのぼの系のエントリーをなさっていることが理解できませんか?
投稿: 山形 | 2011年12月23日 (金) 08時45分
まあ、無理なんじゃない。うちの土地も、亜炭層だけど、冬は、つるはしが、刺さらないからね~。
剣先だって、木製の柄が、折れるわけで、もちろん、小型耕運機は、アウト、トラクター以上か、ユンボの世界です。水道屋が使う小型のブルは、ただ、うなるだけ。。
荒地を手で耕すなんて、水泡をつぶして、手を真っ赤にするだけ。。
まあ、実際、やってみれば、わかります。多分、夜は、入浴もあきらめて、痛い手に、薬でもつけて、寝るのが、精一杯ってとこでしょう。
馬鹿らしいので、これで。。
投稿: りぼん。 | 2011年12月23日 (金) 09時13分
このところのアラシの出現によりコメントを読む度、精神的に不安定になっておりましたが久しぶりに管理人さんのやや自虐的なお話に心落ち着きました。プリントアウトして私の周りの管理人さんの隠れファンに配ります。
なのに~何故?今度は無礼千万のコメント!!
海外の方ですか?日本語が出来ないようですが...。
強制退場を切に願います。
投稿: shey | 2011年12月23日 (金) 09時58分
馬鹿らしいので、これで。。
>>>管理人さん、勘違いですよ。自分が、亜炭を手で掘っていたから、それしか方法がない、それしか生きていけないと言うひとも、たくさん居る。つまり、私も管理人さんと同じ経験をしましたってことで、それを、非難するコメントに、何とかいままで、付き合ってきた自分が、馬鹿だった。馬鹿らしかったと言う意味なんですが。
どうも、文字で書くと、感情がはいると、主語が抜けてしまい、誰が、誰に、話しかけてるのか、うまく伝わらないですね。
ずっと、keikoさんに、農業が、日本に無くなれば、日本経済が終わってしまうことを理解してほしかっただけで、ここ1週間コメントしてきましたが。。
投稿: りぼん。 | 2011年12月23日 (金) 10時22分
りぼん。さん。
まあ、雑談です。
東北以外では放送されていないと思われますが。
震災直後に南三陸町にボランティアに入った20代の金髪アメリカ人女性の話。
現地で荒れ果てた耕作放棄地のあまりの多さにショックを受け「なら私がやる!」、英語講師の職を辞め草どころか灌木生い茂る土地を、使われていない古い耕運機などは地元の土地所有者と交渉してタダで借りて再開墾。トマト・ナス・ピーマン等様々な野菜を引退した爺様たちに指導してもらって生産。
見たところ決して出来の良いものではありませんでしたが、自ら袋詰めまで全部やって仮設住宅まで坂道をリヤカー引いて、どれでも1袋100円で販売。
利益など全くない。完全な善意。
そんなスーパーパワフル姉さんもいます。
もちろん管理人さんの沖縄時代の苦労と比較はできませんし、状況も違うでしょう。
でも私はこの開墾精神(しかも完全ボランティア)に強い共感を覚えました。
もう、現代のフロンティアスピリットだ!
冬を迎えてどうなさってるかわかりませんが。
そんな私も、積もった雪を除雪作業していて、根雪でカチカチに凍ったところで力まかせに…過去スコップを2回折りました(笑)
鉄ヘッドでも柄が古いとバキッといきます。現在主流のアルミスコップは、ガチガチの根雪にはまるで歯が立ちません。グニャッ!ベコッ!です。
名古屋も寒波で冷え込みそうですね。
りぼん。さんもお気をつけて。皆様も良いクリスマスを!
という私はクリスマスの雰囲気大好きながら、全く信心深さがなくて、家には先祖代々の神棚と仏壇にとどまらず、庭にはお稲荷さんまであるんですが(苦笑)
なんとも素晴らしい我が国の宗教・信仰の多様性許容性です。
投稿: 山形 | 2011年12月23日 (金) 10時39分
keiko様
1行目の
最後まで何処の馬鹿かと思ってました>>は、
親しみを込めての言葉?かなとも考えながら読みましたが、
2行目以降はいただけません!!
特に3行目の
TPPで失業しても文筆家として充分生活できますよ>>>
は、人間性を疑います。
何の翻訳家かは知りませんが、たった3行の言葉で、読む人をこれまでに不快にさせる能力は大したものです。
2チャンネルのようなコメントは無視してきましたが・・・と書いていましたが、もう一度自分で書いたコメントを読み返したらいかがでしょうか?
貴女のコメントには反応しないつもりでしたが、余りにも性格の悪さを表した言葉を目にして、つい反応してしまいました。
そこまで、管理人さんの事が気に入らないなら、二度とここへは来ない事を望みます。
投稿: 北海道 | 2011年12月23日 (金) 10時52分
ああ、自分がコメントでちょっといい話紹介しようとしてたら…
りぼん。さん。
いつもちょっとだけ説明不足なんですよ。だから無用な誤解や反発を招く。
先週からのピンポイント砲撃は見事なものでしたよ。
管理人さんも怒り抑えて~!
お互い「敵」ではなく、喧嘩仲間でしょう。
まあ、私もりぼん。さんにはドンパチしかけた過去がありますが、あれは「論点ずれ過ぎだよ!」と思った時です。
りぼん。さんは大変博識の年輩の方で、ネットのスキルも極めて高い。その点いまだに尊敬してます。
今回の事変も結局はちょっとした齟齬からでしょう。
お互いビンタ程度で終わらせましょうよ!
投稿: 山形 | 2011年12月23日 (金) 11時02分
たった三行の捨て台詞 by keiko
なんか懐かしい90年代初頭のガールポップなら、あっという間に失恋ソングの歌詞ができそうだな。
他人の文才どうこうより、君の翻訳業が心配だよ。
文才どころか読解力も聞く耳もないことを1週間あまりの短い間に連日何度もハッキリと露呈したのだから。
挑発行為と話のすり替えだけはあったけど、所詮お子さまレベルだったね。
さようなら。お元気でなどとは言わないよ。
投稿: 山形 | 2011年12月23日 (金) 11時34分
keikoさん。
最初から何処の馬鹿かと思ってました。
それにしてもお世辞抜きに大した文章力・理解力の欠片も無い方でしたね。
TPPで外国からよりマシな労働力が安く入ってきたら、たちどころに失業なさるでしょう。これまでのような生活はとても出来なくなることでしょう。
投稿: 山形 | 2011年12月23日 (金) 12時05分
数年前に、仕事がらみながら、連れと一緒に沖縄を尋ねた際、あちらの親戚(連れ合いの)の親戚が、それこそヤンバルのほうにおられまして、連れて行ってもらったことがあります。そこは、食堂をされているのですが(そこの味噌汁定食は美味かったです)、家に僅かばかりの畑がありまして、その畑を見せていただいた記憶がよみがえりました。
お世辞にも、肥沃な土地とは言えないような畑でしたが、管理人様のように、少しずつ開墾されたのでしょう。人間の少しずつの積み上げが、今であることを考えた今日の記事でした。ありがとうございます。
投稿: 一宮崎人 | 2011年12月23日 (金) 12時31分
ユーモアのセンスのない人が多いですね。
管理人は分かってるとおもうけど。
投稿: keiko | 2011年12月23日 (金) 14時59分
不毛な応酬はストップしてください。明日の記事をご覧ください。
投稿: 管理人 | 2011年12月23日 (金) 16時05分
青空です。
いささかに不毛な議論になってきたと思いコメントしようと考えていたところですが、濱田様がおっしゃるのであればご意向にそうとします。
転勤作業や引っ越しもようやく今週末で完了します。
住み慣れた仙台を離れるのは山形様がおっしゃった通り忸怩(じくじ)たる思いです。
ただ優秀な後任と大幅な増員が来ました。政府は動かずとも民間でできる復旧は最大限の力で進めてくれるしょう。東北人であれば皆が圧倒される力で成し遂げると信じて疑いません。
また日本は決して東北を見捨てたりしません。
もちろんいわずもがな福島県もです。
東京での引き継ぎ中でも東北を慮り、協力を惜しまないという声を特に経営者によく聞きます。
リップサービスであるかそうでないかは話し振りでわかるもの。多くの人が心から案じているのを聞いて日々目頭が熱くなる思いがします。
引っ越し作業中の家内の話では徐々に雪がちらつくよう。
蔵王は既に雪に覆われているようです。山形様も寒さがこたえる季節です。ご自愛下さい。
家内の実家の父は兼業を営みますが、
農業とはまさに自然との壮烈な数百年にわたる闘い。
闘いながらもその恵を得る、時にその恵に感謝し時にその残酷さに憎しみを抱くとてつもなく気まぐれな存在だとよく聞きます。
我々都会人が自然を見て美しいと感じる場所は大概にして数百年の長きにわたり人が作り出した里山です。
東北には牙を剥く原野のような自然が点在しますが、高原は別にすればそのパワーの強大さに畏敬の念を抱くものです。
ひとたび人のてを離れれば高温多湿な日本の自然は数百年の努力を無に帰して行くと感じています。
北海道様、北海道はすばらしい場所ですね。是非また訪れたい。
食べ物、情景いずれも素晴らしい。
私の銀行でも札幌支店は人気の支店ですよ。
山形様、山寺は爽快でした。階段はきつかったですが、芭蕉の気持がわかった気がしました。
是非また訪れたい。帰りはりんご畑を抜けて天童温泉で一服したいものです。
最後に濱田様、再びやな季節になってきました。インフルには細心の注意を。しかし、奥様共々くれぐれもご自愛下さい。
それにしても扉絵の写真にはいつも感嘆します。プロ顔負けですね。
いつもいつとられているのですか?手ほどき戴きたいほどです。
投稿: 青空 | 2011年12月23日 (金) 16時30分
私も写真は好きで、今まで色々撮ってきましたが、子供が小さいときは子供の成長を記録していました。当時はデジタルカメラではなかったので、失敗しても焼き増ししなければならず、結構無駄な出費をしていました。
便利な世の中で、当時のネガフイルムをスキャンして、パソコンに保存できるようになり、時々孫の成長と重ねて見ています。
青空様が仰るとおり、浜田様の写真には感心しきりです。忙しい中「朝焼け」等の写真もあり、寝る時間があるのか心配しています。
今はコンパクトデジカメしかなく、スナップ写真ばかりですが、高価なカメラは無理にしても、もう少し色々いじれるカメラを入手したいと考えています。
札幌のこれからは、連日降雪があり、除雪の毎日となります。今から春が待ち遠しいです。
私は道東十勝なので、札幌とは若干気候が違いますが、昨夜は60センチ程度の降雪があり、忘年会から帰ってきてから夜中に除雪しました。
運動不足のこの時期ですが、良い運動になります。
でも歳には勝てず腰が・・・マッサージ機の世話になります。
山形様も青空様も、そして濱田様も是非機会を作って北海道に遊びに来てください。
投稿: 北海道 | 2011年12月23日 (金) 17時04分
馬鹿でいいじゃないですか。
Be foolish!
濱田様はなんとなくスティーブ・ジョブズ氏に似たものがあるように感じます。濱田様の方が年上ですが。
http://video.google.com/videoplay?docid=9132783120748987670&hl=en
投稿: 南の島 | 2011年12月23日 (金) 19時23分