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2011年12月 1日 (木)

減反とTPPをシミュレートする

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日本の農政には、ひとつの大きな流れがあります。 

それは戦前から脈々としてある小農保護主義の流れです。小農とは小規模農家のことですが、今はほとんどが兼業農家となってしまっています。 

まぁ要するに、規模的に換金力が弱くて農業だけでは食えないところに持ってきて、70年代から始まった減反政策によってそれが決定的となりました。 

減反政策は、戸別ではなく集落に対して「はい、あんたの地区は36%ね」、という具合に地域に対してかけられてきますから、逃げようがないわけです。大きくは県、そして地方自治体、地域というふうに網の目はそれは細かくできています。 

いったん減反をかけられると、目標に達するだけしか作れなくなります。たとえば36%減反といえば、自分の水田の64%で耕作するか、それ以上作っても飼料米か、米粉にするしかなくなるのです。 

飼料米がもてはやされていますが、あれは投入された多額の税金を消費者が別な形で食べているようなものです。つまり、消費者からすれば一回広く薄く税金で負担した後に、代金としてまた支払うという二重の負担構造になっています。 

これを「お米を食べて自給率を守ろう」という聞こえのいいキャッチフレーズで大々的にやるのはいかがなものかと思いますが、まぁいいか。 

いずれにせよ、本気になればおそらく自給率150%はできてしまうコメを、700%を超える高い関税と、無理やり海外のアブナイMA米まで大量に買い込んでまで維持しようとしているわけです。 

農水省は減反政策は始めた当初は、生産制限をかけてしまえば、小規模農家は農地を貸して町に働きに行くだろうと予測したようです。 

後半はそのとおりになりました。確かに食えないので町に働きに行くようになりました。 

しかし、土地は大規模化したい農家に貸すようになったのか、といえば、これが違ったんですね。小規模で転作奨励金をもらって減反制度に守られたまま農地を手放さなかったのです。

だから農水省が心秘かに期待していた「農地の集積」は起きなかったのです。農家は転作奨励をもらって兼業化してしまいました。 

せいぜいが5反歩かそこらの水田を土日に耕してはいるが、本業は町の公務員だったり勤め人だったりする階層です。 

これが今の日本農業を難しくさせている兼業農家がマスで存在しているワケです。 

このマスで存在している兼業農家階層は、農業関係からくる収入はおおよそコメから来ています。米価が低迷しようと、一定の買い上げ価格が補償される減反制度に守られていると言ってもいいでしょう。 

減反制度と米の高関税、そしてそれにより保護されている兼業農家階層は、実は一体のものなのです。 

今、TPPが問題となっていますが、これが農業界にとって簡単に受け入れがたい理由はこの「減反-高関税-兼業農家層」という長年作ってきてしまった構造を一朝一夕に変えるのが難しいからです。 

農水省が試算するTPPをやったら13%にまで自給率は落ちるというのは、失礼ながら言い過ぎというものですが、一面の真実は含んでいます。ちょっとシミュレートしてみます。 

TPPになればまちがいなくコメの高関税は廃止されることになるでしょう。TPP交渉であんな馬鹿げた高関税が生き残れると夢想するほうがおかしいからです。ネガティブリストに入れることもそうとうに難しいと思われます。

それと引き換えに米国の輸出補助金もペケになるでしょうから、日米農業界は相討ちとなるかもしれません。ただ、米国からの輸入飼料は輸出補助金がはずれて、その分高くなりますから、日本畜産のほうのダメージのほうが大きいかもしれませんが。 

高関税がはずれると、当初は日本市場に参入できるコメは加州米くらいでしょうから、参入量からみて、影響は限定的です。 

しかし、本格参入が始まる5~10年後先にはどうなるか予測がつきません。おそらく日本商社が優良な日本の種子を外国に持っていき、生産管理をきっちりやった米が登場してくる可能性は否定できません。 

そうなった場合、日本のコメは有史以来初めての国際競争に立たされることになります。 

一方、TPP体制下では減反制度などはありえませんから、国家生産カルテルがなくなり完全にフリーな生産となります。 

市場価格は、日本の消費市場に参入可能な加州米などは一斉に日本に向かった結果、ジャポニカ米の国際市場価格は上がります。 

日本の消費市場からすれば、いったんは下がってから、国際市場価格が品薄となってキックバックするという乱高下に見舞われるでしょう。 

このような状況で兼業農家層があえてコメをやる理由はありません。先祖から受け継いだ土地に草を生やさないようにして、地代をもらえればいいのですから。 

ここに日本の農地の流動化という前代未聞の状況が生まれます。未来を信じられなくなった兼業農家層を食い止めるのはいかにJAをしても難しいでしょう。

この兼業農家から放出される余った水田は膨大な量になるはずです。農地を手放すことは現行では農業委員会の規制があるので簡単ではありませんが、゛TPP体制下では雪崩のように進むことでしょう。  

農地の激安化、兼業農家層の離農といった状況が出る可能性は高いと思われます。  

そして残念なことには、TPP体制下に対応する対策を現行の日本農政は準備していません。  

本来は4h以上に対してのみに税金の投入を制限する4品目横断政策や、山間地農業の集落法人化事業などがTPP対策として進行していれば、どうにか10年ほどの再編準備期間が用意できたのです。  

しかし民主党が薄く広くカネをバラ撒く農家所得戸別補償制度という兼業農家優遇政策をとってしまったために振り出しに戻ってしまいました。 

おまけに、自分が自民党農政否定として打ち出した農家戸別所得保障を真っ向から否定する「包括的経済連携に関する基本方針」を、そのわずか半年後の10年11月に出してくるという迷走大会を演じます。

選挙で票さえ入れれば、農業は用済みだということのようです。分かりやすくていいですが、結婚詐欺師みたいですね(苦笑)。 

民主党政権の酒乱酩酊ぶりは年中行事なのでさておいて、TPPを前にしてこの数年のロスは大きかったですね。 

かくて、なんの準備もなくわが国の農業はTPPにさらされることになりました。

おそらくは外国資本による、激安となった日本農地の買い占めと企業農業化が進行すると思われます。これについては一度スケッチしてみましたのでそちらもご覧ください。
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2011/11/post-1bd4.html

■写真 霞ヶ浦の波止場。子供が堤防で遊んでいました。クリックすると大きくなります。

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コメント

先週のNHK山形局が県内4箇所でブラインド調査したアンケート記事が、昨夜ねBIZスポで流されてました。

加州コシヒカリて山形産コシヒカリでの食味は互角。
もし半額なら加州産を買うは少数派(11%)
理由は国産信奉と輸入米の安全性。

USA米輸出組合では、日本の厳しい基準に即した最高の者を出荷する。農薬などは州が厳しく管理。
水も安全で増産はまだまだ可能とのこと。

対するJA山形は、今までの主張を強調して危機感を煽るばかり。

なんか、ヤバいなあ。

味の評価では、真っ二つに別れていましたから。


まず、牛丼やファミレス等の外食産業や、コンビニ弁当で、どんどん輸入米導入されることでしょう。

都市近郊兼業農家には、さらに複雑な税金問題がからみます。A農地扱いですので、固定資産税は、宅地並み課税ですし、個人名登記の農地は、30年以上耕作農地として使わないと、相続税が払えないし、、兼業農家ですので、農繁期のみの農作業で、済ませられる農作物は、米か果樹くらいでしょうが、果樹は、減税対象ではないので、食用の米が、1番、兼業農家には、マッチしていると思われます。飼料米を作るのは、飼料米耕作地は、減反地に認めてもらえることと、どちらみち雑草を取るなら、飼料米を作れば、補助金がもらえるからでしょう。
これら、非常に複雑な補助金農政に、踊らされているのが、日本の農業です。八郎潟の減反反対運動など見ても、相当おかしい農政だと思います。国が、米作専業農家を募集しながら、米は作らず減反せよ。とは、だれしも納得できないようなことを、平気だやってきたのが、日本の農政ですから。。

長い目で見れば、カルフォルニア米は、国産米の市場をかなり、うばうでしょうね。食味は、タイ米などと違い、黙って出せば、国産米と変わらないですから。。デフレ不景気が続けば、牛丼同様、味もそこそこのカルフォルニア米は、可処分所得の減少とともに、売れると思いますよ。

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