「次世代エネルギー」について整理してみよう
「ポスト原子力」のエネルギーを考える時に、私は一括して「次世代エネルギー」としてしまうことに抵抗感がありました。
たとえば一宮崎人様から提起いただいた木質ペレットと、メタンハイドレートやトリウム原発を同列にしてみても仕方がないじゃないか、というのが私の考えです。
また、「バイオマス・エネルギー」という言い方で、今や熱病のように大規模に生産されている食料由来のバイオエタノールと木質ペレットや畜糞尿メタンガスなどを一緒にしてしまうのもいかがなものか、と思っています。
昨日の繰り返しになりますが、各々のエネルギー源の置かれた立場や本質が違うのです。
まず、前提として私は人間の食料と競合するような、あからさまに言えば餓死しようとする人から食料を取り上げて、燃やして自動車を走らせるようなバイエタには反対です。
私はこのような行為がエコの名の元に行われる偽善に耐えられません。このカーボン・ニュートラルという考えは、立論それ自体の科学的根拠がいかがわしく、現実には21世紀に起きている地球規模の食料不足の格差を拡げる原因となっています。
あくまでもバイオエネルギーは人間の食料と競合してはならず、産業廃棄物や地域未活用資源の再循環の過程から生み出されるべきものだと思っています。
その意味で、トウモロコシ、菜種、小麦、サトウキビなどのバイエタ化は間違ったコースに入り込んでいます。
また、風力、太陽光、バイオマスなどのいわゆる「自然エネルギー」ですが、ひとつひとつ丁寧に検証されねばなりませんが、本来は小規模な地域コミュニティやビル、家屋などで利用されるべきローカルエネルギーパスです。国全体の代替エネルギーとするには荷が重いと思っています。
たとえば木質ペレットですが、かっちゃん様のご指摘がありましたように、国内大手のファーストエスコが典型なように、今の木質ペレットは大部分が輸入材の加工くずの産業廃棄物が原料です。だから採算がとれています。
それはそれとして結構なことですが、本来は手が入らなくなてしまった日本の山間地林業の再興と一対で考えられるべきものに思えるのです。
これは荒廃の度を深める国内山林をいかにして守っていくのかという環境保全と、その守護者であった一次産業の問題でもあります。
またゆっくりとお話したいと思いますが、森を守り、山を守り、水を守る、それが自分たちの生産の基本にも繋がるのだ、という伝統的にあった農業や林業のあり方をどこかでとり戻さねばなりません。
農業は農業だけで製造業化し、林業は人手がいなくなって輸入材に押され続けている現状自体をを変えて行く中で、木質ペレットも輝くのではないでしょうか。
言い換えれば、私たちと無関係にどこかに「自然エネルギー」が存在するのではなく、自分の住む地域や、職業と絡ませて考えるべきものです。
その意味でも自然エネルギーの取り組みは、国の代替基幹エネルギーうんぬんという議論から自由になって、もう一回自分の住む地域の宝を見直していくことに繋いでいけたらと思っています。
さて次に、今注目を集めているメタンハイドレートやトリウム原発などですが、位置づけとしては国レベルの代替エネルギーです。つまり、減少の一途を辿るであろう原子力に代わって、化石燃料やLPGと組み合わされて基幹エネルギーを担うべき役割を期待されています。
こう言うと身も蓋もないですが、国レベルの代替エネルギーについては素人の私たちにあまり議論の余地はありません。
私たちはその技術が私たち国民にとって「安全・安価・継続性」ということを基準にして末端ユーザーとしての評価を下すことです。
安全や継続性は、3.11以後説明を要しないと思います。いったん事故になれば国の3分の1が壊滅的打撃を受け、数万人が「被曝」し、その再生まで気が遠くなるような歳月がかかるようなエネルルギー源は、いかに発電コストが安かろうと本質的には「安価」とはいえません。
また、その代替として菅内閣が強行した再生エネルギー法は明らかな欠陥法であり、全量定額買い取り制により初期参入者のみが過剰な利潤を上げられるような構造になっています。
電気料金の値上げは、主唱者である孫氏が言うような500円値上げなどではとうてい済まず、おそらくは5000円近い値上げになると言われています。
このような高額な代替エネルギーをうむを言わせず国民に押しつけるようなことは、エネルギー新世代の戸口で慎むべきではないでしょうか。
今必要なことは、雨後の竹の子のように登場した各種エネルギー源を性質ごと切り分けて位置づけ、それぞれに適したあり方を国民が議論することです。
同時に技術的な進歩に対しても国策化するべきです。今はそのような「次世代エネルギー」のテイクオフ前の準備期間であり、拙速な国民への押しつけは逆効果となると思います。
■写真 近所の山林。完全に手が入っていません。間伐がされないために樹は細く、少しの大風で倒れて道を塞ぎます。これが今の里山の状況です。
■[ひとこと]
コメント欄は記事に対してのコメントを書き込む場所です。「コメントに対するコメント」を書き込む場所ではありません。議論が熱していくのは好ましいことですが、このコメントは私の記事を読んで書いているのだろうか、というものも少なからず見られるようになってきました。
このようなことになると、私はテーマ座談会のお題を決めるだけでいいことになります。もう少しエントリーとのやりとりの中で書き込んでもらえると励みになります。毎朝2時間かけてそれなりに苦労して書いても頭から記事を無視したような書き込みが続くと、正直に言ってなんともやりきれない思いがしてくじけます。
よろしくご判断ください。
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どうも、話を振ってしまった張本人です。
管理人さんの考えに賛同します。自然エネルギーはあくまで地域の生業に負担をかけない、地域の特性を考えた範囲でやる必要があります。逆に何も考えないで自然エネルギーをやろうとすると自然を破壊しますし、地域の生業や共同体を破壊するでしょう。
よく、エネルギー自給率の観点から自然エネルギーを考えるという話もありますが私は良い話ではないと思ってます。あくまで自然エネルギーは補助的で「可能ならやる」程度のものなので真面目にエネルギー自給率を考えるなら、昨日私が言ったガス電開発とかそういうものでなくてはいけないと思います。
雇用が生まれるという話もあります。確かにそういう面もあると思います。でも、まずは農村なら農家が増えるように、所得が上がるように、漁村なら漁民が増えて所得があがって元気になるような事を考えるべきで地域の生業をまず回復させてから自然エネルギーなどは考えるべきです。だから、農水省が率先して自然エネルギーを進めるという話にはイライラしたわけです。優先順位がおかしいだろう、と。まずは農村や漁村を元気にすることを考えてくれってことです。
震災復興もそうなんですが、もう優先すべきことが優先されないで大したことないことが優先されてます。これにマスゴミはいつものように乗っかって、国民・・・というより大衆も乗っかる。かなり不味いな、と最近感じてます。思うに震災復興ができる・できないではなく、日本人が日本を統治することができないんじゃないか?と思ってしまいます。
脱線しましたがさすがに最近は危機感を抱かざるえないです。
投稿: マグロ | 2012年1月 6日 (金) 13時05分
管理人様
私のコメントから代替エネルギー論になってしまい申し訳ありません。偶然にも、NHKの放送を見た後に管理人様のブログを読み、図らずもあのようなコメントになりました。すみませんでした。
日本人は元来、木に対する知恵を沢山もっていたと思います。入会地と言う共同の山林を有し、そこの木材を利用して炭を焼き、エネルギー源とすることで、山が荒れるのを防ぎ、その結果として、下流の農地に肥沃な養分を供給し、最終的には、海をも豊かにしてきたと思います。それら一連の流れが、いつからか途切れてしまったことが、何だか今の日本の色々な問題の源流にあるような気がします。
グローバリズムの美名のもとに、それら、元来日本人が持っていた知恵が薄れていっている気がします。
グローバルスタンダードとジャパンスタンダード、このダブルスタンダードはあっても良いのではないかと言う気がします。
先日来、私が放送で見た、オーストリアの事例を紹介したHPがありましたので、貼り付けさせていただきます。その資料のなかで、何故、その地区が木材ペレットにシフトしたかの説明ものっています。
その部分が、私が共感した部分です。
http://www.eonet.ne.jp/~forest-energy/GREEN%20ENERGY%20FILE/Guessingstory.pdf
管理人様のブログのコメント欄をお借りすることをお許しください。
寒さ厳しいおり、お体ご自愛ください。
投稿: 一宮崎人 | 2012年1月 6日 (金) 13時07分
一宮崎人様。マグロ様。ありがとうございます。コメント、うれしかったです。
明日の記事で私の考えをお話しさせて下さい。
投稿: 管理人 | 2012年1月 6日 (金) 15時15分